レルムの人物といっても『ミストラに選ばれし者』連中のことなどは、他のサイトにいくらでも書いてあるであろうし、そんなやつらのことをわざわざ話す気などとても起こらない。
 ここでは、おそらく日本のサイトでは取り上げる者など誰もいないであろう人物らについて述べていく。


○エレイス・クロールノバー

 NWN1-OCの第2章のサブクエスト依頼人のエルフ。NWN1内では専用ポートレートさえなく、会話場面では一般画像のうちのひとつ(やさぐれ白髪エルフ)が使われているだけだが、ゲーム内の3Dモデルはとても一般的とは言い難い頭の形状をしているので非常に目立つ。これはエレイスの元画像の、仗助(仗世文)やジョルノにすらひけをとらない珍妙な髪型をある程度実際に再現したものである。仗世文の頭を見た吉良ホリイさんではないが、筆者はこのエレイスの頭を「帽子」だとずっと信じており、地毛だと気付くのに15年くらいかかった。NWN2wikiでは、どういうわけか
「デュエリスト」の画像に使われているが、これは後述する。


 エレイスはFR世界の小説(未訳)のうちいくつかに登場し、英語圏ではわりかし有名なFRの人物であり、ウォーターディープ市で名高い悪の魔法戦士である。
 プロファイルは、ほぼNWN1-OCの依頼の会話の中で語られる通りで、特に付け加えることはない。すなわち、ソード・コーストから遥か西に浮かぶ、トールキンの不死の国のような(この地図の西端)エルフ本国「エヴァーミート島」において、もとはエレイスは名家の子息だったのだが、伝家のムーンエルフの魔剣ムーンブレードに拒絶され、継承者となることができなかった。
 (ムーンブレードは、『バルダーズゲート1』で糸色望エルフのハンが持っているのと同類の剣である。すなわち、ハンは外見と性格からは想像もつかないが、ムーンブレードが伝わっているほどの家柄であり、さらにムーンブレード自身から継承者として認められ揮うことができるほどの、ひとかどの人物なのである。ムーンブレードは5版では基本ルールのDMGのインテリジェント・マジックアイテム説明にも追加されており、アーティファクトではないが、WGのブラックレイザー等と同等のカテゴリの品である。)
 エレイスはソード・コーストの大都市ウォーターディープに流れ着き、悪の冒険者として名をなすが、長年を経てエヴァーミート島に帰りたいと思っている。悪事を繰り返した自分には戻る(戻っても定住する)資格は望めないが、娘(アザーリア・クロールノバー、1372DRの時点で8歳、既に故人のウォーターディープのサンエルフとの間の娘)には故郷を見せたいと思っている。ムーンブレードは娘に献身するエレイスに対してはしばしば力を貸し、エレイスは娘がこのムーンブレードの(自分と違ってまともな)継承者となれるよう願っているらしい。上記のハンを見る限り、継承者とはそんなに大層なものなのかと思うところだがさておく。
 NWN1のクエストでは、エヴァーミート島に帰るのに必要な(通行のための)アイテムの収集を依頼してくることになる。


 しかし、NWN1でのエレイスの依頼内容は、強奪だのなんだの結局悪事のたぐいであり、一体ムーンブレードに見直されたりエヴァーミートに帰るには罪深すぎるという自戒は何の役にも立っていないのだろうかと思わせる。どうも本気で改心しているというよりは、娘を育てるためには自分はこれ以上穢れようが手段を選ばないつもりらしい。(舞台裏の設定事情について言えば、早い話が、すでに「悪漢」が定着しているエレイスのイメージに合わせて、NWN1のイベントが組まれているだけだと思われる。)
 また、1372DR(3.0eFRCS)の時点で12lv(Ftr3/Wiz9)であり、実はプレイヤーキャラ(2章の時点で8-11lv程度)と能力にはあまり差がない。つまり、プレイヤーに依頼してくる内容は、エレイスにとっても「自分の力で解決するのに適切な難易度のクエスト」なのだから、プレイヤーに依頼せずに自分でやれよと思うところであるが(FR世界では、歯が立たない困難な問題は他者に依頼するのは勿論だが、容易すぎて時間を他に費やした方がよい問題も他者にクエストとして「外注」する。これがFRにあらゆるlv域のクエストが溢れ、冒険者が引く手あまたで社会的評価が極めて高い理由である)何かエレイス自身の時間が足りない等の他の問題があるのだろう。3.0e FRCSには、このまま娘を残して死ぬような状況を避けるため、かつてのような危険は避けて他の冒険者を雇うことが以前よりも増えているともある。


 エレイスのキャラクターデータは、前述のように3.0e FRCSにあるが(まだ無理矢理AD&D2ndからコンバートした性質が残っている3.0eデータにはよくあることだが)3.0eかつ各種のオプションルールも考慮されていないことを念頭に入れたとしても、髪型と同じくらい珍妙なデータになっている。
 せっかくデュエリストの画像に使われているし、いかにも軽戦士らしいのでNWN2のデータでデュエリストに組み直せばと思うところだが、これは結構骨が折れる。まず、上の画像で持っているのはデュエリストのレイピアに見えるが、データ上はロングソードである(これは何故か3.0eの時代にはよくあった。ロングソードがレイピアにしか見えない細身の画像で、一方、逆にデータ上はレイピアのはずの武器が画像ではシミターかサーベルに見えるというのが少なくない)。実のところ、ムーンブレードもロングソードなので、エレイスはロングソードの技能を持つのが妥当である。(なお、AD&Dではウィザードがロングソードを使えないので、BG1のハンのムーンブレードは種別だけ「ダガー」にすることで所持可能に設定されている。)3.0e FRCSのデータではエレイスは二刀流の逆手でダガーを使うために武器の妙技特技も持っており、一応デュエリストの前提のひとつは満たすのだが、かなり非効率な習得である。
 Ftr3/Wiz9の中にデュエリストの必要技能特技を詰め込もうにも、Wizをエルドリッチナイト等に置き換えるのがやっとで、なかなかデュエリストなどに手を伸ばしている暇はない。デュエリストのAC(スワッシュバックラーの命中率もだが)は鎧・盾がない状態でInt修正が加算されるので、秘術系魔法戦士との相性は良いのだが、10lv前後でそうなんでもかんでも上げるというわけにもいかない。

 NWN1-OCの2章のNPCとしてのエレイスのデータをエディタで見ると、DR1372時点のWiz9/Ftr3ではなく、なぜか「Wiz11/Ftr3」になっている。NWN1では脅威度とレベルの計算がやや3.0eデフォルトと異なっているため、脅威度は「11」である。しかし、Wizが11lvにもかかわらず、本来使用可能なウィザード呪文レベル6どころか、なぜか呪文レベル7の呪文を準備していたりする。アイテムもロングソードではなくノーマルのショートソードなど適当である。おそらく、あまりデータが使用されることも想定されていないので、他のNPCデータをコピーしたなどで適当に作られていると思われる。また、ヘンチマン(コンパニオン)のリヌのデータなどもそうだが、3.0eのシステムと辻褄の合わないデータ(特にシナリオ都合でそうする必要がある等ではなく)になっていることはNWN1/2のOCではよくあることである。



〇ウォーターディープのナイフ投げレン

 Pool of Radiance小説版の3人の主人公(シャル、タール、レン)のうちひとりで、レンジャー/シーフのデュアルクラスキャラである。この訳語は小説版邦訳のもので、原語ではRen o' the Bladeである。"o' the Blade"とは、ちょっとは名の知れた剣侠レン、といったニュアンスがこもっているが、NWN1のPoRモジュールのヘンチマンとしては、「刃のレン」と直訳されている。

 PoRのPCゲーム(GoldBox)版パッケージ、小説版の表紙、FRC1モジュール(Ruins of Adventure)のカバーに使われている画像の、このゲームの顔ともいうべき「炎を吐くドラゴン」も「長剣と鎖帷子の戦士」も、ゲーム中には一切登場しない、というのは数々のゲーマーが言及する点である。
 前者についてはその通りと言う他ない。PoRラストにはブロンズ・ドラゴン(スロッサール)が登場するが、青銅竜のブレスは電撃とガスで、直線状の火炎を吐くドラゴンは登場しない。なお当時のAD&D1stのMM1でのモンスターイラストは知られている通り非常に粗く、この画像のドラゴンと似ているようには見えないが、そもそも参考になる精度とは思えない。
 ところが、後者については、この戦士は現在ではレンだということになっているらしい。この設定が少なくとも当初は存在しなかった、後付けであることは確実である。PC版も小説版もFRC1も最初からこの表紙だが、小説版の主人公3人はPCゲームには登場しないし、FRC1モジュールのNPCやサンプルキャラの類の中にも入っていない(ただし、後のNWN1/2等の再現モジュールでは旅仲間として定番となっている)。FRC1: Ruins of AdventureのストックNPC(基本的にモブキャラ用)にはRenという名の人間のNPCはいるが、ウィザードでありおそらく別人である(なお、ストックNPCにはハーフオークのアサシンにクォレルという小説版に登場した人物と同名のものがいるが、性別が異なる。ストックNPCは"He"となっており男性である)。FRC1等より後のPoR小説版でのレンは、もっぱら盗賊としての装備と能力で、長剣や鎖帷子を実際に使う場面はない。ラストで野伏の方に戻ることが本人の口から語られるのみである。
 しかし、続編のひとつの小説版Pools of Darknessではレンがほぼ単独主人公となっているが、レンは野伏として活躍し、両手剣を使うなど、この時点ではすでにこの画像とも整合性がとられている。
 赤箱やDungeon Hack、DQ1のパッケージなどに現れる映像モチーフ、竜に立ち向かってこちらには背を向けている(その猪突さが際立つ)勇者の姿に対して、このPoR表紙の戦士は目線こそ竜に流しつつ相当にカメラを意識したポーズをとっており、したたかであることがわかる。

 小説版でのレンのプロファイルとしては、当初レンジャーから転身しソード・コーストの大都市ウォーターディープで盗賊を働いていたが、ギルドマスターと対立した報復で恋人の盗賊を殺され(このあたりランクマーなどを思わせるが、ピカレスクにはありふれており、NWN1OCのアーリン・ゲンドなどロマンスキャラの遍歴には似たようなものがよくあるパターンである)フラン市に流れ着く(後で、恋人の暗殺はアイオーン石を奪還しようとしたPoRのボスの仕業と判明する)。野伏の屈強な肉体(198cm)と容姿が目立たないよう、冴えない給仕を装っている。Pools of Darknessの時点では野伏に戻っているが、さらに、3.0e設定年と同年の1372DRを舞台とした続編Pool of Twilight(未訳)では、年老いて登場し、冒頭で死亡して、娘の野伏、及び、タールとシャルの息子のパラディンに世代交代するという典型パターンとなる。
 ある程度まとまったシリーズに通して登場していることと、活躍時代が長めだったことで、結果的にPoR主人公3人の中では、FRキャラでもわりと有名な人物のひとりとなっているようである。

 キャラデータはAD&D2nd後期のHeroes Lorebookに載っているものがある。Rng15lv/Thi10lv、能力値は18(08)/17/17/16/14/17など相当とんでもないものである(ちなみに小説版邦訳の巻末に載っていたものは某関西の大御所の何を思ったか単なる想像なので全く異なる点は注意)。小説版で強力さが描写されたアイオーン石やレフト・ライトのダガー+3もあるが、ただし小説版は(他のアイテムもそうだが)誇張ぎみで、データ上は上記レベル相応から比べて極端に強力なアイテム等を持っているわけでもない。
 このレベル構成は、実は(2ndでの)アルテミス・エントレリ(Ftr15lv/Thi11lv)と極めて近い。戦うとどうなるかだが、防御面はレンが低くエントレリがかなり高い一方で、攻撃面はジョースター一族すらしのぐ体躯を持つレンが相当高く、つまりどちらも相手の攻撃を充分しのぎきれず、おそらく先に見つけて攻撃した方がどちらかで(しかも両方隠密も高い)大幅に展開が変わるというゲッターロボとライディーンの激突のような極めてシテオクな事態になると予測される。
 なお、エントレリやドリッズトのような「重戦士クラスと軽戦士クラスのマルチクラスだが、戦闘スタイルは軽戦士一本」とは異なり、レンは「Rogとしてはナイフを使う軽戦士、Rngとしては両手剣と重装備の重戦士」というキャラだが、これは典型的なAD&D1st当時でのみ(PoRもPoDも時代背景がそうだが)再現できた類型である。2ndでもぎりぎり再現できないでもないが、NWN1/2のような3.Xeでは、Rngが重戦士類型とはかけ離れており難しい。
 Heroes Lorebookに載っているイラストはかなり年配である。これはAD&D2ndのFRCSが一応は1367DRを設定年代としており、1340DRのPoRからはかなり年数が経っているためである。NWN2版PoRのマニュアルなど、こちらと思われるレンの姿が採られていることも多い。







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