レルムを舞台とするNWN1日本語ユーザーモジュール


 フォーゴトン・レルムの世界設定を知るために適した、FR世界を舞台にしたモジュールが無いか、という疑問はよくある。無論、知識を吸収しやすい日本語モジュールの希望である。

 FR世界を知るためというなら、特に有効なのは(当たり前かもしれないが充分に認識されていない点として)結局のところ「公式モジュール」(OC, SoU, HotU)である。和訳されているもの、と考えれば、NWN2(OC, MotB, SoZ, MoW)も入る。BGシリーズを未プレイであればBG Reloaded和訳パッチも入るだろう。これらに詰まっているFR情報は下手な書籍よりも膨大である。NWN1と2の公式を一通りプレイしてからもう1周開始すると、新たな発見がある、FR世界への理解が深まる、といった点も多い。なので、ゲームからFRを知りたいという目的であれば、これらの公式のヘビーローテートを奨めたいところである。
 が、皆にそれを奨められるわけでもなく(そもそもOC他の公式モジュールが肌に合わないプレイヤーは少なくない)メーカー以外のユーザーによる別の視点、例えばBGやNWNシリーズの大半が依存しているソード・コースト以外の地方のFRを知りたいという人も多いだろう。

 archiveに今も収録されている日本語モジュールのうち、FR舞台のものはどれか、ということになるのだが、実の所、NWNモジュールでも、FRが舞台のものは決して大半を占めているわけではない。というより、日本語訳されているものについては、非常に少ないと言ってもよい。
 その理由は幾つもある。海外モジュールでFR舞台の割合がそれほど大きくない理由としては、NWN1/2が基本的にFRを再現するためのルールであるといっても、特にNWN1はそれほど特殊ルールの再現は多くなく、NWN2は特殊部分をカスタマイズで差し替えが可能である。NWN1/2はPnPプレイヤーが自分の世界を表現するためのツールとしての性質が大きい。そして、PnPプレイヤーの間では、(特に世界設定の希薄なAD&D時代は現在以上にそうだったのだが)FRやDLなどの癖の強い世界をそのままプレイするよりも、自分達はオリジナル世界でプレイし、FR等の特殊ルールだけを導入するというプレイヤーも多い。その理由とも関連するのだが、NWN1/2(特に2)ではPnPのモジュールの再現などもかなり多いのだが、それはWGやミスタラの名作モジュールであることも多く、FRであるとは限らない。  日本語のモジュールでFR物がさらに少ない理由としては、これらが訳された時代(=セガ版NWN1の頃)には、NWN1はFRの世界をソロやPW(MMO)で体験するためのゲームではなく、「TRPGプレイヤーがオンラインプレイのセッションに使うためのツール」としてもっぱら宣伝が行われ、またプレイヤーが集められていたことに大きく因する。すなわち、オンラインセッションの舞台として便利なモジュールが、日本のユーザーによって作られ、また英語モジュールからも優先的に翻訳されていた。そのため、PnPモジュール(特に日本ではCD&Dによって知られていたミスタラが多い)のコンバートが特に多かったり、ストーリー性の低いものが多かったり、自作モジュールにしてもそのTRPGプレイヤーの使用していたオリジナル世界設定であったりすることも多い。そのため、FRを舞台にしたものや、あるいはFRの設定やストーリーを題材にしたモジュールは非常に少ない。


 ごたくはともあれ、archiveの日本語モジュールから「FR世界設定であるもの」かつ「FRの設定を知るためにある程度有用なもの」を挙げていく。モジュールの内容そのものや評価については別のところで述べるかもしれない。



〇Shadowlord, Dreamcatcherキャンペーン (1lv-最大14lvあたりまで到達)

 これはNWN1がOCしかない頃に作られた最古の類の、定番かつ定評ある名作キャンペーンである。ShadowlordはBGやNWN2でもよく話題になる暗黒神「ジャーガル」にまつわるが、残念ながらデッド・スリー周りなどはそれほどフォローされていない。なお、ここにさらに続編のDemonキャンペーンもあるが(未訳)、内容については賛否両論である。
 留意点として、OCの頃に作られたため、SoUやHotUほどには強力なストーリードライブではない。そのため、展開がだるいと指摘する者もおり、現在の好評価キャンペーン群をプレイした目から見ると難点も多い。とはいえ、充分にプレイに堪える。



〇Terror in Ten Towns (10lv台後半)

 テン・タウンズを舞台とした戦闘中心の単発モジュールである。テン・タウンズは小説『アイスウィンド・サーガ』でおなじみだが、このモジュールも小説の主要人物こそ登場しないもののかれらの足跡の話題が出たりする。PCゲームのIWDも思わせる連続戦闘モジュールで、濃いストーリーこそないが、舞台の北方にまつわる小ネタも多い。



〇Blackguardキャンペーン (1lv-最大22lvあたりまで到達)

 知る人ぞ知る悪役モジュールである。プレイヤーキャラは悪神タロスのブラックガードとなるが、しばしば善玉としてのマイリーキーの信徒と抗争することになる。ラスト近くではFR世界の有名人(善玉)と戦う展開にもなる。
 舞台のほとんどは「ヤルタール」という小都市である。これは3.0e FRCSでは「ヤーター」と書かれているが、地図上に小さく名前が見つかるだけで、FRCS本文には説明どころか名前が書かれてさえいない。この都市は他にはGold Box時代のSavage Frontierシリーズに出てきたとか、公式モジュールに名前が一言二言出てきたことがあるといった程度である。そんな小都市でもエピックレベルのブラックガードが暗躍・抗争する舞台として充分というところに、FR世界のスケールが垣間見える。(5版の『ソード・コースト冒険者ガイド』には丸1ページほどヤーター市の解説があるが、このガイドが書かれた実際の年も設定上の年代も、NWN1と5版ではかなり離れており、無論内容も関係はない。)



〇The Doom of Artemis Dukar 日本語版 (10lv台)

 サーイのレッドウィザードのレネゲイドを主軸にすえたストーリー物で、当然サーイの重要人物などの名が出て来る。テキスト量がかなり多いが、これもかなり古いため、ストーリー物としては最近のものほどは整理されてはいない。また、長編の途中の1本という印象を受け、vaultでもシリーズ物に分類されているが、特に前編・続編などは(原語でも)無い。



〇Road to Faenya Dailシリーズ

 これは日本製モジュールで、『バルダーズゲート2』の派生二次創作を、日本のBGファンがNWN1で作っていたシリーズである。
 シリーズの本編であるRoad to Faenya Dailは、BG2の旅仲間NPCのひとりエアリーとのロマンスイベントから続くもので、アヴァリエル(有翼エルフ)であるエアリーを、故郷のファインヤ・デイルに連れて行くという話になる予定であった、らしいが、未完成のまま中断(作者サイトも消滅)している。
 ただし、このシリーズの派生モジュールが作られ、NWN1のmodコンなどに出品されていた。現在、上記Neverwinter Archiveに残っているのは『If Road to Faenya-Dail PLus』と、『Road to Faenya-Dail 外伝 失われた古代遺跡への挑戦』の2本である。

 『If Road to Faenya-Dail PLus』は、上記本編のさらに枝道から派生している話とのことで、エアリー、ナリアなども登場し、アブデル(BG1TotSCの主人公のデフォルト名で、本国のノベライズ版BGや4−5版に取り入れられた設定でのBG主人公の名でもある。ただし、ノベライズ版はエアリーのルートは採られていない)の名前、その関係者の数々が登場する。このNWN1モジュールのプレイヤーキャラはジャヘイラ(BG2の別の旅仲間NPC)の知人のハーパーズの一人となって共に行動することとなる。
 ただし、筆者のNWN1環境では途中から進行に不都合が続出した。日本語モジュールにはいずれも言えることではあるのだが、作られたのが古いモジュールであることもあって、最新版(GoGのDiamondなど)には完全に対応していないのかもしれない。

 『Road to Faenya-Dail 外伝 失われた古代遺跡への挑戦』はタイトル通り古代遺跡の探索物でこちらは上記エアリー周りの本編との関連は薄く、BGシリーズの予備知識などは特に必要なしにFRのモジュールとしてプレイできると思われる。
 ギミックが凝っているが、運が悪いとNPCが移動する途中に地形にひっかかってイベントが発生しないだとかの不都合が若干出ることがある。上記のIfの方ほどではないが、デバッグモードやツールなどの対策を準備した上で臨んだ方がよいのかもしれない。



〇Pool of Radiance-J (1-4lv)

 レルム舞台の別のPCゲームのNWN1コンバートであり、当然ながらこれも公式同様レルムモジュールである。が、これも当然ながら、作られた時代背景(DOS用)上、もとのゲーム自体がBGやNWNに比べるとテキスト情報量がさほど多くないため、期待するほどはレルムや月海(ムーンシー)周辺の情報は入らないかもしれない。
 ストーリーや背景を求めるなら、同じPoRでもNWN2版が良いのだが、当然そっちは英語版しかない。また、NWN1には続編2作(Curse of the Azure Bonds, Secret of Silver Blades)をコンバートしたモジュールもあるものの、やはり英語版しかない。



〇クロウ・クロニクル1、2 (5lv-)

 海外製モジュールの翻訳で、サブタイトル「ミス・ドラノールの門」「フェイルーンの悲哀」といういかにもFR用語からも判るように、FRを舞台としたストーリードライブの続き物で、2話構成である(3話以降も予定されていたようだが、例によって止まっている)。1話も悪くないが、2話の方は旧vaultでも各種殿堂にも入っていた。なお1話は拡張のSoU/HotUのない頃に作られたため、現行のNWN1のDiamondなどではバランスが変わっている(問題があるというほどではない)点が多少ある。
 OC群やここで挙げている他のFRモジュールとの違いは、色々と「PnPにおける各DMごとの『オレルム』」を想像させるつくりになっていることである。細部の設定にFRやD&D系そのものと異なるものがある(例えば下方次元界の設定などはWG(Ps)ともFRともかなり異なる)。アレンジか実プレイ結果の反映を想像させる。また作者のキャラ「ベテラン冒険者」群の仲間に入れてもらったり、クライマックスでこのベテランらが戦い始めたりする。これは海外NWN1プレイヤーからは相当酷く叩かれたらしく(上記殿堂の有名税的な、謂れもないとばっちりとも考えられるが)1話のDMルームには言い訳のようなものが残っている。無論、日本の「自称"TRPG"経験者ご用達ゲーム」ことCardwirthで悪名高い作者NPC主導だの何だのほど酷いものではなく、普通に気にせず進められる程度だが、FRを知るという目的上では、設定・内容共にこれらの傾向には注意しながらプレイする必要がある。日本のTRPG一般の世界設定に比べると、(たとえ、海外でも公式設定偏重のゲーマーが多いと捉えられているFRであっても)海外PnPでは世界設定に対する卓ごとのアレンジや一部のみ採用が多く、その結果物であるNWNモジュールやゲームmodは、しばしばOC群と異なり「FRの公式に忠実な設定を知りたい」という希望のみに応えるとは限らないのである。



〇バルダーズゲート・ライトアライアンス (1lv-)

 日本製モジュールで、コンシューマのBGダークアライアンス(BGファンに言わせれば、PCのBGシリーズとは「エルフソング亭以外には関係が一切無い」ARPG)を意識したとおぼしきタイトルの、ハクスラ的モジュール群である。元々マルチプレイでの集団戦闘を重視して作られているためもあって、ミッションの目的が告げられるくらいで、ストーリーらしいストーリーはなく、FRについて知れるというほどではないが、一応は設定や舞台はいかにもそれらしい。シングルでプレイするにはいささか素っ気ない(というか連作中には、シングルではいささか難易度の高いモジュールもある)が、プレイ自体に問題はない。



〇暗闇の狩人キャンペーン (4lv-)

 A Hunt Through the Darkはドラウ(ダークエルフ)主人公でプレイする5話キャンペーンである。アンダーダークでの冒険はHotUでも描かれているのだが、このモジュールではその一方で、小説ダークエルフ物語や、BG2のアンダーダークのドラウ都市に潜入しての一連のイベントで描かれたように、ドラウの過酷な社会を内側から描く形で進む。NWN1/2ゲーマーらには、いわゆる悪役キャンペーンの一種と位置付けられている。レルムの(地上の)社会の情報ではないが、レルム設定では特に定番であるドラウの設定を体験できる。英語しかないがNWN2版も作られている。


〇負の遺産 前編 (1-3lv-)

 日本製モジュールで、複数のクエストからなるストーリー物である。設定が新たに知れるというほどではないが、なにげにタイム・オブ・トラブル(災厄の時)に関連した事件が題材となっていることがわかるFR物である。が、Archiveには後編は無い。



〇A Bard (7lv-)

 日本のモジュール作者Namayake氏による、かつてのモジュールコンテスト応募作。HotUの舞台でもあるソード・コーストの巨大都市ウォーターディープ市で行われる、吟遊詩人のコンテストを題材とした題名の通りのBrd専用モジュールである。その題材からてっきりシティアドや技能中心だと思ってBrdでも戦闘が全くできないビルドの者やハーパースカウト等を放り込んだりするとドツボにはまる。OCの旅仲間Brd、シャルウィンが最大の強敵である。



〇静かな旅 (5lv-)

 modコンに提出されたひとつで、日本製のモジュールだがFRのヴァーサ〜ムーンシーあたりを舞台にしている。が、なんだかFRでなくミスタラで見たような人名が出てきたりもする。内容はなかなかベタで、まるでCardwirthのストーリー物のようではある。しかし、FR世界で普通にストーリー物で冒険できるモジュールには違いない。




※注意:FR舞台であるが、あまり設定の参考になりそうもないもの


〇Penultima, Penultima:ReRolledキャンペーン (3lv-15lv前後終了)

 これも実はFR世界だったのだが、そんなことは今しがた確認するまで忘れていた。定番ギャグモジュールであるが、おそらくFRの把握の役には立たない。



〇◆NWNサスペンス劇場◆『永冬学園青春白書』

 FR(OC)が舞台というより、NWN1のOCを学園化した(ペナルティマ的な)パロディモジュール、という謳いだが、OCとの関連性は深いようでさほど深くなかったりする。



※注意:(噂に反して)FRが舞台ではないもの

〇六王国物語キャンペーン

 かつてのNWN1コミュニティをソースに、または某巨大掲示板などで「NWN1-OCのヘンチマンらが登場するのでオレルムだろう」という評判が流れていることがある。
 が、プレイすればわかるが、完全なオリジナルワールドで、しかもそのワールドの歴史設定がシナリオの主幹をなしており、レルムとは全く別物である。確かにOCのヘンチマンは全員旅仲間(戦力)として加えられるようになってはいるが、単にツールセット自体のデフォルトなので流用しているだけらしい。もちろんモジュール自体は定番の良作である。








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