私家版*band用語集


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マイア Maia 【種族】【その他】

 出典:トールキンのアルダの世界観における下級神。マイアール(maiar)は複数形。アルダが形成される以前から存在する聖霊(アイヌア、神族)のうち、最も力のある15体(ただし通常は、筆頭のメルコール(後のモルゴス)が除かれ14体)をヴァラール(諸神、上級神)といい、残りをマイアールという。彼らの成立や個々の名前・内訳などの詳しい情報は、指輪物語系の解説サイトを参照されたい。
 トールキンの『ヴァラクゥエンタ』には、マイアールは「ヴァラールと同じ聖霊の位階(order)に属しながら力ではより劣るもの」とされ、唯一神教的には、イルヴァタール(トールキンの世界観の至高神)を唯一神とした場合にヴァラールとマイアールはともに天使階級であるという図式が示されている。しかし、トールキンの神話での役割で言えば、ほぼヴァラールが多神教の主神群(ギリシア12神など)のような位置づけであり、マイアールは彼らの従属神や使役する精霊、マイナーな地方神、文字通りのデーモンや、神話上で定命の者に混ざって行動し、あるいは混血を作る者たちやそうして生まれた半神半人などの役割を担っていると理解して構わないであろう。
 マイアールの数およびどれをどこまでとするかは、それぞれのファンごとの推測の域を出ない。きわめて狭義には、「マイアールの聖霊たち」はアマンの地においてそれぞれのヴァラールに仕え補助する(サウロンやサルマンが元はアウレに、ラダガストがヤヴァンナに従属していたように)「ヴァラールの民」のみを指すようである。しかし最も広義には、「この世の形成以前から生きている存在」をすべてマイアールのカテゴリに放り込む場合もある。この場合、特にヴァラールを助けてもいなかった大蜘蛛ウンゴリアント、長生きという他には何もかも不明の古森の謎の爺トム・ボンバディル、ひいては水中の監視者やナズグルの乗騎(忌まわしき獣)などもマイアールに入れてしまうようである。
 マイアールにとっては(これはアイヌアに共通であるが)現世の「肉体」というのは、人間にとっての服程度のものでしかない。マイアールは服を取り替えるように自由な肉体をまとうことができる。特に第一紀には様々な肉体をまとったり姿を変えたりするマイアが登場した。しかし至高神やヴァラールにそむけば次第にその能力を失ってゆくし、イスタリ(サルマンやガンダルフなどの魔法使)は人間の肉体をまとうようヴァラールに命じられており、能力的にも(肉体、精神とも)人間の体に応じたものに束縛されているのである。
 種族、その他:モンスター等として登場するマイア(バルログやイスタリその他)は個々の項目に譲るが、アルダを舞台としたいくつかのバリアントでは、「マイア」を種族として選択できる場合がある。しかし、「特別扱い」であることを示してか、それは普通の(他とイーブンな)種族ではなく、初心者用や練習用などで、スコアや経験の入り方が制限されたりといったものである。
 マイアはバルログやイスタリを見てもわかる通り、外見は勿論、能力でも一概に言える存在ではないはずだが、例えば[O]では全般ハイエルフの一回り上あたりの万能能力が与えられており、第一紀の、エルフの姿をとったメリアン、武将の姿のエオンウェあたりをイメージしていると考えられる(イスタリの場合は恐らくハイエルフより劣っているので)。キャラクター作成時、年齢が爆裂(数千歳)していたり、生い立ちで特定のヴァラの配下とされているのが楽しい。[O]の場合、「スコアが半減する」というペナルティーになっている。
 ToMEではイスタリがイメージされているのであろうか、最初は人間の特性に似ているのだが、能力値が6レベルごとに上がってゆく(これは、中つ国や肉体に慣れていくという意味であろうか)。しかし、無信仰(ヴァラの力は借りられないの意か)、反感(聖なる者なのでどんな魔とも対立してしまうためか)、経験値吸収(おそらく、ぐずぐずしていると堕落していくのだと思われる)といったペナルティーがある。なにやら大味な特性だが、他と違ったプレイスタイルを余儀なくされることは確かのようである。

 →イスタリ →バルログ →サウロン



マイグリン Maeglin, Betrayer of Gondolin 【敵】

 ゴンドリンを裏切りし暗闇のエルフ。マイグリンはアルダ第一紀の伝説時代に、はぐれシンダールであり「暗闇のエルフ」と呼ばれた鍛冶師エオル(→参照)と、エオルがさらったゴンドリンのノルドールの姫アレゼルの息子として生まれた。Maeglinとは「鋭い目」の意だが、エオルが命名したものである(なお「マエグリン」とされる場合もあるが、基本的に発音は同じで日本語表記の問題である)。やがてマイグリンは中つ国の最後の理想郷ゴンドリンに憧れ、アレゼルと共にエオルのもとを逃げるが、紆余曲折の末にアレゼルとエオルはともに命を落とした。このさい、マイグリンは親よりも、ゴンドリンの国に取り入ることを重視した態度を取った。
 マイグリンは当初の望みどおり、ゴンドリンの王トゥアゴンに重用されることになったが、ただひとつ、強くひかれたトゥアゴンの娘イドリルを得ることは望めなかった。マイグリンの母アレゼルがトゥアゴンの妹なので、マイグリンとイドリルは従兄妹にあたるためである(エルフやヌメノール人は、従兄妹の結婚に対するタブーは現代人より遥かに強い。繁殖力が弱い種族であるため、避ける習慣が根付いたと筆者は考える)。しかも、トゥアゴンの真の寵愛にせよ、イドリルにせよ、マイグリンが望んでいたすべては、人間でウルモの使者として現れたトゥオル(→トゥオルのクローク)に与えられたのである。
 つまるところ、彼は闇エルフと呼ばれる父から生まれたにせよ、「よそ者だから」ゴンドリンに禍を持ち込んだのではなく、あくまでゴンドリンの中で生じた本人の羨望によって不吉を招いたのである。やがてマイグリンは過失からモルゴスの軍に捕らえられるが、陥落後にはイドリルを与えられるという条件を呑んで、モルゴスの間者となった。こうして、マイグリンの流した情報のため、モルゴス軍から隠されていたために生き残っていた上のエルフの最後の都ゴンドリンは、総攻撃を受けて壊滅した。マイグリンはゴンドリン陥落時にイドリルを連れ去ろうとするが、駆けつけたトゥオルとの対決の末に城壁の崖から投げ落とされ、父エオルが処刑されたのと同じ断崖に3度ぶつかってからその底に消え、その後の消息は不明である(馬鹿一展開的な表現)。
 マイグリンはファンの間では父のエオルと同様、「暗闇のエルフ」と呼ばれることが多い。マイグリンはゴンドリンでトゥアゴンの武具をさらに強いものにした鍛冶師の技を持っており、おそらく父と同様の「黒い鍛冶の技」を持っていたとは思われるのだが、原典中ではマイグリンを「父同様に」暗闇のエルフと呼ぶ呼称はない。また、「暗闇」とは妖精説話の黒妖精などと同様、地下などで働くことを意味しているのであって、必ずしも「悪」の意ではない。しかし、ファンの間ではマイグリンの邪悪な本性と呼んだ災いに対して呼ぶことも少なくない。
 マイグリンは長身で黒髪、母方であるノルドールのハイエルフの方に近い容姿をもち、トゥアゴンのもと戦士としても非常に優秀だった。父から盗み出したエンドール最強の剣の一振りアングウィレル(→参照)を帯びていたというが、この剣については行方など細部は不明である。
 *bandには[V]では登場していないが、[O], ToME, [変]をはじめとして多くのバリアントで追加され、またKAngband由来のJLEパッチ([V]の拡張で、3.0.x以降は内臓された)のように別にデータ化された異なるいくつかのバリエーションがある。いずれもエオルよりも高レベルだが、特にJLE由来のものはかなりの深層階で、攻撃力や魔法頻度ともにさほどでもないものの召喚内容自体は強力なものばかりなので、他のユニーク戦の際などにマイグリン自身が召喚されてくると非常に危険なことが予測される。

 →ゴンドリン →エオル →トゥオル



マイセン Mycen the Gold Dragon 【敵】

 金鱗の竜王。日本のRPG風ファンタジーの先鋒『ロードス島戦記』シリーズに登場するドラゴンで、ロードス島の「五色五匹の古竜」のうちの一体。数多くの貴族の連立による山地の大国モスの、守護神的存在とされる。かつては他の4匹同様に古代王国に使役され「生命の杖」というアーティファクトを守護していたが、先のモスの公王マイセンらに救われ、その盟友となり、公王マイセンの死後はその名も名乗っていたという背景がある。シリーズ中の時代を含めて、公王マイセンの死後は普段はあまり人間には干渉しないようであるが、決戦時には姿を見せ、OVA版ロードス島戦記では、暗黒の島マーモの勢力についている邪竜ナース(→参照)と対決する場面もある。
 ドラゴンが五色、金竜が最高位で善玉というのは『ロードス島戦記』がクラシカルD&Dのリプレイであったことの名残であるが(ただし、現在の設定では戦闘能力では赤竜のシューティングスター(→参照)の方が高い)現在(『ソードワールド』など)のゲーム用のデータでは変更が多々繰り返され、また細部の解釈には諸説もある。データ化以前の小説の記述などでは5体ともが「古竜(エンシェント・ドラゴン)」であったものの、のちにはマイセンとシューティングスターのみが古竜とされ、残りの3体は大幅に格で劣る老竜(エルダー・ドラゴン)という設定となった。古竜の定義が強力なものになると共に、その古竜であるマイセンは、神々の時代から生きている説も生じ、また金竜というより神々に仕えた「光竜」の一種であるともされた。(なお「竜王」は神殺しと呼ばれるさらに上位の竜を指す語であり、この場合マイセンの竜王は人間による呼称に過ぎないとされる。)偉大なのか設定の割にそうでないのかよくわからず(データ的には老竜らとさほどの大差がない)やはり2体だけ残さずマイセンも老竜にするべきではないかとの声もファンからはあるのだが、もともとは、この世界のエンシェント・ドラゴンという言葉はロードスの古竜らを定義づけるためにできたようなものであるから、そういうのをただの本末転倒というのである。初期のゲームルールを点々としてきたことによる様々な齟齬の影響がなぜかいまだに尾を引き、ゲーム設定重視の作品でありながら設定がはっきりしない面がこの作品にはある。
 D&D系ではゴールド・ドラゴンは火炎と塩素ガスのブレスウェポンを使い分けるが、『ソードワールド』のデータではどのドラゴンも火炎を用い、「光竜」の特殊な点は神聖魔法の能力を持つこととされる。
 *bandでは、OVAロードス島戦記を採り入れたバリアントSBFbandから[変]に導入されているユニークの一体である。*bandのゴールド・ドラゴンは轟音のブレスを吐き、SBFbandはそのまま踏襲しているため原作とは異なるのだが、[変]では光竜らしく光と魔力のブレスも追加されている。*bandでのロードスの古竜は一律60階で老竜であろうが古竜であろうが階層も基本能力も同じなのだが、マイセンはブレスが上位元素なので結果的にこの中では危険な方に入る(つまり、もう一体の古竜であるはずのシューティングスターは火炎ブレスなので実は危険性がやや低い)。FRIENDLYフラグがついているので徳などの都合でないと敵対化しないが、戦いになれば能力的にかなり要注意(特に、普段は重要性が低い轟音耐性はつけておきたい)と見なされている。



マインドフレア Mindflayer 【敵】【種族】

 出典:AD&Dのオリジナルモンスターの中でも、「ビホルダー」と並ぶゲームの看板のひとつ。マインドフレア(精神の剥奪者)は人間らから呼ぶ俗称であり、種族としての本来の名はイリシッド Illithidである(この名の関係は「ダークエルフ」と「ドロウ」のようなもの)。
 一応は人間型の種族であるが、蛸のような、口に4本の触手と白濁した目を持つ頭部と、これも蛸の触手を思わせる、自在に動く長い4本の指を持つ。6フィートあまりの長躯に、古代のローブなどをまとっている者が多い。
 地下に優れた文明を築いており、ドロウおよびクオ=トア(直立二足歩行する半魚人)と並ぶアンダーダークの脅威的種族であり、これらが力関係では三すくみの状態にあるという。しかし、本来は「宇宙」を主な活動の場としている種族である(2nd当時のspelljammerキャンペーンセッティングでの話)。
 姿は似ているが、「大いなるクトゥルフ」とは何の関係もなく、完全な他人の空似、と言いたいところであるが、蛸は「異質」な生命として西洋では古来より恐れられ、また近現代以降宇宙人のモチーフとされてきたので、同じ宇宙的恐怖に対するイメージの一致というところであろう(→「クトゥルフの落とし子」参照)。
 彼等を精神の剥奪者と呼ばしめる最大の特徴は、彼等が他生物の神経組織を直接奪取する習性を持つことによる。どんな英雄であろうが、口の触手の攻撃が4回ほど命中してしまうと、問答無用で頭蓋骨をカメを砕くようにブチ割られ脳ミソズル出されておしまいである。そしてその習性は伊達ではなく、彼等の精神活動は強力であり、強力な魔術師も僧侶も少なくない。その真骨頂の能力として、わずかなグレーターデーモンのみが持つレベルの強力無比な「サイオニック」能力を種族の標準能力として備えており、他種族を隷属させ、また無抵抗化して脳を奪う等に使用する。猛悪なる強敵に事欠かないAD&Dの中ですら、これほどに設定上・プレイヤーともに一方的に恐れられている種族も少ない。
 *bandの生い立ちにも記述があるが、それぞれの都市の中心部には長老格の脳が浮いている脳漿の池があり、彼等はそこから生まれ、また数マイルに及んで影響を及ぼすその池の思念としばしばコンタクトし、知識を集積する。おおよそ想像もつかぬ精神構造であると思いきや、小説などによると、(少なくとも惑星の地下に住んでいるものは)意外に人間や他の種族とかけ離れていない精神を持つようである。
 他のRPGなどでは、AD&Dオリジナルだけに登場例は少ない(『ファイナルファンタジー1』で、外見の似た色違いデーモンのシリーズの中に混じっていたりする)。NetHackには敵として登場するのが有名である。テレパシーを持ち、プレイヤーキャラの知力を低下させ(地図などの記憶を奪ったりもする)場合によっては脳を奪って殺したりもするので、鬱陶しがられて「虐殺」候補によく上げられる特徴的なモンスターである。しかし、これでも元のAD&Dでの凶悪さには遠く及ばないのである。なおNethackで開始直後にペットに変化の杖を振るとマインドフレアに変わるといったことが度々あり、テレパシーを常にゆんゆんと発信してくるわ、他の生物の脳ミソズル出している風景がリアルに伝わってくるわでなかなか楽しいものがある。
 なお、NetHackの2chUNIX板のスレッドではマインドフレアの映像イメージとして、「烏賊兄弟」のアスキーアートが定番と化し、2ch以外でもNetHackではあちこちに貼られるが、実際のイリシッドは「烏賊」に近いわけでもなんでもなく、D&D関連のスレッドにこのアスキーアートが貼られた際、イリシッドの映像イメージを豊富に蓄積された本家のファンから「こんなに杜撰で出来の悪いアスキーアートは初めて見た」といった反応が返ってきたことがあるので、「マインドフレア=烏賊兄弟AAがお約束」は、あくまでRoguelike内でしか通用しないと認識しておいた方が無難である。
 敵:*bandには[V]からすでにノーマルモンスターとして登場しており、凝視による知力低下、精神攻撃、脳攻撃、忘却と、いかにもサイオニック的なものが揃っている(ある意味Nethack以上にAD&Dのフィーチャーは完備していると言える)。しかし、知力や記憶の低下は一時的でさほど脅威ではなく、他のモンスターも行うため、インパクトはNetHackほど強くはなく、また階層としてはさほど危険ではないので、かなり*bandでの印象は薄い。また、[Z]以降ではクトゥルフ系が強烈な脳攻撃をかけてくる印象が強いため、まさしく空似の他人にお株を奪われることになってしまった。
 種族:[Z]からは種族として選択できるようになっている。AD&Dのファンはあれが選択できると聞けばのけぞるところだが、*bandでは無論のこと、種族のバリエーションの範囲内に抑えられている。モンスター名のときは「マインド・フレイアー」であったが、種族名の方はNetHack同様「マインドフレア」になっている。(この記事を読んだ板倉氏から説明があったが、種族名は7文字以内にしないと種族選択時の画面ではみ出すので、こちらの表記を選んだらしい。)精神系の能力が極端に高いが、非力である。[Z]系の超能力者は、特に終盤打撃に依存することになるので、(AD&Dとは異なり)マインドフレアは超能力者との相性はあまり良くない。もっぱらメイジ系に使用されているようである。また、レイシャルパワーで一応、精神攻撃が可能である。空腹充足の巻物がなく、種族ごとの栄養補給法がある[変]では、街の人の脳ミソズル出さないと生きて行けない……なら随分殺伐とすると思ったが、普通の食事で大丈夫のようである。



マウロタウロス Maulotaur 【敵】

 [Z]以降の*bandにはシューティングゲーム'DooM'から採られている要素が多いが、マウロタウロスはDooMのライセンス供与による同タイプのビデオゲーム、HereticおよびHexenに登場している敵キャラである。その名の通り、巨大なハンマー(Maul)を手に持ったミノタウロスのような姿をしている。このハンマーで攻撃する他、ヘビのような形をした火炎攻撃を呼び出し、操るという攻撃を行う。かなり耐久力が高く、ファンらはこのマウロタウロスがDooMにおけるサイバーデーモンに相当するものだろうと考察している。
 *bandには[Z]以降登場するが、[V]2.8以前のミノタウロスの強化版といったもので、さすがにサイバーデーモンほどに致命的な生物ではない。しかし、打撃は地震の強力なものであり、魔法としてプラズマやファイアーボールを用いることで原典の火炎攻撃が再現されており、ノーマルモンスターとしてはかなり危険な方に属する。さほど強敵でないものが多いHシンボルと思って油断すると意外に手間取ることも多い。



マエズロス

 →丈高きマエズロスのマン・ゴーシュ



マゴット The Farmer Maggot 【敵】

 アルダ世界中つ国ホビット庄東四が一の庄の畦更の老ホビットの農夫。妻、二人の息子、無駄に美人揃いの三人の娘、凶暴な3匹の犬と共に住んでいる。少年時代には東に住んでいたフロドは、茸を盗みに行ってこの農夫や犬に追い掛け回されて以来苦手としていたが、本編では道中のフロド一行を歓待する。長大な『指輪物語』の序盤を普通に読んでいく中では、端役のひとりにしか見えないが、慎重に読んでみると中々の人物であることがわかる。古森の謎の半神トム・ボンバディルとも互いに悪口を言い合う親友で、トムにホビット庄やブリー郷といった外の国の情報を伝える話し相手でもあるという。
 東の庄やブリー郷のホビットには、山や畑の動植物の名がついている人々が多く、日本語訳は原語では英語のままのそれを直訳していることが多いのだが(「山の下」「しだ屋」など)'Maggot'とは「蛆虫」の意であり、さすがに和訳はされていない。この好人物が何ゆえこんな名なのかは、明確な意図はわからない。
 Peter Jackson監督の映画版FotRでは、野菜を盗んでいるホビット達を追いかけてくる、怒声と振り回している鋤の先だけが登場。(黒の乗り手にバギンズの名を教えた場面のホビットも彼であるとも言われる。)
 *bandでは、[V]から初の地上ユニークとして登場。元々、スメアゴルともども、「序盤に珍妙な台詞を発するゲームのスパイス」として[V]に加えられたと思われる。キノコとか犬とか口走っているさまは、なにやら原作通りではなくどこか壊れてしまっているようであまりにも哀れである([V]時代にはちょっとしたファンページまで作られた)。移動速度はゆっくりなのだが、問答無用で殴りかかってくる。倒すと割と上質な品を落とすのだが、哀れすぎるので倒さないプレイヤーも、容赦なく倒してしまうプレイヤーもいる。
 [Z]以降では、他にもいる地上ユニークの一人となり、フレンドリー(友好的)モンスターで、向こうから殴りかかっては来ない。
 また、[V]以降のバリアントにマゴットの犬(くいつき、きば、おおかみ)が登場し、初心者キラーとして活躍するが、それぞれの項目を参照。
 ToMEでは、マゴットのキノコを回収するというクエストがある(フロドのみならず、ホビットにとって食用キノコは目の色を変えるほどの好物である)。うろつく犬を傷つけずに膨大なキノコを拾い集める、強さは要らないがひどく疲れるクエストで、キレたり操作ミスを起こさない忍耐力が試される。全般大味なToMEでは良いスパイスといったところかと意味もなくフォローする。

 →くいつき →きば →おおかみ
 →大長編ドラコえもん



マーシャルアーツ Martial Arts 【システム】

 出典:マーシャルアーツとは「武芸」の直の対応語であり、非常に広義では、この語の持つ非常に細かいあらゆるニュアンスを含め、この語が指すものを古今東西すべて指すともいえる。やや狭義では、素手の格闘技、東洋系の武術、など範囲が狭まっていき、最も狭義では、軍隊格闘術等の流儀のことを総称、あるいはさらにそのうちどれか一派を特定して指す意図で用いられることもある。ともあれ、一部のマニアを除けば最も使われるのは「徒手空拳の戦闘技術」という意味としてであり、ファンタジーRPG内でも使われるのはもっぱら武器戦闘に対する素手戦闘の意である。
 まったくの余談だが、アメリカのフルコンタクト・カラテの一種の(空手、ボクシング、テコンドーを折衷して作られたと言われる一種のキックボクシング流派)の通称として「マーシャルアーツ」が用いられる場合があり、格闘ゲームのキャラなどで流派が「マーシャルアーツ」と呼ばれている場合、おそらくはこの流派を意図していると思われるのだが、そういったキャラは大抵が他の我流その他と組み合わせていたり、あまりにもキャラクター特性にスタイルや一貫性がないので、武道ファンの間では「ここでのマーシャルアーツとは武道の総称で、”我流”を指している」といった意味だと読み取られてしまうことも多い。
 歴史的な武芸や素手戦闘や起源、すなわち古代ギリシア・ローマ競技格闘や達磨大師の話などはこのサイトの75%が埋まってしまうので省略する(→修行僧)。素手のみでの戦闘技術は古来より存在するものの、かなり単純な武器であっても、素手よりも遥かに有利であることは動かしがたい事実である。例えば、数多くの素手戦闘技術の原点が含まれる中国武術や古武術も、その多くは道具・武器を用いたもの(器械操法)を中心として組み立てられたものである(例えば、ゲームや漫画やアニメ等によくあるキャラのネットでの解説に「拳法だけでなく剣術にも長けた」等と説明されていることがあるが、元々ああいった中国武道のスタイルは、特に女性キャラに多いがモチーフが映画などで知られた"詠春拳"に見えることも多く(何代の孫引きなのかは想像もつかないが)、その場合、蝶剣ないし双棍が徒手の技術と共に組まれているのは当然のことでしかない)。また日本の剣術などの古流の武器戦闘術には、ほとんどに組打ちや体術が含まれており、これも武器戦闘を中心とした中の素手戦闘の一例といえる。つまるところ、武器戦闘が有利であることは知られた上で、様々な状況(組打ちなど)や武器を持たない日常的な状況などの戦闘に対応する術技として、素手戦闘は発達してきたといえるようである。
 しかしながら、フィクションの世界(たとえそれが戦闘状況を重視した作品や、RPG等でなくとも)の中でのマーシャルアーツは、もっぱら「素手戦闘のみを極めることで(対武器を含めて)最大の戦闘力を発揮しうる」とされるものであり、作内では実際にそれに相応する効果であることが多い。これは実際に素手で岩石などを破壊するカラテカなどから神秘視され、また誇張されたものといえる。”気”(→練気術師)などによって魔法的な必殺技を発揮するといったものから、そうでなくとも、彼らの拳は武器に匹敵する剛さを持っているということが大半である。
 典型的RPGなどにおいてマーシャルアーツが扱われる際は、多くは通常の「素手戦闘技術」(武器のない剣士がパンチ等で攻撃するなど)よりもさらに上位とされ、特定のクラス、ないし特定の技能や特技が必要とされることが多い。また、武器のダメージが一定(特技などで追加が上乗せされることはあっても)なのに対して、「レベルや技能が上がるごとにダメージが増大する、ないしその影響が顕著である」という特色のことが多いのが特筆に値する。これは、最初は単に人間の拳であったものが、鍛えれば鍛えるほど強力な武器の如くになっていく、という(素手技術の誇張表現として広く信じられている)点が再現されたものといえる。結果、最終的なレベルでは最大級の武器と同等となるといったバランスが多いが、さらに鍛えると武器を上回ったりと、ここでも誇張が再現されていることが多い。
 なお、これは修行僧の所にも書いているが、クラスの名が「修行僧」であって「格闘家」でない理由として、原語の「マーシャルアーティスト」という言葉は上記したように普通に現代にも使用される言葉であり、現代のスポーツ家を指す側面が強い。そして現代のマジシャンの使うのが手品や占いに過ぎないのと同様、素手が武器以上といった超常的な技を持つのは現代のマーシャルアーティストでなく、神秘の「修行僧」でなくてはならないわけである。
 システム:*bandにおけるマーシャルアートは修行僧などのクラスの素手戦闘のダメージ(および防具制限と非装備のACの上昇など)と言うことができ、[O]のドルイド(本来のドルイド(→参照)だけでなく、修行僧が混ざっているようである)などをはじめとして多くのバリアントに存在する。[Z]の修行僧の素手攻撃は、レベルが上がるごとにダメージが増大するというだけでなく、命中の値によって攻撃のタイプとダメージダイスが変動するというシステムになっている(レベルと命中値の大きさによって強そうな技の名が出てくる。最大レベルの修行僧が最大の攻撃を放つと「石破天驚」などと出たりする)。これは、抽象戦闘でマーシャルアーツを表現するTRPGのシステムによく似ている;例えば、格闘のウェイトが大きいルールでは何の技を使うか・使えるかを指定したり効果が決まったりといった非常に複雑なルールになっているが、もっと簡単なルールでは、命中のダイス目に応じてランダムに「今どんな技が出たのか」が決まり、具体的にどんな動きをしたか、どんな技を使ったかは後から想像する、というシステムのことも多いのである。
 なお[変]では修行僧などの特殊素手戦闘のクラス以外にも「マーシャルアーツ」技能があり、素手で戦った時に技能が上昇するが、影響するのは命中率のみである。上記の多くのRPGのような素手格闘の上位版としてのマーシャルアーツを技能で得られるというものではなく、あくまで実質は単なる素手格闘技能ということである。



マジック・ミサイル Magic Missile 【システム】

 出典:「魔ぁ女っ娘 味噌ぉー」と発音すると北米発音に近くなるといったことはこのさいどうでもよいのだが、妖精説話のひとつに「魔法の矢」「妖精の弾丸」(マジックボルト、フェアリーアロー、エルブンミサイル等)の伝承が出現した背景には、中世にそれと知らずに石器時代の遺跡を発見した人々が、散らばっている矢尻や槍の穂先に対して信じたことに発しているという説も有力である;すなわち、金属ではなく石、それも火打石や黒曜石などで巧みに鋭利に作られた矢尻が、柄の木製の部分が朽ち果てて先端だけ残っているのを発見した当時の人々が、これは妖精が、柄や弓さえも必要とせずに魔法の力で飛ばす百発百中の矢である、と想像したのがはじまりだというのである。こうした説話と共に、妖精の武器は木の実を飛ばす(→ガエボルグ)といった伝承も見られ、カマイタチ、静電気その他で生じた打ち傷や切り傷が、妖精の悪霊の魔法の弾丸であるとしばしば信じられた。
 のちの多くのRPGにおいて、初心者の魔法使いが揃いも揃って「エネルギーの矢」の呪文を最初に習得するという図式は、ファンタジーとして非常にいかがわしいものがあるが(あまりにも戦闘目的の都合があからさますぎる)エネルギー云々ではなく、上記の摩訶不思議な妖精の弾丸のような応用的な小技を覚えているというならば、いかにもありえる気がする。かつてのファイティング・ファンタジーやグレイルクエストのゲームブックには、小石を飛ばしたり多彩な矢や放電を飛ばしたりする「小技」的な呪文が充実していたものである。
 マジック・ミサイルはD&Dシリーズにおいて、魔法使系呪文の「最も基本的な直接攻撃手段」である(3edのキャントリップやアークメイジの呪力爆発などはひとまず置いておく)。魔法以外では防御できない(抵抗の余地もない)が、最も弱い防御魔法でたやすく防御でき、必ず狙いを外さずに(直線状に射線が通らなくとも)命中する。術者の能力によって威力(あるいは矢の本数など)は上がってゆくが、おおむねさほど強力ではなく、「地味で確実な攻撃手段」である。こうした特性は、他のルールとの整合性より、呪文それぞれに「独特の特徴」を与えることが重視されている、古いD&D系ルールの典型である。初期のD&Dルールブックでは、よりファンタジックに実体の本物の「矢」のようなものが魔法で作られているらしき記述やイラストもあったのだが、次第に「純粋なエネルギーでできた光の矢」であるという解釈の方が一般的になってゆき、ある時期から「力(フォース)」という一種の属性が明確になった(なお、幽体すなわち半〜非物質エーテルに対して最もたやすく影響することができるのがこのフォース属性である)。
 初心者の魔法使系クラスの基本的な攻撃手段であるが、ただし、このマジック・ミサイル呪文は、AD&D 1stや2ndのパワーゲーマーにとっては、詠唱時間が非常に短く、決して狙いを外さずに命中することから、ダメージ手段などよりも、敵の集中を乱したり物品等を破壊する手段としての方が遥かに重要とされている。
 以後のRPGや多くのCRPGでは、最も基本的な攻撃手段としてこのD&Dのマジック・ミサイルを踏襲したり参考にしている場合が多く、その特徴は「無属性の魔力攻撃」「狙いを外さない」等のどの性質を採ってどれを外しているかはまちまちだが、単体攻撃(元のD&Dでは対多数攻撃が可能だが、D&DのCRPG版を含めてより上級の対多数攻撃と差別化される面が大きい)やおおむね力も弱いが堅実なダメージを与える手段といった点は共通した傾向がある。WizardryのHALITOやDQのギラは実際は閃光や火炎属性の呪文だが、その位置づけからは研究者らは「マジック・ミサイルの一種」と分類することが多いようである。
 システム:元々オリジナルRogueに存在する「マジック・ミサイルの杖」は、 D&D系のMagic Missiles呪文とほぼ同じものである。HackやMoriaにもマジック・ミサイルの杖や呪文が存在するのは、おそらくこれを引き継いだものだが、同様に単に最も弱い魔法攻撃としての解釈であることが多い。一方、ローグ・クローンでは近距離(そのとき持っている武器)と同じ攻撃力のダメージを与えるという、全く異なるものになっている。
 *bandではMoria以来、メイジ系呪文の最も基本的なもので、その「基本呪文」としての重要性はおそらく他のどんなRPGにも劣らないものである。序盤はメイジはこれを連発することが即ち全てと言っても過言ではなく、メイジ系のプレイ開始には欠かせないマクロである。(*bandの「初心者」がマジック・ミサイルもしくは矢の発射のマクロのどちらかをはじめて組んだその瞬間に、その初心者は「初級者」へとレベルアップするといわれている。)中盤では威力がかなり冴えないものになるが、消費MPが非常に少ないことから、能力値のせいでMPがさっぱり伸びない弱小種族の魔法系や、また、主力呪文を使うMPが切れた後に、あるだけがむしゃらに連発されたりする機会も多い。メイジ系の長き友である。
 [Z][変]などでは直接マジック・ミサイルの呪文を用いるのはカオスや悪魔系の魔法領域に限られたが(他の魔法領域では、似たような性質で攻撃属性だけ違うものが用意されていることが多い)ワンドなどで、最も確実な無属性の攻撃手段として使用され、依然として直接のマジック・ミサイルの出番も多い。



魔人ウォーケン Walken 【敵】

 『ジョジョ』シリーズで有名な荒木飛呂彦の初期の、もとい、日本のアクションストーリー物でも指折りの傑作とすら評する声もある漫画『バオー来訪者』のラスボス。『バオー』は連載当時は人気がふるわず、中途で短縮して終了したというが、そのストーリーはそこまででも非常に綺麗にまとまっており、あたかも一本の映画のように、まるで違和感を感じさせない。このウォーケンも、ラスト近くのかけ足のような登場になるのだが、その性急さもこの作品の構成において欠点にはなっていない。
 ウォーケンはネイティブアメリカンのスクークム族の最後の生き残りで、いかにも野性的な容貌と体躯の持ち主だが、その実、分子運動を加速する能力を有する地上最強の超能力者であり、究極生物バオーとなった主人公の少年と壮絶な戦いを演じる。


 少年よ ある種の事がらは死ぬことより恐ろしい
 おまえの「肉体」や わたしの「能力」がそれだ………
 わたしもおまえも同じだ………「化物」だ!

 この手で直接 闇の彼方へと沈めてやろう
 苦しみはもう… …ない


 ほんの少ししかない台詞にもかかわらず、そのひとつひとつが人物の背景すらも浮かび上がらせ、荒木作品の例に漏れず激しい異彩を放って完全にキャラの人物像を立て、強烈な印象を残す。
 が、そのデザインはまるっきり永井豪のバイオレンスジャックそのまんまであり、出てくるコマすべてどこぞの石川賢マンガにしか見えない。
 *bandではユニークモンスターとして中堅上位の55階に登場する。見習や達人超能力者、クラスの「超能力者」的な能力ではなく、地震打撃と劣化ブレスのみを持っている。これは、あくまで原作漫画通り分子運動による分解攻撃能力のみを持つ超能力者、という解釈であろう。(なお、「熱いコーヒーはないのか!」とコーヒーを能力で沸騰させる名シーンは、アニメ(OVA)版では、コーヒーカップに映像を映して幻視する場面に変更されていた。こちらでは、分子運動以外にもESP的な「普通」の超能力も持っている解釈のようである)。
 余談だが、追加された直後の[変]のバージョンでは名前がただの「魔人ウォーケン」で、ユニークの『』カギカッコが外れており、うっかりユニークだと気づかずに油断して殺されたという事件が妙に多発したということである。



抹殺 Genocide 【システム】

 「一文字」を指定し、該当するモンスターをすべて(特に禁止されたものやボスキャラ以外)消滅させるという効果は、いかにも文字表示であるRoguelikeに独特なものに見え、他のファンタジーゲームのルール、また理屈的な説明には一切そぐわない(無論、D&D系の最大呪文Wishやそれ以上のTrue Dweomersでも同等の効果を得ることは不可能である、というよりWishの「不可能なこと」の例のひとつに挙がっているのがこれである)。Roguelike系のルールの中でも最も端的に「ゲーム的」なシステムのひとつといえる。
 こうした効果が実装されたアイディアは何に由来するのか、RogueがUNIXで動いていた頃のウィザード(上位ユーザー)コマンドのひとつに由来するという噂を聞いたことがあるが、定かではない。その最初期のUNIX-Rogue(ローグ・クローン等には存在しない)、Moriaや、NetHack1.0系(ダンジョンの分岐等はなく、現在のNetHackとは別物のRogue直系が色濃い)に既にこの効果を見ることができる。
 最初期UNIX-Rogueでは、1種の怪物を抹殺すると、その種の怪物の生成を封じるようになっている(1ゲーム通じて一種しか封じられず、別の敵を封じると前の敵は生成されるようになる)。NetHack系では、genocide(「虐殺」と訳されている)を行うとそのシンボルの怪物が同様に恒久的に絶滅するが、複数の種の怪物を虐殺することが可能で、これはダンジョン内のほぼあらゆる資源が「有限」であるNetHackの特徴であるといえる。一方で*band系ではMoria以来、単に「その時のその階層において、その時点で存在する」怪物が消失するだけである。(もしウィザードコマンドであったとすれば、「ある怪物が出てこないようなテストを行う」ためであったと思えるので、元々RogueやNetHackのような効果であったかもしれない。一方でMoriaの方は「ゲーム的」に調整されて入ったものだと想像できる。)バリエーションとして「周辺抹殺」や「万殺」があるが、これは純粋にゲーム的に考案されたものだろう。
 非常にゲーム的、ハッカー的なシステムだが、以後のRoguelikeにもしばしば実装され、RLの特色のひとつとなっている。例えば日本製RLのヒット作として以後多くのRLの原型になっている『風来のシレン』では、「ジェノサイドの巻物」が存在し、敵一種(一系統)の生成を封じるようになっている。この効果、及び和風世界のネーミングが多い『シレン』にあって、和風とは言い難い「ジェノサイド」というそのままの名前になっていることからも、『シレン』が初代UNIX-Rogueや、直接の原型であるNethackの影響を強く受けていることを特に明瞭に示している(なお、リメイクやシリーズ続編では、和風世界に合致せず、語感が物騒すぎるともいえる「ジェノサイド」でなく、「ねだやし」等に名前が変更され、効果も調整されていることがある)。しかし、非常に興味深いのが、この1ゲームを通じて1種というのが、NetHackよりも初代UNIX-Rogueに近いという点である。これは、『トルネコ』『シレン』を開発したチュンソフトが非常に古いRogueを含めたRoguelikeをよく研究していたことがわかる。一方シレンの前作である『トルネコの大冒険』シリーズでは、『トルネコ3』で「二フラムの巻物」にシレンのジェノサイドによく似た効果が割り振られている。ただし、『トルネコ』の世界設定のベースであるDQシリーズの二フラム呪文はアンデッドなどの特定のモンスターのみを追い払うものなので、内容的にはあまりDQの世界設定と合致していない。
 *band系ではスクロール、杖など使用する手段は多く、[V]ではメイジが呪文として使えるのが特徴のひとつとなっている(レンジャー、盗賊は抹殺は使えない。他バリアントでもメイジ系以外のクラスは抹殺には手が届かないことが多い)。しかし、「戦闘モノ」の漫画やライト小説ならば、こんな力を行使できる存在は「全能」「最強」の域に認定されるのは確実だが、*bandの深層においては何らそうではない点が、このゲーム世界の過酷さを端的に物語っている。現に、中盤から後半にかけて、元素魔法以外の攻撃手段が欠落してしまう[V]系のメイジなどは、比較的早い時期に習得できる抹殺を使いこなし、相性の悪い敵を事前もしくは出会うたびに片っ端から抹殺しないと進むことさえできない羽目に陥ることがある(強い魔法書や武器が早めに手に入れば別だが)。
 [変]開発途上当時のスタッフの話によると、抹殺の強さと無条件さが気になったとのことで、[変]においては抹殺を使える手段・魔法系統はさらに増えているものの、抹殺にはいずれも「抵抗」が可能なものとなっている。しかし、もともと抹殺という効果が「理不尽」なものであるので、システマティックな潔さを捨て去るのならば、「抹殺」自体を廃止して(スクロール等は残すとしても)他の「あたりまえの殺戮系呪文」に差し替えた方がよかったのではないかという意見も聞かれる。

 →*破壊* →ジュリアン鎧



麻痺知らず Free Action 【システム】

 もともとフリー・アクションは、AD&Dにおいて行動にペナルティーを受けるあらゆる環境、すなわち呪文等による遅鈍や麻痺の他に、空気や水の抵抗、地形などの制約を打ち消して「通常通りに自由に肉体行動を行う」能力である。(リムーブパラライズ(ディアルコ)などとは異なり、麻痺などを食らってから解除するのではなく、最初から跳ね返す能力である。なお、D&D3eでの戦闘時行動の区分ひとつフリー(自動)アクションとは関係ない。)水中、蜘蛛の巣、藪の中、暴風、真空中(それでいて、この能力は呼吸能力など基本的なものは提供しない)を気圏内と全く同じように行動するということになり、まず原理的に奇妙で、原理以前の問題としてもかなり珍妙な風景である。(しかし、*bandでの「麻痺知らずのガントレット」は手を覆っているにも関わらず手の動きを全く妨げず、メイジ系呪文を阻害しないというのは、確かにこの能力だからこそ説明できる点である。俊敏のガントレットについては別項目参照。)D&D系有名なアイテムとしてはベーオウルフが水中での戦いに使ったフランテング(実際は伝承では使っていないが。そちらの項目参照)や、水中でペナルティーなしに戦えるトライデントなどが、フリーアクションの能力を持った物品としてデザインされている。
 クラシカルD&Dではポーションなど極一部アイテムにしか存在せず、AD&Dでは呪文としてこの能力を付与するものが存在するが、麻痺などを避けるためだけに使用するものとしては、割と高いレベルの呪文であるため呪文に余裕がない限りはなかなか常備できるようなものでもなく(無論、ある程度以上のレベルでの戦術合戦=パワーゲームならば考慮されるが)結局、水中などの特殊な環境に入る予定や、麻痺に耐える必要がある強敵との対決があらかじめ判明している時に準備する程度のもので、他の対処手段もある以上、フリー・アクションが物品でまで必携というほどではない。
 が、たった一人で冒険するRoguelikeでは、単に麻痺を避ける一点のみにおいてすら、その重要性はまったく違ってくる。死や石化といった行動不能ペナルティー全般に言えることなのだが、他のRPGならば他者が治癒してくれるような状況でも、一人のRoguelikeでは自分が行動不能となればなすすべがない。NetHackや*band序盤(ともにさまよう目など)では危険であり、*bandの20階より下ではだいたい即死確定である。故に、*bandではAD&Dとはうって変わって、最も低階層で必須の「装備でそろえるべき」耐性とされ、そして麻痺を避けるという目的一点に凝集されたフリーアクションが[V]和訳で「麻痺知らず」と訳されたのも至極当然であった。(また*bandの麻痺知らずは、バリアントにもよるが必ずしも地形的ペナルティーを打ち消してはくれないし、彫像化や遅鈍のブレスなど完全な抵抗をもたらすわけでもないのでこの名が妥当に思える。)
 最も低階層の必須能力とはいえ、麻痺知らずを提供する物品やエゴアイテムは多く、必須の20階までに入手することはさほど難しくない。最悪モリバントの「盗賊クエスト」で入手ということになるのだが、おそらくそこまではしなくとも粘ればなんとか手に入るだろう。が、最初から持っている種族は無論のこと初心者のつまづきを減らしてくれるし、うっかり高レベルで麻痺耐性が抜ける注意をしなくてよいという点でもプレイしやすい。



マベロード Mabelrode the Faceless 【その他】

 顔なき者、無顔のマベロード。剣の王。マイクル・ムアコック『エターナル・チャンピオン』シリーズに共通して存在する「混沌の神」のうちの主要な一体。
 『エルリック』シリーズでは、しばしば名前が出てくるほか、法と混沌の激突する最終巻の決戦では、他の混沌神らと共に実体化して姿を見せる。ここでは「どこから見ても顔が陰になって見えない」という描写が見える。チャードロスやスローターと並んでいる所は「千もの魔術師がたばになっても太刀打ちできない」と書かれてはいるが、しかし、(エルリックがコルムに語った言葉によると)エルリックらの次元世界でのマベロードの勢力は、アリオッチ(や、おそらくピアレーやアルナラも含め)と比べるとものの数ではない程度でしかないらしい。
 しかし一方で、同じ混沌の神でも次元世界によっては大きく力が異なり、『コルム』シリーズの周囲の次元世界におけるマベロード(巻によっては「マベルロード」となっている)は、混沌神では最も強大な力をもつ「剣の王」であり、「剣の騎士」アリオッチと「剣の女王」キシオムバーグはその弟妹という位置づけになっている。そして「法の神」アーキンの助言によってアリオッチ、キシオムバーグと戦い続けるコルムは、最終的にはこのマベロードの直接の打倒を目的とせざるを得なくなるのである。
 『コルム』シリーズに登場するマベロードは、白い均整のとれた長身に薄いローブだけをまとい、長い金髪にその称号の通りの金の剣を持っているが、「無顔」の二つ名を示す顔はエルリックでの描写とは異なり、「目鼻ある場所をかわりに皮膚だけが覆っている」という非常に直接的なものである。
 *bandでは、まず例によって混沌の戦士などのカオスパトロンとして選ばれることがある。ムアコックの混沌神の例によって若干「無視」の報酬になる割合が高く、またその名ゆえか、物品が報酬として得られる場合がやや多い。
 バリアント中でもムアコックをテーマとするGumbandでは、ゲームの最終目的である最強のユニーク(→モルゴス →混沌のサーペント)に、このマベロードが据えられている。これは一応は『コルム』シリーズに準じているものといえるが、ムアコック作品で最大の敵を選ぶに際しては、「ある程度有名な混沌の神を最終の敵とする」という選択肢を優先した面がむしろ大きいと思われる。その純粋な能力では、モルゴスやサーペントと比しても非常に凶悪なものである。



魔法書 Spellbook 【システム】

 出典:実在の魔術における数々のグリモワールや、噂される魔道書(→クトゥルフ神話)については省き、ここではRPGおよびRoguelikeにおける魔法書に関する話題に絞る。また上位呪文書の名や領域ごとの特性に関しては個々のエントリーを設ける。
 古典FTの数々にも、いわゆる生得能力的な魔法の描写のほかにも、魔法使が「呪文書から」魔法を用いるといった描写は多く、ゲームにおいてもRPG以外でも、特に呪文書を用いて・取り替えて魔法を用いるといったシステムは数多い。なお、TRPG由来で「呪文書」は長期間用いられる魔法の書物、対して「巻物」は呪文書に比べて単独(か少ない)呪文・使い捨てといった区別がセオリーになっていることも多いが、(本来は巻物は単に書物の古い形態のひとつでもあり)呪文書が使い捨て・巻物が恒常的といったシステムのゲームも少なからず存在する。
 最初のTRPGである旧D&D/AD&Dの魔法使は、この呪文書に大きく依存するという点を非常に重視したものであるといえる;これらの魔法使クラスは、呪文を使うたびに忘れてしまい、記憶しなおさなくてはならない(記憶できる量はレベルに依存する)ので、どんな偉大な魔法使でも呪文書を決して手放すことができず、さもなくばほとんど無力と化すため、呪文書を守り(燃やされたり盗まれたりしないよう)自力で防護を施すことは必須となる(なお、聖職者は呪文の記憶は呪文書からでなく祈りによって霊感で授かる。後の版では準備の必要がないクラスも、一部呪文を呪文書なしで唱える特殊技能の類もある)。このD&D系の非常に奇妙なシステムの直接の由来は、D&D系の生みの親E.ゲイリー・ガイギャックス(→モルデンカイネン →ベクナ)が愛読したジャック・ヴァンスの著作、特に切れ者キューゲル(→盗賊)シリーズなどと世界観を同じくする『終末期の赤い地球』である。これらの作品には、魔法は非常に記憶力に負担がかかるのでどんな大魔法使いでもせいぜい数個の呪文しか頭に入れておけず、また使うと忘れるのでその都度「呪文を覚えなおさなくてはならない」といった原型が見られる。(なお、有名FTのパロディで構成された『ディスクワールド』(→観光客)の主役格のひとり魔法使リンスウィンド(→雑貨屋)が、巨大呪文ひとつが頭に入りこんだため他の呪文を覚えられなくなった、という点もこのヴァンスの魔法設定に由来すると思われる。)
 ちなみに、D&D系において呪文や呪文書の名前が、いかにも「魔法」らしい神秘的な謎めいた名前のものではなく、呪文の効果を身も蓋も無く直接的に示す2、3の英語の連語や、ときどきそれに頭に人名がついていたりするといった雰囲気も、ゲーム的なわかりやすさの都合のほかに、これらジャック・ヴァンスの著作にあらわれる呪文の名(「フェローヤンの二次的金縛り」など)を意識しているものと思われる。これらは直接的・間接的に以降のTRPG, CRPGにも継承され、特にRoguelike(*bandの魔法書の名や、特にCrawlの魔術の名など)にも見られる点である。(なお、言うまでもないが、ここから転じて、英語・言語全般へのセンスに疎い一部ゲーマーやライトファンタジー作者・読者が、これらのD&Dシリーズに由来する英語の呪文名そのままの「ファイアー・ボール」等、またはそれに似た横文字2、3語の組み合わせについて、「いかにも神秘(外来)の魔法・技らしい名前」であるとか、「プロレスやスーパーロボットの必殺技のような恰好いい名前」としてついているのだと信じ、自分でも同様の名前を技や魔法にそのつもりでつけていたりすることがあるが、これはとてつもない見当はずれと言わざるを得ない。)
 このヴァンスに由来するD&D系のシステムは、多分に魔法というものを、大魔法使といえども多大な手間と記憶の容量を「占拠」してしまうほどに、概して非常に大仰なものと位置づけているためもあるといえる。対して、以後のTRPGやCRPGでの、魔法使いと、かれらが冒険の最中に使うという比較的「容易」な魔法に対する表現では、呪文書は呪文・魔法を「習得する際」には必要であっても、習得した呪文は(ほぼ恒久的に)身についている、といった表現の場合が多く、その場合(少なくとも儀式魔法や大規模なものを除いた、いわゆるRPG的な呪文においては)記された呪文書を常に手許に、ひいては呪文をかけるたびに必ず必要とする、といった表現のことはほとんどない。例えばD&Dのアンチテーゼの代表であるT&Tでは、魔法は「超能力」であり、呪文書の類を必要とせず、習得は他の魔術師からの「教え」の能力を介する(もっとも、一部シナリオに魔法書の類が登場はする)。呪文のひとつひとつ=技能と同様に扱う類のシステムでもこうしたものが多いが、一方でBRPシステムの、CoCなどほぼ呪文を習得限りなもの(ただし習得自体は稀有で難しい)、ストームブリンガー5版のように両者の折衷(魔道書があり、Intと同数の呪文だけ「覚えておける」等)のようなものも存在する。D&Dの影響が強い初期のCRPG, Wizardryやファイナルファンタジー1などでも、呪文回数スロットこそはD&Dに似ているが、あらかじめ呪文書から記憶する必要はない(Wizardryには呪文表示時の'Spellbook'にそれが残ってはいる)。なお、こうした他RPGの影響もあってか、現在ではこのヴァンス著作そのものの「記憶すると忘れる」という魔法の概念が非常に特異であり、D&D系(d20)の一般性に対してあまりにも「非汎用的」と考えられたためであろうか、D&D 3.0eのルールブックには魔法使にせよ聖職者にせよ、準備時間(従来「記憶しなおす時間」とされていたもの)は儀式なども含めた「呪文の前準備の過程」すべてを含めたものであり、呪文を発動するのが「最後のプロセス」であるといった意味の記述があり、記憶・忘れるといった定義は希薄なものになっている。
 システム:Roguelikeでは、例えばNetHackでは、魔力のポイントを要するほかに呪文を繰り返し呪文書から覚えなおさなくてはならず、D&D系を強く引き継いでいるといえる。さらには、Moria/*bandでは、メイジ、プリースト系のクラスとわず、呪文を使えるようになるには魔法書からの呪文の「習得」が必要であり、特に以後の「準備」「覚えなおし」は必要ないものの、使う時には必ず手許に魔法書がなくてはならない、という、上記TRPGに比してもかなり条件の厳しいシステムになっている。Moriaでは基本4冊、[V]では基本4冊+上位5冊、[Z]系では領域ごとに基本2冊+上位2冊(多くの2領域のクラスは計8冊)という、相当に持ち物スペースを圧迫するものである。[変]のスペルマスターや赤魔道師などは習得する必要はないがやはり魔法書が必要である。
 Moria以来つねに手許に魔法書が必要とされたのは、特にMoriaでは元素攻撃などが強力で基本の魔法書しか存在しない(基本魔法書は元素攻撃で破損する)ため、プレイに緊張感をもたらすためには一度習得すれば終わりよりも常に手許に置き、燃やされたり盗まれないよう注意する必要がある、という形式が選択されたのだと思われる。しかし、実際の映像として、なぜ魔法書が常に必要なのか、プレイヤーの間では魔法書自体が魔法に必要な発動体・焦点具・触媒を含んでいるのではないか、といった推測も存在するが、盲目や明かりがない状態だと使うことができないので、やはり*bandの世界の魔法は(すでに「習得」していても、またどれほど初歩的なものであろうと呪文は完全に憶えられるものではなく)その場その場で呪文書を読み上げて使用する必要がある、と考えるほかにないのであろうか。



魔法戦士 Warrior-mage 【クラス】

 出典:剣(武器)と魔法の両方の達人は、伝承はおろか初期のヒロイック・ファンタジーにおいても何ら珍しいものではない。特に「魔法使い」と呼ばれる存在も(イメージによっても左右されるが)戦いでは剣を揮うことも、鎧をまとうことすらも珍しくない。
 余談であるが、古くからよく問われる疑問が、映画版LotRによってさらに「ガンダルフは魔法剣士なのですか」という表現をとって世に溢れ返っている。ガンダルフは「魔法と剣しか使えない『魔法剣士』」などではない。中つ国のイスタリは「地上に存在するありとあらゆる技術」を有しているとされており(そのうち人間らに理解できないエルフなどの技術が「魔法」に見えるに過ぎない)戦闘になればその中から「戦闘技術」として最も有効な「剣技」を取り出して使うのは至極当然のことでしかない。
 しかしながら、ロールプレイングゲームという、プレイヤーごとの「役割分担」を重視するゲームにおいて、肉体能力で接近戦を行うプレイヤーと知性で魔法を扱うプレイヤーを完全に分断する考えが生ずる。そして継続して安定した戦闘能力を持つ戦士の剣に対して、他の呪文同様に限定された用法・回数で広範囲の威力を持つ、火の玉や電撃などの「ダメージ魔法」という概念が生ずる。さらに、この分担された戦士と魔法使いの役割の両方を持とうとすることは、成長や能力の効率、装備(鎧を着ると魔法が使えない等)などで故意に非常に大きなペナルティが与えられることで、剣と魔法の役割の混合はきわめて意図的に阻まれる不文律が定着した。初のRPGであるオリジナルD&D(1974)のクラス分類時点から、戦闘能力にたけたFighting-manやCleric(支援や治癒を中心とする「僧侶系魔法」の使い手は、この時点で最初から物理的能力と両立している)に対して、Magic-userは物理的能力はきわめて低いといった役割分担となっている。一方、日本でも普及したクラシックD&DはOD&Dの簡略版で、クラスや種族が統合・簡略化されているが、このCD&Dの「エルフ」は、トールキンのエルフや伝承の英雄妖精をイメージしてかペナルティほとんどなしに剣と魔法の両方が扱えるが、非常に成長が遅く、またD&DであれAD&Dであれ極めて早い段階で成長が停止する。
 しかしながら、得がたいものへの憧れか、分断されたために双方に与えられた力がさらに際立ったためか、さらには前記の初期ヒロイックファンタジーへの憧れ所以か、剣と魔法(それも「魔法使い系魔法」「攻撃魔法」でなくてはならない)の両立に異常に魅了されたプレイヤーは数多く存在する。『ウィザードリィ』のサムライへの偏愛(日本のイメージや村正の威力というわけではなく)、例えばCRPGの質問掲示板に、「初プレイキャラで戦士+魔法使の能力を均等にキャラメイクしているがさっぱりうまくいかない」といった相談が持ち込まれ、なぜ初心者にも関わらずそんなほとんど進行不能なほど酷い組み合わせ(マニュアルを読めば不利なことが明らか等)で始めたのかと問われて「ウィザードリィの侍っぽいのをやりたかったから」などと、何の説明にもなっていない言い訳を口走るといった光景は頻繁に見られる。また、*bandでも初心者がいきなり「エルフの混沌の戦士」にこだわったりするのも、しばしばこの手の魔法戦士のイメージとやらに対する強迫観念の表れであったりもする。
 治癒や防御用と信じられている「僧侶系」の魔法は、魔法戦士の愛好家からは度外視されていることが多い。が、例えば呪文の種類が莫大なD&D 3edでは、僧侶系呪文でも強力なダメージ魔法を大量に得ることができ、クレリックやドルイドにはすでに接近戦能力もあるので、少なくとも『ウィザードリィ』のサムライ以上の「魔法戦士」としては十二分なはずである。にも関わらず、わざわざファイターとウィザードをマルチクラスし、論外レベルの鎧のペナルティーなどを押してまで「魔法使い系呪文」にこだわろうとするプレイヤーには、涙ぐましいと共に奇妙な共感を覚えずにはおられない。
 クラス:概して、*bandのクラスは、特定の能力に特化していた方が強力である。狂戦士然り、アーチャー然り、尤もいささか限度があってスペルマスターは無敵に強いわけではないが、やはり極めて強力である。[V]から存在するレンジャーは、ひとつひとつ検討すればかなり反則的にすべての能力が高く「何でもできる」クラスであるが、弱体化しようという話がまず出ないのは、何でも「普通程度」にできることは、何かの極端な特化に比べれば決して「強すぎる」わけではないからである。しかし困ったことに、レンジャーと同じような位置づけで作られ、レンジャーほど何でもできはしない上に、できることの能力も明らかにレンジャーより低いクラスがある。それが[Z]以降の魔法戦士([Z]和訳初期では「魔戦士」、後期では「魔法剣士」)である。
 ヘルプファイルおよびガイドには、「レンジャーは自然魔法に特化しているが、魔法戦士は武器と魔法の両方で一番になろうとしている」という、まさしく上記の魔法戦士への偏愛情をくすぐる表現がなされている。実際には魔法戦士はレンジャーではなく「メイジをベースに、肉体能力を若干上げ、魔法に制限をつける」という考え方でデザインされているようである。しかしこの制限が曲者で、まずは第一領域が必ず「秘術」になる。秘術は「存在自体が非常に微妙」な領域であるが、特に[変]では弱体化されている上に第二領域が不利になるので、第一領域が必ず秘術というのは既にペナルティに等しい。またレンジャーと違って第二領域にすべての領域を選ぶことができるが、レンジャーが選べなかった破邪や生命を選ぶならばまさしくプリーストを選んだ方が遥かに有利である。そして、習得はメイジに次ぎ(レンジャーと異なり)選んだ系統のすべての呪文を覚えることができる反面、失敗率が5%より下がらないのが致命的である。このため「呪文ひとつの成否これ生死」となる終盤では決して魔法に頼ることができない。打撃能力は能力値やHD,技能などでプリーストよりやや高い程度なのだが、終盤ではさほど大差がなく、むしろ入手物品に左右されると見てよい。プリーストは入手物品次第で打撃と魔法のどちらを主力にすることも一応可能であるが、魔法戦士は失敗率5%から魔法という選択肢がなく、打撃を主力にして魔法を最大限に補助に回すというスタイルに何としてでも持ってゆく他になくなる。
 結局のところ、「犠牲を払って武器と魔法の両立」すら実現できておらず、もはや前記した偏愛プレイヤーを「魔法戦士」という言葉・建前のみでひきつけるのが彼らの唯一にして最後の武器といってもいい。が、元来*bandはクラスや種族ごとの強さが別に均一ではなく、その中では魔法戦士は、致命的にクリアしにくい要因がある、勝利不可能というわけでもなく、特にゲームに慣れてしまうと少しの有利不利ならば少し手がかかる程度で何とかなる(特に秘術魔法は下位の「手段」がひと通り揃うため)。そのため、経験者上級者からも特に「弱く」見られているわけではなく、どちらかというと、せいぜい影が薄いクラス程度である。
 一方で[X]では、魔法体系自体がシンプルで他バリアントと異なるので一概には比較できないが、打撃・魔法ともに強力になり、文字通りメイジと戦士の中間あたりの位置づけを実現したバランスのよいクラスである。
 なおWarrior-mageという言葉は、海外RPGやその話題では日本での「魔法戦士」と同様の用法で使われることしばしばあるが、それ自体に確固たる定義や由来があるわけではなく、AD&D 1stのマルチ/デュアルクラスのキャラに対する無造作な呼び名(fighter-thief, mage-clericなど)に倣っているだけのようである。

 →秘術



魔法の施錠 Wizard Lock 【魔法】

 出典:魔術によって鍵をかける、扉や箱を封じるものは、一見すると、物語的な道具立て(合言葉で開く魔法の扉など)や、封印の術なども含めてありふれたアイディアであるかのようにも見える。しかしながら、RPGでの魔法使の用いるその魔法(しばしば、鍵を閉めるそのものの他に、手を触れずに扉を固めるといった下級呪文をも伴う)に対して、原型である最初期のTRPGが直接のイメージ元としたものは、例によって『指輪物語』の一場面からの直接のものではないかとも思われる。すなわち、FotRにおいてガンダルフ(→参照)とバルログ(→ドゥリンの禍)が扉を挟んで争った、ガンダルフが扉を(多分に魔法的に)封じようとし、それをバルログが開けようとした(魔法的か力づくかは不明だが、力の拮抗によってガンダルフを破滅させかねないほど、とあるので、魔法的なものを想像させる)場面である。
 初期D&D/AD&DのWizard Lock呪文は、扉や鍵を恒久的に魔法によって施錠するもので、下級呪文であることからも、上記のガンダルフの争いような大仰なものではなく、日常的な施錠のようなものを想定しているようにも見える。しかしながら、「ある程度の力を持つ存在、魔法的(異界などの)存在、呪文を使う存在は、(解除や開錠の魔法を用いなくとも)容易に開けることができる」など、なにやら非常に細かいルールが定められており(細かい内容は版や下級呪文によって大きく食い違う)バルログのようなものが押し開ける様を想定しているようにも見える(他に、異界の生物が現世の封印にとらわれなかったり、魔法使なら合言葉や技巧で開けるといった状況も考えられる)。なお、初期D&D/AD&Dでは魔法使のクラスはWizardではなくMagic-Userになっているが、にも関わらず'Wizard' lockという名になっているのは、多分に「魔法」や「魔法使」の施錠のみというより、Wizardという語の日常的広義(→ウィザード参照)のような、摩訶不思議で巧妙な施錠そのものを指しているという説もある(なお、現行のD&D 3.Xeでは呪文名はArcane Lock 秘術錠となり、解除や開錠の魔法以外では開けることはできない)。
 なおD&D系のようなものは原則的に錠は閉じるものの、扉や箱そのものを破壊されることには対応しない(やや難易度は向上する)が、TRPG『ソードワールド』のように施錠の上級呪文では扉そのものを硬化する場合もある(鋼鉄になったところでバルログ相手に役立つかは定かではない)。
 魔法の施錠は、一見すると非常に地味な魔法に見えるが、TRPGではそれこそ『指輪物語』のような敵の分断や逃走など、応用範囲は広く、海外のRPG小説などでも同様の場面が登場する機会も少なくない。反面、CRPGではさほど重視されないようにも見えるが、例えばNetHackでは分断や逃走の状況が生じる場合もあり、施錠の杖や魔法などが存在する。
 魔法:*bandでは[Z]系の秘術の「魔法の施錠」、ToME1の秘術領域の「魔法の錠前」などが存在し、「扉」を封じる下級の呪文である。*bandでも逃走や分断の状況は生じるが、特に深層になると扉を封じてもあまり有効とはいえないのと、いかにも「秘術」の技巧的イメージに沿うため、あまり強力でない便利的魔法の一種として秘術に加えられていると思われる。秘術領域の地味さ・渋さを出している要素のひとつといえるが、秘術領域自体が省みられることが少ないため*band中での存在感は薄い。



魔法の地図 Magic Mapping 【その他】

 「魔法がかかった地図」ではなく、「魔法をかけたら地図」である。
 地形を部分的に探知・感知するといった能力は、クラシカルD&D時代からのプレイヤーキャラクターの「ドワーフ」の傾斜や高度を探知する能力をはじめとして、他のTRPGを含めたよりマイナーな地下種族の特殊能力、あまり一般的ではないが多彩な呪文種を持つTRPGなどにしばしば現れる。しかしながら、探知魔法のたぐいの中でも、「オートマッピング」や「自動的に地図が完成」とまでいうような魔法やアイテム効果となると、いかにもCRPGの都合にあわせたものである。
 毎回フロアに新しく達するごとに地形が生成されるRoguelikeでは、恒常的なマッピングの意味というものは少ないが(NetHack系など地図が保存され、また固定マップが多いものにはやや大きいが)それだけにたやすく地図全図を与えることができるという側面もある。故にか、初代Rogueの頃から、その階の地図がすべて与えられるという魔法的(アイテム)効果はRoguelikeの伝統的な部分がある。隠し扉などを見逃すことはなくなり、ことに食料が厳しいRogueでは無駄な探索が減るが、またこれだけではアイテムやモンスターの位置は与えてはくれないという伝統なのでその面では頼りにはならず、ことに*bandなどでは他の手段でそれらを探知することが必須となる。
 *bandでは、Moriaの時代から呪文やアイテムで「魔法の地図」を与えるものが存在し、ことに呪文ならばほぼ無制限に使えるが、伝統的にこの効果では「1画面」分しか知ることはできない(→千里眼)。Moria以来*band系では1フロアの地図は1画面をこえることが多く、また 画面あたりの情報量も少ない傾向にある(部屋が広いことが多く、また通路も1シンボルでなく岩の間隙などで表現される)ため、他のRoguelikeに比べてもやや弱い効果といえる。それ以外の敵、物品、罠などの効果も他に頼らざるを得ないが、*bandには同時に他の探知もしてくれる呪文やアイテム効果も多い。「魔法の地図」だけならば無理をしてまで持つ能力でもないだろう。なお[Z][変]などではドワーフやニーベルングのレイシャルパワーは地形探知の類ではなく、「罠と扉感知」になっている。



守りのクローク The Cloak of Protection 【物品】

 Cloak of Protectionは元々AD&D 1stのマジックアイテム(防具につくエゴではなく、クロークとして特定で生成されるもの)で、鎧の上からもかぶることのできる外套(クローク)で単純にアーマークラスが良くなるというものだった。しかし、特徴としては、鎧が魔法のものでアーマークラスにボーナスがある場合、その鎧の方のボーナスとクロークのボーナスが重ならない、という点である。すなわち、優れた防具のマジックアイテムを持つ重装備のキャラクターではなく、元々鎧を着ないキャラクターに向いた物品であると言える。要は、特に高レベルで装備も充実したキャンペーンにおいて、D&D系のルールでは鎧を着られない魔法使いや、場合によっては盗賊(軽装鎧を着てもよいが、AD&Dでは着ない方がさらに有利である)のアーマークラスを無理やりフォローするために考案された物品のようである。
 *bandでは、Moriaの当時からアーマークラスを大きく底上げする物品として登場する。すなわち、酸などの元素攻撃で破損することのない恒久的な防御のボーナスである(それ以外の耐性などは持たない)。Moria/*bandでは、しかし魔法使い用というわけではなく、普通に重装備の防具のボーナスと累積する。これは一人で冒険する過酷なRoguelikeにおいて、潜るに従って厳しくなる防御をできるだけ急速に上昇させる手段として与えられているものだろう。とはいえ、魔法使い系などの防具に制限があるのはMoria以来*bandでも同じなので、それらの軽装クラスであればあるほどこの防御ボーナスの比重が大きい、という点はある意味元のD&Dと同じかもしれない。
 Moriaから[V]になると、さらにゲームは深層・過酷なものとなり、守りのクロークの上位互換のアマンのクロークその他が登場し、守りのクロークはもっぱら序盤に重宝する物品となったが、また[Z]系ではさらに多くのクロークのベースアイテムおよびエゴアイテムが追加され、ことに序盤でも、同様に元素で破損せずアーマークラスも大差ないエルフのクローク(→参照)がクエストなどでも容易に入手できるようになったため、守りのクロークの出番・存在意義は大幅に低下したといえる。Moria以来の伝統において現在も存在するエゴアイテムである。



守りの指輪 Ring of Protection 【物品】

 加護や防護の効果を持つ護符や指輪の類は、実在するその手の商売のうたい文句ものも含めて、いわゆる「マジックアイテム」では最もポピュラーな発想のうちのひとつといえ、ほとんどのTRPG/CRPGには、じかに直接攻撃からの防御、回避能力を上昇させる護符や指輪の類が、さまざまな設定や説明、効果とともに登場するものといえる。
 が、旧D&D系の「リング・オブ・プロテクション+1〜+6」というあまりにも直接的な名称の魔法の物品は、装備すると数値の強化ボーナス分、無造作にアーマークラスが良くなるというものである。中にはセービングスロー(抵抗判定類)にもボーナスがあるもの、広範囲(周囲3mなど)に防御をもたらすものもある。なお、特にAD&Dではこの強化ボーナスが「鎧のボーナスと累積しない」となっているため(→守りのクローク)鎧を着られない、または薄いキャラクタークラスの救済措置という側面が大きい。
 「アーマークラスを上げる」という以外の一切の説明のないこの指輪の、その守りの原理、前記したような加護や防護のうたい文句のどれに相当するのかについては、旧D&D系時代では(特にアーマークラスが敏捷性と堅固さを総合した値であるD&D系では)鎧を堅くするのか、敏捷性を上げるのか、バリアーのようなものなのか、純粋に魔法的に運勢を改編するのか、等諸説があった(なお、透明などの他の原理で防御をもたらす指輪は、別に存在する)。が、D&D3.Xeではいわゆる「反発ボーナス」と定義され、魔法的に攻撃をそらすような作用をもたらすものとされる(3.Xeでは鎧ボーナス等とは重複する)。
 言うまでもなく、AD&Dを踏襲するNetHackでも全く同じ効果(ただし、ACを良化するのみ)の「守りの指輪」が存在する。こちらはD&D系ほど重複の制約がないが、*band系同様に指輪のスロットが貴重であるため、他に使用する指輪がないのでもないかぎり、省みられることは稀である。
 *bandでは、守りの指輪は[V]の時点ですでに存在し、おそらくD&D系を踏襲したものと思われるが、微々たる底上げ効果という原典とは異なり、単独で並の鎧ほど(主要な階層では主に十数前後のACへのプラス値が主となる)の防御効果が得られるものとなっている。これは、元来ACが低いクラスなどに対応しているというほかに、指輪のスロットの値が大きい*bandにおいて、さほど上位の指輪ではない守りの指輪にせよ、それなりの価値が持たされているものと思われる。



マムシ Copperhead snake 【敵】

 カッパーヘッドとは、アメリカマムシ(スナクサリヘビ)を指す英語であるが、日本のマムシも英名Japanese copperheadであるため、日本の蝮を想像しやすいここでのマムシという訳語は、手っ取り早く実体を想像するためのモンスター名としては、概ね妥当と思われる。
 クサリヘビはかなり生息域が広く、大型のものには太く姿も恐ろしげなものも多い毒蛇である(クサリヘビとは鎖を思わせるまだら模様のことが多いことからこの名がある)。大きな毒牙を持ち(口をとじると折りたたまれるという機構が有名である)特徴的な三角形の頭に溜め込んだ毒を、咬んだ対象に大量に注入する。クサリヘビの毒は神経毒ではなく、分解酵素を主とする出血毒で、咬まれた部位に直接に腫れなどが起こり、また血によって毒が回るに従って、組織・器官がじかに被害をこうむるというものである。
 アメリカマムシはおおむね1m前後までで、生息数が多いため、咬まれたという事故は多発するが、クサリヘビの中では毒性は弱い方に入り、死亡にまで至る事故は稀とされる。ニホンマムシは50−70cm前後で、毒は強いが小型のため(処置が適切であれば)死亡率は低い。気性も大人しく、通常は小動物を捕食するが、胴体が太く頭が角ばっている姿の恐ろしさもあって、日本では「代表的な毒蛇」とされ、「蝮」が武将や策士、忍者、芸人の通称など、比喩に使われることも多い。
 RPGでは一般に、毒ヘビとしてはクサリヘビ科全般を指す「viper バイパー」という名で(「ガラガラヘビ」等とは別に)データが存在することが多い(「カッパーヘッド」は、そのうちの種類の名として書かれていることもある)。*bandにはviperというデータはなく、初代Rogueの毒ヘビはガラガラヘビだが、NetHackにはD&D系でメジャーな初期モンスターである「穴ヘビ Pit Viper(穴に住む等のヘビではなく、頭に赤外線探知用の窪み pitのある種。日本ではハブ)」が登場する。
 *bandでは、「マムシ」は初期バリアントから「基本」の、低階層のノーマルモンスターの一種である。世のRPGでは動物類は強め、特に大蛇などは最序盤よりは若干上位のモンスターとなっていることも多いが、*bandでは特にそんなことはない。序盤では「白ヘビ」「黄色ヘビ」など、無毒の蛇が並ぶが、階層を下っていくとこのマムシが最初の「毒」を持つヘビといえる。それ以外は直前の「灰色ヘビ」などよりはパラメータも低いので、一応毒には油断しないでおく、といった程度である。

 →はぶ



魔力充填 Recharge Item 【システム】

 RPGに登場する物品には、特に回数制限がないものや(比較的)回数制限が緩いもの、時間や施設等の手段で充填が可能なもの、何日や1シナリオ(1キャンペーン)に何回といった回数制限の永続的アイテムのほかに、回数制限を使い切るともう使用できないという使い捨てのタイプの物品がある。伝承の定番「三つの願い」等に由来する願いの指輪などをはじめ、旧D&D以来、以後のRPGでも主にワンドなどにその性質をあてていることが多い。
 こうした物品は古いTRPGの大抵には現れるものの、最充填する一貫した手段(魔法など)の類は存在しないとしていることが多い(なお残り回数を知る手段がないとして、臨場感を高めているゲームもある)。AD&Dなどでは、途中まで使い切ったワンドなどに再充填するためのルールもあるが、一般に(得られる効果に対して)かなり困難であり、労力も要する。多分にこれらの物品は、使い捨てであるというそれ自体を特徴としている面がある(「三つの願いの指輪」などは、簡単に再充填できたりするとわりと興ざめである)。
 故に、Hack系と*band系のいずれのRoguelikeにも、回数制限アイテムの充填手段が存在することに対しては、確実にはその因を断言することはできない。しかしあえて推測を挙げていくと、回数制限・使い捨てのアイテムの、ゲーム内での「比重が大きい」ことが挙げられ、その活用手段が拡張されているとも考えられる。*bandの原型であるMoriaでは、D&D系から引き継いでいる回数制限制の物品でも、主要なタイプのひとつ「1日に何回」といったタイプの物品がそのシステム上存在せず、単純に回数制限のワンドとスタッフしか存在しない。[V]以降のAngbandにならば、1日に何回に相当するといえる物品として、数百ターン置きに一度発動可能といったアーティファクトの発動効果やロッドがあるものの、Moriaの当時はアーティファクトもロッドも存在していない。NetHackでは、D&Dから採られた物品であっても、スタッフやロッドであったものが杖はすべてwandへと統合されており、また他の「一日に何回」といった物品でも、回数限定制や逆に無限に変更されているものも目立つ。システム上で回数限定制に統一された結果、充填の魔法の重要性も増したとも考えられる。
 また、Moriaでは、ワンドなどの使い捨ての魔法の道具は、特にメイジ系にとっては(MPが切れた際の緊急手段など)比較的重要な生存手段となっている。古いTRPGのほぼボーナスアイテム(手に入れば・偶然持っていれば運がよい)的な魔法道具と異なり、重要な恒常手段としてワンド等を見た場合、地下に長期間いることが多く、確実な補充も難しい魔法道具を充填しつつ長期間使用するという戦術になっていると言える。
 NetHackではさらに特に、このゲームではダンジョンとその資源が「有限」であるため(ボーナスアイテムでないという意味ではより顕著である)物品を「再利用」するという考え方はより自然といえるだろう。
 *bandにおける充填(Recharge Item)の魔法は、NetHack同様の充填の巻物のほかに、Moriaの時点から各レベルの魔法書にRecharge Item I, IIといった徐々に強力になる呪文が存在する。[V]系でもほぼ同様である。[Z]系でも割と多くの魔法領域に、さまざまに名を変えて充填効果を持つ魔法が存在している。特に強力な物品(ロケットの魔法棒など)が存在するバリアントでは、その物品と充填魔法だけで強力な攻撃手段になりうる。深層ではスタッフ等の魔力を吸収する敵も多いため、充填の魔法の有無でかなりの差があるといえる。



マリリス Marilith 【敵】

 元来はマリリスというのは「単一のモンスターの種族」を指すものではない。AD&D 1stのデーモンは混沌の生物であるために、実に個体ごとに千差万別の能力・外見を持つとされるが、そのサンプルとして、典型的な能力とデータが6種類だけ示され、それぞれに「I類〜VI類」という無機質なデータ名がついている。そのうちの「V類」が、大まかに多数の腕と蛇の下半身を持つ悪魔で、いわばインドやギリシアの水神の眷属やクトゥルフ神話のノールなどを出す場合に使用するデータの通称、ということである。また、各種のデーモンの「形状」ごとに通称(または個体名や、召喚などで真名(トゥルーネーム)が必要な時のための名の例であったもので、モンスターの種族名ではない)のようなものが別にあり、type Vのそれのひとつが「マリリス」である。
 これらのデーモンの通称は、例えばマリリスの場合はペルシアやインドのマリーシなどから由来しているようだが(『ファイナルファンタジー』などのD&D系知識なしで書かれた解説などに、ヘブライの「リリス」が元と思われる、と書いてあることがあるが、綴りの違いなどからその可能性は非常に低い)基本的に割と出鱈目語の創作のようである。(なんかトールキンのバルログっぽいような奴(type VI)のひとつには「ベイラー(バロール)」という名がついている。なお、デビルの方はこれらとはまた違った命名法になっているが、これは別に解説する機会があるだろう。)
 が、まだ話には続きがあり、AD&Dでは、ある時期から宗教的問題によって「デーモン」という語が使えなくなったので、「typeいくらのデーモン」という表記を止めざるを得なかった(デーモン自体は「タナーリ」という謎の語になった)。同時に悪魔類などは実際の伝承などではなくAD&D独自のクリーチャーを設定する雰囲気の動きになり、種族の名というわけではなかった「マリリス」「ベイラー」などはAD&D 2nd以降、そのタイプの単一種族のモンスターの正式名称として扱われるようになった。(ベイラーは、バルログという名が使えない一方でtype VIも駄目という板ばさみになったものだから散々な話である。)ちなみに、NHコミュニティで一時流行した某所の「タナーリ戦隊マリリスV」というパロディは、マリリスがかつて'Type Vのデーモン'であったことにも由来するに他ならない。
 D&D系(ついでにNetHack)でのマリリスは、腕が6本あることから、多段攻撃モンスターの代名詞であり特に定番である。6回攻撃したり武器落としを仕掛けてきたりと、非常に接近戦をしたくない怪物だが、タイプVはかなり高級なデーモンで、魔法抵抗力も高くそうそう遠距離戦もできない。ちょっとした腕力がある戦士は抱きついて格闘戦(それでも有利とは言えないが)に持ち込む風景も見られる。また大規模な設定では、ベイラー(タイプVI)に次ぐ力をもつマリリスは、その武器戦闘能力も生かして、デーモン(タナーリ)の軍団の武将だったり指揮官だったりする。
 なおAD&D 1stよりも2nd, 3edのマリリスは遥かに強力であるが、これは全般的なインフレの他に様々なデーモンの総称から正式にタナーリの指揮官を特定する位置づけになったためもあるようである。NetHackのマリリスは1stのデータの写しなので、2ndのベイラーに近いバルログに比べるとレベルはかなり低い。
 *bandには、[V]をはじめ、[O]やEyangbandなど[V]のモンスターリストをそのまま引き継いでいるバリアントにのみ、マリリス(や、AD&Dタナーリのヘズロウやヴロックなど)が登場する。階層はだいたいAD&D 1stのベイラーとの力関係通り、「レッサー・バルログ」と同程度ほどである。[Z]やそのリストを引き継ぐ[変]やToMEでは、AD&D独自のこれら天使悪魔は除かれ、天使の方のみが名前のみ差し替えられて入っている。



マーリン Merlin of Amber, the Prince of Chaos 【その他】

 出典:史上最強のウィザード、マーリンがいかなる神話や伝説のキャラクターを直接の原型とし、いかにしてその伝承が形成されたかは、まったくの霧中にあるという。一説はミルディンと呼ばれるウェールズの預言者や詩人がその原型であるとし、また北欧神話におけるオーディンの性格やサガにおける役割の類似も重要とされるが、最終的なケルトのマーリン像はそれらからは確実にかけ離れており、どれも決定的な原型と言うには関連が曖昧に過ぎる。間違いないのは、少なくとも欧州の史前の霧が晴れる頃までには、ドルイドやウィッカを中心として(後代にはおそらくゲルマンも含む)おびただしい魔法使(ウィザード)や小神(ダイモン)と、それらの数々の伝承がただひとりのドルイドへと結集し、想像を絶するほどの絶大な魔力と伝説を背に負ったケルトの魔人像が形成されていたということである。(しかも、民間伝に不意に「神」ではなくそれほどまでの「魔人」の伝承が出現する必然性が一体何処にあったかといえば、これも霧中なのである。)
 しかし、トールキンが嘆いているように、ケルト民族の世界観はその後のイギリス史とは完全に分断される。そしてアーサー王の物語は、実質上ヨーロッパを経由して語り継がれるうち、ドルイドの要素はキリスト教の思想と反異教性にほぼ完膚なきまでに押さえ込まれ、もしくは潰し尽くされ、定本であるマロリー本をはじめとするいわゆる「アーサー王伝説」には、マーリンという存在はその残り糟程度の役割や出番、逸話としてしか残留できなくなるのである。日本では、一部のゲーマーが定本やその参考書の表面で触れる程度の機会しかなく、結果「予言ふたことや姿変え程度しかしていないのに、これの何処が大魔法使いなのか」といった、極度に薄い印象しか持たれないのはこうした事情による。「アーサー王伝説」でしか知られていない日本その他に対して、既に文化そのものにマーリンが浸透している旧ケルト文化圏、例えば数々の怪奇現象や自然現象が「マーリンの魔法の名残」とされる伝承は、西欧各地、無論ウェールズには異常なほどに密集しているが、こうした状況は日本で知られるマーリンからは想像だにできないだろう。
 「アーサー王伝説」の定本の類に残っているマーリンの生い立ちは詳しくは専門のサイトに譲るが、貴婦人が大気の夢魔(いわゆるインキュバスだが、サタンとされる場合もある)により身篭った子で、キリスト教の聖者による洗礼を受けたため白魔術師となる(これは、強大な邪神=異教神が変化した存在であることや、異教と白魔術の技を併せ持つ点など、様々な意味が読み取れる)。帰還したブリテン王の一族を三代にわたって助けるが、定本に明記される活躍は変身(マーリンは伝統的に14歳と80歳の姿を持っている)してのわずかな助言が殆どで、善の賢者というよりは単に狡いのみであり、またアーサー伝説の後半ではまったく姿を消す(妖精少女ニムエ(ヴィヴィアンその他と混同される)と恋におち囚われたと別に語られるのみである)といった、ほとんど伝聞の一部程度でしかない。
 そうした曖昧な伝承の残滓以上に、海外でのマーリン像に強い影響を及ぼしているものに、スペンサーの著作によるものがある。アーサー王の武具、「宝剣エクスカリバー」や「赤い龍と冠の盾」などを「作ったのがマーリンである」との説は、スペンサーが採ったために有名になったものである(マロリー版等とは食い違い、「アーサー王伝説」においては主でない説である)。またNetHackにもある遠見の「マーリンの魔法の鏡」や魔法の水盤も、スペンサー以後マーリンとは切り離せない存在となっている。伝承物語などで画像化される老人の姿のマーリンは、「白髭に長いローブと、星座が描かれたとんがり帽子をかぶっている」のが通例であるが、これは言うまでもなく、中世以降の上級の占星術師の扮装で、アーサー王伝説当時は無い。伝説をできるだけ時代背景に沿って描いた映画等では、マーリンはドルイドの扮装のことが多い。
 さて、ロジャー・ゼラズニイがアンバー後半シリーズの主人公として選んだのが(そして、前半シリーズの時点からそれを見越して登場させたのが)このマーリンという名であった。ゼラズニイのマーリンは、(アーティファクト解説を出ない程度でのネタバレを含むと)アンバーの九王子コーウィン(アンバー前半シリーズの主人公 →参照)と、混沌の王女ダラ(混沌の王族だが九王子の血もひく)の息子で、混沌の宮廷の時間は均一ではないため、「まだ生まれていない」はずの前半シリーズでもわずかに登場する。宮廷生まれだが、とある事情(前半シリーズ)で冷や飯喰らいとされたためもあり、後半シリーズでは「現代の地球」という世界に住み着きコンピュータ技術者となっているが、やがて例によって多元宇宙をめぐる事件に翻弄されてゆく。マーリンの用いる魔法とコンピュータ(「パターン」をプログラムして「ゴーストホイール」と呼ばれるAIを製作する)描写のアイディアの数々はあまりにもシャープかつ絢爛であり、イメージの氾濫に溺れた80年代(SFに限らず)の中でも真骨頂といえるものであろう。
 マーリンの伝承との関連は、表面的な部分だけでも、アンバーと混沌の王族の混血(血筋は非常に複雑なのであるが)という点が、夢魔を父にもつ伝承マーリンをまずは思わせる。アンバーのマーリンは、母ダラの方が混沌の王族=魔神ともいえるが、コーウィンもドルイド神と黒銀衣からのサタンのイメージを強く持つ。
 また、マーリンが「アンバーのパターン(トランプ)」と「混沌のログルス」の両方の魔法(→パターン、ログルスの項目それぞれ参照)を使いこなす点は、彼がドルイド僧からキリスト教魔道の白魔術師へと推移した背景とその両義に他ならない。なお、マーリンはどちらかというとログルスの方を使う場面が多いが(ログルスという新しい要素が、後半シリーズの売りであるためもある)どちらの使い手としても、パターン使いのフィオナや、ログルス使いのマンドールには何歩か譲るような印象である。伝承のマーリンは、湖の妖姫フェイとドルイドのブレイズらによって育てられ魔法を学ぶが、これもアンバーのマーリンがフィオナ(ファイ)とブレイズ(アーサー王伝説の定本にも、王らの活躍を書物に残した賢者として名前が見られるが、アンバーのブレイズのシンボルは「開いた書物」である)から魔法を学んだ点にも対応する。
 概して言うと、ゼラズニイのマーリンは大魔法使いではあるが、「現代っ子感覚の若者」で、みずから聖剣をふるい奔走するヒーローであり、特にアーサー王伝承以後のほとんど自ら活躍しないマーリン像とは、大きくかけ離れたように見えるであろう。それでいて、深読みすればするほど伝説や知られざる背景に関する緻密な隠喩が垣間見えるという、他の引用の名(オベロンなど)と同様、無数の神話と伝承を消化しかつ錯綜してちりばめられた存在であると言える。伝承マーリンの持つ最大のウィザードとしての名と、その錯綜した背景が、その魔法と現代のハイテクウィザードの技、複雑な生来・翻弄される命運にたくみに投影された、ゼラズニイかつアンバーならではの再生成の極致と言える。
 その他:前半シリーズのコーウィンと違って、マーリンは[Z]においてはユニークモンスターとはなっておらず、名前がマーリンのショート・ソード(→参照)のアーティファクトに見えるのみである(しかも、これも重要な物品かどうかは疑わしい)。むしろ、ランダムと同様に、プレイヤー側がマーリンとしてプレイすることを想定しているとも考えられる。[Z]開発側は、アンバー後半シリーズに関してはやや否定的な意見を示しているので、積極的に言えない面もあるのだが、それでも(これはネタバレ的でもあるが)[Z]系において最終目的として手に入る物品のひとつが『混沌の堂々たる鉄冠』であることからも、マーリンの歩みが意識されている部分もあるのではないかと考察できる。[Z]の板倉氏が考察しているように、「カオス魔法」は[V]の破壊系の引用の他にも、マーリンのログルス魔法をイメージしている部分も多く、アンバライトメイジでカオスとトランプを選ぶとマーリンのイメージに近くなる(混沌の王族という種族がないのが残念だが)。ただし、[Z]240系以降では重い武器を持てず[変]ではスキルが上がらないので、メイジではそれらしい武器を使うことができないため、原作マーリン通りのイメージが難しくなった。
 なお、[変]のランダムアーティファクト名に入っているのは「魔法使マーリン」であり「混沌の王子」の方ではないようである。

 →混沌の王子マーリンのショート・ソード →フラキア
 →ログルス →混沌の王族
 →ピップ →アンサロム →エクスカリバー・ジュニア



マンティコア Manticore 【敵】

 合成動物の怪物の中でもいわゆる悪役として主要なもののひとつ。詳細は伝承専門サイトに譲り省くが、クテシアスやプリニウスなどがペルシアからインド、またさらに東に生息する凶暴な怪物として言及した怪物である。プリニウスによるとライオンの体に人間の顔、サソリの尾と蝙蝠の羽があり、だいたい後代のバリエーションもその域をあまり出ない(なお、サソリの尾でなく瘤状の先端に多数のトゲが生え、トゲを発射する(D&D系など)となっていることもあり、これはフローベールの小説が元であると言われている)。その名はペルシア語で「人食い」に由来するというが定かではない。じかに神話の血脈に属する生物ではないが、神話がようやく整理された頃と同じほどには古い怪物だとはいえる。
 凶悪な鳴き声、ことに人間の声を真似たような吼え声を発するという部分は、例えば日本人がトラツグミの鳴き声だけから、鵺(ぬえ)のような手のこんだキメラ怪物を想像してしまったような、純然たる「暴走しすぎた想像力」の産物を思わせる。ことに東国のような異文化の珍奇・奇談の風がそれを加速させた背景を思わせる。
 古典的なファンタジー物語では、マンティコアはこれら「恐ろしい怪物」としての言及からか、かなり強力なり、物語上も重要となっている「定番」のひとつといえる。ゼラズニイの『アンバー』シリーズでは、序盤の山場というあたりにアンバーの宮廷を攻撃する謎の勢力の手勢として登場する。ここではマンティコラという古風な発音になっているが、普通はアンバーの近くでは見られない類の生物といい、これはギリシア神話直接由来のようなより古い生物ではない意味とも、または単にアンバーに関係が深いケルト系の幻獣とは異種というだけの意味とも考えられるが、どちらにせよ幻想動物が珍しくないアンバー近くで見られない、ということは、非常に「混沌的」な怪物であるという位置づけになる(結論からいうと”混沌の宮廷”の勢力に呼び出されてきていた)。かなり強力な怪物で、主要人物にも重傷を負わせ、アンバーの軍勢を圧倒する。直接に兵士を倒す描写が目立つのは、前述した初期のマンティコアの出典に「ひとつの軍隊を食い尽くす」といった形容があるのをゼラズニイが意識したと考えられる。
 マンティコアは、『魔法の国ザンス』1巻や『ソーサリー1 魔法使いの丘』の表紙絵であったりするので憶えられているかもしれないが(などと言って納得してしまった人はひとにぎりのレトロ翻訳FTファンといえるが)実際にソーサリー1では大詰めのボスキャラでもある。E. R. エディスン『ウロボロス』において、兄弟を救うため秘境を探し求める名君ジャス王と伊達男ダーハ卿が出くわし、苦戦するのもマンティコアである。
 これらの例からも、「ドラゴン」ほどではないにしろ、「中ボス」「前半ボスキャラ」等として、非常に凶悪で目立っていることも多いといえる。これらの小説や伝承での扱いを知っていれば、まだしも中レベルでの山場に使用するなどとこだわるかもしれないが、ゲーム(RPGなど)においては、単なる中レベルのモンスターとなっていることも多い。姿は同じでも、強さや知能の高さ、魔力などもまちまちである。あるいは、「凶暴な怪物」であることがかえってストーリーなどに影響しにくい(ガーディアンとして等以外は)と見なされたのかもしれず、また初期のクラシカルD&Dで、著明なモンスターを比較的初期(低レベル)のルールで解説した結果、インフレから取り残されたといった状況になり、その影響で生じたイメージもあるのかもしれない。
 *bandでは、どれかといえば最後に述べたような、さほど重要でない中レベルのモンスターの位置に収まってしまっているといえる。30階のノーマルモンスターで、一部RPGのような狡猾な老人の知能による魔法を使ってくるというわけでもなく、かといってまた別のRPGのようなサソリの毒やトゲの飛び道具を使ってくるといった能力もない(Unangbandだけは1発だけ矢を放ってくる。しかし他はどれも、打撃もすべて通常攻撃である)。[V]以来ほとんどのバリアントに登場するが、能力は皆こういった感じでどれも変わり映えもしない。



ミイラ Mummy 【敵】

 出典:ミイラとは生物の死体が乾燥によって非常に長期保存される状態の一種やその通称を指す。死体が腐敗よりも急激に乾燥する乾燥地帯で自然に生ずることがあるが、これが乾燥地帯で古くから知られていたためか、エジプトや南アメリカ、アジアなど各地で人為的に作られることも多かったことでも知られる。また極北でも冷凍乾燥によるミイラが見つかる。なお日本語のミイラ(木乃伊)はポルトガル語、mummyはその元のオランダ語であり、乳香(ミルラ)や瀝青(ムミヤー)等に辿る説がある。
 古代エジプトのミイラは、死者がのちに復活する(エジプトの死後についての哲学が盛んであったのは「死者の書」などからも周知の通りである)という信仰のもので、そのさいの魂がふたたび同じ死体に戻ることができるよう保存するという目的などが推測されている。さらに新王国時代に至ると、王族だけでなくかなり一般にもこの意識と習慣が広まり、数億体に及ぶ死体がミイラとされたという(ただし、身分によって製法の質に差があり、当然これは保存状態に影響した)。ミイラの製法や化学の詳細に関しては専門のサイトを参照されたいが、高級なミイラの場合は臓器は取り出して「カノープスの壷」と呼ばれる神々を象った壷に収め(これは臓器が水分等の都合から死体全体の腐敗を招きやすいためである)死体は薬剤(炭酸ソーダ水や粉末)で処理し、砂漠の熱で乾燥させた。(現代人の目から見れば、「魂がまた戻れるように」という保存法としてはあまりにも粗雑と笑うかもしれない。だが、現代でも死体に対して、将来(死因の)治療法、ひいては蘇生法が見つかると信じて「超低温に冷凍保存」等を行っている例が少なからずある。はたして現代のこれらの手法は、復活の現実性に対して「粗雑である」ことにおいては、あるいはエジプト時代のそれと大差があるといえるだろうか。)乾燥された死体には呪文などが書かれた布が巻かれ、王族などは生前の姿に似せた棺に入れられることもあった。
 東洋のミイラで有名な「即身仏」は、仏教僧がみずから断食によって脱脂肪・脱水状態によるミイラとなったもので(→修行僧のリッチ)当然ながら苦行の最大のものといえるが、中国や日本にも少なからず現存している。なお、日本のミイラとして有名な中尊寺の奥州藤原三代のミイラだが、これはミイラ化遺体ではあるが即身仏というわけではないという。
 ミイラはその珍しさと、古代から朽ちない死体という点からか、古くからしばしば神秘的な品として扱われ、オカルト書物などにもミイラや「ミイラの布」などは呪術品などとしても頻出する。ことに薬品として高額で取引されたこともあり、エジプトの墳墓に宝物だけでなく未盗掘のミイラさえ非常に少ないのはこのためである。「ミイラ取りがミイラになる」という諺は、この高額売却用のミイラを盗掘に行ったものがピラミッドの罠や砂漠などで行き倒れ、最初に述べた自然乾燥ミイラ化する、といった意味である。
 さて、元々が神秘視されていたミイラであり、さらにツタンカーメンなどの王家の呪いの逸話と相まって、その後のホラー映画や小説でミイラが恐怖の対象とされることは当然の帰結であったといえる。そのままミイラが恐怖を呼び起こす小道具として使われることもあるが、不滅の死体が起き上がってくる「ミイラ男」が定番である(エジプトのミイラが布に巻かれていたため、全身を包帯で巻かれた男という映像自体が「ミイラ男」というある意味誤解も定着している)。集団で襲ってくるゾンビよりも高級であることが多いのは、元が高貴な王族などであるのと、やはりミイラの長年存続してきた神秘性と思われる。ホラー作品では、王族などのミイラでも魔法などではなく普通にただ(つまり肉弾戦で)襲ってくることが多いが、これはむしろ海外での「死者や霊は何かをするからではなく、死者であること自体が恐ろしい」という感覚から生じている部分がある。乾燥しているため、また布のため火に弱い、といった性質はホラーの時点で定番である。
 RPGに登場するマミーは、おおむねホラー映画のミイラ男と同様のアンデッドである(なお日本語でもミイラだが、クラシカルD&D以来、英語のままの「マミー」と呼ぶことで、「RPGのモンスター」としてのそれを指すという通例がある)。火に弱い(しばしば武器では倒せないか、倒しにくい)という点もホラー同様だが、他の特色として、しばしば触れたものを呪いや病気にかける、というものが挙げられる。D&Dシリーズのマミーは、見たものを恐怖の魔力にとらえ、また腐敗病は治癒するまでhpの回復ができなくなるというものである。この病気の内容もゲームによって、実態は呪いであったり、またマミーの埋葬されていた環境における菌などの仕業であったりもする(実在の王家の呪いも、カビや菌の仕業という有力な説を反映しているものである)。上記した「カノープスの壷」があり、破壊すると弱らせることができるといったギミックが導入されていることも多い。なお、マミーにはグレーター・マミー(→王のミイラ)のような上位版が存在することもあり、その場合、王族はグレーター・マミーで、打撃のみで攻撃してくる中レベルの「通常のマミー」は殉死者や部下であることが多い。
 敵:[V]以来、ゾンビやスケルトン同様にさまざまな種族に対するアンデッドのテンプレートとみなされてか、普通の人間のミイラである「ミイラ」のほかにオークとトロルのミイラが登場する。*bandの世界設定的には、オークやトロルのミイラは、あるいはアングマールなどの呪術で戦力として作られたのかもしれない。いずれもアンデッドの常で耐久力は高いが、かなり意外なことに攻撃は打撃のみで、病気(耐久力減少)や毒などもなく、また恐怖などの魔法も再現されていない。[Z]以降はグレーター・マミーにあたる「王のミイラ」も登場するが、別の項目に譲る。



ミ=ゴウ Mi-Go 【敵】

 下級の独立種族。ユゴスよりの菌糸生物。『クトゥルフ神話』の原型を作ったH.P.ラヴクラフトは、邪神たちやその奉仕種族以上に「宇宙人」的な独立種族の創造に力を入れているが、それら独立種族の多くは、太古に地球に飛来して文明を築き、今では絶滅している先駆者や別の意味での神々であったりすることが多い。だが一方で、現代に飛来し「ムー系怪奇現象」を担うという、ごく普通の「宇宙人」像に極めて近い種族も存在し、そのうち一種が『闇にささやくもの』に登場するミ=ゴウである。
 ミ=ゴウは元々ユゴス星(冥王星、衛星のカロン)にコロニーを持つ種族で(それ以前の起源があるかは定かではない)地球には鉱物資源を求めて、または単に人間に興味を持って飛来する。大きさは人間のスケールと同じくらいで、甲殻類に似たシルエットの体に蝙蝠のような翼と長い尻尾、そして頭部は複眼か露出した脳のようなカリフラワー状の塊で、常に様々に色を変える。甲殻類ではなく、強いて言えば菌類に近いようだが、既知の物理法則とは違う法則で構成されている(写真に写らなかったりする)のであまり分類には意味がない。その頭の色を変えて意思疎通したり、謎の原理(翻訳機か)で人間などの声を真似たりもする。
 彼らは真空中ではエネルギーを得て飛行できるが、なぜか大気中ではやや不自由である(星間エーテルを羽ばたくと書かれているが、今風に言えばナデシコの相転移エンジンのような原理であると思われる)。肉体的には人間よりさほど強くないので、人間を掴んでどこまでも上昇していって、真空に達して窒息させるというあまりにも地味な攻撃くらいしか持っていない。しかし、彼らの最大の武器はその見かけによらず異常に発達した工学・生物学技術にある。謎の光線銃や毒ガス兵器が新旧CoCルールブックに書かれているが、謎の技術で人間を研究サンプルとして拉致し、謎の器機を埋め込んだり臓器の一部を取り替えたりする(原作に登場するギミックで、ミ=ゴウの代名詞となっている技術が、人間の脳だけを容器に保存して生かし続け、共に星間旅行もできるようにする、という技術である)。採鉱や研究の目的のために、巧みに政府機関を操っていることさえある。人間に敵意を持っているわけではないが、「興味」でもってありとあらゆることを、しかも人間とはかけなはれた思考で行う結果、理性的なSF風ではなく、現代のどこぞの捏造宇宙人のような行動が目白押しである。
 *bandでは[Z]以降登場する。15階の敵としてはやや強靭な方に入る。シンボルは'I'だが、昆虫ではないとはいえ、どれかといえば違和感がないシンボルがIなのかもしれない(キノコ','でも少し困る)。原作にもCoCにもない筋力減少や毒針は謎で、単にクトゥルフ系なので手ごわくするために入れたのかもしれず、また、奉仕種族ではないはずの彼らがデーモンやモンスター召喚を持っているのもやはり「クトゥルフ系生物であるから」だけの理由かもしれない。



水トロル Water Troll 【敵】

 元の北欧で様々な自然力の象徴やあるいは多様な妖怪の総称であるためか、RPGのトロルには、他のサブヒューマン以上に、おびただしい種類の気候や性質によるサブ種族が存在しているゲームも多い。RPGの原型であるトールキンからすでに数種類(中には同種族の言い換えらしきものもあるが)が存在している上に、AD&Dになると基本のモンスターマニュアルにさえ十数種類が記載されている。水棲種のトロルもそれに入るもので、淡水トロル(スクラッグ)と海水トロルの2種類がおり、淡水トロルは最も一般的なトロルよりやや小型で、海水トロルは若干大型である。スクラッグは完全な水棲ではなく、水辺に住むに過ぎないが、水に触れていないと再生能力がない。ためこんだ宝(トロルは割と岩屋に宝物をためこむ)を一部水辺に出して罠とし、ヒューマノイドを捕食するという習性を持つ。
 *bandでは、水地形が導入された[Z]以降は水トロルと海トロルが存在し、ほぼこの2種類を踏襲したものと思われるのだが、この2種類にはよくわからない点がいくつかある。まず、水トロルの解説には、「海水のような匂いを発しているトロル」とあり、こちらも淡水でなく海水になっている。おそらく、説明文章を流用したためと思われ、さほど重要な設定的理由はないと思われる(現実問題として、*band内では水地形ならば淡水・海水の区別がないので、設定上区別する意味もないといえばない)。また、水トロルよりも海トロルが階層、肉体能力でもほんの少しだけ強力なのだが、どういうわけか水トロルの方が経験値が遥かに高く、ユニークや倒しにくい一部モンスターに匹敵するほどあったりもする。水地形モンスターは若干階層の割に強めで危険度・経験ともに高いことも多いが、それを加味しても海トロルとの比較上不自然ではある。桁数などを間違ったとも思えないため、この理由は明確ではない。ともあれ、[Z]では屋外地形で登場するため遠距離から経験を稼ぐ手段のひとつになっていた。「水」といっても「ウォーター」系の多くのモンスターのような酸や冷却の攻撃を持っているわけではなく、原典通り特殊攻撃のたぐいは持たない。



水の王ウルモのトライデント The Trident of Ulmo 【物品】

 ウルモはアルダ世界のヴァラール(上級神)のうち、水を支配する王で、大気のマンウェに次ぐ力をもち、石と鉄の工人アウレと同等といわれる(といっても、アラタールと呼ばれる上位のヴァラは甲乙つけがたい力をもつような記述なのだが)。
 [V]翻訳当初、わかりやすいように「海王ウルモ」とされていたが、これを翻訳に関わった都々目さとし(不浄のレン)氏が「海だけでなくすべての水の王です」と訂正したコメントが残っている。これがなぜ重要な点かというと、ウルモは水を通してそこから聞こえるすべての音を聞くことができ、また水音を通して呼びかけることができるので、基本的には中つ国に住まなくとも、中つ国の河や泉の流れを通して、直接に中つ国の人々を見守り、また助言を伝えることもできたのである。それは彼が他のアイヌア(神族)のように肉体をまとってどこかの土地に定住することがなく、水の中を漂うように住んでいるためとも言われる。エルフがヴァラールに呼ばれてアマンへと大移動する際、大海の孤島を根こそぎ動かし、エルフらを島に乗せてアマン岸辺へと移動させた(この島が後にエレスセアと呼ばれた)のもウルモであるという。
 人間やエルフの前に現れる時は、黒い兜、魚の鱗のような鎧をまとった巨大な姿である。特に、『クゥエンタ・シルマリルリオン』と『終わらざりし物語』の両方に記述がある、ゴンドリンの都を探すトゥオルの前の海上に直接に現れた際(→トゥオルのクローク)の場面は多くの画家が描いている。どの絵でも、実在伝承の海の神と似たような姿(巨大な姿に三又槍)だが、特に鎧武者・人外の第一人者であるジョン・ハウの画は、スケイルメイルと魚の鱗のウェットスーツのようなものの絶妙な中間にあるような鎧姿で非常に格好良い。「ヴァラ」が人間との対比で描かれた絵の代表としても興味深いものである。
 *bandでは、上記の画像のような水神のお約束的なトライデントが[V]以来、強力なヴァラの武器のひとつとしてデータ化されている。酸の免疫を含めてすぐれた耐性を持つ点が取り沙汰されるが、攻撃力も無論のことかなり高く、特に武器ベースダメージがかなり大きいので、スレイングの有効なアンデッドやドラゴン、動物に威力を発揮する。[Z]や[O]系ではベースダメージが調整されているが、それでもかなり大きい方なので非常に有効な武器である。



ミスリル Mithril 【物品】【その他】

 出典:アルダ世界に存在する非常に貴重な金属で、銀によく似ているが、より鈍い輝きを放ち、経年で劣化することがない。非常に展性・弾性があり、しかし軽く堅牢である。その名はシンダリン語で「灰色の輝き」を意味する。これを主に扱ったドワーフらの間ではクズドゥル語の名前もあるが、無論のこと秘密の語である。『ホビットの冒険』でトーリンがはなれ山の財宝の中からビルボに贈り、のちにフロドも着用したミスリルの胴着が、言うまでもなく代表である。
 ミスリルは『指輪物語』本編および追補によるとモリア(カザド=ドゥム)、加えてUnfinished Talesによるとヌメノールでしか産出せず、『指輪物語』の記述でゴンドールなどの建造物や武具にミスリルが非常に豊富なのは、ヌメノールで産出していたためと思われる。ヌメノールは水没し、モリアはバルログが倒された後も再興したかは明らかではなく(トールキンの未整理原稿からも定かではない)もしモリアが再興されていなければ、ミスリルは第3紀以降は全く産出されることはないと考えられる。
 明白にトールキンの創作した金属であるが、実在の伝承にて、人間の精錬した金属には触れられない妖精が扱うという、妖精の銀や、妖精の鉄(elven steel)の説話を参考にしていると思われる。そのためかトールキン以外のRPG世界では、ドワーフよりもエルフがミスリルを使用する例が多く見られる。なお、ほとんどファンタジーの一般語であるかの如く、ほぼあらゆるRPG世界に定着しているが、「ミスリル」はあくまでアルダ世界のシンダリン語であり、D&D系では避けるためか3.0版以降は「ミスラル」という語に変えている。
 余談であるが、和製ファンタジーおよびRPGにはミスリルの「武器」が極めて頻出する。しかし、トールキンには防具はよく見られるものの、「武器」がミスリルで作られているという例は全くない。日本のサイトには「アンドゥリルやグラムドリングはミスリル製である」という解説がしばしば見られるが、トールキンの小説、原稿中ともにその旨の記述は一切ない。おそらく和製RPGのミスリル製武器に対する先入観による無根拠な断定ないし推測と思われる。また、海外のRPGでも、ミスリルの「武器」は非常に少ない(むしろ柄のみや頭部のみといった一部のことが多い)。なぜミスリルの「武器」がないのかは推測する他にないが、単純に、純ミスリルでは武器に向かない性質があるのかもしれない;武器と防具とでは、弾性・剛性のバランスの要求が同じとは限らず、また、武器の種類によっては「硬さ」のみの追求に対して「軽さ」が重要であるとも限らない。T&Tでも、軽くなるためミスリルの防具では絶大な効果があるが、武器での効果は控えめである。なおICE設定では、エルダールが武器に使うのはもっぱらイシルナウア(月火鋼:チタン主体の合金で、ミスリルはわずかに含む。これの武器の鍛造法は、どこか日本刀に似ている)であり、ドワーフはイシルナウアの他に、アダルケア(鉄とチタンの合金)を用いる。
 物品、その他:*bandでは[V]より、硬貨およびミスリル製チェインメイル、プレートメイルといった防具の材質として登場する。他の防具のアーティファクト解説にも、ミスリルが使用されているという記述も多い。
 しかしながら、ベースアイテムとしての鎧に関しては、非常に深階層でレアであるが、その頃にはアーティファクトやエルフ製などの防具を使用していることが多いため(ミスリルでかつエゴアイテムであれば強力であろうが、レアリティ故に少ない)使う機会が少なく、印象が薄い。また、主に目にする機会であった「★ケレボルン王のミスリル製プレートメイル」が、[Z]以降では「★ジュリアンの革製スケイルメイル」に変わってしまったため、さらにミスリル製物品を使用する機会が少なくなってしまった。わずかに『ベレゲンノン』(★ローエングリン)のみである。



乱れ雪月花 みだれせつげっか 【その他】

 『ロマンシング サ・ガ』2、3における「大剣技」の最上位をはじめ、主に『サガ』シリーズに登場する技で、名前のイメージから連続攻撃技であるが、「雪の静かな斬り下ろし・弦月の弓なりの斬り上げ・散花の斬り払い」の三段攻撃とされる。シリーズいずれの作品でも非常な攻撃力の技とされている。(ちなみに「雪月花」は言うまでもなく、日本の眺めの風物の熟語のひとつである。)
 シリーズの各作によって固定の技であったり、連続技(雪・月・花の関係技の連携)によって発生したり、ある確率での発生であったりと一定しない。特に固定技でない場合は非常に出にくく、クリアまでに一度も見たことがないというプレイヤーも多数見られたという。それだけに、発生時のその威力とビジュアルの派手さとに「これぞサガシリーズ」と思い入れを持つプレイヤーも多く、おおよそ『サガ』シリーズの技としては代表的なものといってよいだろう。同名の技が『聖剣伝説』シリーズにもあり、また『月華の剣士』といった格闘ゲームに類似の名・形態の技があったりもするが、同人製作のシミュレーションRPGなどでもロマサガのそれがモチーフと思われる同名技が取り入れられていることもあり、効果自体も同じもの、単に3段攻撃にこの名をつけているもの等さまざまである。なお、『ファイナルファンタジー11』でハイレベルの侍の技に「雪風・月光・花車」が並ぶが、これらは同名の太刀法が新陰流などで実在するものがあるものの、実際は『サガ』シリーズの雪月花やその連携元の技から直接にとられているという説が有力である。
 *bandでは、[変]の剣術家の武芸の技に存在し、2冊目の[柳生武芸帳]の29レベルという、中盤の比較的早くから使える技である。攻撃回数が2回増加し、冷気ダメージがやや増えるが、最強クラスの技というわけではない。どちらかというと、焔霊(→参照)や雷撃鷲爪斬(→参照)同様に、各種の元素ブランドの技をそろえるといった意味もあって存在する技といえる。



ミナス・アノール Minas Anor 【その他】

 陽の塔。トールキン『指輪物語』においてはミナス・ティリスとして南方王国ゴンドールの当時の首都となっている城砦都市。『指輪物語』RotKの一方の主舞台である。
 七重の岩の城壁に囲まれ、それぞれの区画が都市になっている。最も高所の中央の城壁の中に王城にあたる「エクセリオンの白い塔」がある。塔の中は玉座や執政席のある地階を除くと大半が中空だが、最上階には「アノールのパランティア」の収められた秘密の部屋がある。ミンドルイン山の山腹に建てられ、周囲を囲んでいるのがペレンノール野である。
 ミナス・アノール(陽の塔)は建造時の名で、ゴンドール7代王オストヘア(ログログ(→参照)に殺されたアルノール王オストヘアとは別人である)の代にミナス・イシル(月の塔)と対となって対モルドールに建造された城砦だったが、ミナス・イシルがモルドール軍に奪われ(以後ミナス・モルグルと呼ばれた)以後は「守りの塔」を意味するミナス・ティリスをその名とした。また、元々のゴンドールの首都オスギリアスがカスタミア(→参照)の乱やモルドールとの抗争で荒廃、機能を失うと、ミナス・ティリスに玉座と執政席が置かれるようになる。
 (なお、第一紀にフィンロド王と弟オロドレスが構えており、後にサウロンに奪われてガウアホスの塔となった城砦もミナス・ティリスというが、直接の関係はない。)
 トールキンはこの都の景観に対しては明確な記述を残しており、再現したイラストも多いが、映画版LotRでも忠実に映像化されている。『中つ国歴史地図』の分析では現代に残っているあらゆる城砦より遥かに大規模(ドルアダンの野人らが、建造時の石の輸送を見て「ゴンドール人は岩を食べて生きている」と思ったほどである)という言い方だけしてみると胡散臭く聞こえるものだが、映画版の映像には一種有無を言わせぬものがある。ヌメノールの威光の残光、上級王の都として充分な説得力がある。
 *bandではToMEにミナス・アノールが都市のひとつとして存在するが、PernAngbandの当時は名前やイベント(既に玉座にはエレッサール王がいる)はともかくとして、そのマップは[Z]の「モリバント」のものが流用されていた。まとまった城壁の中に囲まれている点が近いイメージと考えられたのかもしれないが、逆に[Z][変]のモリバントは映画のミナス・ティリスのような景観の都市なのかもしれない。(勿論、数々の塔や王城が最内壁より外側にあるなど、合致しない点も多い。)ToME1.0からは、都市のマップも一新され、ミナス・アノールも多重の城壁を持つものに変更された。原作ミナス・ティリスのイメージをよく知らなければどういう地理になっているかよくわからないかもしれない。原作既読者から見れば雰囲気は出ているが、どこに行くにも城壁を回り込まなくてはならないのでただ単に面倒なだけである。映画版でガンダルフが飛蔭に乗って城壁の内側へ乗り込んでゆく場面はミナス・ティリスの構造をよく表現する場面であるが、見ながらその面倒さを思い出した*bandプレイヤーも多いと思われる。



ミナス・ティリス

 →ミナス・アノール



みね打ち Stunning Attack 【その他】

 出典:日本刀の峰で気絶を目的に殴打する攻撃。峰とは日本刀で刃の反対側の部分であるが、いいかげんな作品では西洋の両刃剣の腹(日本刀では「鎬」)の部分で打って峰打ちと呼んでいたりもする。とりあえず、時代作品はおろかFTでも剣士が刀で相手を傷つけず気絶させる、半ば「お約束の形骸」と化した言葉のひとつである。素手で後頭部や鳩尾を一発殴ったらなぜか気絶がお約束と同様、剣の刃のない部分で殴ったら気絶もお約束と化していると言えよう。
 峰打ちを単純に「刃のない部分で(ある場合と同じように)殴るだけ」だと信じられていることもあるのだが、少なくともそうした攻撃で安全に気絶させられるとは思えない。一説には、人体への打撃のダメージの大半は神経に与えられるショックによるものであり、真剣の重さと衝撃とが相まって、峰でまともに殴ったりすれば殺傷力は十二分である(真剣の峰よりも、ただの木刀が実はさらに殺傷力が高いという説にも根拠があるが、これに関してはそのうち別の機会に譲る)。当然ながら、『るろうに剣心』の逆刃刀(刃と峰が逆で、つまり峰打ちの方で主に攻撃する刀)で「不殺」などというのはありえないという意見は頻繁に述べられる(が、とどのつまりはこの逆刃刀は「この話の中ではそういうお約束である」ということを説明するための漫画作者の道具程度に思っておくのが無難であろう)。さらに実際の逆刃刀は無論のこと、時代劇の峰打ちのような形で殴るほどの力をこめると、日本刀の構造上、一撃とて保たずに折れる。
 総じて峰打ちとは、よほど絶妙な部位を、絶妙な強さ(刀も犠牲者も無事な)で打つものでないと成立しないものである。現存する刀法の型での峰打ちは、気絶させることのできる部位を狙って打ち、例えば、首筋を打つと、頚動脈が一時強く圧迫され効果的に朦朧とさせることができるといった技術がある。また、時代作品などでは最初から峰を返して揮っていることが多いが、古流の剣術では刃が触れる直前に刃を返す型が多い。これは、斬られたと錯覚させて気絶させる目的も含むためだが、実にそのショックと衝撃が相まって実際に絶命する場合が半数以上にすらのぼったとも言われている。
 結局のところ、峰打ちには相当の剣技が要求され、またかなりの腕の差が開いている相手でなければ成功させることは困難で、切迫した実戦の中での現実性は疑問であり、また仮に成立したとしても、やはりかなりの危険を伴う技術であると言える。
 システム:剣術家の武芸の技に存在し、生命のある敵を朦朧とさせることができる技である。朦朧とさせるなどというのは普通にダメージを与える以上に難しいことで「刃のない部分(なお、この剣技は無論のこと両刃武器でも刃のない武器でも使用可能である)で闇雲に殴っただけで、朦朧とさせることができるとはとても思えない」とは掲示板などでもしばしば出る話題である。
 これは、峰で殴ること自体が肝要なのではなく、古流剣術のように「衝撃を与えることで相手を朦朧とさせる部位を見切り、正確にその場所に打撃を与える」ということが肝の技術なのだと解釈すべきであろう。人間とあれほどかけ離れた魑魅魍魎どものそういう部位をどうやって知ったり見切ったりするのかというと、それ以上に疑問が生じて来るが、かのアンバーの剣聖ベネディクトあたりならそんなことすら知って武芸の書に記していても一向におかしくはない。



ミノタウルス Minotaur 【敵】

 出典:牛頭人身の怪物として極度に著名なミノタウルスは、元々はギリシア神話に登場する特定(ユニーク)の人物(怪物)を示す固有名詞だが、詳しくは神話解説サイトに譲り、概要のみ示す。クレタのミノス王が神牛を生贄に捧げなかったために、海神ポセイドンがミノス王の王妃に対しその神牛の子を宿すという突拍子もない呪いをかけた。こうして生まれたのが半牛半人のミノタウルスで、ミノス王は秘密を守るため名工ダイダロスに作らせた迷宮(ラビュリントス)にこのミノタウルスを隠し、またダイダロスと息子イカロスの職人親子も口封じのため幽閉した(その脱出劇が、ミノタウルス自身はともかくその背景などより遥かに有名な「イカロス説話」である)。ミノス王は毎年この迷宮に生贄を捧げていたが、アテネの英雄テセウスが生贄を装い迷宮を突破し、ミノタウルスを退治した。
 神獣交配などが珍しくないギリシア説話群の中でも、異常伝奇性がさりげないアテネ優位と共に奇妙な印象を与える説話である。ミノタウルスとは「ミノス王の牡牛」の意だが、これは通称で、この怪物は「アステリオス(星の子)」という本名を持っている。ミノス王は神官王として「月の王」の名を持つことから、あるいは伝承の原型では元々ごく普通の「嫡子」であったのが変形した背景を強く感じさせる。一説には、古代クレタの神官や巫女らは神牛と交わって神通力を得たと伝えられており、こうした古代信仰が変形したか、あるいは原初的な辺境信仰が割と人間原理的なギリシアに取り込まれる際に著しく歪曲した結果、上記のような説話になったのかもしれない。
 ミノタウルスは特定説話のユニークであって、民間伝承等の純然たる幻獣ではないが、RPGやゲームブック等では「モンスター」として一般化され、特に上記のラビュリントスから、迷宮に生息するのが一般的という設定の格好のモンスターとなっている(なお、D&Dシリーズでは、迷宮という環境に適化しているため、魔法で迷宮に閉じ込める「メイズ」の呪文が効かないという、かなりどうでもいい能力がある)。おおむね中レベルから高レベルのモンスターであるが、ユニークとして扱っていたりおそらくそれに近い位置づけ(例えばNetHackなど。大抵はAD&Dのデータが引用されているNetHackだが、このミノタウルスはAD&Dのそれよりも遥かに強い)の場合は、非常に強力なことも珍しくない。
 ときには単なるモンスターでなく、標準的「種族」として扱っている場合もある。AD&DのDragonlance世界設定では、主な舞台アンサロン大陸の裏側にあるタラダス大陸での「主要住民」の種族であり、ときどき海をこえた者がアンサロンに登場する。人間とは全く異質の、しかし非常に厳格な倫理観にそって行動する種族である(海を渡ってきた者には、実際はその規律からのはみだし者が多いが)。
 敵:*bandにおいて、ノーマルモンスターとしてのミノタウルスと、ユニークでその王として「バフォメット」は[V]以来存在し、[Z]などのバリアントでは「マウロタウロス」や『迷宮のミノタウロス』など追加のモンスターも多い。しかし、なぜかノーマルモンスターは「ミノタウ『ル』ス」、関連ユニーク等は「ミノタウ『ロ』ス」という訳になっている。ノーマルモンスターのミノタウルスは、40階のことが多いが、強さ(データの内容)はどういうわけかバリアントごとに相当まちまちである。しかし、どのみち40階というのはNetHackの影響も大きいのか、ノーマルモンスターとしてはかなり上位であり、RPG一般よりも相当強く見積もっている解釈とみてよい。中には50階代の場合や、さらに上のミノタウロス・ロードなどが登場する場合もある。

 →バフォメット →マウロタウロス →迷宮のミノタウロス



ミミック Mimic 【敵】

 擬態の怪物。mimicという語に関しては特にToMEなどのRoguelikeを含めてFTRPG談義では広義のシェイプシフターの話題が範囲となるが、ここでは、RPGでの「宝箱などに擬態している怪物」に関する話題に絞る。
 不定形の生物が宝物をはじめ様々な形態に擬態するというアイディア自体はかなりありふれたものと思われる。最初のTRPGであるD&Dシリーズのミミックは、基本的に「ダンジョン探索物」であるこのゲームで例によって迷宮のトラップギミック(→クローカー、トラッパー、ラーカーなども参照)としてこうした生物をモンスターに加えたものということができる。
 AD&Dの記述によると、ミミックは形態、色、質感などを様々に変えられる生物で、宝箱だけでなく、ドアなどにも随意に変更することができる。形態をとれる範囲は200立方フィート(例えば一片2.5mの櫃など)となっており、かなり大型である。標準的なものは、人間並の知能を有している。かつて防護用に魔法使が開発した生物だが、いわゆるコンストラクトの類ではなく(種別は魔法生物ではなく「異形」の生物である)「硬質の外殻と軟質の内部組織を持つ」という記載もあり、捕獲した者(侵入者)を養分として摂取する。光に敏感に反応する特性があるので、強い光などが弱点になっている版もある。レベルの上では中級〜上級で標準的な幻想生物の類に匹敵し、かなり強靭な生物である。*bandのような毒や魔法などは一般に持っていない。
 以降のRPGにも、「宝箱」に擬態しているというギミックと共に登場することが多い。『ドラゴンクエスト』シリーズの一部に登場するものは、攻撃力や呪文など登場レベルに比してかなり危険な怪物になっている。他のRPGでは、形態が「宝箱」に固定であったり、魔法生物という設定になっていることが多い。現に最も多い例ではあるが、「ミミック」というと「宝箱型の怪物」というイメージは定着していると思われる。
 Roguelikeでは、最初期のUNIX版のRogueには他の物品、さらには階段等にも化けている「ミミック」が存在していた。初期RogueのものはAD&D1st準拠なので、おそらくは同様の大型の外骨格生物であると思われるのだが、『ローグハンドブック』等の記載では、このミミックは本来は「小人のような恰好」で、レプラコーン的な変身妖精という設定で書かれている。しかし、Rogueの後の大半の版(ローグ・クローン含む)では、同様の性質を持つ変身モンスターは'X'(Xeroc;コピーの怪物)という名になっている。
 NetHackにも例によってAD&Dと全く同じデータで登場する。「小さな」「大きな」「巨大な」ミミックがいるが、実はヒットダイス(レベル)は1ずつしか違わずAD&Dでのヒットダイスのバリエーションの範囲内である。様々なアイテムのみならず迷宮内の要素の形態をとる。これはむしろ、RogueのXerocをそのまま踏襲している性質が強いと思われる。AD&Dのミミックのサイズは相当大きいが、XerocにせよNetHackのミミックにせよかなり小型と思われる物品にも擬態していることがある。
 *bandでは、[V]の時点から箱、薬、巻物などのミミックが、それぞれ別々のモンスターとして出現するようになっている。また、いずれも遠距離攻撃を行ってくることが多いのが大きな特徴である。DQシリーズも思わせるが、おそらく*bandの独自の理由が考えられる。すなわち、[V]の時点では*bandにはコマンドでモンスターの名前を見ることができ、初代RogueやNetHackのようにマスクすることができないので、「ミミック」であることは最初から明らかになっている。そのため、停止しているミミックに対しては、知らずに誤って近づくといったことは少ないので、近距離とは「別種の危険性」を付与されているものといえる。そういった意味ではXerocや他のRPGのミミックよりは、マジックポットや空飛ぶ宝珠などのモンスターに近い性質を持つといえる。モンスターの「ラアルの破壊集大成」などは、本来ミミックではないが、物品のような姿をしたモンスターということか、ミミックの上位版として位置づけられている。これらの点を総合的に考えると、*bandのミミックは必ずしも上述した異形生物のそれではないのかもしれない(ラアル同様と考えると、ひとりでに動く魔剣や、アイテムの憑喪神の類などが考えられる)。箱や薬といった上級でないミミックであっても、アイテムを破損させる元素攻撃などを使用してくることがあるので、遠距離から着実に攻撃して対処する、無闇に攻撃される位置をとらない等の必要がある。



ミム Mim, Betrayer of Turin 【敵】

 トゥーリンを裏切りし小ドワーフ。最後の小ドワーフの族長。なお、『シルマリルの物語』新版およびそれを参照した最近のバリアントの訳文では「ミーム」となっている。
 アルダ第一紀の「小ドワーフ」、シンダリン語でノイギス・ニビンとは、もともと青の山脈のドワーフの一氏族だったが、なんらかの事情により追放され、森林を放浪するうちに鍛冶の腕も退化し、肩と背をかがめて歩くようになったためこう呼ばれた。petty dwarfは単に「小ドワーフ」とだけ訳されているが、英語においてpettyは「劣った」「卑小な」という意味を強く持つ語である。シンダール(灰色エルフ)たちはかれらを何者か知らずに森林で多数殺したために、その数はますます減り、第一紀の末にはミムと二人の息子イブンとクイムしか残っていなかった。ミムはシンダールの他に、ハイエルフ(ノルドール)をも激しく憎んでいた;というのは、かつてかれらが住んでいた洞窟に、ノルドールのフィンロド王が大城砦ナルゴスロンドを築いたため、小ドワーフらはそこを追われたという経緯があったためである。
 以後アモン・ルーズと呼ばれる洞窟に住んでいたミムらのもとに、無法者と共に放浪していた時代の人間の英雄トゥーリン(→グアサング参照)が現れ、ミムは彼らを洞窟にかくまう。しかし、あるときミムは食物を探していてオークに囚われ、身代としてトゥーリンらの場所を教えてしまう。(オークに囚われたトゥーリンの運命はその後も流転するが省く。)
 遥かな後になって、上記した小ドワーフの最初の故郷ナルゴスロンドは、フィンロド王が死に、龍グラウルングによって破壊され、そのグラウルングもトゥーリンに殺され、フィンロドとグラウルングの財宝だけが無人で残された廃墟になっていた。すでに二人の息子に先立たれていた(詳しくは息子らの項目参照)ミムはそこにたどり着き、財宝の上にひとり溺れて廃人のように暮らしていたが、トゥーリンの父フーリンが彼を見つけ、かつてトゥーリンを裏切ったことをとがめて(トゥーリンの直接の死因はずっとややこしく、ミムは直接は何も関係ないのだが)城門の前で彼を殺し、ここに小ドワーフの一族は滅びた。
 財宝に魅了される、英雄を裏切る等、このミムをはじめとする小ドワーフの説話は北欧の黒倭人を思わせる部分がある。故に、ミムはトールキンがワーグナーからニーベルング『ミーメ』(→参照)を直接のモデルとした、という説が指輪物語ファンの間ですらあるのだが、これはほぼありえないことである。トールキンは殊に『ニーベルングの指環』と『指輪物語』世界の関連性を問われるたびに強く否定し、それらの言葉は必ずしも額面通りには取れないものの、もし参照していたとすれば猶のこと、直接の連想を呼ばざるを得ない「人名」をそのまま残すとはとても考えられない。とはいえ、もしトールキンが伝承に材を採ったとすれば、それは時代が下ったワーグナーなどではなく古伝まで遡って、ワーグナーがミーメの名前を参照したと考えられる『シドレスクサガ』(ディートリヒ伝説の原型とされる)の「ミーミル」であろう。ミーミルは、ミーメ同様『ウォルスングサガ』のレギンに似た役割の鍛冶師だが、ミーメやレギン以上に宝物への執着といった描写は希薄なので、これを参照としたとしてもミムの性質づけはやはりトールキン独自の面が大きいと言えるのである。
 *bandでは、[V]をはじめとするアルダを舞台とするバリアントに、[Z]以降の「ニーベルング劣化ファミリー」とほぼ同じ位置づけの存在としてミム一家が登場する。ミムと息子らは、何の目立った能力も持たない原作に反して、劣化能力とかなりの種類の魔法能力を持っており、打撃も遠距離戦もしづらく、かなりプレイヤーキャラが強くなるまで逃げ回る方が得策な、厄介な壁である。[Z]以降は小ドワーフは、似た存在のユニークニーベルングに差し替えられているが、ミムはそのままミーメになったというわけではなく、アルベリヒになって強化されたような形になっている。

 →イブン →クイム →ミーメ



ミュルニール The War Hammer 'Mjollnir' 【物品】

 北欧神話の雷神トールの槌が「ミョ」ルニールであり、要はそれと同じものを指しているのであるが、*bandでは、NetHackと同じ翻訳語の「ミュ」ルニールの表記が採られている。「ミュ」とは呼びようも呼ばれる例もなく、NetHackでなぜ「ミュ」にしたかは、和訳スタッフのひとりですら経緯がはっきりしないと語っているが、おそらくスカンジナビア語を聞きなれないスタッフの誰かの先入観による誤読あるいは誤字で、さほど大きな意味はないと思われる。
 トールのミョルニールの神話的背景に関しては、近年とみに北欧神話の用語や世界観をセンスもなしに引き写した和製RPG/ウェブ創作による情報が膨大に溢れ返っているので詳細は省く。粉砕するもの、叩き潰すものの意で、投げるとあやまたず巨人を撲殺しトールの手元に戻る。全世界の神話の雷神に共通する、稲妻を象徴する武器である。
 和製RPGでは必ず「ウォーハンマー」と解釈されており、*bandのアーティファクト解説でも「投げハンマー」と書かれているが、北欧神話では慣例的に、ミョルニールはそうした戦闘用ではない「大金槌」である。アメコミに登場したためもあるが、D&DやT&Tの初心者用の物品説明には、「ウォーハンマーという武器は、トールの大金槌のような形状ではない」という例に用いられているほどである。戦闘のため機能化された戦槌ではなく、稲妻のもつ天から落ちて無差別に叩き潰す力自体の象徴であるが為であろう。ともあれ、本来はベースアイテムは「ウォーハンマー」よりも「グレートハンマー」の方が近いのかもしれない。
 D&D系にもトール神とミョルニールの戦闘能力データは存在するのだが、版によって差はあるものの、ダメージが一撃ごとに10d10(言っておくが、*bandではなく戦士のhpがレベルx1d10などというAD&Dの話である)などというふざけた武器で、さすがにAD&D 1stのデータを流用しているNetHackでもそのままは採用せず、「ミュルニール」はむしろ、ミョルニールをモチーフとしたエゴアイテムの一種hammer of thunderbolts(→イージス・ファング)の影響の方が強いようである。hammer of thunderboltsはミョルニールがトールの手袋と帯を必要とするのと同様、巨人の力をもたらす小手(gauntlets of ogre powers)と帯(girle of giant strength)の両方を装備し、共に使用した時のみ最大の力を発揮する(帯・小手がない場合は、巨人サイズでなければ重さはともかくバランスが悪すぎて使用できない)。NetHackでは恐らく帯と小手を組み合わせるのはシステム的に厄介なので小手のみを採り、力の小手でSTR25というトール神のSTRと同じ値になった際に、本来の性能を発揮できるわけである。
 *bandでは「ミュルニール」として[変]などに追加されているが、電撃攻撃と電気免疫があり、一応、投げると戻ってくるという属性が再現されている。物品としての有名さの割にはレアリティ、破壊力ともに中程度で、投げ攻撃のメリットを表現しづらい*bandでは特に影が薄くなっている側面がある。



魅了の視線 Charm Monster 【魔法】

 「魅了」の能力は伝承や説話全般において魔法や特殊能力として最もよく顕れるものといってもよく、より広義の精神操作を通称する形で、ほとんど魔法や術の代名詞のように扱われる場合すらもある。説話全般において、使い手も術師やその他の特殊能力者や超自然生物といった者、地方や術式、媒体も術や歌や視線その他など多様である。
 従って、魅了はRPGにおいても魔法および特殊能力の類として再現されている場合は多い。TRPGではD&D系のように、単体で人間型のみ魅了できる最初級のもの(低レベル術者の決定的武器とされる)から、多数・異質精神のものまで魅了できる最上級まで多数の魔法のバリエーションを設けている場合もある(なお、Charm Monsterはこのうち単体で普通の精神を持つ対象に効果を及ぼす平均的な中級のものにあたる)。一方で、魅了を「戦闘にあまり関係ないか使いづらい」といった理由で、TRPGであっても軽視されていたり、さほどバリエーションがないものも多いが、どちらにせよなんらかの魔法として存在していることが多い。これらTRPGでは、プレイヤーらの魔法としての「魅了」は、魅了自体の効果は強力すぎるとゲームシステムとして使用しづらいためか、説話によくあるような恋愛や隷属(かつての味方に襲い掛かる等)といった強力なものではなく、友人と思わせるような弱いもので、ただし術者の提案を受け入れやすい(精神自体も軟化させる)効果となっていることが多い。
 しかし、むしろ目立つのはモンスターの特殊能力となっている例であるかもしれない。妖精系モンスターのようないかにもなものから、吸血鬼の支配能力など精神操作を一律魅了のルールとしている場合も数多い(この場合、上記の魔法としての魅了より強力な恋愛や隷属の効果のこともある)。一方で、魅了の効果は会話やストーリー展開などどうしてもアナログな処理になりがちなため、CRPGなどでは、ほかの精神操作、混乱(同士討ち)や眠りに近いものとして処理されていることも多い。仲間を増やす類のゲームでその手段として使用される場合もある。
 *bandにおいては、「魅了系」の魔法の歴史はかなり浅く、いわゆるペットシステムが導入された[Z]において魅了=懐柔の概念がシステム化されたといえる。[Z]の仙術の「魅了の視線」や、同系の懐柔のワンド、また生命、暗黒、自然などに全系や特定系統の対象を懐柔しペット化する魔法がある。当然だが、完全に支配下に置いてしまうので「魅了魔法」「能力」の類としてはかなり強力なものということになる。無論、そのためモンスター等で(元来)特殊能力として魅了を持つものも、こうした魅了魔法を使ってくるわけではない。それまでのMoriaや[V]では、モンスターの持つ特殊能力としての魅了は、麻痺や精神操作系の攻撃、魔法などで再現されていたといえる。



ムアル Muar, the Balrog 【敵】

 マイア。嵐炎のバルログ。ICE社によるアルダ世界のTRPG, MERPの設定に存在するバルログの一体である。アルダの第一紀に初代の冥王モルゴスの親衛隊であった火神バルログ(→参照)は、ほとんどが第一紀の最後のモルゴスの失墜とともに同様に虚空に追放されたが、『指輪物語』のドゥリンの禍のように、南下して山脈に隠れ眠っていたものもいた。それ以外に、第二紀に中つ国東部に潜伏し、ここに住むドワーフのドルーイン一族と戦った、という設定のバルログがこのムアルである。どちらかというと、バルログのというよりもドルーイン一族の設定を深める(トールキンの原典にはドワーフの七氏族のうち、主のドゥリン一族の記述以外ほとんどないため、ICE社の設定では他氏族の設定が大幅に創作されている)ために創造されたといえるだろう。
 ICE設定において、ムアルはもとウルヴァイワ(炎の風)という名のマイアの聖霊で、もとは常若のヴァーナという風水のヴァリエア(上級女神)に仕え、またアリエン(太陽の聖霊)の同族だった。しかし、モルゴスに従って反乱を起こし、エルフらとの最初の「星々の下の戦い」において北東の攻撃を担当した。そのまま北東でアヴァリらと戦い続けたため(ムアル、東の悪魔とはアヴァリらが呼んだ名である)西のベレリアンドでモルゴスが失墜した後も生き残った。第二紀に入ると、風の山脈のカザド=マドゥールのドルーイン一族と激しく戦ったが、第一紀以降弱体化している上に(至上神にそむいたマイアール(半神聖霊)らは次第に弱体化するとトールキンの記述にあるが、第一紀の間はモルゴスに力を授けられていたものの、モルゴスの失墜後は指輪を作ったサウロンなどを除くと弱体化する一方だったと思われる)ドゥリンの禍と異なり充分に休息期間もとれなかったため次第に追い詰められ、遂にはドワーフ最大の僧侶(呪術師)である「石の手バリ(→参照)」によって封印(実質の活動停止)されたが、そのさいにバリに呪いをかけ、その手を石化させている。
 ICE設定のムアルは標準的なバルログよりは若干上、ドゥリンの禍よりは下の能力を持つ。「アドゥゴロス(二重の恐怖)」と呼ばれる途中から二本に分かれた鞭と、「ゴルドリング(恐怖の槌)」という火炎のハンマーを武器に持つ。
 *bandでのムアルは[V]から登場し、そのデータは遥かに[V]の原型であるゲームMoriaが、最下層の50階に待つラスボスとして採用している敵であったのを、[V]ではマイナーなバルログである『ムアル』の名で用いている。しかしながら、ICE設定を排除する[Z]では無くなり(ただし、そのままのデータでノーマルモンスター化し「バルログ」になっている)一方アルダを舞台としたPernAngbandでは名前だけが『モリアのバルログ』、ToMEや[O]そのほかアルダ系バリアントでは『ドゥリンの禍』に差し替えられている。[V]ではムアルとドゥリンの禍を同一視していたのか、あるいはドゥリンの禍の方は名前がわからないのでムアルをかわりに用いていたのかは不明である。例えば[V]では、ICE設定ではドゥリンの禍のもつ剣となっているカルリス(→参照)を、(スポイラーファイルによると)なぜかルンゴルシン(→参照。なおICE設定ではルンゴルシンの剣は別にある)の剣と設定していたりと、ICE設定の名を使用しながら設定を意図的に変更している部分があるため、このあたりは定かではない。
 Moriaのバルログは、(*bandにおけるモルゴスやサーペントとは異なり)最大レベルに達し物資を集めたとしても極めて強力な敵で「倒せないのが自然」であった。ムアルは同じデータで、[V]やアルダが舞台の[O]などにそのまま踏襲されており、一応Moriaのそれに加えてデーモンを引き連れて現れ、デーモン召喚の能力も追加されているが、こちらでは50階に達する頃にはモリアでの最大レベルよりもプレイヤーの方が強力になっているのでさほどでもない。



無傷の球 Globe of Invulnerability 【システム】

 GoI, GoIn, 強引呪文などとも呼ばれる。[V]の[テンサーの変容]の呪文書に含まれるメイジ呪文で、早い話がすべての攻撃を無力化することができる。
 名前のみは、AD&Dの同名の呪文から採られていると考えられる。AD&Dでは「弱い呪文のみを遮断するバリアー」で、(使い手のキャラクターレベルに関わらず)呪文レベルが4までのものを無効化する(AD&Dは基本ルールでは最大の呪文レベルは9であり、4レベルは「下半分未満」と言える。なお3レベルまでを無効化する廉価版の呪文もある)。すぐれた呪文ではあるが、呪文のみを遮断することからも「Invulnerability(傷つけられることなし、弱点のない)」という意味合いとは少し違う。魔法使い同士の戦いにおいては、それほどまでに頼もしい呪文であることは確かではある。
 [V]では一転して全く効果が異なり、この名前通りというべきか、すべての攻撃をほとんどの確率で無効化する。[V]ではこの呪文はメイジしか使用できないが、これが使用できるようになったメイジは、自分から死のうとでも思わない限り、死ぬことはまずなくなる。[V]のメイジが段違いにクリアしやすいと言われる所以である。
 この点自体も含めて、何より[V]メイジの終盤は、MPをほぼ無傷球につぎ込んで([V]では打撃武器のペナルティーもほとんどないことから)ひたすら殴るだけというプレイスタイル「強引進行」になることに対して、数々の論議が繰り返されてきた。GoInBandなど、この呪文を調整したことがタイトルの売りになるバリアントまで存在するほどである。
 [V]からバランスを調整したということが売りの[O]では、この呪文自体がなくなり、強力ではあるが無敵化ではない呪文に差し替えられた。それ以外のバリアントでこれをどう扱うかは、弱体化するもの、貫通手段などを多数設けるもの等、様々である。この「無敵」の効果自体の試行錯誤の顛末については、「無敵化」の項目に譲る。



蟲の大群 Insect swarm 【敵】

 インセクト・スウォームは、単体でもモンスターとなりうる巨大蟲(ジャイアント・ヴァーミン)の類ではなく、普通の昆虫の群れが「ひとかたまり」でモンスターとして扱われているものを指す。なお、Insectは昆虫を指し、通常「羽虫」と訳されるが、実質上はTRPGでのインセクトスウォームは、インセクトという名にもかかわらず、飛行するもの以外にも地を這うもの、また昆虫以外のクモやムカデでもありうる。そのため昆虫以外の広義のムシを指す「蟲(ヴァーミンの訳であることが多い)」という*bandの訳語は妥当である。
 古いTRPG(D&D, T&T, BRPなど)以来、これが罠や仕掛けの類ではなく「モンスター」となっているのだが、これは地下探索を主な目的とした最も古いTRPGのゲームから、徐々に屋外を舞台とするルールが追加され、そのさいに屋外における遭遇や、モンスターの脅威、屋外での魔法で召喚される効果として、こうしたものが水増しされたという事情もある。同様に屋外で突如として遭遇する水増し脅威として、アニマルハード(鹿などの群れが突如として突っ切ってくる)がある。
 これらRPGでは、一応ヒットポイントなどがモンスターと同様に扱われているものの、中にいるものが自動的にダメージを被るといった攻撃方法、また群れの方も火などで自動的にダメージを受け、ヒットポイントの減少は匹数の減少を示すなどといった特殊なルールになっていることがほとんどである。もっとも別の形(ダメージ呪文そのものの効果など)で有害な虫の群れを表現している場合もあり、ルールは一貫していない。
 *bandでは、おそらく比較的無害な羽虫の群れを指すと思われ、イモムシの大群やかなぶん(→ハマーホーン)、ハチのような別のモンスターとして表現されているものは除いたものを指すといえそうである。[Z]から追加されていることから、これもあるいは「屋外」でのモンスターを増やすという発想だったのかもしれない。ここではダメージなどにおいても普通のモンスターであり、特殊なルールにはなっていない。1階のモンスターとしてはスピードも高く攻撃力もあるので、実は序盤の死因ランクとしては上位にいる。シンボルから勘違いされることもあるが増殖することはないので、飛び道具などで落ち着いて倒すのが望ましい。TRPGでは群れの規模によって決してヒットポイントは低くないことも多いが、*bandではさほど大きな群れではないのか非常に耐久力は低いので、遠くから先制できれば問題なく倒すことができる。



ムーマク Mumak 【敵】

 出典:最大の陸上哺乳類である「象」に対する、非生息地で膨れ上がった想像上の形容や説話が、トールキンのアルダ世界のスケールにあってはその誇張そのままの形で具現化してしまった存在。中つ国の南方国ハラドに生息し、ハラド人はこれを馴らしており、第三紀末の指輪戦争ではサウロンに操られたハラド軍に率いられ、ムーマクの部隊がゴンドールに出現した。「ムーマク」はハラド語で、ともに出てくる表記「ムマキル」がその複数形と考えられているが、ハラド語は全般その意味はつまびらかでない。ただし、マストドン(これ自体「昔の象」の意)らの学名に使われる語「マムート」を思わせる語である。
 本文によると、遠縁である現代(我々の住む現実世界か、単に赤表紙本が編集された第四紀かは定かでない)のゾウは威容でも力でもこのムーマクに遠く及ばず、わずかに面影を残すものでしかないらしい。また実在のゾウは極めて温和な動物なのだが、ムーマクは非常に勇猛なようである。牙と爪はともに血塗られ、皮は刃も矢も弾き返すため、文字通り何者もその進行を止めることはできない。豪華で恐ろしげな化粧・飾りをつけ、城のようなやぐらを背に乗せて、ハラド人らはその上から戦うことができる。
 その姿はなぜかホビットの唱歌に(どういった経由で伝わったものやら)「じゅう(Oliphant)」として唄われており(なお、現実にはoliphantという語はelephantの古ラテン原型に近い)大長虫やファスティトカロン同様の法螺話とされていたが、『指輪物語』において主人公らの眼前に実際に姿を現す。ハラド軍がイシリエンを攻撃している場面で、統制を失って敵味方ともに踏み潰し荒れ狂っている姿であった。おそらく、トールキンはどちらかの軍の側について戦っている姿よりも、「どうにもならないただ巨大な存在」としてこのムーマクの姿を強調したかったのであろう。
 映画版LotRでは、TTTでの原作と同じイシリエンの場面の他に、RotKのペレンノール野の合戦に参加したものが登場する(原作のペレンノール野の場面では、参加して要人を倒したことは説明されるが直接の姿の描写はない)。象に比べて遥かな威容と凶暴さという点をCGクリーチャーでどう表現するかというのは、映画の特殊効果に対する最も大きな興味の対象であったが、蓋をあけて出てきたのは単純に予想を遥かに上回るばかでかさ、即ちスーパーロボット大戦ですらLサイズになってしまうような代物で「おいおいこりゃやりすぎだよPJ&Wetaスタッフ」との念は避けがたいものがあった。しかし、鼻先に乗って部隊を操縦していた超兄貴がエオメルの槍に倒されるとコントロールを失ったり、メリーと相乗りのエオウィンをはじめとする人間離れした勇猛さを見せるローハン騎士ら、もはやギャグの域に達しているレゴラスの活躍などの前には、彼らとて不死身ではなかったようである。それほどの巨大な存在ですら命ある「生き物」でしかないということを感じさせる点に、逆に奇妙な迫力があった。
 RPGでは、トールキン独自のモンスターだけに「ムーマク」という名で登場する例は少ないものの、AD&D 2ndには象の一種としてOliphantというものがある。これはマストドンのように毛に覆われた象とあるのだが、なぜかトールキンのムーマクとはある意味逆に「ゾウやマンモスより小型」である。どうやらoliphantという古語に対して、より小型であった原始的な長鼻類の祖先(フィオミア、ゴンフォテリウム等)をイメージしているのかもしれない。NetHackに登場する「ムーマク」は、珍しくこのAD&Dのoliphantとはかなり異なるデータになっている;NetHackが参照しているAD&D 1stの時点では基本モンスターにはおらず、あるいはNetHack製作当時まだデータがなかったか、あるいは参照していなかったのかもしれない。ともあれNetHackで独自に製作された(おそらく指輪物語のものと特定された)ムーマクは、原作での凶暴さからか大きさ(ヒットダイス)はともあれ、ダメージの強烈さが最大の特徴である。
 敵:*bandにおいては[V]から登場する動物モンスターの一種で、集団で登場し、特殊能力は一切持たず、宝も落とさず、きわめて堅実な耐久力と頑強な攻撃力を有する。登場階層の割にかなり強いがそれに見合った経験も保障するため、特殊能力がないこととも相まって、着実に経験を積むための相手として血を吐きつつ立ち止まり鋼で漕ぐ修練のときを迎えるといったプレイヤーの姿も見られる。



ムラゾール Murazor 【敵】

 →アングマールの魔王



村正 The Katana 'Muramasa' 【物品】

 RPGでは『ウィザードリィ』に登場する、桁外れの破壊力を持ち、侍にしか使えない武器があまりにも有名である。元々英語版では「Murasama Blade!」となっていたが(そのため元は「村雨」ではないかと噂されたが、単に作者によるとMuramasaの綴り間違いであるという)現在は日本語版の「村正」ですっかり定着している。
 実際の伝承の「妖刀村正」こと、勢州千子村正は、偶然ながら徳川家を傷つけることが多かったため、幕府が禁令を出し逆に幕末などに反幕府勢力が集めるなど、げん担ぎが信じられたという説話があるが、どこまでが後世の創作かは定かでない。刀匠村正が師の正宗にそむき邪道に堕ちたため腕を切られた等は後に出来た伝説である(実際は生存年月が重なっていたか定かではない)。
 現存する村正の刀は、800万円程度で、いわゆる銘刀と言われる中では中の下程度でしかない。孫六兼元などの特に切れ味が優れた刀匠に与えられる「業物〜最上大業物」等の位づけもない(もっとも、諸々の事情が許さず試されなかった名刀も多いため、位づけがないからといって切れ味が劣ると決まるわけではない。が、お墨付きがないことは確かである)。正宗と同じ互に湾れ大乱れや深い沸といった、いかにも禍々しい刃紋か何かのように信じられていることがあるが、実際は刃紋は簡素でゆるやかな箱乱れで、裏表の紋が綺麗に揃っており、沸・匂いは浅くきわめて素っ気無い印象である。
 村正やムラマサブレード、それをモチーフとした妖刀は、海外RPGではAD&Dのオリエンタルアドベンチャーをベースとする和風設定を取り入れたものや、特に日本では『ウィザードリィ』の直接の影響で、様々なRPGに洋風和風の世界設定を問わず登場する。Roguelikeでは、オリエンタルアドベンチャーの影響の強いNetHackにもアーティファクト「村正の刀」として登場する。侍のクエストの目的アーティファクトで以後の標準装備でもある。ベースアイテムが「カタナ」でなく、英語で「ツルギ」となっている。日本語の用法では「剣(つるぎ)」とは、湾曲した打刀や太刀とは異なり、直刀のみであるが、草薙之剣の項目でも述べるが日本神話で知られる天叢雲「剣」が『古事記』では都牟刈の「太刀」と記述されていたりもするので、このあたりを典拠として日本神話を読む海外ファンからは剣と太刀の語そのものが混合していることも多いと思われる。NetHackの村正の刀は「大名佐藤」の家宝で「足利尊氏」が持っているなど、突っ込み所は満載である。低確率で敵を真っ二つにするが、クエストにて足利尊氏に自分が真っ二つにされたという報告は絶えない。
 その他、RLに登場するものとしては、変わったところでは割と新しい日本製RLとして、『風来のシレン5』に登場する「血引きの刃」系列のものがある。シレン5では、ベース武器・盾は使用していくうちに(ToMEのつらぬき丸等のように)成長し、能力が高まると共に名前も変わっていくのだが、「血引きの刃」は成長していくとやがて「妖刀村正」、最終的にゲーマーには定番の「ムラマサブレイド」となる。血引きの刃は、隣接するとどちらかが倒れるまで双方移動できない、という禍々しい武器で、特に移動・逃走が重要なRLであるシレンでは非常に使いにくい。威力もさほど大きいわけではなく、「ムラマサブレイド」まで育っても、シレンの中堅武器である「カタナ」「どうたぬき」の最高品質のものに威力は劣る。あくまで威力ではなく呪いのような効果が主眼の武器で、上述した村正の背景からはかえって妥当なように思われる。命取りにすらなりかねない武器だが、wizや*bandの愛好家としては、1本は「ムラマサブレイド」まで育ててみたいものであろう。
 さて『ウィザードリィ』の村正が、[Z]の「日本語版」から追加されたわけだが、[Z]の掲示板で一度アーティファクト追加の話で盛り上がったのと、純粋な板倉氏の趣味(Wizファン)によるもののようである。ベースダメージ10d5は『ウィザードリィ』のダメージと同じであり、特に、ベースダメージが非常に重要な2.4.0ではかなり反則であるが、(さらに、[変]開発者Mr. Hoge氏の「カタナなのでd4の倍数にしないと不自然だ」との主張にも関わらず)原典にあわせるため無理矢理そのままにしてある、と板倉氏がコメントまでしていた。『ウィザードリィ』と同様、「発動」するとスペシャルパワー(腕力追加)を発揮した後に消滅する芸の細かさである。また、アーティファクトには数少ない「吸血」属性は、板倉氏によると『悪魔城ドラキュラ』シリーズから取っているものらしい。
 [変]では、大抵TY_CURSE(太古の忌まわしい呪い)がかかるが、クラスなどの組み合わせによっては何とか使いものになる場合もあるので、アーマークラス低下などの危険を承知で考慮してみてもいいかもしれない。



ムンドウィネ The Lochaber Axe 'Mundwine' 【物品】

 ICE社の指輪物語TRPGことMERPの設定において、第三紀17世紀ごろのゴンドールのキリス・ウンゴル(ゴンドールの勢力範囲だった頃)の駐留武将のひとり、アスガヴィアが所持している武器である。アスガヴィアは、エルダカール王(ローハン人を王妃にし、簒奪者カスタミア(→参照)も出した王)に仕えていたローハン人を先祖にもち、このムンドウィネの剣もその頃から代々伝わってきた品というが、さらに遡るとドラゴンの巣(もとエオル王家が灰色山脈の近くにいた頃、スカサ(→参照)などと戦っていた頃のものであろうか)にあったもので、ドワーフの合金で作られ魔力がこめられた広刃の剣である。「ムンドウィネ」とはローハン語で「防衛者の友」を意味する。MERPのデータでは、つらぬき丸などと同格あたりのボーナスの武器だが、魔法を破る呪文を発することもできる。
 *bandでは[V]以来「ムンドウィネ」という同名の武器が存在するが、これはなぜか広刃の剣でなく、斧となっている。能力的にもMERPの物品とはあまり関係がない。故に、[V]のいくつかの、MERPのものと名前は同じだが共通点が見られない武器と同様に、互いのゲームで別々に創作された偶然の一致の可能性もある。実際に「ムンドウィネ」もローハン語でも特に容易に意味の取れる単語からできている。ただし、ありふれたエルフ語ほどにはその可能性は高くないかもしれない。MERPを参照しても詳細を調査されなかった可能性や、名前だけを流用した可能性も高い。
 [Z]以降は「ドワーフのロッコバー・アックス」に変更されているが、これは「ドワーフ造り」という設定がなんらかの形で偶然合流したか、取り入れられたか、あるいは[V]で斧であったのでドワーフとつけただけで、まったくの偶然かもしれず、詳しいことは不明である。いずれにせよ、中堅程度の威力を持つ物品のひとつである。



冥王モルゴスの堂々たる鉄冠 The Massive Iron Crown of Morgoth 【物品】

 トールキン作品のアルダ第一紀(伝説時代)に、地下帝国アングバンドの玉座に座する冥王モルゴスがかぶっていた鉄の巨大な冠。これは、モルゴスがアルダの至宝である三つの大宝玉シルマリル(→フェアノール、ドワーフの首飾り等参照)を奪って、アマン(神々の地)から中つ国に逃げ、アングバンドに立てこもった際、この三つのシルマリルをはめこんだ冠である。それ以前の神話時代にウツムノを支配していた頃には何かの冠を持っていたのか、またこのアングバンドでの鉄冠がウツムノ時代のものと同じものなのかは定かではないのだが、「この至宝をはめこむために」鉄冠自体を作った可能性が高い。この宝玉を最も身近に置いておくために、冠にはめこんだと読み取れる節があるためである。この鉄の冠は異常なほど重かったが、モルゴスはこの冠を決して外そうとはしなかった。
 のちに、冠の三つのシルマリルのうちひとつは英雄ベレンがアングバンドに侵入したときにもぎ取られ(→アングリスト)最後にモルゴスが大会戦で倒された時、残り2つのシルマリルはヴァリノール軍の指揮官エオンウェ(→参照)に取り戻され(直後にマエズロスとマグロールが盗み出す)残ったこの鉄の冠は、モルゴスを虚空に縛っておくさい頸にはめる枷へと作りかえられた。
 [V]以来アルダ系のバリアントにおいて、モルゴスを倒すとグロンド(→参照)と共に手に入る「勝利アイテム」である。モルゴスのモンスターの思い出記述によると、冠にはシルマリルが2つだけ残っているとあり、ベレンに一つ奪われた後であるらしい。よく海外の画像でモルゴスがフィンゴルフィンと戦う場面(→リンギル、グロンド)に描かれているが、これはベレンの挿話より前なのでこのときには3つ残っている。なお海外のモルゴスのイラストではシルマリルは額の部分にはめこんであることが多いが、*bandのアーティファクト解説文の記述では冠の突起の先についているという解釈であるらしい。巨人サイズのモルゴスの冠であり、しかもそのモルゴスにとって重過ぎるほどであるから、人間サイズのプレイヤーキャラクターにとっては相当なものあるはずだが、*bandでは普通に冠スロットでかぶれる上に、なぜか、原作の「異常なほど重い」といえるほどの重量のデータではない。原作では、モルゴスはシルマリルに触れた時に手に火傷を負った(シルマリルは所有者でない者や闇の生物を焼く性質がある)とはあるが、アーティファクト解説にはその光は冠の上からもモルゴスを痛みで苛むと書かれている。
 永遠の呪いがかかっており、一度かぶると外すことはできないが(これはシルマリルの魅了効果であるのか、モルゴスのように枷に縛られてしまうのか定かではないが)非常に多くの耐性・能力と、全能力最大値が保証される能力増強(各+125)をもたらす。これは二つ残っているシルマリルの巨大な力や、鉄冠自身の力とも言えるのだが、むしろ「勝利アイテム」であるためのボーナスの側面が大きいだろう。その莫大な能力は勝利アイテムとしての迫力は十二分である。実用性という面で言うと、反感や太古の怨念があると勘違いされていることがあるが、そういったものはないので、永遠の呪いを割り切るならば、かぶり続けてもよいかもしれない(勝利後ならどのみちあまり関係ないかもしれないが)。
 [Z]系などアンバー系のバリアントでは「混沌の堂々たる鉄冠」に差し替えられ、モルゴスではなくサーペントがグロンドと共に落とす。

 →モルゴス →グロンド →混沌の堂々たる鉄冠



迷宮 Maze 【その他】

 RPG一般の舞台となる「地下迷宮」、ないしさらに一般的な「迷路」に関して述べていてはきりがないので、ここでは*bandのダンジョンのひとつ「迷宮」のような形状の迷路とそのモチーフとなったギリシアのテセウス説話の迷宮に絞る。
 クレタ王が作り、テセウスがミノタウロスと戦った(→ミノタウルス)迷宮ラビュリントスが英語の迷宮 labyrinthの語源でもあるが、この迷宮は無論のこと神話でしかないと信じられていたため、1900年にクレタ島のクノッソス宮殿の遺跡が発見されたことは計り知れない驚愕をもたらした。クノッソス宮殿は1000以上の部屋があり、部分的には4階建てで、作成された宮殿全図は眩暈すら起こさせるものである。この図を目にしたとき、神話の迷宮説話が圧倒的な説得力で眼前に出現したことが当時の人々にどれほどの衝撃をもたらしたかは想像に余りある。
 ただし、この宮殿自体はクレタ王の居城であり、神話の通りの牢獄用の迷宮そのものでは別にない。一説には、見つかった貨幣にも刻まれている渦巻き状の単純な迷路図の方が、その通りの迷宮がかつては実在したとも、また宮殿の当時に単に神話に合わせて描かれたものともいわれている。
 「渦巻き」はクノッソスの大宮殿と比べれば、迷宮というにはいささか単純なものに映るかもしれない。しかし、つまるところ渦巻き状は、少ない面積を区切って脱出を困難にする最も基本的な間取りであるといえる。NetHackのゲヘナレベルにせよ、*bandの迷宮にせよ、すぐ近くなのにぐるぐると回りこまなくてはならない地形からはそれらを痛感するプレイヤーも多いだろう。
 *bandの「迷宮」ダンジョンは、ToMEから発して[変]にも登場するものだが(ここでは原語名はラビリンスではなく、メイズである)ToMEでも特にトールキンやロールマスターなどから採られたというわけではなく、わりとNetHackのゲヘナレベルなどからのアイディアに過ぎないかもしれない。しかしながら、その地形に加えて踏破した土地も一部しか見えないという、生成はランダムだが歩いた土地が自動的にマッピングされるRoguelikeのお約束を逆手にとったようなアイディアといえ、「迷宮探索」の*bandにおいて別種の「地下迷宮」を与える案としては秀逸である。ToMEにしろ[変]にしろ、便利な物品もとめて序盤から前半戦なかばに突入したあたりに赴くことになるため、しばらく同じようなダンジョンを潜り続けた半ばに挿入されるよいアクセントである。が、はっきりいって探索しにくいので長居するような場所では勿論ない。



メイジ Mage 【クラス】【敵】

 出典:mageとは元来は古代メディアおよびゾロアスター教の世襲的な司祭階級であり、拝火の秘蹟を行う者から転じて、魔法の使い手の最も一般的な語のひとつと変じたものである。ラテン系で単数形をmagus(メイガス)、複数形がmagi(マギ)という語と同根であり、これらの単数・複数と混合して使用されることも多い。(ただし、固有名詞としてthe Magi/Magusと言う場合、特に例のキリスト誕生に関わるオリエントの3賢者を指すのが慣用となっている。)余談であるがヒロイックファンタジーの古典『コナン』シリーズの、宿敵トート・アモンをはじめとする魔術師の数々が「ペルシアの高僧」でもあることが多いのはこれと関係していることは言うまでもない。
 魔法の使い手に関する様々な語の語意とその使われ方を概説することは大変に困難だが、magicianに対してmageは現代では(日常では)まず使われない古語とされ、手品師やその他くだけた語意も含む前者に対して、後者は「魔法を扱う者」を特に強調する側面が強いと言える。(団精二や朝松健らがmage/magusを「魔道士」としオカルティックな面を強調したのが日本では普及している。)これに比べてwizardやsorcererは「魔法の使い手」というだけではない意味合いも、強く含んでいる語である(wizardryやsorcery自体が、「純粋に魔法ではない」行いも含む。なお独立してエントリーを設けるが、wizardやwitchはそれぞれ完全に別の語源の言葉で、本来の語意はmageとはまったく異なっている)。
 RPGをはじめとするファンタジー作品での「メイジ」の語の使われ方は、同じ「純粋な魔法使い」としての語義に従ったとしても、畏敬的に高級な術者を示す場合から、逆に魔法使い一般・低級の術者を示す場合まで様々である。例えば、AD&D1stでは16レベルに達したマジックユーザー(「英雄」の標準であるネームレベルはマジックユーザーの場合11レベルであり、単なる英雄級より遥かに上である)をMage / Master Wizard, 18レベルの者をArchmageと言う上級称号で呼び、mageは明らかに高級術者のみの尊称だが、AD&D2ndではうって変わってmageは魔法使いのクラス群のうち最も一般的で総合的・器用貧乏的に魔法を使える職種の「クラス名」となっている。日本では、どちらかと言えばオカルトでは前者の高級術者、ファンタジーやRPGでは後者の総合術者・基本術者の意に近いことが多い。
 クラス:RoguelikeではMoriaから使用されるクラスおよび敵としてのメイジの語は、おそらく純粋な魔法の使い手としての面で、なおかつ専門の内容を特定しない一般的な語としての選択であろうと思われる。
 Moriaおよび[V]、[O]などの[V]と同系列、および[X]のメイジは、感知・移動・防御・攻撃の全面においてきわめて万能的な魔法を揃えている。重なりも多く、やや過剰に思えるほどである。
 [Z]系やToME1.0では[V]のような単一のメイジ系魔法ではなく、いくつかの魔法体系の中から大概ふたつを選択できるようになっている。それぞれの体系は状況ごとには特化して強力であるが、[V]ほど汎用的なメイジはできない(最も[V]に近いと言われる仙術+カオスは、移動と攻撃は[V]以上に強力だが、重なりも多く、いくつかの防御魔法や空腹充足に欠ける)。[Z]の、何種類かの体系(色)から2色を選ぶというのは、[Z]の魔法のモチーフであるというカードゲームMagic: the Gatheringにおいてプレイヤーがカードのデッキを組む時、一種類では対応性が落ちるので2色を混ぜることが多い、というのがヒントとなっているのかもしれない。ToMEでは旧版(Pernangband)では[V]のメイジと同じものをウィザードというクラスにしていたことがあったが、ToME1.0では[V]メイジの魔法体系を「魔術」として独立させた。
 Moria/[V]より、メイジの肉体能力の低さは序盤は相当な慎重さを要求するが、装備品の制限が比較的緩く、中盤以降は打撃も可能である。ガントレットの制限や、重すぎる場合のMP減少がメイジの場合は厳しいが、魔法使い系はほとんど武器防具が装備できない他のRPGに比べてかなり緩いと言える。これは、LotRのガンダルフや、前記のコナンやファファード&グレイマウザー等古典的なファンタジーの魔法使いが、必ずしも剣技において劣っていない(TRPGでの役割分担のため打撃が不可能になったのはD&D以降である)ことを参照してもいるだろうが、単純にクラスが少ないMoriaや[V]において、プレイのバリエーションを設けるため完全に装備や打撃を封じないためと思われる。もっとも後述もするが、[O], [Z]240, [変]などではメイジの打撃のウェイトは減少し、かなり魔法使い寄りになっており、また、他に多数のクラスを擁するバリアントでは、装備や打撃がほとんど不可能で魔法のみに特化した[変]のスペルマスターやToME1.0系のソーサラーなどのクラスが見られる。
 [V]では、メイジは唯一「無傷の球」(→参照)の魔法が使用できるクラスで、無傷球を唱えておけばあとはひたすら殴るだけで死ぬこともない(そのため[V]では終盤のクリアのみで言えば最も容易なクラスである)という結果的に単調になることが議論されてきた。[O]では無傷の球がかなり弱い防御魔法に差し換えられ、また[O], [Z]240では打撃自体の威力低下に伴って、メイジが打撃に頼る率が低下した。また、[変]では無傷球を無効化する手段が何種類かあり、また技能の関係でメイジの打撃能力が低下している。[変]では他のバリアントにはない「魔力食い」というレイシャルパワーが強力で、魔力回復の薬の数量のみで勝敗が決まる状態をうまく打開している。
 メイジは概して、序盤の生存率の低さと魔法の慣れ・マクロの知識が必要など上級者向きと言われるが、戦い方がはっきりしており、また装備によって極度に強さが変動することもないため力を把握しやすく、打撃を度外視して耐性を揃えやすいメイジは、中途半端になりがちなデュアルクラスよりも一度戦士系でゲームに慣れた次の選択としては向いているかもしれない。
 敵:[V]以降、汎用的な敵モンスターとして登場する「見習いメイジ」「メイジ」は、いずれも低レベルであり、「ソーサラー」や「幻術師」などに対してやはり一般的・下級なマジックユーザーを指している語と思われる(例として、ダークエルフの魔法使い系はメイジ→ワーロック→ソーサラーの順になっている)。「メイジ」はそれほど強くないがなにげにモンスター召喚を持っていたりするので侮れない。ノーム・メイジは他項目に譲るが、また、オーガ・メイジは意外にかなり強力な冷却や召喚の魔法を持っているので、多数のオーガの中に紛れ込んでいた場合は一応注意が必要である。



メッツォデーモン Mezzodaemon 【敵】

 MezzodaemonはかつてのAD&Dにおけるダイモーン(「中立にして悪」の属性を持つ悪鬼)の一種とされるモンスターである。ダイモーン daemonという英語は一般には「小神」「使役霊」の意でなおかつdemonと同義に用いられることもある語だが、AD&Dでは、<下方世界>の<苦界(ゲヘナ)>原住とされる、「中立にして悪」の生物を指す。厳密には「中立にして悪」の極致である次元界は<ハデス>なのだが、ハデスはデヴィル(秩序)とデーモン(混沌)の永遠の闘争(流血戦争)の戦場になっているので、ダイモーンらはそれを避けてゲヘナに住んでいる、という説もある。ダイモーンらはこの流血戦争に傭兵としてどちらの陣営にも雇われて戦う。実際のところ、デヴィルやデーモンほどポピュラーでもなく有名悪魔もさほどいないダイモーンらは、D&D系のゲームにはこの流血戦争の傭兵として登場するのがもっぱらなのかもしれない。
 Mezzodaemonはその数々のダイモーンの一種で、その名前はダイモーンの規模・カテゴリの中で、ほぼ「中間」に位置することからmezzo- 中という名だと思われる。奔放な想像力の限りのような姿のデヴィルやデーモンとは異なりどうもインパクトに欠けデザインコンセプトの統一性もないようなダイモーンらだが、Mezzodaemonは昆虫のような外皮と球状の目を持つ、どちらかというと異界人というより古典的異星人の一種のようなイメージである。ハインライン『宇宙の戦士』の昆虫兵なぞのイメージ(D&D系には何か他にもそんなのがいたような気がするが)なのか、その能力・習性ともに秩序だった戦闘能力に特化しており、大集団でトライデントと盾を持っている。各種の魔法をあやつり、特にテレポートを駆使した戦法を用いる。
 なお、現在のD&D系ではゲーム内の悪魔に対して実在の用語が避けられる傾向があり(徹底してはいないが)AD&D 1st当時におけるダイモーンは、D&D 3e系では「ユゴーロス」、そしてかつてMezzodaemonであったデータのものは「メゾロス」という名になっている。
 *bandには[Z]において取り入られている。[Z]邦訳では、本来はダイモーン daemonであるところが「デーモン」(demon)と訳されている。しかし、思い出解説にもなぜかdemonという説明になっており、特に[Z]では、これら悪鬼らの区別は厳密なものではないので(→デーモン)かえってひっくるめてデーモンとしたこのほうが妥当な訳といえるものかもしれない。36階のノーマルモンスターで、特に集団で現れるというわけでもなく、若干肉体能力は高いものの、魔法はショートテレポート、暗闇とデーモン召喚しか持っておらず、強力な打撃魔法の類はない。



メット Buzzy beetle 【敵】

 メットはゲーム『マリオ』シリーズに「スーパーマリオブラザーズ」から登場する敵キャラである。亀のクッパ大王の部下である亀の一種とされるが、金属のヘルメットを思わせる黒い甲羅を持つことでこの名がある。ファイアーマリオ化したマリオの主攻撃であるファイアー攻撃を跳ね返す特性があるため、一般の敵キャラの中では厄介な敵とされる。以後のシリーズでは単純なヘルメット型でなく、トゲなどが生えてなおかつ防御力は保ったバリエーションもいる。
 *bandの思い出解説にも「噂では中にクリボーがいる」というくだりがあるが、クリボー(→参照)は亀でなくキノコ一族(クッパ側に寝返ったもの)なので別種族である。が、いわゆる裏面の高難易度ではクリボーがメットに置き換わっている等からも、そうした説もないでもないという。わずかに出した頭の姿もあまり亀には見えない(ちなみに黒いヘルメットと縁取りが、漫画「キン肉マン」のウォーズマンを思わせるともよく言われている)。
 Buzzy beetleとは英語版のマリオでのメットの名で、「うなる(せわしく動き回る)甲虫」の意になるが、その黒い殻の外見から亀よりも甲虫を連想しての名と思われる。英語版マリオはこうした見かけ優先で名をつけているため、元のキノコと亀の対立といった設定よりかなり多彩な勢力図になっている側面がある。
 *bandでは[変]に多数追加された『マリオ』シリーズの一種として入っているものである。低層の敵だが、反射や各種耐性、さらには階層に関わらずかなり高いアーマークラスで防御力の高さが表現されている。一応シンボルは爬虫類の'R'だが、亀なのかキノコなのかはっきりしないためなのかは定かではないが、ANIMALフラグはついていない。



メデューサ Medusa, the Gorgon 【敵】

 石化の眼光を持つ蛇髪女として「メデューサ」は個体名ではなく種族名などになっている場合などもあるが、*bandではギリシアのゴーゴンの一体としてのメデューサである。ゴーゴンという名前自体も、D&D系の流れのRoguelikeでは、リビアの伝承の方に発する石化ブレスの牛、という別義のノーマルモンスターも別にいるが、詳細はゴーゴンの項目に譲る。
 ギリシアのゴーゴン(ゴルゴー)は、海神フォルキュス(ローマのオルクス神との関係も言及される)とケト(フォルキュスともども、古い海洋神オケアノスの娘である)を父母とする三姉妹を指し、末妹の「メデューサ」のみは不死ではない。ゴーゴン姉妹はもとは美女だったとも、あるいは元々石化の目と蛇の髪を持っていたとされることも多いが、どちらにせよ、メデューサは神殿をポセイドンとの密会に使ったために天罰を受けて怪物となったとされる。
 ペルセウスに鏡で石化能力を封じられて倒され、その首の切り口からポセイドンとメデューサの子であるペガサスが生じたというあたりはあまりに有名だが、ペガサスと共にクリュサオル(これも天馬とも怪物ともいわれる)が生じ、その子はゴーゴン以上の蝮の怪物であるエキドナ(RoguelikeではTOBandにしか登場しない)であった。エキドナと、究極の魔神テュフォンから、ケルベロス、レルニアン・ヒドラ、キメラ、スフィンクス(→4体すべて参照)といったギリシアの著名な怪物のほとんどが生まれている。ギリシアの怪物が神族から生じるのは吸収された他の地方神話の神であることが多いためだが、これほどまでに怪物の血脈が強く集中した呪われたメデューサの血筋は興味深いものがある。
 Rogueにはノーマルモンスターとしてのメデューサが登場するが、かなりの強敵であり、なぜか石化でなく混乱の視線を放ってくる。NetHackでは石化能力などが再現されるのみならず、強力なユニークモンスターとなり、地下の入り口であるメデューサレベルが存在するほどの重要性で、足元にペルセウスの像が転がっている(英雄伝の最初の試練から躓いているあたり駄目駄目である)。
 *bandには多くは[Z]系のジャスラの差し替えとして、ToME, [X], [O], Eyangbandなどに登場する。なので、40階と極端な高レベルではない。ジャスラ同様、ヒドラや同族(蛇女系のナーガ)召喚能力を持っている。石化能力は*bandでは「麻痺」攻撃として扱われていることが多いが、ある程度のレベルからは麻痺耐性は必須であり、したがって耐性なしで潜ること自体がほとんどありえないので、あまり意味をなすことはない。なお、なぜかメデューサのいない[変]にペルセウスの鏡の盾がアーティファクトとして入っていたりする。

 →ジャスラ



メネルドール Meneldor the Swift 【敵】

 アルダ第三紀の大鷲で、風早彦グワイヒア(→参照)の配下の一羽。『指輪物語』終盤に、グワイヒアと弟ランドローヴァルと共に三羽で、指輪所持者の救出に向かった大鷲。
 ガンダルフはグワイヒアに、ランドローヴァルの他に「一族の中で一番速い者をもう一羽」と頼んでおり、グワイヒアが選んだのがこの若鷲メネルドールである。従って、追補編の索引には「第三紀の大鷲の一族で最も速い」と書かれている。しかし、*bandの思い出でもそうであるが、最も偉大な鷲の王(長老)であるグワイヒア兄弟が最も速いとしてか、メネルドールは三番目とする解釈もある。ガンダルフがまず選んだのもグワイヒア兄弟の速さを知っていたためと考えられるので、こちらの解釈もありえるだろう。
 指輪所持者(フロドとサム)二人に対して、ガンダルフが三羽の鷲を飛ばしたのは、単に案内でもある自分の分だと考えるのが一般的であるが、[Z]和訳の板倉氏や原作ファンのいくばくかは、ゴクリ(ゴラム)のことも考えていたと主張している。原文からはどちらとも特定しようがないので、読者ごとに任される他ないのかもしれない。
 *bandではグワイヒアともども、なぜか[V]には登場せず、[Z]以降追加されている。なお、どういうわけかグワイヒアはいるものの、弟ランドローヴァルは[Z]にも登場しない。[変]などでは主に山の地形で出現するだろう。グワイヒアよりほんの少しだけ階層が低くスピード等が遅いものの、ほとんど能力はかわらない。従って同族召喚などがきわめて厄介である。

 →大鷲 →グワイヒア


メフィストフェレス Mephistopheles, Lord of Hell 【敵】

 地獄の王。<九層地獄界>第8階層の大君主。否定する霊性。憎悪の主。メリノー種の悪魔。人文科学あまねく「ディアボリカルな存在」の代名詞となっているこの悪魔は、ゲーテの『ファウスト』以来その位置が定着したもので、説話的な起源の詳細についてはFT解説・神話解説の専門サイトに譲り、ここではRPG系のゲームでの概要を把握するのに必要な程度にとどめる。
 メフィストフェレスという名は、ファウスト(ドクトル・フォースタス)説話とその下敷きとなるドイツ伝承で悪魔の名として使われているが、そのドイツ伝承より以前の少なくとも直接的に反映された起源モチーフ(例えば、他のソロモンの悪魔のようにオリエント各地の土着信仰が変形したといった)で明確なものは見当たらず、それ以前に遡る決定的な説は無いようである。(そのため、アンチョコ書籍やネット上の解説の類には、メフィストフェレスの項目には何も書くことが思いつかないばかりに「ゲーテの話のあらすじを丸まま書き写しているだけ」といったものも少なくない。)それを踏まえた上での、識者による推測や考察の類であれば様々なものがあり、中にはサタンやアンリマユその他の古い霊との関係や同一性について予想するものもある。しかし、結局のところ、ドイツの”伝承の中”でのメフィストフェレスという名は、独立した特定の悪魔というよりも、サタン、もとい悪魔一般を指すための、単なる婉曲のために呼ばれている語にすぎないという可能性がある。であるとすれば、諸説ある名前の起源(ギリシアやラテンの語感で「光、破壊、否定、虚偽、愛する、愛さない」等)のうち、「mephit(is)- 汚濁、悪臭 phili- 嗜好するもの」で、「忌まわしい悪臭や汚れを伴う儀式によって引き寄せられてくる存在」「悪霊・悪魔を漠然と暗示する婉曲語」にすぎない、という側面が強く感じられる。
 ゲーテ『ファウスト』ではサタン等とは別個の悪魔とされ、サタンやリリス、アスモデウスなどの名は他の悪魔(メフィスト自身曰く、親類や知人)の名として作中言及されている。ファウスト博士と契約する説話以降、メフィストフェレスはサタンや他の悪魔らにも増して、「人間と契約する悪魔」及びその姿の代名詞、ステレオタイプとしてよく現れる。その知名度はことに「契約に現れる悪魔の姿」、見栄えの整った人間の服装に、しばしば角や尻尾や翼や、『ファウスト』でも言及された獣の足といったものである。(悪魔としての正体は上記考察では別の様々な姿が述べられる場合が多い。)水木しげるの漫画やその映像化での老メフィスト、メフィスト弟、メフィスト2世(老の息子)らもこういった正装の紳士的な人間の姿をしたものである。変わったものでは、チェスゲームをしているように人を欺く仕掛けや、そこから名が取られたプログラムにメフィストの名がついているものがある。(他に名がついているものとして文芸誌とか新宿の男色医師のことはさておく。)
 その一方で、RPGなどのゲームの類では、普通に「モンスター」として登場する例も必ずしも少なくはなく、現実文化とよく似た背景設定で悪魔として出ているものの他に、中には架空世界設定のボスキャラの名前だけ現実文化の悪魔から取られているもののうち一体といった場合もある。盟約者などのファウスト説話以来の側面はさして反映されていないことも多い。これらは、「メフィストフェレス」という名が人文科学での位置づけに関わらず、おそらくは単に「特定の悪魔の名」としてはサタンと並ぶほどに有名・一般的な名前であるため、単に悪魔の名前として用いているだけと思われる。
 こうしたゲームでの扱いの例として、Diabloシリーズではディアブロおよびバールと共に、メフィストが主要な悪魔として現れ、「憎悪の王メフィスト」は、これら3兄弟の長兄の魔神とされる。しかし、シリーズの宿敵であるディアブロや2作目の追加章で最終敵となるバールに対して、メフィストはシリーズ内では出番が少なかったり中盤ユニークだったりと3兄弟中でも不遇である。Diabloシリーズのバックストーリーは、他にアズモダン(アスモダイ)やベリアルといった悪魔の名が見られ、いずれもオカルトの悪魔と似た名(「ディアブロ」も悪魔全般の一般名の他、サタンの婉曲名とも採れる)だが、ストーリーの内容自体はあまりオカルトや実在神話とは共通点はない。しかし、メフィスト、ディアブロ、バールはいずれも、オカルトの悪魔の個体名であると同時に、悪魔・魔神自体の一般名・婉曲名(上記のメフィストやディアブロの他、バールはセム語で神性を示し、異教的魔神の一般名でもある)を選んでいるともいえる。
 AD&Dでは、1st(1版)から存在する(MonsterManualIIなど)ユニーク悪魔のメフィストフェレスは、地獄の最下層9層目の支配者アスモデウスに次ぐ、8層目の支配者となっており、サタンやアンリマユ(アスモデウス)とは別個の存在であり、下で働くのではなく別に権力持つ大君主ということになっている。ファウスト説話で魔術師と契約したことからか、特に炎をはじめとする「魔術」の能力に長けるが、文芸でのイメージのように特に「契約」について特殊な設定やルールがあるといったものではない。赤い肌、ねじまがった角に翼、三叉の槍(画像によっては、山羊のようなひづめのある脚)といった、まさしく「悪魔」のステレオタイプ的な姿を、ユニークモンスター中でも最も色濃く持つ。気が短く大胆不敵な作戦を好み、「人間を欺き甘言を囁く狡猾な悪魔」といった側面はそれほど強くない。他のゲームに登場する場合、特別このAD&Dからの参照が多いというわけではないと思われる。
 *bandでは[Z]以降登場する84階のユニークモンスターとなっており、攻撃や召喚の魔法、特殊攻撃など普通の深層の強ユニークの能力を備えている。こうしたモンスターとしてのメフィストフェレスは、[Z]で登場したのは何が直接の典拠であるのか、NetHackから取られているユニークは多いがメフィストフェレスはNetHackには登場せず、AD&Dから直接取られたにしても他のユニーク悪魔が登場しているわけでもなく、ウリクや怪奇苔男のようにアメコミを典拠としマーヴルキャラのメフィストから取られている可能性もあるが、結局のところ定かではない。



メルコールのスピア The Spear of Melkor 【物品】

 トールキン『クゥエンタ・シルマリルリオン』において、悪神メルコール(後のモルゴス)が、神々の地アマンの二本の光の木を破壊した際に用いた槍である。
 「メルコール」とはクゥエンヤで「力もて立つ者」の意であり、かつてはヴァラール(上級神)の中で最も力ある者であるためにつけられた(初期の原稿では「メルコ」となっていることもある)。これをこのままシンダリンに訳すと、「ベレグーア」という形になるが、この発音をもじって「ベレグアス(大いなる死)」というのが、モルゴスの元のヴァラとしての名を、冥王としての彼しか知ることのない中つ国のエルフらが呼ぶ名であった。そして、これをさらにもじって、モルゴスの最も重要な別名である「バウグリア(圧制者)」という名もつけられたと思われる。
 神話時代の終わりを告げる反乱において、メルコールはアマンの果てアヴァサールの大蜘蛛の悪霊ウンゴリアント(→参照)を誘い、祝祭で手薄になっていた二本の光の木に向かった。メルコールが「黒い槍」で木を深々と刺し、傷口からウンゴリアントがすべての養分を吸い、毒を流し込むことで、二本の木を死なせた。以後、神話時代の原初の「光」は、以前の木の光を閉じ込めた三つのシルマリルと、木が死ぬ直前に実らせた果実(太陽と月になる)にのみ存続することとなった。
 この後、メルコールはフォルメノス城砦を襲い、フェアノールらの父フィンウェを殺し、シルマリルとその他のノルドール族の宝石を奪う。つまり、この黒い槍はフィンウェを殺した武器でもあると思われる。エルダール(エルフ)がアマンの地で血を流して死んだのはフィンウェが最初である。この知らせを聞いたフェアノールが、怒りによってメルコールを宿敵と定め、彼を「モルゴス(黒い敵)」と呼んだ。(a_infoのコメントには「統一するためこの槍は『モルゴスのスピア』でもいいかもしれません」とあるが、厳密にはモルゴスと呼ばれたのは、槍をふるって木を破壊したよりも後ということになる。)
 当時メルコールはアマンにおいては、前のウツムノ敗戦の後の仮釈放状態であったため、こんな武器をどこから入手したのかは不明である。何にせよこの槍は後でウンゴリアントと戦った時になくしたのか、中つ国のアングバンドに立てこもった頃はハンマーのグロンド(→参照)を使っており、これはアングバンドに着いてから鍛えたものと推測できる。
 ICE社のRPG, MERPの設定では、このメルコールの槍は「ゲイビール・メルコール」すなわちクゥエンヤで「力もて立つ者の刺」という、全くそのまんまの名の武器として設定されており、リンギルも比較にならないほどの恐るべき武器である(リンギルが+88、グアサングが+90、グロンドが+250、メルコール槍が+200)。黒い鉄と赤いイシルナウア製で長さは6mあまり、射程距離は600m、投げつけると命中失敗に関わらず手元に戻り、純魔力攻撃相当、抵抗に失敗すると魂が抜けるという身も蓋もない武器である。
 *bandでは、PernAngband時代の初期のバージョンのToMEから追加された物品であり、[V]3.0系、Unangband, Eyangbandなど、アルダを舞台とする多数のバリアントに導入されている。細部のデータにはそれぞれだいぶ差があるが、いずれも武器としては他のヴァラールの武器相当の強力なもので、数々の耐性が揃っているものの、隠密や賢さに(バリアントによっては命中にも)ペナルティがあり、強力な呪いや太古の怨念、経験値吸収などもある、基本的には「呪いのアイテム」である。

 →モルゴス →ウンゴリアント



モイア Moire, Queen of Rebma 【敵】

 レブマの女王。レブマは、アンバーに近い”影”の世界の中で主要なもののひとつで、水面の鏡を境界にアンバーの宮廷の「鏡像」(Amber <-> rebmA)が作られている。アンバーをそのまま海底に映したような生活が行われているが、王族はアンバー一族のそのまま”影の人物”というわけではないらしく、このモイアをはじめとして独自のレブマ一族が支配している。しかしアンバーとは血筋の上でも関わりがあり(四王女ルウェラはオベロンがレブマの王族との間にもうけた娘で、ほとんどレブマ人である)ゆるやかな同盟関係にある。レブマ人は緑や紫の髪を持ち、目が丸く大きく、どことは言えないが地上の人間と違った外見を持つ。
 なお余談だが、モイアの台詞の中に「リアはかれ(行方不明のベネディクト)の骨がどこにあるか知っています」というものがあり、これはおそらく「(ベネディクトの最期は)神のみぞ知る」というような意味で、リア(原語でLir、ケルトの古い海神リールにあたる)は神か何かの名で信仰している存在と思われ、ここに、レブマの宮廷の起源を伺うキーがあるように思われる。(しかし、海外のアンバーの創作設定には、Lirは昔や先代のレブマ王の名、オベロンやドワーキンと同時期の混沌の王族出身などと推測されていたり、ひいては存命する王族となっていたりもする。)
 アンバーに陣取るエリックから逃れてレブマに来たコーウィン御一行は、女王モイアを頼る。が、そこでランダムのろくでもない過去の行いが暴露され、……
 思い出にも書かれているが、服より装飾品で隠れている部分の方がまだ多いという服装をしている。海の美しさを思わせる肌と物腰・容姿を持つ。……どうも描写だけ見ても、そうした美術や美観に馴染みの薄い身としてはぴんと来ないのであるが、コーウィンがひきつけられ、またエリックも政略にかこつけ結婚を強く望んでいたことからも、実際の映像的にはかなり魅力的なのだとは推測する。水中であるためなのか否か、呂律のはっきりしない柔らかい流れるような喋り方をするが、笑顔を見せずに(来訪者に媚びずに)喋り、いかにも抜け目ない。
 [Z]では39階の水地形に登場し、ダンジョン内では水地形の少なさから大抵「思い出した頃に」現れるので、魔法にさえ注意すればさほど強敵ではない。が、問題は、地上の海地形にていきなり出現することがある(レブマの海底から女王ともあろう者が何故わざわざやってくるのか、まったく定かではない)。[Z]では地上で経験値稼ぎができるが、海地形で水トロルと戦っているとき、トロルのみならずモイアが現れているのに気付かず、ウォーターボールを食らって即死というパターンが珍しくなかった。

 →ルウェラ



盲目のもの Flying Polyp 【敵】

 上級の独立種族、地下の暗黒世界よりの恐怖。H.P.ラヴクラフトの独立種族、すなわち旧支配者など以外に遥かな太古に地球に飛来した手っ取り早く言えば「宇宙人」集団の一種。
 ポリープ(ポリプ)とは刺胞動物の円筒形の体や、医学用語では肉腫、炎症・腫瘍組織などが形成する塊のことで、半物質ではあるが細い肉の塊で器官をもたないこの種族を「盲目のもの」としたのは、ラヴクラフト全集にコメントを寄せたフリッツ・ライバー(ラヴクラフトの文通仲間で宇宙観に関わった作家だが、むしろ『ファファード&グレイマウザー』のFT作家として有名である)の解説によると言われている。何にせよ、「ポリープ」をうまく原語のほかに翻訳できない日本では、「盲目のもの」の呼称を採るのが通例になっている。
 盲目のものはラヴクラフト『時間からの影』に詳しく記述されているが、7億年前に太陽系に飛来して玄武岩の都市を築き、のちに「イスの偉大なる種族」と呼ばれる別の独立種族と戦い、彼らの「現在」での勢力を滅ぼしたものの、自分らも衰退し地下にわずかに潜み棲むのみとなった。
 RPGの設定では、彼らは「偉大なる種族」への敵意ゆえか、温血生物への悪意を失っておらず、うっかり洞窟や井戸を覗き込むものは何でも殺して連れ去る、となっている。彼らは風を自在に操ることができ、突風や暴風、気圧などを戦いに用いる。また元々が半ば非物質の生物であるため、物質を通り抜けることも自在である。
 *bandでは37階の中レベルの敵の一体となっている。壁を通り抜ける能力があり、風の攻撃はインパクトのブレスで表されている。原作では「電気に非常に弱い」という特性があり(そのため「偉大なる種族」は電撃武器を用いたのだが)*bandでも電気耐性だけは持っていないが、かといって電撃だけで倒せるほど脆弱でもない。クトゥルフ系としては、個体能力はさほどうっとうしい方には入らないのだが、これが壁を通り抜けて「複数」現れた場合、近くにより厄介な存在がぎっしり詰まった「クト系のゆかいな仲間たちピット」があることはほとんど確実であるため、ロイガーと並んでその側面で大変に恐れられている生物のひとつである。



モリア Moria 【その他】

 出典:アルダ世界最大のドワーフの地下王国、またはその廃墟。ドワーフの主要七氏族の筆頭、不死のドゥリン王とその一族の本来の故国である。
 クズドゥル語ではカザド=ドゥム、のちの共通語(要は古い英語風の造語だが)ではドワローデルフ(ドワーフの穿ちたる大堂)、シンダリン語ではその訳でハゾドロンドと言った。が、バルログによって王国が滅び闇に閉ざされてからは、モリア(単に「暗い穴」といったそっけない名)と呼ばれた。こちらの名はあまりドワーフには快からぬものと思われるが、しかし、そう呼ばれ始めてから世代が経ちすぎたためか、ドワーフらの間でも(少なくとも他種族をまじえた会話では)普通に「モリア」という呼び名で定着している。なお書簡によるとトールキンは「モリア」をエルフ語として慎重に考えたのではなく、北欧説話集の中の『ソリア・モリアの城』という語感が気に入って何となくつけたらしい。また、「リ」にアクセントがあることをやけに強調している。
 カザド=ドゥムの歴史は第一紀(アルダの伝説時代)に既に、エルフや人間がもっぱら遥か北のべレリアンドで栄えていた頃にまで遡る。エンドール(中つ国)では唯一のミスリルの鉱脈が存在し、ドゥリン王家に富を与えていたのである。第一紀末にベレリアンドが水没しそこのドワーフをも受け入れると、ますます栄え、第二紀にはすぐそばのエレギオンのノルドール・エルフらと親交と技術の交流を行った。しかしながら、第三紀にミスリルを深く掘りすぎたために奈落に眠っていたバルログ(→ドゥリンの禍)を覚醒させてしまい、ドゥリン6世王をはじめとしてドワーフらの大半がほろび(ドゥリン一族の生き残りは東のくろがね連山やはなれ山に移住するが、一族の受難はこの後も続く)モリア、ひいては霧ふり山脈の地下すべてがオークらの住居となってしまった。のちにアゾグら入り口付近のオークは滅ぼされ、また指輪戦争の年にバルログやサウロンの影響も姿を消したはずだが、その後も本編や追補編にはドワーフがモリアに戻ったという明確な記述はなく、であるとすれば打ち捨てられたままだったようである。トールキンの草稿には、ドゥリンの世継のモリアへの帰還(追補編の系図に名だけある「ドゥリン7世(現在の王)」と思われる)というくだりの入ったメモがあるが、アイディアが進められないまま忘れ去られたのか、完全に廃案とされたのかは定かではないという。
 第一紀からドワーフの伝説的職人らが粋をこらしたカザド=ドゥムには、神秘とすらいえる建造物も多く、大ホールをはじめとして世界の底の奈落からジラグ=ジギルの山頂のドゥリンの部屋にまで通じている無限階段などもある。LotR映画版の、原作未読者を驚嘆させ既読者を嘆息させずにはおられないモリアの映像をとりあえず見るべしとしか言いようがない。
 映画のみならず、『指輪物語』のモリア越えの場面は、地下迷宮・遺跡の探索・冒険の場面の真骨頂として、数多くの概念の根幹にある。世界最初のRPGであるD&Dが当初「迷宮探索」をテーマとしたのは、モリア越えの場面をイメージしたというのがもっぱらの説であり、D&Dで迷宮地図として用いられる「四角や丸の部屋を通路と扉でつないだ地下迷宮(単なる地下道ではなく、通路も部屋もやけに広く竜が通れたりする)」はモリアの描写をそのまま採ったものであるという。
その他:言うまでもなく、*bandの原点であるゲームMoriaは、あまりにも広いモリアの枝道に迷いこむさまを、既にUNIX-Rogueで確立していたランダムなダンジョン生成になぞらえた発想から生まれたゲームである。UNIX-Rogueの比較的一階層が閉鎖的なダンジョンに比べると、何画面にもまたがる広い迷宮もその発想のものであろう。またMoriaの「地上の街」([V]など地上マップのないバリアントに継承されているそのままである)は、上記している、モリア近くにあったエルフの都「エレギオン」であるという設定になっているらしい。*band全般に言えることだが、テキストキャラクターのさびしい雰囲気の、むやみに画面が広く鉄や石がごろごろと転がる迷宮は、まさに原作のモリアの感覚としか言いようがないのである。
 多ダンジョンで、アングバンド以外にもアルダ世界の数々の迷宮が存在するToMEには、無論のことダンジョン「モリア」も存在する。ゲームMoriaと同様、50階まであり最下層はこれもMoriaと同じデータのバルログ『ドゥリンの禍』が守っている。他のバリアント、たとえば通常ダンジョンの1階層が特殊なエピソードにちなんだ階層となるOangbandでは、オークの詰まったモリアレベルなるものが現れることもある。

 →ドゥリンの禍 →ムアル →ミスリル



モリアのバルログ The Balrog of Moria(TM) 【敵】

 →ドゥリンの禍 →ムアル



森エルフ Wood Elf 【種族】

 ウッドエルフの他、より文語風にシルヴァン・エルフSylvan Elfと呼ぶのも同じ種族を指す。トールキンのアルダ世界で森エルフと言った場合、普通は『指輪物語』時代の第三紀に「闇の森」に住んでいた、スランドゥイルを王に頂く一族を指す。(広義には、後述するロスロリアンのガラズリムも指す場合がある。)
 第一紀に北にあったドリアス(灰色エルフの都)の生き残りであるオロフェア(スランドゥイルの父)とその一族が南下し、闇の森に入ったとき、「その森にそれまで住んでいたエルフ」が彼らを王として迎え、森エルフの王国となったというが、その元いたエルフの方らが何者だったのかは、実ははっきりしていない。神話時代にエルフがアマン(神々の地)に渡ろうとした際に、霧ふり山脈の手前で引き返しそのまま住んだ「ナンドール」が最も多かったという記述がUnfinished Talesにあるが、さらに先に進んだ「オスシリアンドのライクウェンディ」の残りであるとか、追補編および『ホビット』2版以前から推測できるように単なるアヴァリ(アマンへの旅に最初から出なかったエルフ)とする説もある。ともあれ、闇の森の王国は、王侯(スランドウィル、レゴラス)だけは血脈上は灰色エルフで、民衆が森エルフ、という編成になっている。しかしスランドゥイル自身も、文化や言語上は森エルフと変わらぬものを採用している。
 第三紀の中つ国のエルフでも、森エルフは、海辺のキアダンら灰色エルフ、裂け谷に残っている上のエルフ、また同じ森に住むエルフでもノルドールの女王やその身内と共にいるロスロリアンのガラズリムとは異なり、文化において若干原始的で粗暴な描写がなされている。もっとも、隠れ谷で交渉の積極的ではない裂け谷や、魔の森として恐れられるロスロリアンとは異なり、谷間の国の人間やはなれ山のドワーフと通商を行い共存している。
 RPGでは、アルダを扱ったTRPGであるMERP以外にはエルフをトールキン風に近く細かく分類しているものは少ないが(MERPではウッドエルフはアヴァリとしている)ルール量の多いAD&Dでは、ウッド(シルヴァン)エルフを独立して種族に設けている。エルフを森に住むものとしても、プレイヤー種族のハイエルフをおそらくガラズリムをモデルとしているため、ウッドエルフはさらに原始的な部分を強調した種族となっている。ハイエルフと異なり、肉体的能力に秀でる(人間よりむしろ強い)。これよりさらに原始的な、ワイルドエルフという種族もある。
 *bandでは、ToMEにおいてエルフ、ハイエルフなどと異なり、独立した種族として特に「森エルフ」を選択することができる。なぜか肉体はかなり貧弱(AD&Dとは異なる解釈だが、あり得はする)なのだが、森をペナルティなしに移動する能力を持ち、また元から「強力射」がついている。脆弱なのは「レゴラス気分」とは少し離れるかもしれないが、射撃系ならばかなり有効な種族である。



モルグルの武器 Weapons of Morgul 【物品】

 出典:モルグルとはそれ自体はエルフ語で「呪魔」を指す言葉であり(mor- 暗黒 -gul 呪術、邪術)サウロンや部下が用いる黒い呪術であるが、特にモルドール語(暗黒語、黒の言葉)による呪いを指すものと思われる。「モルグル」はこれらの呪いに関係のある物品、生物、場所などに広く用いられる言葉である。モルドール語はエルロンドの会議を震撼させたように、エルフ語(→参照)に匹敵する強大な「言霊」を持ち、発するだけで強力な魔法の効果を及ぼす。サウロンや、アングマールの魔王などが発している呪文の言葉は暗黒語であったに違いない。
 最も有名な暗黒語は、《一つの指輪》に刻まれている一節だが、これが文字はテングワールであることからわかるように、モルドール語には発音はあるが文字はなく、表記にはエルフ語の文字を使う。また、指輪にすでに刻まれていたことから、サウロンがモルドールで強大な王国を造る前、活動を始めていた頃にはすでにこの語と呪術も作り出していたようである。モルドール語をはじめサウロンが編み出した言葉は、オークらが使うには非体系的過ぎ(それぞれの部族によって崩れすぎて)普及しなかったというが、あるいはサウロンや強大な呪術師(ナズグルのような)だけがこの強大な言霊の全貌を知っていたのかもしれない。
 なお、トールキンの設定作成の背景としては、暗黒語はある意味モルドールの存在していた辺りの古代中近東のフラル語を参考にした単語などがあり、摩擦音・濁音などで禍々しい響きを出すように作られているようである。
 さてモルグルの武器であるが、『指輪物語』でそう呼ばれるものは、ナズグルらが使用していた武器、特にナズグルの首領であるアングマールの魔王が持っていた短剣である。指輪所持者フロドは物語前半、魔王の短剣に肩を刺されるが、その一撃は「毒ある氷の投げ矢」のようであり、エルロンドによって治療されるまで彼を著しく衰弱させた。ガンダルフの言葉によると、モルグルの短剣の破片は体内に入ると心臓に向かって這い進み、やがて破片が心臓に達すれば、ナズグルらに操られる「さらに下級の指輪の幽鬼」と化していたであろうという(これがエルロンドやガンダルフの推測なのか、過去に実際にそうなった犠牲者がいたのか──アングマールと戦ったアルノールの兵などに──は原作では定かではない →フィアグワス)。なお、その危険は去りながらも、その肩に受けた傷は、魔王はおろかモルドールの脅威も去った後もフロドを苛む傷となったのだった。魔王の短剣は、日光に触れると刃が朽ち果て、その柄にはハイエルフのグロールフィンデルによると、「(手渡した)アラゴルンの目には見えないかもしれない」文字で、悪しき言葉が刻まれていた。(映画版LotRでも)ナズグルの持つ武器はいずれも刃こぼれが非常に目立つのだが、あるいはわざと破片が敵の体内に残るようになっているためなのかもしれない。
 LotRに関連するようなアレンジの多い2012年の映画版Hob.第一作でも、モルグルの刃がキーアイテムのひとつとして登場する。すなわち、茶の賢者ラダガスト(→エルヴァギル)が、闇の森の不審な魔の影響を探ってドル・グルドゥアの要塞に潜入し、幽鬼の襲撃を受けてからくも逃れるが、その際に持ち帰った短剣を、白の会議においてガラドリエルが「アングマールの魔王のモルグルの刃」と判断し、局面の危険さを悟る場面がある。(ただし、厳密には原作ではアングマールの魔王は、この第三紀2941年の時点ではミナス・モルグルでサウロン(死人うらない師)の留守をあずかってモルドール軍を統率しているはずであり、幽鬼がドル・グルドゥアに仮にいるとしてもハムール(→カムル)である。)
 物品:[V]から強力な呪いのかかった武器のエゴアイテムとして登場する。一般に通常の「呪われた武器」のさらに呪いの強力なもので、災いになろうにも実際に装備されるようなことが少ないため指輪物語のフレヴァーのような側面が強い。[Z]まで多くのバリアントで弱・強の呪いと反感、視透明(これは、幽鬼の世界とでもいう意味であろうか)だけである。が、[変]ではアンデッド倍打と毒、ToMEではさらに凶悪な種々の呪いが追加されており場合によっては厄介である。[V]では擬似鑑定で{恐ろしい}と出た場合、カルリスのような呪われていても有用な物品かモルグルの武器か不定なこともあるが、[Z]以降は呪われている武器も結果的に有用といったことがほとんどないので、あまり意味はないかもしれない。

 →アングマールのロング・ソード →フィアグワス



モルゲンスターン

 →明の明星



モルゴス Morgoth, Lord of Darkness 【敵】

 ヴァラ。冥王、暗黒の大君主。元はメルコールといい、アルダ世界のヴァラ(上位精霊、諸神)の中で最大の力を持ち、他のヴァラたちとの戦いを繰り返したが、第一紀の終わりに虚空に追放された(この後をついで以後の時代に冥王となったのがサウロンである)。龍、バルログ、サウロンといった強大な闇の勢力すべての元来の統率者。
 「モルゴス(暗黒の敵)」とはシンダリン語の形であり、クゥエンヤでは「モルナゴード」という形になるという考察がある。モルゴスという名はフェアノール(ハイエルフ)がアマンの地で最初に呼んだとあるが、おそらくこのとき実際にフェアノールが発したのは「モルゴナード」という名で、物語がシンダリン語の伝承として伝わるうち、「モルゴス」という形に変わったのだろう。
 なお、第二紀以後のサウロンのタイトル、The Dark Lord 冥王と、第一紀のモルゴスのタイトル、The Lord of Darkness 暗黒の主(『シルマリル』中にもある訳語)では、厳密には違うニュアンスであるようにも思える。しかしサウロンは「モルゴスと同じ意味でそう呼ばれた」とあるのは事実であるし、*band肌では(指輪物語ファンコミュニティとは異なり)冥王というとモルゴスを指すのが通例となっている。



モルデンカイネン Mordenkainen 【物品】【その他】

 *bandには名前のみが頻出する人名のひとつ。AD&Dの背景世界のうち最も古い世界のひとつで、D&D3.Xeでは基本背景(プレイヤーズハンドブックなどの設定は一応これである)でもある、World of Greyhawk世界の魔術師。Greyhawkの最も強力な魔術師たちによる結社「サークル・オブ・エイト」(八魔陣、現HJ版邦訳では”八者の円”)の筆頭であり、およそGreyhawk世界の代表人物である。有名なシナリオの表紙絵やAD&D2ndのDMGの切り絵挿絵によると、白髪まじりのいかにも強健そうな面構えに、豪華なローブにワンドの初老男で、実際、見かけ通り過激な性格のようである。(なお、後のD&D3e系になると、頭はスキンヘッド、オリエンタルな服装、ツインブレード型の杖を持つなど、イメージを完全に変更してしまっている。)
 Forgotten Realmsにおけるエルミンスターと同様、World of Greyhawkの代名詞、ひいてはD&Dシリーズというゲームを代表する魔術師のひとりである(なお、エルミンスターや、Dragonlance世界のダラマールとは次元を魔法的に飛び越えて何度か会合しており、彼らのやりとりはシリーズとして一時のDragon誌に連載されていた)。
 実は、かつてのD&Dシリーズの創始者のひとりで、AD&D1stのマニュアルライター、そしてGreyhawkのデザイナーでもある、ゲイリー・ガイギャックスがプレイヤーをやる時のキャラだったという。ただし、WG設定での数値は、ガイギャックスが使っていたキャラをあくまでモデルにして独自に設定されているもので、ガイギャックスが実際に操っていたキャラのデータとWG設定でのデータはイコールではなく、必ずしも完全に同一人物というわけではない。(なお、他にガイギャックスの分身としては、前グレイホーク市長だったひょうきん魔術師で、現在は半神として神格リストに入っているザギグ Xagyg(<-> gygaX)がいる。)WG世界でのモルデンカイネンというキャラの設定は、最も古い同卓プレイヤーで共同デザイナーのロバート・クーンツ(これも有名な戦士「ロビラー卿」が持ちキャラ)や、WGにかかわったブライアン・ブルーム、そしてガイギャックスがD&DシリーズとTSR社を離れて以後のデザイナーの手によるものが多く、ガイギャックス本人の事績とは全く関係ないものが大半である。しかし、ガイギャックスの逝去後は特に、D&Dファンをはじめ多くのTRPGプレイヤーによって、「モルデンカイネン」というキャラの名は、しばしば「RPGの創始者・ガイギャックス本人」を指す語に近いものとして、敬意と愛着を持って呼ばれることも多い。
 WG設定でのデータは、モルデンカイネンは有名な登場シナリオではMagic-User 12lvだが、筆者が最初に見かけたDragon Magazineの記述ではいきなり20lv(AD&Dの基本ルール上限)で、版が進むたびにさらにどんどん上がっている(多くのサプリメントでは「20lvを超えている」としか書かれておらず故意に曖昧にされているようだが、一応、3.0eのEpic Level Handbookでは27lv)。また「サークル・オブ・エイト」をはじめとするGreyhawk世界の魔術師たちの作った呪文は、基本ルールブックにも書かれており、D&Dシリーズの汎用呪文として他の世界の魔術師たちも使えるものが多くあるが(「モルデンカイネンズ・ソード」の呪文など)モルデンカイネンの名前がついている呪文は中でもバランスがよく、しかも頼りになる魔法が多いので、この名前はD&Dプレイヤーには好印象を持たれている(通称「モルデンカイネン先生」)ことが多い。
 サークル・オブ・エイトは、グレイホーク世界の「中立」パワーバランスのために結成された組織であり(メンバー個々の性格はまちまちだが)初期メンバーは、モルデンカイネン、ビッグバイ、バックナード、レオムンド、レアリー、オットー、ドロームジ、ニストゥルで、これらの名前は古くからのAD&Dプレイヤーならば呪文の名前に頻出するため知らぬ者はないが、実力も実績もある重鎮たちにも関わらず、任務がそれ以上に物騒なので、脱退・入れ替わり・定員変更・離反・全員でヴェクナと戦ってさっくり全滅・死亡確認・何事もなかったかのように全員復帰、なども繰り返されている。3.0eの世界設定の時代では、創始者モルデンカイネンは「八者」からは外れて後援に退いていると表向きにはなっているものの、「男塾第三の助っ人」として強引にしゃしゃり出て来ることは珍しくない。なお、「八魔陣(サークル・オブ・エイト)」とは道教の「八卦陣(サークル・アンド・エイト)」から採られたアイディアとも言われるが定かではない。また、非公式の紹介記事には、八者の円の前身である「八塔の城塞(シタデル・オブ・エイト)」のメンバーが誤って八者の円として紹介されていることも多い。八塔の城塞は、モルデンカイネンが八者の円よりも前に同じ目的で魔法使以外のメンバーも入れた8人(多くはガイギャックスの他の持ちキャラやNPCである)で結成したものであるが、崩壊したため、より方向性を統一しやすい(もっとも、そうも言い難いことが後で明らかになるのだが)魔法使らで固めた八者の円が結成された経緯がある。
 D&Dシリーズは4版になるとGreyhawk世界の展開は止まってしまったが、ただし、AD&D1st〜2ndの伝統的マジックアイテムを集めて4版にアレンジして収録した書物が、『モルデンカイネンの魔法大百貨』という名で出ている。別にモルデンカイネンがアイテムを収集したという設定はないので、おそらく、古いアイテムを解説した書物に、この題名やD&Dで最も由緒ある名を使うこと自体に対する懐古的な意味がこめられていると思われる。ここに出てくるモルデンカイネン自身の語録は(無論、上記したようにガイギャックス本人や初期スタッフがじかに設定したものではないが)おおかたの予想通り、苛烈で過激な性質を思わせるものとなっている。比較的新しい書物で、伝統的アイテムやモルデンカイネン自身の語録に触れることもできるので、RogueLikeに非常に影響の強い古いD&D設定を知りたい*bandやNetHackのプレイヤーにとっては、有益な書物といえる。
 *bandには、まず[V]をはじめ、[O]、ToMEなどの上級魔法書に、サークル・オブ・エイトなどのD&D系の背景世界から取られた名がついているものがある。そのひとつとして[モルデンカイネンの脱出]がある。テレポート系の呪文が揃った魔法書であるが、D&D系では特にモルデンカイネンの名のついた呪文がそういった魔法ばかりなわけではない。数多くのサプリメント等の呪文のうち筆者が確認しているのはほんの一握りに過ぎないと思われるが、*bandで「脱出」という名の元になった呪文と考えられるD&D呪文には、一定の空間を完全に探知から遮断するMordenkainen's Private Sanctum, 異次元に豪邸のような隠れ家を作り出すMordenkainen's Magnificent Mansion, さまざまな下級の移動呪文の能力を提供するMordenkainen's Celerityなど数多くが確認できる。
 ToMEには、ヒントなどが記された書物と同様に拾って読むことができるうちに「モルデカイネン(Mordekainen)の神秘の考察」と題された超理不尽説話が記されたテキストがある。Greyhawkのモルデンカイネンには魔法研究などで著書が多いという設定だが、少なくともそれに類する理不尽書物を残したという記述はない。しかし、なにごとも未確認ということはありうる。(なお、モルデンカイネンの名は聖書由来の「モルデカイ」という通常の人名と、フィンランド神話の「ヴァイナモイネン」を合成したと思われ、ToMEのモルデカイネンは通常の人名である前者により近いわけである。)
 ToMEのガラクタアーティファクト(発動でバラバラな効果が出る、装備できない謎アイテム)にモルデンカイネンや、他のサークル・オブ・エイトの魔術師の名前がついていることがあり、*bandプレイヤーにはよく見る名前のひとつになっているようである。

 →テンサー



モルド Mold 【敵】

 モルド(カビ)などという物体をモンスターとして扱っているのはMoria以来引き継いでいる伝統であるが、RPG、迷宮探検の原点であるD&Dシリーズでは、モルド類やウーズ類などをはじめ、じめじめした地下ならば当然存在するであろう物体や要素がそのまま「モンスター化」したものが多数存在する。地下探索のフレヴァーと危険とを兼ね備えたこうした小道具や小生物などのモンスターは、AD&Dでは無論のこと、それほど細かくもないクラシカルD&Dのさらにベーシックの分冊ルールに記載されているものですらおびただしい数に上る。和製RPGなどではあってもスライムがせいぜい多くて数種類という程度で、ほとんどは発想自体が出るものではない。D&Dシリーズの、あくまで迷宮探検がRPGの中心であった「時代」を、最も如実に感じさせる要素のひとつである(今でもD&D系は色濃いといえば色濃いのだが)。
 ただしMoriaに登場するモルドは、ひと通りの色と攻撃属性のモルドが最低階層に揃っており、低レベルキャラクターの相手をもっぱら勤めるという、奇しくも「WizardryやDQのスライム」と似たような存在となっている。高レベルの劣化モルドやデスモルドが存在するが例外的とも言えるだろう。以後[V]にも同じまま引き継がれ、バリアントが多様化した後も、強く旧代のRPG/CRPGの影響を*bandシリーズに感じさせる大きなフレヴァーとなっている。特殊なモルドについては各々の項目に譲る。

 →イエロー・モルド →スライムモルド →モルデュー →デスモルド



モルドール Mordor 【その他】

 出典:おおよそエピック・ファンタジーにおいて「暗黒の国家」「闇の勢力」の並ぶものの無い象徴とすら言えるこの国の名は、トールキンのアルダ世界の第二紀と第三紀、および第三紀を舞台とした『指輪物語』において、当時の冥王こと指輪王サウロンの根拠地の王国である。Mordorとはシンダリン語で「暗黒の国」を意味する。険しい山脈に北と東を囲まれ、その中はカルデラ(ウドゥン地方)や火山灰地を主とするほぼ不毛の大地(山すそに僅かに羊歯などしか生えていない)である。中ではサウロンの城砦バラド・ドゥア周辺をはじめとして工業と軍隊が増強されている。はるかに南部では、おびただしい奴隷の労働力によって農業も行われ、また東・南を通じて属国(当時はリューンやハラド)との商業も行われており、総合的な国力も非常に高い。サウロンの闇の種族だけでなくこれら「普通の」種族も生活している国だが、その主の意識によって統制されているためか、ことに北部では、モルドールの空気や水を含めてなにもかも禍々しく忌まわしい味や匂いのものに感じられる。他の諸国からはそこから出るものやその名前すらも忌避されている、まったき闇の土地である。
 第二紀なかばに、当時はエルダールらの宝石細工師に紛れ込んでいたサウロンが、本拠地とするよう選んで城砦の建造をはじめた土地である。この土地を選んだ理由は、溶鉱炉として利用することができるオロドルイン火山(→滅びの山)が存在するという、ただそれだけの理由であったともいわれる。この地形はサウロンが(少なくともいちから)山を隆起させて築いたといったものではなく、おそらくは神話時代にメルコール(モルゴス)が築いていた巨大な火山地帯のなれの果てではないかと思われる。『中つ国歴史地図』では、北端のウドゥンの盆地が元火山のカルデラであったとすれば、陥没前は海抜9000m以上の火山であったと推測しており、これは伝説時代のサンゴロドリムにも迫る。(他に、もともとヘルカールの内海の一部だったものが盆地として隆起したといった説もある。)また、アルダはこの後に現代の地球に近づいていくが、モルドールはそのまま地中海の火山地帯になる(おそらくはモルドールの盆地はそのまま窪んで地中海をなす)と、トールキンは述べている。
 ともあれ第二紀、サウロンはオロドルインで『一つの指輪』を鍛え上げると、城砦バラド=ドゥアをも近くに建造し、モルドールを本拠地として軍勢を構えた。結局、エルダールやドゥネダインとの度重なる戦いによってモルドールの軍勢は破れ、サウロンも指輪を奪われて(→イシルドゥア)一時消失するのであるが、指輪が行方不明となり破壊されなかったため、バラド=ドゥアはじめ指輪で築かれた要塞を完全に破壊することができず、第三紀に入ってもドゥネダインらの軍はモルドールを占領・浄化することができなかった。その後のゴンドールの弱体化に伴って次第に闇の勢力は再びモルドールに集結し(アングマールの魔王によるミナス=イシルの占領をはじめとする)闇の森のドル=グルドゥア(→参照)に隠れて力を養っていたサウロンが帰還すると共に、『指輪物語』の時代にはふたたび強大な国となって西方の諸国を脅かすのである。
 山脈で囲まれたモルドールだが、進入口は北端の「黒門」(RotKラストでアラゴルン、ガンダルフらが集結した地でもある)と、ゴンドールに面するミナス=モルグル(イシル)やキリス=ウンゴルのある山脈の切れ目のモルグル道路があり、指輪所持者らの一行は後者の通路を通ることになる。その後、レンバス(→参照)とわずかな水に頼る強行軍の描写がモルドールの過酷さを読者に印象づけるが、一方で映画版RotKではこれが話の都合であまりにも端折られすぎたため、行程が非常に短く、「映画版のモルドールはJR山手線の環状くらいの大きさしかない」という説もある。
 その他:*bandではアルダを舞台としたToMEの前身であるPernAngbandの時代から、メインの「ダンジョン」のひとつとして据えられていた。屋外の「地域」がダンジョンとなっているのは、塚山丘陵や[変]などにもある森・山などのダンジョンと同じ発想というところだろう。ただし、マップの地理的にもモルグル道路にあたる辺りにこのダンジョンが存在することから、ことに指輪所持者の行程でもこのモルグル付近の岩山と秘密の通路・階段を通るあたりの描写を意識している可能性もある。また、溶岩の川も流れる、滅びの山の中腹の岩山を意識している可能性もあるだろう。ただし、ToME2以降は「滅びの山」は別ダンジョンとなっている。
 PernAngband当時から、このモルドールは「闇の森」の次、「アングバンド」の前の、「メインダンジョン」33-66階にあたるものになっていた。ただし、これらが北にあるのに対してこのモルドールおよびホームタウンのミナス=アノールは南端にあるので、(ことに特別なイベントを起こす必要があまりなかったToME1以前では)面倒といえば面倒である。

 →サウロン →滅びの山



モルメギル The Two-Handed Sword 'Mormegil' 【物品】

 トールキン作品においてモルメギルとは通例、第一紀(伝説時代)の人間の英雄トゥーリン・トゥランバールの別名のひとつである。トゥーリンは数奇な運命を繰り返したため、数多くの別名を持つが、そのうちひとつに「ナルゴスロンドの黒の剣」というものがある。トゥーリンは一時ノルドールの都のひとつナルゴスロンドに滞在し、持っていた剣アングラヘルはこのときノルドールらが鍛え直して(具体的に何が変わったかは定かではない)「グアサング(→参照)」と名づけられ、このグアサングをふるって活躍したため、「黒の剣」すなわちクゥエンヤで「モルメギル」とエルフらに呼ばれたのである。ただし、モルメギルとはグアサングの剣ではなく、あくまで「トゥーリン」本人を指す言葉とされている。
 故に、[V]以降、「モルメギル」という名で入っている呪いの剣に関しては、*bandプレイヤーの間ではその正体は謎とされてきた。グアサングと同じ両手剣であることもあって、一応はグアサングの剣(強いて言えば、アングラヘルではなく改修を受けたグアサング)を指しているとも考えられるのだが、グアサングは知っての通り別のアーティファクトとして存在するので、こちらが何なのかは余計に不明である。
 しかし、特筆すべき点として、ICE社のMERPの設定では、サウロン(→参照)の剣にも「モルメギル(黒の剣)」という名がついている。冥王としての鎧姿のサウロンは(映画版の解釈と同様)メイスも持っているのだが、他にも、黒エオグ製の大剣も持っている。「トゥーリンの別名の由来である剣とは別物である」と明記されているが、いつから持っていた、どういった由来の品であるかは定かではない。名前が重複しているのが不自然であるし、ICEの設定の中でもよくできたものではないが、あるいは、*bandのモルメギルは、このサウロンの剣であると解釈することもできるかもしれない。ただし、MERPのサウロンのモルメギルは両手持ちの剣ではなくブロード・ソードであり、攻撃力もアンドゥリルほどにもない。
 一応こうした考察はしてみたものの、[V]のモルメギルは攻撃およびスピードのペナルティーと反感、呪い以外の能力はない。トールキンに明確な典拠のない物品を排除していることも多い[Z]以降では、「神々の黄昏(→参照)」に差し替えられているが、そこから名前を戻したToMEなどでは、焼棄を含めて数多くの能力が入っている場合がある。しかし太古の怨念なども共にあったりするため、どのみち役立つような品ではない。





 
あ-い  う-お              や・ら・わ




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