ドラゴンランスのデータ学







ダラマールシリーズセットアイテム


 ドラゴンランスはAD&D1stをベースに小説化されていた、とはいうのだが、基本的にPnP-RPGのモジュールとしてもストーリーが展開していたのは前半(『戦記』)であり、後半(『伝説』)には対応するデータがあるとは限らない。
 しかし、『伝説』の主要人物のうち、ダラマールの名のついたアイテムはやけにデータ化されている。これは(杖と短剣以外に)強力な魔法の品の助けを必要としない(という)レイストリンと異なり、ダラマールはなにかと話の上でアイテムとの絡みが多いためである。DL世界のキャラの中では、(データパワープレイヤー(和マンチ)な)D&Dデータ寄りのデザイナーや読者から、ダラマールがなにかと人気があるのもわかる気がする。


○防護の魔法の腕輪(Dalamar's Bracelet of Magic Resistance)

 『伝説』終盤、パランサスでソス卿を迎え撃つためにダラマールがタニスに貸したもの。終盤タニスが活躍できたのはほぼこれのおかげである。文中のダラマールの言によると、ソス卿の用いるような氷や炎の呪文(Death Knightの疑似呪文能力である無限Wall of Iceと20d6 Fireball)、「死ね」「気絶せよ」「盲いよ」といった示唆の言葉(Power Word呪文のうちPHB記載の主要3種)から守ってくれる。ただし、作中の描写では何度か呪文を受けると腕輪の力が弱まってくる。そのためもあって、ショイカン原林の恐怖の領域を通過するほどの魔力はない。

 AD&D1stのDragonlance Adventureのデータでは、呪文レベル3−5の呪文に対しては10%, 6−7の呪文に対しては20%, 8−9の呪文に対しては30%のMagic Resistance(魔法無効化率)を発揮する。上記それぞれに対して、1日に3回までしか無効化できない。
 ソス卿(Death Knight)の使う炎や氷の呪文は呪文レベル3−4、各Power Word呪文は呪文レベル7−9なので、辻褄はあっている。しかし、無効化率10-30%というのはいかにも心許ない。この記述をAD&DのMagic Resistanceのルール通りに解釈すると、10%の無効化率というのはダメージを10%に減らすとか10%減らすとかではなく、10回に1回だけ完全無効化する(つまり9回はそのまま食らう)ということである。

 この腕輪はアイテム自体の属性がEvilであり、Goodキャラは触れると3d10ダメージを受ける。確かに小説作中で騎士団長グンター卿はこの腕輪からダメージを受け(Tales of the Lanceによるとグンター卿は13lvの騎士でhp62だから良かったものの、d20の並の現代軍人なら3回死んでおつりがくる)タニスは「騎士の誓いか何かに関係あるのだろう」と考察していた。が、よく考えてみるとタニスも属性がNeutral "Good"なので同ダメージを受けるはずである。Dragonlance Adventureは小説『伝説』より若干後だが、照合が間に合わなかったか単に忘れたか、データを設定した側の整合が不十分だった可能性が高い。一方、後のAD&D2ndのTales of the Lanceによると、ダメージを受けるのは「Lawful又はChaotic」Goodのキャラクターであるという意味のわからない記載に直され(やはり誓いとは関係ない)、一応Neutral Goodのタニスが使う分には問題がない。


○稲妻のワンド(Dalamar's Wand of Lightning)

 キティアラに肩甲骨を両断されたダラマールが苦し紛れに発動したと思ったら、キティアラの巨乳すら貫通して文字通り胸に風穴をあけた非常にえんがちょなライトニングボルトワンド。単に稲妻のワンドとしか書かれていないが、D&D系のワンド(一律6d6ダメージ)どころか、Lightning Boltそのものの常識からも度肝を抜くような威力である。文中の描写によるとキティアラはそれまでにかなり弱っており、現に『伝説』富士見版最終巻の表紙でダラマールと対峙しているカバー画でも、服がボロボロで少なからず手傷も負っている。D&D系のヒットポイントは疲労や運の尽きなども総合的に示しており、目に見える外傷を負っている時点でhpは半分以下に落ちている。故に、こんなありふれたワンドごときから致命傷を受けたのは相当に弱っていたためではないかという考察もあったが、要はただの演出だろうと流されるのがD&D系小説の(特にAD&Dデータを知らない読者からはローパワー扱いされるDL世界設定の)常であった。

 しかし、AD&D1stのDragonlance Adventureでは、このワンドは上述したようなD&Dシリーズのデフォルト設定のWand of Lightningの一種とは書かれているのだが、それらの基本データとは大幅にかけ離れた性能を有している。15lvの術者が発動したのと同じ威力があり、AD&D1stではLightning Boltには(2ndや3.Xe以降のような)ダメージダイス上限はないので、15lv術者が発動すればダメージは15d6で、期待値は52.5である。キティアラは15lv戦士で最大hp68だが、表紙の状態でhp34以下とすると、これをまともに食らったらまず助からない。AD&D2ndのTales of the Lanceでは、(2ndのLightning Boltの上限の)10d6ダメージで、期待値は35であり、上記の状態のキティアラに直撃すればちょうどhp-1に落ちる。タニスが手当すれば助かるが、しなければ9ラウンドで死亡し、作中の状況と一致する。
 なお、このワンドは(雷雨のあった週の)1週間ごとに1チャージを回復するようになっており、ただの量産品・消耗品のWand of Lightningではないようである。なぜこんなものをダラマールは無造作に机に置いておいたのか(携帯していなかったのか)。しかし、以後、キティアラの死因となったこのワンドのその後の使用者は、使用するたびにソス卿が傍に駆けつけてくる可能性がある、とも書かれており、いくら強力といっても、プレイヤーキャラとしてはそうそう使用したいものではない。


○癒しの指輪(Dalamar's Ring of Healing)

 上記のキティアラの攻撃で腕がもげかけたダラマールが発動し、一命をとりとめた際の癒しの指輪。AD&D1stのDragonlance AdventureではDalamar's Ring of Healing、2ndのTales of the LanceではGolden Ring of Healingと記述されている。
 癒しは「信仰系」能力であることはDL世界設定でも例外ではなく、作内でもしじゅう言及されている。にも関わらず、この指輪は秘術系術者が「死から逃れるための最後の手段」として携帯するもの、といずれのデータにも記載されているが、その理由(どうやって秘術系で実現しているのか、それとも実は信仰系の品なのか)はこれらの資料には全く説明がない。1stのデータではCure Light Wounds、2ndのデータでは固定6hpを回復し、回復量そのものはわずかでしかないが、hpが0やマイナスに落ちている場合は触れるだけで(つまり、前述の瀕死状態でも自分で使えると思われる)1hpまで回復できる。チャージも特殊で、これで1度癒されたことのある人物には再度効果は発揮しない。例外的なアーティファクトめいた物品のようである。





クリンのデミヒューマンの限界レベル


 クラシカルな(3.Xeより以前の)D&Dでは種族ごとに限界レベルがあり、特にAD&D1stではデミヒューマンのそれは非常に低いことに前回も触れている。具体的には、どんな種族でも盗賊に制限はないが、それ以外の得意なクラスは10lv前後までしか上げられず、不得意なクラスには全く就けないか、あるいは一桁lvにとどまる。例えばAD&D1stのPHBによると、種族「エルフ」は盗賊(Thi)のみ無制限で、戦士(Ftr)7lv, 魔法使(MU)11lvまでしか上げられず、それ以外のクラスには就けない(エルフの聖職者(Clr)はNPCしかなれない)。また、StrやInt値が低いとさらにFtrやMUの限界レベルは低い。「海外エルフはトールキン準拠のチート種族」なる風説は完全な事実無根であり、海外RPGで80-90年代に支配的であったAD&D1stにおいて、エルフは近接はもちろん魔法においても限界能力は人間に遠く及ばない。
 これは、当初せいぜいが10lv前後までのプレイしか想定していなかった時点で作られたOD&Dの設定を、AD&D1st当時は引きずっていたためと想像される。人間も限界レベルがないとはいえ、おそらく「頑張ればエルフを超えられる」といった程度で、十数やら数十レベルに上げることは強く想定していなかったと考えられる。(一方、デミヒューマンの限界レベル以降も何らかの能力上昇を行うルールはCD&D緑箱などで知られるものをはじめAD&Dにも何種類かあるが、付け焼刃の感は免れない。)


 AD&D1stのCRPGであるGoldBoxのフォーゴトン・レルム(FR)のシリーズでも、このPHBのデフォルトのルールと同様であり、レベルが高くなりがちなFR世界の高レベルシナリオではデミヒューマンは(盗賊以外)全く使い物にならなくなってくる。
 しかし一方で、GoldBoxでもドラゴンランス(DL)の方のシリーズでは、AD&D1stデフォルトとは異なり、デミヒューマンが高レベルまで成長可能な点についても前回述べた。前回言い忘れていたが、これもCRPG版独自ではなく、元のPnP(卓上ゲーム)版のDLのルール集のデータに準拠したものである。


 以下、AD&D1stのDL世界の資料であるDragonlance Adventure (1987, 『ドラゴンランス伝説』完結直後)から抜粋し、代表例を挙げるが、UL(制限なし)はレベル上昇の限界なし(ただし、クリンでは実質18lv)である。バーバリアンBbnとキャバリアCvlはこのDragonlance Adventureでは使用が前提とされているAD&D1st版Unearthed Arcanaというルール集のクラスで、3.Xeなどのそれとは全く異なっているが、後者のさらにバリアントであるソラムニア騎士(下記Cvlレベルとは別)の特殊ルールとあわせて、別の機会に述べる。ティンカーTnkはノーム専用の技術者クラスである。


                           Ftr  Bbn  Ran  Pal  Cvl  Clr  Drd  Thi  Tnk  Wiz
--------------------------------------------------------------------------------
ケンダー                   6    10    6             12   6    UL
ノーム                                                             UL
シルヴァネスティ・エルフ   14        UL        10   UL        UL         UL
クォリネスティ・エルフ     14        UL        10   UL        UL         UL
マウンテン・ドワーフ       UL              8    8   10         8
ヒル・ドワーフ             UL   UL    8    8         8         8




 マイナーな種族、カガネスティ(ワイルドエルフ)、ディメネスティ(水エルフ)といった種族もすべて設定がある。
 なお、最初の小説と同時期・同ストーリーのシナリオモジュール(DL1:Dragons of Despair等)の時点ではまだ上記のDragonlance Adventureのような詳しい設定は書かれておらず、PHBのハーフリングと差し替わるケンダーについて数行の説明がある程度である。つまり、小説当初の想定(あるいは小説のベースとなった実プレイング)の時点ではPHBのデフォルト(WG世界、というには語弊がある)に近かったが、これに対して、Dragonlance Adventureの時点でも非常に追加ルールが多い。
 一般にgdgd人間ドラマで英雄的行動には程遠いキャラの多い小説のイメージから、DL世界はローパワーと信じられていることが多いが(日本のDLファンに、キャラやアイテムのルール上の強力さを、公式データの根拠を挙げて説明してもなお信じないことが多い)強力なデミヒューマンひとつとってもPHBよりも遥かにハイパワーなルールが多々ある。これは推測だが、おそらくファンがDL世界のパワーを求めたというわけではなく、作品世界の圧倒的な人気(数千万単位。なお、指輪物語が億単位、ファイナルファンタジーが百万単位、Wizardryが一万単位)故に、それほど必然性がない細部までデータ化(差別化)を行っているうちにこうなったのではないかと思われる。


 余談はともあれ、上記限界レベルからは、エルフは秘術系・信仰系ではかなり制限が少なく、さらにデフォルトでは不可能だったレンジャーにも就け、無制限で上げられるようになっている。ドワーフの戦士も同様である。しかし、それ以外のクラス適正については、デフォルトより若干上程度で、さほど差がないことが多い(後では一般的になっているドワーフ僧侶はクリンでも作り難い)。一方、盗賊系はデフォルトではどんなデミヒューマンでも高レベルにできたが、クリンでは制限が多く、盗賊系に就けない種族も多い。
 これらの特性からは、DL世界の設定では、デミヒューマンそれぞれの個性付けよりを強くしたものと推測できる。OD&D当時のままで長期間プレイの実情に沿わなくなってきたAD&D1stのデフォルトの限界レベルを変更し、小説でも活躍したデミヒューマンで、長期間プレイすることを想定したルールになっていると思われる。そして、やはりこの当時は定型から外れたようなキャラは作り難い。制限によって、逆に小説でも描かれているような世界の再現を自然と支援・誘導するような設定になっているといえる。





ドラゴンランスとGold BoxのCRPG


 初代Pools of Radiance (PoR)等と同時に展開されたAD&D1stのコンピュータプロダクトとして、PoR(『フォーゴトンレルム(FR)』世界設定)と同様の、SSI社のGold BoxエンジンのCRPGが、『ドラゴンランス』世界設定でも3作作られている。


 Champions of Krynn (1990)
 Death Knights of Krynn (1991)
 The Dark Queen of Krynn (1992)


 の3作がそれである。前の2作はPC版の日本語移植さえ作られた。しかし、その知名度は非常に低い。日本では「ドラゴンランスのゲーム」は、FC(NES)で出たアクションゲームの(かなりの残念ゲーとして有名な)『ヒーローオブランス』『ドラゴンオブフレイム』しか存在しなかった、と信じ込まれていることがほとんどである。というより、わずかなPCユーザーを除いて、当時のAD&Dの「CRPG」自体が、FCにも移植されたPoR1作しか存在しなかったかのように信じられていることも多い。
 「TSR/SSI社=一番人気のドラゴンランスで肝心のCRPGを作らなかった愚か者ども」というのが、あたかもD&D系全体の最大の突っ込みどころであるかのように、日本では誤って語られていることも少なくない。


  上記のGold Boxの3作の他にも、ドラゴンランスのコンピュータゲームには、空戦シミュレータもどきのDragonstrikeやストラテジーのWar of the Lance、また複合ゲーム的なShadow Sorcererなどがあり、これらも実は本編との関係でかなり重要なのだが、今回はFRとの関連・比較でも重要な主要なRPGシリーズ、Gold Boxに限って話を進める。


 当時の雑誌の紹介などでは、「AD&Dのゲームシステムに興味があるならFRのシリーズ(PoRや続編4作)、元々ドラゴンランスのファンで世界・ストーリーを追体験するならDLのシリーズを選ぶといい」などと紹介されていた。これは、DLの方は原作つき(そして、本国では原作の人気が天井知らずに高いので、遠慮なく原作ファン向け限定に作られている)という点を考慮したと思われるが、あたかもFRのシリーズの方がゲーム性では出来が良く、DLの方はシステム面は劣っているというような印象を与えがちな紹介である。

 しかし、実を言うとGoldboxのこれらのシリーズは、システム面から見ても、DLのシリーズの方にむしろ見るべき点が多かった。コアルールのAD&D1stに比べると、ワールド独自の特殊ルールが少なからず存在するのはFRでもDLでも同様である(DLは小説のイメージからローパワーなワールドのように見られがちだが、FRと比較してすら非常にハイパワーなルールも多々ある)。FRのシリーズがこれらの特殊ルールをほとんど採用しておらず、コアルールのままになっているのに対して、DLのシリーズではかなりの特殊ルールを採用していた。
 例えば、AD&D1stのコアルールでは、デミヒューマンはThief以外のどのクラスでも、レベルが一桁か10前後までしか上がらない。Gold Box EngineのFRのシリーズではこのコアルールのままを再現しているため、10lvを超える2作目あたりからは、ほとんどマルチクラスのデミヒューマンを入れる余地はなくなってしまう。(なお、AD&D2ndではこの限界レベルはかなり引き上げられ、さらに後年の2nd準拠のInfinite Engineの『バルダーズゲート』(BG)等のシリーズでは、その他の選択ルールにあるようにデミヒューマンのレベル制限自体が撤廃されている。)
 これに対して、Gold Box EngineのDLのシリーズでは、種族によってレベル制限のないクラスも多く、制限があるにしても10lv台後半という特殊ルールが採用されている。そのため、後のBGシリーズ以上に、高レベルまでマルチクラスのキャラ編成を考慮する余地が多くなっている。
 サブ種族、サブクラス類の再現も多く、エルフやドワーフの亜種族、赤と白のローブの別(ちなみにDL小説でおなじみの赤と白の月の満ち欠けによる能力変化も再現されている)、各神格ごとのクレリック、それらの能力差も再現されている(無論FRの方はコアの種族やクラス以外の再現は無い)。特に、パワーゲーム志向のD&D系全体をとっても強烈な強キャラと語り継がれている、「ソラムニア騎士」3階級のサブクラスも導入されている。総じて、高レベルまでの長期間のキャンペーンを通じて、DL独自のゲームシステムを体験、考慮できるようになっている。ドラコニアンの危険な能力、ドラゴンランス槍の強力さなど(小説の描写からはわかりにくいが、実は他のAD&D世界設定と比べても非常にハイパワーな)特殊ルールも多く再現されている。
 これは、Gold BoxのCRPGの中ではこれらDLのシリーズの方が後に作られたという点もあると思われるが(PoRは1988年、CoKは上記するように1990年である)非常に多い原作ファンのために、再現のためにかなりの注意を払っていると思われる。


 一方、ストーリーの方はというと、上記したような『ドラゴンランスのファンが世界を味わうのに適している』という評が適切かというと、どうもそう言い切れるわけではない。中身を説明するのが手っ取り早いと思われるが(すでにネタバレという時代ではないので)、例えば、2作目は死の騎士・ソス卿がスタームの遺体を乗っ取って最強騎士になろうとするのをプレイヤーキャラ達が阻止し(つまりソス卿を打倒してしまう)、3作目は、惑星クリンの裏側(タラダス大陸)で「ガルカスの灰色石」の力をかりて奈落から脱出する女王を奈落に閉じ込められているレイストリンの力もかりて阻止する(つまり、五つ首の竜を打倒してしまう)といったもので、良くも悪くも、ファンの安易に想像する夢展開やら燃え展開の直な再現である。
 これらは『夏の炎の竜』以降を読んだファンならばすぐにわかる話だが、公式のソス卿や灰色石のその後の展開とは著しく矛盾するため、完全に非公式のパラレルワールドである。(ただし、『夏の炎』以降の展開そのものが、それ以前のファンからは決して好評なものではない。)
 つまり、ファンでなければ理解できず、ファンでこそ楽しめるような話だが、かといってこの世界(原作)を大事にするファンらにとって誰にでもプレイする価値がある、とも言い難い。それこそ日本で同様の位置にある人気シリーズ、ガンダムの派生ゲームのifストーリーのような、微妙な位置とも思える。
 当時の全般的な評価はばらついており、1、2作目がDragon誌やCGW誌で好評を得たのに対して、3作目は殊に致命的なバグが多く、戦闘以外のストーリーや仕掛けがあからさまに少なく、さらに92年にはすでにかなり古く難があったシステムであることもあって、評判は芳しくない。20を超えるようなレベルの冒険についても、FRのシリーズよりは強化されているとはいえ(FRのGoldboxはさらに味気ないが)後のAD&D2ndを再現した『バルダーズゲート2』等に比べると、高レベル呪文は非常に少ないし技能も存在しないので、非常に面白みがない。


 上記のような事情が、『夏の炎』『魂の戦争』を経て完結した現在となって、本国のDLファンらからはどう見られているか、また、単純に(FR世界のPoR等が何度も再販やリバイバルされているのに対して)これらDLのゲームがリバイバルや言及されないのは何故か、調べてみたことがあった。
 わかったのは、どうも2000年代には、権利関係(一時、DL世界が権利譲渡によってD&D系のシステムではなくなっていた頃か)で、これらのDLのGold Boxのシリーズは出すことができず封印されていたという話である(なお、現在はGoGのDL販売でWindowsで動くPC(DOS)版を入手できる)。しかしまた、D&D5版のルールブック内にDL世界のキャラが例として挙げられるようになった現在、DL世界の派生作品も今後事情は変わってくるのか、それはわからない。





・検索ワード

ドラゴンランス レイストリン レベル
 『戦記』開始時(AD&D1st 'Dragons of Despair')3lv、『伝説』当時20lv。
 開始時すでに”大審問”を通過していたレベルが3というわけだが、実のところクリン世界の大審問とは、呪文レベル2に手が届いた時に課せられる試練に過ぎない。また、『戦記』2巻でフィズバンに対してFireballがまだ手におえない、と言っているので、4lv以下というのは予想がつくだろう。

 一方、終盤20lvは(FR世界の誰ぞがAD&D当時でも29lvなどに比べると)あまり高くないように感じるかもしれない。あるいは、AD&Dのあくまで基本ルールではレベルが20までなので、基本ルールのみで表現した「便宜上のデータでは」最強の魔法使を20lvにしているにすぎない、という言い方もできる。が、実際のところを言うと、強大化した後でさえ、レイストリンの能力や行う事の描写を見ているところ、AD&Dの魔法使の基本ルール的な能力の範疇からは別に極端に飛びぬけているわけではないので、ある意味では妥当とも言える。

 なお、後のd20(3.Xe)系のデータは、後で作られたもので小説の描写の元となったというわけではないが、ここでは『伝説』時のレイストリンはCR28とのことで、D&D標準のWG世界の代表術師モルデンカイネンのCR27とほぼ同格にあたる……。





属性

 D&D系の属性(秩序・混沌、善・悪)は、基本的に本人の個人的な性質(対人関係を尊重するか否か、他者を尊重するか否か)を示しているものである。他のゲームやロー・カオス対立型のFT小説のように、いわゆる「世界のバランス」や「哲学・主張」を示しているものではない(ただし、個人の性質の結果として、主張もそうなることはある)。そのため、これらの属性が、「善の軍勢」と「悪の軍勢」のどちらにつくかという立場に一致しているとは限らない。(魔法使いのローブの色は、魔法に対する姿勢としての個人の性質を示しているため、これよりは属性と近い。)
 ただし、ゲームのシナリオとして設定された当初、小説として人物が軍が動き回り悩み始める前は、これら(個人の属性、善悪の軍、ローブの色)はほぼいっしょくたになっていたのであろう。

スターム     秩序にして善
キャラモン    秩序にして善
リヴァーウィンド 秩序にして善
ゴールドムーン  秩序にして善

タニス      中立にして善
フリント     中立にして善

レイストリン   真なる中立
タッスルホッフ  真なる中立

(サブキャラクター)
エリスタン    秩序にして善
ティカ      中立にして善
ギルサナス    混沌にして善
ローラナ     混沌にして善

 これらのデータは読者には意外に思えるかもしれず、現に筆者の周囲のクラシカルD&Dプレイヤーがそうだった。軟派というか軽薄と言ってもよいキャラモンが、騎士の鑑として引き合いに出されるスタームと同じ「秩序にして善」であること、また友人思いのタッスルホッフが「善」でなく中立であること、さらに古今のFTの登場人物の中でも最大級にねじ曲がった性格であることに疑いのないレイストリンが「混沌」ではなく中立であること、等である。

 これらには、いくつかの説明を加えることができる。まずは、本来のD&D系において、本人の性質である属性というのはあくまで性質を9種類に大別したものに過ぎず、極端にその性質を持つことを示しているものではないという点である。
 特に「秩序にして善」は、パラディンがその極致として説明する例に使われることからも、「秩序にして善」の者が全員がパラディンのように、もとい、スタームのように厳格だと思い込まれている例が非常に多い。しかしながら、パラディン(やスターム)とは、「秩序にして善」の性質を持つすべての者の中でも最も極端なごく一部に過ぎない。キャラモンに関しては、軽い人物ではあるが、ものを決断する段になれば結局は「馬鹿正直」である点が「秩序にして善」であると言えそうである。

 もうひとつは、このサイトの別の記事でも述べているが、D&D系の属性で「善」というのは利害を越えてでも他者を尊重しようとするものを指し、自らに益があるならば助ける、というものは「中立」にあたることである。益には、友人や身内ならば助けようとする、といったものも含まれる(特に真なる中立を「主義」として持つ者には、友人や身内すら特別に扱わないといった者すらいるが、それは属性の分類とはまた別の問題である)。友人には思いやりが深いが、通りすがりの者に危害を加えても無頓着なことが多いタッスルホッフは、中立としては強い「善傾向」は持っているがやはり「善」そのものではないという解釈ができるだろう。

 最後に、D&D系における属性はキャラクターが作られた時に今後ロールプレイをするための「指針」として与えられるもので、すでに決まっている性質にあてはめて強引にレッテルが貼られるものではないし、典型たることを強要するものでもない。実際はゲームのプレイに従って典型とは離れることもあろうし(極端ならば属性自体がゲーム内に変化することもあるが)まして小説の描写が続くうちに属性では表現しきれない(矛盾というほどではなくとも)ような複雑な人間性を呈していくことも多いだろう。現に、レイストリンの属性は後のシリーズで大きく変化していくことになる。





・マギウスの杖


>487 名前:NPCさん :2005/08/25(木) 02:04:56 ID:???
>お邪魔します、小説ドラゴンランスシリーズに出て来る
>マギウスの杖の能力を聞きたかったのですが
>このスレ正しいでしょうか。

>あの杖、小説では光源の役割しか果たしてない気がして
>ゲームではもう少しマシな能力なのかと気になった次第で。

>AD&D1stのDragonlance Classicsによると(別のデータでは細部は違う可能性がある)
>・武器能力は+2スタッフ
>・プロテクションリング+3相等の防御能力
>・フェザーフォールとコンティニュアルライト/日
>・所持者は光、空気、精神に影響を与える魔法の持続時間が2倍
>・精神集中をやめた後も1ラウンド集中効果が持続
>・ダメージ決定ダイスがすべて+2
>と、かなり強力ではあるが派手ではない、「所有者の能力を底上げ」的な力にとどまっている。


 
SF板で発したこの質問がどういうわけかD&D 3eのスレッドにやってきたのは、1stからのAD&Dと現在の3.Xeがかなりの別物だという感覚がなかったのかもしれない。2ndスレッドに誘導するまでもないだろうとその場で上記のように答えたのは筆者だが、そのために3.Xe関連発言を集めるSiGにまで収録されてしまった。
 「別のデータでは細部は違う可能性がある」と書いたのは、実際にシナリオの収録時期によって違っているデータが多数あることが念頭にあったためである。ことに、タニスの剣ワームスレイヤーやドラゴン・オーブなども、記述によって「地味」なデータになっている。Dragonlance Classics(最初に刊行されたシナリオのまとめ冊子)でのマギウスの杖も、かなり弱いバージョンのデータではないかという予感があった。

 そこで改めて調査してみたところ、案の定、一度は小説等が出きってからの、後出のAD&D2nd用のTales of the LanceにおけるStaff of Magiusのデータは、上記とは細部どころか全く違う、遥かに強力なものだった。そして、その内訳はとてもスレッドのレスでは説明しきれない非常に複雑なものになっている。

 まずプロテクションリング+3、武器能力やダメージダイス+2、持続時間や集中といったあたりは同じである(これだけでも、つまり上記でも充分すぎるほど強力ではある)。全く違うのは発動による擬似呪文能力で、チャージ消費式のきわめて多彩なものになっている。


1チャージ:コンティニュアルライト、フェザーフォール、ダークネス15’R、ホールドポータル、ディテクトマジック、プロテクションフロムイービル/グッド、エンラージ、ストライキング(スタッフのダメージが2倍)。
2チャージ:エンタングル、ガストオブウィンド、ジャンプ、マジックミサイル(3本)、ノック、スパイダークライム、レビテート、テレキネシス。
4チャージ:ディスペルマジック、ライトニングボルト(6d6)、フェインデス、ロケートオブジェクト、ファイアーシールド、パラライズ、インビジビリティ、サモンスウォーム。


 わかる人はわかるだろうが、これは基本ルールのうちチャージ有アイテムの中でも非常に強力なものに属する、スタッフ・オブ・パワー(FRの小説にもしばしば登場していた)にも匹敵するほどの多様な能力である。さらに決定的に違う点は、スタッフ・オブ・パワーが消費式であるのに対して、この杖は20チャージを持っており、このチャージは銀の月ソリナリの光に1時間あてるごとに1チャージ回復するという、充電式で無限の使用が可能になっている。
 (なおソリナリの光という点から、ヒューマとともに戦った魔術師マギウスは設定では赤ローブとあるが、この設定ではむしろ白ローブを想定していると推測できる。パーティの魔術師が赤や黒でなく、白ローブのキャラクターを作成することを予想して作ったのではないだろうか。無論、赤や黒ローブの魔術師が使っても特に不利があるわけでもないが。)

 ただし、この強力な杖の擬似呪文能力は最初からすべて使えるわけではない。所持者(6レベル以上である必要がある)が杖を持って念じるたび、低確率(1d10の1)で上記のうちランダムでどれかの能力が認識される。そうして3回認識した能力に対して、しかも使い手がIntの半分(Int18でも45%)チェックに成功して、はじめてその呪文能力を自分で使用できるようになる。
 非常に多彩な力がこめられているが、よほど使い込まない限りはすべての能力を知り、また使えるようにはならない。レイストリンやパリンは最初は明かりや羽毛落下の能力しか知らなかったのであろうが、特にレイストリンのプレイング中どのように杖の能力を使えるようになっていったのかあとから想像すると興味深いところである。

 さらにこの杖で非常に興味深いのは、上記のランダム認識のチェックの際、選ばれたのが高位の呪文能力のいくつかだった場合、その場でConチェックに成功しないと使用者は激しく消耗しきり、判定と移動にペナルティを受ける、という点である。
 レイストリンが呪文をかけるたびに消耗しきるという描写は小説『ドラゴンランス』ではお馴染みのものであるが、実際はAD&Dには、特に呪文をかけたその場で肉体的にも消耗してペナルティを受けるという基本ルールがあるわけではない(使用回数に制限があるのは消耗のためもあるという説明はあるが)。また、レイストリンはCon10(ほぼ平均値)であり、小説の描写のような極端な虚弱体質では別にない。故に、小説の虚弱描写は、「魔法使い全般が」脆弱であること(開始時にキャラモンhp56, レイストリンhp8)に対する極端なロールプレイの反映であるとか、小説に起こす際の著者らの完全な創作である等と、ファンの間では推測されていた。
 しかし、あるいはこの小説後のAD&D2ndの杖のデータから後付設定的に逆算するならば、あまりにもしじゅうレイストリンが弱っているのは(Con10ならば、杖の消耗チェックには半々でしか成功しない)実はこの杖の使用による消耗にあたるかもしれない、という想像も可能である。






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