施設や店の店主名に関しての覚書の羅列







 情報価値が低く、分量がなく、バリアントによって有無の差が激しいので、用語集からは独立する。
 店主の名は明らかに出典があるものと、不明なもの(おそらく創作のもの)があり、[Z]やToMEなどの後出のバリアントになると出典のあるものは差し替えられたり、ソースからコメントアウトされているものが多い。以下は一部でもバリアントにあったものを羅列する。



・雑貨屋

フレンドリーなビルボ(ホビット) Bilbo the Friendly
 言わずと知れたトールキンのビルボ・バギンズからと考えられているが、「フレンドリー」は少なくとも二つ名としては作中にはない。


臆病者ラストリン(人間) Raistlin the Chicken
 tables.cのコメントにある通り、RaistlinはAD&D小説『ドラゴンランス』シリーズの魔術師レイストリン・マジェーレである。[V]以来「ラストリン」になっているが、ToMEなど一部では正しく「レイストリン」になっている。『ドラゴンランス』はAD&D小説の枠をこえて米本国では日本でのガンダム級にファン層の厚いシリーズであり、レイストリンは中でも人気が高く、ガンダルフやゲドなどとすら並ぶフィクションの有名な「魔法使い」の例として言及されることがある。
 原作のレイストリンは、病弱の反動で魔力への強い才能と渇望を持ち、神にも挑む強力な魔術師だが、性格がもの凄まじく捻じ曲がっており、本国でも日本でも非常に人気が高い。また、ここで「臆病者」と訳されているthe Chickenとは、邦訳では「ずるい奴」「陰険男」となっており、実はレイストリンの魔術学校時代の同期らによるあだ名(その性格のため嫌われ者だった)として本文中で触れられるに過ぎず、別に大魔術師としての二つ名ではない。
 なお[変]などでは、この名はソースには残っているがコメントアウトされており、[V]3.0系など新しめのバリアントではいなくなっているため(やはり「雑貨屋」としては不自然なためと思われる)現在では見る機会のないプレイヤーも多いと思われる。ToMEでは名前こそ残っているものの、種族が違うので基本的に別人である。


臆病者リンスウィンド(人間) Rincewind the Chicken
 リンスウィンドはプラチェット『ディスクワールド』シリーズ連作(→観光客)に登場する主人公というより狂言回し的な魔法使いである。ひとつだけ強力な呪文を身につけているが、そのせいで他の呪文が覚えられず、普段は何も呪文が使えない。ひたすら毎度トラブルに巻き込まれる役回りである。前記ラストリンのパロディか、というコメントがtables.cの翻訳ソースにあるが、特にそういうことはない。


美しきエルベレス(ハイエルフ) Elbereth the Beauty
 こんな名まで入っている。エルベレスはトールキンの神性の名で、ハイエルフならなおのこと、本名にもニックネームにも使う不遜なことをするとは思えない。店主名の適当さが伺える。



・防具屋

一つ目ヴェグナー(サイクロプス) Vegnar One-eye
 おそらく隻眼のリッチ神、エンペラー・リッチ『ヴェクナ』(→用語集参照)の適当なもじり。


鍛冶屋のウィーランド(ドワーフ) Wieland the Smith
 おそらく欧州伝説にあまねく登場するドワーフ鍛冶師、ウェランド Weland (ヴェルンド)の適当な綴り替え。



・寺院

賢者アタール(人間) Atal the Wise
 H.P.ラヴクラフトのドリームランドを舞台にした数々の物語に登場する、魔道士バルザイの弟子でみずからも賢人となる「アタル」から取られた可能性があるが、偶然の可能性も高い。



・魔法店

偉大なるブガービイ(ノーム) Buggerby the Great
 D&DシリーズのGreyhawk世界の大魔術師集団<八者の円>のひとり、大いなるビッグバイ(Bigby the Great)のもじり(名前のみ)である可能性がある。


ファレブリンボール(ハイエルフ) Falebrimbor
 トールキン等に直接にこの名はないが、ファレブリンボールは「泡の掌」という意味になる。


イェンダーの魔法使い(人間) The Wizard of Yendor
 もはや説明するまでもない。イェンダーという語自体は初代Rogueの「イェンダーの魔除け」に由来するが、詳細は不明とされる(明らかに人名"Rodney"の逆つづりだが、Rogue開発スタッフにその名はない。友人か教師から採られたのかもしれない)。RodneyはNetHackではこの魔法使い自身のニックネームとしても使われる。
 NetHackから登場するThe Wizard of Yendorは「エンダーの魔女団 Witches of Endor」のもじりとされ、ここからはYendorは地名ないし部族名という設定になっているのではないか、とも推測されている。しかしこれはNetHackになってから登場した「Wizard of -」にしか適用できないものなので、元のRogueのAmulet of Yendorの由来は謎のままである。



・ブラックマーケット

公正なる(?)トッピ(エルフ) Topi the Fair(?)
 それはひょっとしてTY - more


ガリー・ギガズ(ハーフトロル) Gary Gygaz
 D&D系のデザイナー、ゲイリー・ガイギャックス(Gary Gygax)のもじりと思われるが、Greyhawk世界にはガイギャックスをパロディ化した魔法使・半神に、Xagygと、さらに読みは同じで文字を変えたZagygという綴りがある。ここでは、後者の方のアナグラムを元に戻したもののようである。



・本屋

ランドルフ・カーター(人間) Randolf Carter
 クトゥルフ神話ファンには説明するまでもない。H.P.ラヴクラフトの多くの作品で、恐怖体験をしたり、ドリームランド(夢から行ける幻想世界)で冒険したりする人物。


浅井墓男(ゾンビ) Shallowgrave
 特に元ネタがあるとは思えないが、和Zこと板倉氏によると、水木しげる風に訳したということである。シャロウグレイブというとマーヴィン・ピーク『ゴーメンガースト』じみた名にも思える。



・各施設

オティック(人間) 宿屋
 [Z]以降は他にもAD&D小説『ドラゴンランス』シリーズの要素が多いことから、このオティックもこのシリーズに登場する宿屋の親父、オティック・サンダールから採られていると思われる。最初のシリーズの主人公らの根拠地である宿屋・酒場『憩いのわが家亭』の親父で、のちに引退して、この店は主人公一行の戦士キャラモンとティカ(元はこの店の給仕)に譲る。
 [Z]や[変]では、オティックの宿屋の名は「白馬亭」であり、「憩いのわが家亭」ではないため、名前だけが採られた別人の可能性が高い。


アスティヌス(人間?) 図書館
 『ドラゴンランス』シリーズに登場する「パランサス大図書館」の館主で、老いることなく、同作品世界(惑星クリン)で起こることをすべて見ることができ、「年代記−クリンの歴史」という歴史書にすべて記録し続けている。惑星クリンの中立の主神である記録と書物の神ギレアンのアヴァター(化身)ともいわれているがルールの版によっても異なる。同シリーズのイラストでは、名前のイメージ通り古代ローマ政治家のような風貌と服装をしているが、*bandで「人間?」となっているのは、AD&Dの資料(Tales of the Lance)のデータでも種族欄が'Human?'だが、見掛けが人間だが明らかに人間ではないからであろう。


クリサニア(人間) 生命魔術の塔
 やはり『ドラゴンランス』シリーズに登場する女性聖職者。良家の出でエリートの将来を嘱望された聖職者だが、およそエリートと聖職者の嫌な部分だけ凝縮されたような性格をしており、上述したレイストリンと恋愛だか何かの勘違いだかよくわからないやりとりを続けるのが、シリーズのメインストーリーのうち一部分の本筋となっている。


バラク(人間) 戦士の集会所
 バラクという戦士は、*bandが[V]以来細かい引用をしている『ベルガリアード』シリーズの主要メンバーとして登場するが、まったくの偶然である可能性も高い。







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