*band関連補足雑記







・出典

 D&Dwiki (dandwiki.com)は、公式データも収録されてはいるが(後述)、homebrew(投稿者自作のハウスデータ)が多く収録されたサイトである。投稿は3.Xe時代のd20同様、日本での"TRPG"への感覚にましてカオスであり日本のゲームやアニメ、例えば鬼滅とかもある。
 これらのhomebrewデータについては公式度も完成度もどん底に皆無の非常に粗雑・乱雑なものも多数投稿されており、識者の間では(サードパーティー製の濫作d20同様)「危険度」について非常に悪名が高いサイトである。

 ところが、実のところこのwikiの「名前」と、おそらく検索で上位に出てくることもあり、少なくとも日本では、主にD&D界隈外一般で「D&Dの公式データの集積サイト」か何かの類だと勘違いされている例が非常に多い。d20全般のPCゲームや、D&D/d20を元ネタにした他者の漫画や小説等の界隈(掲示板、SNSなど)で、このwikiを当たり前のように「D&D公式データ」と称して貼られている例をおびただしく目にする。Homebrewでない箇所なら公式データなので安心、と主張されていることがあるが、このdandwikiは公式やSRDと書いてある箇所にすら、サードパーティーのd20類や同人データが普通に混ざっていることがある。これは追加が自由、もといデータの正当性を確認する仕組みが無いためという。このwiki全体について引用は非常に危険ということである。
 このD&Dwikiとは別に、「Dungeons and Dragons Wiki」(これもhomebrewデータが混ざっている)や、日本にも同名の「D&Dwiki」があるが、これらと混同されていた例にも事欠かない。

 しかし先日とうとう、*band界隈ですら、ここのhomebrewに記載されていたのを根拠に「D&D由来(関連)」の要素だと主張する読者や、ずっとそう勘違いしていたという読者が、しかも複数いた、という報告があった。

 現に、5版のPnPの方の一部界隈でも、このwikiをSRD(公式ルールの一部無料公開部分)か何かの類なのだと信じてここの素っ頓狂なルールを公式と主張した者が出現し、大変な大騒ぎになったことがある。そういった経緯から、「PHBなどの本をきちんと買わずに無料ルールをネットから拾うような姿勢の奴はまず疑え・問答無用で弾け」という空気が一部では形成されてしまっているらしい。現在ではWotC/HJサイトのベーシックなどですでに「D&Dは無料で入手・プレイできるゲーム」であることを以前紹介したが、にもかかわらず、この一部での状況は無料情報・ゲームとして普及するどころか、むしろ余計に排他化・悪化している。情報が無料で無尽蔵に手に入る分、出所には余計に気を配らなくてはならない……。
 *bandの出典としての留意点として、MoriaからAngband, さらには[V]から[Z]が作られた時点(1994)では、D&Dシリーズは「AD&D2nd」までしか存在していない。かつてNetHackの関連サイトに、ENworldの3.0eの記事がそのまま貼り付けてあったことがあったが、3−5版のデータを見つけた際にそれが本当に2nd以前(しかも、実際は海外RPGの形成元となっているのは大半が1stである)まで遡れるのか留意が必要である。





・初代Rogue


 WizardryやNetHackには、アーマークラスが「数値が低ければ低いほど良い」等、古いD&Dシリーズと共通するルールが多々ある。
 しかし、これらよりも古いゲームであるはずのローグが、アーマークラスが「高ければ良い」というシステムになっていたり、ダメージや攻撃回数・モンスターのhp等のシステムが違う等として、なぜかローグよりも後のWizardryやNetHackの方がD&Dに近いとして、疑問が述べられることがある。Moria(*band)やHackの原型がローグではないだとか、さらには「だからローグよりは後に出たがWizardryの方がRPGの原型である」なる主張にすりかえられることも少なくない。


 が、この手の考察で比較に用いられているローグというのは、すべて『ローグ・クローン』であり、初代UNIX-Rogueではない。このサイトの用語集等で毎回のようにUNIX-Rogueと分けて書いてあることから、すでにここの読者は気付いていると思われるが、最初の形であるUNIX-Rogueと、ほんの数年前までローグとしてもっぱら紹介されていたローグ・クローンは、外見だけは似ているが、内部の数値判定等はまったく似ても似つかないほどに異なる、ゲームシステム的には完全に別のゲームである(※1)。
 さらに、ローグ・クローンからUNIX-Rogue、ひいてはUNIX-Rogueのバージョンを遡れば遡るほど、AD&D1stに近づいていくというのは、Rogueプレイヤーにはよく知られていることである。


 例えば、何故か日本のゲーマーにはまったくといっていいほど知られていないことだが、UNIX-RogueでもVer3.Xや4.Xでは、アーマークラスはD&Dシリーズ同様の「低ければ低いほど良い」というシステムになっていた。さらには、鎧ごとのアーマークラスの数値そのものが、AD&D1stのものとそれぞれ全く同一である(Rogueにはシールドがないため、ACに関するバランス自体は異なる)。
 また、RogueのVer3.X系では、ストレングスが18の次は19ではなく"18/1-100"になる、AD&Dのエクセプショナル・ストレングスのシステム(NetHackやMoria/*band同様である)となっている。
 モンスターに関しても、4.0未満のRogueではAD&D独自のモンスターの割合がかなり多くなっている。4.0以降やローグ・クローンではアイスモンスターになっているIがInvisible Stalker、ユニコーンのUがUmber Halk、ゼロックのXがXorn等である。しかも、この時点のRogueのモンスター及びそれらのAC、ヒットダイス、さらにはダメージまでもが、AD&D1stのMM(モンスターマニュアル)の数値と全て(※2)完全に一致している。
 その他にも、4.0未満には、杖にwandとstaffの2種類が存在し(これは後のMoria同様である)その杖や巻物などのダメージダイス等のデータ(ダメージが6d6の炎や氷、雷の杖など)がAD&Dそのもののアイテムデータが数多く残っている。


 これがUNIX-RogueのVer5.X系以後からやがて、アーマークラスが高ければ高いほど良くなったり、Ver4系を通じてモンスターやアイテムが次々と差し替えられたりして、かつてアスキーネットやPC-88/98、Macのアイコン版やデフォルメキャラ版として普及した「(やや誤って)一番古いローグ」として知られる姿に近くなってくる。これがさらに改変され(あるいは再現できず)内部数値がD&D系とは完全にかけ離れたローグ・クローンの形となるに至る(その変遷や対比については、おそらく別のページを設ける必要が出ると思われる)。
 MoriaやHackの直接の原型、すなわちRoguelikeそのものの派生元になっているのは、その共通点から、むしろこれらの古いUNIX-Rogueであるといっていい。


※1 数値が異なることは、ゲーム内容・プレイ感覚自体も異なるという意味ではない。例えば、Rogueとトルネコは数値判定は全く異なるが、プレイ感覚はそっくりである。しかし、このサイトはTRPG的に「最初にデータありき」という立場をとるため、別ゲームと表現する。もっとも、UNIX-Rogueとローグ・クローンでは、プレイ感覚自体もかなり異なるという感想は、アスキーネット時代のRogue等を知るプレイヤーなどからよく耳にすることと思う。

※2 Dragonだけは、AD&Dの方でバリエーションがあまりにも多すぎるのだが、Rogue3.6のDragonのデータ(AC-1, ヒットダイス10, ダメージ3d10/1d8/1d8の3回攻撃)は、AD&D1stのMMのRed Dragonの最も標準的な大きさのものの数値と同一である。





・回数制限アイテム


 RPGの原型であるD&D系には、アイテムや特殊能力などで「1日○回まで○○を使える」という形で管理するパワーソースがかなり多い。しかも上級ルール、高位アイテムになればなるほど増えてくる。(4版に至っては、キャラクターの特殊能力というもの全般がこの形態で管理される。)
 しかし、JRPGの原型のひとつであるWizardry#1-3には(キャラクター自身のマジックポイントの1日○回ずつのシステムを除くと)皆無である。これは、おそらくアイテムごとにこうしたものを記録するのは、Apple][当時ではメモリなどをかなり食うものであったためと想像できる。
 この伝統か、wizでは以後もシリーズの多くでは、こういった1日○回といったパワーソースの管理方法を持たない。#6-7の影響がかなりある外伝III以降にはドラコンのブレスが限られた回数使用できるというシステムがあるが、「1戦闘ごとに1回」「何度も使えるがだんだん威力が下がる」という、D&D系の1日○回とは異なるシステムとなっている。


 もうひとつ、D&D系の回数制限アイテムには、「チャージ数(2d10回など)が決まっていて、その回数使用した後は使えなくなる」というシステムのもの(ワンド、スタッフ等)も多い。
 これも、wiz#1-5には採用されていない。おそらく、アイテムごとにチャージ数を記録・管理するのはそのぶんメモリを食うためである。
 そのかわりに、wizでは「使用すると一定の確率で壊れる」というシステムが採用されている。#1のRod of Flameの「破壊率10%」などがそれである。こうすれば期待値で10回前後使用できるわけで、結果的にチャージ数を10にしているのと似たような効果がはるかに少ないメモリで得られるわけである。


 初期DQやFFやその影響を受けた膨大な数のCRPGにおいて、単にwizを倣ったためか、Apple][当時とは異なりメモリに余裕があるにも関わらず、「1日○回式」のアイテムも「チャージ式」のアイテムも採用していないものが多い。DQ3の「いのりのゆびわ」(破壊率12.5%)のように、wizと完全に同じ一定破壊率アイテムを採用していることすらもある。


 wizとはまったく別の流れのCRPGであるRogueLikeではどうかというと、初代UNIX-Rogueの時点から「チャージ式」のアイテムが登場し、使用回数の限られたアイテム「ワンド」は、ひとつずつチャージ数が管理されている。
 これは、Apple][のwizとは異なりUNIX上で動いていたRogueでは、メモリのリソースをけちるという発想や動機がそれほどなかったためと想像できる。
 Moriaでもチャージ式のアイテムとして「ワンド」「スタッフ」は登場し、さらにAngband([V])ではワンドに加えて、1定ターン数ごとに発動できる「ロッド」や、アーティファクトの発動効果が登場し、1日○回式のアイテムに近いものとして実装されている。NetHackのアーティファクトも同様である。これらは、ゲームの起源を辿ることのできるシステムとして注目に値する。





・ヴォーパル効果


ファイナルファンタジーwiki「シャープソード」の項目

>サンブレードやディフェンダーなどと同様、元ネタはD&D(AD&D)に存在する武器。
>サイコロの出目が良ければ通常の3倍ダメージ+即死効果という業物だった。


 このwiki記述(11年12月4日現在)はD&D系に多数存在する各種のシャープネス/ヴォーパルの武器の効果のうち、クラシカルD&Dのスライシングの武器の効果である。ついでなのでそれらのsharpness/vorpalの効果の変遷と、Roguelikeのものがどれに近いかを記述する。


(1)クラシカルD&Dの武器効果、『スライシング』のタレント
 ・命中判定のd20の出目が高かった場合、対象にセービングスロー(回避判定)を強要し、失敗すると即死、成功しても3倍のダメージを与える。
 ・刃のついた武器にのみ適用される。ゴーレムやコンストラクトには一切効果がない。
 ・出目が高い場合とは、強化ボーナスとダイス目を合わせて19か20であった場合。つまり、強化ボーナス+5の武器の場合、d20の出目14以上(35%)もの確率でスライシングヒットになる可能性がある。
 ・「タレント」は原則的に1日1回しか使えない。つまり、ヒット時に自動的に発動するのではなく、呪文発動効果のようなもの。

(2)AD&D1st、2ndの『シャープネス』の剣
 ・出目が高かった場合、敵の四肢などを切り落とす(即死やダメージ増大ではない)。発動率は基本15%。相手に抵抗の余地はない。
 ・金属や石製の対象にも効果があるが(おそらく、石像の腕を切り落とすなど)発動する確率は落ちる。
 ・強化ボーナスは+1だが、強敵の武器無効等への貫通効果は+3相当。光の呪文と同様の明かりを発する(余り関係ない)。

(3)AD&D1st、2ndの『ヴォーパルウェポン』
 ・出目が高かった場合、敵を即死させる。発動率は基本20%。相手に抵抗の余地はない。
 ・金属や石製の対象にも効果があるが、発動する確率は落ちる。首がない敵(ゴーレムやスライム)には発動しない。

(4)D&D3.0eの『ヴォーパル』の武器特殊能力
 ・クリティカルヒットを与えた場合(3.5eではd20の出目20の後のクリティカル判定成功で)敵を即死させる。相手に抵抗の余地はない(個々のアイテムデータには抵抗判定の目標値が設けられている場合あり)。
 ・首がない敵(ゴーレムやスライム)には発動しない。

(5)D&D4版の『ヴォーパルウェポン』
 ・ダメージの出目が最大であった場合、さらにダイスロールを行い加算し、最大が出る限り加える(無限上方ロール)。


 NetHackの「ヴォーパルブレード」は「10%の確率で首のある敵を即死させ、首のない敵には追加ダメージを与える」というもので、どれに近いかというと(1)クラシカルD&Dのスライシングに近いように見えて、実はあまり似ていない。
 *bandの切れ味(シャープネスのエゴ)やヴォーパルブレードは(どんな敵に対しても)ダメージを無限ロールしていくもので、旧D&DやAD&Dのものとはいずれともシステム上は共通しておらず、似ているのは4版だが、当然ながら[Z]リリース当時はD&Dは4版まで進んでいない。
 結局のところRoguelikeでのシャープネス/ヴォーパルは、名前こそD&D系のこれらのエゴアイテムから採っているが独自のルールで実装しており、*bandのものはその効果自体はAD&Dの別のクリティカルヒットの選択ルール(クリティカルの出目が出続ける限り無限ロールしていくもの。AD&D2ndのDMGの第二クリティカルルールなど)、Moria/*bandに参照が多いロールマスター(一般ルールだが)や、T&TやBRPなどにしばしば現れる無限ロールでダメージが増大していくものなどを参照して、独自に設定したものといっていいだろう。


 余談だが、Wizardryの首切り判定の内部動作は、Roguelike以上にこれらとまるで異なっている。ヴォーパルでなくAD&D1stのアサシンの即死能力を再現しているのでは、という説もあるが、アサシン(完全に相手に気づかれていない時に一定の確率で即死させる)ともまったく異なっている。





耐火の指輪は真夏日に効果があるか

 Resist Fire/Cold呪文効果について、3.Xe(これは自然やら魔法やらを問わず一定値ダメージを軽減する)を見てもしょうがないので、例によってカオスルールかつ*bandの引用元定番のAD&Dの呪文をめくってみると、「通常」の火もしくは寒さからは完全に防護し、「魔法」の火や寒さは軽減するのみという有名なくだりの補足に、「雪の中に立ち尽くしても平気」というものがある。つまり基本的に暑さ、寒さは感じないということになる。
 この「平気」が、「ダメージがないだけで熱さ(暑さ)等は感じる」等なのか否かが問題だが、ワイルダネスでは渇き等の不快の蓄積だけでペナルティに繋がることはあるので、そういうことに言及せず「平気」と書かれているということは、本当にそういう不快すらも感じない「平気」と考えるほかない。

 これもよく知られたことだが、Resistの呪文は信仰(や、その正反対の邪信仰)によって火や煮え湯に焼かれなかったりといった迷信や説話に、その殺伐とナンセンスも一緒くたに由来する。それは、暑さを避けるのに弱冷気の魔法をコントロールして云々といった屁理屈発想の手の届く場所にはない。





・能力値配列

 D&D系をもとにした「6種類」のアビリティスコアを採用しているゲームはおびただしい数にのぼる。*bandの場合は、

Str 腕力
Int 知能
Wis 賢さ
Dex 器用
Con 耐久
Cha 魅力

 の順番になっている。これはMoriaの頃からである。
 しかしながら、現在のD&D(3.Xe系)、さらにはAD&D2ndでも、

Str 筋力
Dex 敏捷力
Con 耐久力
Int 知力
Wis 判断力
Cha 魅力

 の順番になっている。
 そもそも、後者の現在の並び方の方が、「肉体」関連のスコアを前半、主に「精神」関連のスコアを後半に持ってきているようで、妥当に見える。ならば、*bandのような並び方は何なのか?

 実のところ前者の*bandのような並び方は、旧D&DおよびAD&D 1st (PHB)での旧方式である。これらは「戦・魔・僧・盗」の4つの主要キャラクタークラスが、それぞれ役割を分担して冒険する、という図式を確立したゲームでもあり、そも、能力値そのものが、その4つの役割分担を意識して設定されている(
→能力値)。「戦・魔・僧・盗」にとってStr/Int/Wis/Dexは各々の「プライムリクエスト」(かつての新和の邦訳などでは「長所」と訳されているが、実際は直訳のまま、「最優先で要求されるべき能力」と解釈すべきだろう)と呼ばれ、それらのキャラクタークラスにとっての最重要能力である。
 つまり、旧方式では、キャラクターを作成する、役割を分担するにあたっての便宜のため、4つのクラスにとってのプライムリクエストを、まず最初に並べているとも思われる。しかしながらAD&Dも2ndでは新方式、肉体を前半、精神を後半に並べるように変わっている。これは、AD&D1stの時点からすでに無秩序にルールが拡大され、ややこしいサブクラスや4能力値以外を重視するクラスなども増えていったため、「4大プライムリクエスト」のような意識がやがて薄れたためもあるだろう。

 これらはほとんどの場合、もはやまったくの伝統以外の意味を持たないが(例えば、旧方式の*bandはMoriaの頃でさえも、ソロゲームであるが故に4大主要クラスでも他の能力値を必要とし、プライムリクエストのみを重視する意味を持たない)それぞれのゲームの”本質がどれほど古きに遡るのか”を判断する材料になることがある。
 Wizardryでは能力値の名前自体が変わっており(Int-> I.Q., Wis-> Pietyなど)Dex(AG)とCon(VT)の順番が入れ替わっているが、旧方式が元であることがわかる。ほかの大半(『ひぐらしのなく頃に』公式サイトのキャラクター紹介欄を含め)は新方式である。意外なことに、ほとんどをAD&Dの"1st"から引用しているにも関わらずNetHackは、新方式である。





ストレンスグス(新和版ルールブック原文ママ)

 *bandにおける「18/xx」(xxには2-3桁の数値が入る)という能力値表記は一体どういう由来でどういう意味なのか、というかねてからRoguelikerの間で頻繁に上げられていた疑問に対して、ここ最近は「古いRPGの伝統(AD&Dにおいて、人間最大の18より上・人外領域の19より下といえる、いわゆる"人間離れ"した屈強な戦士のStrを18+1-100%の数値を併記して表現していた名残)」という回答が、掲示板などできっちりと与えられることも頻繁になった。
 しかし、その回答は結局のところ、さらに解決が難しい疑問も毎回のように提示する結果になるのが見られる。すなわち、それらの数値は結局はどういう筋力を指しているのか? *bandにはAD&Dと異なり、1-220までの値がある。18/xxが18以上19未満をあらわすとすれば、やはり*bandの18/1-220は全部19未満なのか? つまりハーフタイタンやアンバライトの戦士も、人外の19には満たないのか?
 あるいは、そうでないとすれば、一体どこからが人外なのか? helpのjbirth.txtに書かれているようにxxの+10ごとに前の値において+1にあたるから、18/10が結局19にあたる値なのか?(一部新しいバリアントでは、表記をそうした方式に変換することができる。)

 これを解釈するにあたっては、AD&DやNetHackやMoria以来の経緯などから、いく種類かの解釈や考え方ができそうである。が、ここでは、(このサイトでNetHackに対して主に行っているのと同様に)データを無造作に取り出して、そこからデザインの経緯や背景を推測し検討するという、まずデータありきな方法をとって考えてみる。

 最も手っ取り早く参照できそうなデータとして、(*bandでは重量や命中修正はいろいろ面倒なため)Strの能力値ごとの「ダメージ修正」のテーブルを抜粋し、比較してみる。
 まず、18/xxという表記自体の原型となっているAD&DのStrによるダメージを、TSRもとい沿岸の魔法使のところからビホルダー破壊光線が飛んでこない程度に一部だけデータを示す。

Str         dam
18          +2  
18/01-18/50 +3  
18/51-18/75 +3
18/76-18/90 +4
18/91-18/99 +5
18/00       +6 NHではStr25もここ(※注1)
19          +7
20          +8
21          +9
22          +10
23          +11
24          +12
25          +14

 AD&D/NetHackの1-100の部分は、18/xx自体が人間離れした値といいつつ、実際のところは実に1-75までダメージにはまったく差がなく(1-50にはデータの差自体がなく、51で命中だけ1上昇する)後半の値でだけ、突如として急上昇するのが特徴である。(しかしながら、便宜上これが「10ごとにひと刻み」とされているのはAD&Dでも同じである。ストレンクス(3.Xeのブルズ・ストレングスにあたる)などの呪文では、18をこえて増強した分は、18/xxのxxを10ずつ増やせ、と書かれている。)
 次に、*bandのソースのtables.cから、Strによるダメージ修正の値を一部抜粋して示す。

ダメージ修正  能力値
     ↓     ↓
128 + 2     /* 18/00-18/09 */,
128 + 2     /* 18/10-18/19 */,
128 + 3     /* 18/20-18/29 */,
128 + 3     /* 18/30-18/39 */,
128 + 3     /* 18/40-18/49 */,
128 + 3     /* 18/50-18/59 */,
128 + 3     /* 18/60-18/69 */,
128 + 4     /* 18/70-18/79 */,
128 + 5     /* 18/80-18/89 */,
128 + 5     /* 18/90-18/99 */,
128 + 6     /* 18/100-18/109 */,
128 + 7     /* 18/110-18/119 */,
128 + 8     /* 18/120-18/129 */,
128 + 9     /* 18/130-18/139 */,
128 + 10    /* 18/140-18/149 */,
128 + 11    /* 18/150-18/159 */,
128 + 12    /* 18/160-18/169 */,
128 + 13    /* 18/170-18/179 */,
128 + 14    /* 18/180-18/189 */,
128 + 15    /* 18/190-18/199 */,
128 + 16    /* 18/200-18/209 */,
128 + 18    /* 18/210-18/219 */,
128 + 20    /* 18/220+ */

 *bandの方も、18のうしろの値は「10ずつでひと刻み」とヘルプでは説明されつつも、実は内部数値では1-100の前半、具体的には18/20-69までの間では(重量や攻撃回数計算その他に関してはともかく)ダメージにおいては全く差がないのがわかる。

 両テーブルを比較すると、細かい差異はあるが、70台で急に上がって18/100では「ダメージ+6」にあたることなど、おおむね1-100までは似た、おそらくじかに参考とされたテーブルであると考えてよい。つまり、AD&D/NetHackと*bandの18/1-100までは、おそらく同じ能力を表現しているといえるだろう。また、ダメージから考えると、*bandでの18/110-180がAD&Dでの19-25に相当するといえる。

 即ち、*bandにおいて18/1-100がAD&D/NetHackと同じであり、*bandの18/110がAD&D/NetHackの19, 18/180が25にあたる、と考えて、ほぼ差し支えないように思われる。*bandでも人間の限界の目安は18/100であり、それを超えるのが110ということである。
 結論としては、「*bandでは18(3d6)が普通の人間の範囲であり、1-220は人間離れした戦士から本当の意味での人外を含めその範囲を逸脱したものをすべて現す」と説明して差し支えないと言える。

 AD&Dには(1st, 2ndとも)能力値はシステム的に25までしかなく、どんな上級神のアヴァターでも25が最大である。にもかかわらず*bandが、その上にあたる18/220までをシステム的にありえる値として設定したのは、単に修正がちょうどきりのよい+20になるところまで拡大したのだろう。それはともあれ、AD&DでのStr25(タイタンやヘラクレス)よりも上の*bandの18/190-220とはいったいどんな筋力なのかといえば、これら(生身で)Str25であるような存在が、さらに命中やダメージが直接加算されるような魔法に晒されたような状態とでも考えるほかない。*bandのものも概ね、魔法や物品で実現されるものである。


※1 余談だが、AD&DではStr25は「命中+7/ダメージ+14」だが、NetHackでは力の小手によるStr25では「+3/+6」と、18/**と同じにしかならない。またバージョンによっては、25の方が18/**より運搬能力が低い。これは、NHの「力の小手によるStr25」というのが、「ハンマー・オブ・サンダーボルツが投げても帰ってくる巨神のStrに相当する」ということを示す「記号」に過ぎず、元来はこの小手はオグルパワー・ガントレット(旧D&D系ではStrを18ないし18/00にする)か何かの数値を元に作られたことを強く示している。





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