Pool of Radiance小説版の3人の主人公(シャル、タール、レン)のうちひとりで、レンジャー/シーフのデュアルクラスキャラである。この訳語は小説版邦訳のもので、原語ではRen o' the Bladeである。"o' the Blade"とは、ちょっとは名の知れた剣侠レン、といったニュアンスがこもっているが、NWN1のPoRモジュールのヘンチマンとしては、「刃のレン」と直訳されている。
PoRのPCゲーム(GoldBox)版パッケージ、小説版の表紙、FRC1モジュール(Ruins of Adventure)のカバーに使われている画像の、このゲームの顔ともいうべき「炎を吐くドラゴン」も「長剣と鎖帷子の戦士」も、ゲーム中には一切登場しない、というのは数々のゲーマーが言及する点である。
前者についてはその通りと言う他ない。PoRラストにはブロンズ・ドラゴン(スロッサール)が登場するが、青銅竜のブレスは電撃とガスで、直線状の火炎を吐くドラゴンは登場しない。なお当時のAD&D1stのMM1でのモンスターイラストは知られている通り非常に粗く、この画像のドラゴンと似ているようには見えないが、そもそも参考になる精度とは思えない。
ところが、後者については、この戦士は現在ではレンだということになっているらしい。この設定が少なくとも当初は存在しなかった、後付けであることは確実である。PC版も小説版もFRC1も最初からこの表紙だが、小説版の主人公3人はPCゲームには登場しないし、FRC1モジュールのNPCやサンプルキャラの類の中にも入っていない(ただし、後のNWN1/2等の再現モジュールでは旅仲間として定番となっている)。FRC1: Ruins of AdventureのストックNPC(基本的にモブキャラ用)にはRenという名の人間のNPCはいるが、ウィザードでありおそらく別人である(なお、ストックNPCにはハーフオークのアサシンにクォレルという小説版に登場した人物と同名のものがいるが、性別が異なる。ストックNPCは"He"となっており男性である)。FRC1等より後のPoR小説版でのレンは、もっぱら盗賊としての装備と能力で、長剣や鎖帷子を実際に使う場面はない。ラストで野伏の方に戻ることが本人の口から語られるのみである。
しかし、続編のひとつの小説版Pools of Darknessではレンがほぼ単独主人公となっているが、レンは野伏として活躍し、両手剣を使うなど、この時点ではすでにこの画像とも整合性がとられている。
赤箱やDungeon Hack、DQ1のパッケージなどに現れる映像モチーフ、竜に立ち向かってこちらには背を向けている(その猪突さが際立つ)勇者の姿に対して、このPoR表紙の戦士は目線こそ竜に流しつつ相当にカメラを意識したポーズをとっており、したたかであることがわかる。
小説版でのレンのプロファイルとしては、当初レンジャーから転身しソード・コーストの大都市ウォーターディープで盗賊を働いていたが、ギルドマスターと対立した報復で恋人の盗賊を殺され(このあたりランクマーなどを思わせるが、ピカレスクにはありふれており、NWN1OCのアーリン・ゲンドなどロマンスキャラの遍歴には似たようなものがよくあるパターンである)フラン市に流れ着く(後で、恋人の暗殺はアイオーン石を奪還しようとしたPoRのボスの仕業と判明する)。野伏の屈強な肉体(198cm)と容姿が目立たないよう、冴えない給仕を装っている。Pools of Darknessの時点では野伏に戻っているが、さらに、3.0e設定年と同年の1372DRを舞台とした続編Pool of Twilight(未訳)では、年老いて登場し、冒頭で死亡して、娘の野伏、及び、タールとシャルの息子のパラディンに世代交代するという典型パターンとなる。
ある程度まとまったシリーズに通して登場していることと、活躍時代が長めだったことで、結果的にPoR主人公3人の中では、FRキャラでもわりと有名な人物のひとりとなっているようである。