ゲーム雑記・雑記







グレイホーク世界ではつるっパゲ野郎には気をつけろ

 ことあるごとにまいっちんぐする妖精は、つるっぱげアニメ監督の名台詞のひとつ、なんでロボットアニメに妖精なのかと聞かれて「どうしてもハダカの女を出したかったんだけど人間だと出すほうが恥ずかしいから妖精を思いついた」(角川エルガイム3より)という意味不明炸裂真骨頂を彷彿させるが、確かにこちらも仮に人間の女ウィザードでは微妙にできないことである。
 表紙をはじめイメージイラストでは蠱惑的な肢体になっているが(なお本文には金髪とあるが、なぜかイラストではいずれも違う)こうも安売りされると筆者にはそれこそチャムやリリスや瓶詰妖精のような中途半端な発育のちんちくりんしか想像できない。

 今回はそんなことより、この偽一についてである。ドリッズトにひき続いてまたしても、なんでレンジャーが主役なのか(しかも今回はドリッズトシリーズ以上に、屋外が主舞台というわけではない)、なんで野外戦士なぞにそこまで本国ではこだわりがあるのか、という疑問に関しては、 「レンジャー」というのは海外ないしD&Dシリーズでは古くから、原義や単なる屋外戦士をこえて、こちらが想像している以上に「ヒーロー」のイメージを持つ存在であるといえる。AD&D2nd/D&D3.Xeの微妙な能力のレンジャーからは、ひいては、野外戦士としてのレンジャーのイメージすら充分に知られているとは言いがたい日本では想像がつきにくいかもしれないが、AD&D 1stのレンジャーのかなりなんでもありな能力(繰り返すが、2ndや3eでは見る影もない)やその強力さはその反映である。海外ではレンジャーのイメージ元にはアラゴルンやファラミアのような、知性と聡明さを備えた戦士があろうし(AD&D1stではレンジャーとなるにはDexやWisだけでなく、高いIntも必要である)また単純に、ロビン・フッドのようなヒーロー像も非常に定着している。AD&Dには流謫の英雄をデータ化したものも多く、そしてそれらは特に「野外戦士」といえる存在でなくとも「レンジャー」のクラスであることも多い。
 パラディンの「英雄」を求めるヨーロッパ伝統と異なり、アメリカの風土が「自由の戦士」にヒーロー像を求め積み重ねる、という説明にまでなると、いかにもそれらしくて胡散臭いとはいえるが。

 偽一の能力に対して、呪文を手がかりにしてみる。3.0eのレンジャー呪文では「キュア」は呪文レベル2で、手が届くのは(充分にWisが高いとして)8lvである。が、例えば「サイレンス」は3.Xeのレンジャー呪文にはない。本国でこの小説が出たのは1999年(3.0e発売の前年)なので、まだAD&D 2nd準拠なのかと思えるかもしれないが、2ndのレンジャーにはサイレンスはもちろんキュアさえない(アニマルとプラント関連しかない)。
 一方、AD&D1stのレンジャーはマジックユーザーとドルイドの呪文が使え、作中の偽一の呪文にはキュアの他にも1stのドルイド呪文とおぼしきものがいくつかあるが、やはり1stのドルイド呪文にもサイレンスはない(1stのPHBやUnearthed Arcanaを見た限りでは。1stの混沌ルールでは他のサプリメントで何が追加されているかわかったものではない)。
 1stや2ndではレンジャーが呪文を習得するのはかなりの高レベルになるが(1stでキュアに届くのは11lvである)、周りの存在との力関係などを見ると、偽一のレベルは3.5e用リメイクシナリオの対象レベルの7lvあたり近く見え、また1st当時のシナリオも7-10lv対象であり、結局そのあたりである可能性は高い。結局は、3.0e準拠の8lv前後であり、当時まだ細かいルール(呪文内容など)が固まっていない頃の3.0eなのかもしれない。


 追記:Dragon#290によると、01年の次作品の3.0e版のデータは10レベルとのことだ。しかし上記した理由で、2ndで10レベル未満のデータが存在していた可能性は低く、99年当時から暫定の3.0eルールで組まれていた可能性が高いと思われる……。





・「D&Dの地獄にはアスモデウスとかメフィストはいて、アスタロトとかサルガタナスとかの有名な悪魔がいないのはなぜ?」

 本当にその疑問を解決したいというよりむしろ「自分はその『有名な悪魔』とやらについて詳しい」ということやそれらの名前を単に書いてみたかっただけというその性根叩き直して差し上げますわ! お脱ぎなさい!




 で終わらせたいところだったのだが少し続けてみる。無難な答えとしては、よくD&Dファンらから回答されている通りで、現状のD&D多元宇宙はあくまでグレイホークという「オリジナル世界の背景設定」と言う建前であって、そのゲーム設定が現実の地球の神話伝承などと一致している必然性はない。
 しかし、一致している必然性がないなら、そもそもアスモデウスなどが中途半端に出ているのは何故だという話になるのであろうが、それに対して、AD&D1stの初期モンスターマニュアルに出ていたからなんとなく継続している、などと言ってしまうとさらに身も蓋もない。メフィストだけでなくアスモデウスもゲーテの『ファウスト』などにその名が登場するため、日本のゲーマー等の「詳しい人たち」が「有名」と信じ込んでいる面々などとは比較にならないほどに、海外、ことにファンタジーゲーマーには桁外れに馴染み深い存在であるといえるかもしれない。
 さらにもう少し続けてみると、D&Dの多元宇宙は最初からこういう秩序で地球と無関係なオリジナルワールドだよ、という記述(Spelljammerの一部記述など)もあれば、また一方で、実は過去は地球のそれと全く同じサタン頂点で有名悪魔どころか天使とかも全部いたけど、変動が起こってアスモデウス頂点の別物に変わったという設定の気がしないでもないとか(この説は
BoVDのアークデヴィルの項目などにもほのめかされているが、実はAD&Dの大昔にそのまんまの設定があったとかなかったとか)色々あるんだけどこれを追及するとおなじみビホルダー関連すら到底問題ではないほどさらに桁違いにやばい話にもつれこんでしまうのでさすがにもう続かない。





パピコン用ドラゴンスレイヤー キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*

 これだこれ。この「メロンの色」というにはあまりにもばっちい黄緑と黄色のコントラスト。ちなみに当時筆者はテレビにRF出力でつないだパピコンでApple ][のごときモノクロモードでの色のにじみによる色彩表現を体感することができたひとりだった(つまり、この環境では当然、黄色や緑が出る4色カラーモードはなおさら色彩がばっちい)。この画面だけでもう腹いっぱいだが、DS1ができるなら3年でも5年でも待つぞ。





・検索ワード 〜 「D&D 神格 能力」(その4)


・半神以上は顕著神格能力を「神格ランク+α」の数だけ得る
 「顕著神格能力」というよくわからない訳は日本語版のわずかな記述だが、原語はSalient Divine Abilityである。能力には以下のようなものがある。

 ○領域をひとつ増やす。神格は標準で領域を3つ前後持っていることが多いとされるが、これを1つ追加する。当たり前だが、領域が増えれば信者が激増し(D&Dゲーマーのうちかなりの部分が、信仰の選択にあたりその神がどれだけ有利に使える領域を持っているかしか頭にない)信者が激増すれば神格本人のランクはさらに上昇する結果になる。前回述べたように、領域が増えれば神格本体の持つ領域特典や無限に使える呪文レベル1−9がごそっと増えたりするがそんな些細なことはさておく。
 ○多元宇宙に存在するすべての単純+軍用武器に対して熟練+開眼
 ○さらに開眼のダメージボーナスが神格ランクと同じ点数になったりとかする
 ○ラウンド毎に可能な機会攻撃の回数が無限になる。購入特典:《大旋風》
 ○どれかの能力値につき関連のチェックに全部+25のボーナス。もともとの能力が40ないとだめだけどさ。
 ○神格ランクx10点までのダメージを吸収する防護シールドを1日に(神格ランク+耐久ボーナス)枚自在な位置や形状で作り出せる。シュブ=ニグラスが130点吸収の神性防護盾を1日40枚作れるのもこれである。
 ○ディバインバスター ディバインブラスト。(神格ランク+魅力ボーナス)d12のハイパーメガ粒子砲で遠隔接触攻撃(射程は神格ランクx1マイルまで)を1日に(魅力ボーナス+3)回なの。ニャルラトテップは35d12を1日3回って書いてあるけどたぶん魅力ボーナスの加え忘れミスで計算上は23回なの。接触攻撃だから判定するのは神格側で、神格ボーナスとか判定操作とか使って攻撃してくるからされる方はなすすべもないの。
 ○ウィザード呪文を「任意発動」できるようになる。
 ○なにやら全ラウンドアクションを費やすと、望んだ物だろうが者だろうが「どん」と出てくる。
 ○アーティファクト(作成不能物品)を作れるようになる(上級神はこの能力さえ必要ないが)。
 ○現実変容。えーと、つまり、その、あれだ、無限ウィッシュ。

 こういう能力を「神格ランク+α(半神で1、下級神で2、中級神で3、上級神で5)」の数だけ貰える。ランク5の半神でさえ、こんなんを6つ持っている。
 顕著神格能力は「神格にとっての特技(feat)のようなものだ」と記述され、また神格ルールを読んだ日本のプレイヤーも決まって表現するのだが、筆者個人としてはとてもそんな表現が相応とは思えない。特技のようなひとつひとつがじんわりと嬉しい底上げに比べれば派手すぎるし、そして(ランク1つごとに1つ+αなので)数レベル置きの特技のような有難みも何もない。また、前提条件はときどきあったとしても「魅力29」だの「BAB+20」などという神格の能力なら屁でもないような条件ばかりで、似合う権能や領域(「接触対象は即死」の能力には「死」権能や領域など)は書いてはあるが、単なる推奨であって条件ではなかったりする。おそらく、たぶんにオリジナルワールド製作者が神格に「イメージ通りの」能力と超絶性を容易に与えられるような設定であって、大味なことこの上ない。


・半神以上は権能に応じた能力(感知、交信、自動アクション等)を持つ
 
以前にも述べているが、神格は自らの権能に関することならば無限の範囲の知覚と交信能力を持つ。また権能に関係ある「事柄」なら自動的に引き起こすことができ、これは以前は半神なら「普通のこと」と説明しているが、具体的には半神ならDC15が1ラウンドに二回である。上級神ならDC30が1ラウンドに20回である。常人限界若干前くらいの冒険者が20人、毎ラウンド全力で働くくらいの結果が、神格の意思ひとつで自然に起こるわけだ。


 その他にもとても些細では片付かない能力の数々、外方次元界に持つ自領域(NetHackで言うところの”昇天”すれば得られるという奴である)だの外方次元界コントロールだの、神性オーラ(数百フィートだか数十マイルだか内にいるすべての対象に自在に、動悸・息切れ・めまい・せき・鼻水・鼻づまり等)だの色々あるのだが、列記しても疲れるだけなので省く。
 こういう神格をどう運用するのかに関しての考察は次回以降(もしあればだが)に続く。





・検索ワード 〜 「D&D 神格 能力」(その3)


・領域特典:神格の持つ領域の、領域特典をすべて得る
 PHBなどの信仰用の記述にあるとおり、神格は「領域(ドメイン)」を3つかそれ以上(この基準がよくわからないが、顕著神格能力(後述)で追加すると増えるので、おそらく標準で3つなのだろう)持つ。なお、呪文を与えられない神格ランク0も、領域を持つかどうかのガイドラインは実は不明である。(De&Deのウェブエンハンスに載っているサンプル神格は準神格の時から領域による能力(擬呪)を持っているが、D&D3.Xeはこの手のサンプルキャラに割とバグが多いのも周知である)
 その世界において神格が司るモノ(権能)のほかに、より「神格自身の性質(善、混沌、火、植物、治癒、死、工芸、……)」を示す特性が、「領域」であるといえる。

 クレリックは信奉する神格から領域を二つしか得られないが(EPIC特技とかで増やせないこともないが)神格自身は自分の持っている領域は当然全部使用できるといえ、領域特典もすべて得る。回数制限があるものは、神格ランクの分だけ余計な回数を使える。
 これを見て、「その領域を司ってる神なのに、領域の能力に回数”制限”がある自体が変だ」とでも思うかもしれない。が、例えば「力」の神は普段から筋力が60だの70だのあったりするわけで、ここまできたらもう力の特典が「無限」に発動してるも同然とかいうやつぢゃないの。それが1日に数回、仮に神格自身のクレリックLvが30なら筋力90や100にさらに上がることもあるってだけの話で。また、回数無限とかいうのはむしろこの次の項目である。


・擬似呪文能力:持つ領域の領域呪文をすべてat willで擬似呪文能力として使用できる
 神格は自分の持っている領域の領域呪文(領域ひとつにつき、呪文レベル1−9までひとつずつ)のすべてを、擬似呪文能力としてat willの標準アクションで使用できる。すべての領域について、呪文レベル1から9まで、全部である。回数制限が書いていないので、どうも無限らしい。
 呪文レベル9が無限に使える、レベル9とはどういう規模の呪文かといえば、TILTOWAITやら塵からの復活やら因果律改変やら天変地異やらでもまだレベル7で、レベル9とは時間停止やら神性招来やらロストからの全快復活やらである。こう言うほど都合よく領域呪文に便利なものや凶悪なものは揃わないだろう、と思うかもしれないが、はたして「幸運」の領域には、レベル9に「ミラクル(上級因果改変、他の呪文を模写できる)」があったりするんだこれが。ちなみにウィッシュやミラクルは術者の経験値を触媒に使い消耗を招くことで有名だが、一般的なルールとして擬似呪文能力は触媒を(たとえ元の呪文に必要であっても)必要としない。
 ただし、この神格の擬似呪文能力は、術者レベルは意外に低いため、呪文抵抗力(前回参照)がある神格や上位の来訪者同士の殴り合いではほとんど頼りにならないのだが、無論、そんなものを持っていない定命のものが巻き込まれればただでは済まない。

 が、これもたいしたことではない。D&Dではなにも神格だのアークフィーンドだのでなくとも、普通の上位モンスター、フェニックスやタイタン、上位セレスチャルなどは、これくらいの回数無制限擬呪ならいくらでも持っている。まして大概の神格は、20HD+30-50lvという膨大なリソースに由来する自身の能力、そしてさらに後述する神格ならではの激烈な特殊能力など、たかだかレベル9擬似呪文能力なぞに毎ラウンドの標準アクションを費やすよりも遥かに強力な手段を回数的に使い切れないくらい持っている。
 以前えらく喜ばれたので再度引用するところ、神の能力を表現する言葉として「何レベル呪文だとかもうガンガン」とか言っていた人がいたが、最低レベルの神格というか神に及ばない存在ですら「何レベル呪文」云々どころか最高位の呪文レベル9まで、「ガンガン」どころかat willで回数無限発動である。しかもそれは強力な対象との抗争では歯牙にかけられることさえない、神格の持つ中では特筆にも値しない能力に過ぎないのだ。

 神格ならではの激烈な特殊能力、とは何なのかに関しては次回以降に続く。





・検索ワード 〜 「D&D 神格 能力」(その2)

神格ランク 神位     例

0     準神格・英霊 ケラネン、マーリンド、源頼光
1−5   半神     アイウーズ、キアランサリー、東海竜王敖広
6−10  下級神    ヴェクナ、バハムート、トーム、太上老君
11−15 中級神    ハイローニアス、カートゥルマク、マイリーキー、レオルクス、天照大神
16−20 上級神    ペイロア、コアロン、シアリック、パラダイン、ブラフマー
21+   "超神"    エイオー、ハイゴッド

※超神はdivineルールの範囲外であり、能力的にサポートされていない

 神格ランクによる能力には、神格ランクがつくと自動的に得られるもの(すなわち、ランク0でも自動的に得られるものが多いが、無情にも1以上が必要というものもある)神格ランクの値をそのまま修正に使うもの、神格ランクに応じて効果が変化するもの(これらは大抵は1以上である)など多岐にわたる。ランクはテンプレート的なもので、弱いクリーチャーにつけることもできるが(現にウェブエンハンスには1ローグについた悪神のサンプルがある)前述したように、大概の神格はHD20+30-50lv(他種族から神位を得たもの等は30-50lvのみ等あり)を持つというガイドもある。以下は、断りがなければランク0を含めてすべての神格が得られるものである。(なお、当たり前だが、以下は端折りまくった説明で疑問や誤解も生じると思われるので、正確なルール情報はSRDなどの参照を要することは言うまでもない。)


・不死性を得る
 不死性というのは歳をとらず、食物や水、空気、睡眠等の必要もないということである。意外に思えるかもしれないが、よく「神」のイメージに対して持たれている「不滅性」の類(多次元の肉体を持つやら、肉体を破壊されても死なないやら)はここでは特に獲得しない。それ以前に、もともとホームプレーンにおける本質以外をいくら破壊されても滅びることがないのはそこらの来訪者には珍しくなく、実質、高レベルで果てしなく不滅に近い状態になっているのは、このゲームでは別に神格に限ったことではない。
 逆に言えば、「神にさえなれば(=何も頭を使わなくても「レベル上げ」さえしまくれば)何をどうされても滅びなくなる」、などということはなく、「何をどうされても滅びることがないように徹底的に頭を使って不滅性をすでに完備している」くらいは、神位をのぞむなり維持し続ける者ならば当たり前ということである。


・hpは各HDごとに最大値になる
・各種耐性、ダメージ減少(10〜30/+6)と貫通能力を得る
・ACに「+13+神格ランク(外皮), +魅力ボーナス(反発), +神格ランクと同点(神格)」を得る
・神格ランク+32の呪文抵抗力を得る
・半神以上でat willでテレポート、下級神以上で次元間移動
・その他、感知、交信、移動能力(高速移動、高速飛行)等多数
 神格ランク0から持つ、呪文能力やら神力やら奇跡やらを除外した「通常能力」の底上げである。各種耐性は変容や精神、強制移動、ドレイン系列に含まれる多数、半神以上だとさらに各種元素の完全耐性などで、要するに下世話なRPGでいわゆるボスキャラに効かない攻撃や呪文はまず効かなくなる。
 なお、3.5eでは神格の魅力ボーナスがAC反発ボーナスとして加わるため、たいてい数十の魅力値を持つ神格のACはべらぼうに跳ね上がる。BoVDのデータに神格ランク1を付けようと思う向きは、たとえばアスモデウスの魅力が30 (ボーナス+10)であることなどは考慮する必要がある。(この場合、アスモデウスのACは+10反発, +1神格が加わり(外皮は元からの方が高いので変わらない)合計60になる。)

 項目は非常に細かいが、いずれもたいしたことではない。BoVDのコラムに書いてある通り、アークフィーンド等なら既に持っているようなことと大差がない。硬いだけなら、破壊スルさそり(AC60)だの上級ワイアームだのいくらでもいるわけで、神格とそうでないものを絶望的に分けているのはこんな要素ではない。


・判定を神格ランクの分だけ自在に操作できる
 ありとあらゆる判定に「神格ボーナス」がつく。例外的に判定でないものにもつくこともある(上記の「AC神格ボーナス」など)。BoVDの、アークフィーンドにランク1付与のコラムに単に「攻撃・判定等に+1」と書いてあるものの実質は、実はこれである。当たり前だが、これは神格かそれ以上のものを除いていかなる手段でも無効化や緩和はできない。

 加えてd20のダイスロール自体にも、半神はそうしたいと思っただけでファンブルを避けられ、下級神は技能などの判定ではそうしたいと思っただけで出目10を取れ、中級神はそうしたいと思っただけで出目20を取れる。加えて上級神は攻撃や防御でも(さらにはダメージを出すダイス目でも)すべてそうしたいと思っただけで最大値にまですることができる(自動的にクリティカルにはならないので、クリティカルになったかどうかを判断するだけのためにd20することになる)。
 もっとも上級神同士が対峙するようなことがあれば、両者とも底上げしたり操作するので結局はベースの能力で殴りあう結果になるわけだが、仮に神位が低い者がより上の者に対抗することを試みるのは、かなり生易しい言い方をしても、そうそう楽なことではないだろう。

 これは重要である。FTにモダンにジャパニメまであらゆる世界を1d20判定に内包するルールにおいて、その根源の1d20を操作できるというのは、考えようによっては多元宇宙の唯一の根本原理に干渉できることを示しているに等しい。「倒せないと決めてある/倒されないようデータ化しない」という放棄でもなく、かといってとってつけたような高数値や特殊能力の山でもなく(とはいえ、オフィシャル世界の神格にはそれらも山ほどあるのだが)神格というものが多元宇宙内で別格の存在であることを決定的に示す。また、その「ルールの破れ方」が明確に示されている、という点は、その破れ目の裏をかく方法を考慮する余地が最後の最後まで与えられているとも言え、いかにも3.Xeの体質である。


 ここまでは一応「通常能力」だが、特殊能力やらいわゆる神力とみなされる類に関しては次回以降に続く。





・検索ワード 〜 「D&D 神格 能力」

 D&D 神格 能力
 D&D 半神
 D&D demigod 能力値
 D&D 権能 神格
 D&D 神格ルール
 Divine demigod rank
 半神 下級神 中級神 上級神 能力
 D&D 上級神 能力
 ディバインランク 神格
 ディバインランク 能力
 効果 神格ランク

 和訳されているいくつかのサプリメントにも、ときどき「このモンスター(ボスキャラ)を神格として扱いたかったら神格ランク0−1を付与しる。」などと書いてあることがあるが、日本ではDivine Rankについて書かれた
De&De (3.0e)も、3.Xe対応のd20共通ルール(SRD)も未訳である。が、検索ワードの数々を見るに、この「神格ランク」というものは具体的にどういった力を与えるのか、もとい、D&Dの神格はレベルや能力値などのデータ上、どの程度の能力があるのか、といった情報への要望はかなり多いようである。

 なお、一応、バハムートとティアマト(WG設定ではどちらも下級神)のモンスター形式データが 日本語化もされているMoPにも載っているのだが、これはDe&De以前のもので、以降の神格ルールには沿っていない。MoPのものは最初期のものであるし、実際にそのデータは仮にアヴァターと解釈するにしてもかなり弱く、矛盾も多い。これらのデータは上記のボスキャラ等と同様、「神格ルールを導入しない」という前提の場合に限って使用すべきデータ、ないしあくまで参考データであろう。
 そもそもモンスター形式のデータが記述された「神格」からしても、和訳された書物で載っていたどうやら唯一のものがCoC d20のようなのだが、これはすでに入手困難である。神格能力は、和訳された情報がまったくない状態のようだ。


 さて、De&Deのことを口にする誰もが言うが、3.Xeの神格の能力は凄まじく高い。オフィシャルの主要神格のデータは、ベースのレベルだけでもHD20+50lvとかあり、これに神格ランクによる補正、膨大な特殊能力がつくとその能力は文字通り計り知れないほどに跳ね上がる。2nd以前のAD&Dの時代には、神格やそのアヴァターは10lv台後半のプレイヤーキャラクターならばなんとか対抗することができたが、3.XeでのWGやFR, 地球の神格らのDe&Deデータを見る限りは、直接に対抗するのは非現実的の一言につきる。
 無論、データになっている以上、これらの神格を倒すことは理論的に不可能ではないが、そんなものはモビルスーツを素手で倒せるようになるまで修行しろ、と宣告される方がまだましである(本当にd20 mechaでそうできるキャラクターの方がたやすいと思われる)。

 (なおHD20+50lvなどと聞いて「99れべるになればぜったいたおせる」とか思った輩がいるかもしれないが、以前からつねに述べている通り、その「れべる」がCRPGのノリで「何の危険も思考もなく弱いモンスターを一方的に大量虐殺しただけで得られる力」という感覚でのものなら、D&D系では99lvになろうが255lvになろうが間違いなく瞬殺される。epicやそれに近いレベルでは、レベルが上昇すれば(というより上昇させるには)超絶的な能力の数々を把握し管理して、あらゆる弱点を潰し続ける必要がある。そうやって徹底的に管理した超絶能力が「最低限」どれほどあれば、これら神格に対抗することができるのか、epicキャンペーンを軽々と回しているわずかなD&D古強者霊媒師ならともかく、筆者などには見当もつかない。)

 なぜ1st-2ndに比べて3.Xeの神格が理不尽に強いのか、これは、AD&D1st-2ndでは、ネームレベルひいては20lv(基本ルールサポート上限)・30lv(FRや一部特殊ルールキャンペーン)といった一定のレベル以降は、成長してもあまり差がないルール(戦士系はhpがレベルごとに+3されるだけだったり)になっていたためもある。超高レベルでは、レベルよりも工夫や戦法がものを言うため、結局のところ神格のレベル値をべらぼうに高くしても実際はあまり強くもならない。そのため、神格には一応基本ルールの上限あたりの能力を与え、単純な力の上ではそのあたりのレベルのキャラクターなら対抗できるようにし、むしろストーリー内での「状況」を工夫することを重視していたものと思われる。
 それに対し、3.Xeではレベルが上がると、その能力は(徹底的に管理すればの話だが)レベルに比例して(epicではある意味比例以上に)上昇していく。つまるところ、プレイヤーキャラが天井知らずになった分、神格はそれ以上に天井知らずになったということだが、もうひとつはそういった定命の者が際限なく強くなりうる(くどいようだが、プレイヤーの思考能力に要求されるものも際限ない)というルール状況において、宇宙(ユニヴァース)の上辺に属する神格の地位を、他と一線を画するほど押し上げるためもあるだろう。3.Xeでは、神格のアヴァター(化身)も本体に比べてほとんどと言っていいほど弱体化しないルールになっているため、神格やアヴァターではなく、もっぱら代行者や信徒と戦う、という図式が推奨されていることが伺える。
 しかしAD&D時代に比べて、3.Xe時代ではアヴァターとさえ戦えないという状況は物足りないという声も頻繁に聞く。Epicまで続ける予定がないならば、基本ルールの最大レベルの20lv前後になれば神格のせめてアヴァターあたりとなら戦える展開も欲しい、と言う希望はもっともである。

 が、一方で、サードパーティーのd20には、戦闘能力を示すCR(脅威度)が設定されている神格や、例えばCoCなどにはそれが20未満のもの(実際にそのCRと同レベルのパーティーに相応かは筆者には判断できないが)も設定されている。とりあえず3.Xeの神格能力を検討しながら、CoCのようになんとか普通のプレイングで対抗できるような神格をデザインすることを目標にしてみようというところで次回以降に続く。続かなかったりする。





・検索ワード(その11)

アラゴルン MERP レベル
アラゴルン ギムリ レベル MERP
ボロミア 痛打表とか
アラゴルン エピックレベル
D&D アラゴルン ガンダルフ ギムリ レゴラス レベル

 ここ数日でこのワードがいきなり増えたのは、数日前のFotR地上波放送の影響であることは容易に想像できる。FotR開始当時の指輪の仲間については
前回の地上波放送のさいに記述したが、一度主だったところのMERPレベル値を一通り記してみる。

モルゴス 500
トゥルカス 450
ボンバディル 360
エオンウェ 350
サウロン 240(妖術師)、360(指輪あり)
ルシエン 150
フィンゴルフィン 135
フェアノール 130
マエズロス 105
エアレンディル 100
ゴスモグ(第一紀) 100
ギル=ガラド 100
フーリン 100
トゥーリン 99
マグロール 85
ベレグ・クーサリオン 75
キアダン 70
エルロンド 65
エレンディル 60
アングマールの魔王 60
ガラドリエル 60
シンゴル 50
エクセリオン 50
グロールフィンデル 50(新旧共)
イシルドゥア 50
サルマン 50(イスタリ)、300(アマンでのクルモ)、12(シャーキー)
サウロンの口 50
ハムール 50
ガンダルフ 40(戦前)、50(白)、240(アマンでのオローリン)
アラタール 40(イスタリ)、240(アマン)
ラダガスト 40(イスタリ)、180(アマンでのアイウェンディル)
パルランド 40(イスタリ)、180(アマン)
ケレボルン 40
ゴスモグ(第三紀) 40
モリアのバルログ 36
スランドゥイル 33
アドゥナフェル 32
アラゴルン 27(戦前)、36(戦後)
ファラミア 24(戦後)
ボロミア 20(戦前)
スメアゴル 15
エオメル 10(戦前)、25(戦後)
エオウィン 8(戦前)、24(戦後)
レゴラス 8(戦前)、28(戦後)
ギムリ 8(戦前)、21(戦後)
フロド 3(戦前)、12(戦後)
サム 2(戦前)、9(戦後)
メリー 2(戦前)、8(戦後)
ピピン 2(戦前)、8(戦後)

 このレベル値にはどういう意味があるのかといえば、レベルが高ければ色々なことができる能力があるのかもしれないが、他のRPGや下手をするとドラゴンボールの戦闘力のような高いほうは絶対に負けないとかそういうことは別に何もない。MERPの元ルールことロールマスターには痛打表とか痛打表とか痛打表とかあるため、サウロンをギル=ガラドとエレンディルが、アングマールの魔王をかの二人が打倒したのも、この値でのこととされる。
 なお、このMERPでのレベル値を、10レベル前後まではそのまま、高いレベルではだいたい2/3にしたのがD&Dデータすなわちd20版MERPのレベル値(ECLやCRではない)に相当するとされる。少なくとも第三紀の分(MERPレベル60未満)はそうである。より上のレベルでは別の式があるのかは定かではない。


 このMERPデータで目立つ点のひとつは、シンゴル、エクセリオン、グロールフィンデルなど、伝説時代の強大な武将が同時期のノルドール等に比べて、何かやけにレベルが低いことである。ゴスモグ(第一紀)もそれに引っ張られてマイアとしてはかなり低くなっていることは否めないだろう。こうなった理由は推測するしかないが、ひとつは第三紀のグロールフィンデルに第一紀の方を合わせてしまったこと、もうひとつは第三紀の数値にあわせて設定されたガラドリエルが「偉大な」存在であるため、第一紀でも少なくとも幾人かはそれよりも低い値にせざるを得なかった、等が考えられる。ケレボルンが40もあるはずがないなどといった意見を頻繁に耳にするが、神話時代から中つ国にいるエルダールとしてはあまりにも低すぎるほどである。

 さて、おそらく問題の検索ワードが求めるところは、FotRラストのオークユニーク(ラーツ、映画オリジナル)と映画のイダテンの力関係であろうが、オークユニークのレベルは一桁から、第一紀の30前後のオーク首領、ひいては第三紀ゴスモグ(MERPではハーフトロルだが)の40まで多種多様なので、FotR末のおそらく30レベル弱のアラゴルンとも、普通に渡り合うものもいるかもしれない。が、それ以上に映画のイダテンは、アンドゥリルがまだないことを含めて、原作のアラゴルンよりは全面的に能力が劣っている(未成長でもありそうだが)設定であることも考慮する必要がある。





・検索ワード(その9)

指輪物語 神 D&D データ

 MERP-d20では以下のデータである(別のRPGサークル作のものとの違いを比較すると面白いかもしれない。なお筆者の感覚では、こちらのサークルのデータの方にどちらかというと近かった)。フェーバードウェポンなども設定されているが省略。なお、このルールでは、ディサイプル(クレリック)はこれらの霊から呪文をドローするものの、なぜか「神格」ではないといい、神位やパラメータなども(現状では)存在していない。

 アルダ世界の表現(およびMERPの反映)的には、ディサイプルがこうしたアイヌアから呪文をドローする必然性というものはないように思われる(d20では神格ではなく、領域や信念から呪文をドローするというルールが認められているため)。にも関わらずアイヌアがd20パンテオン扱いになっているのは、おそらくアイヌアをデータ化し、ルールに直結するものとしてどうせだからできるだけ使おうというあたりなのだろう。

        属性      領域
マンウェ    秩序にして善  風、戦、秩序
ヴァルダ    秩序にして善  太陽、善
ウルモ     中立にして善  水、守護
アウレ     混沌にして善  地、魔術
ヤヴァンナ   中立にして善  植物、治癒
マンドス    秩序にして中立 知識、幸運
ヴァイレ    真なる中立   知識、魔術
ロリアン    中立にして善  欺き、守護
エステ     中立にして善  治癒、善
ニエンナ    中立にして善  治癒、力
トゥルカス   混沌にして善  旅、力
ネスサ     中立にして善  旅、動物
オロメ     秩序にして善  戦、動物
ヴァーナ    中立にして善  植物、太陽
メルコール   中立にして悪  悪、火、破壊、死
サウロン    秩序にして悪
オスセ     混沌にして中立
ウンゴリアント 混沌にして悪

 混沌(神話一般、エルフ的)や秩序(ヘブル、アラブ神話的)でなく、「中立にして善」が圧倒的に多いことが目立つだろう。重要なマイアールが入っていないのは、未定なのか、それらの存在から呪文をドローすることを想定していないのかは定かではない。
 なおd20の共通ルールでは、「半神」以上の神格は基本的に3つの領域を持つ(特殊能力のスロットで増やすこともできる。D&Dオフィシャル世界のWGやFRの神には、4つ以上の領域に増やしているものも、3つのままにしている上位神もいる。最低3つということである)。上記の領域が3つに満たない大半のヴァラールは、神格ではないという点の反映なのか、単に共通ルールに沿っていないのか、さらには未定データなのかは定かではない。





・検索ワード(その8)


ネヴァーウィンターナイツ2 日本語版

 おちけつ。気がはやりすぎ。本国では話題になっているが、06年6月現在日本では訳されるかどうかすら定かではないとしか言えない。
 とりあえず当面は1を続けるしかない。
先日のでちょいと聞かれたのでNWNのモジュールのうち他のCRPG(とか他のレトロゲームとか)の再現系の類を列記してみる。
 なお、こういうものを紹介すると必ず「元のゲームをやればいいのに」という声が出るが、D&D3.0eの綿密なゲーム構造とNWNのシステム、そして無限のカスタマイズが可能なNWNでどう表現・アレンジするかというのがポイントである。マイクロンフトもその例である。
 (※)印は拡張パック(SoU, HotU)が必要である。いずれもそれなりに好評なものばかりだ。

プールオブレイディアンス
 FCとかにもあった元祖D&D系CRPGの再現モジュールで、NWNとしても定番の良作。NWN付属のお使いシナリオはさっさと中断して、こちらを先にプレイする人も多い。

タワーオブドゥーム
シャドーオーバーミスタラ(※)
 外すわけにはいかないカプコンD&Dの再現モジュール。特に後者の評判が高い。

ドルアーガの塔 悪魔に魅せられし者
 電源版よりもむしろ鈴木直人のゲームブック版の再現モジュール。ただし7階まで作られたところで数年止まっている。メスロンの名などは頻出するが、まだ本人は出てこない。

ブラックオニキス
 こちらは別にゲームブック版ではない。

Wiz外伝II 古代皇帝の呪い(※)

アレンジドライド(※)
 ハイドライドのようなモノ。

ゴールデンアックス
 セガの同名タイトルを何やらそれらしくNWN化。

DiabloII ActIV
 ActIV部分を何やらそれらしくNWN化。他にもDiablo再現系のモジュールは英語版には数多くあり。





検索ワード(その7)

ブルーノー 斧
 AD&D2nd (Heroes Lorebook)データでは「+3アックス」で、片手で使えるが両手で使っている時と同じダメージが出るという(2ndの時点では)ささいな特殊能力あり。ついでに、+2ミスラル・フィールドプレートと+1シールド。

キャラクターデータ レベル ロードス
 こちらへドゾー。3.0eデータに焼き直したものだが能力値はリプレイ当時のだ。

魔王アスモデウスの画像
 AD&D1st (MM1)。  3e (aspect)。

エレメント パラ 泥 雷
 四大パラエレメントは「泥・煙・溶岩・氷」である。雷は四大ではない。

エルミンスター レベル
 ウィザード24/クレリック3/ファイター2/ローグ1/アークメイジ5 (ELH)。なお、高レベルルールが揃っていない頃の少し古いデータ(FRCS)ではウィザードは20で、かわりに「エピック4」がある(クラスレベルのかわりに「エピックレベル特典」を足すという選択肢)。AD&DではMagic-user 26だったり29だったり。
 AD&D当時なぜ「29」だったかというと、FR世界には「30lvルール」というものがあり、他のワールドの大半が(高レベル拡張ルール(HLC)なしの基本ルールでは)20lvまでのサポートだったのに対して、FRでは30が上限だったためである。他ワールドの神格のアヴァターや英霊に18-19lvが目立つのと同様、ご丁寧にもエドはこのあいどるちょうじんに「上限のぎりぎり一歩手前」を設定したわけだ。なお、3.0eでFRCSでのCRが39なのも、EPICでのひとくぎりである40lvより、わざとらしく一歩手前を設定してあると思われる。

モルデンカイネン レベル
 ウィザード27 (ELH)。単に「20+」とだけなっている書物(LGGなど)が多いが、それはELH(20レベルオーバー対応の高レベルルール)前に設定されたものや、そこからの又参照が多いためである。AD&Dでは12だったり20だったり。

ドロウ・エルフの武器
 アダマンタイト製の+3か+4の短剣・ショートソードとクロスボウ、女性は同ボーナスのメイスと大量のジャベリン(ドロウは女性の方が筋肉質であることに注意)。なお防具も同じ金属の+2か+3チェインメイルと同ボーナスのシールド(以上、AD&D2ndMM)。ボーナスよりも重要なのは、刃と矢にはセーブに-4ペナをつける強力な麻痺毒が塗ってある点である。
 このドロウの金属は、地上のアダマンティンとは異なり、日光にさらすと塵と化す。ちなみにドリッズトが地下から持ってきた武器は、直射日光にあてないように注意したにも関わらず地上では次第に劣化していったので、あるいは日光だけが理由ではないのかもしれない。

ビホルダー 金属分解
 それはSWのバグベアード。ビホルダーは金属分解ではなく人間まるごと分解である。あるいはバグベアードのそれは、ガウスの劣化能力などがヒントかもしれない。





「なぜジャイアントの集団や上位デーモンをも倒せるほどのドリッズトが、しかも同じくらいの力の仲間数人がいるのにオーク軍団ごときを殲滅できないのですか」

 FR世界に詳しい人に聞けば40−50項目くらいに渡ってその理由を挙げてくれそうだが、たいして詳しくない筆者が説明できるのはせいぜい3項目ほどである。

(1)『アイスウィンド・サーガ』執筆当時のゲームルールはAD&D1stであり、データも現在とは大きく異なっていた。例えば、3.0eのデータでは上位デーモンのエルトゥがそれにあたる「タナーリ、バロール」のレベル(CR)は18で、それに対するドリッズトも「Ftr10/Bbn1/Rng5(CR18)」である。しかしAD&D 1stでエルトゥのデータにあたるDemon, TypeVIは「HD8+8(lv10前後相当)」に過ぎず、対するドリッズトのデータも「レンジャー10」に過ぎなかった。

(2)その1stの頃の弱いデータの上で、ドリッズトとウルフガーが軽々とジャイアントを撫で斬りにしたことに関しては、実はこの二人がたまたまジャイアントにだけは異常に強いルールであったことに因する。ウルフガーの槌Aegis-fangはエゴアイテム属性としてはHammer of Thunderboltsでありルール的に「巨人に当たったら(1st-2ndでは抵抗の余地なく)一撃死させる」効果がある。ドリッズトに関しては、1stのレンジャーはジャイアントに異常なほど強く、補正によって数倍ものレベルのジャイアントを軽々と倒すことが可能だった。逆に言うとこの二人はジャイアントに限っては大型の敵でもたやすく屠れるが、小型の敵の「数」にはそれほど極端には強くないということである。

(3)オークを見くびるな。オークは「全員1レベルモンスター」なんぞではなく、人間と同様にレベルが上がりうる「種族」である。それどころか、オークのベースの「種族」として見た場合の基本能力は人間よりも確実に優秀である(パワーゲーマーには、もし許されればハーフオークになど見向きもせずオークを選ぶ向きも多い)。また、30−100体のオーク隊の中には確実に1体の5レベル術士、5体の5レベル戦士、3体の7レベル戦士がいる。仮にこれが千人単位になれば、10レベルのドリッズトより優秀な戦士などざらだろう。じゃあなんでオークという種族が人類の脅威にならないのかというがおもいっこし脅威ですが伺か? 「ゴブリンやオークは1レベル冒険者の剣の錆で、滅亡しないのはただ数が多いとか"狩場"から無限に出てくるからだ」とか思っている向きは、仮にオークがそんなに強かったら全世界をオークが席捲するような感に襲われるかもしれないが、実際は同じくらい強力な種族・勢力が他にもごまんとひしめいている(400ゴブリンないし200ノールの中には確実に2体の5レベル戦士と8レベル戦士がいる等)のでそんなことにはならない。人間はその中で自勢力を支えている一勢力に過ぎず(オークやゴブリンに7−8レベル戦士が無数にいれば、人間にはFRCSにゴロゴロ載ってるあいどるちょうじんやPCゲームで超高レベルになったプレイヤーキャラが無数にいて人類勢力を支えているのかもしれない)一見動きがないように見える場合とは単にその均衡状態に他ならない。FRなぞはまだ見かけ上の人間の勢力が大きい方だろう。





富士見文庫ゲームブック『魔法の王国シリーズ』

 ずいぶん前の記事で何であるが、バード/ドルイドが「物凄いヒロイン」だというのは、3eのバードとマルチクラスルールを見慣れた、もとい、現在のRPGの「吟遊詩人」のイメージであって、ケルトのバードではないため出てくる感覚なのだろう。
 ともあれ、どちらにせよこのシリーズのヒロインは別に「バード/ドルイドのマルチクラス」なんぞではなく、ただのAD&D 1stの普通のBardである。用語集の吟遊詩人の項目でも述べたように、AD&D 1stのBardは本当に「ケルトのバード」をモチーフにしていたため、ウィザード系魔法(AD&D 2nd)やソーサラー似の独自魔法(3e)ではなく、普通に「ドルイド魔法」を使うというルールになっていたのである。(ただし、戦士→盗賊→バードという転職を必ず繰り返さないとなれないという1st Bardの奇妙なルールを見て、結果的にどちらが「物凄い」と思うかは定かではないが。)
 「エアドリーって"謎"の女神」も、単に先日述べたAD&Dデミヒューマンの共通神格エアドレ・ファインヤのことにすぎない。本国ではおおよそ1st時代から最も有名な神の名のひとつであるが、日本語のD&D3e以降の環境に限っていえば、現在もエアドリーはLGGやFRCSにほとんど名前だけが触れられるに留まっている。(あるいは、『バルダーズゲート』シリーズに有翼エルフことアヴァリエルの神として言及されたので、覚えているプレイヤーも日本には若干いるといった程度だろう。)

 さて、かつての富士見のゲームブックのAD&Dシリーズは、AD&Dの世界観やストーリーをピックアップしたもの(ルールは別物で、ゲームブックとして独立したシステムになっている)の邦訳であった。現在なら、この手の派生作品を作るならばCRPGになっているFR世界になるのが普通だが、この当時はまだFRも今ほど主流というわけでもなく、そのラインナップはドラゴンランスの外伝やレイヴンロフトはともかくとして、なにやら世界設定不明の変り種も多かった。
 先日も述べた通り、このAD&Dシリーズ全般に対しては、ゲームブックのサイトでは酷評されていることも多く、正直、その声を否定することはできない。文章量が非常に多く、物語性も確かに高く、一見丁寧なつくりに見えるが、純粋にゲームブックとして見た場合、理不尽な展開やルール、バグが多いものもある。

 この『魔法の王国』シリーズ(世界設定は"Generic AD&D"とされ、実際に神格なども共通のものが主に登場する)も、大魔術師の息子である主人公が父の遺産を取り戻しつつ、その直面していた世界の危機にも立ち向かってゆく、という、ここだけ聞くと王道のヒロイックな展開を想像しがちであるが、実際はそのさなかにこの主人公の魔術師が知識と魔力にとりつかれ、やせこけ・やつれた廃人となっていく姿があまりにも克明に、リアルに描写されてゆくものだった。無論、これは魔術師というものが、戦士や「英雄」とは明らかに異なる人物像(役割(ロール))であることを再現した、ある意味で非常にD&D的な表現であることは間違いないのだ。
 それより強烈なのは、本文中の徹底的なルールの反映である。魔術師が主人公なだけに、マテリアル・コンポネント(触媒)や詠唱時間(3.Xeと異なり、AD&D1stや2ndは魔法詠唱が1ラウンドをさらに細分したセグメントおよびスピードファクター単位である)をはじめとする魔法の細かい効果の再現や原理のギミックは勿論である。さらに、他のRPGにおいてもオーソドックスな舞台設定やモンスターではなく、ソーラー(太陽の使者)、ギスヤンキ(ギスの者ども)、ヨクロル(ロルスの侍女)といった、AD&Dの多重次元界や神格勢力の設定に関わるような存在ばかりが次々と登場し、各”界(プレイン)”をはじめとするコスモロジーの設定が王道的ストーリーの裏打ちとして縦横無尽に交錯する。これらの、D&D系の持つ側面のうちでも最も「ディープ」な単語や概念の数々が、当時「和訳されていた書物で読めた」という信じがたい事実に対して、たいしたマニア知識では驚かない現在のAD&DやD&D3eフリークにすら驚愕する人々が少なくない。

 つまるところ、あまりにもディープだった。当時、特に1巻目『魔力の杖』はパラグラフ数の少なさや選択肢の易しさから「ゲームブックの入門書」と紹介されることも多かった。実際のところ、ゲームブック入門書、というよりも、ゲームブックそれ自体に対して求められていたものに、CRPGやファンタジー小説よりもさらに「手軽なファンタジー世界の体感」やその「入門」であったろうと思える。(現に第一巻の時点ではまだ、いたいけながら才能あふれる少年が初歩の魔術を憶え、いじわる上級生をやりこめたりする学園生活という、玻璃ポタのはしりのような部分もあった。)
 そうした「手軽な入門」に求められていたものに比して、特に2巻以降のこのシリーズはあまりにも徹底的に「"A"D&D」でありすぎたのだ。筆者のゲームブックファンの友人や、D&Dを知っていた知人の幾人かですらも、この廃人化していく主人公の姿に激しく幻滅し、(先日にも触れた、ゲームブックとしてのバグ等にも相まって)酷評する者ばかりだった。
 しかしながら筆者はといえば、このゲームブックがきっかけで、新和の和訳ですでに慣れ親しんでいたクラシカルD&Dではなく、非常に複雑な多重次元界コスモロジーをもつ未訳のAD&Dの魅力へとのめりこんでいったのである。





・一本道のうしろの世界

 *bandのプレイヤーは、おびただしい数のユニークモンスターはどのように世界に存在していると思うだろうか。

(1)ユニークは全員、最強無敵の@様の通り道に弱い順から並んで配置されている

(2)多様な世界で、ユニークとその持つ勢力らは各々の能力や権力や大小比や数によって組み木細工のようにぎっちりと噛み合って鎬を削りあっており、@はムアコックのECのように、ほんの些細な干渉でその巨大な組み木細工を切り崩し得る存在である

 RL関係の掲示板などにも、必ずしもネタというわけでもなく、本気で(1)以外は想像だにしたこともないとおぼしき言葉が見られることがある。さらに世には、RPGに限らず、漫画や小説などどんな世界に対しても、似たような世界像の想定しかできないファンも珍しくない。

 そうした感覚が浸透した理由はいくつか考えられるが、ひとつには「一本道」や「おつかいシナリオ」のCRPGの氾濫がある。RPGの世界内のどんなイベントや敵でも、主人公の前に「配置されている」(たとえランダムであっても、ひたすら主人公のために「配置される」)という構造や、なんでも主人公に押し付けて解決させている構造が、いったんプレイヤーの目に透けて見えると、いつしか「物事を解決する要因は主人公の強さだけ」(他の状況や背景は一切無関係)とか、「主人公ひとりを中心に回っている世界」といった感覚を、当然のごとく持つようになってくる。
 (さらに、その中心がプレイヤーキャラでなく作者贔屓最強NPCだったりすると最悪だが、今回はその話は省く)

 さて、AD&DのFR世界の有名ゲーム『バルダーズゲート』シリーズのエンジンを使って、別のチームが開発した
『アイスウィンドデイル』1、2というRPGがある。本編のBGシリーズは緻密なシステムに載った多様なシナリオと凝ったストーリーが売りだが、IWDシリーズはここからシステムのみを取り出し、ひたすら一本道で戦い続けるだけのゲームにしたものである。特に2には若干のサブクエストもあるが、進行自体はひたすら、あらかじめ配置してある敵を戦法を考えて排除し前に進み続けるだけである。RPGとしては、もはや原始的といえるほどにシンプルである。
 しかしながら、その進行につれてストーリーのフォローとして表示されるテキストからは、主人公のそれらの行為がフェイルーン(FR世界)の巨大な流れの中の存在であり、なおかつその中で不可欠な役割を果たしていることが、明らかに浮き彫りになっている。実際の行為が一本道であり、超高レベルキャラら(これはバランス調整が不十分なためもある)の恐ろしく派手な魔法や技術の超絶戦闘が続くにも関わらず、この世界で起こっていることが「強い主人公らが戦闘で突き進んでいるだけ」とは、間違っても錯覚することは不可能である。そう見える理由は色々と考えられる。作り方もあるだろうし、単なるFR世界自体の特徴に由来しているともいえる。





・「その面々のクラスやレベルを知りたいのですが」

 特にアーサー王とクーフーリンとヘラクレスだそうだ。要するに何を聞きたいかはわかるが、しかし佐々木小次郎なんぞは少なくとも筆者の手許のデータにはないので要望には応えられそうもないが、とりあえず先日の分のうち全員はあまりにめんどいので適当に抜粋。

       属性      クラスレベル
アーサー王  秩序にして善  パラディン16/バード5
ランスロット 秩序にして善  ファイター18
ギャラハッド 秩序にして善  パラディン15
ラモラック  真なる中立   ファイター15
クーフーリン 混沌にして善  ファイター20
ベオウルフ  中立にして善  ファイター19
ヘラクレス  混沌にして善  ファイター20
ユリシーズ  混沌にして善  ファイター13/シーフ9
源頼光    中立にして善  レンジャー18
コナン    混沌にして中立 ファイター13/シーフ7
ファファード 中立にして善  レンジャー18/シーフ15/バード5
エルリック  混沌にして悪  クレリック10/ドルイド5/ファイター15/ウィザード19/イリュージョニスト10/アサシン10

 最後のは一体なんなんじゃいとか思うだろう(なお、DLoM-d20ではウィザード20/ファイター8というすっきりした値)。だが、最初のDe&Deや1stの神格/英霊データにはこんな妙ちきりんなのは珍しくない。AD&D1stでは特に、単一クラスが20や30以上のレベルに上昇することによるメリットが非常に少なく(技能や特技などは当時基本ルールにはなく、ウィザードなどはダメージが際限なく上がるのでまだしも、他のクラスは本当にhpが1-3上がるだけだったりもする)デュアルクラスのコストも低かったため、強力なキャラクターを表現するためには、20未満のクラスをひたすら大量にくっつけるというものが多かった。上記は、エルリックとコナン以外は2ndのLe&Loで上書きされた後のデータだが、それでもファファードなどは1stの頃の大量クラスの性質が残ったデータといえる。
 源頼光も初期のものはレンジャー18/モンク15/アサシン12というもので、なぜアサシンが入っていたかといえば、鬼を酒に酔わせてチョムパという卑劣な戦法を海外ゲームデザイナーにいたく高く評価されたのではないかという気がするが、あまり深く考えてもしょうがないだろう。なお2ndで無造作にレンジャーのレベルだけが残っているのは、2ndではモンクもアサシンも基本ルールのクラスからは外されていたためもある。

 ヘラクレスは2ndのLe&Loのものである。3.0eのデータもあるが、そちらでは半神中でも最高位のヘラクレスは完全に「神」のデータでそのパラメータは完璧にぶっ飛んでおり、到底ここの面々とは同列に記せるような存在ではなく、エルリック以外は間違いなく鼻毛で吹っ飛ぶと思われる。2ndでは半神も英霊もひっくるめて能力的には神格の「アヴァター」と同格だったのに対して、3.Xeでは半神がかなり神の方に近づき、その能力は神格の「本体」に近くなったためでもある……。

 ルールに慣れた人はアーサー王のパラディン/バードはありえないことにまず気付くと思うが(2ndでも、バードは「秩序以外」の必要があるのでパラディンとは兼業できない)Le&Loのルールでの「英霊」の持っている特典のひとつに、マルチ/デュアルクラスのための制限を受けない、というものがある(なお、このほかhpが最大値になる等の英霊の特典の数々は3.Xeの英雄神にも受け継がれている)。
 何にせよ、こんなトンチキなデータではHFOのランスロットの方が強いぞという声が聞かれるが、そんなことはマロリー版とかの定番アーサー王伝説からはおのずと明白ですが伺か? 2ndのファイターはパラディンとは比較にならないほどに猛烈に戦闘能力が高いため(人間で兼業していない「HFO」が特に強い)これが雰囲気や微々たる差といったデザインではなく、ランスロットの圧倒的な強さを明確に意図していることがわかる。

 コナンのレベルが割と低いように見えるかもしれない。これは冒険シナリオのプレイヤー用のプレロールドデータのひとつであるためである。一方d20では、後年のEPICレベル(最大25lv)のデータまであるのは周知の通りである。





MERPd20 − レゴラス

 d20の数値に関しては、未完と思われるソースブックには以下の情報しかない。この情報とソースブック内のクラス等の情報などからとりあえず推測をまじえてみる。

レゴラス
ファイター5/エルブンガーディアン3
Str: 19 Con: 16 Dex: 20 Int: 15 Wis: 17 Cha: 13 Ap: 17

 本当にウルフガーの筋力とドリッズトの敏捷性をあわせもっていたりする。(ここから逆に、ドリッズトの動きはあれくらい凄いという説明に映画指輪が使えそうではある。)
 シンダールはStr, Dex, Int, Wis, (Ap)にすべて+2、その他もろもろの種族である(レベル調整値+2)。このゲームのエルダールはいわゆるRPGのエルフではなく、直球で指輪エルダールだからともいえるが、MERP-d20版の異種族は ホビットからドゥナダンまで全般こんなような、なんのためらいもなく強力無比でレベル調整値といったものが多い。

 レゴラスは古来よりRPGファンからの定説では、レンジャーでなく、ファイター基盤である。レンジャーというものは単なる射手でなく、野戦(追跡・隠密・撹乱行)や知識の担い手という傾向が強いのに対して、レゴラスはより純粋に戦闘マシーンであるという見方が(映画以前より)強いためである。

 MERP-d20の上級クラス「エルブンガーディアン」とは、内容的には「ダークウッドストーカー」(日本語環境では『戦士大全』収録)とほぼ同じである。(というよりD&Dの”ダークウッド”ストーカーこそが、多分にトールキンの闇の森のエルフらを意識しているといえる。)レンジャーのような宿敵ボーナスと、ローグのような急所攻撃・回避系特技をあわせもつクラスである。
 が、よく見るとこの上級クラスは、前提条件を満たすのはファイターのみベースでは相当きつく、最低でもレンジャー1を入れないととても現実的とはいえないはずである(というか、ファイター5から転職しようにも技能がとても足りない)。このあたりがこのデータの未完成というか、上のファイター基盤とダークウッドストーカーの前提との兼ね合いが考えられていない点である。最終的なデータではレンジャー1−2を入れるか、レンジャー基盤になるか、まったく別のアーチャークラスに変更されるかは定かではない。





ダンピール


>たとえばこのゲームでは存在しないが、ヴァンパイアとダンピールは総合的に言うとダンピールの方が強いし。


 ここで「このゲームでは存在しない」などと断言する点を責めることもできるのだが、デフォルトとして(ヴァンパイア物等でない)普通のゲームにはそんなものはまず存在しないと頭から決めてかかってしまうのは、むしろ普通人の感覚といえるので、それはさておくが吉である。ともあれ、さらに空回りしているのが周りの返答で、


>どこの鳥取?

>ダンピールがヴァンパイアより強いゲームなんてしらないなぁ……。
>少なくともd20じゃないだろそれ。


 言った方はおそらく「総合的に言うと」という言葉を、当然のように「ゲーム外に」膨大に広がる一般知識(ダンピールが吸血狩人となる伝承)や資料類(古今の吸血物創作だの)のことを指していたつもりが、対して膨大なデータ量が「ゲーム内に」あまりにも蓄積されているゆえに、総合的という言葉が「D&Dやd20内の総合」という意味でしか耳に入っていないD&Dプレイヤーらの姿も、おかしくもあまりに悲しい。
 ともあれ吸血殲厨であれ何であれ、FT知識を披露してやろうという試みは、D&D肌に対してはこういう「天然的な空回り」しか生じないのは、たびたび見られる光景である。

 ちなみにDhampirはAD&D時代ですら(Ravenloftなどで)プレイヤーとして使うことができた種族のひとつであるが、現在(3e系)ではLibris Mortisなどに記述されている(これらのルールブックは、特定のワールド依存ではないため、位置づけ的なことを言えばまったくの「基本ルール」である)。アンデッドとその詳細と敵、それらを手当たり次第にプレイヤーとしても使ったりするためのルールとかをハードカバーの200ページ近くにわたってめっさりと書いてある本だが、パワープレイヤーに言わせるとこれが「ドラコノミコンに比べりゃさっぱり物足りん」だそうだ……。





・検索ワード(その6)

D&D Epic 武器

 しばしば「99lv」がシステムに関わらず「最強の象徴」と妄信されるのと同様か、CRPG系のゲームの板で「武器の名前に+4以上がついていたら厨だと感じる」というのを見たことがある。これはTRPG『ソードワールド』での推奨最大限が+2(例外的な物品では+3)であること等が根拠だと思われる。もうひとつの根拠に、『ウィザードリィ』#1でも、ボーナス値が名になっているものはソード+2やシールド+3が限度ということがある。これは、要は#1では13lv程度がシステム的な上限として設定されていることが遠因である。#2以降は元であるクラシカルD&D同様、+5まである。
 そのためか、「+5」を上限とする感覚も一般的で、
「*厨房スレイヤー*のロングソード+6」等の声も存在する。だが、さらに元を辿ると、AD&D1stでは実は+5が上限ではなく、普通に+6の武器が存在する。NetHackの武具の安全強化限度+6−+7もそうであるが、『クロちゃんのRPG見聞録』に収録されているエピソードで、強すぎる武器を出したおかげでバランスが崩壊した例が「+7ソード」になっているのもこれに由来する。
 一方、AD&D2ndや、D&D3.Xeでは基本ルール(20lvまで)の上限は+5である。+6以上に相当する価格の品はあるが、その場合は特殊能力が増えるだけで、ボーナス自体は+5よりは上がらない。

 が、3.XeのEpicルールになるとその状況はがらりと変化し、ボーナス値は「天井知らず」になる。ランダム表で+6〜+20といった武器が平気で出てくる上に、「この表でもういちど振って結果に+10しる。」などという項目もある。以前、+10武器は40lvのキャラなら持っていていいかも、とか書いたことがあるが、これは単に「20lv=+5」の倍として書いただけで、ルール的な根拠があってのものではない。理論的には、Epicキャラクターは何を持っていてもおかしくはない。
 『ソードワールド』で+3未満の武器しか推奨されないのは、判定が2d6というバランス上である。反面、D&D3.Xeは天井知らずのレベルと共にそのまま相応の強力な武器が出る、というか高レベルキャラクターは強力武器で完全武装した状態でようやくレベル相応の能力があると想定されており、持っていないと秒殺されるという実にシテオクなルールになっているのだ。しかも装備スロットは複数である。たとえ+25の剣を持っていても、その他の防御や耐性や対処能力の面で何かの弱点があれば(というか、プレイヤーが把握・管理できていなければ)間違いなく瞬殺される。

 一般に、超高レベルのルールが充実したD&DのEpicに興味を持つ声は、他システムも含めた多くのプレイヤーから聞かれるが、しかし、実際にD&D系で超高レベルのキャンペーンを運用したという話はあまり聞くことはできない。皆やりたがらない理由は沢山ある。少なくとも「数値の大きさにとびつく厨」の能力で運営できるような内容ではないことは確かである。





・「盲目のもの」と《大旋風》

 CoC d20において、「盲目のもの」のモンスターデータの特技の欄には《大旋風》が入っている。これは後に出版側から出たエラッタでは、「前提条件を満たしていないので、削除するか、前提条件を満たすようにする」とある。
 当時の日本のサイトでも解説されていたが、”満たすようにする”などと軽く言ってくれるが《大旋風》の前提条件とは(あまりの厳しさ故に皆そらで言えほど有名だが)Int13, Dex13, 《攻防一体》《回避》《強行突破》《一撃離脱》である。これだけの特技(と、Dexも1足りない)を余計に追加できるのは、「盲目のもの」の中でも大幅に強大化した(歳をとる、クラスレベルを加えるなどでHDやレベルを上げた)ものだけだろう。

 が、無造作に削除する前にひとつ考えてみる。そもそも、これほど無茶な《大旋風》なら、なぜそんなものが入っているなどというミスがあるのだろう。
 無論、見逃したか、ルールをよく知らないスタッフが入れてしまったという可能性が論じられるところだが、このCoC d20の筆頭著者に記されているのはよりにもよってモンテ・クックなのだ。あの清松みゆきの光すらも儚く霞むほどのルールシステムの伝説巨神である。そんなルールミスを、まして、よりによって《大旋風》のような厳しい特技をうっかり与えるようなことをするのだろうか? それを考えると、出版側はエラッタしているが、これはそもそも本当にミスなのか? 種族やプレステージクラスの持つ(前提条件を満たす必要のない)ボーナス特技のように、「盲目のもの」が持っているボーナス特技、すなわち、種族の特殊能力の一種を、少なくとも当初は意図されたものではないのか?

 元来、《大旋風》 Whirlwind Attackは周囲の敵のすべてに通常攻撃を行うというものだが、「回転攻撃」という記述があるのみで、その具体的な動きや映像に関しては想像に任され、諸説や幾つものD&D系ゲーム(BG, NWNなど)による描写が入り乱れてきた。椿三十郎のようなほとんど回転に見える(AD&Dのオリエンタルアドベンチャーでは、本当に竜巻を巻き起こしている)太刀捌きの通常攻撃なのか。一刀流の組太刀のうち払捨刀(ほっしゃとう)七本より「四切」から「八相」にかけてのあたりに見られるような物凄まじいフットワークで、多敵の中を斬り回るような動きなのか。あるいは、赤銅鈴之助のスパイラル・ソニック・ブレードのように、カマイタチの竜巻が巻き起こるのか、ひいては"気"だかなんだかの輝くエネルギーの旋風が周囲の敵を吹き飛ばすのか? どれでもありえるとしても、果たして3.Xeでこのルール自体を作ったモンテらが想定していた映像は、このうちどれなのだろうという疑問が湧き上がる。
 しかし、空間の渦巻き(*bandでは遅鈍のブレス)を操る「盲目のもの」に、仮に《大旋風》が種族的特殊能力として与えられたものであるとすれば、少なくともモンテが意図していた映像に対しては、D&D/d20そのものへの解釈としてひとつのヒントになるかもしれない。





・筋肉番付

 d20でもいいが、とりあえず*bandやNetHackの参考になるAD&D1st-2ndの資料から拾ってみよう。
 AD&Dでは3.Xeとは異なり、Str 16以上でようやくダメージにボーナスがつくようになる(なので、13のドリッズトや15のグレイマウザーなどは差がないので省略)。そして18/XXの後半やうしろ4分の1くらいでえらく差がある。
 NetHackプレイヤーにはおなじみだが、18/xxの値は下記した各「段階」内ではダメージ等の修正は同じである。つまり18/01よりも18/50は筋力は優れているのかもしれないが、修正値は変わらない。
 伝承英雄らはDe&DeやLe&Loからだが、本物の人外(神格のアヴァターとか)は省略。

Str
6        エルリック(*1)
16       イイルクーン、タニス、フリント
17       ムーングラム、スターム、エイリアス、ブルーノー
18/01-50 ガウェイン(30)(*2)、リヴァーウィンド(35)
18/50-75 アーサー王(52)、キャラモン(67)
18/76-90 テセウス(76)、エイズーン(アゾウン)IV世(76)、ロビラー卿(78)(*3)、シグルズ(88)、コナン(90)
18/91-99 トリストラム(99)
18/00  ファファード、ユリシーズ、ギャラハッド、ランスロット、ラモラック(*4)、クーフーリン、源頼光
19    ベオウルフ、ウルフガー
25    ヘラクレス

*1 エルリックの筋力はストームブリンガーを持つと15。なお、これらムアコックデータはBRPやd20とは違うので注意
*2 ガウェイン卿の筋力はAM9:00-10:00では19, 10:00-11:00では20, 11:00-12:00では21
*3 ロビラー卿は武装時はストーム・ジャイアント・ストレンクス・ガードルで24。なおここの面々は大抵、マジックアイテムで武装どころか魔法の武具さえ持っていないことも多い
*4 ラモラックはこの面々では知られていない名だが、マロリー編では「俗界の騎士(ギャラハッドを除く意と思われる)としてはアーサー王時代随一」とされる。ただしレベルはランスロットより低い

 なお用語集にも書いたが、コーウィンやランダムは23−24と思われる。コーウィンの腕力がランスロットを括目させたという描写に対してもわりと妥当である。

 ウルフガーはともかく、ファファード、コナン、キャラモンといったあたりの力関係は意外に見えるかもしれない。この4人の中でも最も「力任せではない」ファファードに対して、その作品の有名株と、一応多元世界を渡り歩く設定にその因が求められるとはいえるのだが、このデータを作ったAD&Dスタッフのアメリカ的体質が読み取れる。





魔少年ビーティーの属性

 これは新和版の頃のD&Dプレイヤーの間でしばしば話題になっていたものである。ビーティーは犯罪にも陰謀にも躊躇がないが、義と友情には厚い。道徳的モラルがないから「混沌」か、それとも美学があるから「秩序」か? 害悪をためらわないから「(漫画タイトルの通り)悪」か、それとも友情を貫き結果的には悪者を懲らしめるから「(漫画作者の言う通り)善」か?

 新和版の頃に比べて情報がだいぶ多くなった現在の日本語3.Xeに照らし合わせると、おそらくその答えは「混沌にして悪」あるいは「混沌にして中立(悪傾向)」になるだろう。3.Xeのアライメントの定義では、善は「無条件に他者を尊重すること」であり、秩序は「他者を信頼し相互の関係に対する権威を認めること」である。友人を尊重するのは、悪でも中立でも当たり前のことであり、友人以外でも尊重するようでなければ善にはならない。

 なお、メルニボネのエルリックも(最初期D&DのDe&Deなどによると)「混沌にして悪」である。つまるところ、(ことに3.0e系では)アライメントというのはかなり大雑把な分類であり、悪といってもフィーンドやアンチパラディンらのような極端な悪だけを指すわけではない。他の既存の物語の主人公にも、あえて分類すれば「悪」になる者はかなり多いだろう。(なお、エルリックは友人さえもときどき尊重しないので、あえて分類すればではなく、けっこう普通に悪である。)初代Wizardryのマニュアルにおける悪の定義、「老女が橋を渡れなくて困っていても助けない」というのは一見すると冗談にしか見えないが、実は定義としてかなり当を得ているともいえる。

 なら普通にD&D系で悪のキャラクターを作っても問題ないかというと、そういうわけでもない。実際問題として、アライメントとは、本来すでにあるものに貼り付けるレッテルではなく、これからキャラクターを作ろうというときにその性格づけを援助するための指針であるから、「曖昧な悪」では指針にならず、このシステムの恩恵がない。だからといって誇張した悪にすると様々な支障が出るのは言うまでもない。





T&T - ”ストームブリンガーのような魔剣”

 「ストームブリンガーのような魔剣をはじめとして、そうした魅力的な品がつぎつぎと現れますから...」
 は、T&Tのソロシナリオ『運命の審判/デストラップ』の序文・裏表紙アオリに関西の某ゲーム界の大御……と、これはもういいか、安田均が書いていたフレーズである。しかし、この1冊(2シナリオ)に出現する物品のうち「ストームブリンガーのような魔剣」がいったいどれを指しているのかは、実は説が一定していなかったりする。

 ごく最近になって、『デストラップ』をNWNのシナリオモジュール化したarikawa氏をはじめとして、これが『運命の審判』に登場した「『英雄剣』『絶望剣』を指している」という説が多いことを知って筆者は驚くことになった。確かに入手する際に異様に持ち主の能力が向上する点といい、禍々しいほどの威力といい、所有者が死ぬと消滅する一体感といい、言われてみればそうである。

 一方、プレイ以来感じていたのをはじめ筆者が信じていた方の説は、『デストラップ』の方の、ウェイランドの剣の店で売っている『ブラッドラバー(嗜血刀)』という剣がそれだというものである。これは持ち主が受けたダメージが次のターンに威力に変換されるもので、「どんなに傷を負おうと持ち主に戦い続ける力を与える」と書いてあるのだが、そんなに力が与えられるほど毎ターンダメージを受けていては持ち主は間違いなく行殺である。英雄剣・絶望剣ほど強力ではないし、arikawa氏が言うように、『デストラップ』の方にはそういうのしか出てこない「馬鹿みたいな剣」のひとつには違いない。ただし、「手放そうとすると高レベルの呪いによって剣がひとりでに浮き上がり、使い手を殺す」というくだりが、安田均をしてストームブリンガーを彷彿させたのではないかとも想定していた。

 同じ序文には、派手な戦闘やとんでもないマジックアイテムを期待するなら『恐怖の町/サルクティの魔除け』よりもこちらの1冊をすすめる、と書いてあるのだが、存在自体が博打のような威力の英雄剣・絶望剣や『デストラップ』の馬鹿みたいな物品群に比べて、壊れているほどではなく充分に強力で魅力的なのは、むしろ『サルクティの魔除け』の報酬で貰える魔剣の数々である。このあたりこの序文の皮肉というものだろう。





ウィルバー・ウェイトリーの訛り

 神格と定命のものの混血は、D&D系の神格ルールでは自動的に「準神格(quasi-deity)」となる。つまりd20的にはウィルバーらウェイトリー兄弟はどちらも準神格(神格ランク0)というわけだ。
 何度かこのサイトで説明しているが、神格のなんでもあり能力は軒並み「半神(神格ランク1以上)」にしか与えられない。神格の能力には「非音声言語を含めあらゆる言語を読み・書き・話し・聞き取り・理解することができる」というのもあるが、これもdivine rank 1 or higherである。あと超視力とか超感覚とか権能交信能力とか山ほどあるが、どれもこれも半神以上ばかりだ。無論、ご都合主義レベルでなんでも設定可能といえば可能ではあるが、あくまでデフォルトのルールとしては、準神格だというだけでは言語能力は与えられない。方言しか学ぶ機会がなければ、方言しか話せない。

 ちなみにAD&DのPCゲーム『バルダーズゲート(BG)』シリーズに数人登場する「バールの子」らは、FR世界の神が大量アヴォンヌされた「災厄の時(Time of Trouble)」で頃された悪神バール(ベハル)が定命の者との間に残した種子らであるが、かれらも準神格だということである。ゲームの時代と「災厄の時」の年代などから逆算すると、バールの子らは10年かそこらで成人となっていることがかねてから指摘されており、これは「かれらは準神格だから成長が早い」といった説明がされたものの、要は「災厄の時」が商業主義のご都合でありそれに対する年表の無理矢理具合のとばっちりだという話が定説であったが、しかし、実はかれらの急成長はウィルバーのそれと同じだったのだガクブル。

 と、準神格とは犬に頃されるようなものなのかという疑問が当然ながら生じるであろうが、何者であろうと油断すれば(しばしば油断しなくても)機会を問わずドグチァッと逝くD&D系の例にもれないBGシリーズの序盤を思い起こすに、あといつぞやの寒村の地霊は猫にどうにも勝てなかったりするわけだし、割とそんなもんなんじゃないの。





盗賊ギルドの正体

 ちなみに筆者がイメージしている「路地を歩くのも命がけの*bandの都市」の様相は、ランクマーやカーレやポートブラックサンドといったものだ。カザンやメンゾベランザンも一脈通じるがそこまでいくと極端なので、強いていえばランクマーに落ち着く。
 なお、これらの都市は、犯罪都市や悪逆都市や血戮都市かもしれないが、別に「勇者(天才美少女)とかが出てきてたった一人で犯罪者を皆殺しにするのを全員無力な一般市民が心待ちにしている」わけではない。だいたいこんなような面構えの素朴な一般市民たちの間では、その殺伐都市こそが均衡した状態なのである。


 さて、ヒットポイントやらあすとらるさいどやらの時と同様に、盗賊ギルドの位置づけなどといった「RPGの常識のはずのこと」が、仮にもRPG関連の掲示板にも関わらず「疑問」として書き込まれたり、自称TRPGベテランがネタというわけでもないトンチキな「論文」を展開したり等は、毎度のようにPHBやDMGを読んだことがないせいだと切り捨ててしまえばそれまでであるが、今回はそのせいでどうなっているかをもう少し考える。
 確かに、「中世の社会」について延々と(RPGの知識としては無意味なレベルまで)まくしたてる輩もいないわけでもない。しかし、それに比しても、一般にRPGや設定のコミュニティでは、「中世の実在武具の知識」だのなんだの、「北欧神話やヘブル神話や吸血鬼伝奇やアーサー(ry」だのなんだのには、こぞって凄まじい数の「識者」が知識をひけらかすために蝿のように群がり、疑問のままに置かれる余地すらもない。それに比べれば、FT一般の社会・組織や背景に関しては、RPG共通に流用される定番の内容の認識はきわめて薄い。確かに社会背景は世界設定ごとに異なるが、その言い訳のもとにその基盤や出発点の最低限の知識がないがしろにされているのは否めない。
 RPGファンや自称設定マニアにはしばしば、FT小説類を読まず、あるいは「世界」そのものがきちんと書かれているような小説を読まず、「武器」だの「神話」だのの知識だけを、巷に氾濫するアンチョコ本の類から詰め込む類の人々がいる。(そして、これらのアンチョコ本を「小説なんかを読むよりよほど知識が得られる」と合点する。)こういう知識の偏り方では、ネット創作や一部商業のFTに「主人公の能力や設定・活躍だけは書かれているが、それを取っ払うと何も残らず、背景や世界の奥行きがまったく見えてこない」というものが氾濫して当然である。低質なものは言うに及ぶやで、「10レベルパーティーは国を滅ぼせる」だの「スラム街や引退冒険者の中で育ったから子供でも高レベル」だのといったばかげた設定を平気で作る。
 別に、中世の社会に関して知識など意識してつける必要はまったくない。現在のRPGの”本当の”原型となっているFT小説等の作品のほんのいくつかを吸収していれば、最低限の感覚などは充分なほど得られているはずなのだ。





暗黒城の領主

 かつて旧文庫ドラゴンランス等と同じ富士見ドラゴンブックから出ていたAD&Dゲームブックシリーズ(D&Dそのもののソロシナリオではなく、シナリオ等を元にした単体ゲームブックである)に対しては、現在ゲームブックファンの声を聞くと「海外産の移植物でも佳作以上とは限らないという例」というきわめて不名誉な評がある。その内容(多くは名作シナリオを元にしているので)やD&Dファンとして細部の記述(当然、未訳情報の山である)には見るところはあるものの、純粋にゲームブックとして見た場合、こなれていないパラグラフ展開、バランス、バグの多さなど、上記の評は残念ながら覆せないところがある。
 そんなゲームブックシリーズのひとつ『暗黒城の領主』も、魔城に乗り込んで吸血鬼を倒すという王道展開故に気合を入れて作られたのか、システムに多くの要素をつけくわえるなど工夫されているものの、意欲だけは伺えるが、といったものである。身近の随一のゲームブックマニア(D&Dプレイヤーではなく、これを手に取った理由というのが、筆者ともども熱中したグレイルクエスト『暗黒城の魔術師』に「題名が似ていたから」などというらしい)からも随分と酷評を聞かされたものだった。

 さて、このゲームブックは、AD&DのRavanloftセッティングのシナリオが元になっている。Ravenloftは閉鎖世界(デミプレーン)で、D&D系の他の悪役も迷い込んでくる百鬼夜行仮面舞踏会な世界という側面もあるが今回はそれはさておき、ドラゴンランスのヒックマン夫妻の手になるこのシナリオ自体は、吸血鬼退治に対してロマンホラー的セッティングと描写に「ドラキュラ伯とミナハーカー」的な背景という、(FRPG的でなく)怪奇小説的な吸血鬼物として王道的なものを提示している。

 上のリンクはそのシナリオをNWNのモジュール化したもので、ここでは世界設定イメージと提示されるストーリーに反して、やることは割と斬りまくり中心だったりする。やたらと広いレイブンロフト城を特に誘導もなく歩き回ったりもするので、ソロでやるには結構単調かもしれない。もっとも元来が多人数用のシナリオでもあるし、本来はマルチで会話やDMからの誘導なども交えながら進行させていくものなのかもしれない。





・地母神

 海外RPGのワールド設定を説明していると、「マーファみたいな神はいないのか」と聞かれることが非常に多い。そうした女神の存在が非常に馴染み深いものであるようなのだが、確かに日本のRPGやファンタジーの設定には「慈愛と生命の女神」のようなものが割とよく出てくるような気はする。
 ちなみに『ソードワールド』のマーファは、Dragonlanceのミシャカル(よくある「女神」像の集合のような慈母神)がモデルではないかと言われている。

 しかし、意外に思えるかもしれないが、他のD&D系の主要な背景世界(World of GreyhawkやForgotten Realms)には、まさしくマーファやミシャカルのような女神というのはいない。例えば「地母神」「大地そのもの」と言われる大地の女神は、WGならベイオリー、FRならシャウンティア(チョーンティーア)がそれだが、これらは「人間の」慈愛・癒しの神ではなく、基本的に植物・動物・環境などの「自然神」である。シャウンティアの方はやや農耕神(人間が大地に依存して生きる)的な性質は持つものの、どちらも旧版ルールでは「主にドルイド用」となっていたほどだった。さらにベイオリーは宗派によっては、地球の史上のドルイド信仰が持っていたいわゆるダークアートの側面すらある。

 おそらく、日本での母神や「女神」に対する印象に比すると、海外のゲームやファンタジーのイメージにおける地母神に対しては、原型といえるギリシア等の母神などの過酷な自然神のイメージをそのまま流用することが多く、結果としてあまり人間原理的なものではないのかもしれない。
 なお、ベイオリーもシャウンティアもルール的には治癒のドメインを持っていない。「女神」で治癒ドメインを持っているのは例えばWGではミーリスだが、これは「慈愛」ではなく「恋愛」の神である。シャリンドラーなら 治癒と慈愛と大地と結婚と多産の女神でWGにもFRにもいるが、これはドワーフ・パンテノンだ。

 結局のところ「マーファのような神」を求めるプレイヤーには、筆者なら単に女神で治癒ドメインが欲しいというなら諦めてミーリスを選択させるか、母神にこだわるならば結局FRならシャウンティア、WGならベイオリー(か、より民間的な相であるベアレイ)を選択させる他ない。その場によって気が向いたら、適当にベイオリーの別の相をでっちあげるかもしれないが。





ソーサリー周り続報

 うちに来たワードはこれが元だったのか。しかしこの一発言が、十数人が大挙して検索に押しかけてくる決定的な原因とも思えない。また、うちの「クロナダ」関連が他の人たちの「盗賊」や「諸王の冠」関連とは無関係な可能性も高い……とはあまり思えない。なにしろほぼ同時に突然ソーサリーである。





膨大なリファ:シャムタンティ 殺し屋

 そっちもか。こっちもだ。

ソーサリー 魔法 作り出した者
ソーサリー 作り出した 有史 魔法 神
ソーサリー 魔法 有史以来 一度
ソーサリー 一度しか用いられた事が無いという魔法
ソーサリー シャムタンティの丘を越えて 魔法
ソーサリー 魔法使いの丘 神

 ZEDとかクロナダ神とかその神官のことらしいが、こういう類のさまざまな組み合わせで、ここ2、3日で百件をこえる。しかも、ホストから推測するに、同一人物のアクセスどころか、しじゅう初回アクセスで入ってくる。十数人はいるのだろうか。いったい『ソーサリー』周りに何が起こってるんだろうね?





ディバインランク(つづき)

 このサイトでしじゅう取り上げるCoC-d20であるが、実はすでに入手困難(再版されていない)となっているようだ。CoCとしてはあくまでBRP版がメインでd20はオプション的な存在である(ただし以後のサプリメントはd20も対応と書かれてはいるが)。結局のところ、Koka氏は実は希少本の方を手にしたということになるが、氏がそのメリットを感じる立場にあるかは定かではない……。


 CoC-d20においては、クトゥルフなどの旧支配者はd20の神格ルールにおける神格としては、すべて「半神」である。また大半の外なる神は「中級神」である。
 しかし、d20ではDivine Rankや神位の規模は、ほぼ「信者の数に比例」するルールになっている(ある意味では権能から得られるのだが、信者数は権能の重要性にほぼ依存する、とも言える)。ならば、「クトゥルフ」などはもっと神位は上、むしろ外なる神より上でもいいのではないか、という意見がCoC-d20発表当時からよくあったものだった。
 CoCルールブックの記述をはじめ多くの神話作品では、「クトゥルフは他の旧支配者の分を全部合わせたよりもずっと信者が多い」ということや、ほとんどの外なる神には教団がなく孤独な狂人らから信仰されている、ということになっている。ここからは、定義的なものに関わらず、d20ではクトゥルフの方が外なる神より上位にならざるを得ないのではないか、ということである。

 しかし、クトゥルフに信者が最も多いといっても、所詮は世に隠れる邪法であるし、単に「知られている」ではなくまっとうな祭式でまつっている信者が、この地球上に同時期に数千人のオーダーを超えているかと言われれば疑問かもしれない。
 また、旧支配者は地球土着であったり、一部の星のみで信仰されているというものも多いが、外なる神の多くは宇宙的存在である。あるいは、地球以外のすべての知的生物(独立種族にならば、外なる神の教団を有しているものはある)をあわせれば、外なる神の信者数は結局は全宇宙内では相応のスケールとなるのかもしれない。

 CoC-d20での各ランクは「旧支配者=偽りの神=半神」という便宜上の分類重視、といえばそれまでだが、しょせん邪法の信者数ではそれを覆せるほどの要素ではないということなのだろう。





NWN(ネヴァーウィンターナイツ)シナリオモジュール:『マイクロンフトの興亡』


 うーむ、なんじゃこりゃ。この作者氏の自作のスクリプトのテスト用モジュールとして作られたということで(そのためかNWNコミュニティのシナリオリストの類にもあまり載っていない)せいぜいあやかって少し採られてる程度じゃないだろうかと思いきや、なかなかどうして色々と作りこんである。アイテムとか敵とか台詞とか台詞とか台詞とか。





MERPd20ソースブックより:アイテムデータ


アンドゥリル:+10キーン・フレイミング・バースト・ホーリィ・オーク&アンデッドベイン・バスタード・ソード

 なんじゃいこりゃ。とりあえず+10武器はEPICレベルならばありえる数値で、40レベルくらいのキャラなら持っていてもいい気もしないでもないのだが、アラゴルンは20レベル(ハイドゥナダンのLA値を足しても21)に過ぎない。とはいえ、ロールマスターMERP時代からアラゴルンは攻撃力だけなぜかバクレツ(アンドゥリル自体はさほど極端に強くはなかったものの)しており、これがメリケヱンな感覚というものなのだろう。


グラムドリング、オルクリスト:+6ホーリィ・オークベイン・ロングソード

つらぬき丸:+3キーン・オークベイン・ショートソード(オークに対してセンスエネミー)

塚山の剣:+3オーク&トロル&アンデッドベイン・ショートソード(これらのモンスターのDRを無視する)

 こうした序列を見ると、やはりグラムドリング、オルクリストやつらぬき丸が第一紀というほどの剣には見えない。言うまでもないが、アングマールの魔王もアンデッドであり、すなわち塚山の剣はナズグルのダメージ減少15/+5を貫通できるわけである。どう見てもつらぬき丸よりも塚山の西方国の剣の方が強い……。


アングマールのロングソード:+6フレーミング・バースト・アンホーリー・ロングソード(《上級武器破壊》特技がボーナス)

 アンドゥリルとは対照的に、41レベルの魔王の武器には物足りないという部分もある。原作では別に魔王が剣で武器破壊したというわけではないが、なぜかMERPの魔王の剣(ヴァサマキル)のデータ以来ある武器破壊能力である。原作でフロドの塚山の剣を呪文で折る、映画(DVD追加場面)でガンダルフの杖を爆破するなど、場面的にそれらしいものはあることはある。





こんな麻雀格闘倶楽部はいやだスレより

>831 :ゲームセンター名無し :04/12/17 19:45:37 ID:???
>・画面表示は文字のみ。コマンド入力で操作する 
>・背景が雀卓ではなくてちゃぶ台 
>・背景が雀卓ではなくて、生きた寄生虫を顕微鏡カメラで拡大した映像 
>
>836 :ゲームセンター名無し :04/12/18 18:21:01 ID:???
>>>831 
>Zangbandかよ! 


 おまえらZangbandをなんだと思ってんだよ! あやまれ! 生きたシラミを顕微鏡カメラで拡大した映像にあやまれ!





MERPd20 − 一つの指輪


《一つの指輪》という力の指輪:

 ...力ある着用者(15レベル以上)は、指輪のもつ力うちのいくばくかを試みるか、あるいは習得することもできる。...この能力はウィザードないしソーサラーのレベルをあらゆる面で10レベル上昇させ、...指輪着用者の物理的、精神的、魔法的攻撃は決して失敗しない。...(中略)...着用者は指輪を使い始めて10年の終わりから1か月ごとに意思セーヴを行わなくてはならず、失敗すると「ゴクリ的存在」になってしまう。...20レベル以上の善属性のプリーストでないとこれを治癒することができない(以下の呪文が必要である:ニュートラライズ・ポイズン、キュア・ディジーズ、プレイヤー、ヒール、そして最後にレストレーション)。この過程によって「ゴクリ呪い」を元に戻すことができるが、キャラクターは50,000経験点を喪失する。かれら(ゴクリ的存在)は、《一つ》と関係のある存在(ナズグル、冥王のプリースト、等)で100フィート以内にいるものを”感じ取る”ことができる。

(MERP d20 SourceBookより一部, 拙訳)


 まだまだd20というより、MERPのデータのコンバートの感が強い。MERPのデータにあった細かい記述がだいぶ抜けているが(例えば感覚を増大させる点、ナズグルのいる次元界が見える点など)これはフレバーにとどめる予定なのか、これは今後具体的な数値として反映させる予定があるが、まだ現状のルールでは値が未定なのかは、定かではない。
 「物理、精神、魔法攻撃が決して失敗しない」というのはGreator Godの神格特性に相当する。クリティカルしたかどうかを判定するだけのためにd20判定の必要はある(なおファンブルは起こらない)。

 ともあれこの記述の最も特筆すべき点はゴクリルールであろう。ゴクリを呪文の連発で治せるというのもいかにも力技だが(なお、スメアゴルは10レベルのローグ(MERP->d20のレベル変換に従うと)なので45,000-54,999XPを持っており、無理やり治癒されたとしても、生き残るかレベルが0以下に落ちてLOSTするかまさに瀬戸際である)それ以上に、指輪の着用者は10年後のひと月ごとに意思セーヴしなくてはゴクリ化というのは強烈だ。(MERPでは変容は個人差がありときに何世紀もかかるといった、もう少し曖昧な記述だった。)ガンダルフやガラドリエルが仮に誘惑に負けて使ってみたとしても、一月ごとではいつか必ずファンブルしてゴクリに超変身である。(なおガンダルフが現世において神格特性(半神ならファンブルしない)を使えるのかは現状のMERPd20ルールでは定かではない。)ケレボルン殿がある朝、目がさめたら隣に獄吏が寝ていた、といったことにもなりかねない。





ミドルアースガイド

 とあるRPG研究会のアルダ世界解説+RPG用ローカルルール。ここより上の解説部分がなんでもかんでも羅列しすぎだろうという点と、しかし指輪ファンはそういうホビット家系図体質(筆者含め)が多いとか思わず納得とかいうのはともかくとして、中つ国を再現するためのD&D3.0eおよびエルリック!(BRP)用のガイドがある。以前紹介したMERPスタッフによるd20化よりかなりシンプルで(MERPd20のものは、例えばドワーフひとつとってもd20標準とは大きくかけ離れたレベル調整値つきの強種族で、MERPの膨大なデータの重みと緻密さはあるが、互換性とd20の直感的なデータ共有感は低い)具体的に使えるものが揃っている。
 こうした手軽にコンバートした、MERP以外の様々なルール用や解釈での『中つ国キャンペーン』用ハウスルールは、おそらくネット普及以前から、さまざまなファンの手によって多数作られていたのではないだろうか。多種多様なデータ化を見てみたいという欲求が強く起こるが、現在のネットでは『鉄の家』のGURPSなどを除けばほとんど見られることはない……。







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