ゲーム雑記・雑記







・クロムの剣

 ゲーム『ナムコxカプコン』のドルアーガ周りに、鈴木直人のゲームブック版の用語が多出することは、当時レトロゲームファンの間でずいぶん話題になったらしい。
 このゲームブック版のギルの「クロムの剣」のクロムとは、要はあの『コナン』のクロムそのままである。このゲームブックにはコナン・シリーズからの直接の引用や影響が顕著に見て取れ、「クロム」にしろ「イラニスタン」にしろ「盗賊王タウルス」にしろ引用である。
 ゲームブックのギル自身もコナン的な大力ヒーロー(ナムコxカプコンのカヲルアスランと重ねることは実質不可能である)であることはさておいても、コナンシリーズ特有の文化のモザイクのごとき乱雑さを、そのまま持ってきたための語感の一貫しない用語の数々には、おそらく出世作のドルアーガにあたって、ヒロイック・ファンタジーの決定版と呼ばれるコナンから直接に、本物のファンタジーの空気をなんとしても写し取ろうという「力み」が見てとれる。(後に『パンタクル』で魔道士メスロンの出身の用語に無造作にカバラ用語が目立つことなどにも、同じ空気が残っている。)

 現在ならこうした未消化のままの引用で構築された設定は、ネット創作ファンタジーなどの定番であるが、仮に現在創作されたものであったとすれば、とても誉められるようなものではないだろう。が、「RPGファンタジー世界とは何であるのか」なにもかも手探りであった時代に、「力み」すら感じさせて掴めるものを掴もうとした姿勢は一種賞賛の念を呼ぶ。

 現在の視点で言えば、バビロニア準拠のドルアーガシリーズで(決してバビロニア神話世界そのままではないのだが、少なくともアヌやイシターは直接名前が出てくる)その王族の騎士ギルガメスが口にするのが蛮人らの神クロム(NetHackでは野蛮人の祭式)と考えるとかなり目茶目茶である。ただし、コナンのクロムは
先述したようにケルト起源であり、NetHackの「騎士」がケルト祭式であることから、そちらの方向で考えると(まったくの偶然ではあるが)さほど大きく外れたものでもないのかもしれない。





・ローグライク今昔物語 〜 雑誌の裏表紙によくあるアレ

 理緒というのはシナのリオなる語呂から採られているのであってあんなキャラとかこんなキャラではない(多分)。なぜ取り上げたかというと、この回に限って、最後のRL掲示板の定番雑談のようなNetHackの濃さになる時点で「TRPGのマスタリング講座」の宣伝広告としては微妙にずれた所に行っているように思えたためである。TRPGとRLのパラノイアの微妙な関係はいろいろ言えることがあるが別の機会にする。





・地下牢と二剣士


>ファファード&グレイ・マウザーを最近読み直したんだけど、
>生バーバリアンと生ローグじゃないんだね、2人とも。
>ファファードは読書家で伝承に詳しいし、マウザーは元魔術師の弟子だし。
>ということで、バーバリアン/バードとローグ/ウィザードをすすめてみる。
(詠み人知らず、D&D3eスレッド、2ch過去ログより)


 AD&D 2ndのLe&Loでは、

ファファード レンジャー18/シーフ15/バード5
グレイマウザー シーフ19/ファイター13/ウィザード5
ニンゴブル イリュージョニスト20/バード13
シールバ イリュージョニスト20/ドルイド7

 である。2ndまではクラス・レベルのシステムが大きく異なるので、キャラクターレベルはレベル値を全部加算した物凄い値というわけではなく、ことに20直前で止めているあたりは、基本ルールレベルにとどまっている(3.XeでいえばEPICレベル前)ことを意味している、ともいえる。ただしD&D3.0eのEpic Level Handbookの冒頭にEPICキャラクターの例として列記されているコナンやエルリックと並んで、'Fafhad and the Gray Mouser'もあるので、やはり二剣士も3.XeではEPICキャラクターとして扱うのが礼儀というものだろう。
 コナンが25(バーバリアン16/ローグ3/ファイター6)、エルリックが28(ウィザード20/ファイター8)なので、こちらも25前後と設定すべきではないかと思える。実際は作中の二剣士はヒロイックファンタジー内でもおおよそ「人間離れ」しておらず、ぎりぎり10レベル未満の低レベルか、あるいはモダン系の市街冒険などのローパワーなルールか、ひいてはD&D系自体が合っていないとも言えるのだが、コナンも大差ないといえばない。
 これらを想定して3.Xeに直すと、ファファードがバーバリアン16/ローグ5/バード4、マウザーがローグ16/ファイター4/ウィザード5あたりが考えられる。おそらく二人とも、どちらの武器もSpecialize(武器開眼)していない(コナンが長剣をしていないのと同様)と考えられる。もっと追加ルールや上級クラスを入れた方が再現できるが(マウザーにデュエリストなど)それ以上にいかにもありえるのは、(コナンやエルリック同様)無計画な成長や、さらにみっともない経験ペナルティを食らうような無茶なマルチクラスをしていそうということである。既存ヒーローのd20データは「故意に最適化されていない」というのが最早定番だからだ。

 なおSLASHのアーティファクトだが、<手術刀(Scalpel)>も<猫の爪(Cat's Claw)>も<灰色杖(Gray Wand)>も<心臓抉り(Heartseeker)>もSLASHではアーティファクトとなっているが、彼ら二剣士のもつこれらの武器は(2巻の『痛み止めの代価』にも記述があるが)魔法の武器どころか、特殊な武器でさえなく、そのつど持っているノーマルアイテムの武器(しじゅうなくしたり壊したりして、そのたび取り替える)を、二剣士は決まって「これらの名で呼ぶことにしている」というだけなのだ。これらが[変]の二刀流用アーティファクトとしては保留されたのはそのためである。
 また上記したAD&D2ndのデータでは、<灰色杖>はSLASHのような「両手持ちの剣」ではなく「バスタードソード(片手半剣)」である。そうでないと、<心臓抉り>やファファードがそれ以上によく使う斧と同時に使うのが不自然になるはずである。ここの箇所に限らないが、SLASHのアーティファクトや種族・クラスの各種の設定には、NetHackのように「海外有名FTの設定を堅実にちりばめたしっかりした世界」を称せるとは言いがたい、短慮的な細かい手落ちの数々が目立つ。





前回のつづき、GOD−KAIJU

 海外サイト「とほ王国」(この綴りや左上の晴明@萬斎が妙に脳ミソにひっかかるというのはさておく)の一記事より。わが国の偉大なるものたちは、前回の面々よりも神位でもCRでも遥かにぶっちぎっているようだ。てか、God-zillaというgodを模した海外版つづりだけから、本当に全部godにしてしまうのはどうかと思う。





・ディバインランク

 「CoCd20ではシュド=メルとダゴンはどちらも”半神”になっているが、
シュド=メルよりダゴンの方が神位が高いというのはどこに書いてあるのか」と聞かれた。
 d20のシステムでは神格には「神格ランク(Divine Rank)」という0-20の値があり、これを大雑把にカテゴリ分けしたに過ぎないのが神位(Status)といえる(Divine Rank=0だとStatusが準神格・英雄神、1-5は半神、6-10が下級神、11-15が中級神、16-20が上級神)。つまりDivine RankとStatusは直結しているので、しばしばいっしょくたに用いられるが、厳密にはイコールの用語ではない。
 そのランクがシュド=メルが1、ダゴンが2というわけだが、それがどこに書いてあるかというと、実はアーマークラスである。ダゴンの通常ACに「31 (-2サイズ、-1Dex, +22外皮, +2神格)」と書かれているが、この最後の「神格」の値がそのままDivine Rankである。半神以上の神格は、判定のダイスの目をDivine Rankでコントロールできるというヘドブチ吐きモノの能力を持っており、ただそれでは神格同士の殴り合いがとんでもないオーバーキルになるので、バランスのためという単にそれだけの理由で神格のアーマークラスには無造作にDivine Rankが加算されるというのがd20(OGL)一般のルールになっているのである。
 CoCd20にはDivine Rankを直接示す語も示唆も一切出てこないが(ダイスコントロール能力は、神位に応じて判定に+5や+10といった無造作な簡易ルールになっている)このアーマークラスの値からすべてランクが見出せる。他のd20の神格の値の幾つかと共に示す:


アザトース 20
ゼウス 19
シアリック 17
ナイアルラトホテップ 15
ヨグ=ソトース 13
シュブ=ニグラス 13
ヴェクナ 10
ノーデンス 8
クトゥルフ 5
ハスター 5
ヘラクレス 5
ツァトゥグァ 4
アイウーズ 3
クトゥグァ 3
ダゴン 2
シュド=メル 1
ゆのは 0


 旧支配者は半神扱いなので、当然CoCの神性は大半が1−5の値をとる。(クトゥルフ神話の膨大な神格のほとんどをその範囲に収めなくてはならない窮屈さも同時にある。)クトゥルフやハスターはその半神の中で最大限のランク5(実在神話で最も代表的な半神であるヘラクレスと同等の)ということになる。ランク「0」であっても、定命の者(0も持たないとする)より遥かに多くの神格特性を持つ。なお著明なユニーク悪魔(九層地獄や奈落の階層支配者など)はほとんどランク1を持つが、ホームプレーンを出たりワールドが違うと異なったり、記述によって食い違ったり定かではない。
 ノーデンスが思ったより低いと思えるかもしれないが、d20では下級神扱いなのは事実である。ただし、なぜか異様なほど戦闘に特化した能力(攻撃が全部トゥルーストライクになるだとか)でデザインされているので、本体は戦い方次第ではかなりの脅威である。Divine Rankは信徒や権能による力を示すもので、すべて総合した本体の脅威度(CR)・レベルが神性ランクだけに比例するとは限らない;特にCoCの場合は本体の「古さ」(=大きさやレベル)とは無関係に「重要さ・信徒の多さ」に対してついているので、本体が大型で高CRの神格が、低いランクというのもよくある。とはいえ、Divine Rankが本体の力に著しい影響を与えるというのも事実である。





・ヘイッ! ゼアソセンキョーイズライクアハラキリングムビーイ、メーン!

 エンドール(MERP版)にはアイル・オブ・サンライズ、タイタンには八幡国、トーリルにはカラ=トゥア東端(ロクガンとの説あり)、フォーセリアにはイーストエンド、エセルナート東にはヒノモトなど、「正統派古典ファンタジー世界」には、どこかで見たような神秘の国(しかも八幡国以外は全部地図の東端にある島国)が頻繁に見受けられる。グレイホーク世界の舞台である惑星オアースにも、Oriental Adventureルールを使うための舞台となる島国が設定されており、詳細の情報はほとんどないのだが、その島国の「名前」だけはずっと昔から判明していた。その名は:

 Nippon

 である。
 それは探せば危ないネタだらけの最初期D&D系の中でも滅茶苦茶やばすぎるだろうという気がするが、発想としてはありえないものではない。なぜなら、実在の国の方の名前はあくまで'Japan'であるからだ。しかし、日本語での正式な国名表記は「日本国」でNihonとNipponのどちらの発音も正しいとされ(対外的には「Nihon」だとニホンと発音しない言語が多い等の理由で、むしろNipponの方が有力である)海外でもガンバレニッポンとかしじゅう使われているはずなんだが? しかしどちらにしろ確かなのは、これを考えたデザイナー(たぶんロビーかゲイリー)が「ニッポン」に対して、「アルビオン」とかと同様の”古称”というか、伝説的ふいんきなぜか変換できないをかもし出す地名の位置づけにあると思っていた可能性がわりと高いということである。





・トールキンに言及しないほどFT造詣が深いだとかいうのと似た話

 筆者はこの世代のゲーマーの例に漏れずWizには無条件で好意的だが、「Wizファン」に対してはときに、そういう感情を持てないことがある。
 例えば「指輪物語を最も表現しているゲームはWizだ。ホビットがいるから」とか「バスタードはWizをベースにした世界観だ」「ヴォーパルはWizだ」「村○ブレードは全部Wizだ」とか、その他ファンタジーの諸要素に対して、古いFT小説やTRPGの数々の存在すら知らずに「直接の元ネタはWizだ」「Wizが初出だ」
「Wizからパクった」などと決め付けて声高に主張するあたりは大目に見られる。DQやFFにおける同種の主張とは異なり、およそ1割くらいは本当にそういうものもあるし、そういう先入観すら生じるほどWizが「日本の」RPGの定義に多大な影響を与えた実証としてこの現象自体を受け取ることができるからだ。Wizと共通する、FF1のAD&Dからの膨大な引用(そしてDQ3のわずかな引用)に対して、Wizの方がずっと先であることからWizの引用と思ってしまうのはごく自然な感情に過ぎないし、CRPG自体の先駆である以上は細部はともかくファンの感情的に遠からずといった点がある。
 しかし、例えばヒットポイントや各種パラメータの細部など、海外ならRPG最初心者の読むPHBに元来の定義・説明が最初から明記されているようなことの数々を、鬼の首でも取ったかのように「解明」したといい、全宇宙でそれを最初に「考察」したのが「Wizファン」であるかのように主張するというような人種が多少なりとも含まれている以上、必要以上にWizを持ち上げたり、Roguelikeの板に異常なほどWizの話ばかり持ち出す(板倉氏の入れた村正くらいしかRLには関係ないにも関わらず)ゲーマーに対しては、反射的に警戒心を抱かざるを得ない。もっともRoguelikerならば、WizとてDQやFFと五十歩百歩はともかく150歩くらいしか離れていないことはすでに周知のことで、その手の大言壮語を真に受けるものではないだろう。





表紙のひとつ

 一見するとどこにでもありそうに見えるが、よくよく見れば見るほどなんだか気持ち悪いイラスト。真ん中の加ト吉だか瓦だか鵺だか絶妙な奴が抜群に気持ち悪いが、左のドラクヱ僧侶たそに「にせもの改造巫女服」の記号が合体した奴とか、右の山口カッペヘ声っぽいサムラヒ(落ち着いてよくよく見たら袴じゃなくヒダスカートで上下洋服)の絶妙なアナーキック感覚とか、そして、背景にあるのが日の丸であり、つまりこれらが「 日 本 」としてバンと貼り付けられたことに気づいた瞬間、精神が「あすとらるさいど」だとか何だとかいうやつにすっ飛んだ気がした。





・WG(その2)

 さきにFR世界における「あいどるちょうじん」(Ftr1/Rog2/Clr3/Wiz24/Acm5のエルミンスターだの何だの)について触れたが、これに対してWG世界の有名魔法使、モルデンカイネンやビッグバイらもそれ以上の能力なのかと思うかもしれない。なにせ、WG世界に君臨するだけでなく、彼らの名前のついた呪文が基本ルールブックに書かれ、他の世界設定でも使われるような呪文を開発した大術師らである(旧AD&Dでは特にそういう設定である)。『バルダーズゲート』シリーズなどで、WG世界に触れたことはないがその名の呪文を知るプレイヤーは、FRのあいどるちょうじん達と少なくとも同等かそれ以上と予想するかもしれない。実際のところ、LGGなどに書かれた、呪文名の由来となった「八者の円」その他の術者らのデータは以下の通りである。

・現「八者の円」
ウォーンズ Wiz20
アルハマザード Wiz19
ビッグバイ Wiz19
ドロームジ Wiz18
オットー  Wiz15/Clr3
ニストゥル Wiz17
セオダイン Wiz17
ジャラージ Wiz15

・九人目
モルデンカイネン Wiz27

・離反
"反逆者(トレイター)"レアリー  Wiz24

・死亡確認
オティルーク Wiz16
テンサー(復活後、脱退) Wiz20

・その他
"輝く焔の"メルフ Ftr4/Wiz14

 他に呪文の名前になっている術師としては触手マニアの「エバード」がいるが、基本的に悪役なので省く。なお、"愉快な一時"の「ターシャ」はガイギャックスにクレヨンでファンレターを書いて送ってきた幼女の名前であり、デザイナーらの持ちキャラではない。
 こうしてみると、塾長モルデンカイネンと、渦中にあったレアリー以外は、それほど極端な高レベルでないことに気付くだろう。八者の円の中にさえも、アークマギ(大魔導士、AD&D 1stの称号で18lv以上のウィザードを指す)は半分しかおらず、オットーとジャラージに至ってはマギ(16lv)ですらない。

 その理由としては、WG世界にはデザイナー隠退時期の空白期や、それ以来細部の設定を空白にする伝統ができたことから、塾長以外は能力データもあまり「アップデート」されなかったという、単純な理由もあるのだろう。ただしこの面々の絶妙に高すぎないレベルの値から、(FR世界のような、超高レベルの善玉悪玉や超ハイパワーの集団同士が睨み合って滅多に動かないのではなく)プレイヤーキャラが手の届くような有名NPCが、入り乱れてしょっちゅう暴れたり爆死したり王大人が復活させたり、プレイヤーキャラとじかに対立したり鎬を削ったり背中をあわせて共闘したりといった世界像を読みとろうとするファンもいる。





・エルフリスト

 これは*bandのランダムアーティファクト名にもあり、NetHackの話題にも登場する名であるが、言うまでもなくElfristとは、Orcristのorcをelfに、「オークを切り裂くもの」を「エルフを切り裂くもの」に変えたとおぼしき剣の名である。
 主にNetHack肌の日本のプレイヤーにとって、ここまでのブラックジョークとして終わっているのではないか、という懸念があるのは、NetHackではOrcristを「オークリスト」と訳しているためである。このorcは、実際は英語(トールキン由来語として既に英語辞典にも載っている)の「オーク」ではなく、トールキン作内の設定であるローハン語の「オーク」ですらもなく、エルフ語の「オルク」である(クゥエンヤのurcないしシンダリンのorc(h))。
 したがって「エルフを切り裂くもの」とするならば、英語のエルフ(トールキンが北欧の「アールヴ」から取ったと主張する人がいるがそうではなくケルトの妖精神を元にしたエルダールに辛うじて合致する「英語」をあてたものである)ではなく、クゥエンヤをあてて「エルダリスタ」「クゥエンダリスタ」、ないしシンダリンで「エゼルリスト」「エレズリスト」等でなければならない。
 つまり、この「エルフリスト」のジョークポイントはむしろ、英語とエルフ語がちぐはぐに混ざり合った(エルフ語の流れを愛でるファンには耐え難いとおぼしき)いかにも品の悪いオークらの使いそうな安直さにあるわけである。





カシナートの刃


 「待て!」
 「なんだい?」ぼく(マーリン)は聞き返した。
 「汝の謎かけだ」そいつは表明した。「我の答えは告げた。汝も答えを教えるべきだ。”回って回って回って、緑と赤”とは何なのかを」
 ...「”クイジナート・ミキサーに放り込んだカエル”だよ」ぼくは言った。
 (R.ゼラズニイ『運命の切札』)


 現在となっては、元々ジョーク品として作られた品を、ジョーク品のままの設定で受け入れる”余裕”がある。しかし、「当時」はどうだったろうか?

 カシナートの刃の由来と、ミキサーであるという設定を作者ウッドヘッド自身が表明したというのは、当時(ネットなどは普及していない)ですら、非常に有名な話であった。当時の日本のWizardry攻略本や関連書物の執筆者らが、その設定を知らなかったとは到底思えない(乱暴な言い方をしてしまえば、当時のゲームギークらは、今の一山いくらの攻略本にしばしば見られる姿勢よりもずっと真摯であった)。にも関わらず、当時の攻略本等にはほぼ必ず「村正に似せた和風鍛えの西洋刀」といった設定が書かれていた。疑いもなく、当時の執筆者らは、ウッドヘッドのジョークを知りながらも、それとは異なる非ジョークアイテムの設定を故意に流布していた。

 日本では長らく『硬派RPG』の最左翼と見られているWizardryシリーズであるが、ことに初代Wizの持っている雰囲気は本来、ジョーク性が非常に強く与えられたものである。マニュアルの端々の記述やイラスト、踊るカエル像やワードナのチンピラ言葉などのイベントは言うに及ばず、AD&D 1stの効果そっくりそのままでわけのわからない発音の羅列に置き換えられた呪文など、海外のファンタジーファンから見ればこれ見よがしな諧謔である。
 しかしながら日本では、当時は「ファンタジー世界」のイメージ自体が乏しく、細部はともあれ、当時RPG本国から上陸した本格的なファンタジー世界としてWizは稀有なモノだった。それをジョーク世界として受け入れる”余裕”はなかったのではないかと思える。日本にはひたすら高難度RPGの連なっていた当時としても、極端にシビアなゲームバランスや容赦のない世界も、硬派世界としてのイメージを助長した。そして、「ファンタジー世界」のイメージそのものを確固たるものにする願望に先ずとらわれたであろう当時の執筆者らは、このWiz世界を「シリアス世界」として一貫性を持たせ、固めることの方を優先・重視したのだろう。

 現在でこそ「ファンタジー世界」のイメージが一般的なものになっているのは、かれらをはじめ、その当時からのイメージ創造の積み重ねによるものであり、そして、Wiz本来のジョーク的な姿からはある意味滑稽であるほどに徹頭徹尾「シリアス化」された日本独特のWiz解釈も、その礎のひとつに他ならないのだ。





MERP d20

 前回紹介したファンによる中つ国d20のサイトは、今見ると移転したかなくなっている。その一方で、現在のMERPサポートサイトmerp.comにおいてMERPスタッフによって(あくまで一種のローカルルールとしてだが)既存のMERPデータからd20へのコンバートデータが作られている。まだまだ空白が多いが、MERPの資産といえる世界設定データをd20/D&Dで使用するソースブックとしてはすでにかなり有用であろう。
 なおRM/MERPのシステム的な楽しさ(痛打表とか痛打表とか痛打表とか)とd20のものは異なる。これの意義は、MERPのデータ、ソースとしての「資産」を利用できる、死蔵しない、という点にあると割り切るべきではないかと思う。

 キャラクターデータは、レベル(CR値)は10レベル未満はそのまま、高レベルキャラクターはMERPのレベル値を0.67倍に(つまり、およそ3分の2に)してあるとのことだ。ただ、これだとフィンゴルフィンがCR88になったりするため、超高レベルではまた違うコンバートルールになるのだろう。
 ただしキャラクターデータはまだ少ない。d20ではレベル値のほかにマルチクラスの内訳も考えなくてはならないためか、クラスレベルだけが書いてあるものでもまだごく一部である。


レゴラス ファイター5/エルブンガーディアン3

アラゴルン レンジャー3/パラディン7/ノーザンレンジャー10

アングマールの魔王 Exパラディン1/ソーサラー20/ブラックガード10/ウォーウィザード(エルドリッチナイト)10

グロールフィンデル ファイター35


 グロフィンHFOかよ! いやHumanじゃなかった。単にまだ細部が未定なのかもしれない。
 ちなみにこのデータでは、アルダでは「普通のオーク」が1レベルでなく、最低3レベル(HDもCRも3)である……





・重要キャラとか上位精霊とかのデータ

ソードワールド:「データを出しちゃうとプレイヤーキャラに負けちゃうかもしれないから出さないでおきますぅー」とか言う。

D&D:データと共に膨大な高レベル悪役強化ルールを視界を埋め尽くすほどどさっと積み上げ、DMに「これで勝てねば貴様は無能だ」と言う。





・検索ワード(その4)

エルミンスター 過去
 
FR世界のこれら「エドのかんがえたあいどるちょうじん」どもの過去を知りたいという人は日本には多いようであるが、和訳された書物にはあまり載っていない(CRPGのBGシリーズなどのゲーム内書物などには所々載っているようだ)。いくら最強厨キャラ系だといっても「神によって選ばれた」だの「人の姿をかりた神の血をひく」だのといった日本のツクール系的所業を海外有名世界設定がやるわけがないというのがまず尋常な発想であるが、エルミンスターは剛速球で前者である。あと後者もいる。
 FR世界の魔術神「御簾寅」は、千ウン百年前にすでに「災厄の時(出版社の商業都合のどさくさで神々が大量アヴォンヌ・人員整理されたえんがちょな事件)」が起こることを予期しており、わざわざそのときに備えて「御簾寅に選ばれしもの」と呼ばれるあいどるちょうじんを養成あるいは生成(人神交配などのまさしく手段を選ばぬエグい計画も含めて)したのである。その皮切りが、元々辺境の羊飼いから身を起こした若者エルミンスターと、すでに強力な魔術師ケルベン・エアランサン(後のブラックスタッフ)に、不死だのCon+10だのというゲームデザイナーえこひいき特権をベキベキと与えておくことだった。
 しかし、それほどまでの長年の遠大な策を弄しておきながら、まさにその「災厄の時」がやってきたとき、肝心の御簾寅はいきなり何を血迷ったか、まるで数値だけ99れべるで頭の出来が2lvのラノベ美少女魔道士のような勘違い突撃を敢行しヘルム神のチョップを食らってエルフェンリートチョンパされた(なお次代の魔術神は、あいどるちょうじんの息のかかった人間の女が文字通り位を襲ったことを付記しておく)。そして、FR世界を跳梁跋扈し続けるあいどるちょうじんどもだけがその後もそのまま残されたという、実にシテオクな結果となったのである。





RogueLikeジャーゴン

 Angbandにはその性質上、NetHackに比べてジャーゴンは非常に少ない。ここにはフロストブランドをFB, フレームタングをFTといった二文字の略語があるが、これは(元素ブランドにこの火炎と冷却の2種しかないことからも)単にMoriaでは二文字で呼称されていたというだけで、Moriaから登場するものはそのままの名前で継続しているというだけであり、ジャーゴンなる大仰なものであるか、もといMoria以来の古参プレイヤー以外に使われているものであるかは疑わしい。





羽根とか耳のギラギラ感が気持ち悪すぎる

 ネヴァーウィンターナイツ(最初の記事参照)は筆者はHDが消し飛んで以来しばらく再インストールしないままだが、この洋ゲーでも最も硬派・シビアに属するRPGツールは、ゲーム内容・データから3Dグラフィックに至るまでカスタマイズが可能となっており、本国のファンコミュニティには日々豊富に素材が持ち寄られている。上のリンクはそのひとつにすぎない。
 ちなみに右二つのポーズは狙っているように見えるが、あくまでNWNではデフォルトのコマンドでとらせることができるごく普通の(普通のキャラクターがとれば)ポーズである。


>ソードワールドあたりなら、あんま違和感無いだろうが・・・
 (2ch過去ログより)


 あやまれ! みゆきちゃんにあやまれ!





・神位

 日本の片田舎の村にぽつんと祠が立ってて村人だけに知られてる土地神とかも、ゲームでは「フルパワーの神」の力を持つのだろうか等と聞かれた。d20では神格らには半神-下級神-中級神-上級神といった「神位(status)」があり、その位を持つに最も重要なのは信奉者の数であるが、ガイドラインでは『「半神(demigod)」は二、三百から二、三千の信者を持ち、それ以上の数から認識され敬われている』とある。現代日本の「村」には人口数百人から数万人くらいまであったりして一見充分に思えるが、なにせ日本であるし、その神を「信仰」しているというのがその人口の中でどのくらいの割合なのか、例えば年配らの間で知られていてもその大半は「認識され敬われている」程度であろうと考えると、「半神」とまで呼べる土地神もごくわずかだろう。それ以下はすべて半神より下の「準神格もしくは英雄神(quasi-deities or hero deities)」ということになる。
 
前に「半神」は、パンテノンや異界に勢力を持ち信者に呪文を与えられる、まっとうな神の中での最下級と書いたが、ファンブルしないとかダイス目コントロールとか超知覚能力とかよく言われる「フルパワーの神の力」は軒並み「半神以上」ばかりであり、それ未満はなかなか世知辛い存在である。何百万も神がいればいるだけご利益も増えるというわけではないということだ。


ゆのは、寒村の地霊
中型サイズの原住来訪者(準神格) (冷気)

領域:水・風(冷気)、幸運、欺き  ※準神格は信者に呪文を与えられない。自身の擬呪の呪文レベル計算のみ
ヒットダイス:9d8 + 18 (hp90)
イニシアティブ:+6 (+2 Dex, +4《イニシアティブ強化》)
速度:40フィート、飛行40フィート(平均)
AC:19 (+2 Dex, +4 外皮(装束), +3 反発(=Cha, 神格特性))、接触15、立ちすくみ17
基本攻撃/組み付き:+9/+10
攻撃:肉体攻撃か手近なモノ、通常は擬呪
全力攻撃:+10/+5
ダメージ:1d6+1
接敵面/間合い:5フィートx5フィート/5フィート
特殊攻撃:擬似呪文能力
特質:神格特性、ダメージ減少10/epic, 呪文抵抗32, 火炎からのダメージ減少5, 冷気からのダメージ減少15, チェンジセルフ
セーヴ: 頑健 +8、反応 +8、意思 +10
能力値:Str 12, Dex 14, Con 14, Int 16, Wis 18, Cha 16
技能:〈はったり〉+15, 〈交渉〉+15, 〈視認〉+15, 〈情報収集〉+14, 〈真意看破〉+15, 〈鑑定〉+14, 〈精神集中〉+13, 〈知識:地域〉+12, 〈知識:自然〉+12
特技:《イニシアティブ強化》、《戦闘発動》、《攻防一体》
気候/地形:どこでも
編成:唯一
脅威度:10
財宝:¥200,000
属性:秩序にして中立
強大化:なし
正気度喪失:0/1d4

神格特性-準神格:変身・石化・エナジードレイン・能力値吸収と減少・魅惑・強制・惑乱・紋様・士気効果への耐性、不死性
チェンジ・セルフ(超常):自動的にその社会に溶け込む装束へ幻装、10レベルクレリック発動相当
擬似呪文能力:回数無制限- メンディング、レジスタンス、ブレス。1日に3回- キュア・ライト・ウーンズ、フォグ・クラウド、デイライト、レッサー・レストレーション、キュア・シリアス・ウーンズ、プロテクション・フロム・エナジー。1日に1回- コール・ライトニング、コンフュージョン、キュア・クリティカル・ウーンズ、アイス・ストーム、ハロウ。10レベルのクレリックとして発動(セーブ難易度14+呪文レベル)。一か月に1回- コントロール・ウェザー、リミッテッド・ウィッシュ。16レベルのソーサラーとして発動(セーブ難易度13+呪文レベル)。





・WG(伝統的には'GH'ではないらしい)

 前回Forgotten Realmsのワールドガイドについて触れたが、Roguelike的には
『グレイホーク・ワールドガイド』の方はどうなのですかと訊かれた。確かにこのサイトの用語集にずっと頻出するのはD&D系最古・基本世界のGreyhawkの方である。以下はあくまで筆者私見であり、もっと詳しい人から別の意見や、もっと良いサプリメントの紹介があるかもしれない。
 3e以降の現在ではD&Dシリーズの基本的な「世界の仕組み」はGrayhawk世界の仕組みである、ということになっている。つまり、Grayhawk世界の基本的な仕組みを知りたいならば、コアルール(3冊の基本ルールブックなど)を読んだ方がよく、ワールドガイドはGrayhawk世界の「地理や歴史」が記述されているもので、他ゲームのユーザーとしてはあまり関係がないだろう。
 Greyhawkの大魔法使いら、モルデンカイネンやテンサーなど「八者の円(サークル・オブ・エイト)」やヴェクナといった面々について、なぜ彼らの名や呪文がD&D系の他の世界や、ひいては他のゲームにまで出てくるのか、という話は非常にややこしい問題で、現に版(AD&D 1st-D&D3e)ごとに説明すべきことも異なる。ワールドガイドにあるのはそれらのメンバーやそのGreyhawk内での扱いに関しての概要といったところである。あくまでワールドガイド自体はGrayhawkを背景世界として使うゲーマー向きだろう。





・FR

 いや、
その一番下もアンバーのフィオナかどうかはわからんと思うよ。だって同じサイトで「オベロン」と書かれてるのはどう見たってFRのエルミンスターだぞ。(左はELH (Epic Level Handbook), 右はFRCSが出典)

 というわけで邦訳出版からはだいぶ時間が経っており、新刊等ではなく単なる紹介である。邦題は『フォーゴトン・レルム ワールドガイド』だが、原題はForgotten Realms Campaign SettingすなわちFRCSである。
 数年前にBG(バルダーズゲート)系の掲示板・スレッドなどを見ていた人には見覚えがある4文字のはずだ。これらの場では決まって、英語版プレイヤーからは「世界設定についてわからなかったらFRCSを読め」という発言が頻出し、英語サプリメントに手が出ないプレイヤーにはなすすべがなかったに違いない。そのFRCSも、その膨大な情報ゆえにかえって、英語プレイヤーの間では、邦訳は出るはずがないと言われることも多かった。
 しかし、いまやその全訳、ごっついハードカバーサプリメントの全日本語版がこの手にある。毎回言っているが、ホビージャパン社がここまでやるとは思っていなかった。
 このFRCSには、FR全域の基本的な地名や背景などの用語、重要人物、世界専用ルールなど膨大な情報が網羅されている。ただしそう簡単には手が出まい。8千円近く、ボリューム、読むのに必要とされる気力もその価格に相応のものだ。しかし(TRPGとして用いる予定はなくとも)BGシリーズや、小説のドリッズトのシリーズなどでFR世界に引き込まれた、もっと世界設定を知りたいという人々には、勧めることに躊躇は持たない。

 FRことフォーゴトン・レルムとは何か? AD&D/D&D3edのコンピュータ・プロダクトの有名なもの、新旧のプール・オブ・レイディアンスやバルダーズゲートシリーズの舞台設定、つまり、D&Dシリーズの数多くの世界設定のうち、「最も有名、メジャーなもの」と言っても構わないだろう。
 かつて、初期のD&D系をはじめとする迷宮冒険物から転じて、広大な世界設定を売りにしたTRPG群が台頭したとき、最古のRPGであるD&D系も、緻密で広い設定を持つ世界を用意しようとした。そのひとつは、小説と並行し箱庭世界的に特殊な設定をもつDragonlanceの世界設定で、癖の強い設定を用意することでエピックな雰囲気を実現している。しかし、もっとスタンダードでプレイしやすいRPG的世界も同時に用意することが求められた。そこで、当時、エド・グリーンウッドというデザイナーがDragon誌に連載していた『忘れ去られた領域』と題された「魔術師の紀行文」が叩き台として目がつけられ、作られたのがFR世界である。(かの和製TRPGで、女魔術師ラヴェルナの紀行文によって世界設定を紹介していたのは、このFRの臆面もない「パクリスペクト」だという主張があるとかないとかである。)
 D&D 3e以降は現在も、一応は最古の世界設定であるGreyhawkが基本に置かれているが(実際、形式上は、特に断りがない限りは、早い話ビホルダーなどの「D&Dの設定」とはつまり「Greyhawk世界の設定」である)それまでの展開による普及度、特に3eの時期にさらに普及してきた多くのコンピュータRPGによる知名度により、結局はFRが依然として活発といえる。

 件の「魔術師の紀行文」の大魔術師、エルミンスターは、かなりの期間「なんちゃってガンダルフ」にしか見えないようなイメージだったが(とんがり帽子に薄汚れたローブという魔法使扮装、長い白ヒゲ、さらには長パイプまで)最初の段落で紹介しているような最近のイラストでは、世界の動勢を引っ張るため活発に奔走する導き手にはむしろ相応と見える、逞しい姿に大幅にイメージが変更されている。台詞の訳も、かつてのAD&D小説和訳のような典型的なじじい言葉ではなく、貫禄旦那風のものになっているようだ。こうした外面に限った話なら、アンバーのオベロンのイメージというのは割と同意できるところである。





・キシオムバーグのエロリ画像ギヴォンヌという要望もしばしば耳にするが

 『ウォーハンマー』の流血と殺戮の神Khorneに対して、日本ではかの関西ゲーム集団によるかつての和訳<コーン>が定着しているが、原語ではもっと音感は禍々しいはずだとして、不満を述べる声が多いのは用語集でも書いている通りである。筆者の知るとある業界人は「コルヌ」あたりを主張するのだが、ならいっそのこと
「コロヌ」にでもしちまえばとか思う。流血とか殺戮とかだし。





【大発見】万物理論に出てくる『わきまえろ科学!』は『ぶち殺すぞ人間!』に似ている【ノーベル賞】

 そんなことを筆者に聞いていったい何をどうするのかというシステム的な質問の中で「ヘルシングのアーカードは*bandでのレベルでは何階くらいだと思いますか」というものが多い。リチャードウォンや越前のように、純然たる都合だけや下手をすると都合さえもなしに理不尽な深層になっているユニークも多い以上、どんなキャラクターがどんな階層になるかは仮に実際に追加される段の都合になってみないと考えようがないだろう。しかし、筆者ならどうするかと聞かれれば、階層も含めて「ショゴス(モンスター)」とほぼ同じデータにする。大昔の本スレでアンデルセンともども90階未満はありえないとか溜まり場で77階だとか何とかを聞き慣れると耳を疑うかもしれないが、それはショゴスというのがどういう存在だかわかっていないのだ。

 上のリンクは*band d20計画の助けにはならないかもしれない『ヘルシングd20』であるが、これはベースになっているのはかの悪名高いアニメ版が準拠で、というより実質アニメの解説書というかファンブックにBESM(ジャパニメ再現ゲーム)用データがついていたデータ部分を強引にd20にコンバートしたという代物のようである。本国でまっとうなゲームデータを出す前にこんなものにこんな形で出し抜かれてしまうあたり、いったい日本の吸血戦闘厨の方は何やってんだか。





・萎え絵

 見かけで判断するのは愚かである。とはいっても物事には限度というものがある。「オリジナルファンタジー小説」でもツクール系でもCardwirthでもなんでもいいが、それに添付された「作者自身の手による」という画像から、(ヘタウマというのではなく)いかにも「厨ファンタジー」臭のするヘタレ絵の感を覚えた場合、あなたのその予想が裏切られることはまずないだろう(翻訳物RPG風表現)。
 ことに、作者がヘタレ絵と自覚してまでやむを得ずに使っているという場合は、作者はそれほどまでに他者のイメージ(ゲームなら現在はフリー素材も多彩である)を拒否し、自分の脳内イメージを表現する自作画にこだわっていることになる。つまり、作者の脳内の「ファンタジー世界」とは、そのヘタレ絵に限りなく近いイメージ(作者自身にも不満はあるとしても、少なくとも脳内世界に一番近いのがそれだと思っており、頑強にこだわっている)であり、内容が「絵に相応しいヘタレ世界」であることはまったく確実である。

 後になって他の絵師に依頼され、差し替えられる場合も多い。その場合、そういった経緯を辿るからには人気作品であることも多く、わざわざ依頼されるくらいなので絵の方も一転して、そのジャンルのレベルとしても相当に上質なものになっていることが多い。しかし、それほどまでの作品というのは、何をやったところでヘタレ絵だったころの厨臭さは脱臭できない。前の絵は知らないのに、かつてどんなヘタレ絵だったか想像がつくものまである。





「ふつうの人間パラディン」が厨臭い

 一般にそんな感覚が存在するのかは疑問である。なぜなら、パラディンという語を元来の語義で捉えているのはゲーマーでもごく僅かであり、本当に「厨臭い」人々は「勇者」に相等するクラスがパラディンであること自体を知らないと思われるからだ。故に、パラディンという語を見て即座に厨臭い勇者を連想するというのは、結構ゲーマーの中でもひねくれたものの見方であるということになる。
 (なお*bandのプレイヤーですら、日本のRPGの「勇者」にあたるのは「魔法戦士」だと思っていることが多いようである。)

 さて、D&D系では各種の超常能力の発揮、例えばどう見ても屈強大力とは思えない若く秀麗な男女が巨大ダメージを叩き出したり逆にそれに耐えたりするのは、しばしばクラスの特殊能力で説明される。
 パラディン=勇者の数多くの特殊能力、例えば普通の戦士にはない超常的な回避・抵抗能力(D&D系では各種判定にボーナス値、3eでは魅力=”徳”に応じたボーナスがある)は、「神の加護」によって生じているものとされる。しかし、D&D系のパラディンは「正義にのみ仕え、神に仕えていない」場合も多々ある。神でないならば、彼らの超常能力は何に由来しているのか?
 筆者がよく自分の卓に説明していたのが、「主人公特権者」であるパラディンは「ニュータイプ能力」のようなもので、敵を感知し、魔力を跳ね返し、あやまたず直撃を与え、眉間からスパークを走らせて超回避する、という例である。あるいは因果が変動するボトムズの「異能者」能力でも構わない。別に「オーラ力(ちから)」でもいいのだが、これははまりすぎていて逆に胡散臭く、例として使ったことはない。





魔法剣から産まれる無限のアァンタジー

 せっかくだから2ndまでのAD&Dで最も恐れられたクラスのひとつ「Warlock 戦封士、魔法剣士」の話でもしてみよう。2ndまでですらも呪文だけでハードカバー7冊にびっちりのAD&Dの魔法は、戦闘に何らかの関係があるものだけでもあまりにも選択規模が広範だが、Warlockはそれらの多彩な魔法をそれぞれ接近戦剣術と組み合わせることに異常なほどに特化したクラスである。例えばAD&Dには、ダメージを受けると問答無用で詠唱中の呪文をロストするという、GURPSにも似ているが遥かに厳しいルールがあり、前線に出る安直な魔法戦士キャラクターは断固として阻まれているのだが、Warlockに限っては、この影響を回避する手段がある(エルフ専用の魔法戦士クラス、Bladesingerにもまた別の回避手段があり死ぬほど恐れられているが今回は魔法剣の話なので省く)。
 さてそれらのWarlockの力で最も恐れられているのが「剣に呪文を乗せる」、接近戦攻撃ごとに(勿論、1ラウンドの攻撃回数が複数回であっても、である)同時に呪文をかけ剣を通してダメージと共にその効果も及ぼすというまさに「魔法剣」の能力である。さらに、後列のウィザードから敵に呪文をかける場合、射程が短い呪文や特に対象に接触などが必要な強力な呪文は肉体的に前列に出られず「命中率」も極度に低いウィザードには困難を極めるわけだが(実は手段があるが今回は魔法剣の話なので省く)Warlockは、接近戦の有効打によってその防御すらも突破とみなすのである(なお有名なことにD&D系(とその影響下にある多数のRPG)では回避力と防御力がいっしょくたになったACという数値しか存在しないため、「命中」とはその時点で鎧まで貫通したことを示す)。この呪文を乗せた打撃はもともとの魔法の剣の魔力と相殺するどころかその逆であり、刃の持つ魔力を媒介することによって行われるので、必ず”魔法の剣”を用いて行わなくてはならない。初期レベルのWarlockはDMの裁量で最初から魔法の武器を持っていたり一時的魔法を剣に付与する呪文を持っていたりするが、さらに強力な魔剣を入手することでその能力は幾倍増してゆく。(魔剣を媒介に雷の魔法剣をふるう『バスタード』のアーシェス・ネイは、これの他に自然魔法という意味でも戦将という意味でもダークエルフという意味でもあらゆる面でまさしくWarlockであると筆者の周囲の与太話によく出てくるが、はたしてD&Dプレイヤーであったこの漫画の作者が意識したか単なる偶然の一致かは定かではない。)無論、Warlockは戦闘能力でも呪文でも同レベルのファイターやウィザードには及ばないが(それぞれ耐久力、呪文レベルで劣る。ただし精度はどちらにも遜色ない)D&D系の一集団毎の戦力は「こうげきじゅもんのいりょく」のような短絡的なものではなく総合的な採り得る手段の範囲で雌雄が決するため、最前線から呪文(超常手段)による撹乱ないし一気に切り込みが可能な”手段”の存在は戦略戦術的に想像を絶する脅威となりうるのである。
 攻撃と呪文を同時に行うなんて「非現実的」だとか言うかもしれないが、そんなことを口走っている間に魔法剣で唐竹割にされた傷口に呪文を流し込まれてズルズルに溶け腐った汚い肉塊に変えられてしまうのが落ちである;Warlockはそれほど強い。「魔法剣とはそういうことが可能である」というのが定義であり、クラスのデザインされた意義であり、AD&Dでのまぎれもない「現実」である。(なお、WarlockにせよBladesingerにせよ、しばしば古いマーシャルアートの演舞に呪術的側面が含まれていることから戦闘動作と直結した魔法動作という発想であるらしい。カポエラが有名であるが、剣では筆者の挙げる例が適切かどうかは解らないが古陰流の摩利支天経を唱えながらの鴛飛抜刀型や、あるいは遥かに卑近かつポピュラーな例では直心影流の呼吸法を伴う法定なども海外人からはそう見えるのではないだろうか。なおBladesingerのエルフ剣の記述は明らかに日本刀である。)
 ここでようやく結論であるが、何が「現実」「実際」かはルールにも定義にも解釈にもよってすべて異なる。例えば「敵の装備にかける呪文は抵抗・回避される」というゲーム的都合を否定し無視する一方で、同じゲーム的都合の「魔法の武器にはそれ以上は魔法がかけられない」という点は論拠として用いるのはミスリードである;あるいは後者はゲーム都合でなく「本当に『現実的』に理屈の通った一般論である」との考えかもしれないが、魔法の剣にかけた魔法は相殺とする世界もある一方で、上記のように剣の元々の魔力の媒介によって幾倍増とする正反対の場合もいくらでもある。SWやGURPSというシステムを用いた世界の「根本法則」の多くは、一見筋は通っているように見えても、実際は2d6と3d6判定のゴテゴテバランスを強引にまとめるルール上の都合で設定されたものに過ぎず、他の世界やルールでは必然性も必要性もまったく無かったりすることが多い;D&D系は無論のことBRP系やT&Tなど、魔法の武器も一時的強化・媒介が可能な方がむしろRPGでも一般的であり、しょうもないことにSWと同じ世界設定のロードス島戦記TRPG旧版でも可能とされており、これが世界の設定・法則ですらなく純然たるSWルールの数値のみの都合であることを如実に示している。
 そも、限られたRPGや作品世界の法則やお決まりを根拠に「現実に存在しづらい」「実際に使われない」といった結論を主張するのは、ガンダム世界のミノフスキー物理学を根拠にして海外SF作品の物理法則や兵器等の「現実性」やら「実際性」やらを論ずるようなものなので、まあ比較的多数のロボットアニメ、じゃなかった、「比較的多数のファンタジー作品に共通する一般論」として主張するにしても、その根拠たるほどの広範な数々の作品・設定の例を挙げでもして説得力を持たせる他ないのではないかという気がする。とはいえ商業ですら、CRPGを根拠とする「ファンタジーの嘘」を、作者のたまたま知るCRPG程度のファンタジー知識で構築した屁理屈であげつらって悦に入っているような作品こそが公然とまかり通っているのが現状ではあるのだが。





レベル

 最初からこちらに書いてあることを繰り返しておくが、なにもかも11Lvではなく「AD&D 1st/2ndにおいてはWizardのネームレベルが11Lv」である。なおFighterとClericのネームレベルはクラシカルD&Dと同じ9Lvだが、Thiefは10Lvである。
 クラシカルD&Dではどのクラスでもネームレベルは一律9Lvなのに、AD&Dではなぜクラスごとに異なるかと言えば、ヒットダイスがそれぞれ違うことや、AD&Dでは成長ペース(速度だけでなく”緩急”である)がクラスごとに異なるといった事情を鑑みてのことのようだが、要はオールドAD&Dのシステムの混沌性(非整合性)の表れ程度と思えば妥当である。

 システムごとにレベルの価値も概念も異なるにも関わらず、概説したり比較することにどれほどの価値があるのか? 世にはあらゆる基準・描写を無視して何やら「99Lv」という数値さえ出ていればそれだけが「最強」の証として妄信する巨大な一派がいるようだ。8bit時代のCRPGでは255Lvが上限であったことも多く、Wizardryでは数千レベルが珍しくないというのに、である。そしてd20のエピックレベル(20+Lv)や、*bandの深階層のキャラクター(無論50Lv未満)はWizardryの数千レベルキャラクターをスケールにおいて遥かに上回っている。

 さて、メールと共によく舞い込む質問に、NetHackや*bandのレベルや階層は「ソードワールド(とか他いろいろ)のレベルにするとどのくらいなのですか」というものがある。
 異なるシステムのレベル値の対応を考える時、「使える呪文」などを基準に考えてしまいがちだが、これはたとえ似たような古典的ファンタジー世界であったとしても世界設定やルール都合によって千差万別なのでまったく当てにならない。またよく例えに出される「○○レベルキャラというのは世界に○○人しかいないという強さで……」というような比喩も、世界によって異なる(同じd20を使った世界でも、10Lvが山ほどいる背景世界もそうでない世界もある)ので使えない。
 そも、異なるシステム・ワールド同士でレベル値を比較するということにどういう意味を求めるか、という問いになってくる。システム的に、2レベルの差が10%の力の差になる世界と2倍の差になる世界では単純計算では比較しようがない。が、そう言ってしまうと話が進まないので、ひとつの考え方としては、それらがD&D的な古典的FT/RPGを元にしたお約束のモンスター序列をもつシステムの場合、「中レベルモンスター」のレベルを比較する方法がある。細かいルールの都合がどうあれ、「同格」のモンスターを倒せるならば、とりあえず「同格」の強力さのキャラクターと呼べるわけである。

 例えば、d20とSWで(多様すぎるドラゴンやデーモンは避けて)幻獣系や標準的巨人系などのCRとモンスターレベルを比較してみると、きっちりと「d20でのCR+1」=「SWでのモンスターレベル」あたりになっているモンスターが多い(グリフォン:CR4、モンスターレベル5。ヒルジャイアント:CR7、モンスターレベル8)。これは何のことはないSWもクラシカルD&Dのモンスター序列が基になっているためで、d20では低レベルキャラが死にやすかったりSWでは中高レベルでバランスが崩壊することが多いので一概には言えないが、非常に乱暴に言うと、d20とSWのレベル値はだいたい等価プラスマイナス1前後、と言える。
 FTRPGのd20では成長RPG的ゲームでみっちりと同じキャラクターで進めてゆくとわりと簡単に10Lvあたりまで上がってしまうので、非常に意外に見えるかもしれないが、d20はSWに比べてルール自体がそれだけのインフレを前提としているということである。

 さて、NetHackはゲームシステム自体がAD&Dそのままなので、レベル値はd20相当である。故にNHでのレベル値はSWにもそのまま相当、などと言いたいところだが、実際はNetHackはクラシカルD&DやAD&D 1stがベースなので、特に戦士系能力がd20より著しく劣り、ことに無支援での対多数戦闘に弱い(CR値はあくまで「パーティ」での戦闘を前提にした値である)。「WizardryやクラシカルD&Dのレベル値」=「ソードワールドのレベルx1.2-1.3」に相当等と言われたことがあったが、それも考慮して、若干レベル値より弱いものとして見積もるべきだろう。それでも、NetHackのクエストレベル(15lv)が、SWの10Lv超英雄をかなり上回ることは確実である。
 長くなったので*bandについては次回以降に続く。続かなかったりする。





・ポケモン&ファイナルファンタジーd20

 こうした有名タイトル(たとえ日本のものでも)の安易なTRPG化が海外の方が盛んなのは、ひとつには日本では、そのベースとなる汎用RPGルール(色々世界観や特殊ルールをとっかえられる、もとい「そういうことができるようきちんと作られてる」ルール)で、まともなものがろくに普及していないという理由が挙げられる。
 一応、日本でもネット上などにその手の有名作品TRPG化ルールが決して存在しないこともないが、わずかなガープス(まともで辛うじて普及もした汎用ルールだが、かなり特殊な代物でもあり、プレイヤーは少数派である)系か、そうでなければ「完全オリジナルルール」と称してSWやヒィヤア系ルールがタラスクのブレスの直撃を浴びたかのように著しく劣化した代物ばかり目立つ。

 さてリンクは海外のものだが、黒魔の呪文リストの10レベルに「波動拳」など、なかなか切なくなる代物である。





ガンダムZZゲームブック『ヘルメス』シリーズ

 リンク先はこんなピンポイントな代物を今時取り上げる発想がいったいどうやったら出るというのか。
 UCガンダムシリーズの中では良し悪しともケレン入り、言ってしまえば低年齢層出来と批判されることの多い『ガンダムZZ』の派生作品、また同HJ社の前作Zガンダムの2冊のゲームブックが正直ぱっとしない出来であること、ここから予想できるものからは、あらゆる意味でかけ離れた代物である。当時のゲームブックとしては極めて珍しくパラメータもなく選択肢のみで、文章と描写でひたすら押すタイプである。そして内容たるや、記憶喪失の強化人間が両軍や地下集団の対人戦なりMS戦(無論選択肢のみ)なりを潜り抜けてゆくシビアな代物である。しじゅう悪夢に悩まされる強化人間の異常状態の細密な描写、それでいてわりと快活なヒーローの面をもつ主人公(80年代的ではある)。そして、『ガンダムセンチネル』と共に立ち位置の大きく引き上げられたMG誌のオリジナルガンダム設定に対して、なにかと日の目を浴びることの少ないHJ誌オリジナル設定の数々と詳細なMSの描写。エニグマにシュペーレサイコミュシステム、グルンドゥールにクインテットキュベレイにグーファーにゼッツー(ZMSVのやつではない)にネモ顔のヴァリアブルガンダム、そして連邦エゥーゴ所有の13機の怪物の一、ロシア戦線のZZ”黒太子”はボスキャラでもなんでもなく……





『暗黒城の魔術師』復刊

 手に入っていないので昔話でもしてみよう。
 某所に書いた筆者と『指輪物語』との出会いがあまりにも奇想天外であったせいだというが、その後頻繁に筆者の「RPG的ファンタジー」との出会いについて、質問とその予想を聞かされる。大概はドルアーガやウィザードリィやドラゴンスレイヤー1、もっと古くはブラックオニキスや火吹山や新和D&D、はてはApple ][の海外RPGや(これは、某「あくあ」周辺との人脈から、アップルユーザーでもそこまで古いというとてつもない誤解が広まっているようだ)UNIXで初代Rogueをやっていたとか、誰もが、真面目に予想しているというよりとりあえず自分で思いつく限り最も古いものを適当に挙げているだけだろうという気がしてくる。
 が、実際のところ筆者が最初に体験した「RPG的ファンタジー世界」とは、近所にいた年長の友人が貸してくれたゲームブックの中に混ざっていたこの『暗黒城の魔術師』である。どういう動機でそんなに借りたのかもまったく憶えていないながら、一度に10冊近く貸してくれたと思うのだが、他の9冊はタイトルも内容も一切思い出せない。他はすべて国内製だったように思えるが、後に爆発したファミコンゲームのゲームブック化作品は入っていなかった。であるとしても、火吹山のヒットと模倣作の氾濫よりはかなり後と考えられ、おおかたの予想より、ずっと後の時代ということになる。
 当時筆者は剣と魔法のファンタジー世界もアーサー王伝説すらも知らない。本全体のデザインや恐々たる文体とフーゴ・ハルによる絵柄の醸し出す雰囲気こそが、筆者にとっての「剣と魔法のファンタジー」であり、アーサー王伝説であった。これが同伝説のとんでもないパロディ作品だとは知る由もない。無論のこと──これが並大概の作品であれば、これほどに「騙させて貰える」わけがなかった。
 後続の巻もその友人のもとに繰り返し足を運び借りたが、ずっと後になってどうしても再びこのシリーズを読みたくなり、また別の友人にこれも繰り返し借りたこともあった。その別の友人が貸してくれたこれも大量のゲームブックの中に『暗黒教団の陰謀』が混ざっており、これが筆者とクトゥルフ系との(暗黒城〜に比すると)絶望的に不運な出会いであったのだがそれはまた別の話である。





【ピー】がなきゃ名誉を語る資格はないっていうの

 D&D系のForgotten Realms世界、ここの用語集にも頻出するダークエルフのドリッズトや、[変]の『イージス・ファング』などの(提案者にとっては)出典。初期のTRPGブームの際に翻訳され、「サルヴァトーレはゲーム小説でありながら(日本のそれとは違い)エンタティメントとしても、ファンタジーとしても良質である」とSF板住人にすら言わしめた、FR翻訳の唯一の収穫。
 『アイスウィンド・サーガ』のまさかの復刊である。先の『ダークエルフ物語』とあわせて、ファンタジー映画ブームの波及効果に間違いないが、予想だにしていなかったとしか言えない。

 が、今回の改訳はそれよりもさらに遥かに予想外である。元々が凄惨ともいえるハードなアクション中心の内容ゆえに、前回の翻訳ではシャープな文体を狙っていた(その出来が別にいいとは言えないが、その姿勢はよく伝わってきた)訳文は、今回、「小学校中学年向き」の平易すぎるものに変更されている。読みやすくなったなり、『ホビットの冒険』のように大人でも読みやすいというレベルのものではない。
 この作品の内容を知る者ならば、この内容をこの文体に(というよりも、小学生向きに)することが相応しいとは誰一人として思わないはずである。恐らく全員それがわかっていながらこうして出したのは(先の『ダークエルフ物語』の児童書まがいの装丁もそうだが)「D&D系髄一の成功作」は、もはや内容の問題すら二の次にしてまで「戦闘漫画好きの低年齢層にもアピールする」以外に発刊の事情が許されなかったのだろうか。レーベル自体がオタ(現在よりさらに狭い)に絞った「ゲーム文庫」的なものだった前回の翻訳時に比べて、訳者らに自由がきくとも思えない……。

 とりあえず言えるのは、筆者は今回の復刊されたものに関しては評価も批評も避けるということで、用語集などで『アイスウィンド・サーガ』に対して言及したり奨めていたりしても、それは前回の翻訳に対する言及であり、復刊されたものに対して保障するものではない。





qqq p「ネトゲをやめろ/ネトゲをやめてくれえ」

 いよいよアレが役立つ時がきた。D&D3e RPGはサタンの手先だパンフである。ガイギャックス! ガイギャックス!
 というかこのパンフがますます冗談程度にしか見えなくなってくるほどに現実は切迫しているという側面は改めて一考の価値がある。





アンバーシリーズd20

 を自作しているというサイト、と言いたいところだが、まだまだルールらしいルールになっているとは言えず、この周辺のゼラズニイファン+ゲーマーならば多分すぐに連想するくらいのアイディアが記されているのみである。
 もし本気で考えるならば、既存のアンバー・ダイスレスRPGに対して、ヒロイック+システマチックなパワーの削りあいがd20の売りとなるだろうし(アンバーにはAD&DのCRPG、Planescapeの話題が出るが、ああいった神格ルールが参考になるかもしれない)アンバーやカオスの能力をどれだけ巧みに、そしてそれらの展開に合致するようルール化するかにかかっているだろう。*bandのような限定された舞台とするなら、d20ムアコックのヴァドハーのルールを流用するなり現実改変(Wish系相当)を応用するなりいいかげんで済む気もするが、そういうわけにもいくまい。





クトゥルフ神話RPG(BRP版)

 d20版ではなく、より以前の形に近いと思われるBRP版も邦訳が出ることになったらしい。Kokaさんごめん。
 以前の「クトゥルフの呼び声」でなく(これはd20の時もそうであるが)より一般的な「クトゥルフ神話RPG」となっていることには色々と難しい大人の事情があるようである。古参ファンはそんな事情はともあれ、'CoC'はHPLの著作題名である一方で「クトゥルフ神話」はHPLの用いた用語ではない=HPLから離れるというあたりをつついてこだわりそうである。が、実際のところ、最近の版は内容的にも、BRP版も含めて厳密なHPL世界観にはこだわらない(いわゆるダーレス系を含めてより雑然としたクトゥルフ神話に移る)傾向が細部にあるようだ。個人的には、ゲーム等からクトゥルフ系に触れるファン等も出てきた現在であるからこそ、多くのクトゥルフ神話要素をHPL宇宙が包括する深遠的な宇宙観の、旧版ルールブックの雰囲気に触れて欲しかったのであるが。





・ローグライク今昔物語 〜 Dungeon Hack (1993)

 Angband, それ以上にNetHackがAD&Dのシステムとデータに強く依存していることは*band用語集の随所で述べている通りだが、AD&D 2ndのシステムでそのものずばりRoguelikeを採用したオフィシャルゲームも存在した。3Dダンジョン型で、RPGの流行りのひとつだった『ダンジョンマスター』の影響を強く受けたインターフェイスになっていた(直前の傑作the Eye of the Beholderシリーズと同様である)。
 ただし、Roguelikeとはいえひとつの階層にせいぜい2種類のモンスターしか登場しないとか、魔術師系以外には鑑定手段がないとかいう「だめぽ」な要素の数々が重くのしかかっており、単調さも含めてゲーム性ではNetHackなどには比べるべくもなかった。こちらは「オフィシャル」の字にも関わらず、NetHackの方がAD&Dプレイ感が強いほどなのである。それでもD&D系のシステムでキャラを育てるという自体に楽しみを見出す筆者らのような類にはこのDungeon Hackもいと楽しいゲームで、D&D仲間の間でも一時流行っていたものだったが、それ以外のゲーマー層にアピールするものがあったかどうか、はなはだ疑問である。
 実はこのゲームは日本語化されて、おまけにDOSのPC-98で発売されていた。(まともな速度で動いたとはとても思えない。当時のハード事情は、米国が486の50-66MHzマシンが当然という頃に日本では独占状態のNECがヴォッタクリーノ価格で286の16だのを平然と売るというふざけた状態の名残がまだ残っており、スタークラフトの『指輪物語』CRPGが日本のPCではナメクヂのように動いたり動かなかったりという話ばかりなのはそのせいである。洋ゲーマーには暗黒時代であった。)そも当時AD&DのTRPG版ルールが壊滅状態だった日本で何ゆえこんなものを移植したのかと考えれば、おそらくRoguelikeという点のみ目をつけて「トルネコの柳の下のどぜう」でも狙ったのだろうと推測する他にない。日本語版『ダンジョンハック』独自の要素として、パッケージイラストおよびキャラクターの顔グラをポプコム投稿戦士もといエメドラやサバッシュのキャラデザイナー「木村明広」氏によるものを追加していた。これは、もとの英語版の顔グラは例によってマクロスのゼントラーディ人そっくりの面構えをしたエルフなど見るからに濃ゆいものしかなかったため、思わず売れ筋から遠いと判断してアニメ顔キャラを追加したのは想像に難くないが、だからといってこの対策が正しかったか否かは筆者には判断のしようもない。ともあれ、現出したのは海外RPG、それもよりによってダンマス系の凄惨で血なまぐさく泥臭い画面と世界の中を、アニメ顔ファンタジーの中でも特にスカしポンチな木村キャラが顔だけ気取りっぱなしのまま殴られるたびに「げげぼぼ」だとかのSEで呻く刹那さ炸裂的に怪しい世界である。色々な意味で洋ゲーマーの夜明けなお遠しを実感させた11年前の話であった。





発動 Evocationと祈祷 Invocation

 ネクロマンサーの項目でも書いたが、EvokerとInvokerはどちらも「霊から力を得る者」といった意味の、魔法使の曖昧かつマイナーな呼称に過ぎない。
 これを、言葉の意味から(というより、他の語との兼ね合いでかなり無理やりに)分類したAD&Dの定義が、他のRPGでも多く用いられている。AD&D 2ndの説明によると、evocationは「自分の力を用いてエネルギーを生み出す魔法」、invocationは「他の存在の力を用いてエネルギーを生み出す魔法」という。(特にevocationの方は「呼び起こす」という意味からこうなってしまったわけだが、元々のEvokerの使われ方とはかなり違うものになってしまっている。)

 が、evocationとinvocationが区別されていながら、なぜかAD&Dの基本ルールにはinvocationの呪文はほとんど存在せず、3edになるとinvocationもinvokerも消滅してしまっている(evocationは「力術」という、より実態には沿っているがより原義から離れた訳語になった)。
 さらに、他者からエネルギーを引き出す魔法系統としてはconjurationが存在する(実は、高位存在の力を得る「祈願 wish」の呪文すらもinvocationではなくconjurationである)。AD&D 1stのしょっぱなから存在するので経緯推測のしようもないのだが、一体invocationという系統は何のために作られたのか? 実際のinvocationの呪文がほとんどなく、さらに系統消滅してしまった現在となってはなおさらその考察は困難である。





・「白い毛皮をまとった美しい女がゆっくりと棺の中からおきあがるが、 微笑したときにまぎれもない牙が見え、君は雪の魔女が吸血鬼だと悟ってぞっとする!」

 牙が見えたとか吸血鬼だったからとかで納得するレベルの話じゃないだろとかそれ以前にこれ微笑かよなどと脳内突っ込みながら読み進めるのが、懐古と共にそれらに対する突っ込みモードにも入ったゲームブックファンのあるべき姿である。

 さてこの「雪の魔女」はD&D3eと同じシステムすなわちd20シナリオにもなっている(ミリアドール社)。なぜか FFゲームブック50冊余の中から雪の魔女という発想もよくわからない(ゲームブックとしては短編をつぎはぎしたような代物なので、TRPGのキャンペーン風にアレンジしやすいという性質はあるかもしれないが)。他にお約束の火吹山のほか、死のワナの地下迷宮・ソーサリーなどのラインナップがある。

 このd20-FFシリーズだが、すでにゲームになっているものを、ふたたびTRPGやそのシナリオ化するというのは中々日本では出ない発想で(一応イースやウィザードリィがあるのだが、最終的には萎んだと言ってもいい)ましてゲームブック、さらには、おそらく世界のFTファンらによって最もプレイしつくされた内容を、また改めてTRPGシナリオにするというのも何である;無論、これらをプレイするプレイヤーが意外性を求めるとも考えられない(この内容にゲームブックでなくこちらで最初に触れるような人もいないでもないだろうが、初心者がこんなシナリオを選ぶかどうか)。
 単純に我々旧来プレイヤーは、ただ何も考えずに、これらに対して単なる「懐かしみ」をもって眺めるわけだが、そんなところがこの商品の本来の楽しみ方なのかもしれない。

 と思いきや、これらd20-FFシリーズのまさかの邦訳が、夏に「火吹山」を皮切りに『RPGamer』などの国際通信社から出版される予定というのである。なんたる時代であろうか。火吹山などのゲームブック本編がFFが扶桑社、ソーサリーその他が創土社、d20が国際通信社というバラけぶりに、一抹だった不安をさらに膨らませつつ、──





予感@ゆきてかえらない日記

 残念ながらルーンの杖シリーズだけが今手元になく、さすがに記憶だけに頼って書きたくはないので、ホークムーン関連の解説は先延ばしにしているのだった。

 和訳で暁の剣こと、The Sword of Dawnは[Z]から追加されたが、ホークムーン3巻の題名でもあり、邦訳では題名ともども「夜明けの剣」である。
 この[Z]の訳はエレコーゼ(コルムの名がいいかげんだったりもする初期のものだが)にあった「暁の剣」から取られたものだが、この邦訳はホークムーンの訳より後の気がするが果たして訳者は相互に参照したのか。ただ原書を扱っているサイトなどを見ると、なぜか必ず「暁の剣」の方の訳で呼称しており、「夜明けの剣」よりこちらの方がよく聞くほどである。この原書読者らはエレコーゼを参照してというより、個人的には語呂もこちらが良いためかと思う。
 なお、エルリックのTRPG旧版『ストームブリンガー』のサプリメント扱いのホークムーンTRPG, 'HAWKMOON'は和訳されていないのでこれに合わせて呼ぶということではなさそうである。

 余談だが、TRPG版の『ストームブリンガー』はBRP(べーしっくろーぷれ:ルーンクエストや旧CoCと同系のd100ルール)版の和訳は絶版だが、CoC同様これもd20システム化されている(DLoM。なお破壊スルかぶとむしを0.8撃はこれのデータによる)。従って、指輪バブルのFTブームおよびCoCに続いて、こちらも和訳される可能性はわりと高いかもしれない。
 しかし、周りのd20ユーザーからすると、旧BRP版に比してd20版の評判は極めてよくない。CoCほどではないにせよ、ムアコックの世界観にd20は必ずしも合致しないためであろうか。





Man, Warrior

「 ○| ̄|_  」のAAの原典とされるLehmbruck "Fallen Man" だが、原題は"Dying Warrior"らしい。
 初心者の選択で最も多い「人間・戦士」など、鉄獄を前にしては実にこんなものである。このガリガリズムも含めてまさにこれである。初心者がこの彫刻をじっくり眺めて、ゴーレムか半タイタンへ選択を移すことを望んでやまない。





「イメージ補完になった」

 *bandファンでも原作も映画も未見だった人々が意外に目立ち楽しい。
 補完されると共に、いろいろと疑問が出たであろうが、とりあえずFAQを読み通しておくことを薦める。
 FAQ1
 FAQ2
 他はともあれ、米大統領が指輪をはめている画像を見つけて嬉々として貼るような行為だけは避けられたい。あれはウンザリである。

 さて無意味ながらも無意義ではない、*bandキャラとしてのイメージ化の話が出るのは当然の成り行きであるが、参考として、MERPのレベルではFotR当時はこうである:


ガンダルフ 40
アラゴルン 27
ボロミア 20
レゴラス 8
ギムリ 8
フロド 3
サム 2
メリー 2
ピピン 2

サルマン 50
バルログ 35


 サウロンやナズグルは指輪をはめた最大能力時と映画当時(冒頭含め)とでは別物なので度外視する(なお最大時はアングマールの魔王が60, サウロンが350である;これでは参考にならない)。
 先日紹介したD&D3eでのファン作成データも、レベルの力関係バランスはこのMERPと似たような順列(ガンダルフ16, アラゴルン10, ボロミア8, レゴラス4等)になっており、このあたりが海外ファンの解釈の落ち着くところらしい。
 映画から入った人々の目から見ると、レゴラスのレベルが低いのがまず目立つところであろうが、RPGでは弓矢が強いのでレベル以上の強さを発揮するのと、早い話が原作のレゴラスはいくらなんでも映画ほど強くはない。

 さて*bandだが、あえて@レベルで換算すると、ガンダルフはムアルもしくは[Z]系の無印バルログと同等か若干上なので、メイジだとすると「30後半〜40lv前後」という予想が以前から過去スレッドでも出たことがある。また映画のユニークオークとアラゴルン、ボロミアの対比から考えると、彼らも上のMERPのレベルとそうそう大差ない値と考えて差し支えはないだろう。しかし映画色をつけて、レゴラスとギムリはアラゴルンに近い値に強化して位置づけるのが今風ではある。





廃墟アドベソ

 こんにち、TRPGで「モンスターを倒してレベルを上げる」ゲーム自体、D&Dあたりしか見当たらなくなったかもしれない。そして特に3edに至るや、それはAD&D 1st, 2ndよりもさらに徹底している;入る経験値はイベントでも財宝ですらもなく、もっぱらモンスターからであり(イベント経験値は慣れないマスターは使うなとさえ書いてある)ひたすら能力のシステマチックな構造のために割かれたデザイナーらの労力の痕跡は呆気に取られるほどである。
 かつてCRPG黎明期、日本ではウィザードリィやザナドゥのような戦闘ゲームが主流を占め、シナリオ重視ゲームどころかシナリオという概念すら一部にしか存在しなかった当時、雑誌などでTRPG自体を形容する目的で「元祖D&Dは戦闘ゲームではなく、物語を重視したゲームであることに特徴がある」といったフレーズが用いられたことがあった。しかし、3edに至っては最早使用できるものではあるまい。シナリオ重視(下手をするとシナリオしかない)の現在の日本のCRPGとの彼我の立場は逆転した。

 ではD&Dが「レベル最強厨」のゲームかといえば、おそらく多くの人々が古いCPRGや現在のMMORPGから予想している意味でのその様相、

 「『狩場』に行って自分より弱いモンスターばかり倒していればレベルが上がり『何も考えなくても無敵になれる』年功序列」

 とは少々勝手が異なると思われる。
 ルール自体と多くの公式シナリオ等で示唆されているD&Dプレイの様相は、モンスターを倒すにも、レベルを上げるにも、まして高レベルキャラクターが無敵(生き延びる)を維持し続けることにさえも、プレイヤーとキャラクターの全身全霊が要求される。数値が上がれば上がるほど、数値以外の面を補うことが要求される──あたかも、日本の史上の剣聖のように。
 自分もテレポートが使えるレベルになったキャラクターは即座に、沈黙化透明化した暗殺者が背後に突如テレポート転送されてヴォーパルヒットを叩き込んできても対処できるよう、普段から自分の頭で考え、対処手段を見つけ、実行し、そういう輩を避けられるよう周囲の環境(自然的、社会的等)を自分で常に整えていなくてはならない。それを怠れば(怠らなくてもたまたま不運なら)即死である。
 「勇者キャンペーン」やCRPGのように、「数値以外はマスターが考えてくれる(もしくは誰も考えない)」とか「プレイヤーキャラは救済措置で死なないようにしてくれる」などという勇者特権など誰ひとりとして持っていない;あるいは持っていても何の状況も変わらない(パラディンとか)。

 上のリンクは、8bitパソコン・ファミコンにCRPG化もされたAD&D 1stの名作公式モジュール、Ruins of Adventure(CRPG版のタイトルは『輝きの池(プール・オブ・レイディアンス)』である)の3e版リプレイである。
 読んでも実感が沸かないような気がするので言い添えておくが、いとも簡単簡潔に頻出する「殴られ、倒れた」「引き裂かれた」とかいうのは、実際にTRPGでプレイヤーが操っているキャラクターが死んでいるのである。
 もっとも、*bandプレイヤーに限れば、普段通りの殺伐世界に見えるだけかもしれないが。





@の移動速度は?

 「1分あたり7マス(70フィート)→時速1.28kmという計算になり、あまりにも遅すぎる」という話。
 さて、洋物のゲームが1マスを10フィートとするのはD&Dから受け継ぐ由緒正しき伝統、といいたいところだが、D&Dの方はAD&D 2nd以降1マスは5フィートになっている。それはともかくとして、クラシカルD&Dでは、通常の移動時の速度は10分あたり120フィートであり、この*bandのスピードの6倍近くの”遅さ”である。さらに、重装備して実際はこの半分あたりの速度に落ちているくらいは当たり前である。
 これについては、危険な地下迷宮、および魑魅魍魎あふれるFT世界の屋外の探索というものは、「(探索モードでなくとも)ただ動いているのではなく、常に周囲に気を配り、危険を避け、装備を直したりしながら移動している」、また「戦闘の前後にも休んだり応急手当を行ったり武器をあるていど手入れしたりする時間を含んでいる」と明記されている。(なお、純粋に移動だけ行う戦闘移動・疾走時には現実的な値になる。)我々が単なる「移動」と思っているものからは想像もつかないほどの緊張感と慎重さが、彼らの普段送る時間には存在するのである。
 明らかに大半のD&D系世界以上の過酷さ凄惨さと、常に向かい合わせ背中合わせの*band世界においてならば、さもありなん、と納得するか、それでも納得できないかは各位の感想次第である。通常時と戦闘時に区別がない伝統のRoguelikeでは探索移動も戦闘移動も「平均化」された結果の数値が1.28km/hである、といっても、逃亡時に疾走できないのは納得できないかもしれない。





ビオラインリードの予感

 なんだこの怪しい空間に引き込むようなコピペは。何にせよ、丁度面白い機会だからD&D系における幽体(レイスフォーム、イセリアリネス)について触れるが、それが*bandにそのまま当てはまるという説を別に支持するわけではないし、霊界類を「アストラル」で表現している他RPG(シャドゥランとかガープスとか)をはじめ他定義の説明の責は負いかねるので注意。
 「イセリアルプレーン=エーテルのプレーンじゃそれ実存世界のことだろ」云々はこのD&D用語をそれと知らず目にしたライトFT設定ファンの反応のもはや定番であるが、これは別に当たらずとも遠からずでD&Dシリーズの幽界(エーテリアル・プレーン)は主物質界と完全に重なる形で存在しているいわゆる主物質界の別の相(フェイズ)である(なお、フェイズ・スパイダーやフェイズ・ドアの呪文はこのフェイズを切り替えることでショートテレポートを行う)。エーテルのうち物質の形で存在していたり振動数が低い(境界部分やエクトプラズム)部分が主物質界に顔を出し、残りの膨大な部分が隠れているのが幽界である(主物質界自体が幽界のてっぺんのような考え方もできる)。
 人間が幽界に入ると、というより幽体化するとその部分に身を置くのだが(大抵装備も一緒に幽体化する)幽界は主物質界とそのまま同じ光景が靄がかった(実際はその物質の背後にある凝縮〜非物質エーテル部分)景色になり、逆に幽鬼などの非物質エーテルの生物は幽界に主に存在するので「ゴゴゴゴゴゴゴゴ」とはっきり見えてくる。D&Dのこれら幽界に関して全般、指輪をはめたフロドがナズグルの世界に入る描写がモチーフだというのがもっぱらの噂である。
 ひらたく言ってしまえば、幽界は「精神世界」とは根本的に別物であり、レイスのような幽体のアンデッドは物質のかわりに非物質エーテルの肉体を持っているだけの代物であって「精神生命体」ではない。そもD&D系ではクリーチャーは物質・非物質エーテルにアストラルやイデア(=アンバー)までぎっしりと何重もの要素が積み重なった存在と言え、「物質世界」「精神世界(アストラルサイド)」の二極に分離といった短絡的な理解はできない。
 さて*bandの話だが、もし仮に、幽体化(Zangband原語ではWraithform)や幽霊(Spectre)がD&D系におけるレイスやスペクター同様であればエーテリアルボーダー(幽界と主物質界の境界)に浮上して幽体(装備含め)でありながらも実体と相互に影響すると考えることができる。さらに、「幽体化」の方は壁に入ってもダメージを受けず、また他のダメージ自体も極度に受けづらいのは、こちらが望めばよりディープエーテル(実体部分から離れた深い相)に入ることができるので、物質部分の影響から離れると見ることができる。
 なお疑問が出たらあとはなんかめんどいから2月に和訳が出るらしいD&D 3edのManual of the Planes(原書)を参照されたい(結局新刊紹介コーナーだった)。





これはリビングストンのサインだろうか(031226)

 ひょっとしてその模写の元は、これとそっくりではなかろうか。

 ttp://multi.nadenade.com/shinichi/img/030421_04.jpg

 (リンクフリーサイトだが、そこからの間接画像なので一応直リンクは避ける。)

 であれば、その『トカゲ王の島』は、あの「1987年4月26日」の一冊であるに違いない。ジャクソンとリビングストンの二人が来日し、ついでに三省堂書店がサイン会を実施したのだが、その様は一般週刊誌にまで取り上げられたほどのフィーバーであった。日本のゲームブック界の栄光の頂点の、駆け抜けた夢の残滓の一冊である。





「キモイ」

 アシモフの銀河帝国のごとく、時間をかけつつも確実に崩壊しつつあるとの溜まり場より。
 瓶詰妖精からプリメモのフィーリアに魔法少女アイまでなんでも飛び出すこのスレッドだが、東鳩のお約束ネタに対する反応はこの通り身も蓋もない。Roguelikeにおいて、萌系はむしろ許容する一部層もあるが、葉鍵系とか──さらに概説すれば、萌系でも一種明確なカルト、と言うところか──に対しては、実に2chのローグスレッドが第1スレッドの頃から、しばしば鋭い拒否反応が見え隠れする。名有りが個々に口にする機会はむしろ多いにも関わらず、むしろRL一般からは隔離される傾向にあるのかもしれない。あるいは孤立したコミュニティであっても、需要があれば葉鍵的RLの類が再び立ち上がることはあるか──もうしばらく傍観してみる。





コール オブ クトゥルフ d20 日本語版

 雑記といいつつただの新刊案内コーナーになっているような気がするが気づかなかったことにする。ともあれ、d20システムになったとか、なのにSANチェックはなぜかd100のままだとか、改訂に伴う山積みの言及事項はさておき、重要なのは、[Z]ではかつての旧版『クトゥルフの呼び声』TRPGのルールブックに書かれていた生物の大半がモンスター化されていたほど*bandとこのゲームルールに関わりが深かったこと、そして旧版の日本語版が絶版である以上、相当物は今回出るこれの他をおいて無い、という事である。
 Roguelikeにクトゥルフ神話の生物が出てきても、特にラヴクラフト以外は原典まで辿るのが困難であることも多く(原典が未訳であることも、それどころか原書自体入手困難なこともある)原典が手元にあってさえ、その中から全体像を掴むのはかなりの手間がかかる。ラヴクラフト全集からルルイエ語をひとつ見つけるごとに嬉々としているような段階では果てしなく道は遠いであろう。
 その点、このTRPGルールブックは要は*bandの直接の「引用元」であり、また原作そのものでなく単に「どんなものか知りたい」だけならば、簡潔で的確な説明とデータに挿画と、まさしく一目瞭然である。また個人的には、神話関係のデータだけではなく、探索に伴うぎっしりと詰まった雑学的な基礎知識も見逃せない。
 もっとも「新版」に関しては、いずれの意味においてもどの程度役に立つかは(上の山積みの問題もあり)多分に未知数を残す。実際にどの程度役に立つかは実際に眺めてから改めて触れるかもしれない。





「d20では上級ワイアームの方がアザトース(本体)より遥かに...」

 昨今、原作物ヒロイックファンタジー等をはじめとして様々な世界観が次々とシステム化されているd20システムだが、細部にあえて関わらず単純にCR(チャレンジ・レート。同じレベルの4人パーティーで倒せると言われる値)だけ比較するとこうなっている。
 なお、一応、D&D 3eの基本ルールは20が上限である。つまり、ロストまで行った仲間全員を全快で蘇らせたり、ワイアームに変身したり時間を止めたりといったレベルが、20である。

オーケス 28
デモゴルゴン 30
ティアマット 32    ※初期データでは25
アスモデウス 32    ※初期データでは29
クトゥルフ 34
ミカエル 35
ノーデンス 38
破壊スルむかで 39
フィンゴルフィン 41
グラッズト 42
ナイアルラトホテップ 45
エルミンスター 45   ※初期データでは39
アザトース 50
破壊スルかぶとむし 50
ヤハエル 53      ※天使になってるがメタトロンと同一とかいう、つまり、アレ
ヘカトンケイレス 57
フォース・ワイアーム 59
スカーファング・ドラゴン 60
ブライトガスト・ドラゴン 65
プリズマティック・ワイアーム 66

 とりあえず、「地球の神なんかより宇宙レベルのクトゥルフとの戦いこそ『最強の燃え』」とかうそぶく向きは、いっぺんその燃える血をかぶとむしに干からびるほど吸われてくることを強くお勧めする。そして話はそれからである;なにしろストームブリンガーを持ったエルリックはそのかぶとむしを1体あたり0.8撃(期待値)で倒し、おまけに上のワイアームらのCR値は実は非ユニークの値でクラスレベルを持ったりする奴は80や90や100(ry





Legend of the Five Rings

 少し前には、大きな書店に行くと'the Book of Five Rings'とかいう題名の洋書が何種類か平積みにして置いてあり、指輪ファンはこのringsという言葉に電撃のように反応し、すわ指輪ブームに便乗して「失われた《五つの指輪》という力の指輪」関連書とか何かか、一瞬〜三瞬ばかり考えてしまうらしいが、このFive Ringsとは要するに仏法の「五輪」である。つまり、何のことはないあの「五輪書」の英訳や関連書であり、別の方のブーム(宮本武蔵)の便乗書である。

 上のリンクはAD&D 1stのOriental Adventureルールのセッティング世界「ロクガン」に関連するもので、現在ではd20system(基本的にはD&D 3edだが、他会社担当のサプリメントのようなもの)である。「五輪」という言葉のこういう使われ方にふと考え込んでしまいそうになるが、一応気にはしないでおく。
 TCGの「大雪ひとみ」「大道寺あかぎ」といった名を冠する屈強な漢たちに絶句する向きもあるだろうが、これでも1st当時の世界観に比べれば段違いにリアル側に近づいているのである。





iアプリ版ファイティングファンタジー

 創土社の『ソーサリー』復刊に『グレイルクエスト(14逝けシリーズ)』復刊予定、大手・扶桑社の『火吹山の魔法使い』『バルサスの要塞』の復刊予定など、復活の兆し相次ぎながらもFTブーム便乗状態にあって予断を許さぬゲームブック界である。
 そんな中、このiアプリの提供版は、『火吹山』『バルサス』『地獄の館』は定番だが、ゲームブック全盛期から含めても本邦初訳の『火吹山ふたたび』『ザゴールの伝説』が目を引く。膨大な未訳の中でも、このイアン・リビングストンのザゴールシリーズ2編(50巻目と54巻目という飛びすぎた番号)が選ばれたのは、『火吹山』との繋がりで大河RPGのような「シリーズ物」の如き印象を与えることを狙ったのかもしれない。しかし、これらの原書はゲームシステムが『火吹山』と比して独自の面も大きく、どう電源ゲームに移植するのか興味深い面があるといえばある。

 しかし、iアプリ版自体への風聞一報は非常に幸先が悪いものである。





シャムタンティの丘を越えて

 *band系の日記で、「火吹山の魔法使いはよく聞くけど、こっちは有名なんだろうか」という疑問を見かけた。シャムタンティ〜は原題に合わせた改訳題で、旧訳では『ソーサリー1 魔法使いの丘』である(もっとも、それでも検索して大量に出てくるとは思えないが)。この「ソーサリー」という名前、──火吹山を「教科書」として読んだゲームブックファンにとって、ソーサリー4部作は「聖書」と呼んでも過言ではない。

 これほどの作品をかいつまんで説明することはとても不可能だが、スタンダードの極致である火吹山などの一連の作を、難易度、冒険規模、システムの面ですべて「上級」に拡大したものと考えてよい。
 火吹山にはじまる多数のFF(ファイティングファンタジー)ゲームブックの主要作者、ジャクソンとリビングストンの二人のうち、ジャクソンはシステムやアイディア重視、リビングストンは歌い語るようなストーリー重視と言われる。ジャクソンの方の手による「ソーサリー」は、アイディアの奔流また奔流で、危機を潜り謎を潜り下水道を潜り、野を越え山を越え肥溜めに落ち、今では陳腐になりきった上に形容に値する作品も少なくなった「大冒険」という言葉がこれほど合致する作品も少ない。
 一応断ると、大作であるにも関わらず大河作品RPGやエピックファンタジーのように壮大な設定や背景が大上段に振りかぶって前面に出てくることは決してなく、プレイヤーは一方的に次々と出される困難をただ無我夢中にかいくぐり続けるうち、無意識に背景世界に潜む莫大な設定をその背後に伺うことになる。(もっとも、ソーサリーの背景のカクハバード地方は、火吹山などのアランシアとは離れた土地で、関連性はあまりない。)

 なお、今の版でもプレイヤーの職種に「戦士が初級ゲーム、魔法使いが上級ゲーム」と書かれているかはわからないが、戦士は魔法使いよりもプレイヤーが覚えることは少ないが(その魔法使いが「覚えること」は現代のプレイヤーならば呆気に取られること請け合いである)、戦士は柔軟性が低い分、クリアするのはかなり困難なルートを見つけ出す必要があり、難易度は高い。まるで*bandの[V]の戦士である。





トールキン世界のD&D 3e解釈

 アルダ世界との関連が色々と取りざたされるD&Dシリーズの世界だが、トールキン作品をデータ化した「公式な」データというものはメーカーの方からはないらしい(考察の記事ならば何度か見かけられるが)。このサイトはファンの考察のもとに作っているものである。
 指輪関連はもちろんのこと、ある作品や描写をデータ化、キャラクターメークする際の解釈として非常に参考になる。

 唯一ではなく、何人かによる異なる解釈を載せているのが面白い。
 キャラクターの解釈データで言えば、このうちJeff Black氏のものがデータ化されている人数が多く、マルチクラスや本来NPC用のクラスを混ぜることなどで、なるほどと頷けるような細かい再現を行なっている。
 一方で、Andrew Domino氏のものはシングルクラスをメインにしてあえて非常に「スタンダードな」データを作っている。

 中でも面白いのが、非常に低いレベル(ガンダルフが5レベル、ナズグルが普通の「レイス」など)で再現する解釈である。トールキン世界とその登場人物の「威厳」(作内のみならず、現実のFTにおいても)に対しては皆非常に高レベルに考えてしまいがちで、その解釈も有りだとは思うのだが、一方こちらの低いレベルのデータは、トールキン世界が同時に持つ「ストイック」な側の面を強調した解釈といえるかもしれない。地味さ、また一人一人が世界の動きに対して大きすぎる力を持たない点など、頷ける面が多い。もしくは、単発のCRPGなどのような箱庭的世界のノリというのも良いかもしれない。





・ネヴァーウィンター・ナイツ(NWN) 日本語版はセガより

 知る人ぞ知る、D&D 3edのPC版のひとつシナリオクリエータ(ネットプレイ機能有)プラットホームである。
 (もろもろの環境が落ち着いて手を出せるようになるのが随分と遅れた。)
 3Dフィールドのシナリオを作成し、ネットでTRPGのごとくDM/プレイヤーに分かれての他、シナリオを自動で動かして一人でもプレイできる。


 数年前から開発されていたこのツール自体、筆者は熱望していたわけだが、実は後で話を聞いてみると、ネットRPGが流行りだした近日において、周囲のD&Dファンらの期待は遥かにそれ以上だったらしい。D&Dファンの間での新たなる共通プラットホームとして、また3edの翻訳が動き出したD&D自体への普及を大きく前進させるものとして非常に期待されていたようである。
 結局のところは、時間が経ってみると、出来はともあれ、D&Dファン内での普及度などで言うと、当初の予想ほどには「当たり」ではなかったようである。特に、ネットRPGとしてのみ見れば、他の環境と比べれば細かい点には問題も多いらしい。
 しかし(昔からAD&DのPC版が出るたびにそうであったのだが)昔ながらのD&Dファンにとっては、こういうツールが存在するというだけで十二分な価値がある。
 実際に国内外にも、ユーザーが製作したシナリオモジュール、ツール、素材などはぼちぼちと結構な量が既に存在しており、往年のPC版AD&D(初代Pool of Radianceなど)や、中にはLotR(FotRは低レベルハーフリング4人用)から、Wiz#1、Diablo、さらには「火吹山の魔法使い」を再現したモジュールなども落ちていて涙物である。






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