NWN1の本編・オフィシャルキャンペーン関連・続編モジュール


 ここではNWN1のオフィシャルキャンペーン群(主にOC, SoU, HotUなどの本編)の続編・クリアキャラ使用・外伝などの関連モジュールを挙げる。FR世界が舞台のNWN1/2モジュールには、なんらかの形でNWN1の本編の要素がネタとして仕込まれていることはかなり多いが、ここではさらに関連が深いもの、例えば、直接の続編を称しているもの、シナリオ内容において本編キャラが重要であるもの、本編の知識を前提としているものなどを挙げる。
 他のモジュール紹介ページと同様だが、「良作」を優先で挙げているとは限らない。どちらかというと、日本のNWNゲーマーには知られていない(プレイされていない)と思われるものを挙げている。


 OCの続編などの諸作には、当然の話だが、より後に出たSoU/HotU, NWN2などの設定や、そのモジュールよりも後に出たFRの設定と食い違っているものがある。例えば、OCのアリベスに関する続編は、OCのみを踏襲しておりHotUのアリベスの描写や設定と大きく異なっているものが多い。また、OCのクリアキャラ(ネヴァーウィンター英雄)は、HotUのシャルウィンの台詞などで「OCの後はロード・ナッシャーと不仲になり姿を消し、さらにナッシャーの意向で『歴史修正主義者』らがその英雄の業績を抹消した」という末路が語られているが、当然、OCの続編にはそれは反映されていないものがある。それは(少なくともモジュール作成構想時には)それらの設定が明らかになる前であった場合もあれば、作者の判断で故意にそれらが踏襲されていない場合もある。これらのHotUなどのPCゲーム発の設定は、現在は積極的に5版などでPnP公式のFRの設定として取り入れられているため、FRに詳しいほどかえってこれらの齟齬を感じるかもしれないが、モジュール個々の独自設定を意識する必要がある。



〇The fate of neverwinter (17-19lv開始) (新vaultのDLページ

 NWN1オフィシャルキャンペーン(死悶の疫、ラスカン戦)の直後に、ネヴァーウィンター市に起こる災難を、OCのクリアキャラ(ネヴァーウィンター英雄)が解決する設定の中編モジュールである。モジュール発表時期としては本編群から間もないNWN1としては最初期の作だが、旧vaultで殿堂入りしている。OCの続きだが、モジュールの現バージョンはOCのパックのみでなくSoU/HotUの拡張パック2本が必要であり(現在入手できるDiamondやNWN:EEにはすでに入っているので大半のゲーマーには気にする必要はない話だが)hakとしてCEP1が必要である。
 まさしくOCのラスカン戦の直後にネヴァー城に呼び出されてストーリーが進み、「OCのシナリオと似た雰囲気で作られており、続編として違和感が少ない」という好評が多い。ただし流れ自体はOCと異なりシンプルな一本道に近く、それ故にかえって、OCの面倒な往復・枝道潰しといった弱点は引き継いではいない。ストーリー文章はそれなりにあるが、プレイヤー側には難しい謎や選択をするような場面はなく、戦闘中心物の傾向である。ただし、(問題や難易度というほどではないが)初期モジュール故に誘導に若干わかりにくいところはある。一方で、ウォークスルー、スポイラーのドキュメントが付属している。無論、OCのヘンチマンらも同行させることができ(雇える場所が違うのでこれもわかりにくいかもしれない)二人まで連れていくことができる。このモジュールのオリジナルのヘンチマンもいる。SoU/HotU以降のような装備調整やレベル自動調整が導入されている。
 OC後に起こる事件群は、ある程度レルムの予備知識があればレルムの有名人(有名悪役)が暗躍・登場していることがわかりそれなりのスケールの背景であるとは感じられるが、なければ(例えばBGやNWNのプレイ経験のみなどでは)そのあたりは飲み込みにくい。仮に予備知識があったとしても、また中編のボリューム程度であることを加味しても、OCからはかなりスケール描写が物足りないことは否めず、他に作られている続編モジュール類に比べると充分ではないかもしれない。続きや続編というよりは後日談的な味もある。



〇Boddyknock's Tall Tale (ソロであれば4-6lv開始) (新vaultのDLページ

 NWN1-OCのヘンチマン(コンパニオン、旅仲間NPC)のひとり、ノームソーサラーのボディノックが登場し、同行するモジュールである。最初のバージョンが作られたのは旧vaultでもOCの直後である。ここで、ヘンチマンらの顔グラをはじめ、NWN1のツールセットで準備されているポートレイト群は、諸事情から初期バージョンから何枚かが変更されており、ボディノックはOC当初から2回変更されて現在Diamond, EEなどのものは3枚目だが(1、2枚目はMr.スポック役のレナード・ニモイの写真そのままだったため、という説があるが定かではない)このモジュールのダウンロードページに載っているボディノックのポートレイトが最初の改変前の「1枚目」であることから、そのままこのモジュールがどれだけ古いものかを示している。
 NWN1の登場キャラに焦点をあてたユーザーモジュールとしては、アリベスのものはかなり多く、HotUのディーキンの登場作やNWN2-OCのビショップらのキャラ補完などはしばしば作られているのに対して、割と人気がないわけでもないNWN1-OCのヘンチマンらについては、網羅されているといえるほど例は多くない。そんな中で、ヘンチマンの名を題名に冠し、旧vaultで殿堂入りしているNPCものとしてしばしば挙がるのがこのモジュールである。
 ただし、まず先に言っておいた方がよさそうだが、最初期のモジュール前例もノウハウも少ない頃の作であり、SoU/HotU以降ユーザーモジュールにも定番になった(また、NPCを中心にした作品であればおそらく期待されるような)ストーリードライブではない。
 ボディノックが、プレイヤーキャラ(レベル域から考えると、NWN1のOCクリアキャラを使用するには向いていない。NWN1の他のヘンチマンなどがよいのだろうか)と共に体験した冒険を本に書き、それを回想したもの、という凝った導入なのだが、その後に続く冒険はダンジョン探索物であり、ボディノックの台詞やイベントとの絡みや、さらに冒険内容にノームやソーサラーやボディノックでなければという必然性のあるものはあまり設けられていない。

 一方、その探索対象のダンジョンについて特筆すべき点として、Readmeにも書いてあるように、PnP用のThe Caverns of Thraciaという1979年の大型ダンジョンモジュールがベースとなっている。同モジュールは、D&D公式の当時のTSRから出たものではなく、TSRから関連商品を許諾されていたジャッジズ・ギルドによるいわゆるサードパーティーのD&D用モジュールである(のちのd20等のように許諾システムが整理された状況ではなく、当時の事情は複雑だが、ここでは略す)。AD&D1stとは時期が前後しており、使用が想定されていたのはロゴが示すようにОD&Dか、BD&D第二であったと考えられる。古典名作の類として人気は高く、後年、続編はd20版も作られている。The Caverns of Thracia自体はその題名(トラキアの洞窟群)からも想像できるようにギリシア神話を直接の舞台としており、D&Dの関連世界設定(もっとも、当時はグレイホークと呼ぶにも曖昧なD&D関連モジュール背景世界しかなく、レルムも出ていないが)ではない。
 すなわち、このNWN1モジュールは「NWN1-OCの関連モジュール」であると共に「PnPコンバートモジュール」でもあるという側面がある。

 その結果として悪い方に予想できることではあるが、OC最初期の作成ノウハウが少ない頃のモジュールである点や、(これまでPnPコンバートモジュールのコーナーで述べてきたような)原作PnPが古いダンジョン物であることとそのコンバート過程に伴って生ずる問題が多い。全体的にジャーナルや誘導が不十分であり、さらに、これにしばしばモジュールの動作に不具合が生じることがあるのが合わさって進行困難になることがある。
 例えば、「地下の囚人を開放する」箇所では、地下牢に着き鍵を開けて囚人を逃がす必要があるが(囚人のいるエリアが他にもあるので、その目標自体も見当がつかない場合も考えられる)囚人が逃げる途中に壁にひっかかったり、立ち止まったりしてその場を動かなくなることがある。ここで、スクリプトを調べると、囚人が一定人数逃げた(出口のエリアを通過した)フラグが立つと進行するのだが、動かなくなった囚人が何人かいると何をどうやってもそのフラグが立たず進行しなくなる。これがOC当時の旧版NWN1では正常に動作していたが、DiamondやNWN:EEにおいて生じるようになった問題なのかどうかは不明である。新vaultのダウンロードページでのこのモジュールに対するコメントや、フォーラムの質問コーナーでは、「囚人を開放する箇所から進まなくなった」というものが複数あり、いずれもこの箇所で止まったと推測される。この箇所の他にも、ノーヒントのパズルで、試行錯誤で正答に辿り着くのは難しくないが、どうなった時に正答だったのか非常にわかりにくい仕掛などもある。
 これらについては、それこそ、ボディノックに話しかけると進行のヒントやフラグが得られるシナリオ設定を応用すれば、探索物やPnPコンバート特有の難点を解決することもできたと思われるのだが、ボディノックのアドバイス(また、話さないと進行しないなどの場面)も皆無でこそないが、会話はかなり少ない。
 OC直後の当時、完成度の低いユーザーモジュールの割合も多い中、OCキャラの登場背景としてひねった導入部、PnP原作に由来した波乱万丈のtall tale(大法螺話)と題するに相応しい展開(さらに、FRからギリシア風の舞台に飛び込むという絶妙な選択)、数々のギミック、ある程度の規模のPnPモジュールを一通り再現した作者の労力など、OC当時に旧vaultで殿堂入りしていた理由ならば充分に伺える。またOC当時は上記の不具合部分も正常に動作していた、と想像するほかないが、現在では、新vaultのコメント同様、そのままプレイするには厳しい面がある。OCの関連作である点と良作PnP作品のコンバートという両面からも、その後のアップデートや改良が行われないままだったのはつくづく惜しいところである。



〇The Hands of Fate (4-6lv開始) (新vaultのダウンロードページ
〇Kiss of Fate (5-7lv開始) (新vaultのダウンロードページ

 これはOCの直後の頃に作られた関連作である。1作目はOCの「外伝」で、OC終章の頃に、NW市の近くで同時に起こった事件とされている。2作目はOCの直後を舞台にしており、さらに続編に続く予定であったと思われる。いずれも、OC等の主人公とは別人がプレイヤーキャラになり、別側面から追ってゆく。
 1作目では、プレイヤーキャラは死悶の疫の解決のためにNW市に集まった(OC主人公とは別の)冒険者のひとりとなり、NW市の近くの村で事件を解決していくうち、OCの死悶の疫やラスカン戦、OCのNPCに関連する話となってゆく。2作目では1作目で起こった問題、逃亡したアリベスを追い、OCから引き続いて生じた問題の解決に向かう。
 2作目はある程度1作目の経緯を引き継いでいる一種の続編だが、実のところ、1作目(男性の貴族やパラディンなどを推奨)と2作目(独自の魔法システムが導入され、男性ウィザードを推奨、プレロールドキャラも付属)では別のプレイヤーキャラを用いることが想定されている。レベル域は引き継いでいるので、同キャラを使用することも可能なように思われるが、筆者は推奨以外のキャラを試してはいないので断言できない。独立してプレイしても問題はなさそうに思われる。1,2作目ともいかにも続きがありそうな所で終わるが、3作目以降は作られていない。

 初期モジュールとしてはストーリー物であった点自体も含めて好評であったようで、旧vaultでは殿堂入りしている。一方で、ストーリー内容、モジュールの出来ともに、最初期モジュールのためであろう難点は少なくない。
 ストーリー面では、NPCによってはOCのキャラ性と違う、主問題がOCから雑な復活をする何人かの人物によって起こるなど、人によってはOCからは違和感がある(配布ページの掲示板でも幾つかそれらの声がある)描写もある。これらはむしろ続編の類というよりif系の二次創作やスピンオフ類に近い感覚かもしれない。
 1作目からアリベスが言及され、2作目ではロマンス要素や救済要素もあるため、いわゆる「アリベス物」のキャンペーンのひとつと捉えられているようだが、アリベス自身は2作目の終盤にならないと登場しない。ロマンス要素等は唐突、というより描写が不十分で、あまり期待できるものではない。次作でさらにアリベスが活躍する予定だったのかもしれない。
 モジュール構造としては、ストーリー物とはいえ初期作によくあるように誘導が不十分で進みにくい箇所なども目立つ。特に、2作目では開始直後早くも、街に出てどのように進めるかわからなくなる点(掲示板の報告のように)などである。虱潰しに探索していれば完全に詰まるほどではないが、ストーリードリブン型のシナリオと言い切るにはいまひとつなところがある。一方で、2作目の独自システム、召喚魔法などは大幅な追加というほどではないが、過度に複雑・理解困難とならない程度に追加されており使用しやすい。  粗い箇所もあるものの、まだOC当時の素材やノウハウ蓄積量としては、よく作られていると感じさせる部分が多く、当時求められていたであろうまとまったストーリー物のOC続編として好評であったのも、頷ける面が多い。








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