アイテムに関する小ネタ




〇アングルヴァダル(フレイム・タン)

 フレイムタンについてはいろんなところで述べているので野暮なのだが、NWN2のこの武器にも留意する点が沢山ある。
 NWN2のこの武器は、結論から言えば「強化ボーナス+2, 火炎ダメージ+1d6」以外の能力は持っていない。これは出典であるAD&D1stや、2ndのFlame TongueのDMG記載のエゴ属性にも、3.Xeのフレイムタン(+1フレイミングバースト, 火炎マッシブクリティカル, 3.5eではスコーチングレイ相当擬呪)にも該当せず、単なる「フレイミングつきの武器」にすぎない。そもそも強化ボーナスからしてDMGのフレイムタンとは違う。
 実の所、これはNWN1の同名武器を(ラシェメンの刀鍛冶云々の説明文章ごと)そのまま流用したものにすぎないが、なぜNWN1でこのようにしたのかは不明である。D&D系のDMGのフレイムタンはもちろん、過去のD&Dゲームに登場したアングルヴァダルとも異なる。
 フレイムタンの前例というと、BG1のバーニング・アースがある。これはAD&DのSword +1, Flame Tongue以下長々と略に準じているほか、ゲーム中に一切表示されることはないが内部データでは材質が「銀」になっているという謎の特性があり、BG1-TotSCの異常にしぶといグレーターウルフワーにダメージを与えられる数少ない武器のひとつである。が、もちろんNWN2のこちらの武器には「錬金術銀」などという特性は無いので注意する必要がある。
 一方、アングルヴァダルという名の武器の前例にはBG2のアングルヴァダル+4と+5がある。こちらはFlame Tongue属性のデータの再現ではなく、どちらかというと追加の火炎ダメージが3.Xeのフレイミングに近い。またジャイアントストレンクスの擬呪がある(+5にはドレイン防止もある)。当然、名前こそ同じだがNWN2のアングルヴァダルには擬呪やドレイン防止は無い。なお、D&D系での「アングルヴァダル」という物品のデータはCD&Dの黒箱記載という触れ込みで(実際には黒箱は名前のみでデータは無い)Encyclopedia MagicaにAD&D2ndのルールとして載っているものがある。BG2のものは、黒箱やEnc. Magica同様に(実在伝承の)「フリシオフの剣」であると説明されていることから恐らく同等品という設定ではあるのかもしれないが、+4であること以外はEnc. MagicaのものはBG2のデータとは全く異なっている。
 NWN2のものは、通常の+2武器よりはかなりダメージが大きく、炎でないととどめをさせない敵など、フレイミング自体にある程度の有用性があるものの、ベースアイテムがただの鉄でDRを貫通できないなど、最終的に頼りになる武器ではない。



〇ホーリー・アベンジャー

 AD&D系列のゲームシステムにおいてPalキャラの要となる最重要アイテム(JRPGでの「ゆうしやのつるぎ」にあたる)であるが、特にNWN2ではわかりにくさの問題が山積みとなっており、説明されなければさっぱり把握できないと思われる。
 まず、NWN1/2ではアイテム属性(property, 印)に「ホーリー・アベンジャー」というものがあるが、後述するがNWN2のOCで入手できる”ホーリー・アベンジャー”という名前の剣にはこの属性がついておらず、別の能力で半端に再現されている。これは後述し、とりあえずこの印の能力を説明する。
 日本のNWNサイトには、NWN1/2でのこの印の効果に対して「パラディンにしか使用できない」「強化ボーナスに加算してさらに全命中率を+5する」だとか、一体どこから湧いて出て来たのか皆目わからない誤情報が書いてあることが頻繁にある。実際はこの印の強化ボーナスは、元のPnPルールの3.0eでも3.5eでもNWN1/2でも「パラディンが使用した場合+5、パラディン以外(他に属性などの制限の印がついていなければ)が使用した際に+2」となる。既にこれらより弱い強化ボーナスがついていた場合には上書きされ、またこれより強いボーナスはそちらが優先されて、累積はしない。また、この印の効果として、イービルに対しては2d6の信仰(神聖)ダメージ(NWN1では1d6の神聖ダメージ)を与え、使用者に呪文抵抗16の値を与え、命中時に一定確率でディスペル効果がある。「ホーリー・アベンジャー」の印ひとつでこれらの効果を全て発揮する。なお、このNWN1/2の印はいずれもPnPのSpecific ItemのHoly Avengerとはダメージ等が微妙に違う。
 ちなみに通常の「冷たい鉄」の剣に「ホーリー・アベンジャー」の印だけを付与したのが3.XeのDMGのホーリー・アベンジャーにあたる剣となり(実装の都合で細かいデータは異なる)NWN1のSoUに登場する”ホーリーアベンジャー”の剣もだいたいこれに等しい。しかし、NWN2ではこれだけ付与した聖剣はアイテム価格がやけに低い。まさかこんなものが店売りされているモジュールもないだろうが、価格によるアイテムレベル制限を導入した一部PWモジュールやPnP指向設定のサーバーなどではパラディンが強力な装備を得られて重宝するかもしれない。

 さて、NWN2のOCで手に入る”ホーリー・アベンジャー”の名の剣であるが、OC後半の教会がらみのレッドドラゴンのクエストで、クラス等が一定条件の場合に入手できる武器がこの名の剣になっている。前述の通り、上述の印がついたものではなく、冷たい鉄のロングソードにそれぞれ別々に「強化ボーナス+3」「イービルに対して強化ボーナス+5」「イービルに対して+2d4魔法ダメージ(神聖/信仰ダメージではない)」「呪文抵抗24」「DC20のディスペルマジック」「プロテクションフロムイービルの擬呪(無制限)」「パラディン専用」の印がついているものである。
 イービルに対しては上述の印よりも一回りほど強い。しかし、イービルでない敵に対しては強化ボーナスが+3なのでかえって弱い。そしてダメージ自体はホーリーソード呪文よりさらに弱い。追加ダメージが魔法ダメージなので、他のバフ等による追加ダメージと累積しないものが多い。
 なぜこのようになっているか、というか上述の印が使われていないかは不明である。ひとつ考えられるのはOCの要であるシルバーソードとの力関係である。シルバーソードに比べると、イービルに対しては強い反面、グッド(来訪者が多い)やニュートラルの敵に対しては劣る。また、素材の関係でDRを抜けやすい敵が違う(OCではシルバーソードの錬金術銀の方がホーリーアベンジャーの冷たい鉄よりも有用である、という見解が述べられることが多い)。どのアライメントグループの敵にも+5は保証される印の方のホーリーアベンジャーに比べると、OCアイテムの方はシルバーソードと使い分けができるようにしたのかもしれない。また、OCではかなりクラフトが容易で、印(property)を3つまでつけられるため、印のホーリーアベンジャーだけで再現されている剣はさらに強化できるためそれを避けるためとも考えられる(強化ボーナスなどの適当な印で埋めておいてもよい話だが)。ただし、そもそも印を実装する予定がなかったとか、現状とは異なっていたといった空気が激しく漂ってくる。とはいえ現在は推定以上の余地はない。



〇コールドアイアン・ブレード

 NWN2のCold Iron Bladeというマジックアイテムは、「コールドアイアン・ブレード」と訳されているが、おそらく「コールド・アイアンブレード」と区切るべきである。「冷たい鉄」の「剣」ではなく、「冷たい」「鉄の剣」である。なぜなら、これは+1強化ボーナスと冷気+1d6ダメージがついているが、材質は冷たい鉄でなく、ただの「鉄」の剣だからである。(なお原語では、他のCold Iron Longsword等とものすごく紛らわしいが、和訳ではこちらのコールドアイアン・ブレードはカタカナで、Cold Iron Longsword等の方は「冷たい鉄のロングソード」等と訳されているのでわかりやすい。)
 なぜこうなっているかというと、NWN1のアイテムデータを丸ごとコピーしたからと思われる。NWN1のOCデフォルトでは材質のデータが無く、Cold Iron Bladeを冷気ダメージの剣にすることで名前を再現したものと思われるのだが、NWN2に移っても材質などは変更されなかったのである。
 NWN1のOCのコールドアイアン・ブレードの説明(無論、NWN2にも流用されている)では、「キャンドルキープの防衛のためにアビスのピット・フィーンドのイーガトールを封印する云々」と書かれており、材質などの直接の記述はない。3.5eでは冷たい鉄はアビスの生物に効果があるので一見筋が通る記述のように見えるが、実は原語ではabyssとは書かれておらずおそらくセガの和訳の際の追加部分である。そして、そもそもピット・フィーンドはアビス在住のデーモンではなくバートル在住のデヴィルである。
 実の所、「冷たい鉄」を含めた素材のシステムは3.5eでこそ重要だが、AD&DはもちろんNWN1の3.0eの時点でも(資料によっては記述はないでもないが)はっきり分類やルール的整理はされていない。早い話、冷たい鉄がデーモンやフェイに有効と基本ルールで明記されたのは3.5eで、そして、NWN1は記述の細部が3.0eどころかAD&D(というかBGシリーズ)にかなり引っ張られているので、3.5eのルールとは多々合致しないのだが、それらも含めてNWN1のデータがそのままNWN2に流用されてしまっているのである。
 なお、NWN1のプレミアムモジュール、Wyvern Crown of Cormyr用に追加されたアイテムにも同名のコールドアイアン・ブレードがあるが(例えば同モジュールの拠点の城塞の店売りや、一時の旅仲間のひとりパラディンのエドガー卿の初期装備である)、性能は別物(来訪者にのみ+1d4ダメージ)であり、こちらはNWN1最後期だけあって3.5eも意識したとおぼしきデータである。アイテムの説明にも材質がCold Ironであると書かれている。日本語版ではWyvern Crown of Cormyrの追加データは1.69パッチに反映されているが、なぜか冷たい鉄でなく「冷たい金属」と訳されている。
 何にせよ、NWN2のものは強化ボーナスも低く、実際の「冷たい鉄」の武器のようにはデーモンやフェイに有効ではないので注意が必要である。



〇ナイトシーフのニンブルナイフ

 《二刀流》特技、軽業+2が得られるダガー+1である。NWN2のOCでは中盤のネヴァーウィンター市の倉庫掃討クエストでニーシュカが発見することがある。
 NWN2(3.5e)では、《二刀流》特技があればとりあえず二刀流は実用になるので、オフハンドにこれを持てばいきなり二刀での攻撃が可能である。海外サイトなどに載っている軽戦士や魔法戦士のビルドでは、盾も二刀流も特技がなく、前衛・攻撃系にもかかわらず最後までレイピア片手持ちだけをしているという例が載っていることがある。アレンジしようにも、Ftrでもなければなかなか二刀流特技などを取得している暇もない。その場合、とりあえずオフハンドにはこのダガーでも持っているといいかもしれない。
 このほか、ナイトシーフのクロー、ダーク・コンパニオンといったショートソードも二刀流特技を付与する。



〇ブーツ・オブ・スピード

 NWN1ではブーツ・オブ・スピードは永続的に「ヘイスト」効果が付いており、バルダーズゲート(BG)シリーズ等と同様、ゲームの様相が段違いなので(戦闘能力の他、普段の移動速度にも関与するので進行速度そのものが劇的に変わる)最優先で確保、装備すべきといわれてきた。
 ところが、NWN2ではブーツ・オブ・スピードは永続効果ではなく、「ヘイスト呪文」を1日限定回発動可能となっている。これはNWN1やBGのものが強力すぎるというかあまりにもゲームが変わりすぎるので弱体化されたと考えられる。
 その他にもヘイストやクイックネス等の名前のついたアイテムは存在するが、呪文を発動可能のみとなっているものが多い。ちなみにBG(Infinity)とNWN1と2では(AD&Dと3.0eと3.5eでは)ヘイストの細かい効果はかなり違うが、3.5e/NWN2呪文のヘイストは、一時的(戦闘時など)バフ呪文として見てもかなり強力である。1体が対象だったNWN1とは異なり、複数対象(範囲)に効果があり(ただし、呪文の説明では「クリーチャー1体」となっている。これはNWN1のtlkを流用しているのが、直っていない可能性が高い。tlkにはマス・ヘイストのダイアログも残っている)発動できるアイテムは充分に有用である。呪文24時間持続の特技の対象にもなっているので、あえて呪文で秘術術者に使わせている運用も多い。

 しかしながら、最も有名なブーツ・オブ・スピードが弱体化された一方で、一部にはNWN1と同様に永続的ヘイストがついたまま直っていないアイテムも存在する。(エディタで付与できる印としては、永続的なヘイストはNWN2でも残っている。)
 チェインメイル・オブ・スピード(OC)
 スウィフト・フライアー(ライトクロスボウ、OC)
 などである。これは入手難度などからわざと残してあるのか忘れただけなのかは定かではない。いわゆる訓練場モジュールなどで買っておくのも手である。



〇バルダランのアーマー

 バルダーズゲート市の創始者、バルダランの装備には謎が多い。BGシリーズにこれらの名の物品が登場した際、市の創始者の装備なので記念館にでも安置されているのが妥当という声が出ることもあるが、現に、後述するBG2や、PnPの5版にはBG市の博物館に収められている旨がある。しかし、その保管状態は安全ではなく、そのせいもあって来歴・由緒もかなり定かならぬものになっている。
 例えばバルダランの剣はBG1-3で明らかに別々のデータのもの(BG1(TotSC)はバスタードソード、BG2はロングソードで性能も違う。BG3には別の名のグレートソードも出る)が出てきたりする(それぞれ入手状況から別の時期に所持していたものと推測することもできはする)。5版のPnPシナリオ、Baldur's Gate: Descent into AvernusのBG市解説箇所で、他のバルダランの遺品と共に博物館に収められているのは「ロングソード」なのでBG2のものかもしれないが、ドラゴンランスの記事で述べたスタームの剣のように同じアイテムでも版によってベースアイテムの解釈が違うかもしれず、また複数存在するので、この120年以上後の博物館のものはBGシリーズのいずれとも違う可能性すら考えられる。

 さらにアーマーについての謎は、これがなぜかBG市が舞台ではない(というかソードコーストでも、ダガーフォードやウォーターディープを挟んで北にかなり離れている)NWN1/2のいずれもOCに登場することである。しかもNWN1では蛮族の集落ベオルンナズ・ウェルの商人、NWN2ではクロスロード・キープに現れる商人がなぜか店売りしている。NWN1/2のアイテム解説によると、「バルダランの鎧がソード・コーストで発見されたが、恐らくは復元されたもの」「収集家や研究者のためにいくつかの複製が作られた」とある。
 一方、BG2の鎧、プレート・オブ・バルダランは「BG市の博物館から盗まれた」ものというアイテム解説があるが、やはり遥か南に離れたアムン(オームー)のアスカトラ市で店売りされている。
 NWNの「ソード・コーストで発見され復元・複製された」のが、BG市の博物館に入る前か盗まれた後かははっきりしないが、何となく盗まれたものが部品ごとに散逸し、博物館のオリジナルの記録に沿って復元された結果、複数の復元品・複製品が生じた、という事情を想像させる。

 つまるところ、NWN1/2にバルダランの鎧が登場した事情については、他のBGシリーズと共通したアイテムの登場と同様に「友情出演」でしかないと考えられるが、登場する説明づけとして、NWN1/2ではバルダラン本人の装備ではなく「複製」という説明が加わったようである。下手に貴重品として宝箱から出たりすると、今度は(本物らしいものが)なぜBG市ではなくネヴァーウィンター市付近にあるのかという疑問が湧き上がってくるであろうから、店売りかつ複製とした方が混乱は少ない。
 しかし、そのためにすでにBG1,2で複数種登場していた剣や、その他のバルダランの装備にも複製疑惑が生じて来る結果になっている(上記BG2の解説には、博物館にあったバルダランの「装備」が盗まれたとあり、他も似た経緯を辿っている可能性が高い)。入手状況等からバルダランに関連が深いといえる品もあるが、そうでない品については、どれかが複製にすぎない疑惑は避けられないであろう。

 BG2(AD&D2nd)の「プレート・オブ・バルダラン」はAC合計-1というデータから、フルプレート+2にあたる。また、追加hp+4とCha能力値+1のボーナスがある(AD&DではChaの底上げというのは貴重だが、一方で、2ndでは技能以外にはCha能力値にはあまり使い道がないという側面がある。3.Xeとは異なり、パラディンもバードも魔法やセービングスローにはChaは直接関係しない)。
 一方でNWN1/2の「バルダランのアーマー」はハーフプレート+2だが、Cha修正は+3、ヒットポイント増強効果は「リジェネレーション1ポイント」に変わっている。バルダランの鎧のオリジナルでないとしても、BG2のものよりChaにせよリジェネレーションにせよむしろ強力となっている。NWN1では複数装備の能力値修正が累積する(例えばパラディンが他にニンフ・クロークなどでCha+を持っていた場合、合計値になる)ため有効である。NWN2では累積はしないものの他のCha増加装備までのつなぎにはなる。しかし、NWN2のOCでクロスロード・キープに入る頃は強力なアイテムのクラフトもできるようになっているので、「+2」「ハーフプレート」である点をあわせて既に時期的に微妙ではある。







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