Javardryをやってみる







 配布サイト

 一昔前のCardwirthシナリオ紹介で一部に有名な人だが、JavascriptによるブラウザWizライクはだいぶ前から公開されていた。今回はJava製で、エディタもあるものである。

 画面デザインや操作性の感触が良く、ことにストレスがたまらないのがまず目立つ。Wizはビジュアルが単純これ美徳なので、一見するとインターフェイスは手がかからないようにも見えるが、黙々と反復するゲームなので、ことに操作性には、実際はかなり気を配らなくてはならないように思える(オリジナルのWizからして、各機種への移植にあたって、操作性になんらかの問題が生じているものが多い)。このJavardryのインタフェイスはその点がことに堅実にまとまっている。
 ただしJavaなので、環境によっては動作がもたつくかもしれず、調べると音楽のテンポが遅れるといった声があるようである。筆者は音は消して別に流したり流さなかったりしてプレイした。


 自分でエディット可能なWizライクには、商用の『五つの試練』のシナリオエディタ、フリーでは3DRPGCSやDesigeonなど(実はDaemonもα版のためか、テキストデータを編集することでかなりのエディットが可能となっている)もあるが、本作も含めて、それぞれできることとできないことがある。
 Javardryのエディタは基本的なシステムもかなり自由に変更できるものである。例えば戦闘の計算式などは、他のWizライクでは固定になっていることもあり、しかもオリジナルWizと数式が異なっていることもあるが、本作では数式自体を入力して丸ごと変更可能である(ただし、下記するが、付属のシナリオではオリジナルの通りの計算式にはなっていない)。一方、Wiz#1-3の枠を大きく外れるような追加はおおむね困難である。例えば呪文は4系統まで設定可能で、一見外伝3,4などを意識しているように見えるが、対応できない呪文効果があるので練金・霊能や召喚などをそのまま追加することはできない。


 以下は、付属のシナリオについてのものである。上記したように、数値バランスなどはエディタで変更可能であり、固定仕様ではないことを断っておく。
 システムはオリジナル#1-3だけでなく、#5や外伝1、FC版の#3(KOD)の影響を思わせる。飛び道具はないが、盗賊技能による奇襲はある。呪文がメイジの2レベルのメリト、6レベルのラダルトがあるといったスペルセットになっている等である。

 作者サイトにも頻繁に寄せられているらしき感想として、呪文ダメージが大きい、感覚的に倍近いというのがあるが、これは本当である。呪文ダメージの補正は、レベル、能力値、クラスの特性値によって全て修正がかかるようになっている。レベルごとの修正値(5レベルごとに1点)はさほどでもないが、能力値の補正がダイスごとにかかり(例えば、IQ18の+3は8D8のマダルトならば8個のダイス全部の面数にかかる)さらに呪文専用クラスでは倍率がかかり、メイジならば1.8倍になるようになっている。マスターレベルのメイジのティルトウェイトのダメージが300を上回ることもあり、感覚的には倍どころではない。

 これはクラス選択への影響もある。例えばオリジナルのWiz#1では強力な呪文職を得たいと思えば、すべての呪文がオール9回使用可能となるビショップ一択で、基本職は呪文を覚えたらさっさと転職あるのみであった。しかし本作では例えば「メイジ呪文の攻撃力」だけに着目すると、専門クラス修正が大きく、ビショップより成長の早いメイジの方が目だって強力である。
 さらに留意すべきは、転職するときの影響である。転職では能力値(レベルもだが)が下がり、さらに転職後が呪文専門職でない場合、転職後には同じ呪文を使ってもダメージが大幅に低下することになる。ことにオリジナルWizでよく行われていたように、メイジ呪文をすべて覚えるマスターレベルの後にロードやニンジャに転職すると、戦力が激減するといったことが起こる。
 結果、基本職がかなり重要で、経過点でなく到達点とすることを含めて計画を立てる必要がある。なお、この付属シナリオはクリアレベルはオリジナルのWiz#1よりもかなり高く、趣味の問題だけではない長期戦略が要る。
 こういったデザインは賛否両論であろうが、オリジナルを踏襲しつつも作品ごとに微妙に異なるルールに応じて 最適形を模索するというのも、あえて様々なWizライクをプレイする際の面白さのひとつである。ともあれ、本作の基本構成とエディタは様々なWizライクのテンプレートとなり得るものだろう。


(2010.8.23)


 以下は基本シナリオである『剣匠王の試練場』のメモである。シナリオ(迷宮や仕掛け)内容については触れないが、ゲームバランスやアイテム等のネタバレを含む。


・全体的に#1等よりもハイパワーであり、難易度自体はやや低い。ハイパワーとは、クリアレベルが高いこと以外にも、敵が#1据え置きのものが多い反面、プレイヤーキャラクターが強力だということである。

・このシナリオは、基本職が非常に強い。魔術師と僧侶の呪文ダメージが高く強いのは前述した通りだが、前衛基本職である「戦士」もかなりフォローされている。ヒットダイス(レベルごとのhp)自体が上級職より高く設定されており、成長が早いために、外伝級の20〜30台がクリアレベルとなるこのシナリオでは、上級職よりも目だってhp、命中率、攻撃回数(なお、レベルアップによる攻撃回数の上昇がwiz#1-5よりも早いこともこれに拍車をかけている)すべて突出することになる。
 肝心の武器だが、レアアイテムには#1の定番のもの以外に、戦士専用の強力な武器も存在する。加えて、悪の戦士には悪シリーズ以外にも強力なフォローが存在する。GBC版#1から受け継いでいる点だが、エクスカリバーは善の戦士でも装備できる。
 呪文については、戦士が呪文を覚えても威力が著しく低下するので、(せいぜい保険の僧呪文を除けば)無理に転職して覚えさせる必要性は低い。最初から戦士一本でひたすらレベルを延ばしていくことになるだろう。

・忍者も専用アイテムが多く、防具装備中でもACが低下し、攻撃回数上昇や上限も#1-5より高いので、かなり強化されている。ただし、それでようやく侍や君主と同程度の位置という考え方もできる。結果的には装備できる武器のダメージでは前衛で最も劣ることになるためもある。

・一部では「僧侶無双ゲーム」「前衛3人、あるいは6人全員僧侶にした方がいい」といった意見がある。この意見にそれなりに根拠があるのは、もともと僧侶を含めて基本職の呪文ダメージが大きいことと、バディオス系、リトカン、ロルト、マリクトのすべてがいわゆる「聖」属性呪文となっており(例えば『五つの試練』ではリトカンのレベルにあるバリコ、及びロルトは「風」である)しかも聖属性呪文が大ダメージを与え得る敵はかなり多いためである。とはいえ、終盤になると呪文無効化率を持つ敵は増え、さらにJsardryと異なり『剣匠王の試練場』では術者のレベルによって無効化率は低下しないので、呪文攻撃には限界がある。また、戦士や魔術師のそれに劣らぬ強力さから考えると、一概に僧侶の強化だけが突出しているともいえない。

・呪文ダメージ以外にも、状態異常呪文がかなり効きやすい。例えばカティノやマニフォはwiz#1-3では50%が基本値で、レベル差により上下するが、このシナリオでは基本値自体が能力値(IQやPIE)に依存し、術者側の能力値が高ければ非常に効き易い。ダメージ系とあわせて呪文が強力な所以である。

・商店の鑑定価格はwiz#1-5のボルタック(売却価格の5割)と異なり2割と良心的で、ビショップを必ずしも必要としない。呪文威力で魔術師、僧侶のいずれにも大きく劣るビショップの影は薄くなっている。
 ただし、呪文数を僧・魔両方をオール9にするにはビショップを作るしかない。例えば、FCやGBCのKoDではアイテムSPで呪文をオール9にした後に、さらにアイテムSPで無理矢理転職した場合はオール9のままで、僧魔オール9の戦士等を作ることができたが、Javardryではシステム上、通常の転職同様に覚えている呪文だけの回数に戻ってしまうようである(これは『五つの試練』等と同様)。



・Javardryのシステムそのものに関する点だが、Javardry自体のシナリオに依存しない基本システムは、昔の多数のフリーウェアのwizライクやwizツクール類に比べると、本家wizの再現度・再現可能性が抜群に高い。しかしながら、戦闘周りなどで本家wizと若干相違点がある。
 例えば、本家wizでは呪文や攻撃を行う前に対象となる敵が倒されてしまうと、これらの呪文や攻撃は空振りされる。戦闘終了直前に、敵がいないのに「○○を唱えた」等と浪費される等である。しかしJavardryでは、目標がいなくなった呪文はキャンセルされ唱えられず、打撃や単体呪文は同グループ内の敵に自動的に(ドラクエやツクール2000系のように)振り分けられる。
 Javardryではパーティーが全滅した場合、そのうち何人かが自動でロストするということはないようで、全員死体としてその場に残る。
 このため、本当に厳密には#1などの本家wizを完全再現することはできなくなっている。非常に些細な点なので、Apple][ -> FC版の難易度低下のごとく特に気にしなくとも良いし、他の部分を難しくしてバランスを取っても良いだろう。『剣匠王の試練場』では蘇生率が寺院、呪文とも#1等より遥かに高くなっているので、これらを#1に合わせるなどは一例である。



(2013.2.16)







テキストページに戻る
トップページに戻る