〇Pathfinder:Kingmaker ダヨーさんは何故強いのか


 以下はPf:KmではなくあくまでNWN1/2の話題であり、Pf:Kmの方のプレイヤーにとって目新しかったり有用な情報は全くない。
 Pathfinder: Kingmakerのコンパニオンのひとり、弓レンジャーのエクンダヨについては、「突出した強さはないが安定した戦力」と評されていることがある。海外サイトでは「ランクはS(爆薬乱発学者ジュビロストなど)より劣るA」などとされていることもある。が、NWN1/2のレンジャーの酷さを体験し続けた身としては、このダヨーさんの活躍を目の当たりにするたびボーボボのビュティのように目玉が飛び出すほどに強い。
 NWN1/2では、レンジャー(Rng)や遠隔ビルドキャラの不遇をフォローするために、DM設定(モジュール側設定)や追加overrideなどを駆使することもあるが、元がデザイン失敗疑惑があるクラスだけに上手くいかない例もある。しかし、エクンダヨのこの強さをある程度まででも再現する方向で参考にできないだろうか。そいつを考えてみようじゃあないか……
 PfのRng自体のことを言えば、3.0e、3.5eやこれらのd20(SRD)のデフォルトルールからはPfのRngはだいたい全ての能力が全面的に強くなっているのは見たまんま明白なため、強いことはわざわざ分析するまでもない、と思うかもしれない。
 が、Pfでは知っての通り、あらゆるキャラが3.Xeデフォルトからは全面的にインフレしており(例えば、Pfではクラスに拠らないキャラクターレベル当たりのフリー特技が2lv毎に取得できるので、d20デフォの3lv毎のフリー特技に対して数だけでも普通に1.5倍になっている。クラス毎の特技はさらに強く数多いのは言及するまでもない)Rng以外のクラスも強くなっている(Bbnなどのインフレから取り残され気味のクラスもあるにはある)。逆に言えば、全キャラがインフレしたにも関わらずPf:Kmでその中でRngやダヨーさんの強さが特に感じられるのであれば、そこには理由がそれなりにあると考えてよい。


・能力値が高い

 3.5eとPfではポイントバイや作成時の種族能力ボーナスのシステム自体が異なっているので、Pfの各キャラのポイントバイの情報はそのまま使えず能力値を3.Xeで何ポイントで作れるか変換しなくてはならないが、エクンダヨの能力値をPfでなくNWN2の3.5eのポイントバイで作ろうとすると必要ポイントは41ポイントを超える。超えるというのは、3.Xeデフォルトでは人間が5lv時点でDex20は達成できないからである(作成時Dex18, 4lv時+1して19とするとしても、作成時は41ポイントとなる。一方、Pfでは人間は作成時どれかの能力値を+2できるので、例えばDex17+2で作成、4lvからDex20などにできる)。NWN2のプレイヤーキャラのデフォルトが(3.Xeの標準では非常にハイパワーな)32ポイント、さらにNWN2で突出した強キャラであるキャサヴィルが35ポイントなので相当なものである。では他にもPf:Kmの登場キャラが全員同じくらい能力値が高いというとそうでもない。
 しかしながら、ダヨーさんの能力値のうち弓レンジャーのキャラ性能に特に大きく貢献しているのはStr16とDex20であるが、これはNWN2デフォルトでもウッドエルフ等であれば、普通にキャラ作成可能な値である(他の能力に酷いしわ寄せはゆく)。むしろ、このStrを生かせるマイティー印のある弓(コンポジット)で早期に良いものが得られるかの方が重要と思われ、それは次項目に関連する。


・弓アイテムが強い

 例として、Pf:Kmではかなり序盤に、頻繁に強アイテムとして言及される『金属を貪る者』が入手できる。この弓はベースダメージ2d6、いわゆるマイティー属性と(命中ペナルティーはあるが)矢玉に酸ブランド+2d6が付与される。Pf:Kmでは弓矢は無限弾薬で、弓の方に弾薬の属性がつき、これを用いると酸ダメージ+2d6の矢が無限に発射できる。
 対してNWN1/2では、矢は(後述の例外を除き)別途供給が必要で、矢ダメージの性能はほとんどの場合は矢の方についている。元素ダメージが追加された矢が入手できるのは多くは後半で、しかも回数も潤沢ではないことも多い。そしてNWN1/2デフォルトアイテムでは元素ダメージがついたとしても1d6や1d8である。ユーザーhakのoverrideのPrCにはエレメンタル・アーチャーといった職があるが、これも+1d6の矢を使用できるといったものにすぎない。
 ではPfの弓矢全般のような自動無限魔法弾薬は無いのかというと、NWN1/2のエディタでは弓に「無限弾薬」のプロパティを付与することができ、弓側の性能として強力な矢が自動的に供給されると設定することもできるが、エディタのプロパティの「無限弾薬(Unlimited Ammunition)」では弾薬の方に追加元素ダメージは1d6しかつけられない(なお、なぜか火・冷・電はあるが酸がつけられない)。一見すると、NWN1/2では金属を貪る者は再現不能に見える。

 ところが、実はNWN2のエディタでは、弓本体(射出武器)の方にも元素を含むダメージ・ボーナスを付与することができる。これはクラフト(OC, MotB共に)で近接武器と同様に、弓本体に元素ダメージ・ボーナスを付与することもできる。付与すると(別途供給してきた普通の矢などの)発射される弾薬すべてに、元素ダメージが上乗せされる。さらに、エディタで「無限弾薬」のプロパティを付与し、何も付与されていない普通の矢が供給されるようにして、弓本体の方に元素ダメージ・ボーナスを付けると、無限弾薬で生成された弾薬が元素ダメージボーナス(酸2d6を含む)が付与された状態で発射されるようになる。つまり、「酸ダメージ+2d6で無限弾薬が発射される弓」を作ること自体はできる。(なお、NWN1のエディタでは弓本体の側にダメージ・ボーナスは付与できず、クラフトもないので、これらの範疇では作る手段がない。)
 しかし、一応、3.XeのDMGのルール上は射出武器本体にブランドがつくことはあるものの、NWN1/2のOC等で登場するデフォルトのアイテムには(マイティーや無限弾薬以外の)弓本体でダメージが増大するプロパティが付与された弓は一切登場しない。NWN1のエディタで付与できない点もだが、NWN1/2側としては、あくまで遠隔武器におけるブランドは、矢玉アイテム側に付けるプロパティか、上記の無限弾薬を想定していると思われる。
 上記の「弓本体にブランドダメージを付け、通常の矢を無限弾薬として設定する」と、無限弾薬で付けられない酸+2d6を付けることができるが、無限弾薬で設けられた元素ダメージの制限とは矛盾しているので、明らかにイレギュラーな「裏技」(マルチプレイ用設定の「所持するのに必要なキャラクターレベルが過剰」といったものと同様の、バランス上問題がある設定)であると思われる。

 なお、無限弾薬で、全矢に元素攻撃がつくといえばFR小説のドリッズトシリーズのキャッティ・ブリーの弓タウルマリルがあり、この弓は特に日本の読者からは、「キャラの読者人気になびいた贔屓アイテム」などと何か異常なほどに非難囂々だが、要はNWN1でエディタのデフォルトで付与できるようになっているのはこの相当物ともいえる(なおタウルマリルの電撃矢は厳密には4版以降のデータであり、1stの小説時点ではあくまで弓強化ボーナス+3と射程延長の矢+1無限弾薬である)。つまり、NWN2で裏技で作ることができ、デフォルトの性能を大きく逸脱した『金属を貪る者』は、この悪名高いタウルマリルより遥かに圧倒的にとんでもない代物だということである(これは、単にPfの全無限弾薬システムが、3.Xeデフォとの「データ化解釈の差異上」そう見えてしまっているだけの問題であるともいえるが、そうだとしても結果的にPfがD&Dシリーズ各版よりも遥かにインフレしている一面であるともいえる)。D界隈内ですらも異様に過大性能に喧伝されているFR小説のアイテム(DL小説が何故か異様に過小性能に流布されているのに対して)よりも、PnPデータやCRPGに遥かに凶悪なアイテムが当たり前に存在しているのは従来も述べてきたが何も珍しいことではない。
 すなわち、NWN2でもイレギュラーを承知の上ならエディタで「酸+2d6+(+刺突ベースダメージ追加)+通常無限弾薬」の弓を作れば『金属を貪る者』を再現することはできる。あるいは、イレギュラーではない範囲でDM側である程度コントロールしたいなら、矢の方に大ダメージを付けて供給をコントロールする手もある。NWN1/2とも、矢の方に対しては、エディタでは元素2d6やそれを超えるダメージボーナスを普通に付与することはできる。特にNWN1で金属を貪る者に近い状態を再現するならこの矢を大量にバカスカとプレイヤーキャラに供給すれば強さが再現されることはされるが、何やらシテオクである。


・宿敵設定が強く、ストーリー上宿敵が多数登場する

 どんな敵を出すかはモジュール側の設定だが、元々Pfでは宿敵ボーナスが3.Xeデフォルトの倍以上となっている。ユーザーhakのPrCでは、宿敵に対するボーナスを強化する特技などがあり、それを使用すれば大きく不足は感じないが、上述したように3.XeデフォではPfよりも取得できる特技数が遥かに少なく、ハズした場合(宿敵がモジュール側で登場しないなど)の落差がさらに大きい。


・犬ドッグ(ワオーン)が強い

 Pf:Kmでは動物の相棒持ちの傭兵を優先的に雇うと難易度が大きく変わる、という主張が一部にもあり、相棒が強いゲームだが、ダヨーさんの犬ドッグ(後の命名では「オクボ」だが、種別・種族が「ウルフ」なのに命名前の呼び名が長期間「ドッグ」なせいか「犬ドッグ」と呼ばれることがある)は打ち倒しがあり強い。
 というか犬ドッグを特筆するまでもなく、またダヨーさんやひいてはPf:Kmに限ったことですらなく、3.Xeデフォルトルール時点から動物相棒自体がかなり強いはずである。相棒の側が本体と呼ばれるDrdは無論のこと、Drdの相棒よりは低レベルとなるRngの相棒であっても、NWN1でも割と頼りになる。半インディーd20再現途上作のLow Magic Ageですら、相棒がいるクラスを入れておいた方がかなり頼もしい。
 というか、NWN2のものが動物にせよその他のクリーチャーにせよえらく弱い。NWN2のものは戦闘開始後も敵に向かってゆかずに主人の周りをグルグル回っていたり、エリアを切り替えるとなぜかマップ上の合流不能な異座標に飛ばされ閉じ込められているといった謎の現象が発生する(クイックセーブしてロードすると位置が先頭キャラに再設定されるので直る)せいもあって肝心なところで使えないことも多い。ユーザーhakでより強力な相棒を追加するものは幾つかあるが、上記のAIや不具合がある限りは、割とどうにもならないような気がする。


 こうして見ると、能力、武器、宿敵などフォローできそうなものも、難しいものもある。モジュールで固定コンパニオンやプレロールドキャラを準備して状況を整えることで、なんとか近い活躍をするキャラ自体はできそうである。それ以上(NWN2弓・二刀レンジャー全般の地位向上的hakの落としどころルールなど)はあまり望めるものではない。








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