(下の方が新しい)
 戦闘モジュール紹介とは別の雑感。必ずしもおすすめモジュール又は万人向けモジュールとは限らない。これからプレイするモジュールを選ぶ人への事前情報である



○Uninvited Guests (1lv- pc一人)

 これはNWN2をインストールするとOCや拡張2本+1と共に、最初から入っているモジュールであり、日本のプレイヤーは何の情報も無いので一体何なのかと思うところである。海外の攻略サイトなどを見ると、「チュートリアル的なもので、OCの前にプレイ推奨」等と書かれていたりする。
 内容は作成直後(1lvキャラ)用、時系列的にOCの前のウェストハーバーの村で、民家に侵入したクリーチャーを倒して終わり、というもので、3分もかからない。


 が、日本のプレイヤーにとってのチュートリアルという面では、OCの冒頭に(このサイトでも紹介している日本語化手順を行ったなら)完全日本語のかなり丁寧なものがあり、対してこちらのUninvited Guestsは日本語化されておらず、別にゲームの説明等もあるわけではないので、チュートリアルとして役立つかは不明である。200xpあまりとアイテムが目当てであれば悪くはない。



○Wulverheim (1lv-, pc4人まで, パーティー作成) 新vaultのDLページ

 戦闘中心(英語読解ほぼ不要)モジュール紹介の方に書いても良かったのだが、この大作をそれだけで済ませるというのも忍びないのでこちらにする。
 これは元々PW(Persistent World, 常設)用モジュールのひとつである。NWN用語のPWとは、サーバー上でモジュールを常時動かしておきMMORPGのように運用するもので、PW用のモジュールは広大な世界やイベント、多人数の繰り返しのプレイに堪えるような、時間を置いて再生する敵や宝物、その他の生活要素(素材集め等)といった特徴を有していることが多い。
 PWに用いるモジュールは運営サーバーだけに置かれていてプレイヤーがモジュールのファイルに触れる機会がないことも多いのだが、例えば公共素材(個々のサーバーでカスタマイズして使ってもよいという形態)として配布され、ダウンロードできるようになっている場合もある。さらには、PW用モジュールの中には、NWN1時代から、シングルプレイヤー(多くのCRPGと同じオフライン)でもプレイできるようになっているものがある(NWN1ではNordockやRhunが有名である)。これは、冒頭に挙げたPW用世界の特徴から、PW用モジュールはいわゆるTESのような箱庭型のオフラインRPGとしてもプレイできるものが少なくないためである。

 このWulverheimも、PW用である一方で、最初からシングルプレイも想定して作られており、上記vaultやnexusからモジュールをダウンロードし、自PCのNWN2フォルダにインストールして、他のシングル用モジュール同様にプレイできる。作者らのモジュール紹介によると、実際に箱庭RPGの近年代表作、Oblivion(TES4)に大きな影響を受けて作られたといい、シングルでプレイする場合はおおむねそれらの箱庭型RPGの様相を思わせるものになる。
 また、PW用モジュールは一般に、NWN1時代から容量が大きく重いことが多い。このWulverheimモジュールもかなり大きな容量がインストールされる。が、実際のプレイ中は、NWN2のキャンペーン形式をうまく使っているらしく、世界全体の広大さに対して、1度にロードされる容量は思ったほど重くはない(後述するマップごとの広さに相応の容量ではある)。

 シングルでプレイする場合、SoZ等と同様に、4人までのパーティーを組むことができ、どこの宿屋にもある宿帳で入れ替えができる。NPCコンパニオンも各種登場し、加えることができる(ただし、会話や固有のイベントなどは今の所無いようである)。1lvキャラから開始可能なようになっているが、おそらく数lv上から開始しても構わないと思われる。
 経験値システムの特色として、レベルにあまり依存せず、「敵に与えたダメージ」に応じた値が分配されるようになっている(誰かがダメージを与えたら、それがパーティーに分配されるので、ダメージディーラーだけ経験が入るという意味ではない)。3.XeやNWN1/2のシステムでは、ヒットダイスが高く危険や手間があるが脅威度(CR)が非常に低い(パーティーとの比較値で)敵を倒した場合、ほとんど経験が入らない、という事態にはよく陥るものだが、このモジュールでは上記の経験システムにより、レベルよりも、おおむね「手間に応じた」値が入る。賛否はあると思われるが、単純作業であっても費やした時間に応じた経験・レベルは手に入る。

 上記の戦闘システムにより、何も考えずに無限湧きする敵を倒して素材を集めたり(素材をエッセンスに変換して売り払ったり)、ダンジョンに潜ってランダム宝箱の中身を回収したりしてもいいが、各地に点在するダンジョンは、クエストを受けていないと奥に進めないというものが多く(入口付近だけで戦ったりしてもいいのだが)各ダンジョンを普通に攻略するなどで進めるならば、基本的にクエストが中心となる。
 クエストは文章量自体は結構多いが、行動する内容はいずれもかなり単純なもので、ジャーナルの文章から、「目的の地名」だけを拾っていれば問題ないことが多い。目的地での行動もダンジョンの奥まで到達してアイテムを回収するというものが大半である。これはマルチプレイでは必ずしも複雑なクエストを必要としないためだと思われる(ただし、レバーを使った仕掛けなどはダンジョンには必ずといっていいほど設けられており、おそらくマルチプレイでの協力を意識している。無論、ソロプレイでもこれらの仕掛けは問題なくクリア可能である)。戦闘システムと相まって、「戦闘中心プレイも可能なモジュール」として紹介できると冒頭に書いたのはこのためである。

 まだ情報に抜けは多いがwikiもある。スポイラーは要らないという人も多いだろうが、マップの広大さから、地図くらいはダウンロードしておくと、クエストの際の地名把握に重宝する。

 留意点を挙げると、上記のように一応シングルプレイも想定されてはいるのだが、本来は大規模マルチプレイ用だけあって、なにもかもが「だだっ広い」。例えば、道端にある旅籠が、中に入ってみるとロード・ナッシャーの城よりも広かったりするのである(これは無論、宿やロビーをマルチプレイで多人数が会話したり会合や待ち合わせに使う目的のためである)。マップのひとつひとつも広大である(そのわりに、ダンジョン内などはパーティーメンバーが扉にひっかかったりしやすい)。
 クエスト群は、メインクエストにせよギルドのクエスト群にせよ、この広大なワールドマップのあちこちを行ったり来たりしながら進めることになる。ワールドマップのショートカット(馬で移動)もあるが、BGシリーズやTESのワールドマップ、それらの移動手段ほどは便利ではない。そのため、かなり進行のテンポはゆっくりである。クエストのためのワールドマップを移動しつつ、寄り道して動物や山賊を殲滅したりしながらプレイする等、のんびりとプレイできる人はいいが、JRPGのプレイスタイルによくあるストーリーを推し進めたり早く先を見たいといったプレイにはあまり向かない。



○Path of Evil (1lv-15lv+, PC1人) 新vaultのDLページ


 これも当初は「戦闘中心モジュール」の項目として紹介する予定であったが、後述するようにそうとだけ言い切るのも問題があるのでこちらにする。
 これはオーバーランド・フリーシナリオの大規模キャンペーンで、SoZ形式のオーバーランドマップでフェイルーン全土を歩き回り、マップ上に点在する数百に及ぶイベントを自由にクリアしていく。公式を含めたNWN2のモジュールの中でも、特にボリュームの大きいものであり、新vaultやnexusmodsその他のサイトでもかなり高評価のものである。

 最初からオーバーランドやフリーというわけではなく、導入部(1-4lvほど、作者曰くthe first few hours)はしばらくシティーアドベンチャーのクエストクリアを繰り返し、その後、街を出て自由にオーバーランドマップを移動できるようになる。導入部は、主人公のクラスごとに違う流れが用意されているとのことだが、筆者も全部確認してはいない。なおOCやMotB同様、プレイヤーが作成するキャラは最初の主人公一人だけで、冒険中にコンパニオンが加入することになる。

 オーバーランドマップはSoZ形式で移動していくものだが、SoZのような屋外の敵や罠・宝などとの遭遇は設けられておらず、単なる移動用である。このあたりは、SoZのテンポの遅さに対して、余計なものは省いて、イベントはマップポイントでのダンジョン内や、街で起こる出来事に集中したと考えられる。SoZそのもののマップや、屋外でのランダム遭遇、シンボルエンカウントの敵と戦い続ける流れが好みなプレイヤーには、この点は物足りないかもしれない。
 SoZでのオーバーランドマップがサマーラック(サマラッチ)とソードコースト北の一部にすぎなかったのに対して、このPath of Evilで移動できるマップは極めて広大、というか、公式のフェイルーン地図のポスターをそのままマップ画像に使用しており、その広い領域を探索できる。もっとも、バルダーズゲート市など有名な地点の多くにはマップポイントは設けられておらず、地図上の全ての場所に入れるというわけではない。フェイルーンを再現した等ではなく、あくまで作者独自のイベントを配置するのにフェイルーンマップを使用し、またイベントの数とマップの規模が地図相応に大きいというだけである。

 イベントの多くは戦闘系であるか、単純なものが多く、物語性の高いものや謎などはあまりない。例えばSoZのマップ上に見つかるダンジョンのように、単に1〜3部屋のダンジョンがあってその中の敵を倒すも漁るも自由、というだけのものも数多くある。一方、街の類に入ると、いわゆるシティーアドベンチャーのイベントが数多く設けられている。しかし、いずれもジャーナル末尾で目的を確認すればよい程度のもので、それほど複雑な仕掛けはない。(なお後述するように、メインストーリーと深く関わるイベント以外は、途中で放置しても支障はない。というかこれも後述するが、プレイヤーキャラがヴィランならバックレても構わないと思われる。)
 冒頭に述べた導入部も、開始後しばらくシティーアドベンチャーの流れを続けることになるので、「戦闘だけしていればいい」とか「英語は必要ない」モジュールとは言い難いのだが、仕掛けや会話にそれほど労力を費やすようなこともない。
 特にシティアドベンチャーでは、ラシェメンの「ケツを蹴るためのブーツ」が店で売っているBGのミンスクネタがあったり、SoZのオープニングで言及されるヴォロとエルミンスターの「ニンフに関する本」の発売中止本をなんとか入手してくるクエストがあったりと、レルムの細かいネタも豊富である。

 マップポイント上の上記の単純なダンジョンや街中でのシティアドベンチャーのイベントは非常に数が多く、かなり多彩である(上述したように行動自体は複雑なものではないが)。ただし、マップポイントの一部は対象レベルが(技能判定で)表示されるが、また一部や街中のものは表示されないので戸惑うかもしれない。一応、オーバーランド開始直後の周辺の街のイベントは対象レベルが低めである。
 上記のイベント以外にひときわ特徴的な仕掛けとして、城塞の入り口を見つけ出し、さらにOCのクロスロードキープ同様に城塞を経営する(それがらみのクエストも多々ある)要素もある。
 一応は最初期のシティアドベンチャーで提示される、メインストーリーの流れがあるが、それ以外のマップ上のイベントが非常に多いため、メインストーリーを放置してひたすらイベントをクリアしていっても構わない。このあたりはよくある箱庭型RPGと同様である。そのため、キャラクターのレベル等がどこまで上がるかは行動次第で、作者はメインストーリー以外は最低限の行動だけで進めていくと13lvあたりになるが(現実的には15lv前後がキャラの能力的にも必要だと思われる)積極的にイベントをクリアしていけば20lv以上になると述べている。

 作者自身は、このキャンペーンではマジックアイテムがローパワーぎみであることを述べている。すなわち、(NWN2のOCでは+5武器、NWN1のHotUやNWN2のMotBでは+8武器などが当然にクラフト可能等で登場し得るのに対して)D&D3.Xeの正式なデータでは、神格や英雄も強化ボーナス+5までの装備しか持っておらず、名もなきプレイヤーキャラ(OC等のように神格級やそれを超えるアーティファクトを持つ英雄ではなく)があまりハイパワーな物品をやたらに持つのは不自然であることから、プレイヤーキャラが持つのは最終的にも+2-+3程度になるよう調整していると述べている。NWN2-OC方式のクラフトも禁止されていないが、素材も手に入り難いと述べている。
 が、+2装備が売っている店や、+3装備をドロップする敵は作者の言うほど珍しくはない。膨大なイベントをクリアしていると、終盤まではランダムドロップなどを含めて+4装備あたりまでクラフトできる素材が手に入っていることも多いと思われる。ホテナウ(ホートナウ)火山に行くまで+2であったSoZなどよりは、かなり装備は強力にできるように感じられる。


 タイトルがいかにもそうであるが、主人公やパーティーは「ヴィラン」であることが奨められている。ただし、自由度は高いので、悪人プレイ以外では決してクリアできないというわけではなく、例えば作者が新vaultに悪プレイ以外の進め方のスポイラーなども挙げていたりする。
 とはいえ、例えば『バルダーズゲート』シリーズがどんなアライメントのプレイも可能といいつつも、「悪人プレイ」の方はシステムやゲーム内容にかなり慣れていないと進行しにくいのと同様、こちらは「善人プレイ」の方に慣れや知識が必要で、あくまで基本・初回の想定は、手段を選ばない「悪又は中立キャラ」としての進め方となる。
 加わるコンパニオン達のアライメントもイービルが目立つ。イベントによっては、特定のコンパニオンが同行していないと進まない・進みにくいものもあるので、悪人は一切仲間にしないとかいうのは難しい。

 例えば、出発点のすぐ近くの街でメインストーリーに関わるイベントを進めるには、ヒント(ジャーナル、マップポイント)等は全く無しに、マップ上の民家からあるアイテムを盗み出さなくてはならない。この民家は家の扉にもアイテムが入った箱にも施錠されている。なぜここでそれを強調するかというと、例えば上記の『バルダーズゲート』シリーズでは、施錠されていないものはともかく施錠されている扉や箱を開けると衛兵に咎められたり敵対されたりする。なので、たとえD&Dゲームであっても通常プレイなら(場合によっては悪人プレイであっても)「わざわざ施錠されている扉を無闇に開ける」ようなことはしないし、そういう発想そのものが出ない。
 しかし、Path of Evilではそういうことをしないとメインストーリーが進まないことがある。何故かというと、ヴィラン推奨だからである。民家のタンスは適当に漁っても一切咎められないDQ勇者(そして、FT素養の乏しい者は、「FT世界とは・勇者とは」そうした行動が許されている世界である、合法・倫理に適っていると許容されている、などと都合のいいようにしか解釈しようとしない)とはわけが違う。ヴィランが奨められている、あらゆる悪行の余地がある、ということは、裏を返せば、あらゆる不評・人倫を外れた選択肢も含めて全て考慮しなければ、突破困難ということである(まして、善人プレイをしようと思えば前述のスポイラーのようにさらなる隙間を縫うような困難を要求される。しかも、それは不可能ではない)。かつての黎明期のCRPG(悪に走った方が進めやすかった最初期Ultimaなど)の、行動余地の広さと裏返しの難解さを思い出させる。

 自由度に関連する別の例として、メインストーリーを進めるには、上記した経営可能な「城塞」を早期に発見し、少なくとも入れるようになっておくことがシナリオ全体の前提となっている。そもそも、メインストーリーのクエストアイテムを集めるためのヒントが城塞の中にある。
 しかし、筆者の初回プレイ時には、城塞に最初に入ったのは、このクエストアイテムを全部集め終わった後だった。城塞に入るためのヒントも乏しいので、ずっと見つからなかったのである。
 しかも、この進行だと、初回に城塞に入った途端にメインストーリーの終盤イベントが発生するので、途中のイベントが大量にすっ飛ばされるようになっている。この先のメインストーリーの進行は不可能ではないが、(モジュールの全体像を知らないと)さらに困難になっている。隅々まで探索しなければならないために、というか、逆に城塞以外の場所を先に隅々まで探索してしまったからこそ、こういうことも起こる。初期海外CRPGを強く思い出させる、自由というより放任的で、しかもフォローが少ない、といった側面がある。

 そういった意味で、英語やストーリーやトリック自体は難解なものは無いにも関わらず、「難易度」は決して低いとはいえない。



○Harvest of Chaos (1lv-5lv, pc6人まで, パーティー作成) 新vaultのDLページ


 PnP版からの変換モジュールで、旧vaultでは高評価を得、モジュール内容自体は良くまとまっており、1lvの新規作成キャラ(パーティー)向きだが、初心者がそのままプレイするには色々と問題もあると思われるモジュール。詳しくは以下に述べる。


 これは元々B11:King's FestivalとB12:Queen's Harvestという二つのモジュールとして発表されていたものを、まとめてキャンペーンにしたものであるらしい。
 題名からもわかるように、この二つのモジュールは元々PnP版のモジュールをコンバートしたものであるが、B11とB12は「CD&D」のモジュールである。実は、CD&Dが「メディアワークス版」として展開されていた時代に和訳が文庫本で出ていた(『キングズ・フェスティバル 王の祭り』『クイーンズ・ハーベスト 女王の収穫』)ので、それを覚えているPnPゲーマーも多いかもしれない。
 この2本は続き物ではあるが、特に繋がりが必須というわけではなく、D&D市販モジュールにはよくあることだが、単独でも使用可能に作られている。ただし、NWN2ではせっかく続き物なので、モジュール原作者とは別作者がキャンペーンに仕上げたらしい。
 NWN2では他世界設定のPnPモジュールはFR世界に変換されていることも多いが、このキャンペーンはCD&Dのミスタラ世界設定のままで作られており、広域移動マップ等でも一部の人には懐かしいカラメイコス大公国の地名を見ることができる。
 モジュール2本分をあわせて5−6時間、ゆっくりやればもう少しかかるという短編〜中編キャンペーンである。

 左下のボタンに追加されているパーティー作成メニューから、いつでも6人までのパーティーを作成することができる。また、作中で最序盤から各基本クラスのコンパニオンを雇える(3人までらしい)。なぜかウィザードのコンパニオンとして、NWN界の身代わりシンシアことエイミー・ファーンが混ざっている。どうやら無事にミスタラ世界に転生したらしい。
 4〜6人のパーティーを想定されているようだが、つまり、この人数の範囲内で、自作キャラとコンパニオンで自由にパーティーを編成すればいいわけである。


 前半のB11にあたるKings Festivalは、何となく都市舞台っぽい題名とは裏腹に、お祭りの要である僧侶が郊外のオークの洞窟にさらわれたのでダンジョンアタックをするというものである。別ページで紹介したKeep on Borderlands同様の低lv用ダンジョンアタックである。
 B12のQueen's Harvestに移ると(B11が終わった時にダイアログが出るのでわかる)、うって変わって、テキストも多くなり、乗っ取りお家騒動というバックストーリーも入ってくる。また、D&Dの公式モジュールに多く見られる傾向(そして、NWN1/2のOCなどではあまりない傾向)だが、底意地の悪い罠の仕掛けなどがしばしば入ってくる。攻略するダンジョンも複数となる。もっとも、やることは結局のところ順番にダンジョン攻略で、特に展開に詰まるような部分はない。


 以上のように、コンバートシナリオとしては手堅く作ってあるが、前述のように幾つか懸念があり、いずれも「戦闘難易度」に関するものである。
 まず、B11からB12に入ると、急に難易度が高くなる。上述の仕掛けや長さ等の問題でなく、単純に「高レベル想定」と思われる節がある。例えば、B11を1lvキャラとコンパニオン3人で開始すると、非常にいい感じの難易度で、3lvあたりまで進む。しかし、その3lvキャラを用いて引き続き進めていくと困難な状況に遭遇するようになってくる。
 この融合キャンペーンの対象レベルが1-5lv(vault紹介ページより)になっていることからも、あるいは、元々B11から独立して作られていたB12は、5lvなど、もっと高いレベルのキャラで開始することを想定していたのではないかとも考えられるのだが、元々のPnP版の時点で続き物だけにそうも言いきれない。
 また、システム上の留意点として、このキャンペーンは「休息制限」(一定の場所や、一度休むと「リアル時間での」ブランクを置かないと再び休息できない)が設定されている。休息制限は、NWN1の時代からPnP版に近くなるということで好意的なプレイヤーもいれば、単にうっとうしいだけだと言って敬遠するプレイヤーもおり、昔から好みは分かれている。
 (このモジュールでは、しょっぱなから休息できない上に「夜間しか開いていない武具屋」などというものに対面して途方に暮れるかもしれない。作中コンパニオンはすでに装備等を準備しているが、自作キャラをインポートしてパーティーを組む場合、ある程度は他モジュールで装備を整えたり呪文を記憶したりしておくべきかもしれない。)
 また、休息制限とあわせて、死亡制限(OCのように戦闘後に自動復活せず、hp-10以下で死亡する)が導入されている。これは公式でもSoZではすでに導入されていたものだが、NWN1時代にはよりPnPに近いルールとして、休息制限とあわせてHard Core Rulesと呼ばれていた。これらのルールが相まって、前半に比べて、後半に急速に状況が厳しくなるようになっている。


 付属のreadmeファイルには、NWN2の設定の難易度スライダーをeasy等にすると休息制限や死亡制限が緩和されたり、kf_campaign_options.2daファイルを編集することで細かい設定変更が可能な旨が説明されている。あるいは、ある程度NWN2のシステムに慣れたプレイヤーが、適宜このあたりを調整しながらプレイするのに向いているのかもしれない。



○Black Scourge of Candle Cove (10lv+, pc5人まで, パーティー作成) 新vaultのDLページ


 新VaultやNexusで好評価で、フォーラムの類でも幾らか話題のスレッドがあるキャンペーン。
 Vaultの紹介ページなどでは、Sandbox、フリーシナリオ、多量のテキスト、SoZのシステムを使用、などと紹介されているため、大規模なオープンワールドのような印象を受ける可能性があるが、実際はそれほど大規模ではなく、隅々まで回ってもおそらく数時間の短編〜中編である。
 一本道のメインクエスト(海賊・海洋マップ)とサブクエスト(遺跡マップ)、それに付随する幾つかのサブクエストからなっている。SoZのオーバーランドマップやパーティー作成システムを採用しているという点からもSoZのように大規模なのかと思うところだが、オーバーランドマップは前述のメインクエスト内で海上の移動に登場するもので、SoZマップ上にフリーの戦闘やイベントがある等ではない。


 シナリオ内容的にも特に大がかりな仕掛けや謎などはなく、海賊や海洋種族との激しい戦闘が主となっている。かなり流れとしてはオーソドックスだが、ただし、海上や海底を移動する際のギミックが、従来モジュールとビジュアル的に異なるものとなっており、要はそこが売りであるらしい。


 紹介ページ等では推奨の10lvよりも上や下のレベルキャラをインポートしたパーティーを編成することで難易度を調整できるとある。(登場するコンパニオンはインポートするキャラによらず10lvであり、10lvパーティーがあくまで想定であるらしい。)
 ただし、紹介ページのQ&Aでも書いてあるが、クエスト経験値が非常に少なく、戦闘報酬が主となっている。つまり、(D&D3.Xe自体の傾向であるが)インポートするキャラのレベルが高すぎると、戦闘経験が非常に目減りするということである。
 つまり、できるだけ低レベルのキャラで挑んでみて高い報酬を得ることを「挑戦」するゲームという側面があるように思われる。一見すると街周辺を舞台にしたストーリー重視のキャンペーンなのだが、実はゲーム性が高いモジュールなのかもしれない。何となく、GoldBox時代からウォーゲーム発展の流れを連綿と受け継ぐ「D&Dゲーム」ならではの特色が浮かんでくる。




○Pool of Radiance Remastered (1-3lv〜終了時10lv前後、PC1人)  新vaultのDLページ


 リメイク元の原作ゲームが戦闘・戦術中心であったため、当初は戦闘中心モジュールとして紹介する予定であったが、(こんなのばかりになっているが)考えてみるとかなり趣が異なるので、こちらで紹介することにする。
 リメイクモジュールとしては長期間にわたって手を加えられてきたもので、新vaultやnexusmodでは定番のひとつである。NWN2日本語wikiの英語モジュール紹介記事でも挙げられていた数少ないモジュールのうちひとつである(記事の頃は1章しか無かったようだが、現在は完結している)。


 これは初代PoRこと、1988年のPool of RadianceのNWN2版リメイクモジュールを謳われているものである。初代PoRについてはこのサイト全般で何度も話題にしているが、DOS時代(ただしApple][やC64でも作られ、FC版も存在した)のAD&D1stのゲーム、Gold Box EngineのCRPGの1作目である。英語圏のD&Dゲーマーには名作の位置にあるが、日本では和訳版が一部のPCやFCゲーマーに記憶されているのみの、知る人ぞ知る存在である。

 なお、毎回毎回「初代」PoRと言わなくてはならないのは、Gold Boxの連作のさらに続編の位置づけで2001年に同タイトルのWindows用ゲーム(Pool of Radiance: Ruins of Myth Drannor)が存在していたためである。これは3.0eのルールが未確定の頃に、AD&D2ndゲームの予定だったものを強引に改変して作られたもので、非常に問題が多く、現在海外では全く話題にのぼることは無い。しかし厄介なことに、よりによってこの2001年版は「和訳」されており、数少ない「日本語D&Dゲーム」のひとつになっていた。そのため、日本のゲーマーに限っては、いまだにPoRとだけいうと(Windows用なので、下手をすると初代より知名度もあるため)不用意にこの2001年版を話に出してしまい、無用な混乱を呼ぶ者が少なくない。当サイトでは(もし書き忘れた場合)単にPoRというと88年の初代のものだけを指す。


 初代PoRに話を戻すと、多数のクエストを受け、ある程度の自由度と解禁順にクリアしていくという、BGシリーズなどのD&Dゲームをはじめ洋ゲーRPG一般に見られる流れを先がけているひとつである。GoldBox Engineの特徴である、AD&D1stのターン制の緻密な再現と、非常にシビアな戦闘バランスが特色であった。
 NWN1にも再現モジュールがあり、和訳もされている。Gold BoxとはNWN1のシステム上かなり見かけなどは異なるものの、クエストをクリアして探索範囲を広げていく面白さは再現されており、定番の再現物のひとつになっていた。


 さて一方、このNWN2版のリメイクであるが、原作やNWN1版とは、かなり趣が異なるものとなっている。
 リメイク元原作ゲームやNWN1版モジュールは、前述のように戦闘や戦術中心であるが、シナリオ内容としては、後のBG1などと比べても、テキスト量やストーリー性としてはやや素っ気ないものである。順次解禁されるクエストで表示される情報に相互の繋がりはあるが、「メインクエスト」と呼ぶほどはっきりした流れではない。特にJRPGに慣れた日本のゲーマーには、初代PoRについて、「このゲームにはシナリオやストーリーは存在しない」などと言い切っている評も数多かった。
 それに対して、このNWN2版は大幅に説明や会話、ストーリー誘導などが追加され、順番や流れも変更され、ストーリーが強く前面に押し出されている。反面、前述したサブクエストなどは多くが省略され、原作の初代PoRのように自由な順番でクエストをクリアしたり屋外を自由に散策したりといった要素はほぼ無くなっている。
 すなわち、NWN1(特にSoU, HotU)やNWN2(OC, MotB)で好評だった、いわゆる「ストーリードライブ」の傾向のモジュールへと、完全に作り替えられている。いわば、NWN2の時代・形式に合うように、大幅にアレンジされているといえる。

 ストーリードライブの構築にあたっては、ゲーム版だけでなく、関連作品、例えばPnP版のモジュール(FRC1: Ruins of Adventure)、モジュールと同作者による小説版『廃墟の王』などの要素が追加されている。
 事務官のサシャ(PoRの続編のシリーズにも登場する)はストーリー自体の牽引役となっており、キーパーソンのカドルナは勿論、小説版のカドルナの知恵袋ゲンサーなども登場し、小説版とは若干違った展開の役目を果たす。

 キャラを6人(FC版は5人)全員自作するパーティー制が大きな特徴であった初代PoRに対して、このリメイクはPC一人のソロである。反面、モジュール内のコンパニオンやヘンチマンを多数引き連れるのも特徴となっている。初代PoRにもNPC兵士が戦闘画面で一緒に戦ってくれる場面がしばしばあったが、このモジュールにも操作できないNPC兵士を大量に引き連れる場面が多い。
 魔術師シャル、僧侶タール、野伏盗賊レンといった小説版の主人公らは、リメイク元の初代PoRや、前記PnP版のFRC1モジュールには存在しておらず、前述のNWN1版でもヘンチマンとしての参加にすぎず、それほどシナリオにも絡まなかった。こちらでは小説版のストーリーそのものや会話内容も取り入れられている。NWN1版のシャルはなぜかハーフオークだが(NWN1のハーフオークのポートレートにたまたま巨体の魔術師があったからというだけの理由と思われる)こちらのシャルはいかにも女主人公らしくグラフィックはOCのシャンドラの流用だが、やけに大柄である。
 シャルとレンは、2章冒頭からほぼ通じて同行するが、タールの出番がやけに少ない。あるいは主武装である『ティールの槌』が強すぎるためかもしれない。そのため、回復が足りなくなりがちで、NWN2のPC1人ソロモジュールによくある傾向だが、信仰系キャラを主人公にしてプレイするとやや楽である。

 信仰系キャラにしなくとも、戦闘などは全体的にそれほど厳しい局面はなく、そういう意味でも、原作の初代PoRやPnP版のFRC1にあった著しいシビアさの空気は希薄である。ただし、ラストは本当に手ごわい。しかも、あの小説版ラストバトルの酷すぎるオチも再現されている(このモジュールでは戦闘勝利後のイベント扱いなので、ゲームとして酷い展開になっているわけではない)。


 ストーリードライブのモジュールとして、関連作品要素の再現も含めて、細かい所まで手を入れて作られた力作ではあるが、反面、リメイクとして見ると、元の初代PoRを「再現した」ということはできず、元ゲームや前記したPnP版のFRC1モジュールのゲームそのものの空気を味わうことはできず、これらの代替になるようなモジュールではない。特に、日本のゲーマーでFC版等のプレイ経験があるが前述の小説版などの他の情報に全く触れたことがない場合、覚えているゲームと共通点が非常に少ないように感じるかもしれず、首をかしげるかもしれない。
 原作の初代PoRは、後半には街周辺の広域マップでワンダリングモンスターと戦ったり、イベントの場所をマップ上から探したりする、ちょうどNWN2で言えばSoZのような展開になっていた。そのため、本作もこうしたストーリードライブのモジュールではなく、SoZのオーバーランドマップや、せめてOCやBG Reloadedなどで採用されている広域マップを探索するような形で再現して欲しかった、という意見は、海外のプレイヤーからも一定量あるようである。
 が、NWN2の広域マップやSoZの流れそのものが賛否両論なので、そちらにした方がよかったとも一概にも言えず、本作のSoU/HotUやNWN2風のストーリードライブとして、これはこれで良いという声もある。




〇The Temple of Elemental Evil Unlocked (8-13lv, PC一人) (新vaultのDLページ


 NWN2のユーザーモジュールには前述のPoRのほか、BG1やIWDなどかつてのD&DのPCゲームを再現したものも多い。このモジュールもそのひとつとしてNWN1/2界隈ではたまに挙げられるものなのだが、実際はPoR同様、必ずしも「PCゲームのToEE」を再現したというものではない。
 ToEEは用語集などでも触れたように、PnP版においてAD&D1stの伝統的モジュール(T1-4)であるばかりでなく、派生や続編モジュールも数多く作られ、前述のようにPCゲーム版(2003)もある。このNWN2用モジュールは、(配布ページによると)PC版でなく「PnP版のT1-4をベースにNWN2にコンバート」という目的で別の作者によって作られたものを、現作者が調整した(Unlockedという題名はそのためらしい)というややこしい経緯を持つ難産の作である。

 ルールの細密な再現が売りであったPC版ToEEが、複数パーティーメンバーを自分で作成する形態であったのに対して、このモジュールは参加PCは一人であり、コンパニオン(いずれも8lv)が参加する。コンパニオンの能力(クラス等)は参加時にプレイヤーがある程度の選択肢から決められるというちょっとした仕掛けがある。PC版ToEEで参戦したホムレットの村人エルモ(PC版ToEEでは、酔っ払いの村人と見せておいてレグダー達よりもよっぽど屈強である)も登場するが、コンパニオンにはならない。世界設定は、原作PnPやPC版がWGだったのに対して(NWN2にはよくあるように)FRにコンバートされているように見えるが、各所にPnP版モジュールそのままの(WGの)アイウーズや聖カスバート等の名が出て来るなど、どうやらこなれていないと思われる点が多い。

 この現バージョンの作者はPnP版T1-4のみならず、PC版ToEEにも大きく影響を受けている、とは言っているのだが、ターン制のPC版ToEEとリアルタイムのNWN2の差異のみならず、まるごと印象の異なる点は多々ある。古典的PnP-RPGモジュール特有の自由度の高さ、別の言い方をすれば投げっぱなし的なPC版ToEE(例えば、後半のある時点から戦闘のほとんどをすっ飛ばしてクリアすることさえ可能である)に対して、ストーリー的な動機付けが多く、決まった流れもある程度ある。結果的に、ある敵群を殲滅しないと話が進行しないといった殺伐な流れとなっている部分も多い。ともあれ、ストーリーが追加されたといいつつ、PnPコンバートの例にもれずかなり戦闘のウェイトが重く、やはり話よりはNWN2システムでのH/S面を求めるプレイヤー向きである。




〇Tomoachan (4-6lv, PC1人) 新vaultのDLページ


 B2モジュールの国境の城塞をNWN1,2にコンバートした作者、Enoa4氏による、同様のPnPのC1モジュールのNWN2コンバートで、vault等ではこれもわりと好評を集めているものである。このモジュールもB2と同傾向で、導入部などにNWN1/2のいまどきのシナリオらしいストーリーやキャラを追加しつつ、本編そのものはおおむね普通にPnP版モジュールの内容を再現している。
 ただし、本モジュールはその追加されたストーリーとキャラが「ロマンス」である点が、いささかアレンジが強い点である。

 元のPnPのC1: The Hidden Shrine of Tamoachanは、当サイトでは過去に話題にしたこともあるが、AD&D1stの「古典的」作品とみなされているもので、トラップの多い古代遺跡に迷い込み、脱出するものである。設定上も、南米風の文化及びパンテオン(ケツァルコアトル等)、WG世界設定では「オルマン人」の文明と位置付けられているものの描写で重要である。(D&D5版用の再録シナリオ集のHJ和訳『大口亭奇譚』では「タモアチャンの秘密の神殿」。)
 これに対し、NWN2版のコンバートモジュールは、(レルムのルールの再現性が高いゲームシステムのためか)NWN1版その他以上に、WGやミスタラのモジュールがFR設定に変更されていることが多いが、このモジュールもWGやミスタラでなく、FRと同じ惑星トーリルに舞台が変更されている。トーリル上で南米にあたる「マズティカ」大陸のある遺跡が舞台となっているが、フェイルーン領域ではないため、厳密には「レルム」ではない、といえるかもしれない。
 なお、元のC1モジュールの題名はThe Hidden Shrine of "Ta"moachanである。本モジュールでは"To"moachanになっているのは、アレンジして綴りを変えているのかとも思えたが、ドキュメント類ではPnPのC1モジュールのことも"To"moachanと表記されているのでよくわからない。誤記や覚え違いとも思われたが、同作者の過去作のNWN1版のモジュールの方ではPnP通り、C1: The Hidden Shrine of "Ta"moachanという正しい題名になっている。あるいは、原作モジュールのWG世界などとは異なり、アレンジされた「FRでの地名」ではTomoachanという別の綴りだという設定なのかもしれない。

 PnPのC1モジュールは、「敵から逃げてきて」等の事情で遺跡に迷い込み、時間制限のある中で脱出するという導入になっている。この敵が何なのかは元モジュールでは特に決まっておらず、他モジュール(C2-3など)に依存したり、卓の事情(このモジュールを組み合わせる前後の展開など)で決めることになっている。
 が、このNWN2版では、まさしく「ロマンスイベント」に関わるえんがちょな事情が導入の動機になっている。相手はその地で出会う、ナターリアのごとくベタな南米褐色少女テンプレートで、配布サイトでもこのイベント前提のため、プレイヤーキャラが「基本種族」の「男性」であることを推奨しているが、すでに決まった相手がいるとかの脳内設定があるキャラはやめておいた方が無難である(一応、当サイトとしてはコナンやエルリックやアドルやシレンのような現地妻ヤリ逃げキャラを無難な線として推奨)。プレイヤーキャラでキャラメイク(インポート)できるのは一人で、このナターリアと、遭難したかわいそうな船長(D&Dゲームで船長が出て来ると何かこんなのが多い)と共に、遺跡に迷い込み脱出することになる。遺跡内は古典的PnPモジュール(HSとトラップ、仕掛けの比重が多い)の流れだが、ナターリアや船長との会話でラストなどの展開が変わる。
 モジュール作者は難易度を求めるプレイヤーは4lv以下としたり設定の難易度バーで調節することを勧めている。つまり、例えばPnP版ほどは難しくしていないと言っていいる。また、加入し得るコンパニオンはナターリアがクレリック、船長がファイターなので基礎戦闘能力は低くない。が、それでも、特にモジュール序盤は決して戦闘が楽ではなく、中盤以降もダメージが蓄積し休息できないことが多いため、4lvで挑戦するならば直接戦闘能力がある程度高いキャラで、治癒手段を準備しておいた方が良い。




〇Lanterna (1lv〜終了時9-10lv, PC4人まで, パーティー作成) 新vaultのDLページ


 これは同作者のChronicles of Charniaというシリーズのうち、最もまとまった長さのあるキャンペーンである。他にThe Exile, Escape from Charnといった同シリーズの単発モジュールがあるが、Lanternaが最も新しく、システム及び話にも分量がある。なお、IWD1のNWN2版と同作者でもある。

 Chronicles of Charniaは、「カルニア国物語」とでも表記すればいいのか、C.S.ルイスのナルニアシリーズを強くモチーフにしたシリーズである。例えばNWN2版ではライオンがクマーに置き換わったりしているが、意図があるというよりは、NWN2の素材に合わせたという感が強い。この背景から想像できる通り、シリーズ通してカルニア国の危機(侵攻など)に対峙してゆくストーリードライブであるが、(元が児童書でもあるためか)さほど難解な話や謎などはない。中〜長編シナリオのクライマックスにはナルニアでもおなじみの大規模戦(合戦シーンというほどではないが、数十のNPCなどのユニットが入り乱れ、シーンが何度か切り替わりながら進む)の場面がある。

 Lanternaは他の2作の単発モジュールに対して、後の時代を舞台にしたものだが、作者もコメントしているように、各モジュール間は数十年や数百年をまたいでおり(ナルニア原作も時代を前後するのと同様)主人公は同一を想定されておらず、また、必ずしも前2作を順番にプレイする必要もない。
 シリーズではこのLanternaのみが単発でないキャンペーン形式のモジュールとなっており、またパーティー制になっている。
 自由にキャラや4人までのパーティーを編成できるが、主人公(1人目のプレイヤーキャラ)にはカルニア住人としての設定が多く、また兄弟や父などの家族がストーリーに強くかかわってくる。OCやBG2と同じか、それよりやや重めに設定が付与されているといえる。人間、基本クラス、(原作の性質上)goodキャラ推奨でもある。


 なお、Chronicles of Charniaはこの作者がかなり長く作っているシリーズらしく、シリーズのシナリオの幾つかは例えばNWN1や、IceBlink(NWNの新vaultで開発されている、3.XeもどきのFRUAもどきのようなRPG作成ツールである。PC, Android, iOSなどのバージョンがある)版がある。GooglePlayなどで(IceBlinkはシナリオ単発でゲームとしてプレイすることもできる)上記シナリオが確認でき、特にLanternaはIceBlink2の新エンジンのデフォルトになっている。これらの収録状況からも、ある程度は定評があるモジュールといえる。




〇Stormchaser (1lv推奨〜終了時3lv, PC1人用) 新vaultのDLページ


 これはNWN2ではOC最初期のモジュールのひとつで、TragidorキャンペーンやPoR第1章と並んでストーリー物として当時かなりの好評を博していたものであった。NWN2日本語訳wikiでも紹介されていた数少ないモジュールのひとつである。
 ストーリードライブタイプのモジュールで、田舎で宿屋の子として育てられた1lv主人公が、王城からの使者に呼び出されて旅立つところから始まる。王が危篤でお家騒動があって、というところでだいたい主人公の背景は予想がつく話であるが、使者の騎士と共に王都に向かおうとするがすんなりゆかず船が難破(これまでも述べたがNWN1/2は難破率がジョセフ・ジョースターの飛行機並に高すぎる)冒険を経ていく。1lv開始であるとすれば、3lv程度で終わるが、後述のストーリーやアイディアが詰まっており、プレイ時間は6-8時間と意外と長く、かつ、話を引張って行くのを飽きさせないので、長さの割にスムーズに進んでいく。

 例えば、NWN2日本語wikiでは「船を動かせたりするなど工夫が光る」などが紹介されていた。船を動かせる工夫、とはどういうことかというと、少しネタばらしになるが、例えばSoZが導入された現在では、主人公のアイコンを船に変えてオーバーランドマップで船で旅することなどができるが(例えば、以前紹介したBlack Scorge of candle coveキャンペーンなどがその移動場面を採用している)OCのみの頃にはそれらは無い。当時のこのモジュールがどうしているかというと、船の形状のコンパニオンを作成し、自動選択させて移動させることで、疑似的なオーバーランドマップと、その上での操作を実現しているのである。
 他にも、OC以来一度はやってみたかった子豚たちを引き連れて村を歩き回る場面、犬を操作して証拠を追跡していく場面など、通常の冒険シナリオでは今でもそう見られない展開や、そのための工夫が山積みである。このモジュールの好評は、作者の「アイディア」、その投入や実行をことに歓迎し評価するという、NWN1/2のユーザー文化も強く反映されていると思われる。
 このアイディアに支えられるストーリー自体も、ノンストップなストーリードライブの展開で、この点はTragidorキャンペーンやPoRと並べてもスピーディーでNWN2OCを思わせる。

 ただし、プレイヤーの介入の余地のない展開、何もできないうちに味方キャラが死亡する場面、主人公の友人が突如として邪気眼(ウォーロック)に覚醒して強敵をイヤボンヌする場面など、JRPG的劇場展開がある意味これもOCに似た難も抱えている。そしてお約束だがぶっちぎれる。王都にようやく船がついたところでto be continuedとなる。当然、最も古いモジュールのひとつなので放置されている期間は長く、続編が出る見込みは少ないだろう。




〇Night Howls in Nestlehaven (9-14lv, PC1人) 新vaultのDLページ


 これはオリジナルはNWN2がOCしかない2007年7月に投稿されたものだが、当時からvaultだけでなく某掲示板のスレッドでも好評だったものである。おそらくはユーザーモジュールに飢えていた当時なので特に歓迎されたものと思われるが、当時は好評モジュールの中にも、いかにもツールセットのノウハウ不足や誘導に不親切なものなどもあるのに対して、このモジュールは今見てもそれらの不足は見当たらない。

 ストーリードライブだが、謎や仕掛けよりは戦闘中心で切り開いていく。プレイヤーキャラは9-14lv推奨で、ドキュメントには高レベルキャラをインポートすれば難易度が下がる旨が書いてあるが、コンパニオンのレベルはプレイヤーキャラ準拠ではなく、また個々のレベルがまちまちであり、14lvキャラであっても(特に後半は)それなりに激しい戦闘が続く。
 ほとんどはNestlehavenの街の中のシティアドベンチャーだが、街の勢力の抗争などから始まって、次第にサーイ国の介入や他次元界にまつわる背景が前に出て来るなど、まさしくDoDなどの公式モジュールによくある流れとなっており、いかにもFR世界(特にソードコーストのPCゲーム)らしい展開といえる。舞台となるNestlehavenの街は、ヤルタール市(ヤーター、Blackguardシリーズの舞台)やダガーフォード市(DoDの舞台)に近いソードコーストの一部と設定されている。
 ストーリードライブの流れに難解な箇所は特にないが、添付のウォークスルーのファイルもある。ウォークスルーにはモジュールの仕掛けがうまく動かない場合やその対処法がこと細かに書かれているが、現在のGOG版のCompleteで動かしている限り、特に不都合が起きた覚えはない。あるいは本体にもかなりバグの残っていたOC当時には、不都合がよく見られたのかもしれない。マップの何箇所かには、直接操作してフラグなどを訂正することのできるシステム設置物があり、要望があったのかもしれない。
 短〜中編モジュール(メインストーリーだけを追うと感覚・実時間ともにそれほど長くはかからず、4-5時間程度と思われる)ではあるが、メインストーリー以外にも、街中のサブクエスト等が多く設けられており、単発モジュールとして充実した内容になっている。

 9-14lvという、単発モジュールとしては割と高レベルの設定であり、「引退して城塞を持っているベテラン冒険者」という設定で開始するが、冒頭以外にモジュール内でその設定が生かされることは特にない。そして初期モジュールにはよくあることだがぶっちぎれる。ラストに「part2につづく」と表示される続編で使用される予定だったのかもしれない。
 その続編だが、(ここで紹介している初期モジュールにはよくあることなのだが)OC当時にこのpart1が発表されたきり音沙汰はない。何かこのあたりのエターなりかずき具合も含めて公式モジュール(ShadowguardやWitch's Wake)を思い出さないでもないが、単発完結として見ても問題は特にない。




〇The Corruption of Kiahoro (1-6lv, PC1人) 新vaultのDLページ
〇Traveller (6-10lv、PC1人) 新vaultのDLページ


 一人キャラ用の、NWN1中期の佳作ユーザーモジュールを思わせる地味な単発モジュールであるが、いずれもHoF(殿堂)入りしている。ストーリー性が高く、文章量は多いのだが、複雑な選択や仕掛けなどはないので、ジャーナルを追っていれば詰まることはなく、おそらく英語が苦手でもプレイしやすい。
 1作目はキャラバンと共に立ち寄った街が巻き込まれるトラブルを順次追っていく。2作目は色恋沙汰に巻き込まれて定住地を離れざるを得なくなり、再び別の隊商と共に旅をし、3か所ほどの土地のトラブルを解消しながら進んでいくという、これも何かNWN1のSoUの中盤を思わせる。
 一部NPCが共通しているが、継続プレイ必須ではない。2作目は冒頭でいきなり装備がなくなる(途中で戻ってくるが、多すぎるアイテムやバッグなど一部が戻らない)ので、むしろ新規キャラ推奨・継続キャラを使うには向いていないつくりのようにも見えるが、所持アイテムなどによるバランス崩壊を防ぐ中レベル以上対象物にはまたよくある仕掛けである。

 いずれも冒頭で述べたようにほぼ一本道で、かなり長いストーリー(イベントの連続)が続くので、人によってはダレるかもしれない。そう考えると、かえって連戦だけでも楽しめるシステム指向的プレイヤー向きかもしれない。
 2作目の冒頭のイベントからしてそうだが、プレイヤーは成年推奨となっており、下世話な意味だけではなく「重たい」エピソードが多い。




〇Trial and Terror (30lv, PC4人まで, パーティー作成) 新vaultのDLページ


 これはエピックレベル、特に30lv、MotB終了後のキャラクターを対象としたモジュールである。システム面(単純な戦闘や技能解除トラップ)を中心としたダンジョンアタック物である。
 他でも述べているが、NWN1/2では本編クリア後のキャラを使用といった高レベルから開始するユーザーモジュールは少な目で、特にNWN1よりもはるかにモジュール数の少ないNWN2ではエピックレベル対象、ひいてはMotB終了後や限界レベルの30lvに達したものが対象となると(30lvキャラの性能をテストするビルド試験用アリーナといったものを除けば)ほんのわずかしかない。Trial and TerrorはMotB当時(SoZやMoWがまだ無い頃)からあり、MotBクリアキャラを投入する高レベルモジュールとしてたまに話題にのぼり、新vaultでも「殿堂入り」しているものである。

 が、NWN1/2各初期モジュールに対してこれも述べてきたことではあるが、その評価に対しては、現在となってはいささか疑問符がつく。初期のPnPコンバートモジュールやマルチプレイ前提モジュールは、マップがえらくだだっ広いが、このモジュールは輪をかけて本当に無駄に広い。その広いマップを、初期NWN1-OC直後のモジュールのように、ショートカットなしでお使いで往復したりするサブクエストなどもある。PnPコンバートモジュールのように、異常に広大なマップを隅まで探索し、特に利益がなかった(わずかな宝くらいで、メインの流れに特に何も影響しない)こともある。次々と登場する敵は、特に工夫や対策などはなく、単純にヒットポイントなどの数値が高いものが順次出てくるのみである。
 30lv以上だからといって、設定やストーリーにも特に相応のスケール(例えばMotB後半の次元界をまたいで神々の権能がテーマに含まれるような)があるわけではない。その一方でこのモジュールの特記すべき点として、何がどういうわけなのか、ゲームブックFF#6『死のワナの地下迷宮』の引用・踏襲が見られる。迷宮通過・脱出というテーマがそうだが、迷宮主がサカムビット高僧で「サカムビットのうじ虫野郎!」の台詞だの、像に登って目のルビーを取る場面(D&Dではモーロック像が定番のような気がするが、このモジュールではなぜか日本の「地蔵」である)なんぞはそのまんま出てきたりもする。かといって、よきも悪きもあのFF#6のような「仕掛け」の凶悪さやこだわりはない。Trial and Terrorという題名自体が、FF#6を上回るD&D界の凶悪モジュールの雄Tomb of Horrosの語呂に引っ掛けてある可能性があるが、結局いずれの凶悪さも思い出させるところはない。
 無論のこと、上記した最初期のAD&Dモジュールやゲームブックのような凶悪・剣呑な騙し仕掛けトラップが、NWN1/2、CRPG、ひいては現在のゲーマー全般の求めるものに合っているというわけではない。しかし、NWN1/2やCRPGでも凝った仕掛けを感じさせるにはそれなりにやりようがあるところ、このモジュールはやはり単にNWN1/2初期の戦闘シナリオのような素っ気なさ・だだっ広い冗漫さの色が濃い。30lvパーティー専用の高レベル対象・強敵・高難度トラップが待ち受けるという謳いが、いずれも単純に数値・CRが高いだけ、という意味で使用されているに過ぎない結果となっている。

 何にせよ、殿堂入りは例によって、ストーリードライブのMoWをはじめ、他に数多くの良作が無かった頃であったという事情によるところも大きそうである。が、殿堂入りにせよ、現在でもVaultのTop Modulesに時々表示されている点にせよ、少なくとも多くのプレイヤーが通してプレイして評価しているだけはあって、ごく普通に遊べはする。




〇A Tragedy in Tragidor (5-7lv開始, 8lv前後終了, PC1人)  新vaultのDLページ


 OCのみの頃の最初期のモジュールで、旧vaultで好評価、新vaultで殿堂入りしている。日本語版NWN2wikiでも紹介されている数少ないモジュールのひとつである。
 ストーリードライブとダンジョンアタックが入り混じっているが、どちらかというと前者やダンジョン戦闘以外の仕掛けの目立つキャンペーンである。キャンペーン形式であるが、(SoZのない頃であるため)プレイヤーキャラはソロである。

 小さな村Tragidorを出発舞台とするが、この村自体はD&Dシリーズの公式のものである。AD&D2ndのマスタースクリーン(REF1)に付属していた、NN: Terrible Trouble at Tragidorというごく短いモジュールに登場する。ただし、このAD&Dモジュールの時点では村の名前以上の情報はほとんどなく、Hanumanなる街の隣にあるというくらいで、どのワールドかも規定されていない(マスタースクリーン付属という性質故もあり)ようである。
 実はAD&D2ndのマスタースクリーンは新和により和訳されていた非常に数少ないAD&D書物のひとつであり、この付属モジュールの部分も当然和訳され、『トラジドーアの忌まわしき出来事』と題されていた。
 このNWN2モジュールでは、内容自体は前記マスタースクリーン付属モジュールとはさほど関係ないようである。トラジドーアの村はFR世界(シルヴァリムーンの近く)に設定されている。もともとのTerrible Trouble at Tragidorという題名が(原文では)韻を踏んでいたが、このモジュールのTragedy in Tragidorも同様に韻を意識したものと思われる。

 このNWN2モジュールは新vaultで殿堂入りしており、日本語化wikiでも「プレイ推奨」と書かれ、海外の他サイトでもしばしば挙げられ推奨されている。戦闘だけでなく飽きさせないような仕掛けや別展開を巧みに配している作り、人間の村が常に脅かされる過酷な世界に然るべき物悲しさの残るストーリーが評価されていると考えられる。
 しかし、当サイトでの個人的な評価からいえば、多くのモジュールに対して述べていることだが、OCから長い間が経った現在の高評価ストーリードライブ等に比すると、OC直後の最初期に作られたモジュールであるが故の難点が多いように思われる。
 例えば、ストーリードライブ性があるが、誘導が充分とはいえない。OC含め通常のNWN1/2モジュールならば配されているようなマップポイントが無かったり、その無い場所に行く順番の示唆が欠けていたりする。
 また、これは上記の他海外サイトでもよく挙げられていることだが、戦闘バランスがかなり厳しくなっている。全体として厳しいのだが、中には難易度を下げようと思って推奨レベルより上のキャラで挑戦したとしても、根本的にどうしようもないものまである。具体的なひとつとして、洞窟に入ると膨大な量のゴブリンに襲われ、処理落ち(OC当時よりかなり後のPCやグラフィックボードを用いても)により、操作すらもままならなくなる場面がある。
 上記海外サイトの中には、このゴブリンの場面を「PCゲームで体験したありとあらゆるゲームの中で最も厳しい戦闘」とすら評している所すらある。が、実は、NWN1/2の最初期の、作者らがエディタに慣れていない頃のモジュールの数々で、多く見られる状況であったりする。敵がプレイヤーキャラに気付いて行動しはじめるタイミングの設定を適切に行っていないので、マップ上に存在する全ての敵キャラが一斉にプレイヤーキャラに向かって突進してくるのである。別の海外サイトによると、この場面のエンカウンターはD&D公式のDungeon誌に掲載された遭遇例が元になっているというが、それこそDungeon誌の遭遇をPnPゲームで運営する場合は、人間のDMがゴブリンが一度に登場・襲撃する数を状況にあわせて調整できるところ、NWN2では同様に機能するわけでもない。
 他の箇所としては、事前にそうなるという示唆もなく休息なしの連戦、しかもそれが来訪者系の難敵が続く、という場面もある。


 こうした進行上やシステム上の難点から、このサイトの独自の見解としては、このモジュールがNWN1/2やd20初心者や、例えばOCの直後にプレイする1本として推奨できるとは言い難い。
 しかし、進行困難な設定ミス(他の多くの推奨モジュールや、OCにすら所々残っている)があるわけでもなく、上記の問題点を考慮し、かつOC以後のより優れたモジュールが存在する今となっても、充分に価値のあるモジュールである、と評されていることも多い。




〇The Birthday (6lv, PC1人)  新vaultのDLページ

 MotBの頃に出た(若干古い)「殿堂入り」ストーリーモジュールのひとつで定番である。日本語化ファイルも配布されているHarp and Chrysanthemumと同じ作者である。日本のNWN1の小セッション用短編モジュールのように、長くて数十分の短編である。戦闘系モジュールで紹介したGrimm Brigade同様、NWN2初期のobsidianの童話テーマモジュールコンテスト作だった背景がある。

 実は、前記Harp日本語化ファイルを入れていると、いきなりBirthdayではなくHarpの方のイベントが始まることがある。これは、Harp日本語化ファイルではいくつかのファイル(harp jフォルダ)を「oveeride」フォルダに入れるよう指定されているのだが、おそらくBirthdayと同作者のHarpでは、イベント名として同じものを使用しているので、その結果、Birthdayでイベントを呼び出しても、overrideに入っているファイルの方が優先されるので、harp jのイベントが呼び出されてしまうのだと思われる。また、ジャーナルが空白になるなどの不具合に見舞われることもある。
 対策のひとつとしては、Harp日本語化の指示では「override」フォルダに入れるとなっているファイルharp jフォルダを、フォルダ丸ごと「Campaigns」の「Harp and Chrysanthemum」のフォルダの方に移すことで解決する。いわゆるoverrideに相当するファイルは、campaignsフォルダの該当キャンペーン名フォルダに移しても(ほとんどの場合)動作し、かつ、そのキャンペーンの実行中のみ機能する。
 Harp and Chrysanthemum以外でも、日本語化ファイルなどで「overrideに入れる」ような指示があるファイルは、キャンペーン形式のモジュールであれば、キャンペーンフォルダのそのモジュールのフォルダの方に入れておいた方がよいかもしれない。

 典型的なD&D(WG)やFR風ではなく、妖精説話や古土地信仰にありがちな苛烈なエピソードからなる。配布サイトのタグにはドラマ、パズルなどがあるが、(6lvのキャラにとっては)戦闘面も楽ではなく、とはいえ、かなり短いので、どれについても偏っているというほどではない。全体としては短いながらも「ドラマ性」が評価されている。
 しかし、ラストで急展開というか、ルートによっては唐突と感じる人がいるかもしれない。話自体の短さに加えて固定キャラではないためで、例えば小説などで短編であっても土地や主人公の背景により充分な説明があればもっと自然だったと思うところである。この作はNWN2の他、IceBlinkエンジン(現在、Google playでandroid版がプレイできるが、なぜかIceBlinkのシナリオとしてvaultには収録されていない)などでも開発されていることから考えると、どうも特定(NWN2)モジュールよりは、一般的なFTストーリーのひとつとして考えられたと思わせる部分もある。




〇Epic Campaign (30lv, PC5人まで, パーティー作成) 新vaultのDLページ

 これもTrial and Terrorと並んでエピックレベル、MotB終了後30lvのキャラクターが対象のモジュールである。NWN1の方にはpost-HotUのエピックモジュールは多数あるが、NWN2にはpost-MotBは現状、ビルドアリーナ類以外には、よく知られているのはこの2本くらいしかない。こちらは殿堂入りはしていない。
 流れはGrimm Brigadeなどとよく似ており、数本(数エリア)の、いずれもほとんど迷う箇所のないエリアを戦闘で進んでいく一本道物である。ハクスラモジュールにありがちな作りで背景はあるがストーリーの起伏などはない。MotBクリアまたは同等のレベルおよび装備のキャラを5人用いることが推奨されており、相応の数値のクリーチャーや罠などが現れる。
 30lvのキャラに対しては経験値を与えても何も意味はなく、財宝やアイテムでもlv相応以上に強力なものを振舞ってもあまり意味はないので、それらを目標に進めていく動機には乏しいといえる。となると、引っ張ってゆくようなストーリーもないのでは意欲をかき立てるには厳しい。そういった意味では、NWN1のエピックモジュール等に比べると盛り上がらない作である。こういった状況自体が、NWN2では、30lvオーバーのモジュールがほぼ作られておらず、MotB後のキャラの活躍場といってもPvPシミュレートのアリーナか、PWサーバーのエンドコンテンツくらいしかないという理由でもあると思われる。
 一方で、このモジュールは造りが単純なぶん無駄に広いマップを引き回される等のだれる要素もなく、あまりストレスなく何となく進行してゆける。通常プレイに支障のある不具合なども特にないので、30lvになったキャラの、特にビルドPvPアリーナ類ではほとんど把握できないPvMのパーティー能力の腕試しになら試してみてもよいかもしれない。




〇Ravenloft: Dreamscape (10-12lv, PC1人) 新vaultの配布ページ

 これはレイブンロフト世界設定のおなじみ最初のI6モジュールと、結合モジュールであるI10: Ravenloft II: The House on Gryphon Hillモジュールを元にしたNWN2モジュールである。
 AD&DのI10モジュールは、'Ravenloft II'とは題されているものの、I6モジュールの直接の続編ではなく、別の館が舞台となる一見全く別のモジュールだが、単独でプレイする他、I6モジュールと「連動」してプレイすることのできる仕掛けがある。I6モジュールで登場した、プレイヤーが占い師(ミンスクのアメコミにも登場したマダム・エヴァ)の所で引くカードによって展開が変わるアイディアに引き続いて、プロットやアイテム、NPCが変化する仕掛けがあり、I6同様、モジュールの評価はかなり高い。
 I10は原案はI6と同様にトレイシーとローラ・ヒックマンだが、執筆はドラゴンランスも含めてモジュール側の執筆者だったジェフ・グラブや、当時の多くのモジュールを手がけたゼブ・クックが行っている。

 このNWN2モジュールは旧vaultで殿堂入りしているもので、NWN2では拡張1(MotB)のみが出た頃の初期のモジュールである。NWN1の再現モジュールやゲームブックのようなI6のみの再現に対して、こちらはI6とI10の結合という要素の再現を試みている。レイヴンロフト世界設定そのものが「ストラード伯の悪夢の世界」であるという設定を利用し、夢の中ということで、2舞台がスイッチする(I10のグリフォン丘館のある部屋に入ると、I6のレイヴンロフト城の方のある部屋に飛ぶ、といったスイッチが繰り返される)形で表現されている。それほど複雑ではない上、ウォークスルーのファイルも共に配布されているので詰まることはない。NWN1モジュールの紹介で述べたように、I6そのものは、古式然とした広域探索モジュールを再現しようとするとレイヴンロフト城が広すぎるので冗長になるが、このモジュールでは例えばI6の舞台の一部がスイッチで飛ばされて呼び出される結果ダイジェストのようにコンパクトにまとまっており、合計で半日ほどの中短編になっている。
 難があるとすれば、特に誘導なくマップを隅々まで探索して鍵などのアイテムを見つけ、鍵のおかげで次の場所に行けるようになる、という、古式の探索モジュールのような進み方が所々にあり、完全なストーリードライブ等に比べると面倒に感じる部分もある。ただし、これは原作のPnPモジュール自体の古い形態や、NWN2としても初期である理由も大きいと思われる。また、新vaultのコメントにあるように、敵が強めのバランスにもなっているので、レイヴンロフトモジュールのお約束のアンデッドやevilに強いビルドのキャラを持ち込んだ方がよい。







フレーム表示


トップページに戻る
(フレーム解除)