○NWN2のエピックルール(21-30lv)


 NWN2の20lv超のエピックルールは、NWN1や、さらにNWN2の元ルールであるはずの3.5eのPnPルールとは著しく異なっているため、特に注意する必要がある。
 元のPnPルールではエピックであればレベル上限は特になく、NWN1では(PHB上限の2倍の)40lvまで上げられるが、NWN2では「30lv」までである。

 そして、NWN2では21-30lvの能力上昇も、PnPやNWN1とは全く異なっている。
 3.Xeやd20の根本的なルールとして、21lv+では「基本攻撃ボーナス(BAB)」や「セービングスロー(st)」はそれまでのクラスレベルのようには上昇せず、いずれも2レベルごとに1ポイント(5%)ずつ、別途「エピックボーナス」が加算されていく。これは、クラスレベル依存でBABやstや攻撃回数を加算していくと、非常に高レベルではあまりにもクラス間の能力が開きすぎる(stは顕著だが、利点と弱点の差があまりにも大きくなりすぎる)ので、ある程度平均化する意図があると思われる。
 NWN1では基本的にPnP通りである。すなわち、攻撃やstのボーナスは21-40lvでは2レベルごとに1点ずつしか上がらない。さらに、画面上ではそのままBABやstが上がっているかのように表記されているが、実際は20lv以前のBABやSTとは別であり、キャラ能力に表示されているBABが21を超えても、基本の(連打や2刀等を除いた)攻撃回数が1ラウンド4回を超えたりはしない。
 しかし、これに対してNWN2では、21-30lvでもBABやSTがそれまでと同率で上昇していく。(なお、これは3.75eと呼ばれるPathfinderが暫定的21lv+ルールとして、上述した能力差の危険性と共に非推奨ぎみに挙げているパワー定量化上昇率と同じである。)さらに、NWN2では(Pfと異なり)攻撃回数も増加し続け、戦士系(BAB高, lvごとにBAB+1)でBABが21になれば5回攻撃、26になれば6回攻撃が可能になる。


 上記のような事情から、エピックのビルドは、NWN1と2とでは(元から3.0eと3.5eの差以上に)大きく異なってくる。
 例えば、NWN1では最大レベルの40lvまでに「最大の攻撃回数(4回), BAB=16」を確保しようと思えば、20lvまでのエピック以前に最低であれば4lvを戦士系クラスレベル(BAB高)で埋め、16lvを聖職・盗賊系(BAB中)で埋めればよく、あとの組み合わせはどうしようと自由であった。BABが攻撃回数に影響するのは20lvまでなのだが、逆に言えば、21-40lvはBAB等を気にせずに組み合わせを考えられるのである。また20lvまでに4回分だけのBAB(16+)を確保すれば足りる。
 が、NWN2では、最大レベルの30lvまでに「最大の攻撃回数(6回), BAB=26」を確保しようと思えば、30lv中の最低14lvを戦士系で埋めなくてはならず(BAB高:14lv, BAB中:16lvでようやくBAB=26となる)、攻撃回数と他の能力をつり合いを考えると、攻撃6回は諦めることも検討する必要がある(さらに二刀系特技やカマ連打使いなども念頭に入れると、非常にややこしい)。
 また、NWN2ではプレステージ(上級)クラスのエピックルールもNWN1やPnPとは異なり、エピックレベルを超えたキャラも、プレステージクラスは10lvを超えて延ばすことはできない。


 例えば、FTの伝統的魔法戦士、メルニボネのエルリックをビルドすることを考えてみよう。出来の悪さで有名な3.0eムアコック、d20 DLOMではエルリックはWiz20/Ftr8だが、これを意識しつつも、秘術能力と攻撃回数の両方をできるだけ高くするビルドを考えてみる。
 仮にNWN1でDLOM同様にビルドした場合、BAB高のFtrを8lvすべて最初の20lv以内に持ってきたとしても、20lvの時点でFtr8:BAB+8, Wiz12:BAB+6 =BAB14となり、何をどうやっても最大の4回攻撃を実現することはできない。20lv以内にBAB高のFtrと低のWizだけを組み合わせてBAB16を実現するには、最低でも20lvまでにFtr12が必要で(Ftr12:BAB+12, Wiz8:BAB+4)これ以上Wizの比重を増やすと20lvまでにBABが16に足りなくなる。つまり、NWN1でデータ化するとDLOMのデータからは外れる上、20lv未満では(つまり、成長途上の長期間を)かなり戦士能力偏重とせざるを得ず、呪文レベル9のWiz呪文を使えるのは、キャラクターレベルが29lvとDLOMよりも遅れる。(なお、DLOMでは実際はどうなっているかというと、どうも3.Xeのエピックのルールを反映されずに作ってあるらしく、エルリックは素でBAB18で4回攻撃というデータが載っている。)
 これに対してNWN2でビルドすると、Wiz20/Ftr8でレベル取得の順番を問わず(20lvまでと以後でBABの伸び方が変わらないため)BAB18となり、4回攻撃が可能である。DLOMからは離れるが、さらにFtrの比重を挙げると、Wiz19/Ftr11で30lvでBAB21となり、Wizの呪文レベル9が使用可能で、かつ5回攻撃まで可能になる。
 加えて、Wizをエルドリッチナイトに置き換えてみる。(DLOMのエルリックが、魔法戦士の代表格であるエルドリッチナイトのクラスを持っていないのは、要はDLOMが3.0eであり、基本のDMGにエルドリッチナイトが記載されていないというだけの理由に他ならない。)エルドリッチナイトは呪文能力がキャスターの1lv遅れで伸び、BAB高のクラスだが、NWN2では10lvまでしか伸ばせない。しかし、最大10lv入れることで、30lvまでにWiz8/Ftr12/EK10とすればWiz17相当、BAB26で、「呪文レベル9が使用可能で6回攻撃が可能」の、剣と魔法でいずれも最大の能力を持つ魔法戦士が完成する。(意外に思えるかもしれないが、Wiz10/Ftr10/EK10と全て剣と魔法を均等にすると、攻撃回数が足りず最大の能力を得ることができない。)
 NWN2は限界レベルがNWN1やBG2よりも低いにも関わらず、そのエピックルールの特性と選択肢の多さ(多くのクラスと特技、4マルチクラス)から、NWN1やBG2よりも遥かに強力な能力を持ったキャラを作ることができるが、それだけビルドによる能力差が大きい(奇をてらって万一ボタンを掛け違えると大変なことになる)ということであり、細心の注意を要する。


○余談

 以下はビルド考察等の攻略情報や裏の取れた情報の紹介といった情報価値のある話ではなく、まったくの余談である。
 なぜNWN2のエピック域(限界レベル、ルール)はNWN1と異なるのか。というよりも、なぜ他の点では3.5eに比較的忠実なNWN2が、エピックではPnPと大きく異なるルールを採用しているのか。ここから先は、(開発側その他の諸発言を念頭に入れたとしても)まったくの推測でしか語れることはないが、幾つか考えられる点を述べる。

 まず、なぜlv上限がNWN1やGold Box(FRUA)やBG2(ToB)のような40lvでなく、30lvであるのかだが、AD&D時代や旧CRPGの幾つかと同様の、「レルム30lvルール」を念頭に置いている可能性は高い。レルム30lvルールについては後述する。
 なお、20lvでなく30lvがPHBの上限となっている4版は、時期から考えて関係ない(NWN2に21-30lvが追加されたMotBは2007年, 4版は2008年)。ただし、NWN2ユーザーは、30lvがPHBの標準という共通点のある4版での呼称にならって1-10lvをHeroic(英雄級)、11-20lvをParagon(伝説級)、21-30lvをEpic(神話級)と呼称する場合はある。(しかし、AD&D1st−2ndや3.Xeと、4版のキャラクターレベルは等価とはいえず大きく食い違っており、4版では低lv側のキャラクターが強力でかつレベル域が広い反面、4版の30lvでも1-3eの20lv未満相当と思われる節がある。)

 さらに、より推測部分が多いことは断りつつ、上記のレルム30lvよりも大きな理由ではないかと思われるのが、説明しにくいが「NWN2が30lv上限とした=エピック部分を10lvだけにとどめた」のは、「NWN1の3.0eに比べて、NWN2の3.5eというゲームシステムは、エピック部分のウェイトがより小さい」と思われる節がある点である。

 3.0eでは20lv超は公式の根幹ルール書物のひとつであるEpic Level Handbook(ELH)でサポートされているが、この内容は(WotC正式のこの根幹ルールの時点で)非常にカオスなものであり、リリース直後から批判が非常に多い。
 NWN1のHotUのエピックレベルについて、主に非PnPのゲーマーから「瞬殺クリティカルなどの一部の特技がぶっ壊れている」「CRPGの派手さを求めて無理矢理創作したのだろうがやりすぎ」等の批判があるが、実際は別に無理矢理や創作した等ではなく、HotUの能力はあくまでELHに忠実なものか、ひいてはELHに比べればまだ抑えられているものばかりで、NWN1のエピックはELHをかなりおとなしく実装しているものである。(というか、一般にゲーム内容やバランスが「酷い」と言われるエピックレベルについて、NWN1では、20-40lvをプレイヤー間で問題なく標準として流通させるほどの実装を、よくも実現できたものだと思わせる。)
 3.Xeの宇宙で最も強力な存在を記載している書物Deities and Demigods(De&De, DDG)にしても、D&D系の実プレイヤーからは「3.Xeで最も価値のない書物」と評され、amazonで9割引で投げ売りされていた。無論、3.0eのELHもDDGも和訳はされていない。
 まして、上述のPathfinderでもその危険性について触れられているように、さらにサードパーティー製のd20のエピックルールとなると、ELHに輪をかけて遥かに酷い内容のものも多い。

 このような3.0eでの事情を鑑みてか否か、3.5eでは、ELH相当物は刊行されず、DMGや各サプリメントの末尾にエピックへの上昇方法が簡単に附言されるのみに留まっている。3.5eでは、アークフィーンドなどの強力なユニークモンスターのデータも、エピック域の能力を持つ「本体」や「アヴァター」ではなく、高くとも20lv前後を対象とした「アスペクト」が中心となっている。概ね、3.5eはエピックよりも以前に重点を置いていると考えてよい。
 そのためもあってか、3.5eを採用したNWN2においては、エピック部分に対してPHBと同等の20lv分を長々と費やすほどの必要・価値を認めていないのではないか、ということである。
 そして、これも「ルール通りのエピックレベル」ではなく、「PHBの20lvのあくまで延長」と捉えたからこそ、BABやstなどもPHBの20lvまでに準じて伸びるようになっている可能性がある。


○さらに余談(以下追記)






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