種族の追加


 モジュールのみならずシステムもカスタマイズできるNWN2は、例えばD&D系ルールにさらに近づけるような、種族、サブ種族、クラスやプレステージクラスを追加することができる。しかも、NWN2では他のシステム要素よりも種族やクラスの追加が行いやすく、NWN1(多数のシステムを追加するPRCなどは、非常にコンフリクトしやすかった)よりもむしろ行いやすいように作られている。

 が、「GOG版の拡張全部入り」「日本語化したNWN2」という条件下では、留意すべき点も多く、改変できそうだと思っても無闇に手を出すと妙な不具合にはまってしまったり、うまくいかないことが多い。おかしな編集をすると、既にあるセーブデータが壊れたりもすることもある。
 そうならないように、以下、改変が容易な箇所から段階を追って紹介していく。NWN1やBGなどのカスタマイズにすでに慣れた人々にとっては、非常に冗漫な説明に見えるであろうが、ゲームのカスタマイズ自体に慣れていないプレイヤーを対象に考える。



○種族追加1 〜 ハーフセレスチャルを使用可能にする

 MotB(拡張1、OCの続編)のコンパニオンには、ハグスポーンのガンや、ハーフセレスチャルのケイリンがいる。しかし、「ハグスポーン」や「ハーフセレスチャル」は、MotBやSoZが入っているNWN2 Complete(GOG版)であっても通常プレイヤーキャラクター作成時の選択肢には表示されない。これは、「種族データは存在しているが選択できないようになっている」だけなので、望むなら選択可能にすることができる。
 まずは、3.Xeコアルールにも載っているD&D主要テンプレートのひとつ、「ハーフセレスチャル」を使用可能にしてみる。(なお、OCやMotBの参戦NPCにはコンストラクト、ギスゼライ、クマーなどもいるが、これらの種族の追加についてはさらに改変が必要なので後回しにする。)


 NWN2のインストールフォルダ(ユーザードキュメントの方ではなく、本体がインストールされた方。GOG版なら(ドライブ名)\GOG Games\Neverwinter Nights 2 Complete)から 「Data」というフォルダを探す。この中を見ると、zipのアーカイブが大量に入っている。「2DA_X2」というzipファイルを探し、その中の「racialsubtypes.2da」というファイルを、どこか編集可能な場所に展開する。


 2daとは(BGシリーズなどのmodificationファイルを入れたことのある人にもおなじみだが)ゲームデータ、ルールや外観設定などの基本データを記載するファイルである。NWN2においてデフォルトで適用されているデータが、このDataフォルダのzipファイルに格納されているわけである。
 この2daファイルを、どこかで編集・改変し、ユーザー個々の「override」フォルダやキャンペーンのフォルダに改めて入れると、それがカスタムの設定ファイルとしてゲーム内の設定に上書きされる、というのが、NWN2をはじめD&Dゲームのカスタマイズの多くに共通する仕組みである。

 ここで、「Data」フォルダ下の、ただの「2DA」や「2DA_X1」といったアーカイブに入っている同名のファイルを取り出さないように注意する。これらは、OCや拡張1の時点の古いデータベースなので、これを改変元にすると、SoZの追加種族等が入っていない古いデータで上書きしてしまう場合がある。できるだけ最新の拡張2の2DA_X2内を探し、見つからないファイルがあった場合に限り、2DA_X1, 2DAと順次遡っていくのがよい。今回追加するハーフセレスチャルは、MotB(X1)追加の種族だが、SoZで追加されたユアンティやグレイオークと整合性がとれるようになっている種族設定ファイルはSoZのファイル(X2)の方にある。


 2daファイルのうち、このracialsubtypes.2daとは、サブ種族を記載しているファイルである。「ベース種族」である「プレインタッチト」より下位のサブ種族の分類、「○○ジェナシ」「ティーフリング」そして「ハーフセレスチャル」のデータが記載され(ハーフセレスチャルはプレインタッチトでなく来訪者ではないかという説があるが、このあたりは後で述べる)そのサブ種族を「使うか使わないか」も、このファイル内で設定されている。
 取り出したracialsubtypes.2daを編集する段だが、NWN2の2daはExcelで編集するのが手っ取り早い。慣れてくると専用の編集ツールなどを使ってもよい。
 複数のサブ種族が特に設定されていない種族、例えば、人間やハーフオークでも、その「1種のサブ種族」が必ずracialsubtypes.2daに設定されている。

 racialsubtypes.2daをExcel等で開くと、縦の行には種族のIDと、その隣にGold_Dwarf, Gray_Dwarfなどの名前が並んでいるのがわかるだろう。HalfCelestialのIDはずっと下をたどり、46番である。45番に同じMotBで登場したHagspawnが、46-47番にSoZで追加されたYuan-tiPurebloodとGrayOrcが並んでいるのもわかる。(このうち、ハーフセレスチャル同様に現状ではキャラ作成できないHagspawnについては後述する。)
 ここでExcel表の一番上に戻ると、横の列にはLabel, BaseRace, ECLなどの項目が並んでいる。横軸をずっと見ていくと、PlayerRaceという項目がある。これが、「キャラクター作成時に」選択可能か(表示されるか)のフラグであり、1が選択可能、0が選択不能である。Gold_DwarfやMoon_Elfなどの上の方の行にある種族は、PlayerRaceの列では「1」になっており、選択可能なことを示している。

 PlayerRaceの列とHalf_CelestialのID46番の行が交差する箇所を見ると、「0」になっており、選択不能になっていることがわかる。
 これを「1」に書き換え、保存する。

 改変が終わったら、最後に、この2daファイルをoverrideフォルダに置く。上記インストールフォルダ内のoverrideでもいいが、カスタマイズ要素は一律マイドキュメントの方((ドライブ名)\Users\(ユーザー名)\Documents\Neverwinter Nights 2下のoverrideフォルダ)に置いた方がよいだろう。overrideフォルダはNWN2全体のシステムを改変するフォルダである。

 NWN2を起動し、適当なモジュールを開始してキャラクターを作成してみると、「プレインタッチト」のメイン種族の次に表示されるサブ種族に、一番下に「ハーフセレスチャル」が追加されているはずである。これでケイリン同様のハーフセレスチャルのキャラが作成可能な状態となっている。


 ハーフセレスチャルと、同じ天しオホホオホウホホンウホホホンセレスチャルの血脈であるアアシマールは何が違うのか。手っ取り早くは、片親が直接にセレスチャルである2代目(ハーフ)がハーフセレスチャルで、もっと遠い先祖にセレスチャルがいるのがアアシマール、ということになるのだが、実際問題としては、先祖のセレスチャルの血が「濃く」出ているのがハーフセレスチャル、より「薄く」出ているのがアアシマールである。MM1などの記述では、「プレインタッチト=他次元界に干渉されたもの」とは、後者の混血が何代も前に遡るもの・血脈が薄いものを指すが、あえて血脈の薄い濃いを問わないなら、ハーフセレスチャルも単なるプレインタッチトの一種といえなくもない。
 デフォルトのアアシマールに比べて、ハーフセレスチャルの方が能力値は遥かに高く、特殊能力も多い。そしてレベル調整値も大きく、アアシマールのLA+1に対してハーフセレスチャルはLA+4である。なお、NWN2では、ハーフセレスチャルの適正クラスは人間同様に、最高レベルのクラスにより決まり、アアシマールのようなパラディン固定ではない。これはセレスチャルでない方の片親の種族に準じるためで、ここでのハーフセレスチャルはセレスチャルと「人間」のハーフを指すためである。


 追加してはみたが、仮にハーフセレスチャルの主人公を作成したとしても、1lvから始まるOCその他のモジュールでは、まるで実用性がない。LA+4ということは、2lvになるまでに(人間で言えば)6lvになるまでの分の経験値を必要とするということである。OCなどの1lvから開始のモジュールではそれまでの間延々と1lvのままで、まともにクラスレベルの能力では戦えない。
 一方で、種族の疑呪、例えば1日1回のワードオブフェイス、マスチャーム、サモンプラネター(みすずちん召喚)などは非常に強力である。1戦ごとにこれらを投射しては休み、を延々続けて、キャンペーンの前の半分を乗り切るとかいう話になるが、そんなRoguelike(*band)の変種族職プレイのようなことを日常的に挑戦しているゲーマーとかでもない限り、まっとうなRPGというものをやりたければ到底おすすめしかねる(実際、4人全員ハーフセレスチャルにしてそういうネタプレイをしたというSoZの海外レビューなどがある)。
 これらの疑呪は、本来3.5eのPnPの元ルールであれば、たとえハーフセレスチャルであっても高ヒットダイス(キャラクターレベル)でないと得られない能力である(11-12lvにならないと得られないHoly Word, 17lvのSummon Monster IXなど)。これが最初から種族能力として入っているのは、要するに種族そのものが高レベルから始まるMotBのケイリンだけのために設定されているにすぎないということを示している。あえてまともに参戦し得るモジュールがあるとすれば、MotBのように開始時からエピックに近いレベルで設定されているモジュールであると思われる。



○種族追加2 〜 ハグスポーンを使用可能にする

 はたしてMotBのガン以外に「ハーフ山姥」なぞを使用するプレイヤーが多いかは不明だが、せっかくデータが既に存在する種族なので、一応これも使用可能にしておくことにする。


 上記同様、2DA_X2内のracialsubtypes.2daというファイルを編集可能な場所にコピーした後、編集する(上のハーフセレスチャル追加を行った後なら、すでにoverrideフォルダ内にあるはずで、以後もこのフォルダ内で改変してしまって構わない)。
 サブ種族IDが45番のHagspawnの行も、PlayerRaceの列が「0」になっているので、これを「1」にする。

 が、ハグスポーンの場合はさらに、「ベース種族」の設定も変更しなくてはならない。なぜなら、ハーフセレスチャルの場合は、既にプレイヤーに使用可能なベース種族「プレインタッチト」の中に追加されるが、ハグスポーンは元々プレイヤーとして使用不可な「人怪(Monstrous Humanoid)」のサブタイプなので、まず「人怪」自体を使用可能にしなくてはならないのである。
 2DA_X2から、ベース種族の設定ファイルであるracialtypes.2daというファイルを探し、これも別の場所にコピーして、編集する。
 ハグスポーンが属するHumanoid_Monstrousは「13番」の行である。racialtypes.2daにもPlayerRaceの列があるので、Monstrous_Humanoidの行とPlayerRaceの列が交差する箇所を探し、1にする。編集が終わったら、このracialtypes.2daもoverrideに入れる。

 NWN2を起動し、キャラクターを作成してみると、ベース種族に「人怪」が表示され、これを選択して進めると「ハグスポーン」が選択可能になっているはずである。
 キャラ作成時の種族説明などのダイアログも元から存在し、日本語訳されている。せっかくだから使えるようにしておこうというものである。


 以上の改変だけで、使用には問題がない。が、キャラのグラフィックが気になるプレイヤーもいるだろう。例えば、デフォルトのNWN2に以上の改変を加えた状態だと、キャラメイク時にベース種族を選ぶ際、「人怪」を選択しようとしてクリックした段階では、表示される3Dグラフィックのサンプルが「ニャルラトテップが化けた黒の男」のように目以外が真っ黒になったドワーフの姿になっていると思われる。
 実の所、このベース種族選択の段階で表示されるのは、各ベース種族の「代表サブ種族」である。例えばプレインタッチトならば、ファイア・ジェナシが代表サブ種族に設定されているため、プレインタッチトをクリックした段階では、暫定的にその姿が出るようになっている。一方、「人怪」は代表サブ種族としてracialsubtypes.2da内の「Monstrous_Humanoid」という同名のサブ種族がデフォルトで代表サブ種族に設定されているのだが、この「Monstrous_Humanoid」代表サブ種族は、元々モンスター用であり、プレイヤーキャラの使用を想定されていないので、外観(Appearance)が設定されていない。そのため、種族リストの一番上にあるゴールド・ドワーフの姿で、しかも色設定のされていない真っ黒が表示されてしまうのである。
 これはキャラ作成時のベース種族選択時だけで、プレイ中のグラフィックは既に設定されているサブ種族のもの(後述)が使用されるので、プレイ中には影響はない。
 が、何となくキャラ作成時に毎回ドワーフニャルラトテップと対面するのは気になるので変更したい、という人もいるだろう。解決方法は色々あるが、ハグスポーンを人怪のキャラメイク時の「代表サブ種族」にしてしまうのが手っ取り早い。
 racialtypes.2daの#13のMonstrous_Humanoidの行の、DefaultSubRaceの列を、ハグスポーンのサブ種族IDである「45」に書き換える。


 また、ハグスポーンのキャラ作成時及びゲーム内でのグラフィックは、デフォルトでは「ハーフオーク」と同じものとなっている。MotBに登場するガン以外のハグスポーン(モブキャラ)にも、ハーフオークの色違いのような姿のものがいる。これは、ハーフオークとハグスポーンは能力等で共通点があるためと思われる。(本来、ハグスポーン種族はハーフオーク同様前衛向きであり、高Str, 高ConでChaの低い種族で、ガンのようなシャーマンにはそれほど向いていない。しかし、ガンはChaは決して低くないが、これはMotB本編のガンの特殊な生い立ちに関連する可能性が考えられる。)
 しかし、このハーフオークの姿は、ガンのようなイケメンとイメージが異なるという人もいるだろう。気になる人はracialsubtypes.2daの、ハグスポーンのAppearanceIndexの項目(IDの数値)を書き換えてもよい。(左の方にある「Appearance」の列ではなく、ずっと右端にある「AppearanceIndex」の列である。左の方の列はすべての種族が****、右端の方にIDの数値が書かれているのがわかるはずである。左の方の列は機能していないというが、列の正体は定かではない。)
 #45の行でAppearanceIndexの列は、ハーフオークと同じ「5」になっている。これを、人間と同じ「6」、ティーフリングの「564」や、ハーフドラウの「1041」などに変えてもよい。すぐ左の「Color2DA」という列が色設定である。これも、他の種族と同じになるようにコピーしてきてもよい。


 なお、キャラメイク時のハグスポーンの説明やNWN2のロード画面に表示される説明によると、ハグの子で女性はそのままハグになり、男性がハグスポーンになる。すなわち、ハグスポーンには男性しかいないはずなのだが、以上のようにNWN2に追加すると、設定に反して女性のハグスポーンも作成可能になる。
 が、例えばPathfinderにはハグの混血の女児で、女性のみの種族であるチェンジリング(ただし本ハグスポーンとは能力はかなり異なる。エベロンのチェンジリングとは特に関係ない)などの例もあるので、当面は適当にこのままにしておく。


 さて、ここまでで、要は「PlayerRace」の項目を0から1にするだけで使用可能になる種族について説明してきた。ならば、他に種族の名はあるが0になっている種族も使用可能になるのではないか、と思うかもしれない。例えば、racialtypes.2daやracialsubtypes.2daの中段あたりの列には、前述したモンスター専用の非プレイヤー用種族、Aberration〜Plantなどが並んでいる。これらもPlayerRaceを1にすれば、「アンデッド」だの「粘体」だのも使用可能(キャラ作成時に選択可能)になるのではないか、と思うかもしれない。実のところ、結論としてはその通りだが、様々な理由からおすすめしかねる。
 上述のように、非プレイヤー用種族の多くは、デフォルトでは姿が設定されておらず、その結果表示されるのがドワーフニャルラトテップだが、それ以外にも、キャラ作成時や成長時のデフォルトの特技や技能等は全く設定されていないことが多い。これは、「アンデッド」や「粘体」が、能力が多岐にわたるので特技や技能等はこれらをNPCやモンスターとして登場させるモジュール製作者がそのつど作成するためである。
 しかし、その事情を無視して、アンデッドや粘体ならもっと能力値がこうであって欲しいとか作成時にこの特技が欲しいだとか言ってこれらの既存種族を改変してしまうと、すでにモジュールに登場しているデータに対して支障をきたす可能性が高い。

 例えば、前回説明したハーフセレスチャルのLA+4について、BoED(※1)に準拠してLA+2に改変できないのか、と直接質問を受けた。結論から言えば改変自体は簡単にできる。左から4番目の「ECL」の列のデータを「4」から「2」に書き換えるだけである(※2)。しかし、実際にやると、すでにあるデータ、セーブデータやモジュール内のハーフセレスチャル、MotBではケイリンのデータに、著しく支障をきたす。
 また、「ギスゼライ」を使用可能にしようとして、#42の行の能力値の列を、MM1に準拠してInt-2, Dex+6などと書き換えたとする。これを行うと、すでにあるジェイヴのデータはもちろん、ギスゼライの全員のDexが跳ね上がるなどしてやはり著しく支障をきたす。これは、ギスゼライ達はベースの能力値がオール0である元ファイルの設定を前提としてモジュール内データが作られているのと、2daの設定のうち種族の能力値修正やLAなどは、キャラ作成時やレベルアップ時でなく、即座に反映され変動するようになっているためである。特技などの特殊能力は即座でなく、レベルアップ時に反映される。すでにいるキャラに影響が少ないとしても、パッケージでNPCを作成したり成長させたりすると、(ときにはモジュール作者が気づかないまま)おかしな能力が付与されたりする。(ただし、appearanceやcolorなどの外見データだけは、キャラ作成時のみに使用され、既存データが差し替わったりはしない。外見は後でキャラ個人ごとに改変することもできる。)

 そのため、こういった既存の種族を改変するのは勧められない。モンスター用種族の使用を薦められないというだけでなく、プレイヤー種族も含めて(意図的に既存モジュール等のデータを改変したいのでない限り)できるだけ改変せず、新たに使用したい種族は、たとえNWN2既存の種族と同一や類似であっても、新種族として改めて追加した方がいい。追加方法は順次説明していく。


※1 Book of Exalted Deeds, HJ社の邦訳では『高貴なる行いの書』、D系ゲーマーの通称は「善本」。DMGのハーフセレスチャルのテンプレートは一律LA+4だが、このBoEDのルールではハーフセレスチャルはベース生物のヒットダイスごとにLAが違うルールとなっている。これに準拠すると、人間はヒットダイス1の種族なので、人間とセレスチャルのハーフは「LA+2」で済む、という理屈。
 BoEDはパワーゲーマーのD厨らですら一部又は全部使用禁止にすることも少なくない、そのパワーの凶悪さという意味では不浄なる暗黒の書の邪悪も霞む極悪な記載にあふれているとしばしば評される本で、上記ハーフセレスチャルの経験緩和(=強化)ルールは、敵味方の全員が同じくらい凶暴に強化されていることがわりと前提ではないかと思われる。そもそも1HD種族なら低LAで済むだろうというのは1HD時にはみすずちん召喚とか使えないPnPの場合の話である。少なくともNWN2においては、既存の種族のLAとはまったく整合性がとれなくなるので、たとえできたとしてもLA+2に改変したりLA+2版のハーフセレスチャルを新規追加するのは個人的にはおすすめしかねる。

※2 言うまでもない話だが、このファイルの項目の「ECL」は本来は「LA」である。ECL(有効キャラクターレベル)とは、LA(レベル調整値)にキャラクターレベルを足した値で、LA+4の1lvキャラのECLは「5」である。が、NWN2wikiにも見られるように、ECLへの「加算値」といった意味でも適当に用いられているようである。




(余談)ゴーストワイズ・ハーフリングを使用可能にする


 自分のracialtypes.2daでは使用可能になっていたので、これがNWN2ではデフォルト種族ではない(ハーフセレスチャルやハグスポーンと同様、データは完備されているが、インストール時は使用不可)ことについ数日前まで気づかなかった。いったいいつ1に書き換えたのか全く覚えていない。とりあえず、上記したoverride内の改変racialsubtypes.2daについて、今でも#10行目のplayerraceの列が「0」になっている人がいれば、「1」に書き換えて保存すれば、この種族も使用可能になる、という話である。

 ただし、色指定だけがおかしく、髪や肌などのすべてがへんてこなパステルカラーになっており、デフォルトでは全身輝いているように見える。dataフォルダのcolor_ghostwise.2daを確認してもそうなっており、おそらく色指定そのものが未調整のままになっている。実際にMotB内で使用されているハーフセレスチャルやハグスポーンとは異なり、「未完成のまま出荷された」種族であることがわかる。
 色指定は、上記ハグスポーンの項で外見を直したように、他の種族に倣って改変してもよい。すなわち、同じ「野生的種族」の色合いであるウッドエルフのファイル(color_woodelf.2da)を流用するよう、右の方にあるcolor2DAの列をcolor_woodelfに書き換える等である。


 FRにおいてもハーフリングが3種族(ライトフット、ストロングハート、ゴーストワイズ)あることは、トールキンのLotRのホビットの3氏族(ハーフット、ファロハイド、ストゥア)に対応しているのかと思うところかもしれないが、話はそう簡単ではない。
 AD&Dにおいては、LotRのホビットの名前だけ微妙に変えたような3種族が設定されていたのだが(ヘアフット、トールフェロウ、スタウト)AD&Dで2ndまではハーフリング自体のデスクリプションはホビット(というかビルボ)と全く同一の(LotRの温厚な農村民の)ものであったのに対して、3.XeではむしろDL世界のトラブルメーカー種族、ケンダーに似た性質のものにいきなり大幅に変貌している。ハーフリングの主要守護神格であるヤンダーラが、「調和・守護(要塞)」を司り、「収穫」のホーリーシンボルという、3−4版のハーフリングの放浪民の性質とは完全にちぐはぐになっているのは、ハーフリングがホビットそのものだった時代の名残である。(しかし、なぜかD&D5版では、再びハーフリング像はAD&D2nd以前に近いものに戻っている。おまけに、ハーフリングに限らないが世界設定ごとのサブ種族の振り分けが以前の版と食い違っている。)
 3.Xeの最多数ハーフリングであるライトフットは、以前のヘアフットと同様に最多数種族であり、しばしば差し替えるように書いてあるのだが、そもそもヘアフットとは種族そのものが異なるという言い方もできる。(3.Xeのd20一般的ルールではトールフェロウとスタウト(ディープハーフリング)も設定し直されるのだが、長くなるので省く。)

 ここで、フォーゴトン・レルム世界設定では、ハーフリングの設定は独自のものとなり、おそらくライトフットの変貌に伴い、これまでのトールフェロウやスタウトとは異なる2種族が改めて設定されている。ストロングハートは、強靭なファロハイドを思わせる性質を持つが、定住し、隠れ身の能力を持つなど2nd以前のハーフリングやホビットを思わせる部分がある。ゴーストワイズは、蛮族的な野生ハーフリングで、強いて言えばストゥアに対応するが、能力、外見はディープハーフリングほどには極端ではない。これらについては能力データも、3.Xe一般のトールフェロウやディープハーフリングとは異なる。


LotR       AD&D          3.Xe          FRCS/NWN2       5e  
----------------------------------------------------------------------------------------
ハーフット  ヘアフット   -                       -                    -
ファロハイド トールフェロウ トールフェロウ     ストロングハート(?)  スタウト
ストゥア   スタウト    ディープ・ハーフリング ゴーストワイズ(?)    スタウト(?)
-             (ケンダー(?))   ライトフット        ライトフット         ライトフット


 NWN2では、せっかくの「レルム独自の種族」ということで、これらのサブ種族も当初は丁寧にデータ化されたのであろう。
 特にゴーストワイズは、ドワーフでいうドゥエルガル、ノームでいうスヴァーフネブリンのように、「種族の標準からはかなり変わった姿をした少数民族」の一種として入れられたと思われるが、実際のところ(3.Xe一般のディープハーフリングに比べても)それらの2種族のような特色(そして魅力)を持っていない。ストロングハート同様の隠密修正を持つが、追加特技は無く、ライトフットの幸運修正も無い。他の2種族と最も大きく違うのは「バーバリアン」が適正クラスである点だが、ハーフリングでバーバリアンが選択されること自体稀なので特徴とは言い難い。FR世界でも基本種族なので追加してはみたがどうも特徴づけられなかったのでデフォルトから外れた、というのもありえる話である。



○種族追加3 〜 ウルク(オークエリート)を新規追加する

 次はハーフフィーンドだったのではないかと思うかもしれないが、段階を追うとこっちを先に説明した方が良さそうなので割り込む。
 上の項目でracialsubtypes.2daを編集したが、このファイルに載っているパラメータ、主に特殊能力以外であれば、他のファイルを追加したり変更したりしなくても編集することができる。
 racialsubtypes.2daで変更できる内容は、具体的には、

・種族名
・ベース種族
・能力値
・LA値
・適性クラス
・外見、色

 といったものがある。
 また、既存種族と名前、LA値、能力値や外見が違うのみの種族であれば、既存種族をコピーしたり改変するだけで、簡単に新規種族を作成できるという話である。


 といってもエルフやドワーフの能力値と色だけ変えた種族は、すでにFRの設定に沿って腹一杯なくらい実装されているので、これ以上増やしてもしょうがない。適当なものを探し、ハーフオークをベースに、大昔MERPd20のサイトに載っていたウルク(グレーターオーク)を新規追加してみることにする。

 これはずっと昔に雑記コーナーで紹介したことがあるが、MERPの元スタッフが作っていた公認(公式ではない)サイトの、そのまた非公式公認コーナーにあった、MERPデータとd20のコンバートルールに載っていたアルダの各種族データのうちのひとつである。その後、(当時の3.0eから3.5eへの版上げなどもあって)激しく様変わりを繰り返し、かなり共通点の少ないEa d20などに変更され、さらにそれもデータが消えるなどしている。
 このグレーターオークが指しているのは、光を恐れない上位のウルクの一種(トールキンでは本来ウルクやウルクハイは非常に広義で、単独の種族を指していない)であるようだが、実は正確に劇中のどれを指しているかはわからない。サウロンが第三紀1000年から15世紀にわたって開発を続けてきた光を恐れないオーク、と説明にあり、一見すると2500年頃に出現したサウロンのモルドールの黒のウルクを指しているように見えるが、黒のウルクは別にデータの項目がある(そして詳細データは未作成の空白になっている)。無論サルマンのハーフオークはまた別にいる。
 とりあえず、その当時のグレーターオークを元にNWN2用にアレンジして輸入してみる。


・Str+4, Con+2, Wis-2
・特殊能力:暗視、《持久力》
・適性クラス:ファイター
・レベル調整値:+1


 実は特技を大量に習得するファイターへの適性では、Dexに+があるSRD(3.Xe基本ルール)のホブゴブリンやバグベアに比べても全ての面で勝るわけではない。このあたりはMERPd20のデータ作成者がそもそも深く考えていたのか不明である。
 Chaにペナルティーはない。これはMERPd20ではChaは「外観」ではなく、外観(や人間社会への良悪影響)はAppearance(Ea d20ではCumliness)という別の要素であり、感性・才能や影響力を示すChaとは別枠だからである。MERPd20の他のバージョンのオークやトロル等の種族によってはChaがプラスになっているものも多い。よって強力なソーサラーやウォーロック等を輩出し得る。3.5eデフォルトやNWN2ではあくまで上記Chaを下げるべきかと思うかもしれないが、その場合LAを下げるべきかは悩むところだろう。能力値収支+-0だからといって支払うLAは0でいいというわけにはいかない。例えば、PHBのハーフオークは能力値収支がマイナスになっているが、Str0に比べて+2の価値がハーフオークの使用特性と相まって大きいため、結局これで妥当というのはWotC側が説明していたところである。


 脱線しすぎたのでさっさとファイル改変に移る。
 さきほどハーフセレスチャルの時に編集したracialsubtypes.2daをさらに編集する。まずは、新規種族を追加するID(行)を決める。kaedrinなどのユーザー作の有名カスタムパックは、#60行目後半から新規種族が追加されているので、これらとぶつからないためには、#50台に追加すれば問題ない。とりあえず#51に追加することにする。
 ベースになるハーフオークの行、#16を丸ごとコピーし、#51にあたる行にペーストする。一番左の種族IDの列を忘れずに「51」に直す。
 以下、この#51行を、順次右の列に向かって項目を改変していく。

・左から2番目のLabelの列に「uruk」を記入する。この列は2da編集者の識別用で、ゲーム内では意味はない。
・BaseRaceの列はとりあえず改変前の「5」(ハーフオーク)のままにしておく。オーク等に変更した方がいいと思うかもしれないが、プレイヤーキャラ用として同ルールに準ずるとしておくのが無難である。
・ECLの列を、レベル調整値+1なので「1」に改変する。

・Nameの列に、種族の名前にあたるtlkのIDを記入する。NWN2内では通常、表示されるテキストは、台詞や説明はもちろんシステム用語も含めて、tlkファイルから選択する。dialog.tlk等のtlkファイルには、「ID」ごとに対応する用語や説明が格納されている。このname欄に記入したIDの語が、種族の名前に使われる仕組みである。例えば、基本のファンタジー用語(モンスター名など)は大抵本編のどこかに出て来るので、それを引用するのが手っ取り早い。
 なお、tlkに無い単語はどうするかというと、カスタムtlkを作ったりdialog.tlkに追加したりすることが可能であるが、これは現在の日本語環境では色々と検討すべき問題がある。日本語化したNWN2では(環境によるが)カスタムtlkと日本語化したtlkファイルがコンフリクトすることが多い。だからといって日本語化したメインのdialog.tlkに直に追加すると、将来日本語化作業が進んで日本語dialog.tlkがアップデートした場合、また追加し直さなければならなくなる。tlkの編集に関する問題や対策は、別の箇所で述べる。現状でとりあえず安全なのは、すでにtlkファイルにある何かの単語を引張ってくることである。
 NWNシリーズのデフォルトのtlkには、ウルクとかグレーターオークとかオークロードといった単語は無いので、ここでは種族名はtlkの中から「オークエリート」(40820)とする。「オークウォーロード」(181910)とか、なんならDQに準じて「オークキング」(41505)などでも構わないが、ザオラルやベホイミ使いのオークキングならwisの高いグレイオークの方が近い。それは置いておいてとりあえず、6列目を「40820」なり何なりに改変する。
・NamePlural〜NameLowerPlural等の列は複数形や会話文中の単語変化などである。日本語ではどれも同じなので、すべて「40820」に書き換える。

・StrAdjust〜ConAdjustが能力値である。AD&D1stとも3.Xeとも並び方が違っていてわかりにくい。とりあえず、Strを+4, Intを0, Wisを-2, Conを+2とそれぞれ記入する。
・Enduranceは「40」と改変する。これは《持久力》特技をNWN2では再現できないため、グレイオーク同様に移動速度を上げることで表現するためである。
・Favoredは適正クラスで、ファイターにあたる「4」と改変する。
・AppearanceIndexの列は、そのままハーフオークと同じでも構わないと思われるが、「140」にするとモンスターのオークのものが使用される。ただし、鎧の変更は反映されず、髪型などの細部を変更することもできないので、どちらにするかはお任せである。形状はハーフオークのままでも、Color2DAをワイルドエルフのものを流用し「color_wildelf」とすると、映画版LotRのオークを思わせる様々な色が選べるようになる。
・female_race_iconとmale_race_iconはキャラメイク時やシートに表示される種族アイコンだが、適当に変えても構わない。例えば、これらを「ig_o_gruumsh」と改変すると、種族アイコンがグルームシュ神の一つ目のホーリーシンボルになる。NWN2のゲーム内で表示されるアイコンは、NWN2のゲームフォルダの方(GOG版ならドライブ名:\GOG Games\Neverwinter Nights 2 Completeフォルダ)の\UI\default\images\iconsフォルダなどに入っており、ここにあるファイル名を指定することで使用できる。



 NWN2を起動しキャラクターを作成する。ベース種族に設定した「ハーフオーク」を選択して進めると、「オーク・エリート」が選択可能になっているのを確認する。

 これと似たような一部能力のみが異なる種族、例えば、AD&Dや3.0e(NWN1)のノーム(ノームを新しい行にコピーし、Int+2, Wis-2, 適正クラス(Favored)の列をウィザード(10)に変更するだけ)、ソードワールド1のエルフ(Strが<奈落界(アビス)>のどん底よりも低く、適正クラスがシャーマン(55)。色をcolor_ghostwiseにすればどぎついピンク髪などが可)なども、同様の操作で追加できる。




○種族追加4 〜 ハーフフィーンドを新規追加する

 「ハーフフィーンド」は、ハーフセレスチャルと共に3.Xeコアルール掲載の主要追加種族(テンプレート)のひとつである。
 MotBのケイリンのために既に種族ファイルに設定されているハーフセレスチャルと異なり、ハーフフィーンドという種族はNWN2にはデフォルトでは存在しない(モンスターとして登場するハーフフィーンドやカンビオンは、モジュールごと、登場個体ごとに「来訪者」をベースに詳細を設定されてデータが作られているにすぎない)。
 しかし、ハーフセレスチャルと一対ともいえるハーフフィーンドは、耐性、特技などはハーフセレスチャルを流用できる点が多く、これをベースに作成することでわりとそれらしく追加することは容易である。ハーフセレスチャル同様、実用性は置いておいて、せっかくだから簡単に追加できるものは追加してみることにする。


 racialsubtypes.2da上で、改変元の種族の行を追加の行にコピーする所は上記オークエリートと同じである。ここでは、#52にハーフフィーンドを新規追加することとし、#46行を丸ままコピーして#51の次に挿入し、冒頭のIDを52に書き換える。
 Nameの列の種族の名前は、tlkファイルのIDを指定する。「ハーフフィーンド」という単語はtlkの「5638」などにある(もともとモンスター名用のものだが、別の所で呼び出して使っても特に問題は無い)。NameLower〜Descriptionあたりまで5638に書き換える。
 ハーフオークの項目で述べたのと同様に、能力値の列を変更する。SRDのハーフフィーンドはStr+4, Dex+4, Con+2, Int+4, Cha+2である。並び順が違うのがめんどっちィーとか思いつつも改変する。(なお、「Str+4とDex+4を得られるような種族」は、3.0eのDMGには壁を自由に通り抜けたりstなしで敵を即死させる呪文レベル4呪文等と同列の「バランスを崩すやりすぎの例」として思いっきり書いてあり、これが能力値、特にStrに+4以上がある種族は使用できないとするレギュレーションを採用する卓がある根拠のひとつである。)
 レベル調整値、適性クラス等は、コピー元のハーフセレスチャルと同じなので、変更する必要はない。ベース種族も同じ「プレインタッチト」の箇所に追加される。
 「姿」については、ハーフセレスチャルが同じセレスチャル血脈であるアアシマールの外見を流用していることから、同様にとりあえずハーフフィーンドはフィーンド血脈であるティーフリングの外見を流用する。Color2DAとAppearanceIndexの列に「color_tiefling」「564」を記入し、またはティーフリングの行からコピーしてくる。種族アイコンもどうせなのでティーフリングをコピーしておく。female_race_iconとmale_race_iconに「ira_tl_raceicon」を記入する。別のアイコン、例えば、ガーゴース半神のアンホーリーシンボルであるig_hu_gargauth(ガーゴースはAD&D1st当時、『転輪』から追放された悪魔アスタロトという節の設定があった)などでもよい。
 ティーフリングもそうだが、デフォルトでは翼や(ニーシュカが持っているような)尻尾はつかない。これらはLETOなどのキャラ改変ツールでくっつけることができるが、機会があれば説明する。


 さて、ここまでは前回までに説明したracialsubtypes.2daのみの改変だが、ここからは特殊能力を改変するため、別ファイルを作成・操作する。
 ハーフセレスチャルとハーフフィーンドでは、特殊能力は共通する点(例えば呪文抵抗値、AC外皮ボーナス)も多いが、違う点(例えば毒への部分耐性と病気への完全耐性のかわりに、毒への完全耐性と火の耐性10を持つなど)もある。この特殊能力を変更してみることにする。
 racialsubtypes.2daには右の方に「FeatsTable」という列がある。現在編集中の#52行でこの列を見ると、現在(コピー元のハーフセレスチャルと同じ)「race_feat_halfcelestial」という文字列が入っているはずである。これは参照されるファイル名を指している。この名のファイル(拡張子.2daは省かれている)に、種族ごとの特殊能力(すなわち、その種族のキャラを作成した際に付与される特技)の設定が記述されている。
 デフォルトのハーフセレスチャルでどう設定されているか見てみよう。ハーフセレスチャルはケイリンの登場した拡張2(MotB)の追加なので、Dataフォルダ内の2DA_X1のzipファイルから「race_feat_halfcelestial.2da」を探し、編集可能な場所にコピーしてみる。これを開いてみると、一番左の列に0から始まるID、次のFeatLabelの列に「FEAT_RACIAL_***」などの文字列、その次のFeatIndexに番号が書かれている。文字列が特殊能力(特技)の名前で、FeatIndex番号がfeat.2da内での特技のIDである。つまり、race_feat_***.2da内で、この文字列と特技IDを別の能力に書き換えたり、さらに下の行に追加したりすれば、特殊能力の追加や変更が可能というわけである。
 このハーフセレスチャルのファイルをベースにして改変することで、「ハーフフィーンドの特殊能力の設定ファイル」を新規作成してみることにする。
 今コピーしてきたrace_feat_halfcelestial.2daのファイルの名を、「race_feat_halffiend.2da」にリネームする。


 種族やクラスやモンスターの特殊能力は、デフォルトでゲーム中に全く存在しないものは、スクリプトを書くなどして一から作成しなくてはならず、理解や導入には手間がかかる。しかし、既に何かの種族やクラスが持っているものと全く同じ能力であれば、それを借りて来ればよいので、かなり容易である。
 例えば、ハーフセレスチャルの持つ毒への部分耐性のかわりに、ハーフフィーンドは「毒への完全耐性」を持っている。そこで、「毒への完全耐性」を持っている種族をNWN2の既存種族から探すと、グレイドワーフ(ドゥエルガル)が持っている。つまり、本来グレイドワーフが持っているこの特技をコピーして、ハーフフィーンドに付与されるようにしてしまえばいいわけである。
 どの種族やクラスがどんな能力を持っているかはD&Dプレイヤーなら全部すっかり頭に入っているだろうが、年がいったD厨だと、その頭からうまく引き出せなくなっているかもしれない。そこで、例えば、NWN2wiki内で「能力の名」を英語で検索してみる。概要のみでわかるなら特技リストなどでもよい。それを持っている種族やクラスがわかったら、Dataフォルダ内の2DAの各種zipファイル内から他の種族やクラスのrace_feat_**やcls_feat_**を開き、対応する能力の行を探す。それをrace_feat_halffiend.2daなどの作成中の種族に追加したり変更したりすればよい。

 ここでは検索は省略して、どんどん書き換えてゆくことにする。グレイドワーフのrace_feat_gray.2daのファイルの中には、「FEAT_IMMUNITY_POISON」という名、その右に「1751」というIDの能力がある。
 さきに作ったrace_feat_halffiend.2daには、ハーフセレスチャルの設定である「FEAT_RACIAL_RESIST_POISON」の名とID「2119」が書かれた行がある。これが毒への部分耐性の能力なので、グレイドワーフの完全耐性に書き換えればよい。FeatLabelとIDを「FEAT_IMMUNITY_POISON」「1751」に書き換える。


 続けて他の特殊能力も直していく。ハーフフィーンドはハーフセレスチャルの病気耐性が無い。一方で、火の耐性10を持つ。そこで、「FEAT_RACIAL_IMMUNITY_DISEASE」「2113」を、「FEAT_FAVORED_SOUL_ENERGY_RESISTANCE_FIRE」「2085」に書き換える。これはフェイバード・ソウルの能力(cls_feat_favored_soul.2da)から持ってきたものである。(なお、このようにクラスの特殊能力を持ってきた場合は、仮にハーフフィーンドのフェイバードソウルのキャラを作った場合、火の耐性を種族ですでに持っているので選択できなくなるが、どのみち選択できたところで種族とクラスの火耐性10の効果が加算等するわけではないのでこの能力の場合はさして問題がない。能力によっては注意を要する場合がある。)
 「smite evil」「301」の行を、ブラックガードから持ってきた「FEAT_SMITE_GOOD」「472」に書き換える。(これも仮にハーフフィーンドのブラックガードを作った場合、無駄に二重取りすることになるが、それはハーフセレスチャルのsmite evilもパラディンの流用である点で同じである。)
 疑似呪文能力は、ハーフセレスチャルとハーフフィーンドでは無論異なるのだが、今回は特に操作していない。詳細は後述する。


 race_feat_halffiend.2daの改変が終わったら、この新たに作成したrace_feat_halffiend.2daのファイルをoverrideフォルダに入れておく。一方、さきのracialsubtypes.2daの方、ハーフフィーンドの行#52のFeatsTableの列の指定ファイル名を、忘れずにrace_feat_halffiendに書き換えておく。


 NWN2を起動し、ハーフセレスチャル同様の「プレインタッチト」からハーフフィーンドを選べるようになっていること、試しにハーフフィーンドのキャラを作成すると、作成時に上記した特殊能力を所有していることを確認する。



 さて、今回の改変では、前述したように、特殊能力は既存種族のものを流用して再現したが、3.Xe(SRD)のハーフフィーンドを完全に忠実に再現してはいない。具体的には、疑似呪文能力はハーフセレスチャルと同じままにしてある。
 例えばワードオブフェイスは、3.XeのPnPでは善のホーリーワードと悪のブラスフェミイが、NWN2ではワードオブフェイスに統合されているだけなので、ハーフセレスチャルとハーフフィーンドはどちらもワードオブフェイスで何も問題は無い。サモンプラネターについては、天使を召喚するのはおかしいと思うところかもしれないが、BG2のクエスト呪文にもあるように「ダークプラネター」というのもいる。ハーフフィーンドはリザレクションのかわりにデストラクション、マスチャームのかわりにホリッドウィルティングを習得するはずだが、仮にハーフフィーンドといえど、それぞれの前者の疑呪を使用したとしても、それほどイメージと違うとか不自然な話ではない(攻撃性は減るが)。
 早い話、上記のハーフフィーンドの疑呪はNWN2のデフォルトの特技には相当するものが無く、新規追加するのはスクリプトの編集等を行わなくてはならずひと手間であり、かといって同等といえるくらい強力な疑呪や特技は他種族等にも見当たらないので、そのままにしているのである。ハーフセレスチャルよりも弱体化してよいなら、疑呪の行のどれかを、SRDのハーフフィーンドが1-2HDで貰えるただのダークネスに差し替えたり(ドラウ等の疑呪「FEAT_DROW_DARKNESS」「1076」)、ブラックガードのアンデッド召喚(「FEAT_CREATE_UNDEAD」「474」)等に差し替えてもよいかもしれない。こういった特技を自分で探して差し替えるという場合の留意点だが、クラス依存の疑呪によっては、持続時間がクラスレベル依存で召喚等した瞬間に消滅したりするものが多く、使えないものもある(ブラックガードのアンデッド召喚は24時間固定なので使用できる)。

 なお、ファンメイドのhakpakにはさらに再現度を上げているものもある。例えばRisen Heroというユーザーモジュールでは、このあたりの疑呪も含めて、ハーフセレスチャルやハーフフィーンドの能力をさらにSRDに忠実に再現したoverride(参照:nexusmods)を作成、導入している。(NWN2wikiでユーザーファイルによる「ハーフフィーンド種族の予約枠」とされているのも実はこちらである。)が、これは作者も述べているようにこのままでは他のユーザーの主要なhakpakと適合せず、このoverrideを他のモジュールでも使用できるよう、ひいては当サイトで説明しているような日本語化したNWN2にはそのままでは導入できず、また何手間かの説明を要するので、今回は省く。


 以上のような手順で、従来どれかの種族やクラスが持っていたNWN2デフォルトの特殊能力を流用するものであれば、様々な特殊能力を持つ種族を新規作成することができる。
 例えばRaces of Faerunパック(参照:新vault)は、新規のスクリプトでの特技追加等は行わず、NWN2デフォルトの特技の組み合わせで大量の新規種族を追加しているので、参考になるかもしれない。このパック解凍時に生成される2dasフォルダから、racialsubtypes.2daを参考にしたり、race_feat_***のいくつかを自分のoverrideにコピーして使用したりしてもよい。
 (なお、このパックは日本語化したNWN2とは激しくコンフリクトするので、readmeのインストール方法に書いてあるような操作でパックを丸ごと導入することはできない。あくまで上記ファイルを参照したり一部コピーするのにとどめることを勧める。)




(以下追記)

○種族追加5 〜 ノルドオル族を新規追加する







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