その他のルール(呪文編)

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〇トゥルー・ストライク

 術者自身のみ、次の1回の攻撃だけ(ほぼ)必中という呪文で、魔法戦士はもちろん前衛やアーチャーでも(特にルールの選択肢が少なかった頃は)これだけのためにSorを1lv入れるとかいう話も出た3.Xeの重要呪文である。NWN1ではさすがに実装が難しいと思われてか基本パックにはなかったが、拡張パックで追加された。NWN1/2では、純キャスターにとっても遠隔接触攻撃の呪文を命中させるコンボとしての用法も重視される。
 NWN1/2ともに、「次の攻撃」ではなく、唱えた後の「9秒間」の持続時間になっている。これは疑似ターン半リアルタイムというNWN1/2のシステム上、入力と行動のタイミングがずれることがよくあるのだが、それでも「確実に1ラウンド」は効果を発揮できるように設定されていると考えられている。しかし、次の攻撃だけでなく丸1ラウンドなので、そこは強力である。
 冒頭に「ほぼ」必中と書いたのは、正確には命中+20だからなのだが、NWN1/2では命中率のバフによるボーナスが+20までというキャップがあり、他のバフがある場合でも合計で+20にしかならない。また、PnP版にはあった遮蔽を無視するという効果についても、視認困難等を無視したりはできない(これは視認困難についてのルール自体がPnPと異なっているというNWN1/2自体の実装問題でもある)。
 PnP版では、呪文の構成要素が音声、焦点のみになっており、「動作」「物質」が要らない。そのため、PnP版では鎧を着ていても使用でき、冒頭に述べた前衛が使うという選択肢があったのはそのためである。が、NWN1/2ではどうかというと、呪文の説明に「V(音声), S(動作)」と書いてある。しかし、実際は鎧などの秘術失敗率の影響を受けず、実装ではPnP同様「動作」は不要となっている。つまり、呪文の説明だけ誤っているのだが、NWN1を流用したNWN2でも直っていない。



〇アイス・ストーム

 OD&Dの最初の追加ルールGreyhawkに発し、AD&D1stではPHBに記載されて以来、ほとんどの版で「氷の呪文」の代表として記載されているが、裂傷と冷気の双方のダメージを与える点を含めて、必ずしも効果は典型的(単純)ではない。版によって効果はまるで異なるものが多く、それどころか同じ版でもPCゲームごとに効果が違っていたりする。
 これらを説明しているときりがないので3.XeとNWN1/2について述べると、3.0e及び3.5eのPnPでは「3d6の殴打ダメージ」と「2d6の冷気ダメージ」を与える。OD&D〜AD&Dからの伝統だが、セービングスローによるダメージ半減は不可である。そのため、最大10d6のファイヤーボール等に対してセービングスローに成功した際とほぼ同等の、5d6のダメージを与える。
 ところが、NWN1/2では「3d6の殴打ダメージ」と「2d6+キャスターlv3ごとに1d6ダメージ」を与える。つまり、Wizが習得可能な7lvですでにPnPより大きい3d6+4d6のダメージを与える。なぜかキャップはなく、30lvで3d6+12d6, 40lv(NWN1)で3d6+15d6である。やはりセービングスローによるダメージ半減はできない。なおNWN1/2ともにBGシリーズ(Infinity)と違って効果は瞬間であり、一定ラウンド持続したりはしない。
 これが何を意味するかというと、OD&D〜AD&Dでも3.5eのPnPでも、ダメージがキャスターlvに依存しなかったのだが、NWN1/2ではキャップがないので一転、他の呪文よりもキャスターlvが重要となっているのである。



〇フレーム・アロー

 AD&D1stのPHBでは、味方の持つ弓矢の矢に対して炎をまとわせる呪文となっており、3.5eのPnPでもそうである。が、他の版によっては2種類の使用法があり、「すでにある矢に炎をまとわせる」他に、「術者自身が炎の矢を発射する」呪文としても使えることがある。どちらにせよ、LotR(FotR)原作でガンダルフがモリア入口近くにおいてワーグの襲撃に対して用いたものがモチーフであると考えられる。ダメージを与える呪文であるにも関わらず、力術ではなく「召喚術」なので、力術が禁止系統になっているスペシャリスト(NWN1/2では無いが、AD&D2ndのPnPでは幻術士や心術士)でも使用できることも特徴であった。なお余談だが、現在のネット時代と異なり情報の相互共有ができなかった上に英語ルールを頻繁に誤読していた日本の古参AD&Dゲーマーの間では、この呪文に関して、弓矢にかける場合と術者が発射する場合を混同したり、紛らわしいCD&Dのマジックミサイルの本数と混同したりした結果、マジックミサイルの5倍ダメージの炎の矢がマジックミサイル以上の本数飛び交うといった誤解釈が頻出していた。
 BG, NWN1などでは、AD&D2ndや3.0eでの「すでにある矢に炎をまとわせる」「術者自身が炎の矢を放つ」の2種類の使い方のうち、CRPGとして再現しやすい後者、直接炎の矢を放つ使用法しかできなくなっている。一方NWN2では、おそらくBGやNWN1に倣って、術者が炎の矢を発する呪文となっている。つまり、本来のNWN2のベースである「3.5e」のPnPではすでに存在しないはずの使い方であり、NWN2wikiにも「PnPとぜんぜん違う創作物」などと書かれていたりする。ダメージ計算はBGやNWN1とは若干異なり、ダメージ4d6の矢がキャスターlv4ごとに1本である。
 ところが、(これも旧版のPnPと同じだが)なぜかこの呪文にもキャップがなく、NWN2では最大28lvで矢7本の28d6のダメージとなり、呪文修正特技なしで同じ呪文レベル3のファイヤーボール等の10d6キャップより遥かに巨大なダメージを与える(なおNWN1では最大40d6+10のダメージとなり、エピック呪文に匹敵する)。ちなみにこの手の矢の呪文にはNWN1/2では多くある実装で、またユーザーhakによるfixが頻繁にされたりされなかったりする点だが、スペル・マントルに対しては呪文1回が3lv分ではなく、矢の1本ごとに3lv分なので、敵の防御呪文に対しても多大な効果を発揮する。上述のPnPの誤読なしでもかなり強力な代物となっている。



〇マジック・ウェポン、グレーター・マジック・ウェポン、マジック・ヴェストメント

 同様の問題があるので一括で言及するが、武器防具に強化ボーナスを与えるこれらの呪文は、NWN2ではディスペル系の呪文でディスペルすることができない。強化ボーナスを与えるので「恒久的な魔法の武器防具と同じ扱いになっている」のではないか等と推測することもできるのだが、もとからNWN2の付与・ディスペルはいずれも挙動がおかしいので、特に理由があってそう設定されているのではない(単なるおかしな挙動の一例)ように思われる。そのため呪文24時間持続の修正特技を入れると強化武器があるのと全く同じである(というか修正特技なしの術者lv時間の持続時間でも、普通にプレイしていて滅多に切れることはない)。クラフトの箇所でも書いたが、クラフトの印数制限には依存せず、例えば非エピックで既に3印以上が付与されている武器防具に対してさらにこの呪文で強化することができる。これらの理由もあって過信されていることが多い呪文だが、これもクラフトの箇所でも書いたがグレーター等でもボーナス+5までであること、そもNWN2はアイテムクラフトが可能なシステムであること、+6以上のクラフト(特にPvPではそこまで必要とはならないので軽視されやすい)が可能であることは考慮する必要がある。



〇ヒール、マス・ヒール、グレーター・レストレーション

 ヒールは3.0eのNWN1では全快手段であったが、NWN2では(3.0eから3.5eへの変更に伴って)「キャスターlv x10」のhp回復となっている。(というか3.5e以降のPnPゲーマーには、AD&D1st〜3.0eの、あたかもMADIのような全快の扱い自体を知らない場合がある。)
 ヒールのレベルキャップは15lv(150hp回復)だが、NWN1/2のデフォルトアイテムのヒールのポーション及びスクロールは、キャスターlvが「11lv」(クレリックが呪文レベル6のヒールを使用できる最小クラスlv)である。すなわち、NWN2では110hpの回復なので、おそらくこれが容易に入手できるようなキャラクターレベルでは必ずしも頼りにならないことも多い。*bandの無印「体力回復」(原語は同様のheal)同様である。

 次に上位のマス・ヒールについては、ポーションはOC等のデフォルトでは存在しないが、ツールセットで作成した場合のポーション、及びスクロールのデフォルトのキャスターlvは「17lv」である。ここで、元ルールである3.5eのPnPではマス・ヒールのlvキャップは最大25lvで250hp回復だが、NWN2ではマス・ヒールのlvキャップがヒール同様の15lvの150hpに設定されているため、150hpしか回復しない。通常、マス・ヒールはクレリックの呪文レベル9なので、使用できる最小キャスターlvが17lvであり、NWN2ではすでに使用できる時点でレベルキャップを超えているので、実質150hp固定の回復呪文となっている(ただし、ウォープリーストの疑呪など、キャスターlvが15lv未満でマス・ヒールが詠唱されるケースも無くもない)。こちらのポーション等はただのヒールよりはやや頼りになるが、やはりエピックなどでは心もとない。なお、ユーザーhakなどによるfixでは、PnP同様の最大25lvキャップに直しているものがある。
 治癒呪文は通常の生命クリーチャーを治癒する一方で、アンデッドクリーチャーに対しては同点の「正エネルギー」ダメージ(stにより半減)を与える。すなわち、マス・ヒールは複数(ポーションなら自分の周囲)を回復するが、アンデッドに囲まれてhpが削れたピンチの状態でマス・ヒールのポーションやスクロールを使用すると、自分は150hpを回復すると同時に周囲のアンデッド全員に150ダメージを与える。*bandの一部強力なスタッフの如くである。
 一方、ヒールの上位としては意識されていないことが多いが、グレーター・レストレーションは(他者にかけた場合に限り)NWN1のヒールのごとくhpが全快する。

 上述のようにヒール系はアンデッドにダメージを与え、ハーム系は生物にダメージを与えてヒールとは逆に働く。これらのヒール/ハーム系によるダメージは、PnPの3.5eのルールではhp1よりも低下させることはできず、この呪文だけで即死(即破壊)させることはできない(AD&D以来、またHarmの再現であるMABADI同様である)。ところがNWN2では、単純にダメージを与えるだけになっており、(バージョンやfixによるが)即死(即破壊)することが有り得る。「バグ」というよりは「PnPの実装が不完全な点」である。110-150hp等のダメージなのでNWN1(3.0e)のハームのようにドラゴンでも何でも1-4hpまで急低下させる呪文ではないが、単純に強力なダメージ呪文ではある。

 緊急の全快手段(Diablo IIの紫Potのごとく)として、一部の旧ゲームではヒールのポーション等の発動時間がきわめて短く設定されていることがあったが、NWN1/2ではそんなことは特にない。なお、PnPゲーマーには当然の話だが、「ポーション作成」特技は呪文レベル3までしか作れないので、NWN1/2でもこの特技でこれらのポーションを作成することはできない。



〇ヴィトリオリック・スフィア

 3.5eのSpell Compedium及びComplete Arcane(『秘術大全』)を出典とする比較的有名な呪文である。10フィート広域にレベルごとに1d4の酸ダメージ(最大15d4)を与えるダメージ呪文であり、メルブズ・アシッド・アロー同様、力術でなく召喚術である。普通の広域ダメージ呪文に見えるが、バグによりPnPや呪文説明と異なり挙動におかしな点が多い。
 まず、呪文説明では呪文抵抗が有効と書いてあるが、(バージョンやパッチによるが)いきなり呪文抵抗が無効になることがある。また、最初のラウンドはフルにダメージを受けるが、反応セーブにより「次のラウンド以降の」ダメージを避けられるような呪文説明に見えるが、正確には最初のラウンドからセーブがあり、仮に最初のラウンドで「身かわし」などでダメージを完全に無効化すると以後のラウンドもダメージは一切受けない。一方、2ラウンド目以降は、反応セーブに成功すると身かわしの有無にかかわらずダメージが半減する(無効化はできない)。PnP版や説明ではセーブ等が高い対象に有効な呪文に見えるが、NWN2のものは強いのか弱いのか結局よくわからないものになっている。



〇コール・ライトニング、コール・ライトニング・ストーム

 コール・ライトニングはドルイド呪文のうち最も知られたもののひとつで、PnPでもCRPGでもドルイド職の存在する版には存在するが、版によって、またCRPGによって効果は全く異なっている。見かけは非常に派手で、他のFT/RPGの「天から雷を落とす」電撃系の最上位呪文の元ネタになった等と流布されていることがあるが、PnPのものはさほど高レベルでも、(版によるが)高威力でも、また使い勝手が良くもない。
 PnPでは条件は版によって大きくばらつきがあるが、屋外でしか使えない、嵐や雨天の時しか使えない(細かい条件も版によって異なり、例えば屋内でも、ジンやエアーエレメンタルの起こす嵐があれば良い場合もある)、威力自体は版によって、強めの場合(AD&D1st、2ndで(2+lv)d8)も弱い場合(CD&D緑箱で8d6)もあるが、1回の呪文で一定時間置きに(版によりかなり違う)数回落雷を落とす場合に使えるなど、むしろ大規模戦を想定している場合が多い。PnPの3.0e(NWN1のベース)のコール・ライトニングは、屋外で激しい嵐がある場合に限り、lv(最大10)d10の雷を落とすもので、条件あわせて2ndなどに近い。
 一方、NWN2のベースのPnPの3.5eの共通ルール(SRD)のコール・ライトニングは、屋内でもよく通常はダメージ3d6(上記の屋外等の条件で嵐が特に激しい時は3d10まで増強し得る)の落雷を落とすもので、条件こそ緩いが、以前の版のものと比べると威力自体は嵐があろうが無かろうがかなり弱い。
 CRPGでは、BG,IWDなどInfinityエンジンでは屋外限定や大威力など、比較的にAD&DのPnPの通りの実装が行われている。一方AD&D1stのGoldBoxにはドルイド職も、またレンジャーの使える一部のドルイド呪文でもこの呪文はデフォルトでは存在しない。なお、BGシリーズではドルイド呪文がCD&DやAD&D1stのごとく呪文リストとしてひとくくりになっており、レンジャーがドルイド呪文を使えるが、AD&D2ndではレンジャーの使えるリスト(詳しくはアニマル、プラントのスフィアー)にはコール・ライトニング(ウェザーのスフィアー)は入っておらず、本来AD&D2ndでは使えない。3.Xe以降もこれを踏襲し、レンジャーのリストにはコール・ライトニングは入っていない。

 NWNではどうかというと、NWN1/2ともにPnPとは全く異なっている。NWN1では一点を指定してlv(最大10)d6ダメージの落雷を1回のみ落とすもので、屋内でも嵐がなくとも使用できる。ファイヤーボール等とほぼ同様のダメージ呪文(現に、呪文レベルが同じことからも海外NWN1プレイヤーの間では"druid fireball"と呼ばれることがある)となっている。一方、NWN2では地点は指定できず、術者の周囲が効果範囲になり(ゲーム内の呪文説明では"personal"となっているが実際は術者のみである)前衛ビルドのドルイドや風領域クレリックにさらに向く(後衛にはやや使いにくい)が、威力などの効果自体はNWN1と大差がない。ファイヤーボール等と異なり難易度設定にかかわらず「敵」にしか当たらない。

 上位呪文の呪文レベル5のコール・ライトニング・ストームは、3.5eのPnPでは上記ダメージ3d6/3d10のかわりに5d6/5d10となっているが、こちらもNWN2ではNWN1/2版の上位呪文となっており(つまりやはりPnPとは全く異なり)ダメージキャップが10d6から15d6に増加している。例えば9-10lvのドルイドがこの呪文を詠唱した場合、PnP版と異なりダメージそのものは呪文レベル3のコール・ライトニングと変わらない。ただし、セーブ難易度に+4のボーナス(敵がセーブしにくい)がある。同じ呪文レベルでダメージ域、術者が前線に近づかなくてはならない呪文として秘術系のコーン・オブ・コールドがあるが、セーブ難易度の他に範囲やフレンドリーファイアが無いこと、信仰系が前衛向きであること等をあわせて考えると、こちらがやや有利であるといえる。



〇シールド

 ブレイサーの特性から何となく予想がつくと思われるが、NWN2ではこのシールド呪文の「盾ボーナス+4」は、盾のベースボーナス(スモールなら+1, タワーなら+4)等ではなく、盾の「強化ボーナス」の部分を+4にする。そのため、盾を持っていないキャラだけではなく、強化ボーナスの小さい盾を持っているキャラが使用する利点もある。といっても、WIZ呪文リストにしかないため、ミスラルスモールシールドなどの秘術失敗率0の盾を持ったWiz/Sor魔法戦士が自力で唱えるか、Wiz/SorのマルチクラスやUMD(魔法装置使用)の高いキャラなどがスクロールやワンドで投射するか(またはブローチ・オブ・シールディングのような特殊な物品を入手するか)である。
 シールド呪文にはACボーナスの他に伝統的にマジック・ミサイルを防御できるという相克的な効果がある。これは初出のОD&DのGreyhawkの時点では無く、基本ルールのPHBではAD&D1stからだが、なぜかCD&Dでのみ矢1本ごとに「セービングスロー」に成功した矢しか防げないとなっていた。これはCD&Dでは呪文一般が非常に防ぎにくい(スペルユーザーのプレイヤーの工夫が報われるが、後半過剰となってくる)ことにも関連する。他の版では無条件に防ぐことができるものが多い。NWN2でもシールド呪文によるマジック・ミサイルに対する防御は再現されてはいるが、呪文レベル1を全て無効化し持続時間も長いゴーストリー・ヴィセッジで防ぐことの方が多いかもしれない。シールド呪文でモルデンカイネンのフォース・ミサイル(IWD2などにはこの呪文は存在する)などの上位呪文も防げるという効果でもあれば独自の存在意義が高かったのだが、このフォース・ミサイルはNWN1/2には無い(なお、IWD2でも、フォース・ミサイルはシールドで防げると説明には書いてあるが実際は実装不足で防げないという報告がある)。また、シールド呪文ではアイザックのミサイルストーム系は防げない。
 なお、NWN1ではこの呪文は基本ボックスの時点では存在せず、SoUで追加されたが、盾のベースや強化ボーナスではなく、「反発ボーナス」を+4する。したがって、指輪やクロークはじめ多くのスロットのAC反発ボーナスでそれに近い・良い値を得ている場合は重複せず、ACについては良くはならない。PnPでは(NWN2でも)高lvでも盾を持たないキャラのACを補強する利点はあったが、NWN1では既に反発+4装備を持つ高lvキャラにとってはマジック・ミサイルを防ぐ利点しかなくなっており、それもNWN1ではゴーストリー・ヴィセッジ(呪文レベル1を全て防ぎ、他に物理防御効果もあるが存在するので意義は微妙なところである。



〇モルデンカイネンズ・ソード

 AD&D1stではすでにPHB(1978)から載っている海外FTでは最も知られた呪文のひとつであり、WG世界の術者の名を冠する(故意にジャック・ヴァンス風としてあるネーミングの)代表的なひとつである。遥か後のCD&D緑箱(1984)では術者名の無い単なる「スォード」、汎用の3.Xeのd20(SRD)ではMage's Swordという名に変更されているが、FR世界ではそのまま5版に至るまでモルデンカイネンの名が用いられ続けている。
 PnPでも宙で自動で戦う剣が出現する、というビジュアル以外では版によって全くデータ上の効果は異なるが、D&D系のCRPGでも、実装内容はそれ以上に各ゲームごとに異なることが多い。「装備欄」に「武器」が出現する実装になっているゲームもある。NWN1/2ではアイテム・装備ではなく「召喚クリーチャー」として表現されており、NWN1ではヘルムドホラー(グレートソードをもったばんぺいくんのような浮遊ゴーレム)を召喚し、その硬さとNWN1の持続時間の長さから、ストーンスキンなどのバフをかけまくって壁として使うという、何かPnPとはかけ離れた状況が多々見られた。
 NWN2では浮遊する剣そのものの形状のクリーチャーを召喚するものとなっており、一見するとPnPのイメージに近いように見えるが、ルール的には結局は召喚クリーチャーであり、攻撃・ダメージの内訳も全く異なる(PnPではキャスターレベル+呪文能力値による命中ボーナスに4d6+3ダメージ、NWN1/2ではクリーチャーの固定命中とグレートソード/ロングソードのダメージ)。NWN2の剣クリーチャーの能力はNWN1のヘルムドホラーとは一長一短的である。またNWN1同様、各種のバフ呪文の影響を受ける。
 NWN1同様、召喚術が禁止系統になっている専門術者にとっての強力なクリーチャー召喚としても用いられる。



〇ディスミサル

 WIZ/SOR呪文レベル5、CLR呪文レベル4の防御術呪文で、NWN2の呪文説明では、「召喚された(召喚呪文による)クリーチャーを送還する」という効果が書かれている。
 しかしながら、実際の効果としては呪文説明とは全く異なり、召喚呪文によるクリーチャーだろうがそうでなかろうが、「来訪者及びエレメンタル」を消滅(即死)させる。仮にプレイヤーキャラがそれらのカテゴリにあたる場合(例えば、ドルイドがエレメンタルにワイルドシェイプしている状態など)プレイヤーキャラも対象となり得る状態(難易度によっては仲間がかけた場合など)で巻き込まれると即死するという大変にえんがちょな呪文となっている。逆に、OC等ではクリーチャーの種別指定がしばしば誤っており、効かないケースが多いとも報告されている。
 元ルールである3.5eのPnPルールでは、WIZ/SORの呪文レベル5の防御術(abjuration)呪文で、異次元界のクリーチャーを送還する(2割の確率で故郷と違う次元界に戻ったりするが、CRPGでは単に戦場から消滅するだけなので無関係である)。AD&D2nd〜3.0eまで通じて同様にPnPでは、召喚呪文云々ではなく異次元界のクリーチャーを送還する。なので、召喚呪文によるクリーチャーに限らないという点で、NWN2の「実装」は元ルールに近いといえるが、全く同じというわけではない。
 また(NWN2が多くのコードや説明文を流用している)NWN1では、呪文説明・実装ともに、「召喚呪文によるクリーチャー」を消滅させる効果となっている。召喚された来訪者やエレメンタル以外でも、アニマルコンパニオン、ファミリア、アンデッドやゴーレムの類も消滅させられる(上述のように、これはPnPの3.0eルールとは異なる)。少なくとも呪文説明文に関しては、NWN2がNWN1から流用したことは間違いない。しかしながら、NWN2の実装については、NWN1から変更した(PnPに近くした)ことが、本来の意図(つまり説明文を流用したことが誤っている)のか、単なるミス(説明文が正しい)なのかは不明である。
 3.5eのPnPでは、ディスミサル呪文はWIZ/SOR呪文リストの呪文レベル5のみとなっている。ところが、NWN2の呪文説明ではWIZ/SOR5の他に、CLR4とBRD4でも習得できると書かれている。NWN1の呪文説明でもそうなっているので、これも流用したためと思われる。しかしながら、NWN2の実装ではWIZ/SORとCLRは呪文説明通り習得できるものの、BRDは習得できない。なので、NWN1に合わせようとしたのかPnPの3.5eに合わせようとしたのかが、やはりどちらかわからなくなっている。
 また、AD&D〜3.5eのPnPルールではいずれも「単体」のクリーチャーに効果を及ぼす呪文になっているが、NWN1では(対象の違いのためなのか)やけに広範囲(colossal)になっている。NWN2でもPnPとは異なり、呪文説明では"large"となっているのだが、これも他のlargeの呪文よりもやけに広い。
 PvPの元ルールからそうだが、セーブ難易度の計算法が特殊なものとなっており、ヒットダイスと術者レベルの差が加算される。そのため、強いクリーチャーよりは術者よりは弱いクリーチャーの集団などに用いた方が効きやすい。



〇バニッシュメント

 WIZ/SOR7, CLR6の呪文で、PnPの3.5eでは前記ディスミサルの上位版と表記されている。NWN2では、「召喚クリーチャー(アニマルコンパニオン等含む)、異次元界クリーチャー(来訪者、エレメンタル)」の「両方」を消滅させるので、効果を及ぼす対象という面でもディスミサルの上位版となっている。対象効果の他にも、効果範囲の広さや、呪文レベルによるセーブのしにくさ(ただし後述の留意点がある)などの差異がある。
 要は「何かそれっぽいものはだいたいすべて」対象となるのだが、「プレインタッチト」はNWN2では「来訪者」とは別カテゴリであるせいか影響を受けない。PnPでは来訪者にあたるはずのハーフセレスチャルはNWN2ではプレインタッチトなので、ケイリンは影響を受けない。ギスゼライはNWN2でも来訪者なので、ジャイヴは敵にかけられると影響を受ける。
 セーブの判定方法はディスミサルとは異なり、通常のwillセーブを行うが、(PnPの元ルール、呪文説明ともに)「術者レベルの2倍のヒットダイス」の敵までに効果があるものとなっている。が、willセーブと呪文抵抗の両方をかいくぐらなくてはならないので、どちらも高い値を持つ強めの来訪者クリーチャーにはかなり効きにくく、どのみち弱めのクリーチャー多数や、来訪者でないもの(willセーブが低かったり呪文抵抗を持たない)に用いた方が有効なものとなっている。おまけに判定にバグが多々あり、例えば前述の「術者レベルの2倍のヒットダイス」は本来、消滅させた(セーブと呪文抵抗の両方を貫通した)敵に対して消費されるものと思われるが、どうやらNWN2では消滅させるさせないに関わらず判定を行った時点で消費されてしまうらしい。ディスミサルに対して必ずしも上位・有効とは限らない局面も考えられる。



〇レッサー・スペル・ブリーチ、グレーター・スペル・ブリーチ

 「特定の種類の防御呪文」を判定等なしで剥がす呪文で、3.5eのPnPのコアルールには全く同じか非常に近い効果の呪文というものは存在せず、おそらくBG2の呪文をもとにNWN1で創作されたといわれている(d20のルールを広く調査したわけではないので、全くないとは断言はできない)。Wiz/Sor運用の魔法スクール解説の所でも書いたが、BG2などの魔術戦では最重要呪文であるものの、NWN1/2では(モジュールによるが)魔術戦ばかりでもないので、有用性は劣ると言われている。しかし一方で、BGに比べるとディスペル系が術者レベル、呪文レベルの関係で効果が厳しく、さほど万能でもないので、いざ魔術戦になると、術者レベル問わず防御を剥がせる手段は有効であると考えられる。
 が、使用にあたってのまた別の問題として、NWN2の実装では、レッサー、グレーターともに理不尽に剥がせない呪文が存在する。例えば、メイジ・アーマーは剥がせるが、上位のインプルーブド・メイジ・アーマーは剥がせない。レジスタンスは剥がせるが、上位のグレーターやインプルーブド・レジスタンスは剥がせない。プロテクション・フロム・エナジーは剥がせるが、上位のエナジー・イミュニティは剥がせない。
 何が剥がせなくなっているかという選別で有力な説は、NWN1の時点で存在していた呪文は剥がせるが、NWN2で追加された呪文の多くが剥がせなくなっている、という説である。すなわち、NWN1のコードをそのまま流用した結果、NWN2の新呪文を追加するのを忘れているというのである。結果として、上位呪文の幾つかが剥がせなくなっているので、上位術者に対しては万全な対策とはいえない場合がある。そのあたりも評価を下げている一因と思われる。やはり万全な対策としては、高lvの術者による高レベルのディスペル系の方が有効だろうということになってくる。



〇グレーター・ディスペル・マジック

 魔法スクール解説の箇所でも書いたように、ディスペル系の呪文は「加算できる最大キャスターレベル」が異なり、呪文レベル6のこの呪文の場合は最大「15lv」までである。CD&DやAD&D2ndまででは呪文レベル3のディスペル・マジックひとつで(ディスペルできないと書いてある呪文以外)何でも解除でき、成功率が純粋に術者レベル差になるだけであったが、NWN1/2(3.Xe)ではディスペルの呪文レベルごとに「加算できる術者レベル」が決まっており、グレーター・ディスペルの場合は15lvまでで、16lv以上の術者が使っても加算できるのは15lvまでである。また、非常に混同しやすいのだがD&D5版やT&Tのように「〇〇呪文レベルまでの呪文をディスペルできる」でもないため注意を要する。
 が、ここでもNWN2と元のPnPルールでは差異があり、NWN2ではグレーターでは最大「15lv」だが、PnPの3.5eでは、最大「20lv」までであった。すなわち、PnPでは非エピックであればグレーターまで準備しておけば術者戦には充分であったのだが、NWN2では高レベルでは対応が困難になり、呪文レベル9のモルデンカイネンズ・ディスジャンクション(こちらは術者レベル上限なし)が必要になってくる。
 なぜこうなっているかというと、NWN1を引き継いでいるのではないかという説がある。NWN1では(呪文の名は3.0eなので「グレーター・ディスペリング」とやや異なるが)3.0eのPnPでも術者レベルは20lvまでだったにも関わらず、この呪文では15lvまでになっていた。
 それでは、なぜNWN1ではそのように15lvまでに下げていたかといえば定かではないのだが、一説には、NWN1では(ソロにせよマルチPWサーバーにせよ)lvの上昇がPnPに比べるとかなり早いことが多いので、万能呪文に近いものを早期に手に入れるよりは、高lvになったら高レベル呪文で対処するようにした、という説もあるのだが、私見では、他の実装にたまに見られるぞんざいさを見るに、そこまで深く考えて設定されていたかは定かではない。単にレッサー・ディスペル(術者レベル5lvまで)、通常のディスペル・マジック(10lvまで)に続いて「5lv刻み」にあえて設定したか、または単に間違えてそう実装してしまった可能性もないでもない。
 なお、NWN1/2のユーザーhak(override)によっては、「グレーター」の方の加算可能術者レベルをデフォルトの15lvから、PnP準拠の20lvに直しているものもある。



〇ゲート

 
召喚術の解説でも書いたが、PnPでは非常に多目的かつ強力な呪文で、来訪者の招請に限っても極めて強大な存在を呼び出すことができるが、D&D系のCRPGにおける実装、特にNWN1/2ではPnPよりも非常に限定的、かつ弱いクリーチャーしか呼び出せない呪文となっている。
 日本の"TRPG者"用のアンチョコ解説本類では、「定命の者が神を呼び出す呪文で、頼みを聞いてくれるかわからないのが問題」な呪文とされ、説明もそれに費やされていることがある。しかし、D&D系のPnPでは遥かに多目的な呪文であり、招請目的に限らず、別プレーンへの次元門を開くことができ、招請対象も容易に制御可能なものからそれ以外まで多様である。
 この呪文の初出であるOD&Dの追加ルールGreyhawk(1976)では、「コズミックポータル」を開くことができる呪文である(持続時間が書いていない)。このとき、ポータルを通じてultra-powerful being(例示されているのはオーディン、クロム、セト、クトゥルフ、輝けるもの、いずれかの(冠詞a)半神)を呼び出すこともできる。呼び出す場合は、差し迫った目的が必要であること(ここはかなり曖昧である)、5%の確率で別の存在が呼び出されてくることなどが記載されている。AD&Dより遥かに後出のCD&D緑箱(1984)でもこのOD&Dと(前半の開く次元界ごとの難易度差や、後半のbeingの内訳が消されて「イモータル」に書き変わっている他は)ほぼ同じである。上記アンチョコ本はこのうち後半の招請関連の記載のみを参照した(おそらくは、当時の日本の執筆者に次元界云々が理解できず読み飛ばしたり、例によってさらにその伝聞で書かれた)可能性がかなり高い。
 AD&D1stのPHB(1978)では、別次元界との間のultra-dimensionalなgateかportal(ゲートとポータルでは後の版では厳密な区別があるが、この時点では厳密ではない可能性が高い)を形成する。同時にそのゲートの近くにいる存在を引き寄せる効果があり、その結果として近くにいる者の招請に用いることができる、という説明になっている。呼び出される例はdemon, devil, demigod, god, similar-beingとなっている(ユニークや神性に限られているわけではない)。AD&D2ndのPHBでもだいたい内容は変わらず、ただし招請する対象については1stのような悪魔や神性といった具体例はなく曖昧である。2ndの方には「呼び出す者の名を指定する必要がある」と書いてあるが(つまり、呼び出すのがユニークや神性でないとしても個体名が必要と思われる)確実性や指定しなかったらどうなるのかの記載はない。どちらかというと、基本ルールの呪文の記述よりも、対象側や次元界のルールで規定する意図なのかもしれない。なお2ndではこの呪文を使ったというたったそれだけの理由で術者は5歳加齢する。
 3.Xeでは例によってさらにルールが明確になり、次元界間のゲートを開く(持続時間、形状なども規定されている)効果、移動や移送などに使用できる点が規定されている。日本のTRPGやゲーム小説などでは、ゲートという語が遠距離テレポート・転移用といった意味合いのことがあるが、3.Xeのこのゲート呪文は同じ次元界(例えば主物質界)同士を繋ぐことはできず、それらの間の移動には使えない。ゲートが他のプレイン・シフト等の他次元界に移動する呪文より優れているのは(他の阻害要因がない限りは)目標次元界側の出口が、術者が望んだ地点に形成される点である。そのため、移動や転送手段(例えば、相手の攻撃エネルギーを別次元界に飛ばすなどが例示されている)として非常に強力かつ多目的な呪文となっている。前述のようにポータルとゲートには厳密な区別があるが、ここでは詳細は略すがFRCSなどに書かれている(FR世界に一般的に形成されている)ポータルとこの呪文によるゲートの性質は相当に異なっている。
 3.Xeでは招請効果については2nd以前のような、まずゲートを開いて近くの対象を呼び寄せるのではなく、「ゲートを開く際に名を呼ぶことで、その者の近くにゲートを開くことができる」ことになっている。名は個体名でなく種族名でもよく、種族名などの場合まさしく名無しのモブモンスターの誰かの近くに突然ゲートが開き、招請される。神性やユニークのクリーチャーでなければ、そのゲートから強制的に術者側(の次元界)に呼び寄せられるが、神性やユニークは自分が望んだ時だけ移動する。
 3.Xeでは「1体の対象なら呼び出せる規模は無制限」であり「術者レベルの2倍以下のヒットダイスの対象なら確実に制御できる」ということになっている。つまり、ゲートの呪文レベル9を使える17lvのWizが使用したときに、34HDまでの名無しクリーチャーなら確実に呼び出し、制御できる。神格やユニーク・クリーチャーは確実に招請も制御もできないが、ゲート呪文が(旧版同様の)これらを招請する数少ない手段としても位置づけられていることは多い。3.5eでは「招請をする場合のみ」1000xpの経験値コストがある。
 結局のところ、本来PnPでは次元間移動の多目的の次元門を開くために使え、さらに招請目的のみに限っても神性やユニーク、さらに34HDまでの名無しモブモンスターならば普通に呼び出し制御することもできる。
 さて、CRPG版ではどうなっているかというと、次元界間移動は再現できず、招請にせよ省略せざるを得ないということを考慮したとしても、実装されているものは極めて限定された効果になっている。まとめて言うといずれのゲームでも、限定的な招来効果になっており、PnPのゲートによるものは招請(calling)であって招来(summon)呪文とは全く異なるが、CRPGではサモン系呪文と処理はほとんど同じで、区別などはない。1stのGoldBoxではゲートに相当する呪文はない。2ndのInfinity Engine(BG2など)では「ピット・フィーンド」、つまり他次元界でも「九層地獄(バートル)」に住むデヴィルの「種族」としては最も強力なものだが、単なる名無しモブモンスターを呼び出す呪文となっており、しかも暴走されないために防御手段(プロテクションフロムイービル呪文等)が要る。2ndではあるが特に使用者が5歳加齢することはない(これはInfinityでは他の加齢する呪文も同様である)。2nd時点ではPnPルールでもゲートで招請や制御できる対象の強さは規定されていないので、Infnityの実装もルール外とはいえないものの、ピット・フィーンドではいわゆる脅威度やヒットダイスとしては必ずしもWiz18lv(2ndの場合)や呪文レベル9に値する能力を持っているとはいえない。プラネターやダークプラネターを呼び出すものは呪文レベル10(PnPではTrue Doeomerに相当)の別呪文となっている。なお、例えば3.XeのPnPのゲート呪文ならば、プラネターは14HDにすぎないため、本来はエピック呪文でないゲートでも危険なく招請し、防御手段に拠らなくとも完全に制御できるはずである。
 3.0eのNWN1では、「ベイラー」(PnPの訳ではBalorは「バロール」だがなぜかNWN1ではこの名になっている)を呼び出す。「奈落界(アビス)」に住むデーモンの種族としてはピット・フィーンドとほぼ同格であり、BGとだいたい同じ強さといえ、防御手段が必要な点も同じである。が、3.0eとしては13HDにすぎないBalorが防御手段がないと制御できないというのは明らかにおかしい(3.5eのベイラーだとしても20HDで、34HDより明らかに低い)。実装不十分とかゲームバランス云々というよりは、おそらく、この多様な用途のある呪文についてPnPの再現云々を見直すよりは、CRPG版として「BGシリーズと同様の効果にする」ことを意識したのではないかと思われる。
 3.5eのNWN2では、「ホーンド・デビル」(コルヌゴン)を呼び出す。特に防御手段は必要ない。コルヌゴンはピット・フィーンドより本来遥かに格下だが、3.5eでのヒットダイスは15HDであり、2ndのピット・フィーンドや3.0eのベイラー(いずれも13HD)より実はヒットダイスだけは高い。実際、壁としてはやや硬いような感触がある。しかし、どちらにせよPnPの本来のゲート呪文の効果としては、経験値消費コストが無いことを加味しても、相当に頼りないことは変わりはない。
 なお、NWN2のエピック呪文(3.Xeのエピックルールのものに相当する建前だが、システムはかなり違う)には「エピック・ゲート」がある。こちらはベイラーを呼び出すのだが、倒されると再度呼び出され、4体まで繰り返し現れるというエレメンタル・スウォーム呪文の実装に近いものとなっている。何せよ、相当しょぼくれた呪文である。
 結局のところ、CRPGのものはいずれも召喚術としてもかなり弱いものなのだが、中でもNWN2のものは、壁を呼び出すという意味でもサモン・モンスター(上位ではグレーターやエルダーのエレメンタルを呼び出す)との差別化もあまりできてはおらず、弱いだけでなく存在意義も微妙な呪文となってしまっている。シナリオモジュール側で、次元転移門としての用法や、招請されるクリーチャーの工夫を設けるなどをすることも可能と思われる題材だが、そういった話もあまり聞いたことがない。



〇ハンマー・オブ・ザ・ゴッズ

 NWN1/2の独自とされる、PnPのPHBなどには直接全く同じ名の呪文というものがないクレリック4レベル呪文で、FRやNWN1/2のwikiでもNWN以外には特に出典は示されていない。しかし、これはどうもPnPでは善悪秩序混沌の「領域呪文」のみとして存在する、ダメージダイスがよく似た呪文群を、統合・変換して実装していると推測できる。PnPでは例えば「善」属性領域では3.0eでは「ホーリー・ブライト」、3.5eでは「ホーリー・スマイト」で、各属性によってダメージダイス等は同じだが、呪文の名前と、効果(ダメージを与える対象の属性や、与える状態異常の種類)が異なっている(悪なら「アンホーリー・ブライト」等)。この4種の領域呪文を、一律の効果としてクレリック一般呪文にしていると思われる。これは、ホーリー・ワード(PnPでは善でのみ同名呪文で、悪ではブラスフェミィなど属性によって別呪文となっている)がNWN1/2では各属性分が統合されて1種の呪文となっているのと同様と思われる。「ハンマー・オブ・ザ・ゴッヅ」という名前は「混沌」領域の「ケイオス・ハンマー」から採られている可能性が高い。
 ホーリー・ブライト/スマイトについては3.XeのPHBの挿画の「スクブス(サキュバス)にホーリー・ブライト(スマイト)を叩きこむジョウゼン」の姿が有名である。広範囲呪文なのになぜか至近で叩きこんでいるペイロア僧ジョウゼン、「スクブス」(3.0e以外のほぼあらゆる場所では「サキュバス」と訳されている語である)が両目から稲妻を出して空から襲い掛かろうとしていたのが食らいかけてのけぞっている姿が妙に色っぽい、など評され、D厨どものゲテモノ食い趣味はよくわからん、じゃなかった、当時の一部に好評であった。この挿画を見る限りは、空から光柱が叩き下ろされるNWN1/2のハンマー・オブ・ザ・ゴッズのビジュアルや、ハンマーという語感とはかなり異なっている。
 PnPの上記領域呪文では、ダメージダイスは基本が「キャスターレベル2ごとに1d8、最大で10lvの5d8」であるが、NWN1の元である3.0eのPnPでは、領域呪文ごとの属性と同じ属性に対しては影響を与えず、反対属性にはそのままの威力、それ以外の属性には威力は半減する。例えば「善」のホーリー・ブライトは、悪にはそのまま、中立には威力が半減、善には無効である。また、セーブに失敗した上記反対属性クリーチャーは(これも属性呪文ごとに異なる)盲目、幻惑などの状態異常を被る。NWN2の元である3.5eのPnPのホーリー・スマイト等でもほぼ同様だが、特定属性の来訪者に対しては基本ダメージよりもさらにダメージが増大する効果がある。
 一方NWN1/2はというと、NWN1で実装されたものが、NWN2でも効果は同じである。全ての属性のクリーチャーに対して、一律「キャスターレベル2ごとに1d8、最大で10lvの5d8」の神性(divine)ダメージであり、セーブ失敗したクリーチャーは(属性や種別にかかわらず)「幻惑」である。領域(アライメント)ごとの呪文を統合した結果と思われるが、3.5eのNWN2であっても、特定属性のみならず種別(来訪者)などについてもダメージが増大したりはしない。NWN1のものをそのままコピーした結果と思われる。
 PnPとNWN1/2を比較すれば、「特定の領域・回数も限られた領域呪文スロット」であったPnPに対して、NWN1/2では「領域を問わずCLR呪文リストの共通呪文・通常呪文スロットで使用可」である分、汎用性は上がっている。(なお、Pathfinderでは内容は3.5eと同様で、領域ではなく通常のCLR呪文リストでありより近い。)とはいえ、来訪者に対して増大しない以上、呪文レベル4としては(幻惑を入れても)それほど威力は高くない。耐性のある敵が少ないが1d8系統のばらつく割に低い威力と状態異常の組み合わせは、サウンド・バーストにも似ている。
 AD&D1st、2ndや3.XeのPnPに増して、NWN1/2では「素CLR呪文リストが直接攻撃力(ダメージ呪文)が充実している」と感じる理由として、これらのPnPでは領域呪文で1スロットのみだったものの一部が、NWN1/2では通常のCLR呪文リストに汎用化されていたり、領域呪文を通常の呪文スロットで「連発」可能となっている点が挙げられる。特にソロプレイが多々行われるNWN1において、各クラスのできることが増えている側面があるものの、過剰に優遇されているきらいもある。



〇メイジ・アーマー/インプルーブド・メイジ・アーマー

 装備解説のブレイサーや、呪文解説の召喚術とかなりかぶった話となるのだが、この呪文は鎧の「ベースAC」ではなく、鎧の「強化ボーナス」の部分を増強する。
 装備解説の通り、3.Xeのアーマークラスには反発、外皮、回避、鎧の"魔法強化"、盾の"魔法強化"といったボーナスがありこれらは別種類の場合は累積する。その他に、「鎧や盾そのもののベースAC」がある。鎧を着ることによる合計AC加算は、鎧の強度によるベースAC(レザーなら2、フルプレートなら8)に、鎧の"魔法強化"ボーナスが加算される(フルプレート+1なら、8+1=合計9)。
 まずPnPの元ルールの話をするが、元ルールのブレイサーズオブアーマー+4やメイジ・アーマー呪文は、本来この「鎧自体のベースAC」の方を4にする(正確なルール用語としては「対象に4の鎧ボーナスを加える」が、鎧ボーナス同士は累積しないので、鎧のベースACが4より低い場合のみ置き換えられる)呪文である。服やレザーならベースACが4に変わり、元がベースAC4以上の重い鎧を着ている者に対しては意味はない。魔法使系呪文や装備であることからも、元が重装備できない魔法使系や盗賊系に有効な呪文や装備である。これはAD&Dからの伝統である。

 ところが、NWN2のメイジ・アーマー系呪文は(ブレイサーの+値同様)「鎧のベースAC」でなく、「"魔法強化"ボーナス」の部分を+4に置き換える。つまり、強化ボーナスが+3以下のあらゆる鎧を着ている者に対して有効で、重装鎧も例外なく強化する。フルプレート+1も一時的にフルプレート+4になる。なお、あくまで鎧ではなくて「着用者」にかかる呪文なので、鎧のプロパティを見ても表示されない。合計ACの方の表示に反映されている。

 その結果どうなるかというと、PnPルールでは、鎧のベースACを置き換え=防具が薄い者(ウィザード自身等)により効果が高い呪文だったのだが、NWN2では強化ボーナス部分を置き換えるので鎧の軽重には関係ない、というか、ゲーム内では鎧よりもブレイサー等の方が強化ボーナスが高いものが手に入りやすく(3.5eのDMGでは、非エピックでも+8までのものが出る)ウィザード等は元々鎧の強化ボーナス部分が高いことが多いので、むしろウィザード等以外に優先的にかけるべき呪文に逆転している。が、いずれにせよ、誰に対しても(皆の鎧の強化ボーナスが4未満の時点では)有効な呪文となっている。

 PnPルールの時点で、鎧の強化ボーナスを直接に付与する呪文としては、クレリックのマジック・ベストメントなどがあるが、これは術者lv/4のACなので、+4になるのは16lv以上である。つまりNWN2では、マジック・ベストメントよりも、ソーサラーなどがメイジアーマー系を習得して全員にかけまくった方が有効である。インプルーブド・メイジ・アーマーなら鎧+6になり、呪文レベル3といっても一考の余地があるだろう。いずれも持続時間は充分に長い。
 おまけに一時のバージョンでは、メイジ・アーマー/インプルーブド・メイジ・アーマーは《呪文威力強化》特技の対象となっており、さらにACを増強させることもできた。新しめのパッチでは(なぜか強化特技の対象としてスロットに充填などはできる設定のままだが)威力強化してもACは増強しなくなっている。

 なお余談だが、NWN1ではメイジ・アーマー呪文の効果は全く異なり、合計AC+4は+4でも「鎧の強化・反発・外皮・回避」にそれぞれ+1という実に謎の呪文となっている。鎧の重さ軽さで役立つというよりは、+1以上の装備(+1鎧、アミュ、リングなど)をどれも持っていない低レベル時にのみ役立つ呪文となっている。PnP通りとはいかないが、呪文レベル1の呪文が序盤のみ役立つという調整は不自然ではなく、16lvまで延々役立つというよりはかなりまっとうだろう。
 おそらく、NWN1/2のコード上の都合で、PnPの元ルールのような「鎧のベースAC側」を変化させるという呪文効果が実現できず、鎧の強化ボーナス側の増強となっていると思われる。NWN1ではその不自然さを避けて、まったく別の効果に変更し、一方で、NWN2ではブレイサーと同様に強化ボーナス増強呪文のままとしたようだが、調整にはかなりの疑問が残る。
 なお、これはNWN2でシールド呪文が盾のベースではなく強化ボーナスを増強させるが、一方でNWN1では「反発ボーナス」(盾を装備していないキャラは、既に確保していることが多い)というかなり残念な呪文に変更されているのも、よく似た状況と思われる。



〇エンラージ・パーソン

 対象を大型化するEnlargeはAD&D時代から魔法使系の近接職強化呪文の定番であるが、CD&D(赤箱シリーズ)にはないため、AD&DのPCゲームでその効果(もといD&Dシリーズの非ダメージ呪文の凶悪さ)に仰天したというCD&Dプレイヤーは多い(これはStinking Cloudなどについても言える)。一応CD&Dにはポーション等のアイテムの効果で「グロース」(2倍固定)のものがある。
 効果は版によってかなりばらついており、多くの版で概ね「装備品ごと、術者lvに緩く比例して(lvごとに+10%, +20%など)大きくなる」は共通しているが、ストレングスやダメージなどに与える効果は一定しない。AD&D1stではPHBには数値的な影響は書いておらず「大きくなった者が投げる大きな石などは相応のダメージを与える」などとしか書いていない。2ndではStrなどは変化せず、大きくなった武器のダメージについて、サイズに応じて武器ダメージ等をかけ合わせる(1.4倍などになったら武器部分だけを電卓でポチポチと計算する)。CD&Dのグロースポーションは2倍ダメージで固定である。3.0eでは+20%ごとにStr+1されるが、最大1.5倍である。3.5e(ここから名前がエンラージからエンラージ・パースンになっている)では「身長2倍、体重8倍」に固定され(発動した術者であっても状況によって他の大きさを選べないのもこの版からである)、Str+2と、サイズの修正によりDex-2, 攻撃-1, AC-1となる。いずれの版でも、ルールが簡易なCD&D以外では、大きさが変化することによる、タクティカル・コンバット(盤上戦闘)においての間合いの拡大や、特殊攻撃に対するサイズ修正もきわめて重要である。
 PCゲームでの再現は、AD&D1stのGold BoxシリーズではEnlargeは「Strが巨人級に上がる」という、かなり強力だが元の基本ルールとは異なるものになっており、見かけや間合いなども変化しない。2ndのBGシリーズ、3.0eのNWN1ではデフォルトルールには存在しない。一方、PCゲームでは特に近年、Pf:KMでサイズの影響含めて再現され、それまでBGなどにには全く登場していなかった呪文のその威力に度肝を抜かれたという声が多数上がった。
 NWN2ではどうかというと、3.5eのルールに則り上記のStr等の修正やサイズの数値修正はひととおり再現されており、さらに+3の魔法ダメージが加わっている。キャラの外見も大型化する。しかし、数値が修正されているだけで、実際はサイズによる間合いや打倒しなどに対する抵抗への影響は特にない。これはNWN2では他の長い間合いの武器なども再現されていないのと同様である。グレイドワーフが連発して巨大化する姿がよく見られるが、割と見掛け倒しである。さらに、呪文説明にも書いてあるが、能力値へのボーナスは(元の3.5e PnPの「巨大化ボーナス」とは異なり)「強化ボーナス」なので、呪文効果やアイテムによる能力値強化とは累積しない。強化のアイテムや呪文等が充実してくると有用性は落ちる。しかし、なぜNWN2で追加されているかはよくわからない+3の魔法ダメージボーナス(なぜか遠距離武器にもつく)については、能力値や武器自体の強化ボーナスなどとは別に武器の印(追加ダメージ)として追加されるので、地味に強化はされる。持続時間が長いこともあって、重視するNWN2ゲーマーもいる。



〇アイザックス・レッサー・ミサイル・ストーム/アイザックス・グレーター・ミサイル・ストーム

 下位上位のミサイル・ストーム呪文はNWN1/2界隈ではマジック・ミサイルの上位呪文のように説明されまた捉えられることが多いが、その性質は極めてかけ離れている。マジック・ミサイルの上位呪文としては、AD&Dから存在する特に有名なものとしてはモルデンカイネンズ・フォース・ミサイルやスニーロックス・メジャー・ミサイルが知られており、PCゲームにも少なからぬ登場例(前者は例えばIWD1(HoW)やIWD2、後者はDungeon Hackなど)がある。NWN1/2でこれらが採用されず、こちらのミサイル・ストーム呪文になった理由の推測は後述する。
 少なくともコアルールや、主要な補足ルール、よく知られたd20などには(上記2種以上に)このアイザックス・ミサイル・ストームに似た挙動を示す呪文は存在せず、NWN1/2で創作された呪文だと推測されていることが多い。

 なお、一方で日本のPCゲーム界隈の一部では、これらの呪文を、こともあろうに「dandwikiやForgotten Realms Wikiに載っていたからD&Dの元ルールからある呪文だ」などと流布されている例がある。実際には、いずれのwikiにもこの呪文の記載自体はあるが、前者はhomebrew(wiki利用者の自作データ)であり、後者はそもそも典拠とされているのがNWNである。dandwikiはhomebrewだろうが公式データと自称して載っている箇所であろうが信憑性「論外」のサイトだが、FR wikiも、引用や整理が極めて杜撰、あるいは好意的に言い換えれば、一定以上の前提知識を持った者が解読することが大前提のサイトであるため、「FR wikiに載っていた」云々(他の出典の知識を持たない者と確定する)などと流布する者には警戒すべきである。

 NWN1においてはレッサー、グレーターともに拡張1(SoU)で追加され、レッサーはダメージ1d6の魔法ダメージの矢をキャスターlvあたり1本、最大10本投射する。グレーターはダメージ2d6でやはりキャスターlvあたり1本、最大20本である。(最初のSoUのマニュアルにはグレーターのダメージが1本あたり「3d6」という誤記があり、GoG版のDiamondの電子マニュアルでも直っていない。)
 NWN2では最初の基本のOC時点から存在する。レッサーはNWN1と同様である。グレーターは、ゲーム内の呪文の説明には「最大10本」まで投射されるかのように書いてあるが、実際は、NWN2でも20本まで投射されるが、1体の目標には最大10本までしか命中しない、という挙動である。

 まず「1体」の敵に投射した場合(効果範囲内に1体の敵しかいなかった場合)だが、レッサーは術者lvが10lv以上であれば10d6のダメージを与え、魔法ダメージ減少がない限りは必中かつ通常は減少もないため、呪文レベル3〜4等の標準的な(ダメージ10d6でセーブありなどの)ダメージ呪文に比べて威力を発揮しやすいといえる。ただし、乱戦では後述するように命中する対象のダメージがかなり不規則にばらけるため、他の呪文レベル3〜4のダメージ呪文に対して必ず有効とはいえない。
 グレーターの方はNWN1では40d6、NWN2では1体に対しては10本までなので20d6だが、いずれも抵抗や減少がさらに難しいこともあってかなり有効である。グレーターでも呪文レベル6なので、呪文修正特技を適用することも容易である。NWN2では20d6なので、他の高lvのダメージ呪文で敵がセーブを落した場合とほぼ同等の威力となる。NWN1では1体に向かう本数制限がないので一見するとNWN2の倍もの威力に見えるが、NWN1ではレベルキャップが高くhpのインフレも多く、またソロプレイなどで秘術系に一対一の直接ダメージが求められる面が大きい。他の大ダメージ手段(キャップを付け忘れたようなフレーム・アローや、エピック呪文など)ともほぼ同等であり、NWN1の中ではこの呪文1つだけ飛び抜けて強力というわけではない。

 次に「複数」の敵に対してだが、効果範囲内に複数の目標が存在する場合、この呪文はマジック・ミサイルのように一体に集中させるという選択をすることはできず、投射された複数の矢が自動的に複数の敵にばらけて向かって行く。その具体的な挙動についてはよく意味がわからないと感じるゲーマーが多いと思われる。呪文の説明は「もしもクリーチャーが矢より多い場合、一番近いものからダメージを与え、矢のほうが多い場合は、一体に複数の矢が命中する。 If there are more creatures than missiles, only the closest targets will be damaged. If there are more missiles than creatures, one of the creatures will be hit with multiple missiles.」であり、よく読んでも結局何がどうなるのかよくわからない。
 実際にはどのように対象と命中する本数が選択されるのかといえば、まず、本数を効果範囲内の目標の数で整数割り算し、割った整数と余りを出す。その割った整数分の本数が目標にそれぞれ分配されて命中する。そして、「余り」の本数が「全部」、一番近い対象に命中する。NWN1 wikiで例示されているところでは、グレーター・ミサイルが14本で対象が3体だった場合、4本ずつが3体の対象にそれぞれ向かい、余りの2本は一番近い対象に当たる。つまり一番近い対象だけが6本、他は4本が命中する。効果範囲内に何体がいるか、「余り」が何本になるかで、まるで結果が異なってくるわけで、リアルタイムなNWN1/2のゲーム内では特に考えずに連発されることが多いものの、結果が予測しにくいことこの上ない。NWN2では、20lv以上であれば20本が投射され、かつ1体には最大10本まで向かって行くので、敵が2体だと10本ずつが向かってゆき最大の効果が期待できるが、3体以上だと大きくばらつくようになっていく。やはりできるだけ、このように結果が不安定な複数相手ではなく、ボス級などの一体の強敵に対して使用すべき呪文と思われる。

 概して一体に対しては安定して強力な効果を持つが、状況によっては制御が難しい。単体の方の威力はNWN1/2の他の呪文との比較では極端に強力ではないとはいえ、何のためにわざわざNWN1/2オリジナルでこのような呪文を追加したのか、という理由については幾つか説がある。有力なひとつは、Infinity(BGシリーズなど)の「シーケンサー」系の呪文を何らかの事情で実装することができなかったので、そのかわりに秘術系の活躍手段として入れたのではないか、というものである。シーケンサーとは複数の呪文を一度に発動させるもので、ダメージ手段としてもダメージ以外の多彩な手段としてもBGシリーズの秘術系を非常に強力かつ魅力的なクラスにしているシステムだが、NWN1/2ではエンジン上、ゲームシステム上またはマルチプレイの都合か何かでこれを呪文として実装することができなかったと考えられる(NWN1ではアイテムのプロパティとして残っているが、ダメージ呪文等は発動できず、また機能させるにはモジュール側の条件があり設定が必要である。NWN2のアイテムデータの発動効果などには「シーケンサー」のテキストが一部残っている)。かわって、秘術系の活躍する手段として、比較的連発が可能で、一体の強敵に対しては安定した(そして他の強呪文の威力は超えない)ダメージを与えるが、癖の大きいこのような呪文を追加したのではないか、というのである。この呪文がシーケンサーのかわりになっているか、またはマルチプレイ等で有効になっているのかは定かではないため、この説が支持に足るかは不明である。



〇メテオ・スウォーム

 新旧のPnP版の元ルールについては
旧版メモ雑記の方で説明している。PCゲームでの再現は、例によってゲームエンジンによって、忠実に再現されていることも全くの別物になっていることもある。「秘術系のダメージ呪文の頂点」は特に戦闘重視となりがちなCRPGでは重要であろうが、相応の威力を持っていることも、全く持っていないこともある。
 AD&D1stのGoldboxエンジン(PoRシリーズなど)では例によってびっくりするほどPnPルールに忠実である。軌道上の単体にセーブ不可の大ダメージと、軌道先の爆発地点にセーブ可の余波ダメージを与える。が、なぜかGoldBoxの最大爆発範囲はファイヤーボール系が異常に広くなっており、それに比べると、こちらの爆発範囲はそれほどでもなく、さらにAD&Dでも1stではファイヤーボール等もlvキャップがなく高威力が出るため、Meteor Swarmの広域の爆発余波の方はファイヤーボールに比べてさほどの威力もなく、広域破壊呪文としての側面ではあまり留意すべきものはない。結果、GoldBoxのこの呪文はほとんど対単体か直線上の少数の敵に対する「隣接撃ち」(強敵の近くに寄り、4つの流星軌道が全部直撃するように位置関係を調節し対単体には大ダメージを出す)以外には使わない。しかし、どちらにせよ、そもそもGoldboxでは10lv台後半のような高レベルに対応するシステムが整備されておらず、しかも公式でこのlv域のゲームも少ないため、この呪文が使われるような高レベル自体がプレイされる機会がなく(海外ならFRUAユーザーモジュールが大量にプレイされているが)使用感を覚えている日本のゲーマーはほぼ皆無と思われる。
 AD&D2ndのInifinityエンジン(BG1,2など)ではPnPルールとはかなり異なっており、広範囲に4d10(なぜか元の10d4ではない)のセーブ不能の火ダメージを与えるが、なぜか4ラウンド持続してダメージを与え続ける。4ラウンドかけて元ルールに近いダメージを与える可能性はある。

 NWN1では、PnPの3.0eルールとは全く異なっている。PnP版が6d6の[火]ダメージを与える光弾を4つ(または半分を8つ)投射し、範囲が重なる場所や斜線上では複数威力を受けたりセーブ不可だったりするのに対して、NWN1では「術者中心の広範囲に20d6の[火]ダメージ」のみに変わっている。20d6やそれ以上でしかも火より用途が広かったり呪文修正で高威力を出せる呪文は他にいくらでもあるので、「威力」という点では全く存在意義はない。
 ただし、NWN1のこの呪文は「術者中心のすぐ近くに安全圏ができる」という特徴があり、おそらく、フレンドリーファイアありの設定にしている場合、マルチプレイでのパーティーが囲まれた際の周囲の広域にダメージを与えられる(範囲攻撃を投射する呪文ともまた違う)用法を意識した節がある。しかし、呪文レベル9に相応の有用性とは到底言い難い。

 NWN2では、うってかわってPnPの3.5eにはわりと近くなっている。「地点」「クリーチャー」対象を選ぶことができ、地点対象では6d6ダメージの流星を4つ投射し、中心付近では24d6〜離れると6d6までの火ダメージとなる。クリーチャー対象では流星を4つ(同一対象に)投射し、遠隔接触攻撃を成功させればそれぞれ2d6殴打+6d6火のダメージを与え、命中判定に失敗したり周辺の敵には地点対象同様に1つごとに6d6ダメージ(計24d6)を与える。また、NWN1に似た「術者周囲」を選ぶこともでき、周囲5フィートの空白地以外のさらに広域だが、ダメージは全域6d6のみである。
 遠隔接触攻撃は当然ほかの命中バフの影響を受ける。ここで、トゥルー・ストライク呪文は、PnPルールでは次の1回の攻撃だが、NWN2では諸事情で「9秒間」持続するので、連続詠唱のタイミングによっては4つの遠隔接触攻撃の全部が命中+20され(確実に当たるわけではないが)ほぼ全命中による最大ダメージ(32d6, 期待値112, 無論セーブや身かわしによる軽減は不可能)を見込める。冒頭に挙げた旧版雑記で述べているが、クラシックD&D(緑箱)で64d6, 期待値224だった、などというのは長年流布され続けているガセネタであり、実際の緑箱版の期待値は84にすぎないので、NWN2はそれよりも遥かにダメージ値は高い。
 が、そもそもNWN1/2では、敵も含めてヒットポイントはかなりインフレしており、かつ「対単体」のダメージ値であれば近接系クラスの方がダメージは高いものが出るので、1ラウンド32d6でも単体威力はさほどではない。対単体の回避軽減不能呪文では、前に述べたアイザックス・グレーター・ミサイル・ストームが2d6x10でダメージは威力強化で期待値105、最大化で120であり、最大化すればわずかに高く、火ではないため軽減されにくいため、対単体ではメテオ・スウォームはこれと同等以下となる。
 その一方で、NWN2では敵の数自体が非常に多く、単体のボスキャラの周囲にヒットポイント低〜中の護衛が大量に数で押してくるという状況に見舞われるモジュールもまた多い。そのような状況ではミサイル・ストームは威力を発揮できないが(特性については以前の記事を参照)、メテオ・スウォームはボスキャラ単体を指定して回避軽減困難なダメージを与え、かつ周囲に余波を与えるというNWN2の実情に沿った用法は期待できる場合もある。








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