PnPコンバートモジュール


 当然予想できる話だが、NWN1/2には、D&DシリーズのPnP公式の既存のモジュール(市販シナリオ)をコンバートしたモジュール(WG, FR, DL, ミスタラ, レイブンロフト等)が非常に多数ある。このサイトでも他記事で数多く取り上げているし、翻訳モジュールリストやNWN1モジュールレビューの類でも多々見られる。
 コンバートされるようなものは、多くが元モジュールが良作、そうでないとしても少なくとも完成品なのだから、一定以上の品質は確保されている、と誰しも思うところである。

 しかしながら、CRPGのモジュール化の時にも全く同じことを言っているのだが、筆者に言わせれば、これらが品質面では一定レベル以上とは限らない。アイディアがあってもNWN1/2のモジュールとしてまとめられるかどうかは、モジュール作者自身のツールセットのエディットに依存することは、オリジナルでも既存PnPモジュールでも変わらない。モジュール内容のコンバートがうまくいかないとどういうことになるかといえば、バランス(特にD&Dの版の違いや、PnPとCRPGの違い、例えば戦闘頻度やリアルタイムとターンなど)の感覚を見誤ったり、モジュール作成技術自体が足りずに表現できなかったり、場合によっては、プレイヤーの方が元ネタのPnPモジュールを知らずにNWN版をプレイすると完全に意味不明になっていたりする(これらはPnPモジュールに限らず、他ゲームのNWN化などについてさらに頻繁に起こる)。ましてD&Dのモジュールというのは、往々にしてストーリーやら物語のテーマやらアイディアやらが素晴らしい出来とやらではないことが多い。無論下を見ればきりがないであろうが(vaultの4000ものNWN1モジュールの中には「モジュール作者の二日酔いの起き抜けの悪夢を強制的に見せられるような代物」も多数含まれていることはよくNWN1サイトではネタにされていた)少なくとも、PnPコンバートという理由だけで一定以上の質が確保されているという根拠にはならない。
 かつてのセガ版の頃のNWN1の日記サイトで、「英語版モジュールの紹介」と称して、決まってPnP原作モジュールを選んで多人数マルチプレイをレビューしていたが、毎回ことごとくハズレモジュールばかり引いていた、というサイトを覚えているNWN1ゲーマーも多いと思われる。

 しかし、ハズレではなく、ある程度の出来でソロプレイに堪えるようなNWN1/2モジュールであれば、D&D公式モジュールがおおまかにどのような内容(厳密に当てにはならないにせよ)であったか、PnPの実プレイよりは手軽に触れることができるので、有用性は高いと思われる。一方、PnPの方のD&Dの内容には特にこだわりがないという場合は、PnPコンバートという要素には(NWN1/2モジュールとしてそれ自体が良作という評価がある場合以外は)特に選ぶことにメリットはない。

 以下はそれらを踏まえて、いわゆるハズレを引かないための足しになる情報の羅列で、必ずしも良作をピックアップした情報とは限らない。



〇日本語版モジュール、Archiveで落とせるもの


・カスタナミアの失われた島

 AD&D1stのC3: The Lost Island of Castanamirのコンバートモジュールである。遺跡探索アドベンチャーとなると仕掛けなどが面倒なのではないかと躊躇するところだが、少なくともこのNWN1版はそれほどではなく、思ったよりあっさり味でプレイしやすい。
 実はこのモジュールのPnP原作は、C1(
ナターリア無双)やC2(『ゴーストタワーの魂の石』)モジュールとの続きものでもあるが、特にC1-C3各編を独立してプレイするのに支障はない。C2にはPnP版の他に上記Super Endless Questゲームブック版をじかにNWN1にコンバートしたモジュールもあったりする。



・Spires of Ravenloft

 以前も雑記類で述べたことがあるが、AD&D1stのI6: Ravenloftモジュールが元である。5版のコアルールにも名前が出てくるD&D定番悪役、ストラード伯を打倒する最初のモジュールである(有名悪役には1st当時にはただの単発シナリオのボスキャラだった者も多い)。
 Ravenloftセッティングにはアンデッド等を強化する凶悪な特殊ルールがあるが、I6の時点ではまだRavenloftが単独のワールドセッティングだったわけではなく、また、このNWN1版も、わりと厳しいハクスラではあるものの、そういった特殊な仕掛け等はない。同様にI6をテーマとした、かなりいまいちな出来のSuper Endless Questゲームブック版(富士見邦訳では『暗黒城の領主』)のように正攻法ではバッドエンドにしかならないおかしな展開があったりもせず(このゲームブックのせいで、NWN1版の初プレイ時に妙な深読みをしたことがある)ごく普通な攻略が可能である。
 やはり基本的には多人数マルチプレイや、可能であればDMありを想定されているらしく、妙なだだっ広さと冗漫さ、一方でゴシックホラー雰囲気モジュールの割には演出のかなりのそっけなさは、そのためでもあると思われる。が、ソロでプレイするのに問題があるというほどではない。



・病魔の坑道

 セガ版の最初期にセガのウェブサイトから落とすことのできたモジュールであるが、実はこれは3.0eのPHBの巻末に載っていたアドベンチャーのコンバートであり、PnP版原作モジュールということができる。
 ただし、このNWN1版は妙にだだっ広かったりラスボスが異様に再生力があったりと、かなり多人数パーティーでのマルチプレイ、特にDMがいるプレイを推奨されていると思われる。ソロでのプレイは(構造上は)可能だが、おそらく向いてはいない。




〇英語モジュール


・B2: Keep on Borderlands (1-4lv開始) (新vaultのDLページ)

 B2についてはNWN2版も紹介しているが、ここでは別の作者によるNWN1版である。BD&D-CD&Dの有名モジュールで、新和時代の赤箱用モジュールの和訳は「国境の城塞」である。
 B2は海外では非常に普及度が高いモジュールであるためか、NWN1には再現モジュールが異常なほど多く、ファンサイトで「推奨」されているB2モジュールだけでも両手に余る。なので、その中から自分で選んだりしてもよいのだが、上で上げたのは安牌の、「ひねりのないシンプルな作り」の一例である。ただし、休息制限のような追加ルールやアイテム、マップのNWN1ソロ向け簡略化などのアレンジが適度に加わっている。また、再現モジュールには、記事冒頭で述べたようにマルチプレイや要DMでないと実プレイにたえないものも多いが、上記は問題なくシングル、ソロキャラでプレイできる。



・B3: Palace of the silver princess (1-3lv開始) (新vaultのDLページ)

 B3はその名の通りB2に続くCD&Dの有名モジュールで、新和の和訳は「アリクの瞳」である。
 PnP版については、単純なダンジョンアタックのB2とはうって変わって、王宮や遺産にまつわるミステリアスな背景の仕掛けのあるモジュールだが、広いマップと戦闘が中心である傾向は同様である。戦闘と仕掛けのバランス上、B2よりこちらがゲーム入門に向いているのではないか、一方DMへの負担が大きい、といった点はオールドゲーマーの間で議論がある。
 ちなみにWikipediaのENにもJPもこのモジュールの記事があるが、分量の大半が「最初の版が重役の判断で回収・廃棄された」顛末と、それに関する憶測が延々と書き連ねられており、モジュールの内容や評価についてはろくに情報がない。クラシカルD&Dマニアは有名モジュールの内容はとっくに知っているので、それらの内容よりも、背景事情や有名デザイナーらの裏話の方が興味があるだろう、と判断したのかもしれないが、おそらくはD&Dモジュールなぞの単独Wikipedia記事を作るようなマニアは記事の情報性の充実よりそんな些末事にばかり気をとられている、と言ってしまえばそれまでである。
 NWN1版については、これも再現モジュールは多いが、上記は上のB2と同作者の、比較的シンプルなつくりのものである。ただし、B2に比べるとマップがかなり冗長な点が、PnPコンバートである点を思わせる。また、B2とB3は続き物ということになっているのだが、少なくとも同作者のこの2作は完全に独立しており、別々にプレイ可能である(同作者で2連作になっているバージョンも別に配布されている)。
 なお、archiveには「アリクの瞳」として、B3の上記とは別のモジュールが和訳されたものがあるが、これは元のモジュール自体が調整不足らしく問題が多く、あまりおすすめできない(あるいはDMのいるオンラインマルチプレイでDMが問題を解決することが前提だったとも考えられる)。



・G1: Steading of the Hill Giant Chief (G1は8-12lv開始〜Q2終了時40lv)(新vaultのDLページ

 G1から続く長大なシリーズはPnP原作でもNWN1でも定番の戦闘モジュールである。
 G1-G3: Against the Giantsは、AD&D1stでも初期(G1の単体版が1978年になる)の連作モジュールだが、例によって微妙に続けても続けなくてもいいような感で、海底や地底に進むD1-D3、さらにはかの有名なロルス女神と対峙するQ1モジュールへと続く。なお、PnPでこのシリーズが連続でパックされたリニューアル版の名はGDQ1: Queen of the Spidersとなっており、結局ロルスが中心となっている。

 これらのG1-Q1の連作は全てNWN1で再現モジュールが作られているが(G1-3にはNWN2版もあるが、おそらく別の箇所で述べる)例によって、それぞれ複数の作者による再現がある。
 今回冒頭のリンクに挙げているものは、シリーズのいずれも旧vaultでは高評価、殿堂入り(Hall of Fame)しているものであり、ファンサイトの類でもよく話題に上るものである。同作者によるQ1までの続編も上記からリンクされているが、さらに続編のQ2もある。

 が、手っ取り早く言ってしまうと、純粋にNWN1のモジュールとして見た場合、ストーリードライブの現在の良作モジュール、ひいてはSoU/HotU, NWN2などを体験したいまどきのNWNユーザーが今体験したところで、あまり納得できる出来のものではないと思われる。
 例えばG1についていえば、平坦な戦闘(ヒルジャイアント、オーガ、エティンなど)が続き、PnPコンバートにつきものの異様にだだっ広いマップ上で、シナリオクリアにあたって必須の抑えるべきポイントというのは2か所ほどしかない。
 「戦闘モジュール」にも、2010年代以降良作とされているものも数多くあるが、それらは連続戦闘を飽きさせないための工夫、例えばアイテムルートなどの特殊ルールなり、物資の管理なり、遭遇のメリハリ、これも例えれば弱敵をなぎ倒す爽快感と強敵を打倒した達成感を配置しているなど適度に配慮されているものが多い。本モジュールはPnPコンバートなのでそのままと言ってしまえばそれまでではあるが、CRPGに変換するにあたってのアレンジくらいはあってもいいはずである。
 このモジュールの好評と殿堂入りについては、NWN1でもかなり初期のモジュールであり(最初の投稿が2004年である)また、NWN1初期にはシングルプレイやPWサーバーよりも、マルチプレイ(オンラインセッション)のウェイトが大きかったといった事情も関わっている可能性がある。すなわち、マルチプレイ重視のモジュールには、内容がシンプルな割にはだだっ広く、必須でない移動箇所や探索箇所が設けられているものが多い。巷の評価にはこれらを考慮する必要もあるかもしれない。



・H4: The Throne of Bloodstone (15-30lv)(新vaultのDLページ

 AD&Dには、大スケールモジュールとして前述のQ1などと並んで、対象レベルが18-「100lv以上」用で、他次元界を飛び回りオーケスやティアマットなどの著名悪役と正面から丁々発止を繰り広げるシナリオがあった、というのは必ず一度は聞いたことがあるだろう。
 OD&DやAD&D1st初期は高レベル用のルールはコアルールなどではかなり乏しく、せいぜいが10lv前後までのプレイングが中心であったと思われる節がある(特に最初期は重要NPCのレベルなども概して低い)。その一方で、システム上はlvには上限がなく、一応20lvで区切られている2nd以降と異なりエピックレベルといった区切りもない。そのため、高レベルルールがないので逆に単純に数値だけをどんどん加算することにプレイヤーもDMも負担が全くないため、超高レベルまで伸ばすプレイヤーも少なからずいたと推測できることがある。それはプレイングの風説であったり、また一例として、このようなモジュールの対象レベルであったりもする。
 PnPのAD&D1stのH1-H4(Bloodstoneシリーズ)は、H1がいきなり15lvから始まり大規模な脅威に対抗するシリーズで、流れとしては後年のRed Hand of Doom(邦訳『赤い手は滅びのしるし』)との類似点が指摘されることもあるが、H1などは、ウォーゲーム用のbattlesystemルールとの併用がむしろ売りになっていた。H4はサンプル(プレロールド)キャラに19lvと100lvのものが付属していることから、本来はH1から続ければ19lvを想定していると思われる。100lvのキャラの運用説明はあるが「ルール上さほど追加されるパワーはないし(注:上述のように初期はそうだった)パワーを与えなければいいのでかまわん」などと非常に無造作であり、おそらく現在のエピックプレイヤーの参考にはならないと思われる(この頃からCRPGのような数値だけを99lvだろうが65535lvだろうが稼いでも多元宇宙最強になるにはほど遠い、という立場が既に見えるともいえる)。なお100lvサンプルキャラはLegends and Loreから抜粋された実在伝承英雄のペルセウスやキルケなどを再編されたものだが、データ以外の説明やなぜH1以降の冒険にそんな奴らが参加しているかという説明はまったくない。
 H1-4自体は1st最末期で、内容上はその版の次元界設定の集大成のような大スケールキャンペーンのひとつといえる。なぜかH4だけがFR世界のロゴのついたモジュールになっているが(H3にはあのエド・グリーンウッドが共著に入っているにもかかわらずFRロゴがない)この時点では次元界の「転輪」はWG世界だけでなく他のワールドにも共通して使用されていたので(2ndのPlanescapeのように転輪が全ワールドに直結している、という設定があるわけではなく、単に使用区別というものがないだけである)さほど大きな意味があるわけではない。

 さて一方、このNWN1コンバートモジュールだが、無論100lvなどはサポートしておらず、普通に(HotUレベルなどの)エピック用になっており、対象の目安は15-30lvである。目安は(H1を意識してか)15lvパーティー(パーティーはオンラインマルチプレイの場合と思われる)とは書いてあるが、多分に、NWN1のプレイヤーの手持ちの高レベルキャラとして手っ取り早く、HotUクリアキャラ、28lv等も想定して作られていると思われる。
 このコンバートモジュールは、原典だと遭遇し得るデーモンやアンデッドが百だの万だのといった非常識な状況は抑えられ、このlvのNWNキャラを使ったソロモジュールとしてプレイできるよう、ごく普通に調整されている。旧vaultでは高評価、殿堂入り(Hall of Fame)しているものの、例によって、NWN1でも初期のモジュールであるためもあり、かなり大味で粗もある(進行不能となるほどではないが、細かいバグは報告されている)。しかし、次元界をまたにかけ、有名ユニークモンスターが次々と登場するエピックシナリオ、ついでに古いAD&Dの無造作な雰囲気を味わうことはできる。








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