Kaedrin PRCの追加プレステージクラス


 具体的な能力の詳細はPRCの公式サイトを参照されたい。



・Canaith Lyrist


 カネイス・ライアリストは3.5eの元ルール(PnP)のフォクルーカン・ライアリストを改変して、Kaedrin PCRにおいてNWN2に実装したとされるプレステージクラスである。改変の事情も、その前のクラスも、説明するのにえらく時間がかかる。
 まず、フォクルーカン・ライアリストは3.5eのComplete Adventurer(HJ邦訳『冒険者大全』)収録のクラスであり、その内容は、Rog, Brdの知識, 秘術系(説明によるとBrdを想定されている), 信仰系(説明によるとDrd)の能力が前提条件として全て要求され、呪歌に加えて秘術・信仰呪文の両方が伸びるクラスである。異常な条件の多さとその組み合わせの脈絡が「まるで意味がわからないクラス」という声は日本のゲーマーからは当時多数見かけたものであった。
 が、少しはBrdやDrdの背景を探ったことがあれば、BrdはBrdでも「ケルトの語り部・賢人」としての吟遊詩人が発想元にあるかもしれないことは察しがつくと思われる。実際のところ、3.5eのフォクルーカン・ライアリストは、かつてのAD&D1stのPHBのBardクラスが元であろうと考えられており、さらには、このAD&D1stのBard(2nd以降のBrdクラスとは能力も背景も何もかも全く異なっている)は、かなり特定した再現対象である、「ドルイド文化の流浪の語り部」をモチーフにしていたクラスである。
 AD&D1stのBardは、Fighterで5-8lv, ついで転職(デュアルクラス)してThiefで5-9lv、その後でさらにBardに転職するという過程を経なくてはクラスを取得できない、遥かに後版のプレステージクラスに似た前提条件を有する(PHBという基本ルールでも、巻末のサイオニックよりもさらに後に載っている)極めて変則的なクラスである。戦闘と盗賊の能力はそれぞれ転職前のクラスのものを持ち、Bardのクラスを取得してからは、魅了や伝承といったいかにもBrdの独自の能力のほか、ドルイド呪文を習得していく。当然であるが、AD&D2ndや3.Xe、4版、5版のクラスとしてのBrdは全て、1stのものとは名前以外の共通点を探せないほどに異なる。1stのBardクラスを、2nd以降のBrdと区別するためOldBardと呼ぶゲーマーもいる。3.5eのフォクルーカン・ライアリストは、3.Xeの基本クラスのバードが1stのOldBardとは全く異なるものとなったので、プレステージクラスとしてあえて1stのものに近い存在を再現したものと考えられている(Unearthed Arcanaの3.Xeプレステージ版バードともだいぶ違う)。
 3.5eのフォクルーカン・ライアリストは、クラスの取得はかなり厳しいが、このクラス自体ではミスティック・シアージ同様に2クラスの呪文能力が伸び(おそらくはBrdとDrdを伸ばすことになると思われる)、Brdの呪歌能力も伸び、さらにはBABも「高」である、純粋にクラス能力を見ると(器用貧乏ではない)万能クラスである。ドルイドでなく前提の能力も伸びていくぶん、1stのOldBardより優秀ともいえる。なお多すぎるベースクラスを配慮してか、フォクルーカン・ライアリストの1lv目を取得した時点で、以後ベースクラスを伸ばしたとしても「マルチクラスペナルティーを受けなくなる」というけったいな能力が得られるが(元々がマルチクラスペナルティーのないd20、例えばPfなどでは意味はない)むしろライアリストを得る「前」に欲しいような能力であり、キャラクターレベル10lv以上でライアリストを得たらあとはエピックまでライアリストを伸ばす以外に特にやることはない。

 さて、ようやくNWN2のKaedrinPRCのカネイス・ライアリストの話であるが、このクラスはPrC作者によると「フォクルーカン・ライアリストをアレンジしたもの」である。カネイスとはどこから来たかだが、実のところ「フォクルーカン」も「カネイス」も、上記AD&D1stのPHBのBardクラスの表に、Brdが所属するスクール(組織、称号)の名として列記されているものである。1stのBrdのスクールには他に「アウストラス(アンストラス)」「マクファーミド(マクフュルミド)」「ドス」といった名がある(1stのPHBのこれらは、さらに原典を遡ると、アイルランドの詩人の順列ごとの名として文献に現れるテキストの綴りを変更したもののようである)。これらのスクール名は、NWN2にも「楽器」の名前に冠されて登場する。これらの楽器は5版などではコアルール(DMG)のアイテム表にも出てくるが、FR世界でこれらの1st以来のBrdのスクール名を用いるときは、レルムに存在する地名になっているようである。「フォクルーカン」はシルヴァリムーン、「カネイス」はテシア地方に存在する組織となっている。

 NWN2のKaedrinPRCにおけるカネイス・ライアリストの改変点は、最も主なものでは、元ルールのフォクルーカン・ライアリストが秘術(他にBrdの知識が前提なので、秘術クラスはBrdになると思われる)と信仰の両方を前提とし、伸びるのも両方なのに対して、このPRCでは前提も伸びるのも「秘術のみ」としている点である。これは、他の記事でも述べたようにNWN2ではミスティック・シアージのようなデュアルキャスターのプレステージクラスには外部overrideでもfix不可能な重大なバグがあるため、避けたとも考えられる。ただし、OldBardやフォクルーカンの主な組み合わせである、Brd/Drdのデュアルキャスターの場合は上記バグの問題は生じない。他の組み合わせで生じる危険を廃したという面もあるかもしれないが、むしろNWN2が4クラスまでしかマルチクラスできない等システムが簡略化されているので、整理する意味でシンプルにした面もあると思われる。
 前提条件から信仰系クラス(Drd)は無くなっても、技能の前提条件はあまり緩くなっておらず、最も高ランクの前提技能が「芸能13ランク」である点は変わらず、したがって取得可能なのはキャラクターレベル10lv以降となる(なお秘術呪文はPnPの呪文レベル1から、このPRCでは呪文レベル2となっている)。整理すると前提特技に身かわしがあるので、(通常は)Rogも2レベル必要である。典型的には2lv以上のRogと4lv以上のBrdで、合計10lv以上が必要である。
 その結果、NWN2では結局どうなるかというと、Brdから呪歌能力と呪文能力が落ちないまま伸びるというのは良いのだが、Brdをそのまま伸ばすのと比べてみると、BABが高になるだけとなる。技能の点数もヒットダイスも変わらない。解錠や装置無力化はクラス技能には入っておらず、(NWN2では)Rogの方の技能をこの後伸ばせるわけでもない。
 例えばキャラメイク記事で説明している近接Brdであれば、地味に能力が上がり、また軽戦士としては、前提のRog2lv(身かわしやわずかな急所攻撃)との相性も良い。しかし、遠隔Brdであれば、これよりもアーチャー系やその他遠隔系の別のクラスでも取った方がよいのではないか、ということにもなってくる。折角このクラスを取得しても、「カネイス組織の雰囲気」以外にどう生かすかは一考の余地がある。








フレーム表示


トップページに戻る
(フレーム解除)