ゲーム雑記・雑記







・フィンゴン

 *bandのアーティファクトに「フィンゴンに関係する品がないのがどうしても納得できない」という声があるとのことだ。一部指輪同人体質の原作尊重とはまた別の過剰感情移入にゃつきあってられんよとか思わず言いたくなったところで、[V]時点からの*bandの物品やユニーク輸入のあまりのいいかげんさや不可解さの立場上とても言えることではないのが虚しい限りではある。
 ICE設定のフィンゴンは120レベルの戦士/戦士となっており、第三世代ノルドではマエズロス(105レベル戦士/戦士)、フィンロド(115レベル吟遊詩人(戦士))とほぼ同格ながら若干優秀であるのは、(少なくともSil.ではかれら二人に比べても活躍が少ないにもかかわらず)「上級王補正」という奴なのかもしれない。
 装備品は+75の広刃(火炎・冷却クリティカルで、加速・炎と氷の矢の魔力あり)、+75の鎧(治癒能力あり)、+60の弓(オーク・トロル・獣人スレイング)、+50の盾(自己修復、荷重なし、所有者の手に戻る)といったものである。が、これらは、いずれもエルフ語などによる物品の名前は特に記述がなく、また、多くの装備に必ずといっていいほどある、特殊素材に関する記述も一切ない。
 やはりSil.などの活躍が少ないということで、数値は優秀ではあるが、わざわざ物品にエルフ語の単語を創作するほどの手間がかけられなかったのではないかと考察する。説明文もやや少ない。(それでも、巻末の索引などにレベル値だけ付記されて列記だのでないだけよい方である。)そんなわけで、フィンゴンにはそう簡単に*bandに輸入できるような「名前のある品」はないようだ。





・捨

 T&Tのソロアドベンチャー(ゲームブック)では、使用していたキャラクターが死亡したそのパラグラフに、頻繁に「そのキャラクター用紙を即座に破り捨てろ」と書いてあるのは、年のいったゲーマーの間では定番の語り草、笑い種のひとつである。
 が、これはただの笑い事ではない。なぜ「破り捨て」なければならないのか。なぜそれが死亡した「直後」のそのパラグラフでなければならないのか。
 未練を残さないということである。使用していたキャラクターに対する、プレイヤーならば誰もが多少なりとも生ずるであろう愛着、すなわち執着心を、即座にその場で、破り捨てろという意味に他ならない。


 捨はすなわち、棄なり。棄とは我が物を離し去ることなり。執着心を捨てるにほかならず。諸悪煩悩、これ女人根本なるをもって、如来はことごとく捨て給う。その如く、兵法にても、敵に勝たんと欲するときは、打ちくる太刀をはらりはらりと電影風光の如く、離脱するが善なるをもって、捨を名とせしなり。
(松浦常静子、”払捨刀(錺捨)”註解)


 切り落とす一刀ごとに、心を残さず新たに事にあたる、という示唆であるというほかに、道をなすとはつまるところ身につけていくこと以上に、それを洗練してゆくことであり、つまりは捨て去ることを覚えなくてはそれ以上前進することはできない。
 「捨て去ることを通して得てゆく」ことを真向から示してくるものは世に数少ない。例えばRoguelikeはその数少ないひとつである。もっとも、一見T&Tは得てゆく以前にキャラを使い捨てまくる悲惨な展開の楽しみ自体が目的のように見えないでもないが今回はさておく。





言いっぱなしではなんなので自分でもひとつ作ってみよう


ひょっとしてイギリスのゲームブック作者と、アメリカのガープスとかの「スティーブ・ジャクソン」は同じ人物じゃないか?
FF(ファイティング・ファンタジー)にはロボットコマンドゥというゲームブック(作者がスティーブ・ジャクソン(アメリカ))があるんだけど、これってまさにゲームブック作者でスティーブ・ジャクソンじゃん。

言っとくけど俺、ファイティングファンタジーには結構詳しいよ(FFゲームブック59冊全作クリアしてる)。





・検索ワード

切れ者キューゲル ヴァンス
キューゲル RPG 盗賊
クーゲル D&D T&T モデル


切れ者キューゲル Jack Vance's CUGEL THE CLEVER
14レベル シーフ
属性:真なる中立
Str 15, Int 18(56), Wis 13, Dex 18(93), Con 15, Cha 16

(Dragon #26 (1979)より)

 IntやDexに(56)とかがついているのは何かというと、このシリーズ「地球の巨人たち」記事では、Str以外に関しても「極端に優秀なヒーロー」を表すために、*bandのように他能力値にもエクセプショナル値(18のうしろの()内の1-100の数値)を設けてあるとのことだ。めちゃくちゃだなオイ。
 なお、キューゲルは「70%の確率で奇妙な出来事に巻き込まれ、85%の確率で論争に巻き込まれる」と、もはやルールにまで明記されてしまっている。





・検索ワード

フレイムタン 神話
 改めて見てみると、「フレイムタン」の検索に対して、googleの推奨ワードにもこれが出てくる。てことは、これが神話伝承の武器の「固有名詞」だとか、要はエゴ名や性能データではなくて神話が元だと思ってる輩があとをたたないということで、前からそうだろうと思ってたけどディフェンダーだのフロストブランドだのサンブレードだのもそんなふうに思われてるんだろうねい。
 後出のRPGに登場する武器のフレイムタンとは、最初期のD&D系の記述、例えばAD&Dの最初のDMGに記述されているランダムアイテムのエゴ名でいうところの'Sword +1, flame tongue, +2 vs. regenerating creatures, +3 vs. cold-using, inflammable, or avian creatures, +4 vs. undead'に由来する。この長ったらしいものは説明本文ではなく、これ全部で「ひとつの用語(武器用のエゴ属性名)」である。こういう用語自体に長々と無機質な説明のようなものが並んでいるのは、多分に最初期D&D作者ガイギャックスの愛読した、ジャック・ヴァンスの著作の魔法や世界設定の用語に影響されているのだろう。
 単なる金属形状や模様の形容のみならず、本当に魔法の炎の舌を放つ旧D&D系のフレイムタンソードは、あとづけが入り乱れて混沌としている旧D&D系のルールとしては例外的に、ひとつの攻撃の属性としてルールの中枢に組み入れられており、ウェブ(蜘蛛糸の呪文)を焼失させるといった効果が記述されている。なお、フレイムタンという語のかわりに、和訳もされている旧D&Dの青箱版などでは相当するエゴ名は「フレイム・オン・コマンド」、そして緑箱版では「フレイミング」となっているので、このAD&D用語としてのフレイムタンが日本語で人々の目に触れた機会は通じて(超レアな新和のAD&D2nd和訳や、一部PCのD&Dゲームを除き)非常に少ない。改訂や再編の結果「旧・海外AD&Dのみ」となってしまった諸用語が、由来が忘れ去られてしまうのは共通することではある。(なお、2000年代以降であれば、3.Xeではフレイミングやフレイミングバーストの他に、特殊アイテムとしてのFlametongueも入っている。)
 ちなみに上の「フレイムタン 神話」の検索では、例によって「FFなどのフレイムタンはスルトの剣がモデル」といった記述が大量に出てくるが、こういうわけなので格別そんな大仰な由来なんぞというわけではない。なお神話など探らずともFlaming-swordは聖書を含めて非常にありふれたシンボルイメージであり、flametongueは神話やら聖書に由来するという以前に、単なる「英語の当たり前の慣用句」をデータ化したものにすぎない。(まったくの余談だが、AD&D2ndのデータではスルトの剣は炎は出るが、flame tongue以下略のエゴ属性とはまるで別物である。)

 *bandの原型であるMoriaでも、エゴアイテムでの火炎武器はゲーム中(FT)と表示され、これはflame tongueを示すことが付属ドキュメントなどに示されている。例によってAD&Dの伝統踏襲という見方もできるのだが、フロストブランドなどにあわせてファイアブランドなどと統一すると(例えばNetHackでは、AD&Dのエゴと厳密には効果が異なることも考慮してかそうなっている)Moriaでの略称ではフロストブランドの(FB)と同じになってしまうので、字面の違うものを採ったという単にそれだけかもしれない。
 ともあれ、(FT)(FB)と二文字の略称が出ただけでそれぞれflame tongue, frost brandのことだとすぐにわかるという前提で選択されたということは、この二つの語が、Moriaをプレイしていたような古いゲーマーにとっては余程ありふれた馴染み深い語だという文化状況を強く示している。反面最初の方で述べたような状況をかんがみれば、例えば現代コンシューマゲーマーが仮にMoriaをプレイしてこれら二文字だけ突きつけられれば咄嗟に理解することは困難であろう。なお、Moriaから*bandになると(単純にAD&Dにあるものだけ取ってきていたMoriaと異なり)元素エゴが揃い整理されたためか、火炎武器はBurningなどと、元素武器の用語はいずれも一新されている。





・検索ワード

エルロンド 映画 最後の同盟 剣
MERP エルロンド 武具
 MERPの人物設定の詳細、ことに各人の装備品について詳しく知りたいというのは頻繁に聞かれる。しかし、検索などで見かけられるのは、クゥエンタ・シルマリルリオンに名前だけ出てくるようなエルダールの装備品がどうしても知りたいだとかいうのはもっぱらそっち方面の創作の人だったりして穏やかならぬ部分もあるのだが、とりあえず、MERP本体ルールを持っていなければそのまま使えない程度のデータという軽い紹介をしてゆく。(なお、これらのエルダールらの常識的プレイレベルから振り切れたデータが、MERP本体ルールを持っていたとしても一体使い物になるのだろうかという問題はさておく。)

 ICE設定では、エルロンドの剣は'Helkaluine'(ヘルカルイネ、クゥエンヤで「輝く青の氷」)という名のものになっており、OB+50(武器能力としては、アンドゥリルと同じである)のエルフのブロードソードで、イシルナウアで作られ、青色のラエンで装飾されている。氷のクリティカルを与え、聖なる武器、オーク類と火の生き物に対するスレイング能力がある。使用者の意思に従って加速能力を与え、エルフ(この場合、エルロンドも含むとは思われる)が使用している時にファンブルすることはない。グラムドリングやつらぬき丸同様にオークが近づいた時に青く光る、という能力があるが、これらと同様のゴンドリン製であるとは書かれておらず、単に「ベレリアンド」で鍛えられたとしか書かれていない(エアレンディルがゴンドリンから陥落時に持ち出したものである可能性もあるが、それ以上の推測材料はない)。総じて、第三紀に存在する剣とすればアンドゥリルにもひけをとらない品である。
 剣以外の装備品は、防御呪文のいくつかの効果を持つドリアスのクローク(メリアンが編んだものである)、頭部クリティカルを防ぐサークレット(かねてから海外イラストなどでも、額が広いというのは映画のみの設定ではない)、上質のイシルナウア製のチェインメイルといったもので、固有名のついた物品は剣のほかにはない。ヴィルヤ(力の指輪)に関しては何か別に述べる機会があるだろう。

 エルロンドのMERPでのクラスレベルは「まじない師/神官(吟遊詩人、念力治療師、戦士)」でレベル65である。第三紀のエルダールの巨頭といえばキアダン、エルロンド、ガラドリエルだが、この3人のさまざまな力関係に関してはファンごとに諸説があることだろう。MERPでの個人能力のレベルは、キアダン70、エルロンド65、ガラドリエル60という関係になっている。


エルロンド 禿
 いやそこまで言い切らなくったって。





En.wikipedia - Muramasa

 ゲームなども含むReferencesの項目があるのに、そこに「Wizardryの村正」が独立した項目で挙げられていない点(07'5月現在)が「日本ではまず絶対に考えられない点」であるとのことである。
 なんでも、一部のWizパラノイアの間ならずとも強力な武器で日本刀が登場するのは全部Wizが由来などと一部では主張されているという話だが、それどころかRPGのWiz起源説には、中には「魔法使いが呪文を唱える」という認識さえもPC版Wizで呪文をキーボードから入力していたのが由来であるとか、オークが弱いという認識も全部Wizが元だという主張さえあるということだ。
 が、そも、元来そこまで大きな影響力など、最初からWizにはない。Wizは海外では最古典だったかもしれないが正統ファンタジーでも何でもない。日本では正統ファンタジーだったかもしれないが(そのカルト人気が勃興した時期からも)最古典でも何でもない。WizのRPG史において重要なものは、「RPGファンタジー世界の認識の基盤」に対する寄与などでは全くなく、もっと別のものである。





・検索ワード

D&D ケルト 神々 領域
 「領域」ということは、3.Xeでのデータを探しているのだろう。D&D/AD&Dの1stや2ndまでにはほとんど素人が考え付く限りから考えも及ばない限りまでのあらゆる神格データが存在するのだが、実は3.0eでは、De&Deには「D&Dオリジナルの一部(WG世界+α)、ギリシア、(なぜか)エジプト、北欧」のデータしかない(d20など非基本ルールはわからない)。従ってこれ以外の神話、例えばケルトなどに関しては、「属性」と「神位」は1stか2ndかどちらか当時のものを流用するとしても、「領域」のデータがない。1stや2ndのデータを元に、権能やスフィアー(2nd)から想像でもして使うしかないが、どうも上記のギリシアや北欧を見る限り、2ndのスフィアーと3.0eの領域は食い違いが激しいので、あまり得策とはいえないかもしれない。
 ちなみに1stと2ndのデータを折衷してファンが作ったケルティック・パンテオンならば、有名なファンフォーラムの
Planewalker.comにある。日本神話もあるが(こちらは属性、神位などはほとんど2ndのままである)ライデンの地上代行者が「ザ・タヌキ」だったり相変わらずよくわからない。

                     権能     領域        好意武器 ホームプレーン
クーフーリン(混沌にして善、半神(※1)) 個人戦、挑戦 混沌、善、力    スピア  アウトランズ/ティルナノグス
ハチマン(秩序にして中立、中級神)    いくさ、勇猛 勇気、秩序、力、戦 カタナ  イスガルド/ケニャマ(※2)

※1 AD&D2ndではクーフーリンは英霊であり、モータルである。つまり英雄神ですらない。
※2 「剣山(つるぎさん)」のことか?





・検索ワード

アイウーズ 外見
 ごめん、御曹司の自分的見かけはディスガイアのラハールだわ。
 それはともかく、正式なアイウーズの「現在の姿」は醜悪なデーモンか、人間時にはしわがれた老人ということになっており、LGG(グレイホークワールドガイド)挿絵のペイロア司祭におしおきだべ〜の姿などいかにもしわがれているが、代表画像としてよく引かれる
シナリオ表紙で見ると、老けてはいるがヨボヨボというほどではない。(参考:父母

 「古きもの」アイウーズはそのタイトルと老人の外見に反して神としては非常に若く(頭角をあらわしたのは百年程度前である)どうもWG世界は主要キャラにせよせいぜい数十年キャリアの人々が動かしている、きわめて「若い世界」という印象を抱かせる(千数百年前のあいどるちょうじんばかりばらまいて大風呂敷を広げるFR世界などに比して)。これはほんの少し昔のデザイナーらの持ちキャラが主要人物として設定された(本人が加えたのではなく、後のデザイナーらが敬意から加えたものも多い)ためが大きいと思われる。





言っとくけど俺ファンタジーには結構詳しいよコピペ

 たぶんベルセルクスレが元だと言われているこのコピペだが、最終的にはたいして流行らなかったのか、残念だ。「FFシリーズ」のところを適当に新紀元社のなんぞとか改変したいけど、なかなか一般とゲーマー双方に通じる汎用性のある語が見つからんよね。





・牢名主

 かつての新和版のCD&Dルールブックの誤植・誤訳については改めて繰り返すまでもないが、しかし、新和に何も関係ないところですら、また古今を問うことなく、どういうわけかD&Dがらみには異様な誤訳・誤植がつきまとっている。例えば、2004年という時代になってすら、PCゲーム
ToEEのライブドアのずさんな和訳、ことに使い魔として選べるイタチを「雪上車」と訳していたものは、古参TRPGファンをしてかの新和の「プルトニウム貨」を超えたとすら言わしめた。

 そんな新和以外のケースのうちひとつに、映画"E.T."冒頭のD&Dプレイング場面に対して、'dungeon master'という語を日本語一部媒体で「牢名主」と訳していたというのが、D&Dファンのみならず、日本のTRPG黎明期そのものを語るにあたっての定番の語り草である。
 なお余談だが、この"E.T."の日本語字幕版は、担当者だったのは言うまでもなく戸田奈津子である。なっちの災いの手はまさにサウロンのごとく果てしなく長い。





アンサイクロペディア:アドベンチャーゲームブック

 なんでそこでよりにもよってドラゴンランスの『パックス砦の囚人』の表紙なんだよ。向こうではドラランといえばガンダムみたいなもんだからこっちで電車男がダメオタといえば適当にガノタになったりするようなもんかね。それにしてもこの原書のバーン(中央の男、主人公)、老けすぎである。





・検索ワード 〜 伝承武器(つづき)

 PCゲームの『バルダーズゲート』や『ネヴァーウィンターナイツ』といったシリーズに、「アングルヴァダル(アンギュルヴァデル)」や「ジ・アンサラー(フラガラッハ)」といった実在伝承の武具が登場することに対して、これらのゲームの世界設定はD&D系オリジナルのFR世界であり、現実世界の伝承とつながりがないはずであることから、しばしばプレイヤーから疑問の声が上がる。
 無論、安手の設定のCRPGなどでは、オリジナル世界でも無知無芸にも当然のごとく地球の伝承武具が登場することは珍しくないが、これらBGシリーズ等のものはしばしばエゴアイテム名(「ジ・アンサラー+4」など)だったりすることもあるのが、混乱に拍車をかけている。

 例えばジ・アンサラーは、FR世界の設定特有というわけではなく、AD&D 1stのルールレベルでの共通(Unearthed Arcana記載)の、「ファイナル・ワード」という剣のエゴアイテム(ただし9本しかなく、固有名としてはそれぞれ応答者に類似の反駁者・反論者等の名がついている、とされる)がそれにあたる。
 しかしながら、これは(FRでなく)WG世界設定のシナリオの古典中の古典、「元素邪悪寺院」すなわちToEEにも遡る。WG世界の元素邪悪寺院に隠されている「ジ・アンサラーすなわちフラガラッハ」は、どこか”別のところ”で作られたが、グレイホークにもたらされたという。その複製である6本のファイナル・ワードについても記されている(※1)。
 つまり、どうも本当に地球のケルト神話のフラガラッハが、WG世界に移され複製されたと考えるべきものらしく(なお、一時の設定ではD&D系の多元宇宙”大いなる転輪”は地球を含めどんな世界にも繋がっている)WGの物品、D&D共通の物品となり、これらを引き写すことの多いFRにも結局取り入れられてしまったらしい。

 すなわち、地球の伝承の武具そのものをWG世界に出しているわけで、結局は昨今の安手のCRPGと似たような発想かと思うかもしれない。無論、最初期D&D系とWG世界のデザイナーらというのは、呪文の名前に自分達(の操っていたプレイヤーキャラクターの魔法使)の名前をつけるような人々であるから、そういう見方もできるだろう。
 が、かれらの仕事たるや、それこそRPGそのものがまだ存在しない時代、例えばの話、現在ではRPGでの一般的モンスター名と完全に定着してしまっているもの、ドラゴンやゴブリンのように幻想説話の頃から元々一般名詞のようなものだったもののみならず、特定の説話のメデューサやらスキュラやらのような固有名詞(だれぞの「人名」)であったものを、RPGの一般名詞(種族名)とするといった判断までも、いちから行っていたような時代の話である。RPGというものをいちから作り出すにおいて、何を一般的なものとし、何をどういう形で伝承から輸入するかも、何もかも手探りであったろう。ここに紛れ込んでいるフラガラッハとファイナル・ワードも、そういうごちゃごちゃした時代の産物のひとつであるかのように思える。


※1 「フラガラッハとは古代オアリディアン人の言葉で”最後の言葉”を指すことから、それを訳したのがファイナル・ワード」と記されている。「フラガラッハ」とその英語訳である'Answerer'は通常、応報者、返答者と解釈されるが、ここでは「最終回答」という解釈であるらしい。
 まったくのWG設定の話となるが、現実地球のゲール語のことを「古代オアリディアン語」と明言しているのも注目に値する。WGファンの間では、パンテオンなどの雰囲気から「スール系は北欧、オアリディアン系はラテン、バクルーニー系はアラブ、フラン系はなんかよくわからんけどたぶんケルト」といった何となくの風評が流れていることがあるが、そういった部分を見直す材料がまだあるのかもしれない。





・検索ワード

D&D データ 伝説 魔法の武器
 AD&D1st-2ndのものを主にEncyclopedia Magikaより一部のみ適当に抜粋する(3.Xeではおそらくサードパーティーのものを除き、神格はともかく英雄や伝承のデータというのは少ない)。特殊能力はエゴアイテム特性以外は書ききれない。Le&Loなどの神格(のみ)の武器は一部除いて省略。

アロンダイト    ロングソード+2              ランスロット卿の剣 ※vs悪、中立に攻撃のみ+5の場合あり
オーディンズソード ロングソード+3、+5ドラゴンスレイヤー  シグルドの剣 ※グラム、バルマングと全部別物
バリサルダ     ロングソード+3シャープネス        魔女ファレリナの剣
バルマング     ロングソード+4ヴォーパルウェポン     ジーフレトの剣
コラーダ      ロングソード+5ホーリーアベンジャー    エル・シドの剣
デュランダーナ   ロングソード+3、シャープネス+ヴォーパル ローランの剣
エクスカリバー   ロングソード+5シャープネス        アーサー王の剣 ※変更・異データ多、聖剣の場合あり
ガエボルグ     スピア+5                 クーフーリンの槍
ガラティーン    ロングソード+3              ガウェイン卿の剣
グラム       ロングソード+3ナインライブスティーラー  ジークフリートの剣
ジュワユース    バスタードソード+4            カール大帝の剣
クスノギノツルギ  高品質カタナ、プラント+ドラゴンベイン   多分草薙の剣のこと
フランベルジュ   2Hソード+3フレームタング        カール大帝のものを指す
ミマング      ロングソード+2ウーンディング       ヴィッティヒの剣
モーグレイ     ロングソード+1ラックブレード       ビーヴィス卿の剣
ナゲルリング    ロングソード+5ディフェンダー       ベルンのディートリヒの剣


 同じものが別々のデータだったり、本当に別物とされていたりが多々ある。なお、CD&Dの黒箱に名前だけ書いてあったのが、いつのまにEnc.Magikaではデータもできている(そしてほかの出典は書いていない)という怪しいデータが多々ある。また言うまでもないが、付記されている説明にはなんだかわからないものも多々ある。
 AD&D1st-2ndのデータでは、(3.5eのEPICルールとは異なり)ルール的に強化ボーナスは最大で+5までしかない(1stでは+6以上が存在しないでもないがあくまで例外)。また伝承英雄のデータには、何の魔法の武器も持っていないものがしばしば見られる。
 これらの事情で、1st-2ndまでは真に強力なものは軒並み+5、といった結果となっているが、かなり有名なものでもそれ以下のものは珍しくない。つまりはこれらの武器の凄さが伝わったのは、武器が宝具だのなんだのだったわけではなく、凄かったのはあくまで本人やそれに付随する運命の物語であった、とでも言いたげである。





・検索ワード

サウロン MERP レベル
サウロン MERP レベル グロール
 360。ところでグロールは何だろう? マとフィンデルのどっち?
 ネット上を調べてみると、サウロンのMERPのレベルを聞かれて誤ってアングマールの魔王のレベル(60)を教えているケースがどういうわけか5、6件見られた。かつてマイアのバルログをも打倒したグロールフィンデル(50)なら同じマイアのサウロンに対抗できるだろうか、という命題を聞くことがよくあるので、これらの流布がそのあたりをさらに混乱させている可能性がある。

 細かい話をすると、サウロンは《一つの指輪》を鍛えた頃の最大の状態で360、第一紀の妖術師としては240、霊体ではドル=グルドゥアの潜伏時は120、その後にある程度力を取り戻した当時は180である。
 マイアとしての本来の力は240、おそらく検索者の目的と思われる第三紀、「指輪物語当時」でのレベルというなら、180ではないかと思われる。どのみち指輪を持っていない状態でなお、第三紀の中つ国に残るあらゆる存在(最大でキアダンの70)とは、まさに比較にならないほどの差がある。無論、トム・ボンバディル(MERPではヤヴァンナのマイアとしている)は別にしての話ではある。

 ボンバディル   360
 エオンウェ    350
 イルマレ     350
 アリエン     325
 クルモ      300
 メリアン     275
 オローリン    240
 アイウェンディル 180
 ゴールドベリ   150

 クルモらイスタリらの力はアマンでのもので、エンドールでは人間型の肉体に束縛され40−50である。(バルログらも平均30代と低いが、おそらくデータ的にイスタリに合わせてあるのと、至上神に背いた彼らはイスタリ同様に本来の聖霊の能力は出せないという解釈だろう。)
 アウレのマイアとしてもかなり力のあるものであった、というサウロンのマイアとしての能力は、オローリン(ヴァラクゥエンタの記述によると、マイア中でも非常に優れているとされる)と同等であるからかなり優秀ではあるが、さりとて、最大級というわけでもない。伝説時代の妖術師当時、メリアンと対峙すれば劣勢であろうというのは、おそらくは妥当な解釈なのだろう。





ランクマーd20

 つまりはD&D 3.Xe準拠用のデータなのだが、かつてAD&Dの1st-2ndに存在したフリッツ・ライバー作品の諸データも元にして作ってある。そして、各神のホーリーシンボルにWGやFR世界設定の既存のものをパックンチョするのは常套手段である……。





・検索ワード

アングマール ガントレット
 映画に出てきたあれがえらく人気があるようだ。*bandのデータか何かを求められている気がするが知っての通り特にない。MERPデータの魔王モルグル・プレートは海龍の鱗製で、鉄製じゃないねえ……MERPのムラゾールは鉄の砦の王以前に、海洋王の一族ということのようだ。

10レベル D&D ソーサラー
 この検索語が増えたのは明らかに
DDOのせいだろう。

バハムート 神格ランク
 10。

アザトース 超神
 アザトースはCoC d20では上級神である。まあ超神でも別によかったのだろうが、 モンテッテとかにとっては、「クトゥルフ・パンテオン」という、地球に存在するひとつの万神殿に過ぎないということで他の神話と同等なのだろう。あとは単に殴り合いできるデータにしたかったか。

3.5 D&D SRD d20 和訳
 そんな都合良いもの簡単に見つかりゃせんよヌホヌホノホホノホホノホ

BESM D20 和訳
 そんな通好みのもの簡単に見つかりゃせんよヌホヌホノホホノホホノホ

T&T 火山の戦士たち
 そんな火山は存在しない。てかあやまれ! 大魔術師カザンとレロトラー陛下にあやまれ!

Gumband 和訳
 Gumbandに関する検索語が急に増えている。エルリック、ホークムーンの新版・新刊効果がここまで及ぶほどであるならば有難いのであるが。

TRPG ストームブリンガー デーモン作成 ハウスルール ルール
 まあ色々ハウスルールなぞ作らないとやってられないという気持ちはわかるけどこのサイトには存在しない。





・検索ワード

ストームブリンガー D&D データ
 まずは、最初期の神格英雄本De&Deに載っていたムアコック関連データ(あとの版で削除された)のものである。ここでは、+5ソードだが、よく述べるようにAD&D2nd(と、EPICルール整理前の3.0e)までは一部例外を除くと強化ボーナスの上限が+5なので、どんな著名な武器でも軒並み+5で、むしろ特殊能力や、さらには本人の能力が重要と思わせるものが多い。この剣も例に漏れず、重要なのは特殊能力で、命中すると50%の確率で犠牲者の「総レベル」、残り50%で「総レベルの半分」を吸い取る。エルリックは吸い取った2lvにつき5hpと+1Str(最大Str23まで)を得る。200lvを吸い取ると剣は飽食し、8時間は次を吸い取らない。インテリジェンス18、エゴ20であり、エルリックの命令で自動的に踊って殺戮、他のプレーンからも呼べば飛んでくる(いずれも失敗率はある)。他にもエルリックのAC良化、呪文抵抗増大、殺戮に及んで呻くのを聞くと敵は逃走など、細かい能力は沢山ある。後にまとめられた(改訂)時は少し弱くなっているが、実質は大してましにはなっていない。

 次に、最初のストームブリンガーが削除されたのでD&D系における魂を吸う剣の代替品とも言える「ブラックレイザー」である。『バルダーズゲート』シリーズや、3eでリメイク(
参照)された際は様々な差異があるが、最初にシナリオ'White Plume Mountain'で登場した際は、+3インテリジェンスソード、カオティックニュートラル、インテリジェンス17、エゴ16である。直接レベルを削るのではないが、とどめを刺した際にその対象の魂を喰らい、その対象のレベルの値に相当する最大hpを一時的hpとして使用者に与えるというもので、初出のストームブリンガーの強い影響があるといえる。また、剣が魂を吸わない3日ごとにエゴが1点上昇してゆき、早晩使用者を支配して殺戮に強制するようになる。またD&D系のインテリジェンスソードの類にもれず、いくつかの擬似呪文能力をもつ。

 最後に、d20ルール=エルリックの現在の正式なD&D変換データであるDLoM(ゲーム自体の評判は芳しくない)のものだが、これは最初のDe&Deのデータをもとにしているものではなく、BRP版(『ストームブリンガー』や『エルリック!』)の「デーモンウェポン」のルールが元になっているものである。剣としては+11グレートソードで(D&D 3.Xeでは+6以上のアイテムも存在するとはいえ非常に強力である)またダメージ追加分は+11でなく、デーモンウェポンとして変動値(4d10)を追加する。またレベルを吸うのではなく、Conの値を1d100吸い取る(BRP版ではPOWを1d100吸っていたのに対応する)。D&DのグレートゴールドワイアームでもCon33なので、普通の次元世界の範疇にはもちこたえられるような存在はまずいない。さらに、イニシアチブにも+5あり、こんなエルリックに対して先制するのも困難である。

 例えば以前、D&D系データではヘラクレスは完全な”神格”の力を持っているため、”英雄”レベルではエルリック以外、アーサー王だろうがクーフーリンだろうがギルガメッシュ(CD&Dではascendに失敗しているモータルである)だろうが鼻息で吹っ飛ぶと書いたが、ヘラクレスはCon28なので、エルリックにだけは1度でも斬られればきっかり2回ほど死ねる(※)。Conを持たないアンデッド等なら少しはエルリックに持ちこたえられるかもしれないが、デーモンウェポン相手にそうそう保つとも思えない。

 概して、NetHack(他ではAD&Dの、特にDe&DeやLe&Loを参照していることが多い)のアーティファクトとしてマイルド化しているデータのそれよりも遥かに凶悪である。


※追記:2ndまでや、神格ランクなしのアスペクトであればの話。さすがにアルボレアにいる「本体」であれば神格特性で耐性があるので効かないかもしれない。





あぁ〜ん満たされていくぅ、あっあっあっふふう〜〜〜〜〜ん!


ヘカテー 中立
ヘカテ 混沌 中立
ヘカテ 混沌 悪
ヘカテー 中立 悪
ヘカテー 秩序 中立
ヘカーテ 秩序

 一体どういう層がなぜ探しているのかは皆目見当もつかないが、とりあえず何の情報を探しているのかはわかるので手許からまとめてみる。

     属性         権能          備考
AD&D1st 秩序にして悪、下級神 魔術          ヘルハウンドが名物
AD&D2nd 混沌にして悪、中級神 魔術、月、贅沢     Wiz20
D&D3.0e 中立にして悪、中級神 魔術、月、豊作、不死者 Wiz20/Clr20, 神格ランク11, 悪、知識、魔術、(創造)

 結論から言うと、属性だけがなぜかばらばらである。ヘカテーはヘシオドスの詩の中に、不可解に冗長な分量を費やした礼賛、しかも世界に対する強大な権能をほのめかすものが含まれていること(これは、詩の霊感の主のような存在をわざとらしく持ち上げるくだりを入れるという定番、もしくはそれを模しているとも思われる)、また後の時代までいわゆる魔女神として根強く信奉されてきた側面があり、いわゆる12神のような主要神以外では、よく名の挙がる重要神といえる。が、ギリシアの神々に血肉を与えている魅力的な説話のたぐいは、ヘカテーに関してはほとんど残ってはいない。
 1st-3.Xeでデータが変動するのは珍しくないが、属性だけでもこれだけばらばらなのは、その実体のなさ(ささいなデザイナーの見解の差や、あるいは他の神格の属性とのバランスの都合だけで容易に変更されてしまうほどの)に起因しているとも思える。




・遠い昔の物騙RRYYYYYYYY

 恐らくはデザイナーの編集のための調査範囲が重なるためか、古いD&D系の実在神話の神格データには、その文化における神位に届くか届かない程度の著名な伝承英雄のデータも併記されているのが通例である。ゆえに、(質問を受けたが)先日とりあげたDragon#13(1979)のJapanese Mythosデータにも、'Japanese Heroes'の最初期のデータが併記されている。そのうちのいくばくかはのちのLe&Loといったよく知られるデータ集には見られないものである。
 ちなみに「モモタァロ」はここでは「スクナビコォォ」の化身とされており神格なので略する。


                クラスレベル        str(参考)
イススン・ボサァーイ the 1-inch ファイター7           12     
カインタァロ the golden boy   ファイター10          18(99)   
レイコー            ファイター10          18(50)   
タワラトーダ・ハイドセイトゥ  ファイター10          18(65)   
ベンキィー            ファイター12          18(60)   
ヨシィツゥーン         ファイター11          18(75)   
Light-of-fire & Shade-of-fire  ファイター10              17    
ヤマモトゥ・デイト       ファイター12          18(50)  
ショートク・デイシィ      クレリック10/ファイター4   8    
ヨシィ=ィァアーイ       ファイター10          18(80)  
キョモリ            ファイター10       18    
テイムトゥーモ         ファイター10          18(45)  
エン・No・ショカクー     ウィザード12/ファイター4   7    
コボ・デイシィ         クレリック14/ファイター5  10  
ニカイァレン          クレリック14/ファイター5  7


 str値を見る限り弁慶よりマッチョな義経というのが嫌すぎるが、説明では「ヨシィツゥーンはベンキィーを打ち破った唯一の武士」となっており、これをデザイナーが単純に「義経を弁慶より大力」と受け取っているのか、あえてゲーム的に大力と表現したのかは定かではない(ただし、AD&DのルールではStr18/60と75の間にはボーナス等の上での差はない)。
 Light-of-fire & Shade-of-fireとは「ホデリノミコトとホオリノミコト」と思われ、すなわち「海彦山彦」である。なぜこれだけ英語なのかは最大級に定かでない。
 ヤマモトゥ・デイトは説明には「景行天皇の息子、仲哀天皇の父」とある。つまり、のちのAD&D 1st Le&Loにおいて
遠藤雅伸をのけぞらせたYamamotoとは、実はヤマトタケル以外の何者でもない
 エン・No・ショカクーの、ショカクーとはおそらく「小角」、つまり「役小角(えんのおづぬ)」のことだと推測される。

 なおAD&D1stなども最初期は比較的ローパワーであったことを反映するように(3.0eではCR18のドリッズトが、1stでは10レベルだったように)クラスレベル的には10lv台前後-前半のものが並んでいる。ドリッズトの他、源頼光もこの後に強化・クラス追加などを繰り返し、最終的に2ndではレンジャー18になっていることから、これらのデータをもし2ndや3.Xeのデータとして想定・コンバートするならば、1.8倍のレベルを与えるのが妥当かもしれない。
 やたらと一律10lvばかりだが、私見ではおそらくこれらの個人能力を比較し細かい差をつけるだけの根拠となる資料をデザイナーが持ち合わせなかったのではないだろうか。それだけに11-12lvとなっている弁慶や義経や日本武尊の説話をよく聞けたのではないかと思わせる(よく聞いてヤマモトゥなのかよという点はさておく)。そして、それらに対して聖徳太子(なぜか完全に「仏教家」と説明されてしまっている)や日蓮ら、宗教家の能力が大きく飛びぬけているのも注目に値する。





・D&Dデータにはいわゆる世界三大宗教は存在しない

 一般にはそう思われている。しかし、かつてはそのうち2大宗教の天sオホオホオホホウホオホホホンの記述があったという他に、実は残り1宗教である仏教、それもこともあろうに「日本における神仏」というものが最初期Dragon誌#13の"The Japanese Mythos"の記事にあった。
 これはD&D系において宗教問題がややこしくなる前であったという背景もあるが、それ以前に、ごちゃごちゃと神仏混合でまったく独自のものとなっている日本の仏教(しかも、日本語の神仏名はにわかには原語との関連がわかりづらい)に対して、仏教とすべきか日本独自の神話とすべきか、この時点では判断がつかなかったのかもしれない。なお、これらは当然、以後の神格ルール等には再録されていない。


              属性     権能
エーイザン・ミョーー    −      愛欲、性的な意味で沸きおこ(ry
エイミィーダ・ニョウレイ  −      −
デインイッチ・ニョウレイ  −      −
フュードゥ・ミョーー    −      −
フューウジェン・ブセィツゥ −      −
ジャイゾ・ブセィツゥ(半神)秩序にして善 死の守護、子供の支援
Kanonブセィツゥ    −      −
クワアァンンノン      −      慈悲          
マイロック・ブセィツゥ   −      未来
モォンジュウ・ブセィツゥ  −      −
シェーイクァ・ニョウレイ  −      −           
シ・テンノ         −      −
イェイクシィ・ニョウレイ  −      −


 Kanonブセィツゥとクワアァンンノンは同じだろとか思うかもしれないが、ただでさえ「複数の神仏の姿があるが、どれとどれは同一視されることがある」などとややこしく混乱した日本の信仰に対して、海外の認知度や当時の一ゲーム設定レベルの調査では、まったく見当がつかなくても不思議ではない。ちなみにKanonブセィツゥは人称がheなので「男神」、クワアァンンノンはsheで「女神」になっている。

 この当時は神格・信仰のルールがまともになく、属性や神位などのデータすらも必ずしも必要とされなかったためか、神格のデータは2、3行の簡単な説明のほかはへんてこなモンスター形式データ(シェーイクァ・ニョウレイがClr17/Ftr5でhp275とか。あまりにも無意味なので上記では省略)しかなく、現在3.Xeなどで使える情報はほとんどない。どれが重要神なのかといった神仏間の関連すらろくに書かれていないが、おそらく、単に調査・把握しきれなかったのではないかと思われる。
 まともに神格として使えるデータ(のちのDungeon誌による)があるのはジャイゾ・ブセィツゥのみである。想像するに、この時点で「日本の土地信仰」としてまともに調べがついたのが、地蔵信仰や道祖神だけだったのかもしれない。ゲーム的にはジゾーボサッツは、インディアン・パンテオンのヤマ王(秩序にして中立、中級神)の化身やアスペクトやミニオンの一種と考えることもできるだろう。





傭兵剣士

 T&Tが第7版の翻訳という形で日本に戻ってくる第一弾は、昔通りのソロアドの第一弾──と、「そのソロアドを題材にして作った多人数シナリオのリプレイ(昔、Webに連載されていたものの改訂版という)」との抱き合わせ販売とのことだ。

 ちなみに上の復刊ページの表記では「ソロシナリオ&リプレイ」となっているが、表紙を見ると「リプレイ&ソロアドベンチャー」とリプレイが先に書かれており、作者クレジットもリプレイ作者の方が先に書かれている。ここからむしろ「リプレイがメインでシナリオがおまけ」という意見もある。誰かが言った「SNEはリプレイが主力商品で、リプレイのためにシステムを作っている」というのは冗談とも本気ともつかないが、確かにソードワールドのリプレイ1部がかつて出頭の和製TRPG/RPG系FTに与えた影響は甚大であるし、控えめに言っても3部がSW自体に与えた良し悪しの影響も甚大である。そのためSNEは自分らの書くリプレイの商品価値を過大視し、とうとう「なんでもリプレイをくっつければ売れる」と思ったに違いない、との穿った意見がある。
 おそらくそういう側面ばかりとも言えまい。7版に合致するテクストが間に合わなかったのかもしれない。せっかく以前Webで書かれた傭兵剣士リプレイが陽の目が出る機会がほかにないのはどうしても惜しいと思ったのかもしれない(それ自体「他の仕事は遅らせても誤訳超訳してもどうだっていいがリプレイだけは至宝・金づる」的発想である点はさておく)。

 しかし、ネタバレ即ち興ざめのいわゆるゲームブックに(攻略ヒント本とかならまだしも)、ストーリーをそのままなぞったリプレイ(Webに書かれた当時は傭兵剣士は絶版であったから、ネタバレも何もないという側面もあった)を添付する、という発想は、商品価値という側面のみならず、リプレイというものに対する認識がよほど根本的に尋常のゲーマーと乖離していない限り、決してできるものではない。





・検索ワード

グアサング D&D データ
 だからないってそんなデータ。しかし、MERPd20では、わずかな既存のコンバートデータを見ると、単純にOB(+)値の1/5の強化ボーナスを持つものとしてコンバートしているようだ。従ってグアサングをMERPのデータからコンバートすると、

スターメタル+18インテリジェント・キーン・フレイミング・バースト・アンホーリー・バスタード・ソード

 あたりになりそうだ。あーあーコレを少しくらいどういじったところで無駄だしもういいよコレで。まあダゴラスの合戦でモルゴスを刺すアルダ最大の剣のひとつだってこったからなあ。ちなみにMERPではガルヴォルンとイシルナウア以外の全物体の防護を無視する能力があるが、アダマンティン(似スターメタル)ルールで表現になるのか、ゴーストタッチみたいになるのか、でもMERPd20ではd20モダンみたいにレベルによってキャラのACが変動するとかあるしよくわからん。ちなみにグロンドは強化ボーナス+50武器になったりするがまた今度考えることにする。





・検索ワード

ケレンヴォー 前の死神

 ケレンヴォーの直前に「死」「死者」の権能を所持していたもの、というならば、以前にも記した通り、シアリックである。が、おそらく検索者が欲しい答えは別のものだろう。「災厄の時(Time of Trouble)」より以前の長い年月の間、つまり、昔のCRPG版やほとんどの既訳のAD&D小説の時代に、これらの権能を保持していたのは、

 「死」:バール(ベハル)
 「死者」:ミアクル(マークール)

 である。(これに悪役代表のベイン神を加えたのが、AD&D 1st時代のFR世界で3悪とか3悪神とか言われていた。なおさらに大昔の死神はジャーガルであったが今回は省く。)この2体はどちらも、惑星トーリルのすべてのパンテオンが再編成された「災厄の時」においてアヴォンヌされた(以後、いわゆるデッドパワーと呼ばれ、活動不能状態にあるが、完全にいなくなったわけではない)。権能と信者はその他の悪神、ないしケレンヴォーに吸収合併されている。

 つまるところケレンヴォー以前、FR世界の死の神は、ずっと「悪神」が担当していたことになる。
 WG世界でも、死神ネルルは典型的な悪神である。もう一体、「秩序にして中立」のウィー=ジャスが死を司り、これを同属性のFRのケレンヴォーと重ねるプレイヤーは多いが(現に3.0eの設定コンバートガイドラインでもそうなっているが)ウィー=ジャスのホームプレーンは<アケロン>で、実は秩序にして「中立・悪の中間」(LN/LE)である。またスエル・パンテオン自体が多分にそうだが、緋色(兄弟)団(スカーレット・ブラザーフッド、スエル人の過激派集団)の信奉する悪神のような言い方をされることもある。ひいては、ウィー=ジャスはかつてはネルルと同盟しているという記述もあった。設定上は、邪神というほどではないが、「法」の権化たる神とはとても表現できない。

 死神に対して、例えば東洋のヤマ王のような「裁定者」のイメージを重ねるのは、FRにしろWGにしろ長い間一般的でなかった、そして、おそらくそれらの世界に住む住人達にとっても、長い間馴染みのなかった考え方であるといえる。





TRPGストームブリンガー

 最初の『ストームブリンガー』をデザインしたのは、「輝く歯(グリムトゥース)のアムスロップ」こと、ケン・St.アンドレという、殺人的デザインで知られるゲームデザイナーである。この名を聞いたことのある、というか彼のデザインしたT&Tとそのソロアドベンチャーに触れたことがあるゲーマーは、間違っても平々凡々としたゲームデザインになるとは予想しないだろう。
 『ストームブリンガー』はおそらくはその大概の予想範囲をも上回り、「根幹シンプル・世界設定ごとに多彩」のBRP系のシステムのひとつであることを差し引いても、相当にアクの強いゲームだった。後の版や『エルリック!』などを経ていくうちに次第に「普通の」RPGに近いようなプレイも可能になってきているものの、端々に見て取れるのは、原作ムアコックの世界観にもましてシステムのBRPとしても独特の色である。
 現ルールブックにも、ヘンテコさの残滓をデータからも感じ取ることはできるはずである。例えば、データではムーングラムの二本の剣がいずれも「まがまがしい<混沌>の紋章の刻まれたデーモンウェポン」になっている。原作既読者ならばムーングラムの剣は普通の剣で、最終巻でそれを案じたセピリズに<法>の呪文を施して貰ったのをよく覚えているだろう。明らかに原作にまるで合致しないこのデータは、このゲームでは魔法の武具、というか強力な武具というのが、ことごとく「いかにも当然だろうというそぶりを見せてデーモンウェポン」という、何やらふざけた世界風景を端的に示している。

 とはいえ、常に言われていることであるが、必然的にムアコック好きの濃いプレイヤーらが集まって行うことになる「濃いプレイ内容」に比べれば、そのシステムのアクもなにほどのものでもない、という説もある。





・検索ワード 〜 CRPG版関連

パラディン フェイルーン 神
 WG世界やD&D3.Xeの一般ルールでは、パラディンは「正義」のみに仕え、いずれの神にも、まして教義などには従属しない。が、一方でFR世界ではパラディンも「神から」呪文を得る。従ってパラディンの性質・行動規範はAD&D2nd同様に守護神格に強く影響されるとうるさく言ってくるマスターはいかにもいそうだ。故にFRのパラディンにとって、神格とその教義は重要となる。
 FRでよく見かけるパラディンの守護神格は、「秩序にして善」の神であるトライアッド(ティール(ティア)、トーム、イルマテル(イルメイター))がまず挙がるということになりそうだ。ティアは絵に書いたような正義神で(同一神格である北欧のテュールとは、FRではまったく性質は異なっている)パラディンはCRPG版などでも頻繁に登場し、最も一般的なパラディン神とみてよい。日本のファリスやWGのハイローニアスに近い一般性だが、善よりも「法」(秩序や義ではなく、本当に「法」)の守護者、判官としての性質が強い。対してトームは奉仕・「騎士道」・名誉を中心とする。残るイルメイターは、ひたすら自己犠牲の神格で、一見するとパラディンよりもモンクやクレリックの性質に近い。
 むしろイルメイターよりパラディンが目立つような気もするのは、神格自身は「秩序にして中立」だがヘルムである。これは名の通り「防護・守護」の秩序神である。

 
アイスウィンド・デイル2では、イルメイター、ヘルム、ミストラのパラディンを選択できるようになっていた。(「災厄の時」より前なので、ミストラは「秩序にして中立」である)。パラディンは通常自由にはマルチクラスができないが、イルメイターはクレリック、ヘルムはファイター、ミストラはウィザードとマルチクラスできるようになっている。
 なぜこの3神になっているかは謎である。特にパラディンと縁が深いとは言いがたい魔術神ミストラが入っているのは、できるだけ3者バラバラの性質にしようとしたためのようだが、ソーサラーならともかくウィザードを「自由に」混ぜられたところでしょうがない。世界設定的にも、役に立つかでもまともなのはとりあえずヘルムである。

ネヴァーウィンターナイツ Lv上限
 NWN基本ルールではキャラクターレベルで20lv, 拡張(HotU)を入れると40lvである。どちらであっても、「れべる」がだらだら上がって単純に数値の絶対値が大きくなるのを「強くなる」ことだと妄信しているコンシューマCRPG肌の「れべる最強厨」からは、物足りない値という声が飛び交うことも多いが、何もかもユーザーの力で拡張可能なこのNWN、vaultを探すと実は60lvまで上げられる追加スクリプトがユーザーの力で作成されており、もう少し工夫すればレベル上限をさらに上げることもできる。どうやるのかって? 自分でスクリプト勉強しなってばさ。「最強」のためならなんだってやるんだろ?
 もっと手っ取り早い話なら、letoなどのキャラクター操作ツールを使ってFRCS記載のエピック・レベル特典(のうち一部)などを直接与えるようにすれば、無限に高lv相応能力を与えることならできる。が、所詮は「表示されているれべるの数値」さえ高ければなんでもいい、という向きにはあまり関係のない話ではある。





・検索ワード

ヴェクナ 脅威度
 サードパーティーのd20の神格(CoC含め)には、しばしば
CR(脅威度)が設定してあるものがあるが、d20の元の基本ルールといえるD&Dにおいては、ヴェクナなどDe&Deなどに載っている公式神格には、CRの値は存在しない。これは様々な理由があるが、その最も主なものは(特に当時の基本ルールの20lv未満のキャラクターにとっては)神格の能力はあまりにも高すぎ、あまりにも多様すぎて、CRの値を設定しても無意味であるため、とされている。

 とはいえ、とりあえず3.0e De&Deのガイドラインによると、どうしてもCR値が必要ならば便宜上、「総ヒットダイス+神格ランク」を使えとある。ヴェクナの場合にこれを当てはめると、Wiz20/Clr20, 神格ランク10なので、CRは50である。
 つまり、アザトースの脅威度と同じだが、これが高いと思うか低いと思うかは運用次第、レギュレーション次第である。この計算法にしたところで、ヴェクナのように「40lvと神格ランク10を持つ下級神」がその能力を完全に発揮した場合、単なるHD50などよりも遥かに強大なことは明白である。そして、アザトースの方にも、CoCの略式ルールでなく上級神の能力を完全に適用した場合には同じことがいえる。

 ちなみにグレイホーク世界の悪役真打ち、アイウーズ御曹司は「来訪者HD20+Clr20/Assn10+神格ランク3」なのでCR53となる。この場合カンビオンのさらにCR+3は、入れるのか入れないのか……





つるっぱげ野郎共の話(その2)

 『ホワイトプルームマウンテン』には、ドラゴンランス戦記の序盤(黒竜・赤竜の書)を思い出すという声がある。いかにもRPGらしく「冒険」している様、さらにはそれが洋物の泥臭い半端ない緊張感とコミックリリーフらの合の手にのっている様がそれを彷彿させるというのである。(なお、そのエピック性が売りであるドラゴンランス小説シリーズ内では、この序盤の評価は比較的芳しくない方である。)この点をもう少し推し進めてみる。
 この作品の登場人物らは、(少し後の作品で)10lv前後というデータになっていることを別に知らなくとも、読んでいれば結構な高レベルだということはわかるように書かれている。水野良のソードワールド小説などでは、「腕利きの戦士」の能力が6−11レベルの範囲のうちどこなのか読んでいても皆目わからないといったことがたびたびあるが、この作品はだいたいネームレベル前後だとわかるし、D&Dのルールを知らなくとも、世界一二というほどではないが一級の実力というのはすぐに読み取れるだろう。
 そして、こうした充分なヒーロー的実力のあるキャラクターを用いたファンタジー作品は、豪快・大胆・ストーリー重視、別の言い方をすれば大味な活躍になりがちである。しかしながらこの作品はアイテムや魔法の1日の回数を慎重に吟味する等、システムを重視した、D&Dではどんなに高レベルであってもほぼ変わらないゲーム内の流れを保っている。これは、執筆当時ドリッズトがほぼ同じレンジャー10lvだった(今の設定ではそれより高い)『アイスウィンド・サーガ』の性質とは対照的である。どちらがいいというわけではない。ただD&Dは、どんなレベルになっても──というよりレベルが上がれば上がるほどに、激しくなるのは敵でもストーリーでもなく「システム」との激闘、というゲームである。そうした空気をサンプリングする小説というのは、必要に相違ない。





・検索ワード

バルダーズゲート 人口
 聞きたいかね? 
DR1372年7月30日までの時点では4万2103人だ。レディ、本日の戦死者は?

D&D ヘカトンケイレス
 ヘカトンケイレスはAD&D 2ndのLe&Loなどのギリシア神話モンスターの時点では、かなり強力だがあくまで普通のモンスターの範囲にすぎなかった。サイズ(とhp)はかなり大きいが、下級のタイタンよりレベルも経験も低い。なお、百本の手は本当にあると書かれているが、1体の敵に対しては最大10回攻撃とか石を投げるのはメテオスウォームと同様に判定しろとか、かなり適当なドンブリ運用を念頭に書かれている。
 対して、よく知られている通り、D&D 3.0e (ELH)ではまったく様変わりする。ここでは恐らく必ずしもギリシア説話のそれを直接指しているわけではなく(数も3体よりは多いだろう)無数の肉体が組み合わさったAbomination(イマワシキモノ)の一種で、大剣を持った人型がごちゃごちゃと大量に塊になったような生き物である。これも100回攻撃をするが、中型の対象には15回、大型には20回の攻撃が可能となっている。その脅威度(CR57)は同じELH収録の最上級タイタン(CR30)とも比較にならないほど強大であり、上級ワイアーム等をあくまで強大化の一種とみなした場合、ELHに記載されたモンスターでベースのCR(脅威度)が最も高いといえるのはこれである。

 なお「ヘカトンケイレス」という名はヘシオドス『神統記』の時点では名は見えず(百手の巨人自体は出てくるが、それらを称する名はない)注釈によるとアポロドロスなどの編纂者が分類のために冠している(元々古来より神話中で伝わっていた名ではなく)ものである。同類のキュクロペスなどがいかにもギリシア語として意味深長な名であることに対して、「百手」を示すヘカトンケイレスというそのまんま直接的で面白くもなんともない名は、その分類目的の無機質名のためといえるようである。ので、士郎正宗などが存在はともかくその「名」を濫用ぎみなのはあんまりセンスがよくないとか思ったりとかなんとかもするのだが、とりあえずそういった神話の名詞というより一般名詞的な部分が、このヘカトンケイレスが特定物語非依存的な『ソードワールド』のモンスターにも存在したり、このD&Dのように非ギリシアのモンスター名として使われたりする因かもしれない。

ヘラクレス D&D Str
 力の神はStr60だの70だのと書いたのだがよく見るとギリシアのヘラクレスは55しかなかった(3.0e De&De)。またヘラクレスはクレリックレベルを持っていないので、領域特典で一日数回ブーストした場合も60にしかならない(クレリックレベルがない場合、神格ランクで代用)。例えば北欧のトールがStr92なのでそのあたりに比べればかなり寂しく、結局のところは「半神」でしかない悲しさなのかもしれない。なおAD&D 2ndではヘラクレスもトールもStr25(当時最大)だった。

D&D INVOKER
 3.XeでのEvokerにそのまま相当するものが、AD&Dの頃はInvokerであった。使えるのはほとんどがEvocationの呪文なのに、なぜ当時EvokerでなくInvokerであったのかはわりと謎のままである。

デュアルクラス 新和版
 ここで新和版の対極がメディアワークス版なのかHJ版(3.Xe)なのか不明だが、CD&Dの少なくともベースルール(新和、メディアワークス含め)にはデュアルクラスは存在しない。クラスを一度決めたら、リインカネートでもするかポリマスの試練(イモータル化の手続き)の最中でもない限りは、転職もクラスの追加もできない。昔のT&Tなどと同様、シンプルなルールである。
 デュアルクラスはAD&Dのルールである。が、検索者の目的がAD&D 2ndの新和版ってことは(そのあまりのレアさから)おそらくないだろう。





・エイダスフォースはそれで堕ちたか

 「なぜ
天照大神が中級神なのですか」と筆者などに聞かれたところで推測くらいしかできることはないのだが、中級神というのはAD&D 2ndのデータで、1stまでの書物によっては上級神のこともあった。現状上書きされていないので2ndのままで記述したが、仮に3.Xeでデータ化された場合はどうなるかはわからない。

 AD&D 1stまでの神話データでは、データ数自体が比較的少なかった上に、わりと上級神が安売りされていた面がある。これは、1st時点では神格はデータ的にただのモンスターの一種でしかなかったため、正直、神位(status)に関してはさほど厳密には考えられていなかったのだろう。
 これが2ndではがらりと変わり、上級神は各神話の主神ないし創世神格の主に1−2体に限られ、1stで上級神だったものの多くが中級神に格下げされている。(逆に、下級や半神から格上げされているものが少なくない。)これは、2ndでは神格のデータがより厳密になり、神位が信者の数に比例するなり、神位によって聖職者の呪文能力が上下するなりといったルールが与えられたため、無闇に上級神を設定せず希少化させる考え方と推測できる。
 しかし、多神教では主神はともかく、創世神は信仰面ではマイナー化していることが多いので不自然ではある。そのあたりはあくまで現実世界の信仰状況ではなく、神話の話の流れに形式的に沿うことの方が目的である等としか推測できない。日本神話のデータでは、2ndではイザナギ・イザナミ(1stにはいない)が上級神となり、アマテラス以下は中級神である。

 しかし3.Xe(3.0e De&Deなど)の実在神話データでは、主神級でなくとも単純にメジャーな神はふたたび1stのように上級神になっているものが多い。これは、3.Xeでは神位によって聖職者の能力はほとんど差がない(上位神は多数の領域を持つ可能性が若干高いので、皆無ではないが)ため、2ndほど厳密ではないといった変更理由が考えられるが、3.Xeのデータでは神格本体の能力に上級神とそれ以下に桁外れの差があるので、神話のメジャーな神を無闇に強く見せるため、という疑いがないでもない。
 現状、3.0e De&Deに日本神話の記述はなく、アマテラスのデータも存在しないが、仮にふたたびデータ化された場合、1stのように再び上級神になる可能性はわりと高いと思われるが、現状では何とも言いようがない。

 ちなみに、版どころか書物ごと、また出現するワールドごとに神位データさえさっぱり違うというのはよくある話である。フォーゴトンレルム世界のティア(ティール)神が北欧のテュールと同一神格(ライトファンタジーの北欧かぶれのような名のみ引用等ではなく、本当に同じものが北欧からフェイルーンに来たということらしい)であることは有名な話で、おそらく1stでテュールが上級神だった頃から準拠しているのかFRのティアは一律上級神のままだが、北欧のテュールの方は、2ndにしろ3.0eにしろ中級神に落ちたままである。その他FR世界の、ぬるぽランドのエジプト神やモンスター神に見られる実在神話神など、2ndや3.0eのものとはまるでバラバラである。
 こういう部分が、De&Deが「読んでるのは面白いけど実用性はまったくない」と言われる原因のひとつである。折角の多世界を又にかけたルールやデータになりうるd20系において、統一性があれば資料や参考にもなろうが。







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