〇ミアクるん・レインボー!!(ライバるん(ミストラ)の杖をバキ折る)


ベイン!
ミアクル!
バール!


彼らはいつ! どこで! この世に産まれたのかも
どんな一族なのかもわかりません……
しかし、人間の歴史にその姿をあらわしたのはネザリルの時代と
伝えられています

ジャーガル神より得た恩恵! 暗黒の権能とともに!

3神は人間をつかまえると信仰力の収集をくりかえしました…
男! 女! 子供! 老人! ムーンシェイ諸島! フラン市!
何万人も何十万人も

だがッ! 彼らの収集には真の目的があったのです!

自分たちが宿命の銘板(タブレット・オブ・フェイト)を手にしトーリルを征服する!
究極の超神になるための道具として信仰力を完成させるという
最大の目的がッ!

(『卓ゲーマーの奇妙な冒険』某掲示板過去ログより、詠み人知らず)



 AD&D1st時代にFR世界の3バカ大将とか呼ばれていたのがベイン、バール(ベハル)、ミアクル(マークル)の3神である。和訳もされていた『ムーンシェイ・サーガ』、『プール・オブ・ダークネス』や『シャドゥデイル・サーガ』で描かれるこれらの大将らの振る舞いは柱の男のような切れのある姿ではなく(9割方、これらの作品の出来のせいでもあるが)非常に小悪党で恰好悪い。
 NWN1ゲーム内の本棚の読み物で読めるが、AD&D2ndへの移行時の『災厄の時』(1358DR)で、ベインはトーム、バールはマスク(とシアリック)、ミアクルはミストラの手にかかって倒れ、このとき権能を失ったデッドパワーとなっている。D&D3.0eでベインのみが復活したが、BG(2nd)やNWN1,2(3.Xe)の時点ではバールとミアクルは活動不能のデッドパワーのままである。知っての通り、BG2のToBやNWN2のMotBでは、デッドパワーであるバールとミアクルの残した名残がさらに弱体化する姿も描かれる。
 しかし、D&D5版に至り、遂に3バカ大将が全員復活し、再びそろい踏みすることとなった。PC版ゲーマーにはMotBはともかくToBであんなに苦労したのが台無しだという声もあるが、そのうち考察する機会もあるだろう。


 FR世界の構築上のことを言えば、ベインの原型は、Dragon#54のグリーンウッドの記事によるとドルアーガ(AD&D1stのDDG/LLなど)である。ただしFRの歴史上、メソポタミア神にあたるアンサー・パンテオンとの絡みの話題はほとんど無く、『災厄の時』の際にアンサーで金ぴか(ギルジーム)とティアマットらが抗争した際にも何か関与した形跡は特にない。
 バールについてはそのまま古代オリエントの神話用語で何も説明する必要はないと思われる(なお、各種バアルの語が変形した多数の神霊・悪霊については、九層地獄などにそれらの悪魔がFRその他のバール神とは全く別個にそれぞれ居る)。一方、ミアクルについては(Dragon#54にもモチーフとの関連は書いておらず)諸説がある。WG世界の死神ネルル(Nerull)の綴り替えにすぎないという意見も聞くが、ネルル自体の正式な初出はDragon#74であり上記#54より後なので、ここからは判断できない。


 ともあれ、少なくとも3バカ大将については、原型となる地球等の神々があるとしても、それらとは「同名の別人」であり(欧州由来、アンサー、ムルホランドの地球と同名のFRの神々の多くが、地球の神々と完全に「同一人物」であるのとは異なる)もとはFR世界の「人間」であったものがascendしたものである。人間の冒険者であった3人がジャーガル神から権能を譲られた経緯は、BG等のゲーム内書物、『デッド・スリーの歴史』等に説明されているので、これも特に説明の必要はないと思われる。
 この書物等に記された逸話は単なる「神話」であって、その内容は真実とは限らない、という説もある。しかし、3.0eのFaith and Panthenonsのベイン神のデータは、ミストラ、ケレンヴォー、シアリックら(これらは『災厄の時』に人間がAscendしたことがはっきりしている)と同様に「来訪者ヒットダイス」を持っていない。これは3.0e Deities and Demigods (DDG, De&De)でのヘラクレスやヴェクナ同様、定命からAscendした者の特徴である(※1)。3.0eまでのベインが元は人間だった、というのは少なくともこのデータからは裏付けることができ、おそらく同様の経緯でascendしたとされる3バカ大将の全員が同様であると考えられる。
 神格としてのモチーフは明確だが人間としての出自がはっきりしていないベイン、バールに対して、逆にミアクルの人間時代については、FRの設定上はマーゴームの王子であったと明確である。マーゴームとは、大概のフェイルーン地図では東端に描いてあり、ムルホランドの東にある地方だが、3.0eFRCSには小さな段落ひとつの説明しかない。1372DRの時点では村落の集合体しか残っていない。



 さて、デッドパワーとしてのミアクルであるが、NWN2のMotBではその姿は巨大な「地形」となってアストラル中継界に浮かんでいる。3.0eのManual of Planes(MoP, 邦訳『次元界の書』)などの次元界関連の書物には、アストラル中継界には滅びた古代の神格の巨大な肉体が浮かんでいると書かれており(ただし、どの程度力が残っているかは卓ごとの判断による)MotBのロード画面でも簡単に説明されているので、それだけ知っていれば特にこの描写に疑問は起こらないと思われる。
 が、よく考えてみると3バカ大将は元は人間であるから、「巨大な肉体」を持っているのは妙にも思える。神性の基本ルールであるDDGに載っている諸神性も、肉体については神格化前と特に変わらない見かけ(少なくとも、データに書いてある「主要な姿」については)をしているのだが、FRの神々についても、上記Faith and Panthenonsでは元人間のシアリックもケレンヴォーもミストラも、よもぎ色のホブゴブリンのような姿をしているベイン(グリーンウッドがドルアーガの姿と言っていたのと違う)も、本体のデータは「中型サイズの来訪者」であり神格の本体そのものも人間と変わらないサイズであることがわかる。
 ならばなぜ人間出身のミアクルが、デッドパワーになると巨大な体になって浮いているのか。仮に神としては巨大な姿をとることもあると考えたとしても、デッドパワーは権能を喪失しているのだから、人間の肉体に戻ったりしないのか、という疑問が浮かぶ。


 おそらくはこのNWN2の描写は、FRや3.Xeのascendの設定ではなく、上述した3.0e-MoPなどの「アストラル中継界には信仰を失って死んだ神の身体が浮いている」という設定の方だけからインスピレーションを得て、死んだ神であるミアクルもそうであるとして作られた描写で、それ以上は深い意味はないのだろう。ascendや神性の描写には曖昧な場面やその場の想像力の赴くままというものが特に多いので、そんなものである。


 しかし、強いて言えば、神以外の者がascendした時点で(多分に下級神以上の存在になった時点で)心身ともに完全に別の存在へと変質してしまう可能性は、他の様々な箇所で示唆されている。
 例えば、ケレンヴォー神は、人間だったころの知人エイドンについて無慈悲すぎる裁定を下し、裁定神としてのケレンヴォーは、かつての傭兵ケレンヴァーとはまるで別の存在になってしまった逸話としてよく挙げられている。これをいかにも裏付ける例として、そもそも見かけからして人間時代のケレンヴァー・リーオンズベインは、中年のむさくるしい髭面だが、NWN2のケレンヴォー神はマスカレードな仮面をかぶり、そしてこの仮面の下は若々しい超絶イケメンであり、完全に人間時代とは別物と化している。
 おそらく、人間だったミアクル王子も、マークル神となった時点で、人間とは全く別の形態、NWN2のMotBの「地形」のような巨大な(そして、シャドウ・ムルサンティアに多数設置されている神像のような)姿に変貌してしまい、そして、マークルが権能を喪失した後も神性を完全に喪失してないのと同様、神として得たその形態も特に喪失するということはないのだろうと考えられる。



※1 3.0eのDDGやSRDによると、ほとんどの神性は「来訪者ヒットダイス+冒険者クラスレベル」を持つが、冒険者クラスレベルだけを持つ神性についての説明もある。加えて、3.0e-DDGには(mortalからascendしたヘラクレス等の箇所に)定命mortalがascendした神性は「冒険者クラスレベル」だけを持つ、という説明がある。
 ここでよく、「WGのアイウーズや聖カスバートのデータを見ると、神以外からAscendしたにも関わらず来訪者HDを持っているので、『神以外の出身は来訪者HDを持っていない』というルール解釈は誤り」という反論がある。
 しかし、ものすごく厄介なことなのだが、D&Dシリーズではimmortalという語は、神性(神格ランクを持つ)や、ひいてはアークフィーンドやセレスチャルパラゴン等に限る意味ではない。例えば単なる来訪者などが、主物質界の生物に対して定命(mortal)を呼びかけに用いることが頻繁にある。D&D系において、immortalとdeityと"a" "g"odは多分に重なる部分はあるが、同一の用語ではない。(日本のTRPG界隈では、CD&DプレイヤーがCD&Dのイモータルルールとこれらを必ずといっていいほど混同して吹聴しているので、注意を要する。)immortalという語の3.Xe(d20)での信憑性のある定義はDDGやSRDのdivineルールで神格ランク0以上の持つimmortalityの項目、「加齢せず生存に空気や飲食を必要としない」ことを指すとも言えるのだが、2nd以前を含めた話においては、当然ながら統一的なものではない。
 アイウーズはカンビオンなので元から来訪者である。聖カスバートは「オアース以外の主物質界」の出身、場合によっては聖人(霊)なので、明らかに「オアース出身の人間」ではない。よって、オアースのmortalではないから、オアースの神性としてascendすれば来訪者HDを持つことも考えられる。トーリルについても同様に考えると、ベインは来訪者HDを持っていない以上は、「トーリル出身の人間」(少なくともトーリルのmortal)が出自である(ドルアーガ等の神が出自でもなければ、地球等の別の主物質界の人間が出自でもない)ということになる。
 とはいえ、これらはあえてデータのみを材料にして導き出した推論にすぎず、上記ミアクル地形の例のように、Ascendのシステムはワールドや各設定者に丸投げされた部分が非常に多く、特にFRでは版が変わるごとに神々の設定が大幅に変わることが珍しくないので、推論の根拠含めて確実性は低い。(例えば4−5版ではベインはFR以外の世界にも存在し、それらは明らかにFRの人間出自ではないし、FRでもいささか話が変わってくる。)



〇引き継ぎ


Q:昔のD&Dにはダークエルフの神を殺しに行くシナリオがあったらしいけど(筆者註:Q1モジュールとかを指していると思われる)神が死んだとかなったらダークエルフ達はどうなったんだ?

A1:よく知らないけど3版以降にもロルスはいるからそのシナリオは無かったことになってるんじゃないの

A2:死んだのは単なるアスペクトだったとかという後付け設定になってうんぬんかんぬん

A3:A1〜A2では、1st時代(3版より以前)に実際に当時のプレイヤーがどう処理していたかについて、何も質問の答えになっていない。考えられる処理としてはその卓では別の神とか同名の次代のロルスに権能が移ってうんぬんかんぬん

A4:Q1モジュールのAD&D1stの1980年の時点では、そもそもクレリックが神やそのドメインから呪文をドローするといった厳密な設定が無い。権能や信者と密接に関係するといった設定も2ndまで無い。なので
死んだところで別にダークエルフ達は何もどうともならない


 D&D系の世界設定ではどれもそうなのだが、FRではことさらに、神々が死んで代替わりするというイベントが、これはちょっと多過ぎるだろうというほどにあまりにも多い。そういうイベントがあると、神々や信者らはどうなってしまうのか。

 神々自身の引き継ぎについては、実は問題はたいして無い。前の神が死んだり権能(ポートフォリオ)が奪われたりして、権能が移動すると、能力なども大体そのまま移動する。3.Xeでは神格ランクも、行使できる能力(権能に関連する事項についての影響力)も、だいたい権能で決まる。

 が、信者の方はどうなるのか。というのは、ゲーム処理ではなく世界設定上、信者は「神」を信仰しているわけであって「権能」を信仰しているわけではないからだ(※1)。権能のシステムなどその世界の一般人の信者はまず知らないし(PHBには権能については載っていないことから、少なくともプレイヤーキャラの基礎知識ではなく、したがって聖職者らにとっても必須の知識ではないともいえる)、権能が別の神に移ったなどと言われた所で何だかわからず、急に名前も知らない新しい神を信じろと言われてもまずわからない。

 この場合、新たな神が寛大であれば、信者にはそれまで通り振る舞えばよく、改宗等を要求しないかもしれない。例えば何度か代替わりしたミストラがそうであり、3代目のミストラは先代と同じ名を名乗り、自身は「中立にして善」にも関わらず「秩序にして中立」のクレリックを認めているのは、2代目の信者はそのまま特に離脱や方針を変える必要がないという意である(※2)。

 しかし一方で、悪神の場合はそこまで慈悲深くはないことが大半である。神が代替わりした際に、前の神の信者に改宗や、場合によってはアライメントチェンジさえ要求するかもしれない。それらを躊躇した信者に容赦なくおしおきだべ〜等とやっていると、戦力が減少するかもしれないが、忠誠心等を篩にかける機会でもある。悪は用心深くなければやっていけないという事情もある。
 例えば、ベインからシアリックに、さらに再びシアリックからベインに(ついでにゼヴィムからもベインに)権能が移った際、ゼンティル・キープ等ではそれぞれ大混乱が起こっている。シアリックが「死者」の権能をミアクルから奪った際に、ミアクルの信者に改宗を強要した様は、MotBのシャドウ・ムルサンティアでのイベントで説明される。
 また、悪神から(慈悲深いとは言えないが)悪神ではない神に移った際も同様の混乱が起こり得る。MotBのゲーム内では充分には語られていないが、「死者」の権能がミアクル・シアリックからケレンヴォーに移った際も、これらの教義・主義は全く異なる(例えばミアクルはアンデッドの神でもあったが、ケレンヴォーはアンデッドの存在は認めない)。

 ちなみに権能を持っていない信仰対象(準神格、英雄神、セレスチャルパラゴン、アークフィーンド、Pathfinderの"Kami"など)は信仰こそされているが、権能や信者から力を得ているわけではない(又は、限らない)ので、実は冒頭の例話のロルスのごとく、死のうが生きようが信者には特に関係はない(※3)ことも多いと思われる。 


※1 3.Xeのルール上(例えば標準のWG世界など)は、神でなく「領域」を信じている信者やクレリックならば居る。が、FR世界では基本的に想定されていないと考えた方がよい。

※2 実際には神格本人が認めれば済む話なのかは大いに疑わしい。3.Xeのルール上は、クレリックと神格はethicsとworldviewのどちらか1段階のずれしか許されず、「秩序にして中立」は両方がずれているので、PHBのルールに適合しない。つまりミストラについては3.Xeの根本ルールをはみ出すことが平然と認められているわけであって、これはミストラ神が常に名前が出るごとに指摘される「FR世界のデザイナーのえこひいき」を満身に受けた存在であることと、深く関係していると思われる。
 なお、WGなどの3.Xeの一般的ルールでは(3.Xeのゲーマーにも勘違いされていることが多いが)クレリック以外の信者(パラディン等を含む)は信仰対象と自分のアライメントが全く離れていても構わず、上記片方1つのずれまでしか許されないのは「クレリック」だけである。しかし、(3.0e FRCSによると)信仰の影響が非常に大きいFRでは、クレリックだけでなく全ての呪文の使い手はアライメントの一致か1段階のずれまでしか許されないという、基本ルールより厳しいルールになっている。(なお、スーニー女神(混沌にして善)だけは2段階ずれたパラディン(秩序にして善)が存在し、例外ルールであると明記されている。FRのルールとしては例外だが、前述したように3.XeのPHBの基本ルールではクレリック以外は何段階ずれていてもいいので、PHBの範疇内にすぎない。)信仰呪文使い以外の「通常の信者」と守護神格のアライメントの許容範囲については、FRCSではいまひとつ明確ではないが、おそらく同様が推奨され、特に対立する属性(例えば混沌にして善のローグが、秩序にして悪のベインを守護神格にするなど)はあり得ないと例示される。

※3 ちなみに冒頭の答A4についてだが、まさしくQ1モジュールには、「主物質界以外では」クレリックは自力で呪文レベル1−2をドローできるが、それ以上は高位存在などに依存するので、例えば外方次元界では低レベル呪文しか使えないことがある旨の記述がある。一見、呪文のドローが高位存在に由来するというルールに見えるが、高位存在がどこにいればいいのか、どの主物質界(非常に厄介なことに、この時点で主物質界という記述は「WG世界の主物質界」に限らない。地球の神がFRなどにいるのか、等と考えると非常にややこしくなる)とアクセスしていればいいのか等、ろくな答えになっていない。そもそも低レベル呪文ならクレリックが自力でドローできるなどという時点で、AD&D2nd以降と根本的に異なっている。



〇ジャーガル「僕と契約して暗黒神になってよ!」


 FR(『バルダーズゲート』シリーズ)やNWN1/2の紹介サイトには、版ごとの変更や情報の錯綜ばかりとも、また誤解釈(誤訳)ばかりともいえないのだが、FRやNWN2における「死」の神、中には「死神」が、「ジャーガル→ミアクル→シアリック→ケレンヴォー」の順番に変遷した、と書いてしまっているサイトがある。というよりFRの背景を良く知らなければ、NWN2-MotBの描写もそのように解釈してしまいそうである。

 「フーガ界(AD&D1stではGray Waste)で死者を管理する役」が、有史以前にジャーガルからミアクルに渡り、やがて(2−4版の長期間)ケレンヴォーに渡った、という経緯は確かである。
 が、「死の神」「死神」がこの順であった、という把握は正しくはない。


 AD&D1stでミアクルが持っていた権能は、「死(Death)」ではなく、「死者(Dead)」である。当時のミアクルは「死んだ後の者」に関する神であって、「死そのもの」の神ではない。わかりやすい話をすれば、ぺガーナ神話のムングは死そのものの神だが、東洋のヤマは多くの文化圏では死者(死そのものというより、死んだ後にどうなるか云々)の神である。
 Deadの権能を「死」と訳したり理解しているのは、誤訳であると共に、日本のゲーマーの間でよく知られている神話群(あるいはその間での海外の神話・信仰の理解の仕方)では、少なからぬ死神や冥府の神が、死そのものというよりは死者の命運を云々する神々であることにも原因があるだろう。
 なお、AD&D1stでの「死」そのものの神、Deathの権能を持っていたのはFRの3バカ大将のうち、バールである。バールは殺害(Murder)の権能も持っており、BG内でもよく使われていたロード・オブ・マーダーという名の由来である(BGを忘れ、うっかりバールを「ロード・オブ・デストラクション」と呼びそうになるDiabloゲーマーも多い)。

 一方、AD&D2nd〜D&D3.Xeでは、「死」「死者」の権能は両方ともケレンヴォーが所持している。
 しかし、これがミアクル(マークル)が復活した5版になると、極めてややこしいことに、5版ではミアクルが持っている権能は1st当時持っていた「死者」ではなく「死」の方になっており、「死者」はケレンヴォーに残っている。おそらく、裁定者としてのケレンヴォーの役割は残しておいた方がわかりやすいと判断したのであろうが、マークルの方について理解を難しくする(上記の誤解を促進する)結果になっているといえなくもない。

          前史    1st  1358DR-    2nd−4版 5版
--------------------------------------------------------------------------
死(Death)  ジャーガル バール  シアリック ケレンヴォー ミアクル 
死者(Dead)  ジャーガル ミアクル シアリック ケレンヴォー ケレンヴォー



 一見すると「死神」のように見える者が同時に多数いる場合、それぞれが実は別々の権能を持っている場合もあるが(DeathとDeadの他、UndeathやUndeadなど)その他に、3.Xeの信仰のルールによれば、ひとつの世界(惑星)上に複数のパンテオン(神話)が存在する場合、通常は「権能」もパンテオンごとに別々に存在する。例えば地球でも別々の神話の死神はそれぞれがDeathのポートフォリオを有する。
 D&D3.Xeでも、例えば標準のWG世界では同様に、スゥエル・パンテオンではウィー・ジャス女神が、フラン・パンテオンではネルル神がDeathの権能を有する。そのため、3.Xeの基本のPHBには「死の神」が2体載っている、というわかりにくい事態になっている。

 しかし、ここでFRに話を戻すと、『災厄の時』などの事情を見る限り、FRではWGとは異なり、1つの権能はパンテオンごとでなく、惑星トーリル全体に渡って1つしかないものであるように見える。ケレンヴォーは人間であろうが他パンテオンを信仰する他種族であろうが、トーリル全体の死者を管理しているように見えるし、エルフやドラウのパンテオンが、フェイルーン・パンテオンの神々と権能の争奪を行ったりしている。
 これは権能や神格ランクのルールは世界設定ごとの裁量による部分が多く、「WGとFRで違う点」または「パンテオンを総括するエイオーによる特殊ルール」と説明することも可能ではある。が、要するに、権能はパンテオンごとにある(=他のパンテオンとまたいで権能の奪い合い等をすることはできない)というルールが、この頃(1st末期)にはまだできていなかった、といえばそれまでである。



〇BGでクラスの名称は「クレリック」なのにキットの名称は「プリーストオブタロス」等になっていてややこしい。なんでクレリックとプリーストのどっちかに統一しないのですか


 クレリックとプリーストにそれぞれ全く別の意味合いがあるからである。クレリックはクラスであり、プリーストは職業である。「クラス」と「職業」は完全な別物である。
 クレリックはクラス名であり、ゲームシステムにおけるキャラデータの最重要分類だが、プリーストは単にその世界設定内で聖職者の地位や肩書であることを指すに過ぎない。


 これではたいして答えになっていないので、なぜクレリックがクラス名で、プリーストオブタロスがキット名なのかも説明する。「クレリック」はクラス名であり、クラスとはゲーム上の「分類・役割・キャラ類型」を示す。日本では誤訳されているが、Classは「職業」ではないし、クレリックのクラスは神性の信者や聖職者であるという意味ですらない。
 その社会での「職業」が司祭や聖職者でなくとも、神性と無関係でも(FRはともかく、3.Xeの一般ルールとしては、神と無関係に領域から呪文をドローするクレリックが可能である)いざダンジョン探索になれば前線で治癒・撲殺・ワレニカゴーするような分類・役割・キャラ類型であれば、それはクレリックであり、たとえ職業や地位が聖職者でなくとも往々にしてクレリックのクラスで再現される。他の役割・類型(例えばドルイドやモンク)の者は、たとえ職業や地位が司祭や聖職者であったとしてもクレリックではない。

 一方「プリースト」はクラス名ではなく、聖職者を示す最も一般的な用語である。職業や地位がタロスの聖職者であれば、クラス(キャラ類型)がクレリックでなくとも、例えばタロス信仰のドルイド、モンク、シャーマン、又はタロスから信仰呪文をドローする他のクラス(レンジャー若しくはブラックガード等)であっても、その世界設定での呼び名としてはプリーストオブタロスである。BGでは再現されていないが、2ndのルール上、キットは推奨される特定のクラスやグループ以外にも適用できる(意味があるかはともかく。2ndではクレリック以外の上記クラスは、クラスの属性制限上タロス信仰が不可能なものも多い)。それどころか、冒険者クラスでさえなくとも、宗教組織内で司祭や聖職者の地位を持っていればプリーストである。

 ルール用語「以外」の会話や説明文等でプリーストという語が使われる際はどの版でも上記の通りだが、もっとも、BGシリーズのAD&D2ndには、「ルール用語としての」Priestという語がまた別にある。AD&D2ndのPriestグループは、信仰系クラスのいずれかに属するものを指し、上記のうちクレリック、ドルイド、モンク等の聖職者クラスに属する者を指す。
 ちなみに世界設定の中で普通に使われている一般用語に対して、全く同じ語が「ルール用語」として使われていることがあり、別途特殊な意味がある、というのは、特に海外のPnPのRPGではごく普通にあることである。上記した「プリーストオブタロス」はFR世界設定の中での日常語では当然タロスの聖職者すべてを指すが、BGのルール用語としてはクレリックのキットのひとつしか指さない。同様に「ストームロード」はFR世界ではタロス神自身や聖職者を指す通称であったりすることもあるが、NWN2のルール用語としてはストームロードの上級クラスを取得した者しか指さない(どうでもいいことだが、3.0eのFaiths and Pantheonsによるとタロス神の神性の張本人はストームロードの上級クラスを持っておらず(Bbn20/Evo20, 神格ランク16)ルール用語で言えば本人すらもストームロードではない。しかしタロス神自身の別名としてthe Storm Lordという用法はFnP内の説明でも現に使用されている)。
 ちなみにこれはAD&D2ndの話で、どれがクラスでどれがグループでどれが一般用語といった定義は往々にして他の版にはあてはまらない。例えばRogueは最も広義では無頼の通称のFT用語としてD&D系内でも使われるが、2ndではグループ名で、3.Xeではクラス名である。Wizardもクラス名、グループ名、ただのクラスレベル称号のひとつと、版やバージョンによって使われ方が全く異なっている。AD&D2nd内ですら、後のルールで別の記述があったりする。ひいては、D&Dシリーズ以外の他のゲームや世界設定ではクレリックとプリーストの意味はおそらく上記とは全く違うだろう。

 しかし、少なくともD&Dシリーズでは、クレリックとプリーストが使い分けられることには意味があり、無意味に混在しているわけではない。








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