秘術呪文失敗率


 NWN1/2の入門者からのFAQに、「同じ条件で呪文を唱えたはずなのに、普通に発動したり、たまに失敗とか出て何も起こらないことがあるのは仕様ですか(=暗に「バグ」のレッテル貼り)」というものがある。

 他の大概のCRPGでは、クラスによって(ひいてはキャラによって)呪文を使うキャラは、最初から鎧が着られたり着られなかったりと決まっている。もう少し凝ったCRPGや、幾つかのTRPGなどでは、鎧を着ることはできるが着ると呪文を一切使えない(非金属か銀かミスリルの鎧でないと使えない云々とか)といったルールが設定されている。D&D系のCRPGでも旧版、AD&D1st(PoRなど)や2nd(BGなど)でもそうである(PnPルールはもう少々細かい)。魔法使系は鎧を着られなかったり、マルチクラスの戦士/魔法使は鎧を着られるがエルブンチェイン以外を着ると呪文を使えなかったりする。
 というか、RPG(PnP/CRPG)の歴史の話をするが、AD&D1stがそうだったから、他のRPGも全部そうなったのである。

 しかし、D&D系でも3.Xe、それを採用したNWN1/2においては、誰でも能力さえあれば鎧を着られて呪文を使えるように一見見えて、突然失敗するといったものに変更されている。3.Xe以降のシステムの常として、整合性や理屈自体は2nd以前と比べて非常にすっきりしており、わかってしまえばどうということもないが、前述した他のCRPGや日本のTRPGの様相を常識なのだとか信じ込んでいたりすると、何がどうなっているか想像もつかなくなること請け合いであり、バグだとか決めつけたとしても何も不思議はないだろう。

 以下、理解を早めるために、手っ取り早く条件を羅列する。


(1)呪文の使い手であろうが何であろうが、「〜習熟」特技があれば鎧は着られ、盾も持てる
(2)「秘術呪文」は鎧や盾の「失敗率」の影響を受ける。つまり鎧を着ても呪文を唱えられるが、唱えても一定確率で失敗する場合がある
(3)「信仰呪文」は鎧や盾からは失敗率は一切受けない
(4)AD&D1st、2ndと違って盾にも失敗率がある(例外あり)
(5)バード及びウォーロックは軽装鎧なら着ても問題がない(例外あり)
(6)ウィザード及びソーサラーには秘術失敗率を軽減する能力はない。エルドリッチナイトやペイルマスターになっても軽減できない(一切例外なし)
(7)しかし、アイテムには失敗率を軽減するありがたい印がついているものがある
(8)一方で、アイテムには失敗率を上昇させるえんがちょな印がついているものもある


 全然手っ取り早くない。というか、整合性があることと、わかりやすいだとかまとめやすいだとかいうことは別問題である。繰り返すが最初はわかりにくくてもわかってしまえば(多分)どうってことない。以下、それぞれの項目について3.XeのPnPの汎用ルールとNWN1/2の特則を(概してシテオクな実装不足を)織り交ぜて説明する。



(1)「〜習熟」特技があれば鎧は着られ、盾も持てる


 重装/中装/軽装の「鎧習熟」や、「盾習熟」「タワーシールド習熟」があればクラスを問わず装備できる。特技は選択して取得することもできるし、クラスレベルを取得すると自動的に取得することもある。例えばFtrなら1lv取得すると重装やタワーシールドまで殆どの習熟特技を同時に全て取得する。WizがFtrとマルチクラスすると鎧が着られるようになるのは、「戦士だから」ではなく、「習熟特技を取得したから」である。もちろんシングルクラスWizが1lvや3の倍数lvの特技スロットでこれらの特技を習得しても着られる。が、軽装、中装、重装等と一つずつ取得しなければならないので現実的ではないし、「着られるか」と「詠唱が成功するか」は(2)以下のように別問題である。


(2)「秘術呪文」は鎧や盾の「失敗率」の影響を受ける。つまり鎧を着ても呪文を唱えられるが、唱えても一定確率で失敗する場合がある

 鎧や盾には秘術呪文失敗率がある。レザーアーマーで10%、ライトシールドで5%で、一般に重くて嵩張る防具ほど失敗率が高い。PoRやBGなどと違い、(1)の習熟特技さえ取得すればどんなクラスでも鎧は装備できるし、これらを装備したまま秘術呪文を唱えること自体は普通にできる。しかし、失敗率の合計値の分だけ(レザーアーマーとライトシールドを装備した状態で詠唱したなら、15%)発動に失敗する可能性がある。3.Xe未経験者は、重装備で当然失敗するならば(フルプレートとタワーシールドで85%失敗)間違わないが、逆に軽装備で一見詠唱に失敗しなかったというような体験を一度してしまうとドツボにはまりやすい。
 秘術呪文失敗が起こる原因は、3.Xeでは、これらの装備が「動作構成要素(Somatic Component)」を阻害するため、とはっきり定義されている(対して、前版のAD&D2ndでは魔法使が鎧を着られなかったり阻害される理由は、逆に「動作のせいかもしれず金属等のせいかもしれず『特定不可能』」であることの方が明記されていた)。つまり、動作構成要素を有さない呪文(トゥルーストライクなど。NWN2ではトゥルーストライクは説明文が誤っておりS(動作)が構成要素に入っているが、実装ではSは要さない)は失敗率の影響を受けない。呪文動作省略(Still Spell)の呪文修正や、自動省略のエピック特技の対象となった呪文も当然影響を受けない。
 余談だがNWN1/2等よりも後のD&D「5版」では、(1)の習熟さえしていれば、秘術呪文であっても(というか5版では秘術と信仰といった分類はない)発動が阻害されたりはせず、ウィザード等でも習熟していれば阻害されない。この点について3.XeのNWN1/2についても5版のCRPGや他の版のPnPと混同して周囲に吹聴する自称”紙版D&D”ユーザーが多々いるので、3.Xeのゲームにおいては注意が必要である。


(3)「信仰呪文」は鎧や盾からは失敗率は一切受けない

 なぜか信仰呪文は動作構成要素があっても一切失敗率の影響を受けない。3.Xeははっきり定義されているように見せかけておいて、いきなり「動作構成要素とはいったい何なのか」という問題に直面させられる。
 実は3.Xeで秘術と信仰を明らかに分断する点はこれくらいしかない(魔法使系が「攻撃」系、僧侶系が「回復」系などと一般に信じられているが、というかAD&D1stがそうだったから以後のRPGが軒並みそうなったにすぎないのだが、これが3.Xeでは、ドルイドの信仰呪文に1st−2nd以上に攻撃が、バードの秘術呪文には回復が多く含まれる等、こうした分類にあてはまらない)。
 ちなみにDrdやスピリットシャーマンの呪文も「信仰呪文」なので当然失敗率の影響は受けない。ソードワールドとその引き写しの和製TRPG/CRPGのような「シャーマンは金属鎧が精霊を阻害してうんたら」とかはまるで関係ない。というか、PnPではDrdには戒律上金属装備の制限があり(というかAD&DでそうだったからSWもその影響で以下同文)3.XeでもDrdは金属鎧を着用すると呪文を含む魔法的能力が一切使用できないという特殊ルールがあったのだが(スピリット・シャーマンには全くない。通常習熟している軽装鎧ならば可である)NWN1/2ともにまるで再現されておらず、Drdは中装鎧習熟がある以上、何の制限もなしに金属の中装鎧も盾も装備でき、呪文も阻害されない。
 なお、初心者向のここに書いてしまうとかえって混乱するかもしれず本末転倒だが、「疑似呪文能力」(NWN1/2では特技と同様のコマンドから1日〇回など使用する、呪文に似た効果)も、秘術と信仰のどちらに似ていようが失敗率の影響を受けない。というかルール上、疑呪は動作も含めていかなる構成要素も必要としない。そのため、例えばアサシンの呪文は元のPnPルールでは秘術だが、NWN2では疑呪なので、防具の失敗率の影響を受けないという謎の状況が発生する。が、NWN1/2の膨大な実装不足の中では些細な点ではある。


(4)AD&D1st、2ndと違って盾にも失敗率がある(例外あり)

 例えばPoR(GoldBox)などではマルチクラスの魔法使は鎧を着られなくても、まるで抜け道のように平然と盾を持つことができたが、NWN1/2では盾にも秘術呪文失敗率がある。ライトシールドでは上述のように5%だが、ヘビーやタワーシールドでは無視できないほど大きい。例えば秘術系のキャスタークラスの中でもBrdは「盾習熟」特技を持っているが、NWN1/2いずれも装備したまま呪文を唱えることは難しい(詠唱時のみ外すパターンもあるが)。
 が、例外として、後述するように防具の中には秘術呪文失敗率を低減する印(Property)が付いたものがある。一般にこうした魔法付与自体はかなり希少だが、ミスラルなどのクラフト素材によっては自動的に軽減がつく場合があり、失敗率が0%になるライトシールドならばミスラルで作るだけなので、入手する機会は多く、ここに触れておく。現実的には、Brdや魔法戦士にはこれら特殊素材のライトシールドが選択肢に入る。
 なお、小手や兜は特に阻害しない。他のTRPGによっては頭部を覆うことが精神活動を阻害したり(というかD&D系でもサイオニックなどにそういうものがある)このサイトのメインコンテンツのRoguelike、Moria/*bandでは一部小手がいかにもといった感じで動きを阻害したりするが、NWN1/2ではヘルメットやガントレット、ひいては胴体防具と盾以外のスロットの装備は(後述の失敗率増大がついていない限り)失敗率を上昇させない。というかGoldBox(PoR)などでもそうなっていた。秘術術者やMnkが胴体が半裸(女性キャラなら極小面積極小布厚ビキニ)なのに、頭は鋼鉄フルフェイス、手はごつい小手に背はマントですっぽりと覆っている姿というのはこれらのゲームではわりと見かける。


(5)バード及びウォーロックは軽装鎧なら着ても問題がない(例外あり)

 ここが秘術呪文失敗率のシステムを一気に大幅にややこしくしている点かもしれない。NWN1には無いが、NWN2ではBrdとWlkは、自クラスの呪文・能力発動について「軽装鎧についてのみ、秘術呪文失敗率を0にできる」という能力(NWN2ではArmored Caster)がある。Battle Caster特技を習得すれば中装まで可能である。勘違いしがちな点だが、それぞれBRD呪文とWLK能力以外の呪文(例えばWIZ,SOR呪文)の失敗率はマルチクラスでこれらの詠唱能力を持っていても軽減できない。早い話がNWN2のBrdは、チェインシャツ(ミスラルでなくてもよい)とミスラル・ライトシールド(盾の失敗率は軽減できないのでミスラルである必要がある)ならば、装備したままでBRD呪文を使用できるということである。
 この軽装鎧は、素材によって軽装扱いになっているものも適用される。例えばミスラルの防具は一段階軽装扱いになり、元々中装のブレストプレートはミスラル製のものは「軽装」扱いなので(失敗率の数値が残っていても)BrdやWlkの失敗率には計上されなくなる。つまり「ミスリルという金属は精霊力を阻害しないからうんぬんかんぬん」とか何とかではなく、「軽装になるから」阻害されないにすぎない。


(6)ウィザード及びソーサラーには秘術失敗率を軽減する能力はない。エルドリッチナイトやペイルマスターになっても軽減できない(例外なし)

 無い。前述のように、たとえBrdやWlkの秘術呪文軽減能力があったとしても、マルチクラス等で得たWiz, Sorクラスによる呪文の失敗率は軽減されない。PnPにはスペルソードのような汎用的な軽減率を得られるプレステージクラスや特技があったが、NWN2のデフォルトのシステムには無い。
 なので、WizやSorの魔法戦士は防具は一切装備しないか(AC鎧ボーナスのある「服」「ブレイサー」、シールド呪文やその効果アイテムなどにアーマークラスを頼るか)、失敗率覚悟で呪文を使うか、「動作構成要素のない呪文」(トゥルーストライクなど)を使うか、呪文動作省略の特技で(全部呪文レベルを上げて、または頑張って全部エピック特技を習得して)使うしかない。でなければ、後述の軽減Propertyのついたアイテムを探すかである。というと結構選択肢があるが、いずれも到底容易ではないし、仮に実現しても戦士系に比べた大きな不利は免れない。


(7)アイテムには失敗率を軽減するありがたい印がついているものがある
(8)アイテムには失敗率を上昇させるえんがちょな印がついているものもある


 もはや(5)〜(8)あたりの重複合は、整合性があることはあるのだが、トレーディングカードゲームの特殊ルールを後出しまくった超複合コンボのようである。3.Xeのルールのこれらの味わいは、D&DがTSR(ウォーゲーム会社)からWotC(カードゲーム会社)に移ったことに関係があるのではないかという説もあるが、後出しで超複合していたのはすでに2ndの頃からでしかも整合性が無かったとか個人的には思うのであるが、きりがないのでここではひとまず置いておく。
 軽減率は上述の(5)の素材によって付くものの他、NWN1でも2でもツールセットでアイテムを作成する時に付けることができる(クラフトでは素材以外には特につける手段はない)。また、NWN2のデフォルトのマジックアイテムに、エルドリッチナイト用の鎧のように軽減率がついたものが存在する。


 (具体例は後日追記予定)








フレーム表示


トップページに戻る
(フレーム解除)