NWN1公式モジュール諸々


 ここではOCと拡張(SoU, HotU)以外の公式・準公式モジュールについて触れる。なお、NWN1はプレイヤーが操るキャラは一人であり、当サイトではマルチプレイは考慮していないので、レベル域(おおむねモジュール開始レベル)だけ付している。



〇公式モジュールの概要


 NWN1のプレミアム等の追加モジュールは、日本での展開(セガ版)が終わってかなり後からリリースされたため、日本では非常に知名度が低く、ニコ大百科のように誤ったリストを掲載(2018年現在)して混乱したユーザーが某スレッドに定期的に迷い込む被害を拡大させている例さえ珍しくない。調べればすぐにでもわかることではあるが、一応NWN1の公式モジュールをOC・拡張を含めて概要を載せておくと、

(1)OC・拡張
  本体(OC)
  拡張1(SoU)
  拡張2(HotU)
 当初はバラ売りだったものだが、Diamond(GOG版), NWN1EEには一括で同梱されている。セガにより日本語化されている。逆に言うと、これ以外の下記するプレミアム等は全て日本語化されておらず、某手段を用いてセガパッチなどを応用してGOG版を日本語化しても、本体・拡張2本以外は日本語化されない。

(2)プレミアムモジュール前半3作、Kigmaker3部作
  
Kingmaker
  Witch's Wake
  Shadowguards
 当初はプレミアム販売や、3本組のパッケージで販売されていた。2018年12月現在、Diamond(GOG版), NWN1EEには一括で同梱されており、別途購入やDLする必要はない。NWN1EEの携帯端末(Android)版では同梱はされていないが、無料でDLできる。

(3)プレミアムモジュール後半3作
  Pirates of the Sword Coast
  Infinite Dungeons
  Wyvern Crown of Cormyr
 当時のプレミアム販売のみで、Diamond(GOG版), NWN1EEにも同梱されていない。プレミアム販売が停止してからは、再販売されることはなかったため、長期間(通常の手段では)入手することができなかった。そのため日本では知名度が全く無く、他の3部作やその他モジュールとの混同などの混乱の主要な原因になっている。
 現在、前述のようにNWN1EEにも同梱されてはいないが、EEのDLCとして購入できる。

(4)Cancelled Premium Module
  Darkness over Daggerford
  Siege of Shadowdale等(AL1-3)
  The HeX Coda
 プレミアムとなることが予定されていたが、諸々の事情で中止されたもの。DiamondにもNWN1EEにも同梱されていないが、上記のものについては、新vaultから無料でダウンロードできる。ただし、ストーリーが途切れていたり、不具合が発生したりと未完成のものもある。AL2-3のようにGOG版のDiamondでは動くがNWN1EEでは動作不良となるものもある。DoD, AL3についてはNWN1EEに適応するよう調整されたものがある。
 こちらも日本では非常に知名度が低く、どれだけ低いかと言うと、他所でも述べているがニコ大百科ではDoDが一つだけ市販プレミアムモジュールと混同して並べて書いてあったり、AL3がNWN1EEでリメイクされた際に、某巨大掲示板内に「完全新作」「NWN2用の没企画の再利用と思われる」などという噂が長々と続いたほどである(すでに14年前からVaultで無料でダウンロード可能だったことは全く認識されていなかったらしい)。

(5)その他Bioware製モジュール
  To Heir is Humanなど
 無料配布やパッケージに添付されていたもの。現在もDiamondやEEには添付されていることもあり、また、新vaultから無料で入手することもできる。

(6)それ以外
 例えばNWN1EEのDLCにはHeroes of Neverwinterがあり、これが日本のサイトなどでは、中身も確かめずに「追加モジュール」などと紹介されていることがあり、NWN以外にも同名のゲームが存在するのも混乱の元だが、NWN1EEのDLCのものについては、中身はただのポートレイト数枚である。BGシリーズなどでも行われている「光線犬商法」なので一応注意されたい。





○Infinite Dungeons (5-40lv)


 RogueLikeサイトとしては、NWN1の公式ランダムダンジョンモジュール、Infinite Dungeons(以下、ときどきIDと略す)は取り上げざるを得ないだろう。
 このモジュールは、公式の有料(プレミアム)モジュールとして無事リリースされたうちのひとつだが(不幸にも予定されながらリリースされなかったものも多い)、GOGなどでDL購入できるNWN1のDiamondには同梱されていないうちのひとつである。現在になって入手しプレイするには、自己責任でやや長い旅をする必要があるだろう。
 そのため、以下は実際にプレイできるNWNファンのための情報というよりは、「プレイできないが、D&D3.0e(やNWN1)でのRogueLike(のようなもの)が、どんなものに仕上がっていたのか気になる」というプレイヤーやRogueLiker向けの情報である。
 (追記:2018年3月現在は、Infinite DungeonsはNWN1EEのDLCとして再び提供されている。)


 全体の流れとしては、ランダム生成され最下層にボスのいるダンジョン(設定上は、FR世界の有名な巨大ダンジョン、アンダーマウンテンの一部がこれらの小ダンジョンになっている)に潜り、ボスを倒すと次のダンジョンに進む、を数回繰り返す。次のダンジョンに進むにつれて、だんだんフロアの広さや1ダンジョンの階層は増えていく。最後のダンジョンまでクリアすると(最後のボスを倒すと)一応エンディングのイベントがある。クリアキャラが貰えるアイテムを使用することで、かなりランダムダンジョンをカスタマイズできるようになり、自分で設定したランダムダンジョンに潜ることができるようになる。
 公式拡張モジュール2のHotUでも登場した、アンダーマウンテンの狂大魔術師ハラスターがこちらでも活躍する。なお、タイトル画面や3Dモデルをはじめ、今までのFR世界の設定画やHotUのハラスターとはまったく違う姿で描かれている(NWN1のVer1.69の最終パッチで追加されたハラスターの3Dモデルは、本来このIDに伴って追加されたものであるらしい)。


 基本的に(ツクールや『五つの試練』等同様に)固定マップ方式であるNWN1で、このIDがどのような仕組みでランダムダンジョンを生成していたかというと、


・何種類かの固定の「エリア」のマップが準備されている
・そのエリアのマップが、3x3などランダムに配置され、組み合わさって1つの「階層」を形成している
・その階層が、ダンジョンによっては何層か連なっている


 という形で表現している。一般的なRogueLikeや、3.Xeの
ランダムダンジョンジェネレートとはかなり異なる。


 NWNのシステム上、PermaDeathもなく、リアルタイム(疑似ターン制)なので「RogueLikeをプレイしている」という感覚はほとんどない。かといって、インターフェイスの近いDiablo系のハクスラのスピード感とも異なる。あくまでNWN1のシステムで、戦闘系モジュールのダンジョンクロールを行っているという感覚でしかない。
 ちなみに「ランダムダンジョンを生成し、単純にダンジョンクロールをする」という様相は、上述したようにことにPnPのD&DシリーズにおいてもAD&D時代から普通に行われていることであるから(Rogue発祥でもCRPG発祥でもない)、D&Dのゲームがランダムダンジョンだからといって、ことさらに「このゲームはRogueLikeかそうでないか」を議論する必要はない。


 ランダムに生成される敵や宝物、トラップや鍵を含めた要素、適切な敵の強さ(3.Xe系では脅威度ベースで敵をランダム生成すると、脅威度や出現数自体のシステムが当てにならないため、出鱈目な強さや弱さのえんがちょな遭遇になることも多いが、このIDでは割と適切な難易度になっている)など、ランダムダンジョン自体の中身の出来は悪くないのだが、完全に練り込まれているとは言い難い。
 以下はユーザーのレビューの一例にも書かれていることだが、例えば、同じダンジョンであれば、フロア、階層に関わらず、ずっと同じような敵が出てくる。大昔のAD&D2ndのRLであるDungeon Hackを思わせる。さすがにDungeon Hackのように「ひとつのフロアで2種類しか敵が出ない」というわけではないが、1ダンジョンではどの部屋に入っても似たような編成の敵グループが出てくる。これは「ダンジョンのテーマの統一性」(廃墟、洞窟、遺跡などのタイプによっておそらく似たような生物が生息しているはず、という考え方)からは妥当なのかもしれないが、単調にならざるを得ない。*band系や他のRogueLikeなどにも、同傾向の敵ばかりが出てくるように設定されているダンジョンというのはあるが、例えば*bandなどでは、適宜別のダンジョンに抜けるのも自由である。それに対し、このIDでは、数〜十数エリアの数フロアを延々とその傾向の敵と戦い続けなくてはならない。上のユーザーレビューで例に出てくるが、あるダンジョンでビホルダーばかり100体以上倒す羽目になった、という状況は実際に筆者も遭遇した。
 また、仮に同傾向の敵としても、メリハリをつける方法というのはいくらでもあるのだが、IDでは、ほぼ全てのエンカウント自体が延々と同じようなものとなっている。

 *bandやDiablo系のようなランダムアイテムも生成される。アイテム強化のシステムもあり、これら*bandやDiablo系のように強力な装備を求めてアイテム捜索や強化を繰り返すプレイも可能ではある。しかし、ランダム生成のため、OCなどの固定アイテムにはないほど有用なアイテムもしばしば得られる一方で、使えないアイテムも大量に出る。そのわりに「ヘイスト」「DR+1/10」といった、レアで高価なはずの(そして、複数アイテムで重複しても意味がない)効果が生成されたアイテムがやけに大量に出る。それらを逐一売り払っていると、金貨もたいして使い道がないため大量に溜まることになる。これも*band系などRogueLikeでは非常によくあることではあるが、D&D系ではかなり不自然である。このため、わざわざこのIDのアイテムドロップを調整するパッチがユーザーにより作られているほどである。

 そして何よりも、NWN1にも関わらず、処理が非常に重い。エリア移動(ダンジョン生成)にしばらくクッションがあるのは無論、ランダムダンジョンをすべてセーブデータに記録しているのか、広く階層が深いダンジョンの探索末期になると、セーブ及びロードに何分もかかることがある。
 上記のボスを一通り倒して、一度ストーリーをクリアすると、ダンジョンをカスタマイズできるアイテムが手に入る(コンソールコマンドで入手することもできる)。前記のように深く潜ってボスを倒しまくるよりも、このアイテムを用いて、小型のダンジョンを生成し、気軽に短いダンジョンアタックをするようなプレイの方に向いているのかもしれない。ダンジョンが小さければセーブにはそれほど時間がかからないが、ただし、全体として何となく重いのは変わらない。上述したモンスターやアイテムの特性からどうも盛り上がらないのも同様である。


 自然生成の戦闘モジュールならば、ついEndless Nightsシリーズ(NWN1定番のランダムプレイシリーズ。マップは自動生成ではないが、クエストや敵はランダムで発生する)に流れてしまいがちである。
 NWNにはこのIDよりもかなり前から、Endless Nightsシリーズやその他にもランダム生成冒険のモジュールは多数あり、それらの方が全面的に優れているというわけでもないが、他の選択肢の存在という面でもって、このInfinite Dungeonsはどうしても、いまひとつ奨められないという評価が与えられていることが多い。一般に海外NWNユーザーは公式モジュールには厳しいが、ストーリーの次第にダンジョンが大きくなる形式とシステム自体の相性が悪かった、などの悪条件が重なり、特にその割を食っているひとつともいえる。




○魔女「エターなりましたわ!」


 Witch's Wake (1-3lv)


 GOGなどで買えるNWN1のDiamond Edition、およびSteam等のNWN1EE版に、標準で付属している3本の公式プレミアムモジュールのひとつである。
 蛮人コナンの『魔女誕生』とは関係ない(くどい)。また魔女とはNPCで、プレイヤーキャラではない。王子様も登場するがOPが終わると戦死して杭に晒されているので、プレイヤーキャラが女性であるメリットも薄いと思われる。所持品は没収されて開始する。戦場から始まるのと、1lvキャラから始めると決して楽ではない戦闘から、戦士系で始めるのが良さそうである。

 謎めいた王子の遺言、魔女、死者の次元界、ドワーフの遺産など(ダーク)ファンタジー感山盛りで進んでいくが、開始2時間ほど、いいところで突然ぶっちぎれてエンディングとなる。30分テレビシリーズの1話というより、60分番組の最初の20分でいきなりぶっちぎられた感がある。実の所、Diamondに収録されているのはremasteredと題され、ボイスなどの追加があることかららしいが、remasterされていないものは当初は「1話」とされていたらしい。つまり、2話以降が作られる予定だったらしいが、中止になったという。ファンなどが続編を作った(NWNシリーズのOCにはよくある)という話も聞かない。
 Remaster前(つまりエターなったのが確定していない頃)のプレイ者から、上記雰囲気や演出から、「NWNファン、特にモジュール製作者は必ず一度はやっとけ」という声もあった。一度プレイする分にはさほど長くはないので、今でもそう称される価値は無いわけでもない。




○Kingmaker (1lv)


 2016年12月現在、海の向こうで逆転当選とか話題になっておりきわめてタイムリーであるので、このNWN1 DiamondやNWN1EE付属モジュールのひとつを紹介する。
 どんなモジュールか。町(砦)を歩き回って、幾つかのクエストをこなす。ここまではD&Dゲーというか、洋ゲーには当たり前である。そのクエストクリアを介して、各ギルドの支持を得る。これも流れとしては至極当たり前である。
その支持により、得票を集め、選挙に受かるのである。
 かつて『プリンセスメーカー』を「シムねーちゃん」と呼ぶのが当時そこかしこで見られたものだが(とても今のゲーマーにわかる話とは思えないが)これはその意味で言えば「キングメーカー」というよりは「シム町長(候補者)」である。
 かつてKingmakerボックスセットとして売られていた際のパッケージや、タイトル画面などに描かれているモジュールの顔、仮面の魔術師は、パッと見はおなじみマンシューンかと思ったが、よくよく見ると違い(さらによく見ると若干DL世界の「ドラゴン卿」も入っているように見える)全く関係ない。というか、世界設定はレルムですらない。なお、Kingmakerといっても遥かに後出のPathfinder(d20)のCRPGとも、遥かに前出のAH(アヴァロンヒル)社の薔薇戦争テーブルゲームとも特に関係はない。


 モジュールは1lvの新規キャラから始まる。より正確に言うと、インポートしたキャラのレベルに関わらず、プロローグで10lvのベテランキャラとして活躍するが、直後に戦死、1lvとして復活する。直後のイベントで3lvほどとなりモジュールの開始となる。それまでの装備品も没収され、ラストで直前で返って来るようだが、あまり意味はない気がするので、新規キャラ推奨と思われる。


 このモジュールでは、プロローグの仲間たちそれぞれの命運を最初に選び、そのうち2人はヘンチマンとして以後城塞都市を引き連れることになるのだが、かれらはいずれも多彩な怪物(人外クリーチャー)である。うしろに引き連れて都市を歩く姿はポケモンマスターとかDQモンスターズかと思わせる。おそらく、HotUのディーキンが好評だったためかと思わないでもない。ちなみに城塞都市が舞台にも関わらず、怪物をヘンチマンにして町中引き連れていることについて、ギルドなどの街の人々はさして疑問を発しない。
 流れ自体はフリーシナリオの洋RPGとしてはオーソドックスなものだが、これらの仲間やクエストの選択などにバリエーションがあるため、NWN1/2のモジュール(特にSoU, HotU以降では、ストーリードライブに偏りがちであった)の中では、「リプレイ性が高い」とも評されている。ゲームアワードサイトの中には、2005年の最良RPGにこのKingmakerを選出したものもあった。


 ボイス入りで喋りまくるヘンチマンたち、砦への着任や侵攻がキーとなるストーリー(もっとも、やることの中身は全く異なっているが)の流れなどに、NWN2のOCを思い出すプレイヤーもいるかもしれない。(特に関係があるわけではないが、実際のところ、このボックスセットは次年のNWN2への橋渡しのような様相もある。)なんとなくNWN2-OCの流れや雰囲気になじみ深いものを感じるプレイヤーにも薦められる。




〇To Heir is Human
〇Dark Ranger's Treasure
〇Winds of Eremor
(いずれも 5-15lv)


 これらはメーカーであるBioware製のモジュールで、GoGなどで買えるNWN1 Diamondのバージョンによってはインストール時に自動で入っている場合がある。入っていないとしても、
新vaultなどで検索してユーザーモジュールと同じ扱いで無料でダウンロードできる。
 NWN1EE版には標準で入っている。NWN1EEの携帯版では、Adventure Bundleなどというタイトルで、Contest of Champions (昔からあるPvPアリーナ)と組になって無料DLCセットとしてダウンロード可能だったりもする。

 OCや拡張2本以外の公式モジュール(開発はBiowareや他社のこともある)は、プレミアムモジュール(上記Kingmakerセットのように追加パックとして発売)や、その予定だったものが中止といったボリュームのあるものも存在するが、これら3本については、ソロでは15分かそこらで終わるもので、ミッション内容も短い道中とメインの1戦といった単純なものである。ただし、ストーリーは小味がきいている(特にTo Heir is Humanの好評を耳にする)。

 つまり、どうやらちょうどかつてのセガの日本語版NWN1サポートページで配布されていた『病魔の坑道』『魔女の棲む島』のような、サンプルシナリオ兼、短時間マルチプレイのための舞台にあたるものとして提供されているもののようである(長さはこれよりも無い)。

 メインの戦闘に関して言えば、戦闘難易度はキャラクターの強さに合わせて、5-15lvの範囲で自動的に調整される。しかし、例えばTo Heir is Humanに15lvのキャラで挑戦したらラストでキャンペーンボス級を二体含む敵群を一人で相手にする羽目になるなどバランスは厳しめである。おそらく、同じ15lv相当でも一人で15lvでなく、マルチプレイでバランスの取れた4人程度のパーティーを想定しているものらしい。また、Dark Ranger's Treasureなどは異常に報酬が多かったりする。これもおそらく複数人で山分けすることを想定しているのだろう。マルチで使用することを強く想定していることが予想できるが、一応ソロでも挑戦できる。




〇Shadowguards (3lv-)


 Shadowguardsは元々はKingmakerパックの3本のひとつで、GOG版のNWN DiamondやNWN1EE版には同梱されているものである。
 基本情報として、ストーリー物のシティーアドベンチャーで、ほぼ全編が街(あるいは街から続いているダンジョン)を舞台とする。プレイ時間は3−4時間ほどで、Kingmakerパックの他2本同様短い。
 開始時に3lv(3000xp)に固定され、アイテムは没収&モジュール指定の装備となる。つまり「新規キャラ開始推奨」はKingmaker3本とも同じである。後述するように、インポートするプレイヤーキャラはウィザード(又は、他の秘術系クラス)を想定されている節がある。終了時はほぼ5lvとなる。戦闘は少なくないが、強力なヘンチマン(出入りが激しい)がいることもあって、プレイヤーキャラにさほど高い能力(魔法の能力を含め)は要さない。

 特にドキュメントやゲーム内でそのようにキャラを作るような誘導などはないのだが、他の2本同様、プレイヤーキャラには最初から指定された背景設定がかなり多い。「街の有力なウィザードの子という設定」「アカデミーの卒業」や、その理由による前述の開始アイテム、予備知識などである。(なお、このモジュール及びキャラの背景設定は、Kingmakerボックスの他の2本同様、FRとは異なる世界設定である。)
 そのため、これもドキュメントに指定はないが、プレイヤーキャラはウィザードが強く想定されている節があり、ウィザード用のアイテムなどが多数出て来る。ただし、イベント内容は必ずしも秘術の知識や技術(キャラ能力)を要するものではなく、魔法や魔法使には特に関連しないもの(シティアドベンチャーの盗賊冒険者らしいもの等)も多い。

 他の2本同様、ボイス等の演出、カスタマイズされたコンテンツも目立つが、(ユーザーモジュールに比して)特筆できるというほどではない。ストーリーはWitches wakeほどぶっちぎれというわけではなく完結はしているが、いかにも続きがありそうな感で終わる。
 他2本同様にドラマチックではあっても、やはり途切れた話など、他2本に比べるとやや小粒な感が否めないであろう。無論、モジュールとしては普通にプレイに堪える。




〇Darkness over Daggerford (8lv-) 新vaultのDLページ


 これは"Cancelled Premium Module"のひとつであり、当初は公式の予定で作られたが、現在はユーザーモジュール同様にvaultで無料で配布されているものである。当然、それなりのコンテンツ質・量がある。
 DoDはMoW(NWN2の追加公式モジュール)を作ったOssian Studioによるもので、Atariの意向によりプロジェクトが中断したが、モジュールそのものは作者らが完成及びユーザーモジュール同様のvault発表にこぎつけたものである。


 背景はともあれ、DoDの特徴は、『バルダーズゲート』等に似て、(一定時期から後は)マップを自由に散策し、サブクエストを探してクリアしていく形態にある。
 例えばNWN1のOCでは、一本道のメインクエストの他に枝道のサブクエストが設けられていたが、章を進めるとモジュールそのものが変わってしまい戻れないため、作業的に枝道を潰してから本筋を進めるというのを章ごとに繰り返さなくてはならず、冗長なプレイングになる点が指摘されていた。(そのため、以後の公式モジュール、SoU以後やNWN2では、本筋を強化するいわゆるストーリードライブに移る傾向があった。)
 これに対してDoDは、本筋の完結近くまでは、ほぼ自由にマップ各所のサブクエストが可能である。そうした自由散策形のモジュールは(例えばPW用や、それに近いものなど)NWN1でも他にも存在するが、DoDではシステムを拡張し、BGに似たオーバーランドマップなども導入している。
 カスタムコンテンツの類も多く、インストーラの総容量で214MB(+パッチ)にも及ぶ。リリース当初はモジュールが「重たい」こともよく指摘されていたが、GOG版のDiamondを動かす最近のマシンパワーであれば(Infinite Dungeonsのように、セーブなどの構造自体に重さが避けられないものとは異なり)さほど負担にはならないと思われる。


 ゲームシステムだけでなく、テキスト内容にもBGと関連するものが数多くある。舞台となるダガーフォード市が、ウォーターディープ市の南、バルダーズゲート市の北という要衝であり(最も狭義での「ソード・コースト」にあたる。NWN1/2のOCやHotUよりも地理的には南である)実際にBGやウォーターディープに関連する話題が出て来る。また、NWN1,2のOCでは希薄だった、ゼンタリムやFR世界の重要人物の名も多く出て来る。FR世界そのものに入門するプレイヤーにも興味深い(英語を読むのが苦でなければの話だが)と思われる。


 キャラは新規作成すると8lvとなるが、それ以上のレベルのキャラをインポートした場合、特にxpが下がったり、所持品が調整されるなどは無い。
 vaultのDLページにあるように、本筋のみ進めると8-10時間で完了し、サブクエスト等を全て拾っていくと25-30時間のプレイングが可能とされている。キャラクターレベルは本筋のみだと13lv程度に到達し、サブクエスト等で最大でも14-15lvのようである。
 なお、vaultのDLページでは、Roleplay(文章量、ストーリーの理解の要求)が"Heavy"となっているが、例によってジャーナルを(特に末尾の目的地などを)読んでいれば複雑な理解などは必要なく、作者らによるスポイラーもDLページにあるので、詰まって進まなくなるといったことは特にないと思われる。


 Cancelled Premium Moduleの中では、完結していることもあり(完結にこぎつけられなかったものや、前述したようにプレミアムとして無事販売されても続編がエターなったものもある)おおむね好評である。ユーザーモジュールも含めたNWN1の推奨モジュールの中に(SoUやHotUと共に)含まれていることも多い。少なくともNWN1のOCよりはかなり良い、難易度も低めなのでOCより初心者はこちらを先にプレイしてもよい、といった声もある。


 しかし、このDoDにも例によって(NWN1/2ともに当サイトでは本当にこんな話ばかりしているのだが)細部を見ると消化不良と言わざるを得ない点が多い。
 特に難易度や数値(報酬)バランスなどの練り込みは不十分である。例えば、戦闘難易度について、駆け足で進めると13lv程度で終盤までたどり着くが、終盤の戦闘難易度はそのレベルでも困難はない、というか、それでも簡単すぎるほどである。そもそもモジュールの長さ(駆け足で10時間程度としても)の割にレベル域が狭い(長編モジュールにも関わらず、上記の例では開始時から5lvしか上がっていない)。D&D3.Xeでは、BGシリーズのようなAD&D2nd以前とは異なり、敵とのレベルの差によってxpの入り方が大きく異なる。例えばレベルが上がりすぎると、弱すぎる敵を倒しても非常にxpが少なくなるので、進行度合いに応じた遭遇レベルが推奨される(NWN1/2では自動調整されるモジュールも多い)。しかし、このDoDでは、どのサブクエストに対しても、いつ挑戦するか(ゲームの序盤か、終盤か)に制限が少ないので、どのクエストにいつ挑戦しても大きくxpや難易度が変化しないよう、序盤〜終盤のレベル域を狭く、また難易度自体を低めにしたと考えられないでもない。しかし、BG1その他を参考に、時間をかけて調整すれば他にやりようもあったはずである。
 戦闘そのものの細部にも調整に疑問符がつく点が多い。例えば、このDoDの特殊ギミックとして、BG/IWDやNWN2のようにトロルは火や酸以外ではhpを削っても地面に倒れたままになり死なない、のはいいのだが、これら別ゲームと異なり、この倒れた状態のトロルを酸や火で攻撃してもとどめが刺せない。起き上がってきたところに酸や火でとどめを刺さなくてはいけないのだが、ヘンチマンの女剣士やハーフリング盗賊の電撃ボルトが先に削ってしまうとまた生きたまま倒れてしまう。そして、どうも「削って地面に倒した」時点でxpが入るので、そのまま何度も起き上がるトロルを延々とヘンチマン達が文字通り倒し続けてどんどんxpが入っていく。注意して調整されているとはいえない。
 報酬は多く、例えばgpなどは多めで特に使い道がない(使う手段もないが、難易度が低いので使う必要もない)。NWN2やBG2(ナリアイベント)のように城塞を入手する場面もあるが(もとバール神の神殿であった、といった仕掛けがBGを思わせる)特に経営などができるわけでもない。
 些細な点ではあるが(もっとも、BGファンには特に、NPCの魅力は重視されることが多い)ヘンチマンが固定なのも物足りない点であろう。バナーにもなっている女剣士とハーフリング盗賊の2人しかおらず、プレイヤーキャラは信仰・秘術系のどちらかのキャラを作ることになる(もっとも、難易度が低いので、どんなプレイヤーキャラでも、例えばヘンチマンとクラスがかぶっていてもクリアが困難ではないと思われる)。

 新vaultの評価でも「8-10点をつけたい心情を掻き立てられる出来の良さだが、簡単すぎたり細かい問題点のため-1,2ポイント」といった声が目立つ。
 NWN1でBGを思わせるフリーシナリオといっても、あくまで近いといったもので、BGのゲーム性を再現なり別の独自のゲーム性といったものまでは実現していない。ただし、制限の少なさ、難易度の低さやFR世界の背景などから、特に入門者へのとっつきやすさやプレイしやすさの利点は大きいと思われる(繰り返すが英語圏ゲーマーの話で、日本では日本語化されたOC等よりも先に入門者に薦めてよいかは定かではない)。




〇Pirates of the Sword Coast (5-10lv開始、13-14lv前後終了)


 Pirates of the Sword Coastは公式の有料ダウンロードコンテンツ(プレミアムモジュール)としてリリースされたひとつである。2005年でNWN1としては後期になるが、サービスの停止以後は、GOG版などのDiamondに同梱されたKingmaker3部作と異なり、長い間正式な入手手段もなかった。が、2018年のNeverwinter Nights: Enchanced Edition (NWN1EE)ではDLCとして本体同様Steamから購入することができる。そのため、せっかくだから概要に触れる。以下は旧版の情報だが、EE版も内容は特に手が入っていない(NWN1EEは全般そうだが)と思われる。

 このモジュールはタイトル通り、海賊に関わる冒険をフィーチャーしたものである。海上を探索するようなものではなく、大筋のストーリーは決まっている、NWN1/2としては典型的な(王道的な)ストーリードライブのモジュールである。
 ここでの海賊や船乗りというのはだいたい日本の一般人が持っている、大航海時代〜近代をややずれて捉えた海賊のステレオタイプ、ハーロック、
アゴ割れシルバー、ラテル&アプロシリーズ、クロスボーンガンダム、ガンダムAGE-2、キャプテンキャプテンホーク、軽巡木曾、JRPGの中盤あたりで出てきて後半でプレイヤーキャラになるナルシスト船長、といったイメージと大差ない。ああそうだ、ジョニーデップとゴム人間もか。ともかく、だいたいこういう面々から想像できるようなストーリーが進む。港町のシティアドベンチャー、海賊団同士の抗争、謎の秘宝、遭難、漂流、装備なしで無人島(実際は全然無人ではない)でのサバイバル、原住民(全然人間ではない)に捕まって決闘・脱出、海底闊歩、横づけした船上での乱戦、幽霊船、幽霊島、船底に穴があいて浸水の真っ最中にテンパった戦闘、などのお約束の要素がおおかた網羅されている。また、当然タイトル通りレルムのソード・コーストが舞台であるので上記の謎の秘宝とか全然人間でないとか幽霊船とかFT要素も強く、もはやお約束の海神ウンバーリーが強く関わってくる。
 8-10時間程度の中編モジュールで、モジュールファイル1個(単発)としては長めだが、上記要素が全部凝縮されていることを考えるとこれでも短いように思われる。

 キャラは新規作成すると5lvとなるが、それ以上のキャラ(10lvまでが推奨)をインポートしてもよい。特にインポートしたキャラのlvが下がるとか装備が剥がれるということはない(上述から想像できるように、装備を無くすイベントはあるが、後で戻ってくる)。そのため、「いかにも海上らしい軽戦士」でないとプレイできないというわけではないのだが、展開上軽装備や無装備で戦う場面が多いので、やはり軽装で戦えるようなキャラの方が望ましいと思われる。アイテムに頼り切った性能のキャラや貴重なアイテムを持ったキャラではない方がよさそうである。




〇AL1-3: Siege of Shadowdale等 (1lv開始-17lv前後終了) (新vaultのDLページ)


 これは上記のDoD同様のCancelled Premium Moduleのシリーズで、プレミアムとして販売が予定されていたがAtariの都合で中止となり、その後、vaultでユーザーモジュール同様に無料配布されているものである。公式や他のプレミアムには評判がいまひとつのものもあるが、このAL1-3についてはDoD同様、vaultの殿堂入りモジュール群と同等にユーザーからも好評価を受けている。
 AL1: Siege of Shadowdale (およそ1lv開始-7lv終了)
 AL2: Crimson Tides of Tethyr (およそ7lv開始-14lv終了)
 AL3: Tyrants of the Moonsea (およそ15lv開始-17lv終了)
 の3本の、いずれも中〜長編からなるが、作者が同じで(各タイトルから想像できるように)レルムが舞台という以外には、実は共通点や繋がりはあまりなく、それぞれ別のキャラでプレイしても支障はない。この他、4本目のAL4: The Blades of Netherilが予定されており、これはAL3とは続き物となる予定であったらしいが、発表されることもなく作者がNWN界隈を離れている。
 いずれもストーリー物で、トリックや仕掛けはほとんどなく、戦闘は割と多いが特別厳しくも激しくもない程度である。

 AL1は内陸部でもエルミンスターらが拠点としていることで有名なシャドゥデイルを舞台としている。シャドゥデイル内の事件にとどまっており(背景の規模はそれなりにあるが)小粒な印象を受ける。エルミンスターはラストまで登場しないが、だいたい予想通りの登場・動きをし、「これさえなければ良作だったのに」などと冗談まじりに言及されることがある。
 AL2はうってかわって内陸部からいきなり南下し、PCゲームシリーズでおなじみの西岸近くに舞台を移す。テシア(テシール、BG2のオームーの南)の大規模戦争に関わり、行軍にはるばる同行したり、エルフの都市サルダネッセラーを防衛したりする。サルダネッセラーはBG2のSoA終盤でも舞台となったが、イレニカス(SoAの敵)の名を冠したダンジョンが登場するなど、BG以来のFRゲームプレイヤーには見どころが多い。AL2は3本中では最もボリュームがあり、奇をてらわないながらもそれなりのエピソードが盛り込まれたストーリーで普通にエピック英雄譚らしい流れとなる。AL2は特に人気が高く、ユーザーモジュール含めたベスト幾つのリストに挙げられることも少なくない。
 AL3は再び内陸部に戻り、先のシャドゥデイル等のデイルランドよりさらに北の月海岸を舞台とする。ゼンティル・キープ(ズヘンティルとりで)とヒルズファー市の抗争に巻き込まれ(この頃はヒルズファーの赤羽根P軍団や市長マールシーアとかは完全に「悪」扱いになっている)ヒルズファーの闘技場に放り込まれたり、なぜか内陸でなくソード・コーストの人物であるアルテミス・エントレリが(FRCSではテシアの項目に書いてあるにも関わらずAL2でなくこっちに)出てきたりもする。

 ストーリードライブであるのだが、AL1の時点からプレイヤーキャラの行動によってフラグが変化して次の目的地が示されるというNWN1/2モジュールでよくある進め方の他に、イベントをクリアしても特に目的地が示されず、クリアしたフィールドを出た等のタイミングで今まで居なかったキャラが話しかけてくる、自動でカットシーンに移動する、といった流れがかなり多い。
 それ自体が問題なわけではないのだが、怖いのはイベント管理やトリガー発動の誤爆で、トリガーが発動せずそれっきり進まないなどの状況にはまることはあり得る(BGシリーズやNWN2OC、またNWN1でも過去パッチバージョン用のモジュールを動かした場合などはかなり頻出したのを思い出すゲーマーも多いと思われ、BGやNWNのシステムだとある意味この手の仕掛けにはよくあることである)。例えば、AL3の闘技場で起こるカットシーンの不具合については、配布ページその他で報告や対策が述べられているが、これはAL3が中断の都合で「未完成」(ストーリーは完結している(いかにもAL4に続きそうに終わるとはいえ)が、最終調整は完了していない)であることにも関係しているかもしれない。対策としてはウォークスルーやデバッグコマンド、デバッグ用のアイテム等を準備しておき、ウォークスルーから見て明らかにおかしい挙動の場合はコマンド等で対処するといった準備が必要なことがあるが、overrideが多めの場合など不安な場合は注意した方がよいシリーズである。(なお、AL3の上記カットシーンの不具合は、NWN1EEでは上記対策を用いても解決できないという報告もあり、EEでは要注意である。)


 作者のAlazander氏はゲームデザイナーでFT小説家のLuke Scull氏であり、プレミアムが中止となった後は自活動(当時Ossianに加入しており、NWN2のMoWを含む)のためAL4を含めNWNの活動を離れていた。そのため典型的な「エターなったシリーズ」のひとつと考えられていたが、2018年現在、NWN1EEが出たことをきっかけに、AL4やAL1-4のキャンペーンの再構築について触れ、Beamdogのフォーラムで協力者を募ったりしている。あるいは今後これらが見られるかもしれない。

 2019年8月追記:問題があったAL3については、NWN1EE用にリメイク(有料のダウンロードコンテンツ)がリリースされた。今後もALシリーズにバグフィックスや続編の動きがあるかもしれない。




〇Wyvern Crown of Cormyr (6-7lv開始, 12-13lv終了)


 Wyvern Crown of CormyrはNWN1旧版の最後の公式プレミアムモジュールである。あるいは、NWN1EEにおける新モジュールのための交渉がまとまらなかった場合は、新旧通してNWN1の最終公式モジュールで終わると思われる。
 NWN1旧版でリリースされたプレミアムモジュールの中では、いわゆる「後半3本」のひとつであり、前半3本(Kingmaker3本セット)がGOGなどでも購入できるDiamondにも収録されていたのに対して、こちらはサービス停止以後は収録・復帰することもなくかなり長い間プレイが不可能となっており、前半3本に比べると知名度も低い。しかし、2018年のNWN1EEでは後半3本は別売のDLCとして復帰し、プレイすることができる。


 Wyvern Crown of Cormyrは、後述するが騎士物語に関連の深い国、コアミアを舞台としたストーリードライブのモジュールである。その舞台・題名と共に騎乗関連のゲームシステム(パラディンの乗騎のルール再現を含む)、コアミアのパープル・ドラゴン・ナイトの上級クラスなどのいかにもな追加要素が共にあったため期待されていた。

 コアミアはAD&D1st時代には主な舞台であったレルムの内陸部の国のひとつである。現在すっかりダークファンタジー化しているBG,NWNシリーズの西岸ソード・コーストや、同じ内陸でも悪組織と悪漢らが殴り合うT&Tやランクマーのような様相の月海周辺やサーイといった国々とは異なり、コアミアは強力な英雄王が支配し、歴史の長い貴族ら、隠者や伝説の紫竜が控え、神秘的な妖精物語や騎士ロマンスの雰囲気を思わせる節もある。いわゆる「日本人がイメージしていることの多い中世風ファンタジー」のような、強力な国家に守られた比較的平和な国(WGやFRの実情は遥かに怪物や自然の脅威が過酷である)、またD&Dといって日本のゲーマーが想像するガゼッタなどにより近いと思われる。
 が、3.0e FRCSに書いてあるように、その英雄王、1-2nd時代にはレルムの英雄戦士の代表のひとりだったアゾウン(エイズーン)4世は邪竜と相打ちになり、このモジュールはその直後の動乱時代を舞台としている。
 プレイヤーキャラはその動乱に巻き込まれたコアミア住人で、冒頭でコアミア出身の元冒険者、家族・仲間などの独自の設定が付与される。キャラを作成したりインポートすると6lvの経験値が与えられるが、装備は持ち込めない。基本的に(Kingmakerシリーズ同様)専用の新規キャラを作成してプレイするモジュールである。

 が、コアミアの設定に密接に沿ったり他モジュールと異なる本格的な騎士物語なのかというと、必ずしもそういうわけでもない。
 コアミア中枢の濃い政争などに関係あるというわけでもなく、小都市(一応はレルム設定上は重要地域であるサンダーストーン城塞)付近を舞台としており、ラスト近くになって、摂政アルセア王女の軍師である女魔法戦士、カラドネイが登場するくらいである。騎士物語、中世やアーサー王等のロマンス詩、またはTOやFFTのような国家劇・戦争劇的なのかというと特にそうでもない。レルムキャラではわりと有名人のホークリン卿による騎士叙爵や、後述のジョストなどのそれらしい場面もあるが、基本的には、様々な舞台でのダンジョン攻略場面が大半の、ごく普通のD&Dらしいシナリオである。タイトルの「コアミアの飛竜冠」は、政略や貴族抗争で勝ち取る肩書き(地位)であるかのような印象を受けるゲーマーもいるかもしれないが、実際は複数の古代遺跡を舞台に東洋龍やナズグルもどきとの間に争奪戦を繰り広げる強力なアーティファクト物品の名である、という点が如実にストーリーの性質を表している。
 なお、筆者は戦士系でしかプレイしていないが、よく考えてみると騎士能力が必須というシナリオでもなく、常に戦士系のヘンチマンがおり、また後述するように必須イベントのジョストの場面でも実は前衛能力は関係ない。なので、(叙爵などの)設定に関わらず後衛系などでも良いのかもしれない。

 前半Kingmaker3作や、後半3作でもストーリードライブのPirates of the Sword Coastsに比べるとボリュームがあり、プレミアムとしては悪くないように思える。日本でこのモジュールをプレイした非常に貴重な感想の中にも、NWN1モジュール群の中でも名作に挙げているものもある。
 が、本国など海外ユーザーの評判はどうもいまひとつのようである。知名度が低いことと、好評が見当たらないのはどちらが原因と結果なのかは不明だが、「プレミアムモジュールならばこちらよりKingmakerなどを先にプレイした方がよい」等と薦められている場合もある。
 理由としては、NWN1ユーザーコミュニティにおいては、公式モジュールについては一般に評価が厳しく粗探しが多いこと等が考えられないでもないが、推測できるひとつに、新システムや騎士関連に関する「期待外れ」とおぼしき点が多いことが挙げられる。
 例えば、折角騎乗戦闘が実装されたということもあり、シナリオ進行必須として2度ほどジョスト(馬上槍試合)をする場面が出てくるのだが、この場面は通常戦闘の利用などではなくイベントのようなカットシーンとコマンド選択で進む。それはいいのだが、内容は特にキャラの技能やコマンド選択の攻略法などが関係あるわけではなく、「ただの偶然ジャンケン」だけで結果が決まっているという(海外サイトの攻略によれば)。別に厳しい連勝などの条件が必要なわけでもなく、シナリオ進行のための作業量を要求されているわけでもないので、気になるほどのものではないと思われるのだが、このモジュールの評では決まってこの要素が酷評されていることが多い。騎乗戦闘はNWN1末期では妙にクローズアップされていたトレンドだったので、ルール追加部分が期待外れだったという点がモジュール本編の評価を大きく下げているのかもしれない。

 なお、シナリオ内容とは関係ないシステム的な面だが、このモジュールの売りに「パープル・ドラゴン・ナイト」クラスが追加された点がある。これはDiamondなどの旧版でも、1.69パッチ以降では本体側のデフォルトのデータに含まれている。(セガの日本語版では、Wyvern Crown of Cormyrが和訳されなかったにも関わらず、1.69本体側パッチではこのクラスは追加され、しかもデフォルトデータにはこのモジュールに登場するカラドネイのキャラデータ・ブループリントが追加されていたので、事情がわからなければわりと謎の追加内容となっていた。)
 ところが、このモジュールでのパープル・ドラゴン・ナイトのクラスや、その他このクラスに関連する騎乗戦闘系の特技などは、Diamond付属のこのモジュールのバージョンでは、(おそらくhak内での2daファイルの都合で)1.69本体側でのこのクラスとは別のIDに追加されている。その結果どうなっているかというと、Wyvern Crown of Cormyr内でレベルアップ時にパープル・ドラゴン・ナイトを選択したキャラは、他のモジュールにインポートするとこのクラスレベルを正常に持っていない(不正なresref等になる)。逆に、他モジュールでパープル・ドラゴン・ナイトを取得したキャラをWyvern Crown of Cormyrにインポートしてもこのクラスや特技は正常に持っていない。つまり、Wyvern Crown of Cormyrをプレイするなら、キャラを持ち込むにせよ持ち出すにせよ、パープル・ドラゴン・ナイトを持ったキャラは避けるべきだという、完全な本末転倒状態になっているのである。これはDiamondでは日本語化したものだけの問題でもないらしい。一応キャラメイクに関して注意が必要である。








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