・Kaedrin PRC Packの追加種族


 具体的な能力などはPRCの公式サイトを参照されたい。

(人間)
           Str Dex Con Int Wis Cha La
Deep Imaskari              -2      +2          0  Wiz

(エルフ)
Star Elf                       -2          +2  0  Brd
Painted Elf                +2      -2          0  Drd

(フェイ)
Feytouched (Lyrical)       +2  -2          +2  0  Brd
Feytouched (Shadowy)       +2  -2          +2  0  Rog

(人怪)
Spellscale                     -2          +2  0  Sor


 いずれもLA+0で、特別に強力な種族ではない。
 特筆すべきはLA0でCha+2の種族が4つもあることである。SoZまでのデフォルトでは、Chaにボーナスがある種族はいずれもLAが1以上つく。LAがある(成長が大きく遅れる)種族というのはスペルユーザーに向かないということで、実質これらをSor, Wlkなどに用いるのは難しい。これに対して、このPRCの導入でLAが0でChaが高い種族を気軽に選べることで、ビルドの幅が大きく増えるといえる。
 ただし、PnPでは本来、ChaにボーナスがありLAが小さい種族はかなり貴重であり、基本の時点でも、また追加ルールが増えるほどChaが重要なクラスは増えたため、ChaにボーナスがありLA0の種族は(コボルドのように他のペナルティーが厳しいものを除いて)有利すぎるので使わない、という方針を採る卓もある。そのため、このPrCの無造作な追加は果たして問題がないのかと訝るプレイヤーもいる。実際のところ、NWN2の場合は、CRPGとしてバランスが崩壊するほどではなく、また、Chaにボーナスがあるこれらの追加種族(スターエルフ、フェイタッチトx2種、スペルスケイル)はいずれもConが低いので、それほど使いやすくはないはずである。
 例えば、これらの種族がどんなクラス(ビルド)を選択できるか考えてみると、Chaが重要なクラスのうち、SorではHDが低すぎてConとあわせるとかなり危険であり、BrdやWlkのうち前衛系のビルドにも不安がある。信仰系やPalではもっと肉体系能力値にそつのない種族の方が安全に思えるところである(不向きというほどではない)。そう考えると、それほど選択肢が多いわけでもない。
 Drdに適性の高いPainted Elf, Rogを適性クラスとするFaytouched(Shadowy)はいずれも、PRCで追加されたプレステージクラスを意識していると思われる。


・Deep Imaskari

 深アイマスカー人はUnderdark(邦訳『アンダーダーク』)で追加された人間のサブ種族である。NWN1/2の訳ではimaskariは「イマスカリ」だが(イマスカリ・カマ等のアイテム名など)、HJ社の3.Xe和訳では「ディープ・アイマスカー人」である。その情報内容は日本では壊滅的で、「アイマスカー」で検索すると(2018年11月現在)「アイドルマスターの痛車(im@s car)」の以外は画像候補が一枚たりとも出てこない。

 深アイマスカー人は、レルムの多数の古代種族(ヒューマンだけでも結構な種類がいる)の一種、古代アイマスカー人に由来する。古代アイマスカー人はアンサーやムルホランド(内陸奥地、フェイルーン地図では南東)を支配していたが、フェアリム(手が生えたヤツメウナギみたいな連中でこれも古代種族)の叛乱により壊滅、生き残りの末裔が数千年を経てアンダーダークに適応し、肉体的にも(一応種族的には「人間」の範疇とはいえ)変貌を遂げて亜種族同然となったものである。Underdarkサプリメントによると、(3.Xeの時点では)いまだにアンダーダークに秘密の都市を構えているが、都市外のアンダーダークや地上に出ている者(そして、プレイヤーキャラとなる者)は、故郷の秘密の位置についての記憶を消すことに同意した上で、外世界の知識を目的に旅立った者とされる。

 PRCでの実装はほぼPnP通りだが、当然ながら使用した呪文を思い出す超常能力は省かれている。
 サン・エルフと並んでIntにボーナスがあるLA0の種族なので、Wizに向いている。一方、他のIntを生かせるクラスについては、Dexが低いので技能系のRogやBrdには向かず、また戦闘系のうち技能を生かすRngや特技の前提にIntが要るFtrにもDexが低い以上向いていない。そのため、NWN2ではIntを生かすベースクラスならWiz一択となるかもしれない。
 「人間」のサブ種族であるが、ベース種別が人間であることによる利益はどうなっているかというと、例えば、レッド・ウィザードのデフォルトルール設定では、サブ種族ではなく「ベース種族」が人間であれば取得できる設定だったのだが、現バージョンのPRCをはじめ多くのHakpakでは、レッド・ウィザードの設定2daが変更されて「サブ種族」までがHumanでないと選択できない設定に変わっているため結局選べない(FRの設定上、アイマスカーとレッドウィザードは相容れないので辻褄はこの方が合ってはいる)。また、サブ種族Humanの特徴の、キャラ作成時に余計に1つの特技を得る能力や技能ポイントがlvごとに1点高いといった能力も、サブ種族Deep Imaskariでは得られない。Sorより特技が重要となることが多いWizで、人間とどちらを採るかは悩みどころである。



・Star Elf

 スターエルフ(ミスラルエルフ)は3.0eのUnapproachable Eastに記載されたエルフのサブ種族である。フェイルーンのエルフの中ではムーンエルフ、サンエルフより少数で、現在はYuriwood(内陸のアグラロンドにある森林)に主に見られる程度であるという。かつては他プレーンに住んでいた等の設定があるのだが、3〜5版のコスモロジーの変更(というか設定の混乱)により、概説するのは難しい。
 3.Xeルールの基本であるWG世界(標準宇宙観)やそのまた元ネタのトールキン設定には、このFRのスターエルフに完全に一致する種族というのはいないようである。

 LA0のエルフの中ではChaが高いが、上述したようにConが低いためSorには向いておらず、SorならConにペナルティーがなくSorを適性クラスとするワイルドエルフの方が安全である。おそらく後列Brdとして運用することとなる。



・Painted Elf

 ペインテッドエルフは3.5eのSandstorm出典の種族である。Sandstormには砂漠や乾燥地帯に住むサブ種族がかなり短い説明と共に幾つか載っているが、ペインテッドエルフは、荒地の森林跡・旧文明のエルフ住居の廃墟に住む種族である。ワイルドエルフによく似ているが、カモフラージュの技術のためこの名がある。
 背景上はかなり特殊な種族だが、このPRCのhakがドルイド系の能力やクラスも追加したので、「Drdを適性クラスとする種族」を探してきて追加しただけではないかと思われる節もある。Intが低くDexが高く、エルフの弱点であるConペナルティーがない点もワイルドエルフと同様であるが、ワイルドエルフがSor適性であるのに対して、こちらはDrdにすることを想定すると、前衛Drdにも向いた能力だといえる。



・Feytouched (Lyrical, Shadowy)

 Feytouchedは「ルール用語」としては種族以外にも能力や背景などとして前後の版に繰り返し出現するものだが、「クリーチャー」としては、3.0eのFiend Folio (FF)にCR1/2のモンスターとして記載されている。KaedrinPRCのサイトなどの種族説明が、この3.0eFFの文章の直接の引用であることから、PRC種族もおそらく直接の出典がこのクリーチャーデータで、PC種族データにコンバートしたものと考えられる(種族形式に変換したd20などがすでにあるかもしれないが、調査はしていない。d20のうち、Pfには"Fey-Touched"のテンプレートのデータがあるが、能力は全く異なる)。
 ただし、元ルールの3.0e FFとNWN2 PRCでは、能力修正は似ているものの同一ではなく、LAも異なる(3.0eFFではLA+1、このPRCではLA0)。おそらく種族化の際のアレンジも入っていると考えられる。

 元ルールの3.0e FFのフェイタッチトは、その名の通りフェイ種別と他のクリーチャーの遠い混血(ハーフフェイより血の薄いもの)であり、能力や外観は、ややフェイやエルフ寄りのものが多い傾向であるものの、様々なものがいる(例えばジャイアントとの混血は無骨になる)。モンスターデータではフェイ寄りと思われるものがデータ化されているのか、Dex, Chaがやや高く、チャームパーソンの疑呪を持つ。適性クラスとして「バード又はローグ」が挙げられている。

 NWN2のPRCのFeytouchedは、上記の「バード又はローグ」のうち、Brdを適性クラスとした場合をFeytouched (Lyrical)、Rogを適性クラスとした場合をFeytouched (Shadowy)としてデータ化したものと思われる。つまり、本来はLyricalとShadowyで別の種族だったり背景が違ったりするわけではない。
 RPCのデザイン事情のことを言えば、このhakでは盗賊系・軽戦士系のクラスや能力が特に強化されているため、BrdやRogを適性クラスとし、能力値もそれに合ったものを(Fiend Folioのクリーチャーなんぞから)選択してきたらしい、ともいえる。
 能力は耐性や技能適性などの特技、能力値(高Dex, 低Con)ともにエルフによく似ており後衛向きであるが、スターエルフやスペルスケイル同様、デフォルトルールにはない「ChaボーナスのあるLA0種族」であり、どちらかというとBrdに適性のあるLyricalの方が注目に値すると思われる。同じPRCでBrd適性のスターエルフに比べるとDexが高い分得になっている。ただし、エルフ用武器習熟は無いのでロングソードやロングボウはクラスで習得しない限り使えない。直接物理攻撃の戦力としてはあまり重視していない、という場合は有効な選択肢である。



・Spellscale

 スペルスケイルは3.5eのRaces of the Dragon記載の種族である。他の種族本(HJ邦訳『石の種族』『運命の種族』など)と同様、幾つかの種族を詳しく説明してあるものだが、Races of the Dragonはバハムートのドラゴンボーン(この時点では4−5版と異なり、マイナー追加ルール種族でしかない)、コボルド、スペルスケイル、ハーフドラゴンやドラコニック種のそれぞれについて、結構な分量を割いて生活、社会等について説明してあるものである。

 スペルスケイルはその名の通りドラゴンの因子と、ソーサラーへの適正を強く持つ種族で、同種族らの集まった独立した社会を築いている。ただし(特に後述するエベロンでは)他種族のソーサラーの子供がスペルスケイルの形質を持って生まれることもある。多色の細かい鱗を持ち、掲載書のイラストでは金属色をしたムーンエルフに似ている。スペルスケイルの社会では、魔法や世界の原理を追求することに生涯を費やす反面、余暇、対人関係、服飾、娯楽等を楽しむという芸術家魔術師のソーサラー的な性質を持ち、ゲーム全般(博打、様々な卓上ゲーム、ひいてはTRPGなど)が非常に好みであるというメタめいた設定(ゲーマーやクリエイター、それもギークやナードではなく、eスポーツやネット配信などが一般化した現代的な垢抜けを意識したとおぼしき)がある。が、ソーサラー的といっても(様々な色のドラゴン同様)「混沌」などの特定の属性に偏っているというわけではない。同書には、エベロン世界設定での使い方は書いてあるが、FRでの世界設定への適合(例えばレルムのどんな都市に住んでいるか)などは載っていない。

 NWN2のPRCでの実装は、能力値(Con-2, Cha+2)、暗視、適性クラス(Sor)などは元ルール準拠であるが、特技は再現されておらず、原典にはない《呪文動作省略》と《技能熟練:精神集中》を有している。元ルールでは瞑想により、一時的に各種ドラゴン神格に関係のある特技や技能ボーナスなどを得る特技があるが、おそらくは上記特技はそれを意識したものと思われる。姿(3Dモデル)はムーンエルフ等ではなく、爬虫類種族という点が共通するユアンティ・ピュアブラッドのものと共用になっている。
 NWN2基本システムには無い、Chaにボーナスのあるソーサラー適性種族であるが、Conが低いので注意する必要がある。同じCon,ChaでさらにDex+2のあるフェイタッチトに比べて、追加の特技はあるものの、どちらもそれほど強い(有用な)ものでもない。適性クラス(マルチクラス)の関係と、あとはイメージ的な好みである。








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