ソス卿の「指をつきつけて死ねというだけの魔法」は、D&Dシリーズのデス・ナイトの疑呪(疑似呪文能力)である「パワーワード・キル」(魔法使系呪文レベル9)呪文であることはD界隈には周知であり、ゲームの方には触れていない小説読者でも、小耳に挟んだことくらいはあると思われる。
ここで、『伝説』1巻の注釈版では、ウェイレスの森でソス卿によってクリサニアが死の呪文を受けた(パラダインによって保護され仮死状態となる)箇所の注釈は、「デス(死)の呪文」についてのAD&D2ndのPHBの引用となっている。しかし、ここで引用されている文章、1995年版の2nd-PHB(注釈では「1997年版」となっているが、2nd-PHBの89年と95年の2種表紙のうち後者と思われる)の222-223ページに記載の注釈の文章の呪文は、注釈題名の通りそのまま「デス・スペル」(魔法使系呪文レベル6)呪文の説明であり、Power Word Killではない。
これも知っての通り、Power Word Killはヒットポイント60以下の対象を即死させるconjuration呪文、それに対してDeath Spellはヒットダイス(レベル)8+3以下の対象を即死させるnecromancy呪文(Wish以外では蘇生できない)で、全くの別物である。(なお、デスナイトの初出の1st-Fiend Folioから、これらのPower Word疑呪を用いるデータとなっているが、necromancyでなくconjurationのpower wordを用いるのは、騎士の「命令」が意識されている節もある。)
あるいは、Wish(他の版ではそうとは限らないが、2ndでは神の介入、とPHB内で説明されていることがある)以外には蘇生できないという記述から、クリサニアが容易に蘇生できない状況に陥ったこの呪文を、故意または何となくデス・スペル呪文の方とした、DL世界のデスナイトはそちらの設定である、と考えることもできるかもしれない。
しかし一方で、『伝説』5巻のダラマールの台詞には「死の騎士の強力な示唆の言葉──『死ね』『気絶せよ』『盲いよ』(注釈版の邦訳では『失明せよ』)となっている。これらはDeath Knightのデータの通りの3種のPower Word呪文、Kill/Stun/Blindを指している。すなわち、当初の『伝説』執筆当時には、ソス卿が用いるこれらの疑呪は、まだルール通りのDeath Knightの3種のPower Word呪文であることが念頭に置かれていたことは確実である。明らかに小説執筆時の想定と、後の注釈において食い違っているようである(ちなみに5版のMMのデスナイトからは気絶と盲目は無くなっており、Dragonlance: Shadow of the Dragon Queen (2022)(邦訳『女王竜の暗き翼』)のソス卿のデータでも同様である。気絶と盲目は、小説作中では上記言及はあるものの少なくとも戦記伝説内では使われていない)。
呪文に関する注釈には他にも、『伝説』4巻のキャラモンが「クリサニアに若者を呪縛してもらうことを期待する」という箇所に、同様に2nd-PHBを引用して「チャーム・パーソン・オア・ママル」(聖職者系呪文レベル2)の注釈があるが、この呪文はAD&D2ndではアニマルスフィアーの呪文で、コアルールではドルイドかレンジャーにしか使えない。世界特殊ルールの類でも、特殊な自然神クレリックにしか使えない。2ndのTales of the Lanceによると、アニマルスフィアーにマイナーアクセス(呪文レベル3まで)を持つのはマジェーレ、ブランチャラ、ギレアンであり、メジャーアクセス(アニマルの全呪文)を持つのはハバクク、ゼボイム、チスレヴでDL世界では意外と多いが、パラダインは含まれていない。AD&D1stではそもそもドルイド呪文でありクレリックのリストに無い。すなわち、1st, 2ndともに、DL世界用のルールを適用したとしても、パラダイン僧侶にはチャーム・パーソン・オア・ママルは使用できない。
この時点でキャラモンが念頭に置いている呪縛はむしろ自分が以前に『伝説』2巻末にクリサニアにかけられた呪縛(ホールド・パーソン呪文であると推測、さらにほぼ確定であるかのように主張されていることが多いが、実際には効果は一致せず、厳密には不明である)が近いのではないかと考えられる。
なぜか『戦記』よりも『伝説』注釈版では急増しているPnP版資料の引用のうち、この部分を配置したのが作者チーム、ワイスやヒックマンらの他、モジュール調整を行っていたジェフ・グラブや、注釈全般を執筆しているジーン・ブラッシュフィールド・ブラック(『戦記』当時の編集長、『ゴーストタワーの魂の石』等の何作かのAD&Dゲームブックの作者であり、決してルールに昏くはないと考えられる)のうち誰なのかは定かではない。しかし、どちらにせよ、この注釈を付ける頃(『伝説』注釈版は2003)には、『伝説』本文(1986)執筆時に比べるとAD&Dのルールまたはデータなどは、この面々らにとってはかなり忘れられていた、というのが何となく想像できる記述である。
無論、ゲーム環境ならともかく小説作内では当然PnPデータより「小説内の」注釈が優先されるのであろうから、PnPデータ上はPower Word KillやHold Personであると推測できるとしても、「小説内では」注釈に記されている以上、あくまでデス・スペルやチャーム・パーソン・オア・ママルであるのかもしれないが、しかし、本記事では、何故小説や注釈がそんな記述になったかの分析はするが、どちらが作内の「DL世界設定の正史」で「正しい」のか、といった議論は行わない。
ちなみにクリサニアはTales of the Lanceで14lvのクレリックでhp63, HD9+10hpなのでこの疑呪がPower Word KillとDeath Spellのどちらであったとしてもルール的には全く効かないが、あるいは『伝説』1巻時点ではこれより低かったのかもしれない。
また、『伝説』5巻で、死の騎士と戦おうとするタニスを騎士訓練を受けていないとして止めようとする騎士団長グンター卿に対して、能天気騎士マーカム卿が「指をつきつけて死ねというやつと戦うのに騎士訓練なんてあってもなくても同じですよHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!」などと言っているが、タニスは伝説時(Dragonlance Adventures)は12lvでhp79(HD9+9hp)なのでやはりどちらの疑呪も効かない。
小説とPnPで、「用いるデータ自体」は一応合っているが、「ルール適用」については整合がとれたりとれなかったりすること自体は、これまで説明してきたアイテムデータと同様、注釈版以前の『戦記』『伝説』本文当時からよくあることである。
D&DシリーズでもFR世界のPCゲームなどでは、「ドゥエルガル(灰色ドワーフ)」などが登場すると「昔読んだ小説の『どぶドワーフ』とかのことだろうか」というコメントをたまに聞く。同じ小説に出ていたはずの「デュワー(黒ドワーフ)」について思い出したという話は聞いたことがない。
クリンのドワーフについては、5版の設定として現在日本語で読めるDragonlance: Shadow of the Dragon Queen (2022)(邦訳『ドラゴンランス:女王竜の暗き翼』)の世界設定ルール部でも、このルール部が概要的にすぎないためもあるが、山・丘ドワーフについての簡単な記述しかない。より前のMordenkainen's Tome of Foes (2018)(邦訳『モルデンカイネンの敵対者大全』、以下『敵対者大全』)にもクリンでの各サブ種族の名と歴史概要こそあるものの、詳しい説明やデータ等は特にない。
3.5e d20版ドラゴンランスのWar of the Lanceは『戦記』、Legends of Twinsは『伝説』の、3.Xe版の主に追加データが載っているが、たまに元の小説のベースとなったAD&Dのデータにはなく小説後に追加されたもの等で、何の使い道があるのかわからない奇想天外なキャラなどが詳細にデータ化されているものが載っている。
War of the Lanceのキャラデータ集のうち、一番最後(頭文字がwなので)に載っているのは、バリフォール港の『豚と口笛』亭の酒場の親父、ウィリアム・スウィートウォーター(『戦記』4巻冒頭のほか、後述の外伝)のデータである。
ウィリアムはAD&D時点では、DL12モジュールでバリフォールの酒場の主人の「心優しい豚面の男」として名前が一度出て来るが、データなどはない。一方、このd20では、Master 2lvで人間、「秩序にして善」である。(ウィリアムは、DL世界には居ない「ハーフオーク」種族のキャラだった世界設定確立前のアイディアが変化したもの、という説があるが、少なくともDL12にもWar of the Lanceにも特にその言及や伺わせるものはない。)
Master(工匠)というベースクラスは、このWar of the Lanceで設定されているDL d20の独自クラスで、これは3.Xe/d20デフォルトルールのNPCクラスの「エキスパート」によく似ているが、PCクラス同等に強化されているようで、スキルが多く(Rogと同様)、ボーナス特技や主に製作系のボーナス能力を多く持つ。このウィリアムのような名有りの一般人の他に、パランサス図書館の文人バートレム(『伝説』6巻によればドラコニアンを棍棒で撲殺する強者である)、銀の腕の鍛冶屋テロス・アイアンフェルドといった、D&Dデフォルト冒険者クラスではないと思われるが屈強なキャラも、d20版では中〜高レベルのMasterクラス持ちで再現されている。
ウィリアムのデータに戻ると、もと船乗り出身という小説記述に拠って、武器はbelaying pin(ビレイピン)を棍棒がわりに使うもののみとなっている(ビレイピンは船でロープを巻くために使われていた木製棒状部材で、『伝説』2巻でキャラモンの剣闘士仲間フェラーガス(エルゴスの船乗り出身)が航海士を殴るのに使ったと言っている「索止め栓」がそれである)。
しかし、ウィリアムがのちに覆面に小剣の「怪傑豚鼻仮面」に変身(『英雄伝』1巻、『闇の夢、光の夢』)した際のデータは載っていない。というか、怪傑モードだといかにも盗賊系クラスなど軽快そうなのだが、このd20データはStr 16, Dex 9, Con 15, Int 11, Wis 13, Cha 13でありむしろ屈強で鈍重となっている。この強さは「元船乗り」であればわからないでもない。
さらに、『英雄伝』の短編では冒頭が「ウィリアム・スウィートウォーターは小男だった」で始まるのだが、このd20データでは'a large man'と書かれている。DL12や『戦記』4巻本文では、ウィリアムが大柄か小柄かは特に書いておらず、同4巻の登場章の口絵に描かれている姿でもどちらかは判然としない。しかし、バリフォールでの『赤い魔術師の大幻術団』の演目に、キャラモンが片手で軽々とウィリアムを持ち上げる怪力ショーというのがあるので、ウィリアムは肥満小兵よりは、見るからに巨体でもあった方が辻褄は合うことは合う。上記高Str,低Dexは大男を想定して設定されていると思われる。
このd20版では、『戦記』4巻でタニス一行と会った後(レイストリンとの関係を含め)の記述がないだけでなく『英雄伝』の内容の記述が全くないのは、竜槍戦争前のためとも考えられるが、上記のようにエピソードだけでなく記述自体に食い違いがあるのは、『英雄伝』は「非正史」とされてしまっており、このデータでも反映されておらず、あくまで『戦記』4巻のみから作られている可能性が高い。現に、他にも英雄伝収録の外伝の幾つかは、元から本編と矛盾点が著しいものや、そうでなくても後日の他作に上書きされてしまい、明らかに非正史となっているものがある。
しかし、このWar of the Lanceのキャラデータには『英雄伝』以上にさらにイレギュラーな出典のデータが混ざっていたりするが、それはまた後日に回す。
〇AD&D1st、DL2: Dragons of Flame
タニスが小説『戦記』2巻のパックス・タルカス砦の墓所でエルフ王キス=カナン(の骨)から授かった魔剣ワームスレイヤーは、初出のDL2モジュールでは小説通りキス=カナンの墓所に配置されており、「トゥーハンデッドソード+3」になっている。ドラゴンとドラコニアンに2倍のダメージを与える。(ピンチになったら骨が手渡してくれるなどといったギミックは少なくともDL2のここの墓所の説明にはない。)DL2には「彼(キス=カナン)の時代においては最も強力(有効)な武器(the most potent weapon)」と書かれている。
AD&DのDMGデフォルトの属性武器であるSword +2, Dragon Slayerが、true dragon(色と金属、クリン外では宝石も)にのみ強化ボーナスが+2でなく+4に、さらに一定のいずれか1種(例えばレッドドラゴンのみなど)にのみ3倍ダメージになる効果とはかなり異なっている。また、Dragon Slayerの3倍打は武器のベースのダメージダイスのみを3倍とするが(DMGにロングソードであれば対large: 1d12の3倍である3-36(3d12)+4と明記されている)、ワームスレイヤーは通常にダメージ値を出した後にトータルを2倍にする(Determine damage as usual, and double the total)旨の規定がある。仮にStrやSpecialize/Masteryなどの習熟度によるボーナス、バフ魔法によるボーナスなどがあれば、ワームスレイヤーはそれらも加算した上で倍加すると考えられ、であるとすれば特攻武器としてはかなり強力である。
『戦記』2巻には、ワームスレイヤーはドラコニアンが石化しても剣が捉われることがなく「易々と、まるでただのゴブリンの肉でしかないようにすらりと抜けた」(2巻13章)という描写があるが(小説でも以前のタニスの+2の剣やスタームの+3の剣が捉われているので、強化ボーナス有の剣なら何でも捉われないというわけではない)DL2のワームスレイヤーのデータにも、「バアズ・ドラコニアンが石化で武器を奪う効果が無効である」旨の記述がある。
所有者はhilt(鍔)により、ドラゴン、ドラコニアンの呪文とブレスウェポンに対してセーブにも+3のボーナスがある。AD&D1stの時点のブレスウェポンはドラゴンのhpと同点(セーブに成功しても半分)のダメージなのでセーブに+3でもまったく気休め程度でしかない。どちらかというとドラコニアンの呪文を意識した能力といえる。しかし、ここでゲームブック『パックス砦の囚人』での魔剣『ワイアムスレヤー』は、赤竜のブレスウェポンを弾いたり『バーミナード』の投射したスピリチュアル・ハンマー呪文(マレットをくらえ)を飲み込んだりする描写があるが、これらはAD&Dの通常のデータやDLの世界観の感覚からは明らかにかけ離れた誇張がされてはいるものの、「ブレスウェポン、及び呪文(ドラゴンらからのみだが)に対して防御効果がある」という性能からは、完全に事実無根の描写ともいえない。
『戦記』2巻本文で赤竜マータフルールに気付かれたのと同様、データ上もtrue dragonが近く(30フィート以内)にいると激しく音響(a loud buzzing noise)を発し、眠っているドラゴンを必ず起こす特性がある(この特性についてはドラコニアンは含まない、と書いてあるが、true dragonとあるためワイバーンなども含まない)。ここで、古いD&Dシリーズでは、極悪な強さのドラゴンに対してなんとか少しでも有利に運ぶための特殊則として「ねぐらで遭遇するあらゆるtrue dragonは、眠っている確率が存在する」という重要なルールが存在する(例えば1stのMM1ではレッドドラゴンは20%の確率で眠っている)。特に1stやCD&Dのドラゴンはブレスウェポンのダメージがhpの点数と同じなので、最初のブレス攻撃を受ける前にどれだけhpを減らせるかはプレイヤーキャラ全員の生死に直結する。つまり、ワームスレイヤーはそのドラゴンが眠っている最初の好機を台無しにするため、通常のD&Dゲームでのダンジョン探索でドラゴンのねぐらを襲うには全く向いておらず、襲って来るドラゴンを感知し国を守る「防戦」に向いた剣と考えることもできる。
ゲーム上は、DLモジュール群の中でも序盤に登場する点、バアズの石化や、高位(ボザク以上)のドラコニアンの投射する呪文への耐性から考えて「対ドラコニアン」用に配置されている武器と思われる。
後のAD&D1st用のワールド設定書のDragonlance Adventureでも、2ndのTales of the Lanceでも記述があるが、DL2と全く同じデータである。DlAなどには第二次ドラゴン戦争時にシルヴァネスティで鍛えられ、キス=カナンが同族殺し戦争当時に所持し共に葬られたた旨の記載はあるが、それ以上はあまり詳しい背景の追加情報はない。なお、DlAの年表では第二次ドラゴン戦争は2645-2692PC(PCはPre-Cataclysm, 大変動前)、同族殺し戦争が2192-2140PC、キス=カナンらのクオリネスティへの移住が2050-2030PCなので、剣の由来とキス=カナン自身の時代はかなり離れている。
ここで、日本の数少ないDL関連の話題ではかなり昔から、ワームスレイヤーを2Hソード「+1」である、ひいては、タニスがDL1で最初から持っていたロングソード「+2」よりもかえって弱体化している、等とネタにされていることがある。しかも、この剣の活躍の無さとタニス自身の戦闘面のあまりのヘボさがあたかもそれを裏付けるかのような側面すらある。この「+1」の説について典拠は挙げられていない場合もあるが、DL1-4の再録であるDragonlance Classics I (1990)を典拠として挙げているウェブサイトが複数ある。DLが日本に入ってきて以後長い時期にわたって、DL2モジュールやDragonlance Adventureに対して、Classicsの方が入手はかなり容易だったため、Classicsを典拠にデータを説明しているサイトが複数あるのも、それが広まっている理由でもあると思われる。
実のところ、ワームスレイヤーの初出であるDL2では「2Hソード+3」になっているのだが、DL2の再録のこのDragonlance Classics Iでは、本文(キス=カナンの墓所の説明)では2Hソード+3のままで、巻末のアイテムデータの部分のみ、どういうわけか2Hソード「+1」になっている。一体+3と+1のどちらが正しいかだが、DL2でもDragonlance Adventureでも、より後のClassics III (Mantoothという名が併記される。ただし、後のTales of the LanceではMantoothは別の剣の名になっている)でも、ひいてはAD&D2ndのTales of the Lance (1992)でもさらに後のd20でも、全て「2Hソード+3」である。繰り返されるthe most potent weaponという表現からも、+1の武器であるとは非常に考えにくい。
2Hソード「+1」は後出データで上書きされた結果等でもなく、またClassics Iでも本文の方では+3であることから、Classics Iのアイテムデータ部分の+1は「一箇所だけの単なる誤字」という可能性が極めて高い。
しかしながら、アイテムデータを参照する場合は、本文ではなく巻末のデータセクションをまず見るのが通常であると思われる。Classicsのみを所有し、かつ実プレイなどのために本文を確認でもするのでなければ、よりにもよってデータセクションだけが誤植されていれば、これだけが誤字だとは全く気付かないのが当然だろう。
Classics I-IIIは本サイトでも何度か挙げているが、ほぼDLモジュールの再録で、AD&Dの1stから2ndへの最低限のコンバートすらも行われていないが(classics自体はTSR側から2nd対応を謳われていることもあり、2nd版データであると繰り返している日本のwikiもあるが、冊中に2ndロゴもなく、現に2ndで使用するのに明らかに欠落や支障が多く「2nd用に作られたモジュール」ではない)一方で初出のDLモジュールそのままというわけではない。以前ドラゴンオーブでも説明したように、データ等の内容がより後出のものに差し替わっていたり、複数モジュールをまとめた都合で必要な記述が欠落しているデータや、上記のような原因不明のかなり厄介な誤字が混ざっている箇所が幾つかあるため、Classicsをデータの「初出」ひいては「小説のゲームデータ上の典拠」として挙げる前に一応は照合が必要である。
〇3.5e d20: War of the Lance
d20ではなぜか「ロングソード」に変わっている。小説本文(『戦記』2巻のヴェルミナアルドとの決戦場面)に「古風なエルフ作りの両手持ちの大剣」とあるので、本文の2Hソードからd20では明らかに変更されているが、スタームの剣が2ndまでの2Hソードからd20でバスタードソードに変更されたのと同様の調整の範疇ではある。使用者のタニスの使用武器(3.Xeでは1stコアルールよりも武器習熟は厳密である)に合わせたものとも考えられるのだが、少なくともこのWar of the Lanceのタニスのザク・ツァロス戦終了後(『戦記』1巻終了時)のデータでは、《武器熟練》はロングボウしか持っておらず、どの軍用武器の剣が出てきても支障があるわけでもない。なお、d20でのこのデータ(1巻終了)時点でのタニスの剣は「ロングソード+1」であり、AD&D(DL1)の初期装備の+2ではない。
d20でのワームスレイヤーの性能は「+3ドラゴンベイン」であり、エゴアイテム性能を3.Xeの通りに厳密に解釈するのであればAD&Dとは異なり「通常は+3強化ボーナス、種別:竜に対しては+5強化ボーナスおよび+2d6ダメージ」となる(3.Xeのドラゴンベインの対象はtrue dragonだけでなく種別「竜」の全てのクリーチャーなので、ワイバーン等の亜種や、クリンではドラコニアンを含む)。ドラゴンら(all dragonsとあるのでtrueだけではないと考えられる)のブレスウェポンや呪文等に+3のセーブボーナスがある点、true dragonのみ近づくと音響を発する(ただし、なぜか300フィート以内のドラゴンを起こすと範囲は増大している)など、その他は2nd以前のデータと同様である。基本的に(ドラゴンランス槍の方よりも)移行誤差は少なく初出に近い形でコンバートされているといえる。War of the Lance Chronicles I(竜槍戦争の3.5eシナリオ)の方でも同様の記述である。
なお、同じ竜特攻のあるドラゴンランス(槍)とワームスレイヤーの関係については、小説版読者は、ドラゴンランスはパラダイン神から授けられた唯一の対ドラゴン武器ではないのか(いずれも作内でさっぱり活躍しない点では同じだが)と納得しかねるものを感じるかもしれない。
実際のところAD&Dの時点では、ワームスレイヤーがドラゴンに対して倍打で(上述のClassicsの誤字以外では)強化ボーナス+3であるのに対して、ドラゴンランスは以前の記事で述べたように遥かに強大な竜特攻(使用者のhpと同ダメージ)を持つ一方で初出のDL7の時点ではドラゴン以外にはさらに使いづらく、性質は大きく異なっている。ゲーム的な都合を言えば前述したように序盤DL2のワームスレイヤーの方は対ドラコニアン、後半DL7のドラゴンランスは対ドラゴンを想定して配置されているといえる。
前述のAD&D1stのDL Adventureの年表では、ヒューマの時代、つまり最初のドラゴンランスの出現は第二次ドラゴン戦争なので、この時点ではこの2種の武器はほぼ同時代に作られていることになるが、同時期でも別特性武器であることになる。第二次ドラゴン戦争当時はドラコニアンはおらず、ワームスレイヤーはtrue dragonに対しては防戦にしか向かない剣であるので、やはり当時の有効性はドラゴンランスに劣る。
一方、AD&D2ndのTales of the Lanceの頃には既に年表が前述の資料とは大きく食い違っており(小説の注釈版の方は、こちらの年表に準拠している)、ヒューマの時代は第三次ドラゴン戦争で、ワームスレイヤー(第二次ドラゴン戦争時)はドラゴンランスよりも遥かに前の時代に作られているため、ドラゴンランス以前の貴重な竜特攻武器であったことになる。d20の方では全く同特性(ベイン武器)になっているが、活躍していた時代が全く違うとすれば、並存の辻褄は合う。
何にせよ、年表の設定変更はDL世界の酷い設定混乱の一因であるため、詳しくは別の機会とする。キス=カナンの剣としてシルヴァネスティに雌雄一対として伝わる剣、ワームズベイン(Redeemer)についても別の機会とする。(「ワームスレイヤーの別名がリディ―マーである」と書いてある日本のサイトがあるが、ワームズベインと名前が似ているのと両方タニスの剣なので混同されていると考えられる。)
ワームスレイヤーのその後だが、小説作中では『戦記』3巻の一行の分断の(タルシスで武装解除の後の)際にタニスでなくローラナ側が持ち、そのまま南エルゴスのクオリネスティらの避難所に(折れたドラゴンランスと両方は持てなかったので)置いてきたままになって以後『伝説』に至っても登場しない。『伝説』終盤のパランサスの戦いで、タニスがドラコニアンの石化を避けるため柄で殴ったという描写があり、この剣は上述の石化で奪われる効果への耐性を持つワームスレイヤーではないことがわかる(あるいは、それ以前に2年間剣を使っていなかったというタニスがワームスレイヤーを持っていながらその性能を忘れていた感、というよりは、作者らがワームスレイヤーの存在そのものを忘れていた感が著しく伝わってくる)。『伝説』後のDragonlance AdventuresやTales of the Lanceなどの設定集にも、それ以後についての記述はない。上述のd20のWar of the Lanceでも「置いてきて以後は不明」などと書いてある。一方、『憩いのわが家亭遺聞』ではタニスとローラナの結婚時にクオリネスティ王家(ポルシオス)から返還され以後は再度タニスが所持しているとされるが、ただし、『遺聞』よりも後に出た設定集でもこの記述には触れられることはなく、タニスらの手に戻ったという設定が故意に抹消されたという説も唱えられている。以後d20などでも後の時代のタニスが持っているのは上記したワームズベインの方であり、以後のワームスレイヤーについてはやはり定かではない。
D&D5版のFizban's Treasury of Dragons(邦訳『フィズバンと竜の宝物庫』)には『魔法使いフィズバンの姿をとったバハムートが、一見英雄らしからぬ英雄2人が赤竜パイロスの怒りから逃れるのを助ける。』という一枚絵がある(邦訳32ページ)。無論これは戦記2巻『城塞の赤竜の書』で、パックス・タルカス城塞の「鎖室」でパイロス(エンバー)からフィズバン、タッスルホッフ、どぶドワーフのセスタンが逃れる場面だが、この5版資料ではフィズバンには帽子がなく(この点についてはセスタンを助けようとして帽子をパイロスの目の前にうっかり落とした後という小説の描写と合っている)、カナリアを連れている(DLのパラダイン神ではなく、WGでのバハムート神が連れている金竜の化身)など、DLで普段描かれている姿らしくないので一見わかりにくい。英雄2人はタッスル(該当画の右)とセスタン(同左)ということになるのだが、タッスルはともかく、セスタンもどぶドワーフだとわかりやすいとはいえず、思い出すのに苦労する元DL読者も多いと思われる。
竜槍の英雄タッスルホッフはともかく、セスタンははたして「英雄」なのか、読者らにとってそれほど存在感はあるのだろうか。
小説版からさらにAD&Dのデータに遡ると、『城塞の赤竜の書』に相当する最初のDL2モジュールには、セスタンの記述そのものはある。『戦記』2巻同様に一行がソレースに戻ってからトード長官らの軍に囚われる箇所に登場し、小説版や挿絵の「金属の兜」「さびた斧」などのちぐはぐな装備の記述はあるが、独立したキャラクター(NPC)データとしては存在していない。おそらくモンスターデータ一覧表に乗っているどぶドワーフの一般データ(AC7, HD1, 混沌にして中立)を使えということだと思われる。
その後、舞台がパックス・タルカスに移ってからは、囚人の牢に囚われている所に再会する場面があり(小説版のように寝ているドラゴンの隣からフィズバンが救出したりする場面の示唆はない)どぶドワーフとしては勇気にあふれ、ドラゴン軍には反発する意思があることなどが記されている。DL2にはこれ以後は具体的な記述はないが、展開によっては同行することを想定されているのかもしれない。
また、DL5モジュール(この時点での包括的なワールドやデータ情報、DMへの手引き)には、(おそらくDL2よりも以後も)同行し得るNPCとしてセスタンが記述されており、相変わらずデータは無いが、同様にコミックリリーフだがどぶドワーフとしては「noble」なる精神を持つとされている。どぶドワーフでも、利益のためにはプレイヤーキャラ達を騙す狡猾でしたたかなバルプ大王ファッジ1世らのような者ではなく、ドラゴン軍に対抗するプレイヤーキャラ達と同様の動機を持ち得る、ということなのだろう。
AD&D1stの総合的ワールドガイド、Dragonlance Adventuresには特にセスタンの記述はない。一方で、AD&D2ndのTales of the Lanceでは、NPCデータの箇所に能力値等を含めたデータが設定されており、2lvシーフ、真なる中立であるが、他には特にDL2,5以上の新しい情報はない。同様にコミックリリーフながらパーティーの助けになるように使うのがよいといったDM向けの手引きがある。
かなり後年、3.5e d20のDragonlance Campaign Setting、War of the Lance (竜槍戦争時代のd20資料)にも特に記述はないが、3.5e d20版のシナリオDragons of Autumn (War of the Lance Chronicle I)では「ローグ2/ファイター1, 真なる中立」であり、データセクションにNPCデータがある。DL2,5と同様の記述の他、シナリオ内に台詞などもあり、その後は(パックス・タルカスに残った『戦記』と異なり)エリスタンらと共にやはりパーティーメンバーとしてトルバルディンに同行する可能性が触れられている。
セスタンは『戦記』2巻末によるとパックス・タルカス開放戦の後は同城塞に残ってどぶドワーフを指揮してドラゴン軍を岩落としで阻止し、『戦記』4巻には以後も同城塞に留まっている旨がある。さらに戦後は、Leaves from the Inn of the Last Home(かつての富士見邦訳では『憩いのわが家亭遺聞』)によるとヴェルミナアルドの槌鉾ナイトブリンガーを(盲目効果を避けるため袋に入れて)私物化し、パックス・タルカスのどぶドワーフの首長になっている記述がある。
小説版でも地味ながら竜槍の英雄一行を助けたことのある場面や、DL2,5の勇気ある云々、一行(小説だけでなく、各DLシナリオをプレイするゲーマーらのパーティー含む)に同行する可能性がある等の記述からは、ブープーが作者らのDL1のテストプレイで偶然活躍して以後『伝説』に至るまで重要キャラになったのと同様、セスタンが各DLシナリオで活躍する可能性を作者らから目されている節もある。
〇AD&D1st、DL6: Dragons of Ice
DLシリーズの方のDragon Orbsのデータは、おそらくは上述したコアルールに既にあったOrbs of Dragonkindのアイディアを受けて設定されたと思われるが、効果の方は、それらとは全く異なっている。アイテムデータとしてはDL6モジュール(1985)(『氷壁の白竜の書』に相当)に現れる。
シナリオ文中ではDragon Orbだが、データ箇所のエントリー名としてはOrb of the Silver Dragonとなっている。氷壁で入手できるこれは赤竜が封じ込められているものとされている。ドラゴン・オーブは基本的にモジュールのプレイヤーらには背景や能力を知り制御する手段は全く無いと書かれ、少なくともDL6の時点で使用されることはあまり想定されていないらしく、記載は詳しくない。
制御できなくとも利用できる能力として、まず、オーブ表面のコマンドワードを唱えて触れた者は、魅了を回避(セーブ)する必要がある(AD&Dのエルフにはチャームへの90%の魔法抵抗力があるが、アーティファクト能力であるためか後述のローラナでもロラック王でも全く働いていない)。セーブに失敗するとオーブ内のドラゴン(赤竜)に魅了される。セーブに成功すると、33%(1d6の1-2)の確率で数ターン置きに、10-40(1d4x10)マイル以内のドラゴンがランダムな色や大きさのものが呼び寄せられてくるが、状況による(例えば氷壁なら白竜が来る等)だろうとも書かれている。呼び出されたドラゴンは、(1st-DMGのようには)オーブやその利用者に魅了や支配などはされておらず、オーブの近くにいるevilでないクリーチャーを手あたり次第に攻撃する。
小説には全く言及がないが、他に制御しなくとも使用できる能力としてはキュア・シリアス・ウーンズを1日3回(DL世界では「癒し」はまことの神々=信仰系のみによるという傾向とは対応しない)、ディテクト・マジックとコンティニュアル・ライトが無制限というものがある。これらの術者lvは11lvのマジックユーザー(1stのネームレベルであり、大魔法使の目安)相当だが、無論(魅了を含め)ディスペル時などに関連するというだけで、オーブ自体がわずか11lvのアイテムというわけではない。
〇AD&D1st、DL8: Dragons of War
DL8モジュール(1985)(『城塞の青竜の書』に相当)にも大司教の塔のオーブの説明としてデータがあるが、効果はDL6とはやや異なっている。
オーブの背景が若干明かされ(特に「竜の魂の精髄(the dragon's soul essense)」云々の用語はОD&Dや1st-DMGのOrbs of Dragonkindそのままである)完全に制御できない者も竜を呼び寄せる効果を利用できる(小説でローラナが利用)のは同様だが、効果範囲は「111マイル以内」のドラゴンとされ、魅了へのセーブに成功すると、20%でブルードラゴン、10%でレッドドラゴンが、111マイル以内にいれば呼び寄せられてくる。70%で何も起こらない。呼び寄せられたドラゴンはDL6同様にオーブ近くにいるクリーチャーを攻撃しようとするので、小説の記述の通り、大司教の塔はこのアイテムの特性に応じた構造に建造されていることが伺える。効果範囲がDL6より遥かに広くなっているのは、ルールの変更なのかオーブ個体ごとの差なのかその他状況の差なのかは定かではないが、いずれにせよDL8が大規模な戦場を扱っているという理由もあると思われる。
〇AD&D1st、DL10: Dragons of Dreams
DL10モジュール(1986)(『樹海の緑竜の書』に相当、小説とモジュールで順番が前後しているが、分断したパーティーのうちタニスらシルヴァネスティに向かった方)では、エルフ王ロラックがとりつかれていたオーブの作られた背景の詳しい説明や、再度データがあるが、範囲は111マイルで同じだが呼び寄せるドラゴンが20%でグリーン、10%でホワイト、10%でブルー、60%で何も起こらないとなっている。DL8とのドラゴンの内訳差は、この時点では単にモジュールの状況の違いによるように思われる。
加えて、小説でロラック王の悪夢が広域に投影されていたMindspin能力の記述もある。最大で悪夢を見る者のInt×1マイルに投影され、近づくほど悪夢が強まっていく。ロラック王のIntは12である。本来はIntelligentな王であるという記述があるので、衰弱のためIntなどの能力値が下がっているとも考えられる。hpも18しかなく、明らかに衰弱した状態のデータである。背景説明もロラックがイスタルの上位魔法の塔で《大審問》を受けた際に持ち帰ったと小説に近い経緯になってはいるが、ロラックはFtr15/MU3であり、魔法使の方の能力もさほど高くない(MU 3lvで大審問自体は受けられる)。なお、のちの2ndのTales of the Lanceでもロラックの能力はそのままだが、3.5e d20のWar of the LanceではロラックはNoble6/Abj6/Wizard of High Sorcery6でInt17である。
悪夢を終わらせるには(小説と異なり)オーブを破壊するという手段をとることもでき、オーブはアーティファクトであるにもかかわらず(小説でDL6の方のオーブをタッスルがぶつけたホワイトストーンはおそらくは単なる岩ではなかったとはいえ)呪文等ではない物理打撃なら15%(1d20の18+)で砕くことができる。
トレイシー・ヒックマン自身は『樹海の緑竜の書』の注釈で、オーブのデータ能力の把握が曖昧なまま描いたため、ドラゴンを呼び寄せる力しかないはずのオーブで追い払わせた(ロラック王を開放した後に緑竜カイアンが退散したこと)旨、ただしオーブはドラゴンに不快感を与えて遠ざけること等はできたのではないか、と述べている。DL6の説明のような、通常プレイヤーキャラが全容を知ることはできないオーブの能力、に含まれると考えれば、なんとか辻褄はあわないでもない。
なお、DL8やDL10の再録のDragonlance Classicsでは効果範囲は恐らく後のDragonlance Adventuresに準拠して差し替えられMindspinの記述も無い。
〇AD&D1st、Dragonlance Adventures
AD&D1stでの総合的ワールドガイドにあたるDragonlance Adventures (1987)では、なぜかエントリー名としてのアイテム名はOrb of Dragonkindの方になっており、Dragon Orbsとも呼ぶと添えられている。効果は遡ってDL6のものに近く「1d4x10マイル以内のドラゴン」、確率が「1d6の1,2で近くのランダムなevilドラゴン」となっているが、DL10のMindspinの記載はない。内容自体に追加などはなく、ОD&Dや1st-DMGと異なっているのは同様である。
DL世界の他DM用ガイド、例えばAD&D2ndのTales of the Lanceには言及はあるが、ドラゴン・オーブのデータ自体はなく、完全に制御できた場合の能力の全容も載ってはいない。
レイストリンが小説本編ではDL10のロラックのオーブを入手し、以後使用することがあるドラゴンに特に関係ない特殊能力の数々は、おそらくはAD&D1stコア側のThe Orbs of Dragonkindが持っているような不定の多数の疑似呪文能力のような発動効果があるのではないかと推測させるが、これらの書物に記述はない。
〇3.5e d20, Towers of High Sorcery
d20(小説作者らのSovereign Press社による、WotCのライセンス品)のDLシリーズでは、3.5eの設定集のDragonlance Campaign SettingやWar of the Lanceには記述はないが、Towers of High Sorcery (2004)にはメジャー・アーティファクトとして載っている。属性真なる中立、Int19, Wis12,Cha19,Ego25といったデータがある。AD&D時代の魅了効果に相当するものとしてDC25の意思セーブに成功しなければオーブに支配され、Mindspinの効果を受ける。オーブの(おそらく支配されなかった場合に利用できる)能力としては、意思セーブ(DC25)に失敗した者で、術者のカリスマ修正値x5マイル以内のクロマティック(evil)ドラゴン、カリスマ修正値x1マイル以内の種別・竜クリーチャーを呼び寄せ、また術者lvが10lv以上であればドミネイトモンスター呪文扱いで500フィート以内のドラゴンをコントロールできる(即ちこちらでは「追い払う」こともできる)。スクライング(念視)呪文を3回/日使用できる能力もある。
ただし、それ以外の能力に関しては結局「(上位魔法の塔の魔術師らにとっても)全容は不明である」と書かれ、やはり終盤レイストリンのように制御できた場合の能力については完全に記載されていない。数値処理は細かくは違うものの、DL6以来のものと基本的に類似のデータといえる。前述のように、3.Xeのコア側のDMGにはコア記載のオーブがDL側も指すとも読める示唆があるが、3.5eのDL側では別のデータが準備されている。
〇AD&D2nd、Book of Artifacts (1993)、他
一方、D&Dシリーズコアルール側に戻り、のちのAD&D2ndの基本ルールの方では、Orbs of DragonkindはDMGにこそ載っていないが、コア追加ルールのBook of Artifacts (1993)に記述があり、丸数ページにわたってかなり詳細な記述がある。背景は「竜に脅威を覚える他のクリーチャーの願いに応じて神々が竜と交渉し『人質』として取得した」「ドワーフと竜の(北方の神話めいた)対立で生じた」といったDL世界とは全く異なるものが詳細に記されているが、アイテム名がthe Dragon Orbsと称されている箇所もある。1stのようなオーブの色(元になったドラゴン)や成長段階に関連する他の様々な能力の他に、各種のオーブに共通する(基本的な)パワーとして、能動的に発動する、ドラゴンの戦闘能力を与えるものや、ドラゴンに対するdomination呪文がある(1stの魅了効果のように自動成功ではない)。なお、DL6のOrb of the Silver Dragonのキュア呪文発動に対し、この2ndコア側のSilver DragonのオーブはGreat Healing Powerを有する。
ただし、断り書きとして「ドラゴンランス(R)世界の似たアイテムとは同じものではない。それらのオーブは該当世界(DL)にのみに特有のものである」とされており、基本的にWGなどの他世界のOrbs of Dragonkindと、DLのドラゴン・オーブは完全に別なものと規定されている(見開きでDL10の表紙と同じ一枚絵、オーブとカイアン・ブラッドベインに取り憑かれてしまっているシルヴァネスティのロラック王がでかでかと載っているにもかかわらず、である)。補足的に、Dragon誌#230 (1996)のロジャー・E・ムーアの記事にはWG世界でのOrbs of Dragonkindの記載(5版資料でも触れられる、古代スゥエル帝国の頃に作られたという説明を含む)があるが、ОD&D〜Book of Artifactsの背景説明はWGのものと「強く関係がある」、Encyclopedia Magica(註:2ndまでの書物のアイテム集大成資料、DLのものも含まれ、DL6やMC4のドラゴン・オーブも記載がある)には過去orbsとして発表された物品にも「似たものがある」などと曖昧にごまかしたような記載がある。
なお、DLが一時D&Dシリーズから離れ別のシステム(SAGAシステム)に移るのはこの資料より後の1996年であるが、それ以前からDL側とD&Dコア側の距離感はやや複雑である。
すなわち、DLのドラゴン・オーブは最初期はおそらくはD&Dのコア側のルールのOrbs of Dragonkindに限られた影響を受けて作られたが、小説に記述された効果およびDLモジュールでのデータは完全な別物であり、途中では、はっきりアーティファクトとしても両者は別のものだとD&D側からも明示されたが、ライセンス的にDLがD&Dに戻った5版に至ってコア記載としても同じものだと完全に統合されたということになる。
D&D基本ルール側とDL側の相互の発祥・疎遠・接近再統合を繰り返したややこしい関係からは、こうした極めて複雑な経緯を辿っている要素は他にも多い。DL設定とコア設定の一見共通に見える要素は「D&Dとしてはどの版でも一貫して同一のものを指し、小説作者だけが一時期短期間、勝手に違うと主張していただけ」のように流布されていることがあるが、その把握が正しいとはいえない。
一方、例の今も広く知られた「ソラムニックアーマーに(中略)真っ黒の中から橙色の目がキュピ〜ン」の鎧兜の姿は、『伝説』最終巻(Test of the twins, 1986)のヴァレリー・ヴァルセックの挿画にも現れ、それ自体は前記Dragonlance Adventureより早くからも存在するが(ただし、1年差なので整理されていない事情もあると思われる。これまで述べてきたようにDL Adventuresの内容自体も同様である)、クライド・コールドウェル画のDragonlance Calender (1987)には、すでにwikipedia(en)にも引用されている画像が出てくる(キティアラがショイカン原林の手に捕まっているのを画面の横で見ている場面だが、この横の部分だけぶった切られたり、切り抜かれて「ソス卿BB素材」化され、トレーディングカード画像などに用いられていることが非常に多い)。
さらに、AD&D2ndのTales of the Lance (1992)になると、その鎧兜に加えてさらに5版のMMの例の「松明」を掲げた姿の、後姿のイラストが描かれており、この時点では、すでに現在知られているソス卿やデスナイトの姿で定着している。(ただし、同じTales of the LanceのNPCデータ箇所や、1993年の再録モジュールには、DL9の歯茎ゾンビの姿がモノクロではあるものの載ったままになっている。)
〇3.5e d20: War of the Lance
Dragonlance Campaign Settingの補足として、前述のものをcommon (footmans)と位置づけ、こちらにはmountedランスの記載がある。基本的には前述のcommonと同様だが、mountedにはアーマークラスと、ドラゴンのブレスや呪文・疑呪に対するセーブ(回避)にボーナスがある。
〇その他:5版、Fizban's Treasury of Dragons
時系列上はかなり後(2021)だが、日本語でも読めるゲームデータ資料として5版のコア追加ルール(フィズバンの名は冠しているが、ワールド限定ではない)にもドラゴンランスの記載があり、バハムートに縁のある強力なアーティファクトの助けをかりて作られるとなっている。5版では各ワールド汎用のバハムートとDLのパラダインは同一神格となっており、アーティファクトとはDLでは銀の腕やカーラスの槌を指すと思われるが、他ワールドに登場する場合はそれらに限らないと思われる。+3(5版での最大値)のパイクまたはランス(それぞれfootmansとmountedに相当と思われる)で、ドラゴンに対して3d6の追加力場ダメージとなっている。また、近くの任意のドラゴン(乗っている場合は通常その竜と思われる)が追加の攻撃ができるボーナスがある。5版DMGの剣、ドラゴンスレイヤーもドラゴンに+3d6ダメージなので、コアマジックアイテムのベイン武器と同等の竜特攻という意味では3.5eのd20と同様だが、5版のデフレからも考えるとやや強力である。
〇AD&D1st、DL1: Dragons of Despair
「トゥーハンデッドソード+3」という記載のみで、固有名もない。またタニスが+2のロングソードを持っていたり、DL2のワームスレイヤーが同様に2Hソード+3(DL2の再録のClassics Iでは困ったことに+1と誤字になっている箇所がある)だったりするので、ボーナスなどがDLゲーム全体でこれだけ極端に飛び抜けているわけではない。しかし、+3というのはルール上、強力なエゴアイテムに付与されていたり一定の強力な敵にダメージを与えられる段階であり、しばしばAD&Dでは「伝説的な名品」の強化ボーナスの目安なので、3-5lvのパーティーの持つ品としてはこの時点から一種別格扱いであることがわかる。
〇AD&D2nd、Tales of the Lance
「ブライトブレイド」という剣の固有名、「トゥーハンデッドソード+3」のままだが反応に+2する能力、ライト呪文、プロテクションフロムイービル呪文/日、(小説本文中にも説明されているように)所有者が望まない限り破損することがない、といった特性がデータ上も追加されている。2900年前、バーセル・ブライトブレイドの時代にドワーフの手により鍛えられた等、本文や後の資料にも引き継がれた設定が述べられている。
〇3.5e d20, War of the Lance
「ブライトブレイド」の背景等の説明は2nd当時とほぼ同じだが、「+2アクシオマティック・バスタード・ソード」(混沌属性に対し強化ボーナス+4、+2d6ダメージ)となり、反応に+2や疑呪などは無くなっている。ベースの強化ボーナスが+3から+2に落ちているのはパワーバランス上の調整(ドリッズトのトウィンクルが2ndの+5から3.0eで+2になったのと同様)と思われる。小説本文中には「鞘(拵え)が銀造り」である旨の記述があるのだが、この資料ではsilvery blade(銀光の刀身)となっており、本体も銀や錬金術銀であるかは定かではない。
この腕輪はアイテム自体の属性がEvilであり、Goodキャラは触れると3d10ダメージを受ける。確かに小説作中で騎士団長グンター卿はこの腕輪からダメージを受け(Tales of the Lanceによるとグンター卿は13lvの騎士でhp62だから良かったものの、d20の並の現代軍人なら3回死んでおつりがくる)タニスは「騎士の誓いか何かに関係あるのだろう」と考察していた。が、よく考えてみるとタニスも属性がNeutral "Good"なので同ダメージを受けるはずである。Dragonlance Adventuresは小説『伝説』より若干後だが、照合が間に合わなかったか単に忘れたか、データを設定した側の整合が不十分だった可能性が高い。一方、後のAD&D2ndのTales of the Lanceによると、ダメージを受けるのは「Lawful又はChaotic」Goodのキャラクターであるという意味のわからない記載に直され(やはり誓いとは関係ない)、一応Neutral Goodのタニスが使う分には問題がない。
しかし、AD&D1stのDragonlance Adventuresでは、このワンドは上述したようなD&Dシリーズのデフォルト設定のWand of Lightningの一種とは書かれているのだが、それらの基本データとは大幅にかけ離れた性能を有している。15lvの術者が発動したのと同じ威力があり、AD&D1stではLightning Boltには(2ndや3.Xe以降のような)ダメージダイス上限はないので、15lv術者が発動すればダメージは15d6で上記AD&Dデフォルトのワンドの2.5倍、期待値は52.5である。キティアラは15lv戦士で最大hp68だが、表紙の状態でhp34以下とすると、これをまともに食らったらまず助からない。AD&D2ndのTales of the Lanceでは、(2ndのLightning Boltの上限の)10d6ダメージで、期待値は35であり、上記の状態のキティアラに直撃すればちょうどhp-1に落ちる。タニスが手当すれば助かるが、しなければ9ラウンドで死亡し、作中の状況と一致する。
なお、このワンドは(雷雨のあった週の)1週間ごとに1チャージを回復するようになっており、ただの量産品・消耗品のWand of Lightningではないようである。なぜこんなものをダラマールは無造作に机に置いておいたのか(携帯していなかったのか)。しかし、以後、キティアラの死因となったこのワンドのその後の使用者は、使用するたびにソス卿が傍に駆けつけてくる可能性がある、とも書かれており、いくら強力といっても、プレイヤーキャラとしてはそうそう使用したいものではない。
○癒しの指輪(Dalamar's Ring of Healing)
上記のキティアラの攻撃で腕がもげかけたダラマールが発動し、一命をとりとめた際の癒しの指輪。AD&D1stのDragonlance AdventuresではDalamar's Ring of Healing、2ndのTales of the LanceではGolden Ring of Healingと記述されている。
癒しは「信仰系」能力であることはDL世界設定でも例外ではなく、作内でもしじゅう言及されている。にも関わらず、この指輪は秘術系術者が「死から逃れるための最後の手段」として携帯するもの、といずれのデータにも記載されているが、その理由(どうやって秘術系で実現しているのか、それとも実は信仰系の品なのか)はこれらの資料には全く説明がない。1stのデータではCure Light Wounds、2ndのデータでは固定6hpを回復し、回復量そのものはわずかでしかないが、hpが0やマイナスに落ちている場合は触れるだけで(つまり、前述の瀕死状態でも自分で使えると思われる)1hpまで回復できる。チャージも特殊で、これで1度癒されたことのある人物には再度効果は発揮しない。例外的なアーティファクトめいた物品のようである。
Ftr Bbn Ran Pal Cvl Clr Drd Thi Tnk Wiz
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ケンダー 6 10 6 12 6 UL
ノーム UL
シルヴァネスティ・エルフ 10 UL 12 UL UL
クォリネスティ・エルフ 14 UL 10 UL UL UL
ハーフエルフ 9 11 UL UL UL 10
マウンテン・ドワーフ UL 8 8 10 8
ヒル・ドワーフ UL UL 8 8 8 8
マイナーな種族、カガネスティ(ワイルドエルフ)、ダルゴネスティとディメルネスティ(海エルフ)といった種族や、Unearthed Arcanaのさらに細かいサブクラス等の設定もあるが省く。
なお、最初の小説と同時期・同ストーリーのシナリオモジュール(DL1:Dragons of Despair等)の時点ではまだ上記のDragonlance Adventuresのような詳しい設定は書かれておらず、PHBのハーフリングと差し替わるケンダーについて数行の説明がある程度である。つまり、小説当初の想定(あるいは小説のベースとなった実プレイング)の時点ではPHBのデフォルト(WG世界、というには語弊がある)に近かったが、これに対して、Dragonlance Adventuresの時点でも非常に追加ルールが多い。
一般にgdgd人間ドラマで英雄的行動には程遠いキャラの多い小説のイメージから、DL世界はローパワーと信じられていることが多いが(日本のDLファンに、キャラやアイテムのルール上の強力さを、公式データの根拠を挙げて説明してもなお信じないことが多い)強力なデミヒューマンひとつとってもPHBよりも遥かにハイパワーなルールが多々ある。これは推測だが、おそらくファンがDL世界のパワーを求めたというわけではなく、作品世界の圧倒的な人気(数千万単位。なお、指輪物語が億単位、ファイナルファンタジーが百万単位、Wizardryが一万単位)故に、それほど必然性がない細部までデータ化(差別化)を行っているうちにこうなったのではないかと思われる。
蛇足ながら、タニスはDL14モジュールでFtr11lvに至っているので(『伝説』時のFtr12lvは2ndのデータなのでともかくとして)AD&D1stのPHBデフォルト(ハーフエルフはStr16だとFtrは6lvまでしか上がらないので、DL3で既にはみ出ている)は勿論、このDragonlance Adventure(Ftrは9lvまで)とも合わない(小説のヘタレた戦闘描写の多くからは当初ルールの6lvからずっと上がっていなかった疑惑を感じる人もいるだろうがさておく)。他にもクラスレベルがこれらのルールと合っていないキャラは散見される。
上記のGold Boxの3作とアクションゲーム2作(ヒーローオブランスら2作は、銀縁の箱に入っておりSilver Boxとも呼ばれる)の他にも、ドラゴンランスのコンピュータゲームには、空戦シミュレータもどきのDragonstrikeやストラテジーのWar of the Lance、また複合ゲーム的なShadow Sorcererなどがあり、これらも実は本編との関係でかなり重要なのだが、今回はFRとの関連・比較でも重要な主要なRPGシリーズ、Gold Boxに限って話を進める。
なお、後のd20(3.Xe)系のデータは、後で作られたもので小説の描写の元となったというわけではないが、ここでは『伝説』時のレイストリン(3.5e, Legends of the Twins)は27lv (Wiz7/Wizard of High Sorcery(Black)7/Loremaster8/Archmage5), CR28 (Master of the Tower of PalanthasテンプレートでCR+1)であり、D&D標準のWG世界の代表術師モルデンカイネンの27lvとほぼ同格にあたる……。
〇AD&D2nd、Tales of the Lance
背景設定の説明はあまり増えていないが、小説1期の『伝説』完結から時間が経ち、版が上がったためもあると思われるが、ここでもさらにデータに大幅に手が加わっている。
まずプロテクションリング+3、武器能力やダメージダイス+2、持続時間や集中といったあたりは1stのDlAまでと同じである。これに加えて、Secrets (Hidden Powers)として、AD&Dの多くのアーティファクト同様の大量の発動(疑似呪文能力)が追加されており、チャージ消費式のきわめて多彩なものになっている。
この疑呪のラインナップは、基本ルールのうちチャージ有アイテムの中でも非常に強力なものに属する、スタッフ・オブ・パワー(FR世界の小説にもしばしば登場していた)やスタッフ・オブ・マギといった杖にも匹敵するほどの多様な能力である。さらに決定的に違う点は、これら基本ルールのスタッフが消費式であるのに対して、この杖は20チャージを持っており、このチャージは銀の月ソリナリの光に1時間あてるごとに1チャージ回復するという、充電式で無限の使用が可能になっている。(設定上、最初の所有者のマギウス自身は赤の月ルニタリから力を引き出す赤ローブであるが、このTales of the Lanceの説明にはすでに所有者にパリンの名があるので、ソリナリの光云々はパリンが白ローブであることを意識した可能性もあるが、実際のところは不明である。)
ただし、このSecretsの箇所の擬似呪文能力は最初からすべて使えるわけではなく、所持者が杖を持って念じるたび、かなり低確率(1d10の1)で上記のうちランダムでどれかの能力が認識される。そうして3回認識した能力に対して、しかも使い手がIntの半分(Int18でも45%)チェックに成功して、はじめてその呪文能力を自分で使用できるようになる。非常に多彩な力がこめられているが、よほど使い込まない限りはすべての能力を知り、また使えるようにはならない。
また、上記のランダム認識のチェックの際、選ばれたのが高位の呪文能力のいくつかだった場合、その場でConチェックに成功しないと使用者は激しく消耗しきり、判定と移動にペナルティを受ける。レイストリンが呪文をかけるたびに消耗しきるという描写は小説版ではお馴染みのものであるが、実際はAD&Dには、特に呪文をかけたその場で肉体的にも消耗してペナルティを受けるという基本ルールがあるわけではない。また、レイストリンはCon10(ほぼ平均値)であり、小説の描写のような極端な虚弱体質では別にない。しかし、あるいはこの小説後のAD&D2ndの杖のデータは、レイストリンがしばしば消耗することに関する(整合するわけではないにせよ)後付け的なデータのひとつかもしれない。
何にせよ、この時点では名実ともに他のD&D系の「アーティファクト」に相応の物品にめざましい強化をとげている。DL世界のデータは、日本のDL読者からは「ゲームデータなどというものは小説の人気が出てから全部後付けされたものに違いない」などとほとんど断定されて流布されていることが殆どであり、実際にはDL初期のAD&Dモジュールのものについては小説以前に設定されているためその説の多くは誤りだが、しかし、このマギウスの杖の2ndの強化版については後から小説設定や人気が膨らんだ反映という側面は否定しきれないものがありそうである。
〇3.5e d20, Legends of the Twins
『伝説』についてのデータが主に追加されたこの資料のレイストリンのキャラデータ(27lv時)に記載があり、基本的には上記d20のDragonlance Campaign Settingsのデータを参照するように書いてあるが、そのデータの一部がレイストリンによってunlockされた能力に置き換わる旨の記述がある。ここでは「+2スペル・ストアリング」スタッフとなっている(DMGでは本来は指輪に付与される性能であるスペルストアリングは、呪文レベル5レベル分の呪文を蓄える)。また、呪文抵抗23、反発ボーナスは+6(+3でなく)、各種のグレーター・メタマジック・ロッド同様に呪文の距離延長、威力強化、最大化、持続時間延長を行うことができ、それぞれ1日3回ずつ適用できる。また、アークメイジのクラスを持つ使用者は(レイストリンも5lv持つ)「秘術の業火」による純粋魔力の攻撃をスペルストアされたものを含めて近接・遠隔で放つことができる。成長後のパリンのデータ(ウェイレスの塔の枢密会議の総首座となった頃の18lv時のデータが載っている)の箇所でも杖のデータは同じものとなっている。
3.5eの物品としてはかなり強力であり、ある程度は1stのDlAまでの性能に戻った部分もあるが、威力や持続時間延長が無限回であったDlAには及んでいない。2nd当時の疑呪も、おそらく自前で豊富な呪文を持つ『伝説』時レイストリンや成長後パリンには不要とも考えられてであろうがデータとして設けられていない。