〇ポイントバイシステム


 「D&Dでは能力値が6面ダイス3個(3d6)で決まっていた」というのはCD&D(赤箱シリーズ)ゲーマーに発して、Wizardryプレイヤーなどによって日本ではかなり広く流布されている。
 しかし、AD&Dが長期にわたり世界的標準となっていた(CD&Dはかなりの後出で、普及度も少数派に過ぎない)海外では、3-18の範囲ではあるものの、よほど特殊なレギュレーションでない限り、プレイヤーキャラの能力を3d6で決めるなどということはまず無い。AD&Dの時点からすでに、4d6や5d6の良い目を取ったり、3d6を6回を超えて振って良い目を取ったり、2d6+6等としたり、それらを任意の能力値に割り振ったり、各能力値8を基本に乱数ボーナスを割り振ったりといった無数の決め方があり、ほとんどは3d6よりも遥かに良い値、またはキャラの目的に適切(戦士系なら物理能力が高いなど)にすることができる。
 そうなった理由はこのサイトの別の箇所でも述べているが、要するに能力値が高くクラス等に対して適切な能力を持っていた方が色々と面白みのあるルールになってしまっており、そこで能力値が低くても面白いというルールに作り替えることをせずに、そのまま全員の能力値を高くしてしまったという、AD&Dのその場任せで雑なゲームデザインのためと思われる。


 D&D3.XeのキャラメイクではAD&D2ndまでと同様、数多くの能力値決定システムがあるが、NWN1/2のキャラメイクは、これらのシステムのうち「ポイントバイ」を採用している。能力値のベース(0ポイント)が各8と、25点などのフリーのポイントを与えられ、フリーのポイントを費やして能力値を上昇させる(能力値を「購入」する)。
 8点のベースにポイントを割り振るところはボーナスによるキャラメイクに似ているのだが、割り振れるポイントが乱数ではなく固定値であり、また、高い能力値にするには余計に多くのポイントを割り振る必要がある。例えば、能力値13と14の差は1ポイントだが、能力値17と18の差は3ポイントである。
 能力値を8点よりも低くして余計にポイントを得ることはできない(少なくともNWN1/2では。また、後述するが、種族ペナルティーがある場合は修正後に6点等になることはある)ので、3d6=3-18の範囲で自由に作れるわけではない。

 固定値によるポイントバイは、(上記4d6の良い目などと異なり)3.Xeではプレイヤーが標準で読むPHBには載っておらず、DMGにしか載っていない。必ずしもPnPのゲームにおいては能力値の標準的な決め方としては想定されていないと思われる。主に、海外のD&D公式イベントなどで乱数による有利不利によらずキャラメイクをするために用いられることが知られる。ただし、実際問題としては、日本での一般的なPnPゲームにおいても、一定のレギュレーション(例えば、高レベルから開始するとか)でキャラメイクをする際に、利用されていることは少なくない。
 NWN1/2の場合、「マルチプレイ」が行われることがあるので、イベントの事情と同様に、プレイヤー間の公平を期す目的でポイントバイが採用されていると思われ、NWN1wikiなどでもそのように推測されている。しかし、3.Xeのシステマチックさと相まって、何度キャラを作っても自然と似たようなキャラになってしまいやすい傾向はある。

 なお、日本で知られているAD&Dの影響が濃いゲームとして、Wizardryが上記のうち乱数ボーナスによるキャラメイクを採用しており、『バルダーズゲート』シリーズ(Infinityエンジン)がよく似た乱数からの割り振りのシステム、さらにはBGと同じInifnityのIWD2が、3.0eにも関わらずBGに似た割り振りを採用しているので、NWN1/2のポイントバイがこれと異なることに混乱するゲーマーも少なくない。


 キャラメイク時の固定値が何ポイントバイであるか(割り振れるポイントが何点か)でキャラの強力さ、キャンペーンの過酷さやパワーが決まるわけだが、NWN1では「30ポイントバイ」、NWN2では「32ポイントバイ」となっている。
 これはどのくらいの強力さかといえば、3.5eのDMGによれば、スタンダードなポイントバイ、いわばWG世界(標準宇宙観、3.XeでのD&Dシリーズの最も標準)のプレイヤーキャラでは25ポイントである。CD&Dのように3d6そのままで能力値を決めた場合、平均値(能力値のうち3つが10, 3つが11)では15ポイントバイとなる。モンスターデータでのプレイヤー種族もほぼ同等のことが多い。DMGによるとこのバリエーション(ノンスタンダードなポイントバイ)として、ローパワーなキャンペーンでは15ポイント、キャンペーンのパワーに応じて22-28ポイントで、相当なハイパワーキャンペーンとして例示されているのが32ポイントである。
 また、他版では能力値の扱いが異なるのであまり参考にならないかもしれないが(3.Xeと同じ4d6の良い目を採るのが基本ルールとなっているので、キャラ作成時の価値は同様とも考えらえる)5版の簡易キャラメイクの標準的能力(15,14,13,12,10,8を好きなように割り振る)でも25ポイントバイとなる。


 NWN2が32ポイントバイであることは、FRのキャラクターのレベルがWGその他の標準世界のだいたい1.5倍である(AD&D〜3.Xeの標準的な世界ではモータルの上限が20lvであるのに対しFRは古くから30lvルールである点、D&D標準では小領主が9-11lv(ネームレベル)だがFRでは15lv前後である点など)点とあわせて、NWN1/2の英雄・冒険者が、現代の地球人・一般人は勿論、WGなどの他世界の冒険者と比べてすら、極めてハイパワーであることを示している。言い換えれば、FR世界にはそのような高い能力とlvの冒険者でなければ対処できないようなそれ相応の危険が常に満ち溢れており、FRの英雄・冒険者の需要や地位が、他世界設定に比べて特に高い理由でもあるといえる。
 (なお余談だが、NWN1/2のNPCでは公式モジュール、ユーザーモジュールともに、明らかに25ポイントバイきっかりで作られているやけに弱いキャラが頻繁に見られる。これは誤ってNWN1/2のプレイヤーキャラ基準ではなく、PnPのDMG標準で作ってしまっている可能性がある。)


 世界設定の雑談はどうでもよいとして、実際問題としてキャラメイクが「ポイントバイ」であることと、そのポイントが「30-32」と高いことが、NWN1/2においてD&Dルール適用にどのような影響を及ぼしているのか。
 主要能力値が高くできることは無論である。例えば他世界であれば25ポイントバイでInt16(10ポイント)でビルドするようなウィザードは、32ポイントバイでは7ポイント余分に使えるので、Int18(16ポイント)にすることができ、さらに1ポイント余る。
 が、それ以上に重要なのが、主要能力以外を容易に高めにできる点である。上述したようにポイントバイのシステムでは高能力値ほど高ポイントコストを要するが、能力値12-14といった若干優れた能力であれば、低ポイントコストで手に入る。そのため、主要能力以外にも12-14といった能力値を多数持つキャラが作りやすい。(対してBGやIWD2のように、高能力値でもコストが同じであれば、主に長所だけを極限まで高くしてしまいがちである。)
 3.Xeではしばしば、特にモンクやパラディンといった変則的クラスには、3〜4種類もの能力値がある程度以上高くなければ充分な能力を発揮できないものが多い(これはAD&D以前でこれらのクラスが非常に希少であり、能力値が相当に高くないと、そもそもクラスを選択できなかった名残である)。低ダイスロールや低ポイントバイによる能力値決定では、仮にこれらのクラスを選択してみても充分な能力を(例えば基本のクラスと対等の能力すらも)発揮できないことも多い。
 また、キャラメイクの記事でも述べているが、基本的なクラスであっても、ファイターはStr, Con以外にもDex, Intも13以上あった方がよい、クレリックはWisと前線能力以外にもできればChaもあった方がよいなど、能力が平均的にどれも高いことで有利になることが多い。
 さらに、複数の能力を高めにできるということは、当然ながらマルチクラスを行った場合、両方のクラスの長所を最大限生かせるということである。

 このため、NWN1/2の「ポイントバイシステム+高ポイント」の組み合わせは、多能・複雑な能力を持つキャラの有能さが伸びるような結果となり、3.Xeの多彩かつ強力なキャラクターメイキングのシステムの魅力をさらに増幅する効果を及ぼしている側面があるといえる。


〇ポイントバイの能力購入

 前述したようにポイントバイは(PHBの標準的な決め方ではないにも関わらず)PnPでもよく利用されているため以下はPnP版を知るゲーマーには周知の話ではあるが、種族などによる能力値修正は、ダイスロールなりポイントバイなりで決定した値に対して「後」で適用される。例えば、10ポイントを消費してStr16を「購入」した後、人間はそのままだが、ハーフオークならばこのあとにStr+2の種族修正を加えて、Str18になる。言い換えれば、Str+2のあるハーフオークは、10ポイントでStr18を購入することができる。人間ならばStr18は16ポイント(ポイントバイの点数の半分)で購入しなければならない。つまり、ダイスロール式にも増して、ポイントバイでは種族で有利な能力値を上げれば上げるほど得である。逆に不利な能力値を上げるのはかなりの損である。例えばHD1d4のWizやSorでも一応安心できるConの値を14とすると、Conに-2のあるムーンエルフ等は購入に10ポイントを費やさなくてはならない。(もっとも、NWN1/2ではポイントの多さやHD最大hp保障と相まって、ダイスロール式に比べて確実に生存率を確保できるだけまだましと言うべきだろう。)
 有利な能力に費やせば費やすほど「得」なので、折角能力値にボーナスのあるデミヒューマンをプレイするならば、人間であれば莫大なポイントに相当する価値を持つ18や20などの能力値を持とうとするゲーマーは多い。それが似たようなキャラメイクが割と増えてしまう原因であったりもする。


(途中)







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