B2は定番であるため、他のD&Dツールでもこのモジュールが作られた例は多く、例えばAD&D1stのFRUAのモジュール(DSN)登録サイトでもB2モジュールは複数登録されている。当然ながら、NWN1の方でも再現モジュールがあるが、皆が作りたがるのか、やたらめったらと数が多く、vaultで高評価で他サイトで推奨されているものだけでも10作近くある。また、D&D3.5eには、ToEE(Temple of Elemental Evil)という、サポートが打ち切られ続編も出なかったPCゲーム(これも全く別の名作T1-4モジュールをベースとしている)があるが、ユーザーによるfixやmodが多数作られ、(元来はシナリオ作成ツールなどではなかったにも関わらず)遂には本編のT1-4とは全く別にこのB2のシナリオをまるごと再現してしまったものがあった。
その中でもこのNWN2用モジュールは、wikipedia(en)及び(j)の
『国境の城塞』の項目からもリンクされており、再現物の定番となっているようである。
こういったごたくはあまり意味はないかもしれない。少なくともこのNWN2モジュールは、B2モジュールを非常にシンプルに移植している(なお、移植したのはNWN1の秀作モジュールHythamの作者でENoa4氏という、NWNでは有名な作者である)。あまり身構えたりB2の知識が必要だったり、逆にB2のPnPのプレイ知識が役立ったりするような局面は無い。
まずは最初に酒場とギルドで小クエストをこなすが、グループで挑戦することの多いPnP版と異なり、NWNでは開始時は一人なので、この過程で仲間(コンパニオン)を集めてパーティーを組むという流れである。城主から依頼があり、あとはCave of Chaos(渾沌の洞窟)と呼ばれるダンジョン群に潜り、クリーチャーと戦っていく。最終的にすべて掃討(ダンジョンのごとのボスを打倒。ジャーナルにボスごとにクリアの有無が表示される)すればよく、順番などは問わない。
複雑なサブクエストなどは(おそらくあえて)あまり設けられていない。ダンジョン内の仕掛け・謎なども特に無い(罠や鍵はローグが技能で解除できる類)。PnPでは敵・味方双方ともいろいろな戦術(工夫)を使うことも想定されているが、特にそれらも無い。ほとんどは渾沌の洞窟内のシンプルなダンジョンアタックである。
S2: White Plume Mountainモジュールについては、元のシナリオについても、ノベライズ版についても、このサイトでは何度か話題にしている。1979年のAD&D1stの初期モジュールのひとつであり、上のB2モジュールほどではないと思われるが、ファンがよく古典的な代表作として挙げるひとつで、リメイクや続編も作られている。5版のリメイクアドベンチャー集のTales from the Yawning Portalに再録され、そのHJ訳『大口亭綺譚』の和訳版も存在する。
3つのキーアイテム武器のうちのひとつである魔剣ブラックレイザーが、BG2に登場したり、ストームブリンガーのバリアントとしてファンタジー解説に挙げられたりするので、ブラックレイザーや、ひいてはこのシナリオ名がD&Dつながり以外でも単独で知られていることも多い。
この訓練場は、NWN1で定番だったHalls of Trainingと同じ形態で作ってあるものである。すなわち、レベル等を調整できるNPCがいる部屋や、商人がずらりと並んでいる巨大な部屋があるアレである。NWN1のプレイヤーならば勝手知ったるというところである。NWN2のクラフト施設なども揃っている。
腕試し用アリーナなどもある。レバーを押すと敵が出てきたり敵の強さを調整できたりする仕掛けがある。味方キャラとして待機コンパニオンにロード・ナッシャーやディーキンなどが用意されており、これらと共にアリーナの敵と戦ったりもできる等、実は単独でも割と遊べたりする。
これも上述のHall of Advanced Training同様の訓練場(キャラ能力調整)モジュールであるが、上記がNWN1の訓練場と同じタイプという意味で定番であるのに対して、こちらはNWN2独自の訓練場として定評があるひとつである。NWN2日本語wikiの貴重なmod紹介でも、訓練場モジュールとして「その1」に挙げられているのはこちらである。
The rationale of this whole series of modules is a fight to the finish.
この3部作シリーズ全体の要点は、死ぬまで戦うことに尽きる。
(Gary Gygax, G3: Hall of the Fire Giant King, 1978 / 『大口亭綺譚』, 2018)
コンバートやリメイク類の例によって、NWN2化の際にストーリードライブ等にアレンジされているのであれば非戦闘モジュール記事に追記するか独立記事にしようかと思っていたが、何のことはない戦闘モジュールのままだったので、こちらの記事に追加する。 NWN1版について述べているように、G1-3はAD&D1st用の最古(ガイギャックスはMM1とPHBとの間にG1を執筆したので、AD&D自体よりも古いと呼ばれる場合がある)PnP版モジュールのひとつである。後の版でも何度もリメイクされており、5版のリメイクアドベンチャー集のTales from the Yawning Portal(HJ和訳では『大口亭綺譚』)に「巨人族を討て」として収録されている。G1-3は続編モジュール群(D1-D3, Q1)に続くが、この5版リメイクでは特に続きはない。NWN1/2版をこのPnPアドベンチャーの予習復習に使うもよしである。
元のPnP版モジュールの人気を示すものとして、G3に登場しG1-3シリーズ全体のボスキャラ群でもある、炎巨人のスナール王や、ドラウの女神官エクラヴドラは、D&Dシリーズ全体の有名悪役となっている。特にスナール王は他ならぬ5版PHBの表紙であり、いまや超大型巨人ベルトルなんとか並のD&Dシリーズ全体の顔となる巨頭(巨顔)となっている(ただしPHBの表紙解説に書いてある名は「スナーリー王」で、なぜか大口亭綺譚のイラストや説明とはだいぶ違う。骸骨の兜をかぶったPHBのスナーリー王の方が、最初の1978年のG3モジュールの表紙に忠実であるが、シナリオ文中ではいずれも宝石のはまった鉄の冠である)。
エクラヴドラは3.0eではEpic Level Handbookにデータが収録され、グレイホーク世界の強NPCの悪役代表のようになっている。ダークエルフの女ボス(声:小原乃梨子)としてのロルス神官は、FR世界にはドリッズト物でおなじみベンレ一族や、HotUのヴァルシャレスなどの顔ぶれが並ぶが、WG世界にもひけをとらない大物がいるということである。断片的だが日本語で読める概略としては3.5eのFiendish Codex I(HJ和訳『魔物の書I』のアビスのデーモンウェブの説明の箇所にもある。同じガイギャックス作の小説「悪漢ゴード」シリーズにも登場する。エクラヴドラのデータは、初出のG3モジュールではClr10/Ftr10,3.0eのELHでのデータはClr23であるが、一方、上述の5版リメイクではモンスターマニュアル標準の「ドラウのロルスの女神官」データを使うようになっており、すなわちHD13, Clr10lvで脅威度は8である。NWN1/2は3.Xeだが、このNWN2版では初出時準拠に近く、3.0eほどは強くはない。
エクラヴドラの設定とも関連するのだが、このPnPのG3モジュール(及びNWN版)に登場するElder Elemental Eyeの寺院とは要は元素邪悪=さらに元を辿ればWG世界のタリズダンに関連する。
さてこのNWN2版だが、(PnP版のリメイクの幾つかが3本入りで売られているのと同様)G1-3まで3本がまとめてキャンペーンになっている。冒頭のDMルームで4人までの自作キャラをインポートするか、シナリオ設定のCohort(コンパニオン)を加入してパーティーを組むことができる(計7人まで)。
PnPやNWN1版では、「国が丘巨人に襲われているから助けてくれ」という単にそのまんまの導入であったが、NWN2版ではしばらく導入ストーリー(といってもこの冒頭部でもやることは連戦だが)や、続編も見越した状況説明(都を覆う巨大暗黒球など)が追加されている。PnPやNWN1版とは異なり、グレイホーク世界設定の背景が多数言及されている。
特に冒頭部は、同じ作者によるNWN2用コンバートモジュール、A1-4: Scourge of the Slave Lordsの続編を意識して作られており、当初はA1-4モジュールの終了後のような背景で進む。シナリオ側のCohortも同じキャラが用意されている。無論、別キャラを用いても問題はなく、予備知識も特に必要ない。
なお、この冒頭部は、トリガーイベント(ある領域に踏み入った際にNPCが駆け寄ってきて話しかけてくるイベント。NWN2OCやBGシリーズなどでよく不具合が発生する)が多く、また都のエリアは巨大暗黒球のせいか、ロードに時間がかかったりエリア移動で落ちることがたまにあり、安定性には若干不安がある(こまめにクイックセーブしていれば問題ない程度ではある。できるだけ店などの小さなエリアでセーブした方がよい)。