その他のNWN1モジュール



〇Elegia Eternum (日本語版はArchive)(hakは新vaultの英語版より)


 これは海外コミュニティではNWN1のモジュールの中でも現在でも並外れた傑作のひとつとされているものである。NWN1の拡張なしOC当時、旧vaultの最初期のモジュールであるが、旧vaultの殿堂だけでなく現在も多くの個人サイトやレビューに挙げられている。日本語を含む5か国語に移植されている。日本語版は新Vaultの他、archiveにも収録されているが、本体の他hakを落とさなくてはならず、archiveのhakのリンクは旧vaultで切れているので、英語版から持ってこなくてはならない。
 悲劇的なストーリーに夢世界(幻想世界)中でのストーリーに即したリドルが配置され、ムービーなどを含めた演出も豊富に配置されている。実は(和訳もされたコメディモジュールの)ペナルティマシリーズと同じ作者である。
 一方で、セガ版の頃などに存在していたNWN1レビューにおける日本のゲーマーからの評価はやや渋目であった。英語版のままプレイした評と日本語版のものを含め、少なくとも海外での絶賛とはかなり隔絶していた。冗漫な吟遊(ゲーム側が一方的にプロットを物語ること)と、プレイヤーが介入しなくてはならない手間のどっちつかずであるという評、また、雰囲気やロールプレイ(vaultにおける用語として)重視としておきながら、ハクスラ面でも決して楽ではなく、興のそがれる部分もある。日本ゲーマーの英語版をプレイした評には途中で投げたというものもあった。筆者個人の感触としては、「この中間」というところである。初出がストーリードライブの拡張本編やユーザー習作は出そろっていないOC当時であることを差し引いても、ストーリーと介入のバランスは良好な域と思えるが、一方では過剰な演出は(NWN1の表現力の範囲もあって)筆者はNWN1/2に求めるものではない。思えば、ペナルティマシリーズにも若干同様の傾向が認められる。

 実際のところ、(別のNWN2モジュールについて考察を述べたことがあるが)海外のNWN1/2のユーザーや作者らの間では、細部の演出をはじめとして、モジュール作者が傾けた注力や工夫、注がれたアイディアの面については、かなり比重を置いて高く評価されることが多いように思われる。そのため、本作も凝った舞台、それに即した展開、演出が好評に大きく影響を及ぼしている可能性が考えられる。一方で、BGやNWNシリーズをはじめ、D&DゲームやD&Dライクゲームの公式シナリオをはじめとして、似たような展開・仕掛けは少なくはないと思われるが、BG2やNWN1頃までは、一般に公式側では演出は抑え目であることが多い。海外ユーザーや作者でNWN1/2のモジュールの過剰な演出に対して評価が高くなることがあるのは、その反動が考えられる。さらにその一方で、これも一概には言えないものの、日本のD&D物PCのゲーマーらの厳しめの評価についていえば、元が過酷でシステムの重いBGやNWNのようなゲームを求めるような人々は、そもそも演出を強く求めていない、という可能性も考えられないでもない。無論、これらは評価・空気の差についてのあえての推測の域を出ない。
 やはり殿堂入りの続編(EE2)があるが、訳されてはいない。



〇Never Winter Snowflakes (NWS)シリーズ、nws desert fairなど3作 (新vaultのダウンロードページ)


 これはいずれも1時間そこらで終わる、FR世界を舞台にしたストーリー短編のシリーズで、旧vaultで好評だったものである。
 ストーリーとシステムのバランスのとれた掌編である。日本でセガ版の頃に多く作られていた短編モジュールを思わせる。NWN1は大キャンペーンモジュールばかりでなく、時間のあるときに短編を少しずつプレイしていったり、それにより同じキャラでモジュールを渡り歩いてゆくheroes pathといったプレイの仕方もでき、セガ版の頃の短編群もそうしたプレイに向いていたものが多数見られたものだが、その使用法を思わせる掌編群のひとつである。
 1作目のThe Black Dragonsはコアミア王国の内乱、2作目のDaenarians Tearsはミス・ドラノールのエルフの遺跡、3作目のCradle of Coldはジャイアントに脅かされる街と背景のゼンタリムが関わってくるストーリーになっている。いずれも、NWN1だけでなくBGなどのFR世界全体の予備知識があらかじめあった方がより興味深いと思われる(その意味では、他コーナーで紹介しているFRの知識が得られるモジュール、とは多少異なる)。同じ作者でレベル域はほぼ継続しているが、特に続き物ではなく、それぞれ単独でプレイしても問題はない。1,2作目は作者も力を入れたストーリーといっているが、3作目のみ若干ストーリーのつながりのまとまりが悪いように思われ、旧vaultでhof(殿堂入り)していないのはそのためかもしれないが、概ね同様のレベルの出来でまとまっている。








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