D&Dシリーズ旧版メモ

※過去雑記リンクは一番下
※上の方が新しい






要塞・領地獲得


 これまで当サイトでも様々な箇所で述べてきたことだが、CD&D第四バージョン(いわゆる新和版)には、当時の原始的で不十分なルールかつ薄っぺらい冊子にもかかわらず、後の大部のPnP-RPGルールにも滅多にないような、高キャラクターlvになってからの「領地・城塞の獲得・運営」に分量が割かれている。全36lvの4分の1にようやく達したネームレベル(9lv)からすでに、領主(または、たとえ放浪者であってもそれと同等の地位)につくことと、その運営を行うのがほぼ前提となっている。
 しかし、巷ではそのルールの存在自体は聞くことはあっても、ルールの詳細が語られることはまず滅多にない。CD&D経験者を名乗っていても最初期キャラクターlvの赤箱の触りしか実質は知らない者が大半、という側面は言うまでもないが、たとえ高lvのプレイングの経験者であっても、領地云々は実際には使う機会は無かった、というゲーマーもかなり多い。(現在ではまれに、ミスタラのPCゲームStrongholdやFantasy Empiresに関する情報からそのシステムの一部が垣間見えることはある。)実際には使用することはなくとも、高lvや高地位の人物とその運営が設定背景として規定されていることで、世界設定を確固たるものにしていた、とうそぶくCD&Dゲーマーもいたが、そんな主張ができるほどに詳細かつ出来がよいルールであったわけでもない。
 そんな知名度の低いCD&Dの領地ルールについて、何故ここで取り上げるのか、現在のゲーマーがいまさら知ったところで、将来このルールが何かの運用の役に立つとも到底考えられない。過去の版に存在していたD&Dシリーズの領地関連のルールを発掘するのであれば、AD&Dなど他のものを紹介した方が、明らかに情報自体の価値はある。現在となっては、他のPnP-RPGにも領地獲得・経営や大規模戦の選択肢も少なくない。
 しかし、これまでにもCD&Dについては無数に例のあることだが、何かのはずみで突然這い出してこないとも限らない。このルールに限らないが新和版の誤訳を含む珍妙な記述や設定を(新和版を「RPGの元祖で世界じゅうで主流だった」等といまだに勘違いし続けているので)RPG/FTの世界的常識と主張したり、創作に使用される等が、近年になっても目撃例がある。細切れにされたはずの過去も、石の下からミミズのように這い出てくるのである。それに対処するあるいは踊らされないためには、過去の日本の一部ゲーマーの間にはいったいどういう情報が存在していたのか、という予備知識が、ある程度必要である。
 以下は「CD&D第四バージョン(補足的に第五)」の独自のルール設定であると共に、ミスタラ世界の独自の設定でもある。


 FT/RPG世界の人物が領主になる経緯は幾つも考えられるであろうが、CD&Dでプレイヤーキャラが領主となる主要な経緯として説明されているのは、「財宝と名声を得たプレイヤーキャラが、獲得した自らの財産と武力(だけ)で要塞と領地を立ち上げ、自らその主となる」という形態である。後援者(称号を承認して貰う支配者など)は居る場合が多いが、NWN2-OCやPathfinder: Kingmakerのように既存の領地と爵位を丸ごと授かったりするのではなく、領地や地位(に相応の求心力や支配力)自体を自力で切り拓き平定しなくてはならない、遥かに独立した形態である。
 古いD&D系において、獲得した財宝と名声は「キャラクターレベル」と直結しており、新和版のCD&D第四バージョンにおいては、ネームレベル(このルールでは一律9lv)に達する、2箱目のエキスパートルール、いわゆる「青箱」以降にその記述がある。後述するように緑箱(3箱目)になると、その他にも領地を獲得する手段(委任、譲渡等)について総合的な言及があるが、青箱にこの形態だけ載っている以上、赤箱から順番に青箱まで上がってきたプレイヤーキャラについては、この形態を想定しているということである。

 まずは、「要塞(stronghold)」を建てる必要がある。要塞を建てるには相応の費用が必要で、普通に複数の部屋のあるものは25万gpが例示されている。9lvのファイターの総xpが24万、それまでに獲得したgpの総額がその8割で19.2万gpなので簡単には捻出できず、最初は外壁と宿舎くらいしか建てられず後日増築も例示されている。
 しかし、その前に、要塞の周囲の「地図上1へクス内」から怪物の類の危機を掃討しなければならない。つまり、要塞を作るとは未開地から危険を掃討した「領地」を自分で作らなくてはいけない、ということである。
 逆に言えば、CD&Dのミスタラ世界ほどに地図せましと文明諸国がひしめく高文明・マジックリッチ世界であっても、有象無象が誰でも力まかせで領地を獲得する余地のある未開地がいくらでもある、さらに言い換えれば、それほど広大な地域が未開の危険だらけだということである。などと言ってはみたものの、荒野を歩いていたら1/8〜1/4でドラゴンが降ってくるワールドを普段から旅していたゲーマーらには、格別に改めて意識しなければならないような事項ではない。

 しかし、これは(このルールを知っている者には)知られている話なのだが、CD&D第四バージョンの時点では、この「1へクス」が一辺何マイルのへクスなのか、すなわち一体「どれだけの広さの領地」(とその掃討)を要求されるのかが、青箱にも緑箱にも載っていない(青箱には縮尺が違う地図が複数載っているが、どれだかわからない)。後の第五バージョン(サイクロペディア)には、(スクエアで言えば)「8マイルx8マイル」の広さと規定されている。

 貴族や王などは通常ファイタークラスだが、ファイター以外も拠点を構えることもでき、ファイターやクレリック、デミヒューマン(ファイターに準ずる)なら「要塞」だが、マジックユーザーなら「塔」、シーフなら「隠れ家」(ギルド支部)となる。クレリック、シーフ、エルフ、ドワーフはネームレベル(9lv)に達するまでは、費用や領地が整ってもこれらの拠点を作ることはできない。
 一方、ファイターとハーフリングは費用と領地さえ整えば、9lvより以前でも要塞を構えることはできる。ただし後述するように、ファイターが城塞を建てるほど栄達し領地を平定した功績で「男爵位」を得るには9lv以上である必要がある。「城を建て『男爵となったら』腹心や領民をひきつける」とあるので、8lv以下で城や領地を建てたり入手しても、9lvに達して男爵となるまでは腹心(過去記事の忠誠心の高い軍人)や領民が集まってくることはない、と考えてよい(これはAD&Dではその旨が明記してある)。ハーフリングはそもそも第四バージョンの基本ルールでは8lvまでしか上がらないが、「(デミヒューマンは全員)要塞を建てると氏族の助けを得る」とあるため、ハーフリングの場合は要塞を建てればlvは必要ないと思われる。
 マジックユーザーのみは、第四バージョンでは(CD&DではMUも9lvがネームレベルであるにも関わらず)塔を建てるには「11lv」が必要である。これはAD&Dの方でMUのネームレベルが9lvでなく11lvであることと何か関係しているのか、さらには意図的なものなのか単なる未整理なのかは定かではない。第五バージョンでは他のクレリック等と同じ、ネームレベル(9lv)に達すれば塔を建てられると変更されている。

 なぜ人間ファイターは「要塞と領地の所有」まではネームレベル未満でも可能で、幾つかの他クラスはレベルも要求するのか、単純にファイターの場合は貴族や軍人が相続や任命でネームレベル未満で所有する事態も許容するためと考えられるが、一方で、他クラスやエルフ、ドワーフは、厳格な「組織や氏族内での立場」を強く要求され、それなりの地位や知名度(クラシカルなD&Dのレベルは称号=地位や知名度を伴う)が先に必要であると思われるのに対して、人間社会(や、あるいは類似したハーフリング社会)では、これほどまでに危険な未開地上で即戦力となる城塞や統率者がそれだけ強く求められていると考えられる。

 例えば赤箱のDMブックに載っているシナリオの舞台の廃城、ミスタメア城を、赤箱レベルのファイターが所有する(ネームレベル未満かつ建造費用を浮かせて)ことは可能か、というとおそらく可能である。しかし、「領地とそこに立つ要塞」と認められるには、一帯からクリーチャーの類を完全に掃討しなくてはならず、赤箱レベルの怪物だけではなく、ミスタメア城の裏の洞窟にはドラゴンが住んでいる可能性とかも書いてあるので結局青箱のワンダリング表の凶悪な面々との膨大な修羅場をくぐる必要があると考えられる。廃城を城塞として再生するにも、前述の「最初は金がないので外壁だけ」よりも高くつく可能性も高い。そうなると結局、青箱lvの能力と財力が必要となる。

 ファイターが要塞(と1へクスの自分で掃討獲得した領土)を持ち、かつネームレベル(9lv)に達すると、その地域の支配者から「男爵」に任命され得る。緑箱によると男爵を任命できるのは伯爵以上である。つまり、伯爵〜公爵の陪臣になることも、王ら独立君主の直属の領主になることもありえる(ネット上のFT解説類で説明されている、wikipedia(ja)の現代イギリス記事を丸写しした類の貴族制とは、ミスタラは大幅に食い違っているため注意を要する)。
 男爵よりも上位に上がるには、歴史のように政略結婚や承継などによることもできると考えられるが(緑箱には青箱と異なる領地獲得の事情についても書いてあるが、移譲されることもある程度の非常に簡単な記述しかない)、いきなり勝手に上位称号を名乗ることもできる。当然ながら、いずれの場合も他の領主の反発は免れず、後者は周囲の領主の印象がどれだけ悪化するかのルールもある。印象を損ねた国とは最悪だと当然武力衝突になり、最善でも屈強な山賊の大群を送り込んでくる。
 そういった面倒な手段よりも、ミスタラにおいて英雄冒険者兼男爵がより上位の領主に上がる現実的な手段というのは、結局「未開地などをさらに掃討して領地を広げる」ことである。2へクス持てば子爵になれる。(征服など他手段が必要な称号もあるが、未開地が形式上でも他者の領有主張があると征服になるので、結局は未開地掃討と同じ作業になる。)人間の政治屋らと怪物(1/8でドラゴンが降ってくるような圧倒的な自然の脅威)のどっちと戦うのが楽か、と問われた際に、後者の方がよっぽど楽だというような肉弾英雄たちのためのゲームだということを端的に示している。
 その他の称号や得る手段の詳細については、これも歴史や他のFTとは大幅にかけ離れている上に誤訳のためにわけのわからない代物になっているが、別の機会とする。

 領主になると(他の人々はともかく英雄冒険者の類にとって)何か得なことがあるのかといえば、自動的に勢力(以前の記事で述べた屈強無比なヘンチマン群や、その他領民や兵力)がわらわらと集まってくるほかに、いわゆる税収入が得られる。知っての通りCD&Dなどでは得られた収入のgp額がそのまま経験値として入るため、領主は領主であるというだけの理由で急激にキャラ強化速度が跳ね上がるようになる。(ただし、領主の収入で経験値に換算できるものとできないものが細かく分けられており、例えば配下の領主から入る塩税は換算できず、バランシングに苦心していることが伺える。)そのため、地位の高い領主や君主であるほどレベルが高いのはあたりまえだの、世襲の皇帝や王らは冒険などしたことがなくても寝ているだけで高lvなどと冗談なのか本気なのかわからない主張がされていることもある。
 その一方で、CD&Dでは経験値の80%は財宝、20%はクリーチャー等の危機から入るものだと随所で説明されている。そのため、クリーチャーを倒して財宝を得るのと同様に、税収を得るにはその代償として相応の危機を領主が解決する必要、早い話が領地に襲い掛かってくるクリーチャー(税収の1/4相当の経験値分)を領主自身が撃退する必要がある、という運用(採用するかはDMの裁量にもよる)についても普通に書かれている。すなわち、この場合、自分で危機を解決しなかった場合(つまり「他のFT」のような、ごく「普通」の世襲などの領主)は、特に税は経験値になったりはしない、と処理される。一方で、おそらくプレイヤーキャラ領主の場合は、領地が拡大すればするほど、莫大な富と経験値、そして際限なく凶悪さの規模が拡大する危険が休む間もなく襲い掛かってくる。





無謀戦士フィギュア


 尼損


 CD&D第四ベーシックセットの箱絵、ラリー・エルモア画『The Red Dragon』は、おそらく非D&DゲーマーにもDQ1、ドラゴンスレイヤー1の箱絵等と共通の図式としても有名であり、「ドラゴンと戦う英雄」のアーキタイプ構図ですらあるが、この無謀戦士はどういうわけか、遥かに後年のSSIのCRPG、AD&D2ndのRoguelike(一応レルムが舞台)Dungeon Hackの箱絵(日本版の木村明広のスカした絵の方ではないやつ)でも、さらに恐ろしげな化け物にまったく同じポーズと無謀さで立ち向かっていたりもする。
 後ろ姿しか見えないそんな無謀戦士は一体何者か、という旧来のCD&Dゲーマーの漠然とした疑問(無論顔が見えないプレイヤー自身という側面は抜きにして、というかおそらく描かれた意図としてはドラゴンの方を真正面に見せるためが大きい)に対して、同じエルモア画なので第四ベーシックの導入ソロアドの挿絵のファイター(明らかにこのフィギュアより遥かに若い)や、ひいては、兜以外の装備や体型の共通点から、DLのキャラモンと同一人物だと思っていた人々も周りのCD&Dゲーマーにはいた。このフィギュア無謀戦士の人形劇三国志の豪傑らの中に混ざってでもいそうな正面姿(写真によっては東洋顔にも見える)はそれらのイメージとは全然違うという人もいるかもしれないしそうでもないかもしれない。
 フォーミダブル・ファイターのFormidableという単語は「恐怖の」等と和訳されていることが多いが、おそらく「脅威的な」「破りがたい」のニュアンスが強い。体重で床をブチ破ったりするかもしれないあの女ではない。

 同社ではシリーズ化されており、この無謀戦士より先に3種類、

・AD&D1stのDMGの最初の表紙(ジェフ・イーズリーの『Abandon Hope』に差し替えられた方ではないやつ)のイフリート
・1stのFiend Folioの表紙のギスヤンキ(BG2/NWN2でおなじみシルバーソードなのに表紙では黄色い剣な点も再現されてしまっている)
・CD&D『第三』ベーシック(1981年版)の箱絵のソーサレス

 も出ている。この3者はエルモアの無謀戦士に比べると、元の絵自体が極めてゆるい感じなので、こういうレトロ玩具然としたフィギュアにはさらに合う。なぜこの3者なのかというと、AD&D1stの最初のPHBはモーロック像(D&Dシリーズ全体に出ずっぱりで他に立体化例が数多くある)、MM1は怪物というより動物群像なので立体化したいキャラともいえず、結果、DMGやFFや第三や、第四の無謀戦士が選ばれたのであろう(後日註:無謀戦士の後にモーロック像は出たらしい)。いずれも本国では20ドルそこらだが、日本の輸入版はかなり値が張る。モルデンカイネン役のミン大帝フィギュアと併用したりしてもいいかもしれない。






メテオ・スウォームの威力


 NWN1/2記事などに書いてもよいのだが他の話も多いのでとりあえず雑記に書いて後で移動させるかもしれない。
 多くのFT/RPGの隕石呪文の類が、直接または間接的にD&D系のメテオ・スウォームに由来するのは定説だが、用語集でも述べたように、D&D系の初期版においては「術者が手から火球を発射する」呪文であり、流星 meteorは単なる(ジャック・ヴァンス的ネーミングセンスによる)比喩であって、宇宙から地上に落下してくる流星・隕石とは明確に別のものである。後の版、4版や5版になると「上から降る」火球と明記され、より名前に即したイメージに近づくが、いずれも(公式含め派生作品はともかくとして、少なくともPHBの範囲では)自然現象の流星や隕石そのものと記載されているわけではない。日本製の他TRPGやアンチョコ本、時にはD&D系の書籍、サイト等の呪文の説明ですらも、宇宙や異界から自然の隕石そのものを引き寄せる「召喚呪文」とされていることがあるが、呪文のスクールがそれらしいものにかなり整理されたD&D5版に至っても、この呪文は召喚術 conjuration/summoningではなく、力術 evocation(術者本人の内的な力をエネルギーに変換する原理の呪文)の分類である。
 Meteorは本来「流星」、すなわち空に火線の引かれる現象、非常に広義では物体の地球への落下に限らず空で観測できる発光現象を指し、meteorのみでは気圏内まで落下してきた隕石(meteorite)ではなく、大気圏外から大気に触れる物体またはその発光を指す(よって、日本製のTRPGを元に日本のFT/RPG全般に広まったメテオ「ストライク」という用語は、雷鳴の「音」を指すthunderが、日本のT/CRPGでは完全に「電気をぶつける攻撃」の意で定着しているのとほぼ同様の和製横文字の範疇といえる)。OD&Dでのこの呪文の名称の発想元は、旧約聖書のヨシュア記で天罰として流星が投げ落とされたものなどの可能性もあるが、最初から聖職者呪文ではないため(後版のCRPGなどでは信仰系に入っていることがあるが、ОD&Dでの発祥時とは関係ない)判然とはしない。
 Meteorは「ミティーァ」が北米発音に近いが、「メテオ」という聞き取り・表記の例も日本では過去からかなりありふれたものであり(映画邦題など)、通例的には誤りというほどではない。D&D系でも4版までの和訳、他の日本製のTRPG、ファイナルファンタジーなどがどれも右倣えに「メテオ」の方になっていたのは、「CD&D緑箱の最初の訳に直接に由来」すると確定的であるかのように主張・流布されていることが多いが、この事情から考えると判然としない。

 なお、Forgotten Realms Wikiにメテオ・スウォームは「古代ネザリルの秘術師マヴィンが創造した」と書かれているが、この出典(AD&D2ndのNetheril: Empire of Magic)では、D&Dの根本の呪文のかなり多くがFRのネザリルで開発された、などという設定になっており、FR世界が他世界と繋がっている明記がある(そして多くの呪文がWG世界で開発されている)後の3.Xe、5版などとは全く整合が取れず、完全な没設定である(無論、FRwikiにはそんな事情は説明されていない)。
 FRwikiには改版により明らかに矛盾が生じた設定なども、あたかも現版の設定であるかのようにそのまま書いてあり、(好意的に見れば)本来が予備知識があることが大前提で書いてあるサイトだが、日本のD&Dの話題では、この手の事情を知らずに、FRwikiを鵜呑み、背景を理解せずに機械翻訳(結果として誤訳等)、丸抜粋して、掲示板やSNSで拡散されているケースが近年かなり多く、重々注意すべきである。

 meteor swarmは海外では有名なD&D小説でもほとんど使用されないなど、それほど扱いは良くないが、さらに日本のTRPG界隈、またD&Dゲーマーの間でも、「他のRPGでは強呪文だが、D&Dでは『最初の版が段違いに最強』で、版が進めば進むほど大幅に『弱体化』している」「他の版は赤箱版の数分の1以下のダメージ値までゴミ化している」などという定説が流れていることが、加えて評価・印象を大きく落としている。この点については後ほど検証する。

 そんな呪文が元々はいったいどういう性質、位置づけでデザインされたのか、デザインの意図としては果たして強かったのか、という疑問が生じる。実際に各版でどの程度の威力や性質であったか(どの程度強い呪文としてデザインされていたのか)を、対単体に与え得るダメージ期待値に留意して列記する。


〇OD&D
 オリジナルD&Dは基本ルールブック(Men and Magic, 1974)では魔法使系は呪文レベル6までしかなく、呪文レベル9のMeteor Swarmの(ルールブック収録での)初出は追加ルールのGreyhawk(1976)となる(くどいようだが、ОD&Dのこの書物は別にWGの世界設定や世界限定ルールを説明しているものではなく、WGは名前だけである)。
 「10-60ダメージの4つのFire Balls(又は半分ダメージの8つ)が術者の望むパターンで投射される」というもので、詳しい説明がまったくない。後の版のようなセービングスローを何回行い処理するかの詳細や、複数の爆発にさらされた箇所がどうなるかも不明である。ただし、Fire Ballsが原文では「斜体」であることから、同名の呪文と全く同じものを指しているのであろう(10-60は10d6であろう)と推測できる。この時点では隕石(激突ダメージなど)の要素は何もなく、強力なファイヤーボール以外の何でもない(無論、後の版でもファイヤーボールに似ているという記述自体は残っている)と思われる。おそらく火炎ダメージのみであり、全て耐性やセービングスローで半減可能と思われる。
 1対象が複数の爆発に晒され得るかは議論の分かれるところであろうが、「術者の望むパターン」というからには、後述のAD&Dや3.Xeのように4つ全ての爆発のダメージを受ける地点ができるようにすることも可能ではないかと解釈すると、あるいは、そうでないとしても単純に1呪文で連続して4つのfireballsを投射するとしても、10d6x4だとすると期待値は140ダメージ、4つ全てのセービングスローに成功すると70ダメージである。ダイス数自体は奇しくも後の5版と同じだが、fireballと同じで衝突等のダメージは一切ないので、火炎抵抗のたぐいがあるとダメージは大幅に減少または無効化する。(が、なにせOD&Dはルールが全く整理されていないため、対象が抵抗を準備できているとは限らない。)

 以下、他の版でも同様だが、OD&D、CD&DやAD&Dのセービングスローは3.Xe以降のようなDC(難易度)制ではなく(あるいは、他のTRPGによく見られる対抗ロール制などではなく)基本的に(一部選択ルールや呪文個々での特殊な規定がある場合を除き)「セーブを行う(回避する)側の成功率」しか見ないため、高レベルキャラでは成功率は異常に高い(後述するが、特にCD&Dでは自動失敗の可能性すらも無い場合がある)。DC制や対抗制のように「術者と相手がセーブ値を巡って競う」仕組みでは最初からなく「高レベルでは誰もセーブは落とさないのが大前提」である。セーブの成功率は版によっても大きく差があるものの、少なくとも、メテオ・スウォームを使用できるようなlvと同等の敵が、巷で頻繁に例示されている「全てのセーブに失敗した場合の期待値ダメージ」を受けることはほぼ無いと考えてよい。さらに高キャラクターレベルでは防御呪文や装備のためもありセービングスローは「ほとんど成功するもの」とほぼ想定、少なくとも効果の評価においては考慮すべきであり、セーブが存在する場合は、高lv域では「セーブ成功時」の値(半減後)を主に比較するのが妥当である。例えばAD&Dのアイス・ストーム(セーブ不可能で3d10、期待値16.5)とファイヤーボール(セーブ可能で10d6、成功時期待値17.5、失敗時期待値35)が、一般には「同等の威力」とデザイン・評価されているのも、こうした見地による。
 ”隕石”の使用状況としてTRPGアンチョコ本の類に決まって例示されている「建造物破壊や戦争での低lv無耐性キャラ相手の威力だった場合=セーブ失敗のダメージも評価すべきだ」と考えるかもしれないが、D&Dシリーズでの通常展開(対等近い相手との数戦)の状況を放り投げて、あまりにも特殊な状況「のみ」を想定するのは、システムでなくシナリオ展開の問題である。また建造物や低lv無耐性キャラ相手などという特殊状況であったとしても、これよりよほど有効な呪文や他の手段はいくらでもある。


〇AD&D1st、2nd
 1stのPHB(1978)にすでに書かれており、2ndでも実は内容はほぼ変わらない。10d4ダメージを与える"meteor missiles"が「術者の手」から投射され、ある地点を中心に正方形(ダイヤ状)の4辺に着弾し爆発する(または例によって半分ダメージの8弾)。「輝く光の尾を残して飛ぶ」という記載から、このビジュアル(隕石ではなく)がmeteorを指している。爆発内にいたものはセービングスローでダメージを減少できるが、このmissilesが飛翔する際の「軌道上」にいたものはセーブ不可で、減少も一切できない。
 ここで、2ndの新和版PHBの訳では「各メテオは20フィート離れて飛んでいく」とあり、一見すると飛翔の軌道同士がそれだけ離れている(これも空から降ってきているような想像を助長している)ので1体のクリーチャーは1発のメテオの軌道にしかいない(または後述するCD&Dのように直撃は着弾点でのみ1発ずつ起こる)かのようにも読めるが、これは完全に誤訳、というより訳抜けで、原語ではEach has a 30-foot diameter area of effect, and each sphere is 20 feet apart along the sides of the pattern, creating overlapping areas...であり、”着弾点同士が”20フィート離れている(ので1発あたり30フィートの爆発効果が重複する箇所の模様 the patternが形成される)の意である。「軌道」は術者の手から発しそれぞれの着弾点に向かって引かれるため、missiles同士の軌道は術者の付近では隣接する。
 つまり、敵のスクウェアの隣接近くまで肉薄した上で、できるだけ遠くを着弾点に指定して発射すると(以下「隣接撃ち」)、その敵は4又は8の全弾の軌道上となり、全弾直撃によるセービングスロー不可の40d4の全ダメージを受ける。すなわち、実はこの呪文による最大ダメージは「流星が着弾した爆発中心地」「4発の爆発範囲の重なる点」などではなく、この「隣接撃ちした術者の至近スクウェア」において発生する。現にCRPGのGold Boxシリーズなど、強敵に対してはもっぱらこのように使用するための呪文だった(*bandでも[V]でのビジュアルはこれに近いのだが、[変]などで隕石が降るように変更されている)。40d4の期待値は100ダメージである。この時点ですでに、「セーブ成功で70、火炎耐性減少可」のОD&Dに比べて「セーブ一切不可のダメージが100」は段違いに強力となっている。
 AD&DではHLCルールに3.Xe以後と同じ身かわし(セーブ可能な呪文であればダメージを全回避して無効とする)があり、かつAD&Dでも高lvでのセーブ成功率は極めて高い。つまり、「セーブ不可能」なダメージ呪文は、他の呪文と異なりそれらによるダメージ減少や回避もできないため、AD&Dにおいてはこうした特性のかつ高威力の呪文は非常に強力なものである。
 AD&D1stのみは他の呪文にもlvキャップがなく、さらに伸びたりするので、これ以上のダメージを与える呪文が決してありえないというわけではないが、例えばディレイドブラスト・ファイヤーボール(CD&Dや3.Xeとは異なり、ダメージが(1d6+1)/lvである)のセーブ成功ダメージ期待値がメテオ・スウォームを超えるのは45lvが必要となる。FRなどの高lvのワールドでも30lvルールで、AD&DのCRPGでも40lvがキャップであることを考えると、ありえなくはないが通常の想定の範囲ではないといえる。一方、2ndでは1stと異なり他の呪文のダメージにキャップがあり、さらにその多くは3.Xe等よりも低いため(3.Xeで最大20d6の呪文がAD&Dでは12d6や15d6など)相対的にさらに威力が大きい。(数値だけならもっと尋常でない値が出るものもあるが、コアの範疇ではないため省く。)


〇CD&D
 緑箱こと、第四バージョンのコンパニオンルール(1984)以後の呪文である。第三バージョンとそれ以前には緑箱そのものが存在しない。日本では赤箱シリーズを初版だと主張する者以外に「2版」だと主張する者が、この呪文を「D&Dの2版でこうなっていた」などと説明している場合があるが、BD&D第二バージョンであるHolmes版にはこの呪文は存在しないため、そのような主張はまったく成立しない。
 8d6の激突による衝撃と、8d6の爆発(火炎ダメージ)の余波を与える光弾を、これも術者の手から4つ(又は半分ダメージを8つ)作り出す。ただし、1つの流星は1体のクリーチャーしか目標とすることができない(Each meteor can be aimed at a different target within range, but only one meteor can be aimed at any one creature)ため、マジックミサイルのように4発を全て1体に当てたり、AD&Dや3.Xeの隣接撃ちのように軌道を調節して1体のクリーチャーに4つ全弾を激突させることはできない。光弾は目標に対して「激突(strike)」で8d6のダメージを与えた後に、ファイヤーボールのように爆発して広範囲に8d6の「爆発(explode)」の火炎ダメージ(セーブ、火炎耐性が有効)を与える。爆発ダメージ(火炎)の方は、1体の生物が複数の光弾の爆発の効果を受けることがある。
 つまり、激突ダメージは直接激突した目標1体しか受けることはなく、流星が4つであっても上記のように1目標には1つの流星しか激突させることはできないため、1目標は”激突”8d6ダメージ部分は最大でも流星1つ分、1回分しか受けることはない。
 この記述に則って、1目標に最大限のダメージを与えるような使用法は、「目標に1弾を衝突させ、その付近に他の3弾を着弾させれば、目標は直撃した1弾の激突ダメージと、爆発の影響については4弾全ての分を受ける」(激突8d6と火炎32d6)という使用法になる。この場合、セービングスローに全て失敗した場合は40d6分で期待値は「140」、成功した場合は24d6分で期待値は「84」(激突の8d6分は半減できず、火炎の32d6分のみ半減)である。最大が40d6になる点は、ОD&Dを踏襲したものと考えられる。
 CD&DでもОD&D、AD&D同様、セーブは行う側の能力しか参照せず、高lvでは著しく成功率が高いが、特にCD&Dでは、なんらかのstボーナスを持つ高lvキャラは1d20で1が出てすらファンブルでなく成功する。すなわち、対象がほぼセーブ全成功を想定し期待値は、実質「84」といえる。また、これも呪文説明に明記されているが、高lvでは当然準備されている火炎抵抗で火炎部分の16d6はさらに目減りする。セーブや耐性で減少・無効化される可能性がないのは、激突分の8d6=期待値28に過ぎない。

 ここで、日本のD&D及び非D&Dゲーマーともに非常に頻繁に流布されている説として、CD&Dについて激突の8d6と火炎の8d6を両方とも4発分加算して「64d6分だった」、あたかもこの呪文から1体のクリーチャーが受けるダメージの期待値が(8d6+8d6)x4x3.5=224だった、さらには、無造作に「CD&Dでは『期待値224』だった」とそのまま説明されていることが非常に多い。
 これは、単純に(A)「1体のクリーチャーには1つの流星しか向けることができない」という上記のルール記述を完全に見落とし、4発全部が1体の目標に激突し得る、と信じ込んでいるか、又は、(B)「〜激突し、爆発する(半径20'以内の全ての生物に影響を与える)」の記述を、激突部分のダメージも20'内に広がる(つまり、4つの流星の爆発範囲が重なる位置では激突+火炎ダメージを各4回分ずつ受ける、流星1つずつ全部について「激突+火炎」の両方が20'全域に与えられる)と読み取っているか、いずれかが考えられる。単純に「期待値224」とだけ言いどちらと信じているのかわからない場合が大半だが、後者(B)として直接に説明されている場合もまた多い。
 しかし、緑箱の邦訳だけでも充分読み取れることであり、CD&D第四の原書や第五のルールサイクロペディアの原語記述ではさらに明確だが、”目標への激突(strike)の8d6ダメージを与えた後に爆発し8d6火炎ダメージを与える(... each strikes for 8d6 points of damage and then explodes for 8d6 points of fire damage.)”、”激突した"者"がセーブできない"激突"ダメージを受け、爆発範囲内にいた"者ら"がセーブ半減可の爆発ダメージを受ける(... victim struck by a meteor takes full "strike" damage (no saving throw), each victim within a blast radius may make a savingthrow vs. spells to take only half or the given blast damages ...)”等の記載から、直接流星が向けられた目標のみが受ける激突と、広範囲に広がる爆発が別々であることは明々白々である。前者の激突が広範囲にダメージを与えることは(そして、1発の流星が複数の対象に激突ダメージを与えることも、複数の流星が1体に激突ダメージを与えることも)ありえない。1体には流星1発しか激突せず、かつ流星の激突ダメージはその1体だけが受ける以上、1体が受け得る激突ダメージは必ず1発分(8d6)のみである。
 つまり「64d6で期待値224」はルールの読み落としか誤読であり、「セーブ全失敗で期待値140/セーブ成功で期待値84、さらに火炎抵抗で減少可能」が、この呪文から単体の目標が一度に受けるダメージとしてあり得る値である。


〇D&D3.0e
 Fireballsに似た、術者の手から出るといった記載はAD&Dとほぼ変わらない。6d6の[火]ダメージを与える光弾を4つ(又は、半分ダメージを8つ)作り出す。着弾と爆発の形状はダイヤ状で固定で、PHBにわざわざ図示してある。が、AD&D同様、最も危険なのは着弾点ではなく飛翔経路上に居たクリーチャーで、セーブ無しの24d6の[火]ダメージを無造作に受ける。つまりAD&D同様、「隣接撃ち」を食らって軌道上にいた場合が最大被害である。(3.Xeでは高lvではセーブが「成功が大前提」ではなく相互の比較だが、どのみちセーブ無しの隣接撃ちが最大ダメージなのでここでは無関係である。)しかし、それでも期待値は「84」であり、処理はAD&Dと全く同じだが、単純に目減りしている。3.Xeで敵味方ともにありふれた火炎耐性と全般的なインフレのために、相対的な強さの体感も、AD&Dよりかなり低くなる。3.Xeでは呪文修正特技でダメージを増強させることも多いが、Meteor Swarm(呪文レベル9なのでエピックスロットが必要だが)に限ったことではないのでここでは省く。


〇D&D3.5e
 やはり記述はAD&Dとほぼ変わらない。6d6のダメージを与える光弾4つがダイヤ状に着弾する点なども同じだが、光弾は「4つ」の場合しか記載がなく、半分ダメージの8つは無いようである。
 が、軌道上にいたクリーチャーが受けるダメージが異なっており、「遠隔接触攻撃」が必要で、命中した場合はセーブなしの2d6殴打ダメージと、これもセーブなしの6d6[火]ダメージを与える。また、複数(4つ全て)で1対象を狙うこともできる。前記のAD&D同様に隣接撃ちした場合は、遠隔接触攻撃が全弾命中した場合に限りセーブ不可能の32d6、期待値112ダメージを与え得る。ただし、たとえセーブ不可であっても3.Xeでは火炎ダメージの24d6の分は特に対策されやすく、かなり目減りすると思われる。
 つまり、接触攻撃が必要な(主に単一目標のAcid Arrowなどの)呪文の類と、セーブが必要な広域呪文の両方の性質を持っており、単一の目標には遠隔接触攻撃が全て成功すれば、激突+火炎ダメージが32d6の期待値112だが、全て外れた場合および他の広域目標にはセーブ可の24d6の火炎ダメージ(セーブ成功で期待値42)のみである。仮に1発が命中するとセーブ不可8d6+巻き込み3発の18d6/2(セーブ半減)の期待値59.5、同様に2発だと期待値77、3発だと期待値94.5である。接触攻撃は成功しやすいが、セーブ全成功同様、全弾やら多弾命中を当てにするような話ではない。接触攻撃はセーブと異なり他の手段や呪文とのコンビネーションが大前提だが、それはここでは評価しない。
 また、3.5eでは火炎のダメージ減少(火炎抵抗)の類は流星1つの爆発ごとにそれぞれ引かれる。3.Xeでは他の版の半減等の抵抗とは異なり値が直接引かれるが、一度に大ダメージを与える他の火炎呪文が1回分引かれるのに対して、この呪文では4回分引かれるので、わずかな火炎ダメージ減少でも相当に威力が減退し、高lvでの有効性はかなり落ちる。


〇Pathfinder
 3.5eとほぼ同じだが、軌道上にいたクリーチャーが受けるダメージは、遠隔接触攻撃でなくセーブとなり、「衝撃2d6はセーブ不能だが火炎の6d6の部分は-4ペナルティーでセーブ可能」に変わっている。全てセーブ失敗ならば3.5eの激突同様に期待値112、全てセーブされれば(2d6x4)+(3d6/2)x4=20d6相当となり、OD&D同様に期待値70ダメージである。
 Pf含め3.Xeでは状況次第でセーブ難易度が高くなり-4ペナルティーもあるので失敗する可能性もそれなりにあるが、当てにできるものではない。


〇D&D4版
 この版から描写は「上空から火の玉が次々と降り注ぐ」となっている。PHBにはこの火の玉が自然の「隕石」そのものだと明記されているわけではない。垂直に落ちるようになったのは、隣接撃ちや3.5eの命中判定のような、軌道を規定しなければならなかったり個体と範囲で別になるような煩雑な判定を避ける目的の方が大きいのではないかと推測される。4版では25lv以上(30lvが他版の20lvにあたるため、この点でも異なる)で使用でき、8d6+知力修正値のダメージを与える。4版は5版を含めて他の版とは根本的に異なる数値バランスで、ここで持ってきてもドラクエとディスガイアのダメージやレベルを比較するくらい意味がないので、ここでは参考程度である。(しかし、直接にこんな値を挙げて「赤箱の頃の版(緑箱)に対して、後の版では数分の1に弱体化された」などという主張は決して少なくない。)


〇D&D5版
 5版のPHB邦訳では名前は「ミーティア・スウォーム」となり(ただし、無料のベーシックpdfの訳のバージョンによっては、「メテオ・スウォーム」のままになっている場合もある)「燃え盛る火球が目の前に『垂直』落下する」と、これも手から発射される版とは明らかに異なる描写となっている。単に「20d6の衝撃と20d6の火炎」となっており、複数の着弾箇所や衝突などによらず、爆発の範囲のいずれかにいると一様にこのダメージである。セーブ可能と書いてあるが、各旧版のように衝撃部分がセーブで減少できない等の記述はなく、一律40d6がセーブで半減する。期待値はセーブ失敗で140, 成功で70である。5版で劇的に強力になったなどと大騒ぎされていることも多いが、単にセーブ成功、失敗と共に一番最初のOD&Dと完全に同点にすぎない。ただし、ダメージの半分が衝撃なので、ОD&DやCD&Dに比べると火炎抵抗でも目減りが少ない。


 以上をまとめ、まずはD&D系の他のダメージ呪文との比較で言えば、AD&D1st以外の多くの版は他のFireball等の中レベルのダメージ呪文がダイス10個、より上位呪文で20個などのダメージキャップがある。それに比べると、セーブ成功で期待値70の版ですらも、期待値17.5(10d6半減)の中位呪文の4倍や、期待値35(20d6半減)の上位呪文の2倍になっている。多くが他の呪文と隔絶したと評するに足る威力が確保されており、OD&D当時から通じて、充分なほど強呪文として設定されているのがわかる。特に、対象がセーブしても(あるいはセーブできなかったり)ダメージが減少できなかったり、衝撃などダメージを軽減しにくい(ここは版で相当ばらつきがあるが)効果が含まれていることが多い点も強力である。

 各版によるダメージは、セーブを要求する版ではセーブ成功(古い版、特にCD&Dでは、高レベルキャラ同士ではセーブはほぼ成功する)の場合を比較すると、期待値が70(OD&D、Pf、5版)、84(CD&D、3.0e)、100(AD&D1st、2nd)に大別される。セーブがある場合、全失敗で112(Pf)か140(ОD&D、CD&D、5版)である。
 3.5eは、対単体の最大威力では、接触攻撃系の全くの別系統呪文のような処理になっており、単純に比較できないが、遠隔接触攻撃が全て外れれば広域の24d6のセーブ半減と同じ期待値42で、仮に半分の2発命中でも77、4発全て命中しても期待値112であり、他の版のセーブ全失敗期待値(140など)ほども延びるわけでもない。少なくともセーブ不可で期待値84となる3.0eより確実に強いとは評価できない。3.Xeのインフレや[火]ダメージ減少への効果の低さもあわせ、3.5eの他の高lvの攻撃手段に対して頼りないという風評については、おそらく妥当である。


 上記したように、俗説で「他版の数倍最強だった」などとされるCD&D緑箱では、実際の対単体のダメージ期待値(84)は、各版中では「中程度」にすぎない。CD&Dは(OD&Dよりも後の版の中では)ローパワーであり、後の3.Xeやより控え目な5版ですらかなりインフレしているので、その点でも、数値が示す値よりは相対的に強呪文であるとはいえないでもない。
 しかし、CD&Dにおいて俗説のような、”ダメージの数値そのもの”について、他の全ての版より「大幅」「段違い」「何倍」「他の全版がゴミなほど」大きいなどという事実はない。以後大幅に弱体化したなどと流布されている3.0eは数値そのものは同点であり、さらにAD&Dはより大きい。殆ど考慮する価値のない事態だが、CD&Dでセーブ全失敗・敵が一切無耐性でダメージが最大に伸びた状況ですら、OD&Dや5版と同点の期待値(140)でしかない。
 特にCD&Dの日本の解説サイト等について全般言えることでもあるが、計算が間違っていたり、ルールの記述を誤読や誤訳していたり、例によって各版の脈絡(時系列)を誤っていたり(ОD&D、AD&Dよりはるかに後の、実に1984年まで下るCD&D緑箱のことを「最初の版」「初版」、この呪文の「初出」などと流布している等)、中にはWizardryフリークの「村正は50ダメージ」とかのような、期待値ではなく「最大値」だけ(しかも、味方は全最大ダイス目、かつ敵は何の耐性呪文も準備せず、全セービングスロー失敗とかというありえないご都合主義状況)しか見ていなかったりする説すらもえらく頻繁に見受けられ、信用に足る根拠を述べている例はほとんど見かけることはない。前述したようにCD&Dのルールでは単体に最大限のダメージを与える場合の期待値は「セーブ成功84/全失敗140」だが、日本のサイト等では、調べたところCD&Dのメテオ・スウォームについての分析で、この値になるとして解説している記述すらほぼ見つかっていない。一方で、これも前記したように、ルール誤読に則って64d6とする説明が殆どであり、中には全最大ダイス目の「384ダメージが毎回出る」かのように言いふらしている場合すらもあるが、少なくとも「期待値224」との言はかなり多い。3.Xeのダメージをセーブや火炎ダメージ減少で減少すると言っておきながらCD&Dは期待値224から一切減少しないかのように比較している説も見られ、これは緑箱の現物を確認していない又聞き(64d6という誤説のみどこかからか聞いてきたか、セーブ不能の激突ダメージの言及を誤解したか)と思われる。最大ダイス目は論外としても、3.5eやPfの全命中/セーブ全失敗の値である112が「威力が半分に落ちた」などと誤って信じられ続ければ、その異様な過大評価も無理からぬ話である。
 これもよく述べている点だが、CD&Dは、卓ごとのルールの珍解釈・明らかな誤読・誤訳・読み落としが、訂正もされないまま長年運用されていた例が非常に多いため、少なくともこれらの解説者らの卓、おそらくはかなり多くの卓で誤ったルール(上記のようなCD&Dで4弾全部直撃で224など)が本当に適用されてきた可能性は、かなり高いと思われる。これらは多くの卓でハウスルールとして実際に長年適用されてきた以上は、「既成事実としてこちらが実際に用いられてきたD&Dのルール」とかいう主張や、そうした体験や運用の経緯から選択肢として否定されるべきものでもないが、かといって、あたかも「(TSR/WotCが)最初の版が最強で版が進むほど弱体化させた」等の根拠になどならない。
 無論、CD&D経験者を自称する者も、緑箱(というより赤箱以外)などそもそも実際には所有していなかったり、持っていてもそのlv域など実際にはプレイしたことなどないので、他人から聞いた誤解釈をさらに鵜呑みにして周りのゲーマーやFT談義で吹聴、という例も非常に多い。


 実際に対単体・高lv戦において実効の数値が特に大きい(期待値100)のは、インフレを加味してもAD&Dである。というか、AD&Dで対単体に与える最大威力を発揮するのは前記「隣接撃ち」の場合だが、隣接撃ちは日本のCD&Dのゲーマーらの「天から召喚されて降ってくる隕石」(であると、旧版の実際の記述に反して長らく日本で信じ込まれてきたり流布されてきたもの)や4,5版のイメージや、「広範囲に大ダメージを与える大爆発」のJRPGのイメージとは全く合致しないためか、想定・考慮されている例は日本ではほとんど見当たらない。CD&DとAD&Dを比較して「AD&Dに移る際に大幅に弱体化した」(1stより緑箱の方が遥かに後なので根本的に誤りだが)と主張しているサイトでは(期待値でなくダイスの「最大の目」のみを比較しAD&Dはd4の最大目を挙げているといったサイトは論外だが)いずれも着弾点の爆発後を比較しており、AD&Dの4発全直撃の隣接撃ちについては、日本語サイトでは存在すら挙げられることは殆どない。


 「メテオスウォームは最初の版が段違いに最強で版が進めば進むほど大幅に弱体化している」という風説は、上記のCD&Dについてのルール運用に関する「誤解釈」による異常な過大値に、例によってCD&Dが「最初の版」であるという誤説が合わさって生じており、D&D系などに限らず、日本のFT/RPG全般の受容において特有の現象として頻繁に見られる、『誤説が誤説を呼んで生じた帰結』といえる。(なお、繰り返すが、システムが他版と大幅に異なる4版(CD&D第四バージョンではなく3.Xeより後の方である、念のため)の実値を他版に持ち出すことには全く意味はないことは明らかだが、それでも調べているうちには、海外に比べると相対的に「和訳が存在していた期間の割合が長かった」4版の存在がなお過剰であるという影響もかなり感じられる。)
 ともあれ、少なくともダメージ期待値の数値のみで見た限りでも、殆どの版でMeteor SwarmがD&D系の他のダメージ呪文より弱いなどという事実はない。ましてや、CD&Dにおいては他の全ての版の数倍の威力がある、などといった事実はない。





バックスタブの効く相手


 バルダーズゲート(BG)シリーズなどのPCゲーマーからは、「バックスタブが効かないやつ(デモゴルゴンなど)は不意打ちで突き刺すのが効かないというのは設定上はいったいどういうやつらなんだ」という疑問が繰り返し述べられている。
 「設定上」のことを言うのであれば、BG1,2の元ルールのAD&D2ndの設定では、そもそもバックスタブは「ヒューマノイド」(3.Xe以降の和訳でいう「人型生物」)にしか効かない。手足が2本ずつとかの人の型をしている者ではなく、限定された種族のみを含むカテゴリ、人間やエルフやドワーフ等である。これはバックスタブが「人間の急所(臓器など)」を狙うものであるためと2nd PHB等に明記されている。巨大な人型生物ともいえるジャイアントに対し、崖や天井から飛び降りて奇襲した場合なども効果があるなどともPHBには書かれているが、つまりシナリオ展開やプレイヤーの工夫をDMが認めた場合の特殊な例として挙げられているにすぎず、限定された人型生物以外(デモゴルゴンも両手足があるから人型だという主張とか)に一般的に拡大されているわけではない。(なお、3.Xe以降では種別が「巨人」となっているオーガは2ndまでは伝統的に普通に「ヒューマノイド」であり、PHBにも(特に急降下攻撃などでなくとも)効くと明記されている。)つまり、単に不意打ちで突き刺すのに成功すればバックスタブが成立するという話ではない。

 ところが一方、BG1,2などのInfinity Engineのシステム上は、データ設定上ではバックスタブはデフォルトでは効くようになっており、一部のクリーチャーのみにimmuneが設定されている。後の3.Xeなどで急所攻撃が効かないアンデッドや粘体にもimmune設定が適用されているとは限らず、ボスキャラやなんとなくの強キャラなどに耐性があることが多い。
 また、Infinityゲームの新しめのバージョン(BGEEを含む)では「バーバリアン」が人型生物(プレイヤーキャラ種族)にも関わらずバックスタブに耐性を持っているが、これはBGのバーバリアンが3.0eのクラスから強引に逆輸入されているので、3.0eの直感回避の急所攻撃耐性を再現したものと考えられる。急所攻撃とバックスタブは必ずしも定義が一致せず、3.Xeの直感回避も急所攻撃の完全な無効化というわけでもないので、かなり無理矢理である。
 ともあれBGで急所攻撃が「immuneが設定された対象以外には全て効く」という対象の拡大は、シーフやそのキットの活躍場を増やすため(2ndでシーフがいかにも戦闘系のキットを取っても戦闘能力が強烈にへなちょこであるという状況を鑑みたかは定かではない)バックスタブの効力のある対象を拡大していると考えられる。当たり前だが、上記の2ndの設定とは全く合致しなくなっているので、「設定上」の説明など行いようがない。
 つまり、効かない者はどんな設定なのかとかいう以前に、むしろInfinityの大半の人型生物でもないのに「効く者」らの方が、設定では説明不能な存在となってしまっている。


 が、一方で、他の版を見ると、実は2ndや3.Xe以外の版では、バックスタブや急所攻撃が効く対象は広範であったり、少なくとも限定された記述がないことが多い。というか、特に初期では、その時点では単にまだ未設定だったりいいかげんだったりして詳細の説明がないことが多い。
 ОD&Dで最初にThiefクラスが設定されたGreyhawk (1976)では、By striking silently from behind the thief gains two advantages:の後に命中率増加とダメージ増加について書かれている。CD&Dのような「2倍」固定ダメージではなく、ОD&Dの時点ですでにAD&D同様lvによってダメージ倍数が増加する。(いまだに日本では流布されている「赤箱D&D(CD&D)が『元祖・原型』で、AD&Dなどの以後の版のルールは赤箱に対して追加したもの」が、明らかに否定される無数の実例のうちのひとつである。)効果はAD&D以降のバックスタブそのものだが、この能力にはOD&Dのこの書物の時点では名前がない。効果のある対象(クリーチャー種類)が限られる、という記載は少なくともこの書物自体にはない。
 AD&D1stでもコアルールの範疇では、PHBでは武器が(ダガー、ソード、なぜかクラブに)限られる、DMGでは「驚かなかったり背中がない相手には効かない」というわずかな記述があるのみで、おそらくウーズやスライムなどは効かないと言っているとは推測できるが、適用範囲はコアルールだけでは非常に曖昧に判断するしかない。「クラブ」が含まれるということは、「臓器に突き刺す」といった形態に限らないことを示しているが、単に映像演出などによくある殴って気絶させる等を意識しているのかもしれず、定かでない。
 後のCD&D(第三バージョン〜赤箱の第四バージョン)でも、特に対象については限定されている記述はない。サイクロペディア(第五バージョン)になると、片手武器に限定されるといった記述があるが、ここでもソードやクラブとも例示され、刺突武器などには限らない。

 一方、3.Xeでは「急所攻撃」は発動条件(隠れていなくても挟撃などでよく、武器も限定されない)が大きく緩和され、ダメージも大きく増大しているが、NWN2解説の特技ページでも述べた通り、急所攻撃のみならずクリティカルすら効かない対象が普通にかなり多く、あまりにも差が出るのでむしろ「効く相手は弱い」という印象すら与えることもあった。
 この問題点を考慮してかしないでか、3版系のd20の派生ルール(Pfなど)でも急所攻撃やクリティカル対象を拡大している(基本的に効き、ごく一部だけ耐性がある)ものもあり、後の4版や5版でも特に対象に限定はない。


 推測の範囲だが、AD&D1stの記載を見る限りでは、この頃に既に対象を一部生物に限る意図そのものは読み取れ「シティアドなどで人間などの背後を襲う場合に強いシーフ」を意図していたが、初期版では単純に適用範囲のルールが非常に曖昧であり、実効としてあまり限定されていない。それを2ndや3.Xeでは厳密にしたものと考えられるが、その結果(何をやろうが結局シーフが弱いので影響が少ない2nd時点はともかく)3.Xeでは極めて歪な様相も見られたため、さらに後の版や派生ルールでは、対象を限らないように調整したと考えられる。
 これらの後の版では、意図的に「背中や急所臓器のない対象にも分け隔てなく効く」ようになっており、ある意味、必ずしも人間の臓器や不意を狙うわけではない、と定義そのものも変わったといえる。一見、効く対象の制限が再度緩んだことでОD&D、AD&D1stやCD&Dと共通して見えるが、5版に関して頻繁に主張されているような、旧版の設定やルール定義に「戻った」では必ずしも片づけられない。





ヘンチマンシステム


 ハクスラRPGなどの絡みで、NWNシリーズをはじめとする洋ゲーにしばしば出て来る、プレイヤーキャラが雇う共闘NPCの「ヘンチマン」について、傭兵なら「マーセナリー」ではないのか、なぜ「ヘンチマン」などという聞きなれない言葉になっているのか、という疑問をこれらのゲーマーからはしばしば聞く。

 これは「RPGにおける"Henchman"」が、D&D系のルール用語から伝統的に流用されて用いられているものであり、さらには、後述するように、ここでは「Henchman」と「Mercenary」がルール用語としては完全に区別されて用いられているからである。一言で言えばヘンチマンは冒険仲間、マーセナリーは自分が領主等の場合に雇う兵士である。なぜ分かれているかというとD&D系には当然のように「冒険」の他に「領地経営や獲得」の要素があるからである。

 D&D系のルール用語は(古い海外RPGでは)ファンタジー世界そのものの一般的認識であり、そして、これらのルール用語は(プリーストやらデミゴッドやらいろいろな所でさんざん書いているが)日常用語としての同じ単語や、「英和辞典」やらに載っている語義とは、往々にして全く異なる、FT/RPG一般の不文律としての意味合いを持っている。

 ヘンチマンはAD&D1st、2ndのPHB, DMGなどに記載され、ゲームシステム的にはPC用クラスの能力を持ったNPCで、冒険行にも同行し、プレイヤーキャラ同様に戦い役割を果たすものである。1stやCD&Dでは、プレイヤーキャラが報酬で雇えるものも指すが、2ndではヘンチマン(新和PHB訳では「側近」)は特に、名声に引かれてやってくる、報酬だけでは雇えない忠実な(主従のような意味で忠誠心が高いとは限らない)味方のみを指す。また2ndでは一時金のみで雇う兵士等(後述のHirelings, 雇用者)より重要だが報酬で雇われる「武将」格のNPCをフォロワー(部下)とする。版やDM裁量によるが、ヘンチマンのロールプレイ自体はDMが行っても、数値までもプレイヤーが管理することもある。
 腹心の部下になぜHenchmanという語が選ばれているのか、Henchmanとはhorseに対応する古英語のhengs- hensh- に由来し、元来は馬方、転じて騎士の従士(スクワイヤ)や小姓(ペイジ)を表現する語となっていた。これが封建社会が終わり、悪徳貴族が表だって悪しざまに扱われることも多くなると、ヘンチマンは悪徳ボスの従僕や腰巾着、さらに転じて、ギャングの子分といった意味の方が強くなる。
 これに準じて、善玉冒険者であれば古義のごとく忠実な従士、ならず者の冒険者や悪玉であれば現代語のごとく子分、という両方を指す言葉というわけである。ただし、悪玉の子分であってもルール上、簡単には逃げ出したりはしないくらいの、従士にある程度は近い忠誠心は持つものを指す。

 一方で、ダンジョンの入口から街までの荷物運びのために人を雇ったり(AD&D1stやCD&Dなどでは持ち帰った宝も経験値に換算されるためである。「経験値が金からしか入らない」ではないことには注意)さらに領主となった後の城塞の兵力などのためにNPCを雇用することもできる。これらがHenchmanでなくHirelingsで、そのうちの兵士のカテゴリがMercenaryと呼ばれているが、これらの傭兵は、例えばダンジョンの中まで入ることはないし(危険な冒険に同行することはない)、程度の差はあれ、あからさまな死の危険に踏みとどまったりもしない。当然、Mercenaryは報酬もかなり安価であり、Henchmanとはルール的に区別された存在である。なおヘンチマンの方の報酬(あれば)は、プレイヤーキャラが決めたり、CD&Dなどでは(財宝以外の経験値同様に)プレイヤーキャラの半分の取り分にしたりする。


 ここで、NWNなどは、本来マルチプレイを行うゲームで、面子が揃わない際やソロでゲームする際に雇うのがヘンチマンの目的だとすれば、多人数でプレイすることが前提の"TRPG"では決してありえないもので、最初期PnPゲームにそんなルールが存在したことに首をかしげるかもしれない。というか、現に『本当のTRPG』には、NWNのようなヘンチマンやコンパニオンは存在しない、などと主張されていることもある。

 しかし、このシステムはテーブルトップのD&D系の最初期から、面子が揃わない場合の当然の対策としてルール化されている。PnPのRPGは、OD&Dの時点から、得意分野を分担する複数のクラスをデザインされ、何人かの異なる能力者が協力しないと突破できないダンジョンに挑戦するゲームとして意図的にデザインされている。にも関わらず、少ない(ときに1人の)プレイヤーで、かつ不自然にNPCを雇ってまで挑戦することもできる、という本末転倒的なルールが最初から存在しているわけだが、かなり乱暴に言えば、D&D系が1人で多人数の駒を操るウォーゲームに由来していることの名残とも言える。
 プレイヤーキャラが強力な側近であるヘンチマンを持てる人数はカリスマ能力値についての冒頭の基本テーブル(しかも、プレイヤーが参照できるPHBの記載)によって規定されており、強固にゲームシステム(ルール)化された事項である。CD&D第4バージョンに至っては、ダンジョン冒険・戦闘以外のまともなロールプレイングルールの記載が一切ない最初心者lv用の赤箱の時点でヘンチマンの運用法のルールは記載されており、まさしく基本的な存在である。

 WG世界の何人かの重要歴史キャラは、もともとガイギャックスやクーンツらが卓の面子が揃わない時にヘンチマンとして使っていたNPC(しかも最初は敵だったものが魅了呪文で寝返ってきたり、改心したものなども居る)が昇格したものである、というのはあまりにも有名である。






●旧雑記内の旧記事(別窓)

ベーシックD&D2版(赤〜黒箱が『初版』でも『2版』でもない話)

「Int8以下だと人語が話せない」という風説

「hp-10までは死なないようになったのは3版以降」という風説

逆呪文(2ndまで)

AD&D1st:ワンダリングリッチ

3.0e: Sword, Mercurial

AD&Dゲームブック『魔法の王国』3部作シリーズの世界設定

旧版からD&D5版へのコンバート

CD&Dと呼ぶかBD&Dと呼ぶか

AD&D2ndまでのドルイドのレベルアップ

ソード・コースト、及びフェイルーンとアレクラストの内陸北部

FRなのにWGのモルデンカイネンの名のついた呪文がとか何とかの疑問

BG2のカーソミアーの「フェイルーン最強の武器」という説明は本当なのか

非魔法戦士ドリッズト

スォードとかワォーハンマーとかはもはや失伝対象に入っているのではないか

”悪名高き”バーグル

3大魔法使の夜

ウェポンマスタリー(CD&Dとハウスルール問題)

Planescape - 内方次元界




クリンのことかー!(ドラゴンランス世界関連の旧ルール)


恋のミアクル伝説(フォーゴトンレルム世界神格・次元界周り設定の変遷)







トップページに戻る