SoZもろもろ


○概要


 Storm of ZehirはNWN2の2番目の拡張パッケージ(OCを入れるとNWN2の3本目)である。日本語化ページでも触れたが、1番目の拡張(MotB)よりも先にほぼ全編が日本語化されており、日本語でプレイが可能である。
 このパッケージでは、キャラクタークラス、複数人パーティー作成・編成等のゲームシステムが追加されているが、以下は付属のモジュール(シナリオ)についてである。


 古典的なRPG、特にいわゆる洋ゲーには、非常に自由度が高いものが多い。キャラメイクやパーティー編成を自由に行えるのは勿論、広大なフィールドを自由に行動し、自由な順番で攻略箇所を見つけていくものが少なくない。
 しかし、Gold Boxなどの最初期を除くと、90年代以降は、いわゆるD&Dゲームであっても、有名なものでもこれほど自由度の高いものは思ったより少ない。例えば、NWN1の公式モジュール3本やNWN2の最初の2本は、キャラメイクできるのは主人公一人だけで、シナリオも一部の枝道があるとはいえ一方向にストーリーを進める形のものである。BG2も流れは同様である。BG1はかなり進行の自由度が高く、広大なフィールドを自由にイベント求めて散策できるが、キャラメイクできるのは(少なくとも想定されているのは)やはり主人公一人のみである。一方、IWD1,2では、このようなNWN1やBGに対してパーティー全体のキャラメイクが可能で自由に編成できることがよく売りにされるが、シナリオはBG以上に一本道の連戦であり、全体として自由度の高いゲームとは言えない。
 これに対し、このSoZは全員を自分でキャラメイクしたパーティーを編成し、広大なフィールドを自由に探索し、配置されたダンジョンやマップ上にランダムで出現する敵や罠・宝物を捜索し自由に攻略していく、「自由度」の高さではD&Dゲーム中でも特に高い、ゲームシステムを味わうD&D系には待望といえるものである。


 D&Dシリーズが高レベル(例えばCD&Dの青〜緑箱など)では、城塞・領地の維持や、経営・通商を行うルールになっている、という話は、割とよく知られていると思われる。
 しかし、実際にそういった要素のプレイングを行った具体的な話は古いゲーマーからもなかなか聞けるものではない(「赤箱D&Dのプレイ経験がある」と称する自称ベテランでも、青箱以降の内容は一切知らないだとか、ソードワールド以後の「なりきりしながら物語を作る『TRPG』」としてプレイしたことしかないだとか、D&Dも『TRPG』なのだからそういうゲームだ、と信じている者は少なくない)。まして、それらの部分が著名なCRPGで体験できたという例もほとんどない。例えば、CD&DゲームのStronghold(邦訳『D&D ストロングホールド 皇帝の要塞』)などがあるが、これはリアルタイムストラテジーそのもののゲームで、逆説的なのだが、「あくまで『RPG』の中の一要素として、経営・通商を行う」というD&D系の経営要素を知る助けにはなりにくい(あえて例を挙げると、一応、BG2のNPCナリアのイベントで城塞を経営する一連の流れ、またNWN2OC後半のクロスロード・キープの経営は限定的だがいずれも領地運営要素が入っている)。
 これらに対しSoZは、当初から通商要素が入り、貿易路の整備・開通をはじめ、危険の排除、資材源の発見など、RPGの戦闘・探索要素と深く融合している。商社を支援する後半になると、やがてソード・コースト北全体の経済を左右するようになっていく。D&D系において伝説級神話級のクラスやレベルは能力だけでなく社会地位や影響力も示しているものだが、それを実感できる例のひとつとなっている。


 さて、一見そんな数々の魅力を持つように見えるSoZであるが、肝心の実装が、


・屋外を自由探索するオーバーランドマップは非常に古臭く、テンポが悪い。シンボルエンカウントのマップをひたすらノロノロと移動する。まるでルーラのないDQ2のようで、後半に入ると広域移動ポータルを開発できたりするが、1か所から各地に飛べるが戻って来られないという、ちょうどDQ1、2とは逆の仕組み(無論、DQより不便)となる。こういうゲームもひとつの様式だが、ゲーマーがそんな様式を許容するレトロゲーマーばかりというわけにはいかない。

・OCのクロスロードキープ経営にも見られた側面だが、通商システムの練り込みが悪い。クロスロードキープは一応時間制限があったが、こちらは特に制限がなく、放置しているだけで延々と利益が上がり、湯水のような利益に使い道もなく、終盤では通商システム自体に何の意味もなくなる。

・ストーリーが薄いことは諸情報の予備知識の上でプレイしたとしても、それにしても本当に薄い。OC(本編付属)との関連について色々と仕掛けられているだけに、余計に薄い。


 ことに直線的なストーリー性の高さで好評を博したOCやMotBの後に出たこのSoZが酷評されたのも、よくわかる話である。特に日本では「NWN2はOCがコケた後にせっかくMotBで少しは持ち直したのがこのSoZが全部ぶち壊しにし、NWN2を終わらせる原因になった」などという評がいまだに流布されていることがある。
(当サイトの別記事で述べているWizardry6-8などの日本での扱われ方もそうだが、日本では洋ゲーについて、会社やシリーズが中途消滅した際、実際は様々な理由があるにも関わらず「後半のタイトルが駄作だった」「全く評価されなかった」「シリーズを終わらせた理由」と短絡的に決めつけられ、さらに詳細を知らない非洋ゲーマーによって、そのまま通念のごとく流布されることが非常に多い。)
 ちなみに日本のサイト等では、SoZに関する言及そのものが、上記の類の悪評数言以外にはほとんど見つからない。


 現地のNWNファンからの評といえば、公式(市販)モジュール全般に対する一般的な厳しすぎる立場やMotBとの不当な比較を除けば、評価する声も少なくない。BG1や初代PoRのようなレトロさ、最初に現れた・人々が当初求めたCRPGそのものの姿と呼ぶ声もある。オフィシャルキャンペーンや用語に関する解説などでも述べているのだが、OCやMotBの一直線なストーリーシナリオやJRPGな側面が肌に合わず、システムや自由な冒険を重視したSoZの方が楽しめたというユーザーも多い。
 なお、終盤にリソースが異常に余るのも、レトロゲームならそんなものかもしれない。Wiz#1-3や、日本のCRPGでも最初期の大ヒット作の『ザナドゥ』『ハイドライド2』等でも、終盤では金銭(や、いずれかのパラメータ)が使いきれないほどインフレして無意味になるのは、当時のこれらのプレイ経験があるゲーマーはよく覚えていると思われる。
 モジュール作成者の立場ではどうかというと、ユーザーモジュールでも、上記のように古さが指摘されているSoZのオーバーランドマップやそのゲームシステムを、自作モジュールにも用いている製作者は決して少なくない。もっとも、屋外マップそのものを別に新しく作ろうという声もあり、無条件に歓迎されているわけではないのは伺える。


 SoZは全体として、製作思想そのものは旧世代RPGの集大成的な意欲的なものなのだが、実装が伴わず、詰めもやたらと甘いという、いかにもNWN2というコンテンツ全体の縮図のような出来となっているといえる。
 これまで述べたようにBG1やPoRの自由度にひかれるプレイヤーにとっては、従来NWN1/2の公式付属、もといD&Dゲーム全体の中でも、群を抜いて魅力的な点を多く有するモジュールだが、細部の完成度が高くないことは、再三断っておく必要がある。



○SoZのキャラメイク 〜 編成

 SoZでは開始時4人のキャラクターを自由に作成し、パーティーを組む。SoZで作成すると、キャラクターはいずれも8000xp(レベル調整値0の基本種族では、4-5lvの中間)となる。
 余所で成長させてエクスポートしたキャラのインポートも可能である。ここで、キャンペーンを選択する際の説明には「この勇ましい冒険に出発するためのレベルは15以上です。」と書いてあるが、これはおそらく「5レベル」か、あるいはMotBの説明が紛れ込んだ誤記である。15lv以上という説明を読んで、間違ってOCをクリアしたキャラをインポートする人もいるが、SoZの各所に現れるシナリオの設定上、SoZのキャラはいずれもOC/MotBの主人公とは別人である(ただし、SoZ内にはOCに絡めた話題が多いので、プレイヤー自身はOCをクリアしておくことが望ましい)。SoZで完全新規の5lvキャラを作成するか、別のモジュールで5lv前後まで成長させたキャラをインポートするのがよい。
 なお、「(プレイヤー数は1人が推奨されます。)」という説明もあるが、これは オンラインセッションのマルチプレイでなく、シングルプレイという意味である。そのプレイヤーが操る人数、作成できる(インポートできる)キャラクターは複数人である。


 パーティーは開始時の船の乗客名簿の他、各地の宿屋のほとんどにある「宿帳」を開けばいつでもキャラ作成やメンバー入れ替え(localvaultとの間のインポート、エクスポート)が可能である。いわば、宿屋が全部「ルイーダの酒場」として機能する。


 パーティー編成について、海外のSoZ攻略サイトには「基本クラス4種(ファイター、クレリック、ローグ、ウィザード)のバランスパーティーを強く推奨」と書いてあったりすることも多い。(例:>nwn2wiki)これは、単にオーソドックスを奨めるという以外に、SoZは戦闘が多く、ゲームシステム(技能等)依存性が高いため、標準的でそつのない編成が推奨される、というのも理由のひとつのようである。
 が、実際は、このモジュールは無限湧きする敵に対する稼ぎなどの手段もあるためもあって、そこまで厳しいものではない。あるクラスや戦術の使い手がアイテムの出などで大幅に優遇されている(例えば、NWN1のSoUでのパラディンのように)ということもない。特にOC経験後で、ある程度システムに慣れているのであれば、折角選択肢の多いNWN2で、自由にキャラメイクができるモジュールなので、色々な組合わせを考えてよい。ただし、最低限のパーティーバランスは必要であり、「戦士・盗賊・聖職者・魔法使」の4種の役割は、パーティー内で一通り揃うようにしておいた方がよい。

 自作成キャラ4人に加えて、開始まもなくドルイド(頼もしい恐竜のアニマルコンパニオン付属)とレンジャー、もうしばらくしてスワッシュバックラーのNPCのいずれかが仲間にできるようになるので、それを見越して編成するのも手である。話が進むにつれてさらに多数のコンパニオンが登場するが、当面の進行としてはかれら3人を念頭におくところである。
 なお、後述するが、SoZのNPCコンパニオンらは、冒険中にもときどき喋り、イベントによって選択肢が増えたりするので決して味気ないわけではないが、OCやMotBのような専用のシナリオやメインストーリーへの深い関わりなどは特になく、NPCが物足りないとして、(これもOCやBG2を求めたファンからの)SoZ酷評の理由のひとつになっていることが多い。

 また、これも後述するが、オーバーランドマップでの技能の利便性から、4人のうち最初にモジュール開始時に作成またはインポートするメインキャラ(先頭キャラ)を「盗賊技能」所有者にしておいた方がよい。
 SoZで追加されたこのNWN2の自作パーティー編成システムは、先頭以外のパーティーメンバーはいつでも宿帳などで入れ替えできるが、先頭のキャラ(モジュール開始時に選択又は作成したキャラ)だけは入れ替えることはできない。これはこのNWN2の編成システムが、結局はOCの「主人公+コンパニオン」のシステムを拡張して作られたにすぎないためと思われる。そのため、パーティー作成可能キャンペーンには共通することであるが、開始時の(SoZでは斥候系推奨の)キャラを作る際は、モジュール終了まで入れ替えなどができない点をよく考えて作成した方がよい。


 特記すべき点として、SoZではアイテムクラフトについて、OC, MotBとは全く別のシステムが採用されている(OCのクラフトが煩雑すぎたためとも考えられる)。詳細は機会があれば別の項目を設けるが、OCでは「クラフトするキャラが呪文や作成特技を全部持っている必要があった」のに対して、SoZのクラフトでは「パーティー内のだれか一人が持っていれば自動的に作成される」システムとなっている。そのため、誰に製作技能やクラフト特技を持たせるかはOCほど厳密に考えなくてよい。もっとも、SoZは強力なアイテムの必要要素(OCとは異なるレシピ)が非常に入手しにくく、クラフトが行いにくいという側面もある。



○SoZのキャラメイク 〜 オーバーランドマップとの相性

 SoZのオーバーランドマップでは、先頭キャラの技能判定を行う機会が多い。マップ上で、〈視認〉〈生存〉〈隠れ身〉といった技能の判定が行われ、敵との遭遇、罠や宝物の発見判定、敵を先に発見できるか、見つからずに遭遇を回避できるか等に影響する。
 そのため、先頭キャラ、すなわちモジュール開始と同時に最初に作成又は選択するキャラは、斥候技能の担当者(ローグやレンジャー)にしておくのが良い。オーバーランドマップに出るたびに先頭キャラを切り替えてもよいが、おそらく最初から先頭を斥候技能持ちにしておくのが手っ取り早い。
 特に〈生存〉技能が移動速度に影響し、後半から習得できる幾つかの「チームワーク特技」にも影響するなど、オーバーランドでは割と重要で、できればレンジャーを先頭にしたいところだが、4人キャラメイクではそうも言っていられない面もあるだろう。ローグに低lvレンジャーを兼任させる手もある。
 また、普段の移動を優先する際は隠密等が高いキャラを戦闘にしておき、わざと敵に気付かれたい時(稼ぎ目的など)は技能の低いキャラを先頭に切り替えるなどといった運用も可能である。


 もうひとつ留意しておくべき点として、オーバーランドマップ上ではバフ(強化呪文)が頼りにならないことが挙げられる。持続時間がかなり長い呪文、例えばマジックサークルアゲインストイービルやプロテクションフロムエレメントといった、NWN1では実質1回の探索中はずっと有効であるような強化呪文でも、移動中に解除されてしまっている。遭遇直後に施すことも可能だが、1キャラ1−2呪文がせいぜいである。3.Xe系、特にNWNシリーズでは「バフがあればクレリックは戦士系以上の前衛能力がある」と言われるが、SoZのオーバーランド上ではそれを当てにすることはできない。基本能力の高さが物を言う(クレリックが要らないという意味ではない。特にオーバーランド以外にダンジョンを探索することもあるので、従来のNWNシリーズの基本的な能力は必要である)。では特殊能力に頼らない、継戦能力が高いキャラが圧倒的有利かというとそうでもない。OCやBGシリーズ等に比べても(また、このマップを採用しているモジュール中でもSoZは特に)休息制限が少なく、屋外でわりと安全に休息できたりするので、回復が容易だからである。要は、BGシリーズ等のような緻密な戦略戦術を当てにできない局面が多い。



〇SoZのNPC(Cohort)

 SoZではGoldBox(初代PoRなど)やIWDのように、自分でキャラメイクしたキャラで4人までのパーティーが組めるが、(これもGoldBoxのように)モジュール内で準備された仲間キャラも入る枠が別にあり、一度仲間にすればOC/MotBのコンパニオン同様に出し入れ(参戦・離脱)できるようになっている。この仲間(Cohort)の個々キャラについてはNPC紹介のページの方に譲る。

 前述したが、SoZ全般に対して最もよく聞かれる批判のひとつに、「NPCの魅力が無い」ことが挙げられていることが多い。それまでのD&Dゲーム(BG, NWNシリーズ)のいずれも魅力的な旅仲間NPCを描いてきたことと比較され、しかも、一方でIWDなどの旅仲間NPCが全く居ない作品に比してすら、批判されているように思われる。
 実のところSoZでは、各キャラの背景等は用意されており、参加時等に言及されることはあるが、それに関わるイベント等は全く無いか、あっても非常に素っ気ないことが多い。

 例えば、セプティムンドというCohortがおり、SoZの拡張システムで追加されたプレステージクラスである、ケレンヴォーのドゥームガイドである。とある都市で起こるアンデッド事件の解決に奔走し、彼自身の過去に関わることもわかる。しかし、そのクエストはダンジョンひとつ(しかもSoZおなじみの2LDKの微細ダンジョン)で、ほぼカンバセーションひとつである。そして、恒久的に名簿に加わるか、あるいはクエスト後は離脱してスポット参戦に終わるかは、そのクエスト終了時に、交渉系の技能が高いキャラで話しかけるか否か、ただそれだけで決まってしまう(NWN2をやりこんだファンでも、気づかずにスポット参戦のみのNPCだと思っていたという声は多い)。
 これがBG2やNWN2ならばもちろんのこと、BG1と比べてすらも、もっと話を広げられ、印象づけるようなエピソードがいくらでも作れたはずだと思える。SoZの売りの新クラスであるならなおさらである。すなわち、IWDと異なりわざわざ仲間NPCが登場するだけに、他のD&D系ゲームのNPCに比べて素っ気ないことは否めない。

 が、これも考えてみれば、SoZが大きく影響されている「オールドスタイルのCRPG」では、たとえシナリオ内で用意されているNPCであったとしても、この程度やそれ以下に素っ気ないことも少なくない。80年代のRPGは無論のこと、90年前後のD&Dゲームに至っても旧GoldBoxシリーズで参戦するNPCらも多分にそうであり、2000年代以降のD&Dゲームでは、ToEEなどのNPC仲間の扱いも思い出させる。
 また、BG1も思い出させるが、これらのCohortが移動中にふと漏らす地形への感想や、会話における選択場面において出るキャラ特有の選択肢などは、なにげに結構な量が用意されている。まるでDQ5や6のリメイク版で、ピピンやアモスといったストーリーの本筋には全く関わらないキャラが、リメイクで追加された会話(台詞)システムで大量に台詞が追加され強いキャラ性を発揮しているのも思い出させる。本筋に関わってくるような過剰な自己主張は無い一方で、「一緒に冒険している」と思わせるフレバーは加わっており、決して味気ないだけではない。

 ただし、幾つかのキャラデータのいいかげんな作り(特技習得のバグなど)からは、描写が薄いのはどうやら故意ではなく、いかにもスタッフが充分に時間をかけていない面が大きいことは多分に推測できる。このあたりもSoZのNPCの扱いが批判される理由となっているのだろう。



○ヴォロザンプ・ゲッダーム

 仮名でフルネームを書くとやたらと字面が濃い通称ヴォロである。BGシリーズのマニュアルでのエルミンスターとの会話がおなじみだが、肝心のBGのゲーム中ではBG1と2(ToB)の酒場で1回ずつ出るきりで、全く活躍しなかった。対して、このSoZでは、オープニング・エンディングの語りを含めて全編にわたって登場・活躍するので、FRの設定でもこのキャラに興味がある人はSoZは一見の価値がある。

 ヴォロはPnP版のゲームにおいて、特にAD&D時代から、レルムのワールドガイド類の「著者」という設定で名の出ているキャラで、FR世界の定番のNPCのひとりである。ハートランド(内陸)に関するガイドもあるが北方やソード・コーストの資料が多い。別の箇所で述べているネヴァーウィンターに関する当時の資料や、直接にバルダーズゲートに関するガイドもある。
 一方D&D5版の時代はAD&D2ndや3.Xeより100年以上後だが、インプリズンメントの呪文により囚われており、5版時代に復帰した旨がウォーターディープを舞台にした他のシナリオで語られている。

 BGマニュアルの訳での会話文の口調はガラの悪い風来坊風だが、このSoZ訳者の訳は(前記マニュアルの地の文に近い)優雅な文化人風になっており、こっちの方が数段うさんくさい。
 一方、D&D5版のPnP用資料、『ヴォーロのモンスター見聞録』のHJ社和訳でのキャラ付は、BGとNWN2の中間というあたりである。エルミンスターのコメントが入っているあたり、BGの方にやや近い。


 ユアンティがヒューマンの都市に潜入し、秘密の裏社会とでもいったものを形成して、麻薬や呪文の巻物を売ったり、商人を脅迫したり、王に影響を与えたりしているという噂もある。何の証拠もない話なので俺は信じていないが。

 (『ヴォーロのモンスター見聞録』 第1章:モンスター博物誌、ユアンティの項、本文外コラム)



 いや自分が体験してたろ。100年経てば忘れるのかあるいはSoZじゅうササニに骨抜きにされていて結局何も覚えていないのか。
 ヴォロは設定を見るといかにも旅行者=バードだが(誤ってバードだと説明されていることも多い。なお、FRには紛らわしい名のバードも別に居る)PnP用のデータ上はウィザード(マジックユーザー)である。これは、設定された頃のAD&D1st当初のバードが、2nd以降のような旅行者・風来坊・似非魔法使・ローグの一種ではなく、「ドルイドの秘義に通じた多才な賢人」という、根本的に別物のクラスであったからに他ならない。エド・グリーンウッドのキャラの中でもエルミンスターと並んで最も古いヴォロは、AD&D1stでのそういった意味でのバードではなく、当初からエルミンスターの関係者であり知識人という意味でのマジックユーザーだったのである。







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