○NWN2のユーザーモジュール


 NWN2は公式キャンペーン(本体付属のモジュールシナリオ)もNWN1以上に評価が高いが、NWN2の真価は、やはり(これもNWN1同様)ユーザーの製作したモジュールをプレイできることにある。
 NWN1の当時は日本でもモジュールが作られたり、英語のモジュールが和訳されたものも少なからず存在した。が、NWN2の方については、現在の有志日本語化は、本体が完全日本語化されているわけではなく、tlkファイル(テキスト等が外部にまとめられたファイル)を日本語化することで本体の表示やオフィシャルキャンペーンを訳している。そのため、テキストがtlkに頼らずモジュールファイル内部にあるモジュールを日本語化することは、今の所は困難である(不可能ではないが、NWN1と比べると並ならぬ手間を要する)。すなわち、ユーザーモジュールについては、現状では英語のものをそのままプレイするほかない。


 英語モジュールというと躊躇するプレイヤーが多い。しかし、だからといってユーザーコンテンツを慮外とすると、NWN2の魅力の8割が失われるも同然である。そこで、英語をあまり読まなくともプレイできるようなモジュールを挙げていく。
 例えば、テキストやストーリーは読まずに、ひたすら戦闘していればいいようなモジュールも少なくない。また、戦闘中心でなくとも、会話テキストは適当に読み流しても、会話後に「やればいいこと」はジャーナル(日記)に1文、1行程度にまとめられ、それを読めば特に困らないというモジュールも多い。
 以下「各モジュール紹介」は、戦闘中心モジュールを主に紹介しているが、これはNWN2に魅力の多くをD&D3.5eのシステム(戦闘、キャラビルド等)に見出す筆者の嗜好にもよるものである。優れた英語モジュールは他にも多い。


○概要 〜 プレイヤー数、pc数に関して

 モジュールリストの前に、NWNプレイヤーには既知の情報であるが、NWN1,2はモジュール(シナリオ)作成の他、シングルプレイもマルチプレイも可能なツールである。そのため、一言でユーザーモジュールといっても様々なプレイ形態を想定したものがある。  NWN1,2のモジュールには大きく分けて、

・シングルプレイヤー(通常のCRPG同様、オフラインプレイ)
・マルチプレイヤー(MO、MMO、オンラインセッション)

 用の2種類がある。モジュール説明の「プレイヤー数」等の項目で書かれているのは、pc(操るキャラクター)の数ではなく、こちらの人数であることが多い。またマルチプレイヤーには実際のPnP(TRPG)のごとくDM(ダンジョンマスター)を必須・推奨するものとしないものがある。そのため、配布されているモジュールも全てがシングル(ソロプレイ)で利用可能なわけではない。

 このサイトでは、通常、シングルプレイヤーを想定しており、紹介しているのは、特記がなければシングル、オフラインでのソロプレイで利用可能なモジュールである。

 さらに、NWN2ではシングルプレイ用のモジュールでも、

・pc1人(OCやMotB、NWN1同様に自キャラは一人だけ作成、作中でNPCコンパニオンを仲間にできる場合あり、NWN2ではNPCの操作も可能)
・pc複数人(SoZ、pcを最初から複数人作成してパーティーを自分で編成)

 の2種類がある。ここで「pc○人まで、パーティー作成」と書いてあるのはその区別を指す。


 NWN2では、NWN1のような「単体モジュール」形式の他に、モジュールが何編か組み合わさり、相互にある程度のデータを共有する「キャンペーン」形式のシナリオがある。上記のpc複数人のパーティー作成はキャンペーン形式でのみ可能であり、単体モジュールは原則的にpc1人用である(モジュール内でNPCコンパニオンが登場し、操作できるようになることも多いが、プレイヤーがキャラメイクしたキャラを使えるのは一人)。キャンペーン形式でもpc1人用の設定の場合も多い。
 キャンペーン形式のモジュールはpc複数人用に設定を変更したり、単体モジュールをキャンペーンに組み込んだり、hakでコンパニオンに自分がキャラメイクしたキャラをインポートしたりする手段もあるが、追々別の項目で述べていく。


○各モジュール紹介


○B2: Keep on the Borderlands (1-3lv, pc1人)新vaultのDLページ


 NWN2の日本語化wikiでも推奨されている数少ないモジュールのひとつ。CD&Dの開始冒険者用シナリオの定番、B2モジュールをNWN2に移植したものである。

 B2モジュールは、CD&Dの第二バージョン(OD&Dを第一バージョンとした数え方で、AD&D1stの低レベルキャラ入門編の位置づけであり、第三バージョンや和訳された第四〜五バージョンとは全く異なる)のためにE.G.ガイギャックスがデザインしたもので、CD&D第二の重刷以降は基本のボックスの中に含まれていたため、欧米ではこれが最初の冒険だったというプレイヤーやDMは非常に多いと思われる。以後、入門シナリオの定番となり、CD&D第三以降やAD&Dのモジュールとして売られたり、D&D3〜5版でリメイクしたり舞台を変えたり続編が作られたりもした。CoC(クトゥルフの呼び声)TRPGにおけるコービット爺さんのようなものであろう。なお、CD&D用のB2モジュール単体(CD&D第二に添付されていない別売りのもの)だけでも、発行数が100万部を超えていたらしい。
 日本のCD&D赤箱(第四バージョン)用にも『国境の城塞』として発売された。値段に対するあまりの情報量の少なさに驚く者、その少ない情報の的確さ(入門者用の誘導など)やボードウォーゲーム(現在で言う「TRPG」ではない)としての完成度の高さなど評はさまざまであるが、日本で最もよく聞く評は、(当時の海外モジュールに往々としてありがちだが)あまりにもデストローイなバランスであろう。D&D3.X〜4版では1レベルPCパーティーがコボルドの集団に対して取り返しがつかなくなることは滅多にないが、CD&D第四の時点では2レベル以上でも容易に致命的損害を受けたのである。B2には「味方と思ったら狂気に陥って襲ってくる」とかいうキャラがしばしば出てくるが、「狂気に陥っているのはこんなモジュールを作ったやつだ」という評も頻繁に聞かれたものであった(その作ったやつだが、CD&D当時、「ガイギャックス」という名前の持つ意味は、必ずしも現在のD厨の基礎知識ほどには広まっておらず、プレイヤー末端にはこの名の意味はよく知らない者も少なくなかったと思われる)。

 B2は定番であるため、他のD&Dツールでもこのモジュールが作られた例は多く、例えばAD&D1stのFRUAのモジュール(DSN)登録サイトでもB2モジュールは複数登録されている。当然ながら、NWN1の方でも再現モジュールがあるが、皆が作りたがるのか、やたらめったらと数が多く、vaultで高評価で他サイトで推奨されているものだけでも10作近くある。また、D&D3.5eには、ToEE(Temple of Elemental Evil)という、サポートが打ち切られ続編も出なかったPCゲーム(これも全く別の名作T1-4モジュールをベースとしている)があるが、ユーザーによるfixやmodが多数作られ、(元来はシナリオ作成ツールなどではなかったにも関わらず)遂には本編のT1-4とは全く別にこのB2のシナリオをまるごと再現してしまったものがあった。
 その中でもこのNWN2用モジュールは、wikipedia(en)及び(j)の 『国境の城塞』の項目からもリンクされており、再現物の定番となっているようである。


 こういったごたくはあまり意味はないかもしれない。少なくともこのNWN2モジュールは、B2モジュールを非常にシンプルに移植している(なお、移植したのはNWN1の秀作モジュールHythamの作者でENoa4氏という、NWNでは有名な作者である)。あまり身構えたりB2の知識が必要だったり、逆にB2のPnPのプレイ知識が役立ったりするような局面は無い。
 まずは最初に酒場とギルドで小クエストをこなすが、グループで挑戦することの多いPnP版と異なり、NWNでは開始時は一人なので、この過程で仲間(コンパニオン)を集めてパーティーを組むという流れである。城主から依頼があり、あとはCave of Chaos(渾沌の洞窟)と呼ばれるダンジョン群に潜り、クリーチャーと戦っていく。最終的にすべて掃討(ダンジョンのごとのボスを打倒。ジャーナルにボスごとにクリアの有無が表示される)すればよく、順番などは問わない。
 複雑なサブクエストなどは(おそらくあえて)あまり設けられていない。ダンジョン内の仕掛け・謎なども特に無い(罠や鍵はローグが技能で解除できる類)。PnPでは敵・味方双方ともいろいろな戦術(工夫)を使うことも想定されているが、特にそれらも無い。ほとんどは渾沌の洞窟内のシンプルなダンジョンアタックである。


 このモジュールは、ソロ(自分で作ったキャラ一人)で挑戦するように作られている。(NWN2はエディタに慣れたりhakを導入すると、自作キャラ複数のパーティーでプレイできたりもするが、詳しくは別の機会とし、また初回はデフォルトのソロでプレイしてみるのが良い。)そのため、前述したようにクエストで仲間(コンパニオン)を集める部分が追加されているのだが、このコンパニオン達は、(D&D系の本来のパーティーの経験値分配法ではなく)NWN2の付属公式キャンペーン(OC)同様、全員経験値が自キャラと同点に自動的に調整されるようになっている。
 モジュールは1-3lv用となっているが、1レベルキャラを作成して挑戦すると、コンパニオン達も全員1レベルとなり、以後の冒険の難易度はかなり高くなる。逆に4−5レベルなどのキャラを作成してしまうと、全員4−5レベルのパーティーとなってしまい、難易度・報酬ともに物足りないものとなる。素直に適正レベルとした方がよいが、上述した原作モジュールのデストロイバランスや洋ゲー特有の難易度から考えると、上限の3レベルのキャラで挑戦するのが良いのかもしれない。




○Legacy of White Plume Mountain (7-17+lv, pc4-6人, パーティー作成) 新vaultのDLページ

 これも有名なPnP版公式のS2モジュールを元にしているが、上のB2とは一転、元のモジュールや設定からは大幅にアレンジ・拡張が加えられた大規模キャンペーンである。


 S2: White Plume Mountainモジュールについては、元のシナリオについても、ノベライズ版についても、このサイトでは何度か話題にしている。1979年のAD&D1stの初期モジュールのひとつであり、上のB2モジュールほどではないと思われるが、ファンがよく古典的な代表作として挙げるひとつで、リメイクや続編も作られている。5版のリメイクアドベンチャー集のTales from the Yawning Portalに再録され、そのHJ訳『大口亭綺譚』の和訳版も存在する。
 3つのキーアイテム武器のうちのひとつである魔剣ブラックレイザーが、BG2に登場したり、ストームブリンガーのバリアントとしてファンタジー解説に挙げられたりするので、ブラックレイザーや、ひいてはこのシナリオ名がD&Dつながり以外でも単独で知られていることも多い。


 が、これも上のB2同様、このようなごたくはNWN2版のプレイには特に必要なく、またあまり役にも立たないと思われる。
 元のS2モジュールは、AD&D最古参であるグレイホーク世界設定なのだが、このNWN2モジュールは(NWNのシステムにあわせ)フォーゴトンレルム世界設定に移してある(特にレルムの悪役集団、ゼンタリムが、サブクエスト中に頻繁に登場する)。
 ゲーム全体としてはSoZ(NWN2の拡張2)のような広域マップで、中央にS2モジュールの舞台であるWhite Plume Mountainの山と、メインシナリオが配置されている。マップのそれ以外の随所にわたって、他のダンジョンやサブクエストが配されている。サブクエストの順番などは特になく、マップを自由に(モジュール作者いわく箱庭RPG的に)散策していき、適当にレベルや装備が整ったあたりでS2モジュールの内容であるメインシナリオの中央の山に行けばいい。なお、クエストごとに難易度(例えばEL12-16、すなわち遭遇難易度が12lvから16lvに相当、など)が表示される親切設計で、その難易度とキャラのレベルを参考に挑戦していくという流れである。プレイヤーキャラはメインキャラだけでなく合計4−6人までのキャラを自分で作成(よく知られたCRPGならWizardry, FF1, DQ3や9、D&DゲームならIWDの形式である)し、その面での自由度も高い。


 戦闘モジュールとして挙げたのは、広域マップは勿論、サブクエストのダンジョン内でも適当に戦っているだけで、特に他のことをやる必要がないためである。殆どのクエストはダンジョンの最奥まで潜ってクエストボスを倒せばいいだけで、仕掛けなどは全く無い。メインシナリオのラストダンジョンには、多少の仕掛けや元モジュールを思わせるリドルもあるが、詰まるようなものでもない。
 反面、同じ広域マップ散策型でも、クエスト連鎖ストーリーや行商などのギミック、マップ上にも数多くのイベントが配置されていたSoZに比べても、これらの仕掛けはほとんど無くシンプルである。またSoZの批判的意見によくある、SoZのドラマ性の少なさや、野外マップのインターフェイスの古臭さが合わないという人には、それ以上に向かないと思われる。SoZに比べても施設などは充実していないので(というか施設は基本的に最初の集落キャンプしかなく、マップの隅なので不便である)しじゅうラダトームに戻って中断するドラクエ1のような前時代的なプレイングを続けることになる。全体的に単調といえるほどシンプルであることは否めない。自作パーティーのビルド・成長や、NWN2のクラフトといったゲームシステム自体に楽しみを見出せるプレイヤー向きである。


 前述したように、メインシナリオはグレイホーク世界設定のS2シナリオの設定であるものの、舞台全体はフォーゴトンレルム(ハートランド)に移してあり、メイン以外のクエストの背景や設定や流れはレルムのものになっていたり、巧みにグレイホーク(標準宇宙観)とレルムが組合わせてあったりする。S2やその他のモジュール、レルムの設定を知っていると、特に面白い話なども多い。
 無論、設定を理解できなくとも、また前述したようにたいして読みさえしなくとも進行に支障はない。例えばモジュール開始時には、メインシナリオの説明としてかなり長いカンバセーションなどがあるが、中身は読まなくとも支障はなかったりする。


 また、シナリオ全般の特性として、依頼を達成したら最後に欲にとりつかれた依頼人自身が襲ってきただとか、同業者の先をこしてクエストを進めたらその同業者が本気で殺しにかかる奇襲(無論、D&D系の冒険者パーティー総力全開)してきただとか、わりと殺伐とした展開を見せるクエストが多く、半ばならず者・流浪のベテラン冒険者のイメージに向いた話かもしれない。高潔な英雄譚や心温まる物語を求める人には向かない。


 モジュールの開始レベルは7lv開始となっており、SoZ同様、主人公の他に、自分でパーティー総勢6人まで(バランス上は4人が想定されている)のパーティーメンバーを作成する(スポット参戦するNPCは何人かいる)。7lv以上のキャラをインポートしてもよいが、新規で作ると7lvとなる。
 クリアレベルの方は、一応、モジュール説明上は10lv台後半までとなっており、敵やイベントの難易度も17-18lvまでが想定されているようだが、4人でまんべんなくマップとイベントを回り、また積極的に広域マップの敵と戦っていると終わり頃には20lvをこえている(なお、レベルキャップはMotB同様の30lvである)。そうなるまでには十数〜数十時間かかるだろう。前述したように、その時間を素朴な旧態然RPGのプレイングに費やせる人向きである。


 注意すべき点は、サブイベントの類が必ずしも難易度(適正レベル)の順番に並んでいないということである。すなわち、CRPGでは、ホームタウンの近辺が難易度が低く(ドラクエで言う最初の街の近くはスライムばかりというやつである)離れるに従って高くなるのがセオリーだが、このモジュールはそのようにはなっていない。荒野の敵も同様である。ホームタウンの近くでも、とても最初の7lv前後では歯が立たないような敵が出たり、攻略困難なダンジョン(クエスト)が出てきたりする。逆に街を遥かに離れて中央の山よりもずっと向こうに低遭遇レベルのダンジョンがあったりもする。
 また、上述したようにクエストごとに難易度(EL)が表示されるが、キャラのレベルにあわせた難易度のクエストに挑戦していけばいいのかと思いきや、これも古典PnPモジュール独特のデストロイバランスと考えるべきなのか、しばしばEL表示と難易度があっていないことがある。例えば、10lv台前半対象(EL11-13)のサブクエストのはずなのに、クエストボスがパエリリオン(脅威度18-22のデヴィル)をひきつれたサイルア・ダークホープ(エドのかんがえたざんぎゃくちょうじん)に出くわしたなどという凄まじくえんがちょな展開になっていることがある。
 そのため、レベルは積極的に上げ、レベルより低めのクエストや広域敵に挑戦するようにした方が無難である。具体的には、JRPGのごとく積極的に広域で、勝てる敵を見つけたら戦っていくのが良い。SoZ同様、経験値はクエストの比重は決して大きくなく、広域マップの敵から割のいい経験値を得ることができる。


 ゲームの流れ以外で注意すべき点だが、一部のマップに不具合があり、エリアをロードした際にNWN2がクラッシュする場合がある。NWN2はエディタの複雑さから、壊れたエリアデータが生成されることがたまにあるのだが、具体的には、筆者が確認したところではホームタウンに最も近いダンジョンのひとつGnoll Quarry(ノール城塞、予備知識がなければ、いきなり開始時からひっかかりそうである)、山の南西のDeep Cavern(アンダーダーク)、北端東側のDelzoun Ruinsでゲームが止まることがあった。
 これらのマップは(自分でエディタを用いてエリアをバグフィックスするのでない限り)入らないのが無難である。サブクエストのほとんど(少なくともこれら3か所)は、触れなくともクリア(メインクエスト)に支障はない。
 NWN2では、このようにエリアデータが壊れている場合、エリアに入った際やセーブデータをロードした際にエリアのロード中にNWN2が落ちることが多い。しかし、たまにこうしたセーブデータでもロードに成功することがあるので、運悪くそこでセーブしてしまった場合などは、何度もNWN2の起動、ロードを繰り返していると読み込みに成功することがある。その後、別のエリアに移動することで復帰できる。が、基本的に前記のようなエリアには入ったりセーブしない方がよいだろう。
 このモジュールのエリアのクラッシュについてはNWNの掲示板等で報告している声もあるが、残念ながら完成後はサポートされておらず、バグフィックスは行われていないようである。

(追記):後に、モジュール作者によるものではないがvaultでパッチが配布されている。ノール要塞やアンダーダークなどの一部の壊れていたエリアは修復されているようである。また、一部のシステム部分、例えばこのモジュールでのSoZクラフトで時々起こっていた不具合など細かい要素も幾つか修復されている。




○The Halls of Advanced Training (レベルフリー, PC1人) 新vaultのDLページ


 「訓練場モジュール」のひとつ。訓練場モジュールとは、キャラのレベルを調整したりアイテムを持たせたりが自由にできるモジュールの総称である。他にも色々な機能を追加した多数の訓練場モジュールがある。


 NWN1や2のモジュールには、適正レベルやクラスが指定されているものが多いが(新規作成の1レベルキャラで開始するシナリオばかりではなく、最初から「15−20レベルのキャラでプレイ推奨」とか書いてあったりする)通常、プレイする際に、そのモジュールの指定のレベル等条件に適正のキャラを訓練場モジュールで作って投入するのが普通に行われている。
 こうしたモジュールは、日本人ゲーマーの目から見ると「チート」とかに映るのかもしれないが、NWNはそもそもPnPのD&Dの再現という性質が強い。すなわち、紙のシートに数値を記入するのと同様に、キャラデータを「記入・変更」できるようになっているのは、ごく普通のことである。別の言い方をすれば、D&Dシリーズのゲーム、その中でも特にNWN1や2は、作者やゲームそのものに挑戦するといったものではなく、「自分で楽しみ方を見つけるための自由度の高いツール」でしかない。チートな内容なぞを記入して楽しめるか否かは個人の自由かつ自己責任である。


 この訓練場は、NWN1で定番だったHalls of Trainingと同じ形態で作ってあるものである。すなわち、レベル等を調整できるNPCがいる部屋や、商人がずらりと並んでいる巨大な部屋があるアレである。NWN1のプレイヤーならば勝手知ったるというところである。NWN2のクラフト施設なども揃っている。
 腕試し用アリーナなどもある。レバーを押すと敵が出てきたり敵の強さを調整できたりする仕掛けがある。味方キャラとして待機コンパニオンにロード・ナッシャーやディーキンなどが用意されており、これらと共にアリーナの敵と戦ったりもできる等、実は単独でも割と遊べたりする。




○Vordan's Hero Creator (レベルフリー, PC1人) 新vaultのDLページ


 これも上述のHall of Advanced Training同様の訓練場(キャラ能力調整)モジュールであるが、上記がNWN1の訓練場と同じタイプという意味で定番であるのに対して、こちらはNWN2独自の訓練場として定評があるひとつである。NWN2日本語wikiの貴重なmod紹介でも、訓練場モジュールとして「その1」に挙げられているのはこちらである。

 こちらはレベルやアイテムの購入以外にも、(直接の改変ツールを使わずに)様々な改変が可能である。例えば、信仰や属性を変更できるのも当然だが、アイテムの名前や能力を変更することができる。アイテムクラフトの箇所で書いているように、本来のデフォルトのクラフトではアイテムに3種類(エピックで4種類)の能力しか付与できず、クラフト成功時に名前をつけられる程度だが、このモジュールのツールを用いると、能力をそれ以上付与することも、変更・削除することもできる。ついでに、アイテムの名前や、視覚効果(例えばフレイミング武器がいつも抜き身で燃え続けているのが何か嫌だとか)も変更できる。特に、カスタマイズのページで述べた「ランダムアイテムドロップ」を導入している場合は、こうした機能は特に有用である。例えば、ランダムドロップしたアイテムの性能を変更したり、わけのわからない名前がついていた場合に性能からわかりやすい名前に変更したりもできる。SoZや上記の戦闘中心モジュールの外部サポートモジュールとして用意しておくと便利である。




〇Grimm Brigade (1-2lv, PC一人) 新vaultのDLページ


 考えてみればひたすら戦いまくるといえばこれを外すわけにはいかないだろう。日本語NWN2wikiのmod紹介に記されている数少ないモジュールのひとつで、NWN2最初期のモジュールコンテストの優秀作である。基本情報として、HS中心モジュールで、1lvキャラを一人インポートし、直後に(LAなし種族ならば)2lvになるが、2−3時間で9-10lvほどで終了する。
 グリム童話をアレンジした世界に呼び出されて戦うことになるなど、まるで最近の十把ひとからげの携帯用ソシャゲだとか、あとあんなゲームとかそんなゲームに乱立しているような設定であるが、やることは戦いまくるだけである。一本道を進むと(ストーリーとかの比喩的な意味ではなく、ほんとにマップが一本道)童話の悪玉だとか善玉だとか特に童話の話に関係ないとかの敵がどんどん襲ってくるのを数本道くりかえす。NWN2のビジュアルと相まって、上記ソシャゲ群よりはなんとなくウンガロのスタンド攻撃を受けているような気分になる。
 敵についても特に童話にちなんだ特殊なギミックや、有効な対策などは全くない。ソロの近接キャラで、1-2gpなどで売っている回復アイテムやバフアイテムを大量に買い込み、強敵への対処といってもひたすら「ポーションがぶ飲みプレイ」だけなど、まるでNWN1の初期HSモジュールのようである。冒頭に挙げたモジュールコンテスト自体が最初期だったということもあると思われるが、これを童話風に(極度にふざけるでもなく)まとめた空気に人気が集まったのも決してわからないでもない。




〇G1-3: Against the Giants (11-13lv開始, 16lv前後終了, PC4人まで, パーティー作成)  新vaultのDLページ


 The rationale of this whole series of modules is a fight to the finish.
 この3部作シリーズ全体の要点は、死ぬまで戦うことに尽きる。

 (Gary Gygax, G3: Hall of the Fire Giant King, 1978 / 『大口亭綺譚』, 2018)



 コンバートやリメイク類の例によって、NWN2化の際にストーリードライブ等にアレンジされているのであれば非戦闘モジュール記事に追記するか独立記事にしようかと思っていたが、何のことはない戦闘モジュールのままだったので、こちらの記事に追加する。
 NWN1版について述べているように、G1-3はAD&D1st用の最古(ガイギャックスはMM1とPHBとの間にG1を執筆したので、AD&D自体よりも古いと呼ばれる場合がある)PnP版モジュールのひとつである。後の版でも何度もリメイクされており、5版のリメイクアドベンチャー集のTales from the Yawning Portal(HJ和訳では『大口亭綺譚』)に「巨人族を討て」として収録されている。G1-3は続編モジュール群(D1-D3, Q1)に続くが、この5版リメイクでは特に続きはない。NWN1/2版をこのPnPアドベンチャーの予習復習に使うもよしである。
 元のPnP版モジュールの人気を示すものとして、G3に登場しG1-3シリーズ全体のボスキャラ群でもある、炎巨人のスナール王や、ドラウの女神官エクラヴドラは、D&Dシリーズ全体の有名悪役となっている。特にスナール王は他ならぬ5版PHBの表紙であり、いまや超大型巨人ベルトルなんとか並のD&Dシリーズ全体の顔となる巨頭(巨顔)となっている(ただしPHBの表紙解説に書いてある名は「スナーリー王」で、なぜか大口亭綺譚のイラストや説明とはだいぶ違う。骸骨の兜をかぶったPHBのスナーリー王の方が、最初の1978年のG3モジュールの表紙に忠実であるが、シナリオ文中ではいずれも宝石のはまった鉄の冠である)。
 エクラヴドラは3.0eではEpic Level Handbookにデータが収録され、グレイホーク世界の強NPCの悪役代表のようになっている。ダークエルフの女ボス(声:小原乃梨子)としてのロルス神官は、FR世界にはドリッズト物でおなじみベンレ一族や、HotUのヴァルシャレスなどの顔ぶれが並ぶが、WG世界にもひけをとらない大物がいるということである。断片的だが日本語で読める概略としては3.5eのFiendish Codex I(HJ和訳『魔物の書I』のアビスのデーモンウェブの説明の箇所にもある。同じガイギャックス作の小説「悪漢ゴード」シリーズにも登場する。エクラヴドラのデータは、初出のG3モジュールではClr10/Ftr10,3.0eのELHでのデータはClr23であるが、一方、上述の5版リメイクではモンスターマニュアル標準の「ドラウのロルスの女神官」データを使うようになっており、すなわちHD13, Clr10lvで脅威度は8である。NWN1/2は3.Xeだが、このNWN2版では初出時準拠に近く、3.0eほどは強くはない。
 エクラヴドラの設定とも関連するのだが、このPnPのG3モジュール(及びNWN版)に登場するElder Elemental Eyeの寺院とは要は元素邪悪=さらに元を辿ればWG世界のタリズダンに関連する。

 さてこのNWN2版だが、(PnP版のリメイクの幾つかが3本入りで売られているのと同様)G1-3まで3本がまとめてキャンペーンになっている。冒頭のDMルームで4人までの自作キャラをインポートするか、シナリオ設定のCohort(コンパニオン)を加入してパーティーを組むことができる(計7人まで)。
 PnPやNWN1版では、「国が丘巨人に襲われているから助けてくれ」という単にそのまんまの導入であったが、NWN2版ではしばらく導入ストーリー(といってもこの冒頭部でもやることは連戦だが)や、続編も見越した状況説明(都を覆う巨大暗黒球など)が追加されている。PnPやNWN1版とは異なり、グレイホーク世界設定の背景が多数言及されている。
 特に冒頭部は、同じ作者によるNWN2用コンバートモジュール、A1-4: Scourge of the Slave Lordsの続編を意識して作られており、当初はA1-4モジュールの終了後のような背景で進む。シナリオ側のCohortも同じキャラが用意されている。無論、別キャラを用いても問題はなく、予備知識も特に必要ない。
 なお、この冒頭部は、トリガーイベント(ある領域に踏み入った際にNPCが駆け寄ってきて話しかけてくるイベント。NWN2OCやBGシリーズなどでよく不具合が発生する)が多く、また都のエリアは巨大暗黒球のせいか、ロードに時間がかかったりエリア移動で落ちることがたまにあり、安定性には若干不安がある(こまめにクイックセーブしていれば問題ない程度ではある。できるだけ店などの小さなエリアでセーブした方がよい)。

 が、この冒頭部の後、モジュールの大半は、PnPやNWN1版同様、丘・氷・炎の巨人らのそれぞれの拠点でのひたすら連戦となり、あとは全く同じである。PnPの、例えば5版リメイクでは、アドベンチャー冒頭のDM用説明に「(力押しでは)対処困難な状況も現れ、戦略的な解決策を探すことが必要で、その回答も複数用意されている」等と書かれているが、PnPほど戦略・戦術的でないNWN1/2では、単に戦う以外の選択肢は特にない。PnPの元シナリオには、プレイヤーキャラパーティーが一時退却したり休息したりすれば巨人側は罠や待ち伏せを徹底的に準備する、双方一切容赦せずに戦え等と書いてあるが、もちろんNWN1/2モジュールでは、休息等の後にそういうことが起こる仕掛けはない。単純な連戦だけについてはNWN1版とほぼ同じ内容といえる。
 ただし、NWN1版の解説では、起伏が非常に少ないのを難点として述べたが、一方、NWN2版は上述したようにパーティープレイなので、ただの戦闘にも多少中身があるといえる。すなわち、NWN1のハック&スラッシュモジュールがたいがいは戦士系推奨で、移動して斬る以外に何もやることがないので、起伏のない連戦はどうやっても非常に単調になる(このため、他のハクスラゲームのような工夫や戦闘だけでも抑揚が求められたり、先に紹介したGrimm Brigadeのような雰囲気で強引に押し切ることに成功したものが評価されたりする)。一方、NWN2(やInfinity)のパーティーは、管理する能力や行動も自然と多くなるので、若干は戦術戦略のあるPnP版寄りになっているといえる。もっとも、所詮は戦闘シナリオであり、それ以上でもそれ以下でもない。
 終了時には同作者が製作中の続編モジュールに続く旨の表示があるが、一応はこの1作でも(5版リメイク同様)完結している。







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