・Kaedrin PRCの追加ベースクラス


 具体的な能力の詳細はPRCの公式サイトを参照されたい。

名称                   		傾向	最大lv	呪文    HD	BAB	良st	技p	前提	
--------------------------------------------------------------------------------------------------
Hexblade 			戦	30	独自	10	高	FW	2	G以外	
Ninja				盗	30	-	 6	中	R	6	-	
Scout				盗	30	-	 8	中	R	8	-	
Thug				戦/盗	30	-	10	高	F	4	-	


・へクスブレード


 PRCの4つの追加ベースクラスのうち唯一の戦士系で、他が3つとも盗賊系なことも相まって、いきなり異色に見える。
 PnP版でのへクスブレード(呪詛剣士、魔刃)は、3.5eではComplete Warrior(戦士大全)を出典とするベースクラスである。一言で言えば、「若干秘術系が入り敵に対するペナルティのオーラを駆使する戦士系」のベースクラスで、ある意味で「若干信仰系が入り自分にボーナスのオーラを駆使する戦士系」のパラディンの対極的なクラスともいえる。Wizardryのロードに対するサムライのようなものだが(ただしWizのサムライのAD&DでのモデルはRngである)秘術呪文そのもの能力は、Palの信仰呪文同様大きくなく、特殊能力が主である。つまり、魔法戦士といってもマルチクラス(Ftr/Wizやエルドリッチナイトなど)のような役割や呪文使いのかわりはできない。PnPの3.Xeでは、いわゆる「魔法戦士」としてはさらに完成度の高いダスクブレードや、スペルソード+エルドリッチナイトといったビルドに工夫したクラスの影に隠れている傾向があり、さほど話題にはならない。なお4版や5版にも同名のクラス(サブクラス)があるが、イメージはともかく内容は対応するとは言い難い。

 NWN2のKaedrin PRCではこの3.5eのへクスブレードが追加されたが、はっきり言うとPnPの再現度はかなり低い。そもそもPRCでアサシンやブラックガードの呪文リストを拡張に成功したことで、「独自の呪文リストを持つクラス」が実装可能となったため、その1種として魔法戦士系であるヘクスブレードを追加してみたにすぎず、深い意味があってのものではないと思われる。

 なおこのAsn, Bgdやヘクスブレードの呪文リストについては、デフォルトのゲームシステムのAsnやBgdでは疑呪を発動できる特技を1つずつ習得していくものであったのに対して、PRCでは「へクスブレード呪文レベル1」等の特技を習得し、使用することで数種類の疑呪から選んで発動できるようになっている。つまり、デフォルトのキャスタークラスのように呪文ウィンドウが開くわけではない。
 PrCによるBgdやAsnの呪文リストの追加にも言えることだが、疑呪扱いではあるが呪文関連能力値によって呪文数が増加する点は再現されている。へクスブレードの呪文関連能力値はChaである。

 PnPのへクスブレードはBrdやWlk同様、秘術呪文使いだが次第に強力な鎧の術者特技を得て行きだんだん重い鎧と共に秘術呪文を使えるようになる。が、このNWN2のPRCでは鎧や盾による呪文のペナルティーが全くなく、最初から重装鎧や盾を持ったまま呪文を使える(といってもへクスブレードの呪文自体がさほど多くも多彩でもない)。これは深い意味があるわけではなく、単なる実装不足(へクスブレード呪文が「疑呪」扱いになっているため)と思われる。へクスブレードの呪文リストや能力にはBrdのような多彩な防御呪文はほとんど無いため、戦士系にも関わらず前衛としては意外に脆いのだが、このNWN2のPRCでは重装備できるので気休め程度ではあるがそこは安心といえる。

 ベースクラスのクラスlvが重要であるPal同様、他のクラスと組みあわせても極端に強くならない傾向があり、Palのようにへクスブレードを普通に伸ばした方が有効である。例えば、他の秘術系とのビルドと組み合わせても呪文能力が伸びたり相補的になるといったことは特になく、有効な組み合わせは難しい。へクスブレード2lvから、PalやBgdのようにカリスマボーナスがセービングスローに加わる能力を獲得するが、このボーナスはへクスブレードのクラスレベルを超えない。したがって、Pal等と同様に2lvだけ入れておけばよいというわけにはゆかず、充分生かすにはある程度のへクスブレードのクラスlvを伸ばすことが必要である。
 なお、他の秘術使いと組み合わせることができないが、ヘクスブレードのクラスは、PRCでは一応「秘術使い」としてアーケインアーチャーや、「Sor/Brd系秘術使い」としてドラゴン・ディサイプルの「前提条件」を満たすことはできるようになっている(これ以外のプレステージクラスの、秘術呪文レベル1−4等の前提条件については、前記疑呪で習得したとしても満たす扱いにはならない)。アイテムの使用などを考えないなら、下手に秘術系などを混ぜて前衛能力を低下させるよりはへクスブレードをベースにしてこれらのプレステージを目指すという選択肢もあり得るだろう。

 また、(これはPRCの追加クラスのみならず、その他PHB記載以外の多くのクラスに言えることなのだが)へクスブレードが適性クラスという種族はNWN2デフォルトにもPRCにも無いため、(人間やハーフエルフでない限り)マルチクラスの組み合わせを生かすといっても難しい。
 敵へのデバフ能力にはオンリーワンな部分があるので、パーティープレイで累積する他の能力者と組み合わせることによって威力を発揮する面はあるかもしれない。




・スカウト

 このNWN2 PRCのスカウトは3.5eのComplete Adventurer(邦訳『冒険者大全』)を出典とするベースクラスである。D&D系以外のRPGではローグ(シーフ)の相当物としてスカウトという名が使われていることもあるが、D&D3.5eのスカウトはローグとは独立した別種のベースクラスである。また3.0e(NWN1)のハーパー・スカウト(NWN2ではハーパー・エージェント)とは直接の関連はない。

 PnP版のスカウトは、主に屋外で活動し、移動しながらの攻撃(機動戦闘)に急所攻撃同様のボーナスがあるといった、RogやRngとはまた別のロールといえるクラスである。
 が、いきなりだが、このKaedrin PRCのスカウトは、PnPはまるで再現されておらず、機動戦闘は「単なる急所攻撃」に置き換わった上、習得速度も急所攻撃より遅い。そのため、このクラスは単なる「特技習得順番が異なるRog」のような代物になっている。
 一方、Rogのかわりとして見た場合、スキルポイントはRogと同じ8だが、Rogの技能のうち、鍵開けができず、罠作成や魔法装置使用もない。罠の感知や解除はできるが鍵開けがないので(NWN1のような鍵の破壊も推奨されないNWN2では)Rogのかわりをつとめることはできない。
 イニシアチブの増強や、レンジャーによく似た野外活動に関する特技なども一部PnP同様に習得するが、いずれもNWN2の場合は利点が少ない実装になっていたり、というかレンジャーもそうだが状況(モジュールの対応状況)によって利点がえらく少なかったりする。
 ヒットダイスはRogより高い信仰系と同じ8に上がっているので、戦闘能力は上がっており、モジュールの傾向によって屋外活動や屋外戦闘を重視する場合は選択肢に入るかもしれないが、これらの利点においても、Rogとそれほど大差があるわけではない。適性クラスとなっている種族がない以上、どんなビルドにも低レベル混ぜられるというわけにもゆかず難しいところである。PRCで多数追加された上級クラスの必須の技能ポイントや特技との兼ね合いが大きくかかわってくるのかもしれない。




・サグ


 Thugは3.5eのUnearthed Arcana(以下UA、同名の書物は各版にあるが、以下のUAも3.5eの同書である)に記載された、Ftrの「バリアントクラス」のひとつである。ちなみにCD&D黒箱で、AD&D1stでのアサシンに準拠したクラスが、サグ(ヘッドマン)という名になっていたことがあった(「黒箱の方が先」と勘違いしている者がいるため追記しておくと、AD&D1stのPHBが1978、CD&DのMaster Rule Setがそのレベル域通じての初出が1985である)。1stの基本クラスのアサシンに対して3.Xeではアサシンはプレステージだが、このThugはベースクラスである。
 バリアントクラスとはUAにいくつか記述されている、新規クラスというほどではないにせよ既存クラスの能力のいくつかを入れ替えたクラスだが、UAのThugはアサシンやヘッドマンほど極端な特徴を持つものではなく、「都市での戦いと技能に重点を置いたFtr」となっている。重装や盾のかわりに軽装鎧までの習熟しか持たず、技能ポイントが4点/lvとやや多い。
 また、UAの"Other Class Variants"の箇所には、Ftrのボーナス特技のかわりに「急所攻撃」を追加するというバリアントもあり、特にThugのバリアントと組み合わせることが記載されている。

 このNWN2のPRCでの実装は、上記のThugと急所攻撃のバリアントを組み合わせたもので、結果的にFtrとは大きく異なるクラスとなっている。基本ルールの時点では少ない「高BAB,高hp」と「急所攻撃」を兼ね備えたクラス、といえるのだが(NWN2のヴァニラルールではブラックガードとネヴァーウィンター・ナインのいずれもプレステージである)軽装鎧の時点で軽戦士重視となると思われる。例えば他の戦闘系クラスとマルチクラスして特技を補うにしても、マイナーなベースクラスなので当然人間やハーフエルフ以外には適性クラスにはならず、マルチクラスの経験ペナルティーなどに注意を要する。要はサグ中心で高レベルまで伸ばしても、他の前衛系に匹敵する強力なクラスになるとはどうも考えにくい。また、若干lv摘み食いにするにしても、Ftrボーナス特技のかわりに急所攻撃ということはつまり「偶数レベル」で急所攻撃が伸びるので、急所攻撃を得るには最低2lvが必要で、ベースクラス同士の組み合わせにも難儀する。
 早い話、このクラスが追加されたのは、他のプレステージクラスの前提用と思われる。別記事でも述べたように、Kaedrin PRCは追加されたプレステージクラスがやけに盗賊系や暗殺者系に偏っており、各種技能や急所攻撃を前提とするものが多い。戦闘能力のみを重視する場合、RogやBrd等をベースにするよりもこのThugをベースにしてプレステージクラスを目指した方が、戦闘能力を低下させずに済む場合がある(ただし、クラス技能はPHBの通常のFtrよりだいぶ増えているものの、隠れ身などの純然たる盗賊系の技能は入っていないので、前提の何でも賄えるわけでもない)。そういった意味では、前衛系というよりは盗賊系のベースクラス(盗賊系プレステージを目指す場合に考慮すべき)として意識した方がよいと思われる。








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