3.Xe(NWN1/2)のマルチクラスシステム





 3.Xe(NWN1/2など)のマルチクラスシステム


 D&D3.Xeのシステムの核といえるのがマルチクラスである。しかし、3.Xeのマルチクラスは、PoR(GoldBox)やBG(Infinity)などのAD&D1st、2ndの以前のシステムとは大きく異なる。無論のこと、FF(ファイナルファンタジーの方), DQ3,6,9, Wizardry#1-8, ソードワールドのような、要は「AD&D1stのデュアルクラス・サブクラスを模倣・翻案した転職・複合クラスシステム」とは、根本的な概念が異なる。そのため、他のRPGは勿論、BGからNWN1/2に移行したプレイヤーが激しい混乱に陥ったという報告は、セガ版当時も、はてまた十数年を経過した現在ですらも、枚挙に暇がない。
 例えば、一般にD&Dゲームにはかなり強いはずの4gamerの当時のNWN記事には、これでもNWN1からたっぷり数年後とはとても思えないことが書いてある。マルチクラスのキャラが「シングルクラスのキャラクターとは比べ物にならないほど成長が遅く(レベルアップまでの経験値がより多く必要となる)そこでバランスが取られている」は、BG等のAD&D2nd以前のマルチクラスキャラと混同している可能性もなきにしもあらずだが、それよりもおそらくは、3.Xeの「適性クラス」のシステム(適性クラスを適切に考慮してマルチクラスすれば、「比べ物にならないほど成長が遅く」なる状況は全く生じない)について理解しておらず、「あらゆるマルチクラスを行う場合に『クラス毎に-20%』の経験値ペナルティーが必須」という前提で書かれている。というより(非常に特殊なビルドでない限りは)経験ペナルティーがつくようなマルチクラスのビルドはそれ自体が『論外』であるが、そんなものを想定・大前提(バランス云々とする必須要素)として挙げている時点で、マルチクラスやビルドに関する基本的な認識が欠如している可能性が高い。
 ごく近年のd20ゲームに関する話題でも、Low Magic Ageのスポイラーと称するサイトで、マルチクラスについて全く同じ(「マルチクラス最大のデメリットは成長が遅くなること、入手XPにペナルティーが発生する」という、経験ペナルティーを被るのが大前提であるかのような)説明をしているものが確認できる。
 CRPG版ゲーマーのみならず、3.Xe当時のPnP版のD&D系のスレッドにすらも「プレステージをペナルティーの計算に入れている」などの誤りは頻繁に見られた(知らないクラス名についてベースクラスかプレステージかを誤っていた可能性もあるが、自称PnPゲーマーがそれで言い訳できる話ではない)。2nd以前との混同にせよ、3.Xeのルールの無理解にせよ、3.Xeが現役だった当時からもゲーマーの間において正確に理解されていたとは言い難い。


 この難解な3.Xeのマルチクラスについては、かつては(NWN1のサイトも含めて)丁寧に解説しているサイトもあったのだが、3.Xeが過去のものになるにつれ見つからなくなりつつある。下手をするとNWN1/2のプレイヤーにはこのルールを知る機会すらないということもありえる(セガ版には日本語マニュアルがあったのだが、現GOG版は当然英語しかない)。Pathfinderの解説ならば今もあるが、Pfではマルチクラスのルールは一部踏襲されてはいるもののD&D3.Xeやd20-SRDデフォルトとは大きく変更されている。もっと酷い想定としては、近年D&D/d20ゲーム周りに頻繁に見られる例としてPathfinderの和訳ルールを、D&D3.Xeや他のd20の”元ルール”であるかのように誤って説明している場合が多いため、3.Xeやd20デフォルトのマルチクラスについても、すでに誤った情報が一部で信じられている可能性もかなり高い。
 そうした事情から、単にNWN1/2の解説サイトとして、マルチクラスの非常に基本的な情報にも触れておくことにする。3.Xeのビルドの詳細については立ち入らない。


概要
(1) 総合的な「キャラクターlv」と、クラス毎の「クラスlv」が別にある。キャラクターlvは全てのクラスlvの合計である。呪文など多くの能力は、クラスlv分しか得られない
(2) マルチクラスの構成によっては経験ペナルティーが生じる。例外があり、例外を使って経験ペナルティーを避けるのがOC等では大前提
(3)(4) 「種族ごとの適性クラス(人間等なら最も高いクラス)」「プレステージクラス」は例外であり、マルチクラスによる経験ペナルティーが生じない


 ややこしいように見えるが、一度飲み込めてしまえば(たぶん)どうってことない。むしろ飲み込めてしまってからが本当の(ビルド考察の)地獄である。が、それはさておき各項目について説明する。



(1)キャラクターレベルとクラスレベル

 ここの部分についてはPfその他のd20や5版と同様なので、単なるおさらいである。3.Xeでのキャラクターのlvには、キャラクターの総合能力を現す「キャラクターlv」と、クラスそれぞれのレベルを示す「クラスlv」がある。クラスlvを全て「合計」したものがキャラクターlvである(他の幾つかのCRPG/TRPGのような「最も高い」クラスlv=「冒険者lv」等ではない)。
 経験値等はキャラクターの総合力であるキャラクターlvの方により決まるが、能力は基本的に、それぞれのクラスlvの分しか持っていない。
 能力が重複する場合、合計される場合も、片方だけになる場合もある。それは能力ごとに説明されているが、一般的に言ってhp, 命中率(BAB), セーブなど、どのクラスでも持つものは合計され、呪文などクラスごとの特殊能力的なものは通常合計されたりはしない。

 例えば3.0e FRCSによると、NWN1にも依頼人として登場するエルフの魔法戦士、エレイス・クロールノバーはFtr3/Wiz9である。エレイスは3lvのFtrとしての能力(戦闘系のボーナス特技を2つ持つが、Ftrの象徴であるFtr4の武器開眼は持たない)と、9lvのWizとしての能力(呪文レベル5まで使える)を持つ。
 しかしキャラクターlvは12lvであり、「12lvのキャラ」として経験値が計算される。必要経験値は多いし、12lv相応より弱い敵を倒しても得られる経験値は極めて少ない(3.Xeデフォルトでは)。にも拘わらず、戦士3lv, 魔法使9lvの能力しか持たないということは、Ftr12(武器開眼どころか、NWN2の3.5eでは上級武器開眼まで取得していることが多い)やWiz12(呪文レベル6まで持つ)だけ集中して上げたキャラに比べると、かなり器用貧乏だということがわかるだろう。
 クラス依存能力はクラスlvの分しか持たないが、一方ヒットポイントや攻撃ボーナス、セービングスローなどの基本能力は全て「合計」される。これはBGなどのAD&D2nd以前のマルチクラスやデュアルクラスでは「先に取得した方」「良い方」「平均」などが取られていたのとは全く異なる。そのため、例えば命中率(BAB)やhpはFtr3の増加分に加えてWiz9の分だけ増えているので、戦闘能力に関してはFtr3ほど弱いわけではない。が、Ftr12に比べればかなり弱く(WizではFtrに比べてBAB,hpともに上昇率は半分かそれ以下である)Ftrの「クラスlv」による能力も得られない。

 かつてのAD&D1st、2nd(そのルールに準拠した初代PoRなどのGoldBoxや、BG,IWDなどのInfnity)、さらにはその非常に強い影響で作られたソードワールド1などの複数ベースクラス兼業では、「クラスレベルごとに別々に経験値を計算(消費)」するようになっており、他のクラスの低レベルの能力であればデュアルクラス(転職経由)等で低経験値で得ることができた。
 例えばAD&D2ndでは、メインクラスがWiz9lvで、BG2のクエストで数万点が入るような状況の際にも、3lvのFtrを取得するにはFtr3lvの4000xpだけをFtrにつぎ込めば済み、経験値負担自体は微々たるものである(実際はマルチ、デュアルクラスともに取得順番などに多くの制限を受けるが、AD&Dのルールの最も煩雑かつ粗雑な点のひとつなので省く)。しかし、3.XeのNWN1/2ではこれとは全く異なり、Ftr12と同じ経験値では「全部のクラスレベルを合計して12lv」になるようにする必要がある。Wiz9にFtr3を追加するのであれば、「9lvキャラが12lvになるのと同じ経験値」が必要になるのである。
 また例えば、2ndのBGではFtr12と同じ経験値(100万xp)があれば、Ftr11(75万xp)/Wiz10(25万xp)のキャラを作ることができる。つまり、Ftr,Wizの両方について純Ftrより1-2lv低い程度の両用キャラを容易に作ることができる。しかし3.XeのNWN1/2ではこれとは異なり、Ftr12と同じ経験値では、あくまで合計で12lv(例えばFtr3/Wiz9, Ftr6/Wiz6など)になるようにしかできない。
 3.Xeでは2nd以前と比べて、複数の能力をいずれも高くするようなマルチクラスは非常に困難になっているのである。軽率なマルチクラスを行うと、ほとんど確実に弱体化し、安易にマルチクラスしただけで「比べ物にならないほど成長を遅くすることでバランスが取られる」ほど強化されることなどまずない。

 これらを踏まえて、3.Xeの有効なマルチクラスの方法論としては、ひとつは「メインの能力のクラスlvを高くして、サブの能力をメインの足を引っ張らない程度に若干lv入れる」というものがある。例えば冒頭のエレイスであれば、(FRCSのキャラデータ自体が旧版を引きずっており、全般3.Xeにあまり適合しておらず、有効なビルドがされているとはいえないのだが)どちらかというと、Wiz中心のレベリングである。充分な魔法能力を持ちながら、低いFtrレベルで戦闘特技をフォローするという形の魔法戦士である。これは後述する「適性クラス」のシステムに深く関連してくる。

 もうひとつは、複数のクラスの能力が同時に増加していくような「プレステージ(上級)クラス」を狙う方法である。NWN1には残念ながらそうしたプレステージは全く実装されていないが、NWN2であれば幾つか選択肢がある。例えば、3.5e DMGの、BABと呪文能力がそれぞれFtr,Wizと同等弱で伸びていくエルドリッチナイトがそれであり、2nd以前のFtr/Wiz同等のマルチクラスキャラなどは、3.Xeではこれらにより再現されている(3.0eやNWN1の頃にはエルドリッチナイトは基本ルールではないので、上記エレイスは持っていない)。

 また、3.XeのキャラクターLvには、強靭なクリーチャーであれば追加ヒットダイスが加算されたり、キャラクターLvそのものではないが経験値計算には種族などによるLA(レベル調整値)が加算され、その合計値(ECL)が経験値計算に用いられたりする要素もあるが、詳細は複雑なので別箇所で述べる。NWN2のプレイヤーキャラの場合は、種族ごとにLAがありECLが変動する場合があることを他で述べている。


(2)マルチクラスによる経験ペナルティー

 これは3.0eや3.5eの特徴で、Pfや5版などとは全く異なる点である。マルチクラスを行う際、「不均一な上げ方」をすると経験値にペナルティーがつく(例外である適性クラスとプレステージクラスについては後述する)。冒頭に上げたレビュー記事やスポイラーサイトで「マルチクラスすると例外なく被るペナルティー」と誤解されていたのがこれである。
 具体的な計算としては、まずそのキャラの持つクラスlvのうち最も高いlvであるものを基準とする。そのクラスのlvと、他に持つクラスを比較して、「2以上のレベル差があるクラスひとつずつについて」入手した経験値に20%のペナルティーがつく。2以上のレベル差でつくということは、同じレベルか1の差である場合=複数のクラスを順番に1つずつ上げている限りは、どんなにクラスが多くともペナルティーがないということである。

 例えば種族「シールド・ドワーフ」でRog1/Clr1/Wiz1/Brd1のキャラがいたとする(NWN2ではマルチクラスは4クラスまで)。次にレベルアップした際、Rogを1lv上げたとする。Rog2/Clr1/Wiz1/Brd1で、最も高いRogとの差がどれも2lv未満なので、ここまでは特に経験ペナルティーはつかない。
 問題はそれ以降である。仮に、この次にはClrを上げ、さらにその次にはWizを上げ、などと、「均一に」レベル差が1までしかつかないように上げていく限りは、ペナルティーはつかない。
 が、何か間違ってRogを続けて2lv上げてしまったとする。Rog3/Clr1/Wiz1/Brd1になると、以後、入手する経験値の全てに、いきなり60%のペナルティーがつく。一番高いRogに対して3つのクラスが、それぞれ「2lv以上の差」があるからである。
 ここだけ見ると、マルチクラスをする場合、lv差を1までにして(レベル上げをすべて交互にして)均一に上げる以外の途は、かなり強固に阻まれているように見える。
 つまり、このシステムを理解すると、前述の攻略サイトの説明のような「『マルチクラスをすること自体』が必ず有利なのでシングルクラスとの『バランス上の問題』で阻まれている」のではなく、「均一にレベルを上げること以外を阻まれている=マルチクラスをすると、キャラクターlvを各クラスlvで等分した『器用貧乏キャラになることを強制されている』」という点がわかってくる。

 ここまでで、では上述のエレイスもFtr3とWiz9の間に6lvもの差があるので、20%のペナルティー(ちなみに2lv差以上であれば、何lv差でも1クラスごとに20%である)がついている状態なのか、と思うところである。
 実のところ、3.0eのFRCSに載っているあいどるちょうじん共には、どうせ実プレイをしていないからとばかり(例えばFtr10/Bbn1/Rng5のドリッズトは40%ペナルティーである)ひいては、どう見てもルールの無理解やらキャラビルドバグやらで、大量ペナルティーが避けられないようなクラス構成の者が少なくない。
 が、ことエレイスに関しては、結論から言えば、ペナルティーは受けない。上記経験値ペナルティーには例外があり、それはおおまかに2種類である。ひとつは種族ごとの「適性クラス」を含む場合であり、もうひとつは「プレステージクラス(上級クラス)」を含む場合である。


(3)種族による適性クラス

 各種族にはサブ種族単位で、「適性クラス」が1つ決まっている。この「適性クラス」に関しては、上記のマルチクラスによる経験値ペナルティーが「計算から除外される」。

 例えば、ライトフット・ハーフリングの適性クラスはRogである。上記のRog3/Clr1/Wiz1/Brd1は、ドワーフの場合60%のペナルティーがつくが、仮にライトフット・ハーフリングの場合は0%である。なぜなら、「Rog」が経験ペナルティー計算から除外されるので、計算に用いられるクラス構成はClr1/Wiz1/Brd1となり、2lv以上差のあるクラスが「無い」ためである。

 上記のエレイス・クロールノバーの種族ムーン・エルフの適性クラスはWizである。したがってFtr3/Wiz9のエレイスも、Wiz9が経験ペナルティー計算から除外されるので、計算に用いられるのはFtr3のみである。Ftr3との間に2lv以上差のあるクラスは「無い」こととなり、ペナルティーは0%である。

 適性クラスのある種族は(「適性」という語が誤解されている点であるが)そのクラスの能力に、例えばシングルクラスで取得している時に何らかの利点があるわけではない。マルチクラスした場合の有効性、つまりむしろ「適性クラス以外にも多芸なキャラ」を作る際に影響してくる要素である。
 言いかえれば、種族ごとの適性クラスは、その能力のみに特に秀でているクラスを示しているものではなく、その能力とその他の能力を両立することができる、それだけ身近・自らの一部となっている、という種族の特性を示している。
 さらに別の言い方をすれば、この適性クラスのシステムは、旧版で特定の種族のキャラが「特定のマルチクラスの組み合わせが多かった」という状況を再現しているものである。
 (なお、NWN1/2のD&D3.Xeではなく他のd20には、Pfのように、適性クラスが「選んだ場合に能力が有利」という、全く異なるルールの用語として使用されている場合がある。これもかなり注意が必要である。)

 一方、例外的に、人間、ハーフエルフ、ハーフドラウのように、適性クラスが「無い」と表示されていることがある種族がある。このような種族の場合、どんなクラスからもペナルティーを受けたり逆にペナルティーが無くなるのかというとそうではない。これらの種族は、持っている全(ベース)クラスのうち、「最も高いクラスlvを持つクラス」が、自動的に適性クラス扱いとなり、同様に計算から除外される。
 例えば、上記ハーフリングでRog3/Clr1/Wiz1/Brd1は、Rogが適性クラスとして除外されるのでペナルティーは0%だが、仮にRog1/Clr3/Wiz1/Brd1だと、Rogを除外してもClr3/Wiz1/Brd1が残るので、ペナルティーが40%残る。ところが、仮にこのクラス構成を持っている者の種族が人間だった場合、Rog1/Clr3/Wiz1/Brd1のうち最も高いClr3が自動的に適性クラス扱いになり除外されるので、ペナルティーを受けない。他にRogでもWizでもBrdでも、突出したクラスがひとつだけならば、どの(ベース)クラスであっても自動的にそれが適性クラス扱いになるので、ペナルティーは受けない。当たり前だが、最も高いクラスlvのクラスが途中で変わった場合、そちらが適性クラス扱いに変わり、計算しなおされる。
 これらの適応力の高い種族は、どんな能力でも「一芸に秀でる」ことができ、またそれを他の能力と兼業できる(同時に学んだり両立することができる)という多様性を示している。


(4)プレステージクラス

 プレステージクラスはベースクラスと異なり、ある程度の前提能力がある=他のベースクラスをある程度伸ばさなければ取得できない、いわゆる上級クラスである。全てのプレステージクラスは、どんな種族でも、また幾つのクラスを取得しても、適性クラス同様にレベル差による経験ペナルティーの計算からは除外される。これは、プレステージクラスが「他と必ずマルチクラスすること自体が前提・特徴」のシステムであるためと思われる。



(初心者用の)マルチクラスの推奨例

 ここで具体的に、マルチクラスに手を出すならばどのようなビルドが良いかだが、最優先で考慮しなくてはならないのは適性クラス等などを配慮することで「経験ペナルティーを避けること」である。
 NWN1/2のような固定イベント経験値(稼ぎ・レベル上げ単純作業などができない)のモジュール(シナリオ)が大半を占めるゲームでは、経験値ペナルティーを被ったままで進めると、シナリオ進行に応じたレベルが足りないという致命的に取返しの付かない事態に繋がる。冒頭に上げた説のような「マルチクラスすると厳しい経験ペナルティーがある」などという結論で締めるのは言語道断であり「経験ペナルティーがつかないように考慮したマルチクラスをする」のが当たり前の話である。(これも触れたように、特殊なビルドの都合であえて行う場合、SoZやPW系などの稼ぎができるモジュールで行うこともあるが、それは初心者の範疇ではない。)

 緻密なビルド計算を要さず、経験ペナルティーがつかないパターンとしては、

(1)基本クラス1つ+プレステージクラスのみ取得する
(2)適性クラスを伸ばし、他のクラスを1−2lv取得する
(3)適性クラス+1基本クラスか、又は、基本クラスを全て均等に上げる

 といったものが考えられる。(1)はほとんどマルチクラスのうちに入らないというか、普通にプレステージに想定されている形態で、何も問題はない。
 (2)は低lvで得られる能力が有用な場合(ビルド類型〜1lvのみのマルチクラス記事参照)や、あるいはプレステージの前提に技能や特技などが必要な場合に、普通に行われる。適性以外のクラスを1-2lvにとどめるならば、1lvをこえた差が生じることはないので、複数の1-2lvクラスを取得しても問題はない。
 (3)は、最も高いものが適性クラスで、他に一つだけ別クラスを取得するなら別クラスは3lv以上や均等でなくてもよく(エレイスのWiz9/Ftr3もその例である)、適性クラスでない2クラスの場合も、完全に均等(1lv差)で上げるならば経験ペナルティーはつかない(人間やエルフ以外ならWiz6/Ftr6など)。しかし、それぞれの基本クラスの能力がキャラクターlvに比べて激減するので、慣れるまでは推奨できない。キャスター以外であれば複合しても累積部分が多く有用性が高い場合や(前衛系+Rogなど)、NWN2ではプレステージでこれらの能力を補足できる場合があるが(NWN1では無い)いずれもゲーム開始後の行き当たりばったりなどで選択できるようなものではない。



マルチクラスの例

 理解しにくい経験ペナルティの説明のための例であって、能力上の推奨例(有利な例)ではない。

・人間、Rog2/Ftr7/Clr1:人間なので最も高いクラス、すなわちFtrが適性クラスとなり除外され、RogとClrはレベル差が1なので経験ペナルティーにならない。ここでRogを3に上げるとペナルティーになる。適性クラスを大きく伸ばし、他のクラスを1-2lv入れるにとどめるというのは常套手段である。

・ハーフエルフ、Rog5/Ftr4:ハーフエルフは適性クラスは「最も高いクラス」なので、Rogがペナルティー計算から除外される。つまりFtr4のシングルクラスと同じである。次には交互に上げてもよく、2lv以上の差がつく上げ方をしてもよい。Ftrの方がRogより高くなるとFtrが適性クラスに変わるが、どちらにせよ適性クラス以外に1クラスしか無ければ、ペナルティーがつくことはない。

・ムーンエルフ、Rog5/Ftr4:ムーンエルフは適性クラスはwizなので、ペナルティー計算から除外されるクラスはない。適性クラスが含まれない場合、1lv差であれば経験ペナルティーにならない。次にはFtrを上げなくてはならず、Rogを上げてRog6/Ftr4にすると2lv差がつくので経験ペナルティーになる。必ず1lv差以内に収まるように上げていかなくてはならない。

・シールドドワーフ、Rog4/Clr5/Ftr1:シールドドワーフなのでFtrが適性クラスとなり(lv高低にかかわらず)除外される。RogとClrはレベル差が1なのでペナルティーにならない。適性クラスが固定されている種族ならこれができるが、人間やハーフエルフでは「最も高いクラス」が適性クラスとなるのでこうしたビルドはできない。



公式キャラの実例

 3.XeのFRの公式キャラには実プレイには論外な酷い経験ペナルティーを受けているキャラがやたらと多い。それは設定だけで実プレイするわけではないので構わんという意図と、単に作られたのは2nd-3.0eの過渡期で設定してる方もルールがよくわかっていない、という両方の理由が考えられるが、何にせよ、説明する実例としては恰好なので挙げる。

・ロード・ナッシャー:人間、Ftr8/DC3 (3.0e FRCS)。ディヴァイン・チャンピオンはプレステージクラスなので経験ペナルティー計算からは除外される。残るはFtrのみで、シングルクラスと同じなので、ペナルティーは「0%」である。

・ドリッズト・ドゥアーデン:男性ドラウ、Ftr10/Bbn1/Rng5(3.0e FRCS)。男性ドラウは適性クラスがWiz, PnPルールでは女性ドラウはClrだが(NWN2では両性ともWizである)、どのみち計算から除外されるクラスはない。一番高いクラスがFtr, それと2lv以上の差があるクラスが2つあるので、ペナルティーは「40%」である。
 「ドリッズトはチート級最強キャラ」などといった各所の無責任な言動にいまだに惑わされているならばはっきり断っておくが、3.0eでは一体どうやったらこんなに酷くビルドできるのかというくらい、同経験値・同CR・同ECLを与えられた他キャラに比べて著しく弱い。一応、原作小説の少年時代の来歴に沿うとこうなったという説が有力だが、にしたって他にやりようがある。

・アルテミス・エントレリ:人間、Rog4/Rng1/Ftr12/Asn1(3.0e FRCS)。人間は最も高いクラスが適性クラス扱いなので、Ftr12が除外される。アサシン(Asn)1もプレステージクラスなので除外される。残りはRog4/Rng1であり、その中では最も高いクラスがRog4, 2lv差があるクラスが1つ(Rng1)なので、ペナルティーは「20%」である。
 そんなペナルティーを受けてまでなんでまた「Rng1」が入っているかというと、3.0e(NWN1含む)ではRng「1」で二刀流をはじめレンジャーの能力が多数得られたためと思われる。3.5eでは、Rng1だけでは二刀流を含めてこれらの大半は得られないので全く意味がない。というか、一方でFtrなどで取得する場合の二刀流の特技数等は緩和されたので、おそらくFtr12もあればRng1は要らなくなると思われる。しかし、そのようにリビルドしていくと、何をどうやってもドリッズトより遥かに強くなる他にないので、しない方がよいだろう。

・アルセア・オーバースカイア:人間、Ftr7/Rng1/PDK2(3.0e FRCS)。パープル・ドラゴン・ナイトはプレステージクラスなので経験ペナルティー計算からは除外される。残るFtr7/Rng1のうち、人間なので最も高いFtr7が適性クラス扱いとなりやはり除外される。残るはRngのみで、他に2lv以上差があるクラスは無いので、ペナルティーは「0%」である。
 アルセアはアゾーン(エイズーン)4世の末娘でコアミアの武将・摂政(DR1372当時)であり、鎧+ロングソード+盾スタイル(武器は+3ヴォーパルブレードのみ)である。Rng1といっても別に二刀流などは使わないようである。おそらくRng1は、NWN1でもおなじみPDKプレステージのややこしい前提条件の技能群を取得しやすくするために入れてあると思われる。ついでに3.0eでは、FtrにRngを1lv混ぜても特に戦闘能力が減るわけでもないし(ヒットダイスも同じである。無論、エントレリのような経験ペナルティーの原因にならなければの話である)損は少ない。

・エルミンスター:人間、Wiz24/Ftr1/Clr3/Archmage4 (3.0e ELH)。種族人間なので、最も高いlvのクラスが適性クラス扱いになり、Wiz24が除外される。Archmage4もプレステージクラスなので除外される。残るはFtr1とClr3であり、2lv差がある。よって「20%」のペナルティーがつく。
 ClrかFtrを2にしてペナルティーを避けたって大差がないように見えるが、別に実プレイで成長させているわけではないので、ペナルティーがつこうがつくまいがどうでもいい、というのがにじみ出たデータである。



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